説明

流体噴射装置、及び、流体噴射方法

【課題】画像の滲みや混色を抑制する。
【解決手段】第1の流体を噴射する第1ノズル列及び第2の流体を噴射する第2ノズル列と媒体の相対位置を、一方の方向に相対移動させる時にだけノズルから流体を噴射させる噴射動作と第1ノズル列及び第2ノズル列と媒体の移動動作とを繰り返す第1画像形成方法と、第1ノズル列及び第2ノズル列と媒体の相対位置を移動方向の双方向に相対移動させる時にノズルから流体を噴射させる動作と移動動作とを繰り返す第2画像形成方法のうちの何れか一方の方法を設定し、第1ノズル列の一部のノズル群による第1の流体による主画像の形成と第2ノズル列の一部のノズル群による第2の流体による背景画像の形成を媒体に重ねて行う場合に、第1ノズル列の一部のノズル群と第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方が他方よりも所定方向の他の方向側に位置し他方よりも先に画像形成を行う場合に、第1画像形成方法に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び、流体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の一つとして、媒体に対してインク(流体)を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列を備えるインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。プリンターとして、ノズル列を所定方向と交差する移動方向に移動させながらノズルからインクを噴射させる画像形成動作と、媒体を所定方向である搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返すプリンターなどが知られている。
【0003】
また、シアン、マゼンタ、イエローといったカラーインクの他に、白色のインクを用いて印刷を行う印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなプリンターでは、例えば、白インクによる背景画像とカラー画像を重ねて印刷することで、媒体の地色に影響されずに、発色性の良いカラー画像を印刷することができる。そのため、背景画像とカラー画像を重ねて印刷する「白使用モード」とカラー画像だけを印刷する「カラーモード」のうちの何れか一方のモードを選択して印刷を実施するプリンターがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−38063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
白使用モードが選択された場合、背景画像とカラー画像のうち、媒体に先に印刷する画像用のノズルを、後に印刷する画像用のノズルよりも、媒体搬送方向の上流側のノズルに設定する。そうすることで、背景画像を形成する画像形成動作とカラー画像を形成する画像形成動作を異ならせることができる。ただし、背景画像とカラー画像を各々印刷する画像形成動作を異ならせたとしても、ノズル列が移動方向の双方向へ移動する際に画像を形成する場合は、背景画像とカラー画像を形成する時間間隔が短く、画像の滲みや混色が発生してしまう。
そこで、本発明は、画像の滲みや混色を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び前記第1ノズル列に対し前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列と、(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と媒体の相対位置を前記移動方向のうちの一方の方向に相対移動させる時にだけ前記ノズルから流体を噴射させる噴射動作と前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作とを繰り返す第1画像形成方法と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の双方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させる動作と前記移動動作とを繰り返す第2画像形成方法のうちの、何れか一方の方法を設定し、前記媒体に画像を形成させる制御部であって、前記第1ノズル列の一部のノズル群による前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2ノズル列の一部のノズル群による前記第2の流体と当該第2ノズル列の一部のノズル群と所定方向の位置が同じ前記第1ノズル列の前記ノズルによる前記第1の流体とによる背景画像の形成とを、前記媒体に重ねて行う場合であって、前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方が、他方よりも前記所定方向の他の方向側に位置し、前記媒体の所定領域に対して前記他方よりも先に画像形成を行う場合に、前記第1画像形成方法に設定する制御部と、(D)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】プリンターの斜視図である。
【図3】ヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図4】プリンターが有する印刷モードを説明する図である。
【図5】表刷り・白使用モードの印刷例を示す図である。
【図6】裏刷り・白使用モードの印刷例を示す図である。
【図7】図7Aは単方向印刷と双方向印刷の設定フローを示す図であり、図7Bはユーザーに表示するウィンドウを示す図である。
【図8】図8Aおよび図8Bは白使用モードにおいて表刷りモードと裏刷りモードにそれぞれ適した単方向印刷の方向を説明する図である。
【図9】表刷り・白使用モードの印刷例を示す図である。
【図10】裏刷り・白使用モードの印刷例を示す図である。
【図11】図11Aおよび図11Bは白使用モードにおいて表刷りモードと裏刷りモードにそれぞれ適した単方向印刷の方向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0009】
即ち、(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び前記第1ノズル列に対し前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列と、(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と媒体の相対位置を前記移動方向のうちの一方の方向に相対移動させる時にだけ前記ノズルから流体を噴射させる噴射動作と前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作とを繰り返す第1画像形成方法と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の双方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させる動作と前記移動動作とを繰り返す第2画像形成方法のうちの、何れか一方の方法を設定し、前記媒体に画像を形成させる制御部であって、前記第1ノズル列の一部のノズル群による前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2ノズル列の一部のノズル群による前記第2の流体による背景画像の形成とを、前記媒体に重ねて行う場合であって、前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方が、他方よりも前記所定方向の他の方向側に位置し、前記媒体の所定領域に対して前記他方よりも先に画像形成を行う場合に、前記第1画像形成方法に設定する制御部と、(D)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0010】
かかる流体噴射装置であって、前記第1画像形成方法において、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向のうちの他方の方向に相対移動させる動作であり前記ノズルから流体を噴射させない1回の戻り動作に要する時間は、1回の前記移動動作に要する時間よりも長いこと。
このような流体噴射装置によれば、第2画像形成方法よりも第1画像形成方法の方が、主画像と背景画像のうちの先に形成する画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0011】
かかる流体噴射装置であって、前記第1画像形成方法において、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向のうちの他方の方向に相対移動させる動作であり前記ノズルから流体を噴射させない戻り動作に要する時間は、1回の前記噴射動作に要する時間以下であり、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の前記一の方向に前記ノズル群の前記所定方向の長さだけ相対移動させるために要する時間よりも長いこと。
このような流体噴射装置によれば、第2画像形成方法よりも第1画像形成方法の方が、主画像と背景画像のうちの先に形成する画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0012】
かかる流体噴射装置であって、前記第1画像形成方法において、前記戻り動作に要する時間は、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を、前記所定方向の前記一の方向に、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列のうちの少なくとも一方のノズル列の前記所定方向の長さだけ、相対移動させるために要する時間よりも長いこと。
このような流体噴射装置によれば、第2画像形成方法よりも第1画像形成方法の方が、主画像と背景画像のうちの先に形成する画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0013】
かかる流体噴射装置であり、前記第1画像形成方法において、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向のうちの他方の方向に相対移動させる動作であり前記ノズルから流体を噴射させない戻り動作と、前記移動動作とを、同時に実施しないこと。
このような流体噴射装置によれば、主画像と背景画像のうちの先に形成する画像の乾燥時間を長くすることができ、また、精度よく戻り動作や移動動作を実施することができる。
【0014】
かかる流体噴射装置であり、前記制御部は、前記背景画像は形成せずに前記主画像を前記媒体に形成する場合に、前記第2画像形成方法に設定すること。
このような流体噴射装置によれば、画像形成時間を短縮することができる。
【0015】
かかる流体噴射装置であり、前記第2ノズル列は前記第1ノズル列よりも前記移動方向のうちの第1の方向側に位置し、前記制御部は、前記主画像と前記背景画像とを重ねて前記媒体に形成する場合に、前記媒体の所定領域に対して前記主画像よりも前記背景画像を先に形成する第1モードと、前記媒体の所定領域に対して前記背景画像よりも前記主画像を先に形成する第2モードのうちの何れか一方のモードを設定し、前記第1モードを設定した場合には、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の前記第1の方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させ、前記第2モードを設定した場合には、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の第2の方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させること。
このような流体噴射装置によれば、主画像を形成するノズルと背景画像を形成するノズルの境目が対応する媒体領域の画像の形成順を他の媒体領域と同じにすることができる。
【0016】
かかる流体噴射装置であり、前記主画像の形成と前記背景画像の形成とを前記媒体に重ねて行う場合に、前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群と前記所定方向の位置が同じである前記第1ノズル列のノズルも使用して、前記背景画像を形成すること。
このような流体噴射装置によれば、所望の色の背景画像を形成することができる。
【0017】
また、第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列及び第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び前記第1ノズル列に対し前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列と媒体の相対位置を前記移動方向のうちの一方の方向に相対移動させる時にだけ前記ノズルから流体を噴射させる噴射動作と前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作とを繰り返す第1画像形成方法と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の双方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させる動作と前記移動動作とを繰り返す第2画像形成方法のうちの何れか一方の方法を設定し、設定した方法に応じて前記媒体に画像を形成する流体噴射方法であり、前記第1ノズル列の一部のノズル群による前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2ノズル列の一部のノズル群による前記第2の流体による背景画像の形成とを、前記媒体に重ねて行う場合であって、前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方が、他方よりも前記所定方向の他の方向側に位置し、前記媒体の所定領域に対して前記他方よりも先に画像形成を行う場合に、前記第1画像形成方法に設定する、ことを特徴とする流体噴射方法である。
このような流体噴射方法によれば、画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0018】
===印刷システムについて===
以下、インクジェットプリンター(以下、プリンター)とコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0019】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2は、プリンター1の斜視図である。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0020】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0021】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向(所定方向)に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向(所定方向)と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0022】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを噴射するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク噴射部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入ったインク室(不図示)が設けられている。
【0023】
図3は、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。なお、図はヘッド41の上面から仮想的にノズルを見た図である。ヘッド41の下面には、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔(ノズルピッチd)で並んだノズル列が5列形成されている。図示するように、ブラックインクを噴射するブラックノズル列K・シアンインクを噴射するシアンノズル列C・マゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列M・イエローインクを噴射するイエローノズル列Y・白インクを噴射するホワイトノズル列Wが、移動方向に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0024】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断続的に噴射させて媒体上にドットを形成するドット形成処理と、媒体をヘッド41に対して搬送方向に搬送する搬送処理(移動動作に相当)とが繰り返される。そうすることで、先のドット形成処理(以下、パスともいう)により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置に、後のドット形成処理にてドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。
【0025】
===印刷モードについて===
図4は、本実施形態のプリンター1が有する印刷モードを説明する図である。プリンター1は、4色のインク(YMCK)によって印刷するカラー画像(モノクロ画像も含む)だけを媒体上に印刷する「カラーモード」と、白インクによる背景画像とカラー画像(主画像に相当)を重ねて媒体上に印刷する「白使用モード」のうちの、何れか一方のモードにて媒体上に画像を形成する。白使用モードのようにカラー画像の背景に白色の背景画像を設けることで、特に媒体が白色でない場合に、発色性の良い画像を印刷することができる。また、媒体が透明である場合には、カラー画像と背景画像を重ねて印刷することで、印刷物の反対側が透けてしまうことを防止できる。
【0026】
更に、プリンター1は、カラー画像を印刷面側から見るように印刷する「表刷りモード」と、カラー画像を媒体側から見るように印刷する「裏刷りモード」のうちの、何れか一方のモードにて媒体上に画像を形成する。即ち、プリンター1は、図4に示すように、表刷り・カラーモードと、裏刷り・カラーモードと、表刷り・白使用モードと、裏刷り・白使用モードの4通りの印刷モードを有する。
【0027】
===白使用モードとカラーモードの印刷について===
カラーモードでは媒体上にカラー画像だけを印刷するため、表刷りモードであっても裏刷りモードであっても、媒体上に直接カラー画像が印刷される。一方、白使用モードではカラー画像と背景画像を重ねて印刷するため、表刷りモードでは媒体の所定領域に対して先に背景画像を印刷し、その背景画像上にカラー画像を印刷することになる。逆に、裏刷りモードでは媒体の所定領域に対して先にカラー画像を印刷し、そのカラー画像上に背景画像を印刷することになる。
【0028】
<白使用モードの印刷について>
図5は、表刷り・白使用モードの印刷例を示す図であり、図6は、裏刷り・白使用モードの印刷例を示す図である。図では説明の簡略のため、1ノズル列に属するノズル数を14個に減らして描く。また、4色インク(YMCK)を各々噴射するノズル列をまとめて「カラーノズル列Co(第1ノズル列に相当)」と示す。図5および図6はバンド印刷を示す。バンド印刷とは、1回のパスで形成されるバンド画像が搬送方向に並ぶ印刷方法であり、あるパスで形成されたラスターライン(移動方向に沿うドット列)の間に他のパスのラスターラインを形成しない印刷方法である。
【0029】
ところで、白インクのみを使用して背景画像を印刷すると、背景画像を印刷する白インクの色そのものの色が背景画像の色となる。しかし、同じように白インクと呼ばれるインクであっても、インクの材料などによって白色の色味が若干異なる。そのため、使用する白インクによってユーザーが所望する色とは異なる色の背景画像が印刷されてしまう場合がある。また、印刷物によっては、単純な白色ではなく、若干の有彩色を有する背景画像が所望されることもある。また、白い媒体を用いる場合、白い媒体においても媒体の種類によって白色の色味が若干異なる。そのため、白い媒体に背景画像を印刷する際に、背景画像の白色と媒体の白色が異なると、背景画像が目立ってしまう。
【0030】
そこで、本実施形態では、白インクと共に、少量のカラーインク(YMCK)を適宜使用して、所望の白色の背景画像(調整された白色の背景画像)を印刷する。即ち、背景画像を印刷する際に、プリンター1が噴射可能なカラーインクの中の少なくとも1色のカラーインクを使用すればよく、例えば、4色のカラーインクを全て使用してもよいし、2色のカラーインクを使用してもよい。このように、白インクとカラーインクで背景画像を印刷することで、白インクが若干の色彩を有する場合に、その色彩を打ち消すインクと共に背景画像を印刷することで、背景画像を無彩色に近づけることもできる。
【0031】
なお、所望の白色の背景画像をプリンター1に印刷させるための印刷データは、プリンター1が予め記憶するようにしても良いし、プリンタードライバーが作成するようにしても良い。プリンター1のモニターやコンピューターの画面をユーザーが見るなどして、所望の背景画像の色の選択を行う場合には、選択された色に応じた背景画像の印刷データが生成されるようにするとよい。
【0032】
図5の表刷り・白使用モードでは、媒体の所定領域に対して先に背景画像を印刷し、その上にカラー画像を印刷する。そのため、ホワイトノズル列W(第2ノズル列に相当)の搬送方向上流側(所定方向の他の方向側に相当)の半分のノズル(#8〜#14・△・ノズル群に相当)とカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(#8〜#14・○)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#7・●・ノズル群に相当)を、カラー画像を印刷するための使用ノズルとする。なお、表刷り・白使用モードでは、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#7)からはインクが噴射されない。また、図5はバンド印刷であるため、1回の媒体搬送量は、1回のパスで形成される画像の搬送方向の幅長さに相当する。白使用モードでは1回のパスで2種類の画像が形成されるため、1回の媒体搬送量は、1回のパスで形成される背景画像またはカラー画像の搬送方向の幅長さに相当する。よって、図5では1回の媒体搬送量がノズル列の半分の長さ(7個のノズル分長さ)「7D」となる。
【0033】
つまり、表刷り・白使用モードでは、ホワイトノズル列Wの搬送方向上流側の使用ノズル及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の使用ノズルとカラーノズル列Coの搬送方向下流側の使用ノズルで画像を形成する動作と、媒体を搬送量7Dだけ搬送する動作と、を繰り返す。その結果、媒体の所定領域はまずホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の使用ノズル(#8〜#14)と対向し、媒体の所定領域には背景画像が印刷される。その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されることによって、媒体の所定領域はカラーノズル列Coの搬送方向下流側の使用ノズル(#1〜#7)と対向し、媒体の所定領域の背景画像上にカラー画像が印刷される。
【0034】
逆に、裏刷り・白使用モードでは、図6に示すように、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#7・△)及びカラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#7・○)を、背景画像を印刷する使用ノズルとし、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(#8〜#14・●)を、カラー画像を印刷する使用ノズルとする。なお、1回の媒体搬送量はノズル列の半分の長さ7Dである。その結果、媒体の所定領域はまずカラーノズル列Coの搬送方向上流側の使用ノズル(#8〜#14)と対向し、媒体の所定領域にはカラー画像が印刷される。その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されることによって、媒体の所定領域はホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向下流側の使用ノズル(#1〜#7)と対向し、媒体の所定領域のカラー画像上に背景画像が印刷される。
【0035】
このように、背景画像を印刷するホワイトノズル列Wのノズル(△)の搬送方向の位置と、同じく背景画像を印刷するカラーノズル列Coのノズル(○)の搬送方向の位置を、等しくする。そうすると、背景画像を印刷するために、媒体の所定領域に対して同じパスで白インクとカラーインクが噴射される。その結果、白インクとカラーインクが混ざり、背景画像の粒状感を低減することができる。
【0036】
また、背景画像を構成するカラーインクの割合は白インクの割合に比べて小さい。ただし、背景画像におけるカラーインクの粒状感を低減するため、カラーインクのドットをなるべく均一に分散することが好ましい。即ち、背景画像の単位領域あたりの白インク密度(ドット密度)に対して背景画像の単位領域あたりのカラーインク密度(ドット密度)を小さくする。そのため、背景画像を構成するカラーインクの割合は白インクの割合に比べて小さいものの、本実施形態では、背景画像を印刷するために使用するホワイトノズル列Wのノズル数とカラーノズル列Coのノズル数を等しくする。即ち、カラーノズル列Coに属する半分のノズルを用いて背景画像を印刷する。ただし、これに限らず、背景画像を印刷するために使用可能なカラーノズル列Coの半分のノズルのうち、数個置きのノズルを使用して背景画像を印刷してもよい。
【0037】
このように白使用モードでは、カラー画像と背景画像のうちの先に印刷する画像の使用ノズルを、後に印刷する画像の使用ノズルよりも、搬送方向上流側のノズルに設定する。そうすることで、表刷りまたは裏刷りモードに応じた順に画像を印刷することができる。また、媒体の所定領域に対して背景画像を印刷するパスとカラー画像を印刷するパスを異ならせることができる。そうすると、先の画像を印刷してから後の画像を印刷するまでの乾燥時間を比較的に長くすることができ、画像の滲みを抑制することができる。
【0038】
<カラーモードの印刷について>
これに対して、カラーモードでは、表刷りモード時にも裏刷りモード時にも、媒体上にカラー画像だけを印刷する。そのため、カラーノズル列Coに属する全ノズルが使用可能である。カラーモードにおいてカラーノズル列Coに属する全ノズルを使用することで(不図示)、1回のパスで形成可能な画像幅を大きくすることができ、印刷時間を短縮することができる。
【0039】
また、カラーモードでは、白使用モードと同様にカラーノズル列Coの半分のノズルだけを使用することもできる(不図示)。例えば、表刷り・カラーモードで使用するカラーノズルを、表刷り・白使用モードで使用するカラーノズル(搬送方向下流側のノズル)と同じにし、裏刷り・カラーモードで使用するカラーノズルを、裏刷り・白使用モードで使用するカラーノズル(搬送方向上流側のノズル)と同じにしてもよい。この場合、表刷り・カラーモードと表刷り・白使用モードにおける最適な印刷パターンや媒体の搬送制御を共通化でき、裏刷り・カラーモードと裏刷り・白使用モードにおける最適な印刷パターンや媒体の搬送制御を共通化できる。そうすることで、プリンター1の製造工程において、使用するカラーノズル(数や位置)に応じて最適な印刷パターンを決定する処理を簡略化できる。なお、製造工程は、設計工程と量産工程の少なくとも何れかを含み、量産工程ではプリンター1の個体ごとの画質特性の違いに応じて最適な印刷パターンを決定し、設計工程ではプリンター1の機種ごとの画質特性の違いに応じて最適な印刷パターンを決定することになる。そして、各モードの最適な印刷パターンや媒体の搬送制御の情報を記憶するメモリー容量を削減できる。また、白使用モードでの本番印刷の前にカラーモードでテスト印刷し、カラー画像の画質を確認することができるため、白インクの消費量を抑えることもできる。
【0040】
===単方向印刷と双方向印刷の設定について===
図7Aは、単方向印刷と双方向印刷の設定フローを示す図であり、図7Bは、ユーザーに表示するウィンドウを示す図である。本実施形態のプリンター1では図2に示すようにヘッド41のホームポジションHPが移動方向の右側に位置する。そして、プリンター1は、ヘッド41が移動方向の右側から(ホームポジションから)左側へ移動する往路時にノズルからインク滴を噴射させ、ヘッド41が移動方向の左側から右側へ移動する復路時にはノズルからインク滴を噴射させない「単方向印刷(第1画像形成方法)」と、往路時にも復路時にもノズルからインク滴を噴射させる「双方向印刷(第2画像形成方法)」のうちの、何れか一方の印刷方法を選択し、印刷を実施することができる。なお、単方向印刷において往路時にはノズルからインク滴を噴射させず復路時にノズルからインク滴を噴射させてもよい。
【0041】
以下の説明のため、ここでは、ヘッド41がインク滴を噴射しながら移動方向に1回移動する動作を「パス(噴射動作に相当)」と呼ぶ。即ち、単方向印刷では往路時の動作が1回のパスに相当し、双方向印刷では往路時の動作および復路時の動作がそれぞれ1回のパスに相当する。そして、単方向印刷の復路時においてヘッド41がインク滴を噴射させずに移動方向に移動する動作を「戻り動作」と呼ぶ。
【0042】
単方向印刷では、往路時の或るパスで媒体に画像を印刷した後に、媒体が搬送方向下流側に搬送される。そして、戻り動作によりヘッド41がホームポジション側に戻った後に、次の往路時のパスで媒体に再び画像が印刷される。なお、本実施形態のプリンター1では媒体の搬送動作とヘッド41の戻り動作が同時に行われないとする。そのため、単方向印刷では、或るパス(往路)で画像が形成されてから次のパス(往路)で画像が形成されるまでの時間が、媒体を搬送方向に搬送する時間とヘッド41の戻り動作の時間の合計時間となる。なお、媒体を搬送方向に搬送する搬送動作とヘッド41の戻り動作は、どちらを先に行っても良い。
【0043】
一方、双方向印刷では、往路時の或るパスで媒体に画像を印刷した後に、媒体が搬送方向下流側に搬送される。そして、復路時の次のパスで媒体に再び画像が印刷される。そのため、双方向印刷では、或るパス(往路)で画像が形成されてから次のパス(復路)で画像が形成されるまでの時間が、媒体を搬送方向に搬送する時間となる。つまり、媒体搬送量(搬送時間)が同じである印刷方法を単方向印刷で実施する方が双方向印刷で実施する場合に比べて、各パスで画像が形成される時間間隔が、戻り動作の時間分だけ長くなる。言い換えれば、或るパスで画像を形成する動作が完了してから次のパスで画像を形成する動作が開始するまでの時間が、単方向印刷の方が双方向印刷よりも長い。なお、各パスで画像を形成する動作は、ヘッド41が加速し始めてから、ヘッド41の移動中にインクを噴射し、ヘッド41を減速して停止するまでの動作であり、画像を形成する動作中に常にインクが噴射されているとは限らない。
【0044】
ところで、プリンター1は、図4に示すように白使用モードにおいて、背景画像とカラー画像を重ねて印刷する。図5や図6に示すように、背景画像とカラー画像のうちの先に印刷する画像の使用ノズルを後に印刷する画像の使用ノズルよりも搬送方向上流側のノズルに設定することで、媒体の所定領域に背景画像を印刷するパスとカラー画像を印刷するパスを異ならせることができる。なお、本実施形態では、白使用モードにおいて、カラーノズル列Coの使用ノズル(例えば図5のノズル#1〜#7)とホワイトノズル列Wの使用ノズル(例えば図5のノズル#8〜#14)の間に不使用ノズルを設けない。そのため、媒体の所定領域に対して先の画像の印刷が終了したパスの次のパスから後の画像の印刷が開始する。
【0045】
ここで仮に、白使用モードで双方向印刷を実施するとした場合、媒体の所定領域に対して、往路時の或るパスで背景画像が印刷され、媒体が下流側に搬送された後に、復路時の次のパスでカラー画像が印刷されることになる。この場合、例えば、媒体の所定領域に対して背景画像の印刷が終了してからカラー画像の印刷が開始するまでの時間、即ち、背景画像の乾燥時間が、媒体の搬送時間だけとなる。即ち、白使用モードで双方向印刷を実施すると先に印刷する背景画像の乾燥時間が短く、画像が滲んでしまう。特に白使用モードでは、背景画像を印刷するパスとカラー画像を印刷するパスを異ならせるために、各画像を印刷するノズルの長さを各ノズル列W,Coの半分の長さとしている。よって、白使用モードでは媒体搬送の時間も比較的に短く、先に印刷する画像の乾燥時間が短いため、画像が滲み易くなる。また、ユーザーの元での実際の印刷では、図5や図6に示すバンド印刷よりも搬送方向の解像度が高い印刷が実施されることが多く、そうすると、白使用モードにおいて更に媒体搬送量が短くなり、先に印刷する画像の乾燥時間が短くなってしまう。
【0046】
そこで、本実施形態では、白使用モードが選択された場合に、プリンター1は双方向印刷ではなく単方向印刷を実施するようにする。白使用モードで単方向印刷を実施することで、媒体の所定領域に対して先の画像の印刷が終了してから後の画像の印刷が開始するまでの時間、即ち、先の画像の乾燥時間が、媒体の搬送時間とヘッド41の戻り動作時間の合計時間となる。つまり、白使用モードで単方向印刷を実施することで、ヘッド41の戻り動作の時間分だけ、先の画像の乾燥時間を長くすることができ、画像の滲みを抑制した高画質な画像を印刷することができる。
【0047】
そのために、本実施形態では、プリンタードライバーが、ユーザーから印刷指令を受けると、コンピューター60のディスプレイに図7Bのウィンドウを表示する等して、まず、ユーザーに「白使用モード」と「カラーモード」のうちの何れか一方の印刷モードを選択させる。そうして、ユーザーによって白使用モードが選択された場合(図7AのS001→Y)、プリンタードライバーは印刷方法を「単方向印刷」に設定する(S002)。このとき、図7Bのウィンドウに示すように、ユーザーが「双方向印刷」を選択出来ないようにする。
【0048】
これに対して、ユーザーによってカラーモードが選択された場合(S001→N)、プリンタードライバーは、ユーザーに「単方向印刷」と「双方向印刷」のうちの何れか一方の印刷方法を選択させる。このとき、図7Bのウィンドウにおいて、ユーザーが「単方向印刷」と「双方向印刷」の中から一方を選択出来るようにする。そして、ユーザーによって双方向印刷が選択された場合(S003→Y)、プリンタードライバーは印刷方法を「双方向印刷」に設定する(S004)。一方、ユーザーによって単方向印刷が選択された場合(S003→N)、プリンタードライバーは印刷方法を「単方向印刷」に設定する(S002)。
【0049】
その後、プリンタードライバーは、印刷モードに応じて印刷データを作成し、印刷データと共に、印刷方法(単方向印刷と双方向印刷のどちらで印刷するか)などのコマンドデータを、プリンター1に送信する。プリンター1のコントローラー10は、プリンタードライバーからのコマンドデータに基づいて、単方向印刷と双方向印刷のうちの何れかの一方の印刷方法を設定する。コントローラー10は、単方向印刷を設定した場合、印刷データに基づき往路時にヘッド41からインク滴が噴射され、復路時にはヘッド41からインク滴が噴射されないように各ユニットを制御する。一方、コントローラー10は、双方向印刷を設定した場合、印刷データに基づき往路時にも復路時にもヘッド41からインク滴が噴射されるように各ユニットを制御する。
【0050】
この結果、白使用モードでは単方向印刷が実施されるため、媒体の搬送時間とヘッド41の戻り時間の合計時間を、背景画像とカラー画像の乾燥時間に充てることができ、画像の滲みを抑制した高画質な画像を印刷することができる。一方、カラーモードでは、単方向印刷と双方向印刷のうち、ユーザーが選択した方の印刷方法により画像が印刷される。カラーモードでは、媒体上にカラー画像だけしか印刷されないため、双方向印刷を実施しても画像が滲む虞がないため、問題が無い。
【0051】
ところで、本実施形態の白使用モードの印刷では、図5や図6に示すように、背景画像とカラー画像のうち、媒体の所定領域に対して先に形成する画像用のノズルを、後に形成する画像用のノズルよりの搬送方向上流側のノズルに設定する。しかし、仮に、ホワイトノズル列Wの全ノズルとカラーノズル列Coの全ノズルを使用する場合であっても、背景画像とカラー画像を重ねて印刷できる。ただし、この場合、同じパス内において背景画像とカラー画像が重ねて印刷されるため、単方向印刷を実施したとしても、先に印刷する画像の乾燥時間を長くすることが出来ない。つまり、本実施形態のように、ホワイトノズル列Wの一部のノズル群とカラーノズル列Coの一部のノズル群のうちの搬送方向上流側に位置するノズル群が媒体の所定領域に対して先に画像を形成することによって、背景画像を印刷するパスとカラー画像を印刷するパスを異ならせるからこそ、単方向印刷を実施することで、先に印刷する画像の乾燥時間を長くすることが出来る。
【0052】
なお、前述の実施例では、カラーモードが選択された後、図7Bのウィンドウによりユーザーに単方向印刷と双方向印刷を選択させているが、これに限らない。双方向印刷では単方向印刷に比べて印刷時間を短縮できる。そのため、カラーモードでは、2つの画像を重ねて印刷せず、2つの画像の滲みの虞がないため、カラーモードが選択された場合には、双方向印刷に設定してもよい。そうすることで印刷時間を短縮できる。ただし、双方向印刷では往路時と復路時の特性差により(例えば往路時と復路時の着弾位置のずれ等)、単方向印刷に比べて画質が低下する場合がある。そのため、例えば、印刷の基本設定で「きれいモード」と「早いモード」の何れかが既に選択されている状態でカラーモードが選択された場合、プリンタードライバーは、きれいモードが設定されているときは単方向印刷に設定し、早いモードが設定されているときは双方向印刷に設定してもよい。
【0053】
このように、プリンタードライバーが印刷モード(白使用モード又はカラーモード)に応じて単方向印刷か双方向印刷に設定し、プリンター1のコントローラー10が設定された印刷方法(単方向印刷又は双方向印刷)に応じて印刷を制御する場合、プリンタードライバーがインストールされたコンピューター60とプリンター1のコントローラー10が制御部に相当し、コンピューター60とプリンター1が接続された印刷システムが流体噴射装置に相当する。
【0054】
ただし、これに限らず、プリンタードライバーが、ユーザーに白使用モードかカラーモードの何れかを選択させ、印刷モードの情報をプリンター1に送信してもよい。そして、プリンター1のコントローラー10は、プリンタードライバーからの印刷モード情報に基づいて、白使用モードであれば単方向印刷に設定し、単方向印刷にて印刷を制御するとよい。一方、プリンタードライバーからの印刷モード情報がカラーモードであれば、プリンター1のコントローラー10は図7Bのウィンドウを表示させる等して、ユーザーに単方向印刷と双方向印刷を選択させ、選択された方の印刷方法にて印刷を制御するとよい。この場合、プリンター1のコントローラー10が制御部に相当し、プリンター1単体が流体噴射装置に相当する。
【0055】
また、図7Aのフローでは白使用モードが選択された場合に単方向印刷にしか設定できないが、これに限らない。白使用モードが選択された場合に、推奨の印刷方法として(デフォルトとして)、単方向印刷が設定されるようにしてもよい。そして、白使用モードであっても、ユーザーが設定画面(図7B)において、双方向印刷を選択できるようにしてもよい。そうすることで、ユーザーが早く印刷したい場合に(例えば試し印刷などにおいて)、白使用モードであっても双方向印刷を実施することができる。
【0056】
ところで、白使用モードにおいて双方向印刷を実施したとしても、往路の或るパスで画像を形成して媒体を搬送し、休止時間を設けた後に、復路の次のパスで画像を形成することで、先に印刷する画像の乾燥時間を確保できる。その結果、画像の滲みを抑制できる。しかし、白使用モードの双方向印刷では、往路と復路の間に休止時間を設け、カラーモードの双方向印刷では、往路と復路の間に休止時間を設けないとすると、印刷制御が複雑となる。また、休止時間を設ける場合は、所定の休止時間をカウントするプログラムや装置が必要となる。
【0057】
また、例えば、カラーインク(YMCK)だけを噴射するヘッドを備え、カラーモードだけを実施するプリンターであり、双方向印刷と単方向印刷が実施可能であるプリンターがあったとする。このプリンターのヘッドに白インクを補充することで、カラーモードと白色モードが実施可能となる。しかし、上述のように、仮に、白使用モードの双方向印刷では往路と復路の間に休止時間を設け、カラーモードの双方向印刷では往路と復路の間に休止時間を設けないとすると、新たなプログラムや制御回路が必要となる。その結果、プリンターの製造コストが高くなってしまう。そのため、本実施形態のように、プリンターが備える双方向印刷と単方向印刷を用いて、白使用モード時には単方向印刷を設定することで、新たなプログラムや制御回路を作成することなく、画像の滲みを抑制できる。
【0058】
また、前述のように、本実施形態のプリンター1では、媒体の搬送動作とヘッド41の戻り動作を同時に行わない。これは、媒体の搬送動作とヘッド41の戻り動作を同時に行うと、機械的な振動が発生したり、駆動信号にノイズが発生したりする等して、搬送精度が低下することがあるからである。あるいは、媒体の搬送動作とヘッド41の戻り動作を同時に行うと、制御が複雑になるからである。このように、媒体の搬送動作とヘッド41の戻り動作を同時に行わないことで、白使用モードにおいて、即ち単方向印刷において、媒体の所定領域に対して先の画像の印刷が終了してから後の画像の印刷が開始するまでの時間(乾燥時間)を、媒体の搬送時間とヘッド41の戻り時間の合計時間と長くすることができ、より画像の滲みを抑制できる。
【0059】
なお、媒体の搬送動作よりもヘッド41の戻り動作の方が所要時間が長い場合には、媒体の搬送動作とヘッド41の戻り動作を同時に行ってもよい。この場合、単方向印刷ではヘッド41の戻り時間が背景画像とカラー画像の乾燥時間に相当し、双方向印刷では媒体の搬送時間が乾燥時間に相当するため、双方向印刷を実施するよりも単方向印刷を実施する方が乾燥時間を長くすることができる。
【0060】
また、近年、大型化プリンターの需要が高まっている。大型プリンターでは、ヘッド41の移動方向への移動距離が長く、ヘッド41の戻り時間が長くなる。そのため、大型プリンターでは、単方向印刷における背景画像とカラー画像の乾燥時間をより長くすることができ、画像の滲みをより抑制できる。ところで、画像形成時におけるヘッド41の移動方向への移動速度はヘッド41からのインク噴射間隔の拘束を受けるが、戻り動作時のヘッド41の移動速度は可変である。そのため、ヘッド41の戻り動作の時間(画像形成時の時間)が画像の乾燥に要する時間以上に長い場合には、ヘッド41の戻り動作時の移動速度を画像形成時よりも速くしてもよい。逆に、画像の乾燥に要する時間だけ、ヘッド41の戻り動作時の移動速度を画像形成時よりも遅くしてもよい。
【0061】
このように画像形成時のヘッド41の移動速度に対して戻り動作時のヘッド41の移動速度は可変であり、ヘッド41の戻り動作に要する時間を1回のパスにおける画像形成時間以下にしても良い。ただし、本実施形態の白使用モードでは、1回の搬送動作における最大媒体搬送量はノズル列の半分の長さとなるため、単方向印刷におけるヘッド41の戻り時間は、ノズル列の半分の長さの媒体を搬送する時間よりも長くする。そうすることで、媒体の搬送動作とヘッド41の戻り動作が同時に実施される場合であっても、単方向印刷の乾燥時間はヘッド41の戻り時間に相当し、双方向印刷の乾燥時間は媒体の搬送時間に相当するため、単方向印刷の方が双方向印刷よりも乾燥時間を長くすることが出来る。更に好ましくは、単方向印刷におけるヘッド41の戻り時間を、ノズル列の長さの媒体を搬送する時間よりも長くする。そうすることで、単方向印刷の方が双方向印刷よりも確実に乾燥時間を長くすることができる。その結果、白使用モードが選択された場合に単方向印刷を設定する効果が確実に得られる。
【0062】
なお、白使用モードにおいて、カラーノズル列Coの使用ノズル(例えば表刷りモードでは搬送方向下流側ノズル)とホワイトノズル列Wの使用ノズル(例えば表刷りモードでは搬送方向上流側ノズル)の間に不使用ノズルを設けてもよい。そうすることで、媒体の所定領域に対して先の画像を印刷するパスと後の画像を印刷するパスの間に、画像が形成されないパス(不使用ノズルが媒体と対向するパス)を設けることができ、背景画像とカラー画像の乾燥時間をより長くすることができる。この場合であっても、白使用モードが選択された場合には双方向印刷ではなく単方向印刷を設定することで、背景画像とカラー画像の乾燥時間を長くすることができる。また、不使用ノズルが属する領域の搬送方向の長さは媒体搬送量の整数倍の長さとする。そうすることで、画像全域において、先の画像を印刷するパスと後の画像を印刷するパスとの間のパス数を一定にすることができ、画像の濃度むらを防止できる。
【0063】
或いは、あるパスにおいて、ノズル列中の媒体搬送方向に並ぶ2つのノズルによって形成される2つのラスターライン(移動方向に沿うドット列)の間に、他のパスでラスターラインを形成する印刷方法、所謂インターレース印刷を行ってもよい。また或いは、1つのラスターラインを複数のノズルで異なるパスで印刷する印刷方法、所謂オーバーラップ印刷を行ってもよい。これらの場合、1回の媒体搬送量が前述の実施形態(図5,図6)よりも短くなる。そのため、インターレース印刷やオーバーラップ印刷にて双方向印刷を実施してしまうと、背景画像とカラー画像の乾燥時間がより短くなるため、単方向印刷を実施するとよい。また、インターレース印刷やオーバーラップ印刷では(ノズル数を調整して印刷するため)、先の画像を印刷するパスと後の画像を印刷するパスの間に画像が形成されないパスが設けられることがあるが、白使用モードが選択された場合には印刷方法に関係なく、単方向印刷に設定するとよい。そうすることで、背景画像とカラー画像の乾燥時間をより長くすることができる。
【0064】
===変形例===
図8Aおよび図8Bは、白使用モードにおいて表刷りモードと裏刷りモードにそれぞれ適した単方向印刷の方向を説明する図である。前述の実施形態の単方向印刷では、往路時に(ホームポジションからのヘッド41の移動時)に画像を形成するとしているが、これに限らない。同じ単方向印刷であっても、印刷モードに応じて、往路時に画像を形成しても良いし、復路時に画像を形成してもよい。
【0065】
図8Aは表刷り・白使用モードの印刷を示す。図中では1ノズル列に属するノズル数を14個とし、図の中央部には表刷り・白使用モードで使用するノズルを示す。表刷り・白使用モードでは、ホワイトノズル列Wの搬送方向上流側半分のノズル#8〜#14とカラーノズル列(YMCK)の搬送方向上流側の半分のノズル#8〜#14を、背景画像を印刷するために使用し、カラーノズル列(YMCK)の搬送方向下流側半分のノズル#1〜#7を、カラー画像を印刷するために使用する。ここでは、白の使用ノズルとカラーの使用ノズルの境目に対応する画素(図ではノズル#6〜#9が割り当てられる画素)のドット形成の仕方を説明する。
【0066】
まず往路時の境目の画素に着目する(図中の左側の画素)。なお、ノズル#6,#7が対応する画素には背景画像のドットが既に形成されているとする。本実施形態のプリンター1ではヘッド41において移動方向の左側(第2の方向側に相当)から、ブラックノズル列K,シアンノズル列C,マゼンタノズル列M,イエローノズル列Y,ホワイトノズル列Wの順に並んでいる。そのため、移動方向の右側から左側へ移動する往路時には、先にノズル#6,#7の画素にカラー画像用のドット(●)が形成され、その後ノズル#8,#9の画素に、背景画像の大部分を占める白インクのドット(△)が形成される。通常、最大で1画素の面積よりも大きなドットが形成される。特に背景画像は白色のベタ塗り印刷で形成されるため画素よりも大きなドットが形成される。よって、表刷りモードでは背景画像用のドットがカラー画像用のドットよりも下に(先に)形成されるべきであるところを、背景画像用の使用ノズルとカラー画像用の使用ノズルの境目の画素(ノズル#7,#8の画素)では、背景画像用のドットとカラー画像用のドットの重なる順番が逆転してしまう。そうすると、境目の画素だけ、他の画素と色味が異なってしまう虞がある。
【0067】
一方、移動方向の左側から右側へ移動する復路時には、先にノズル#8,#9の画素に白インクのドット(△)が形成され、その後ノズル#6,#7の画素にカラー画像用のドット(●)が形成される。よって、復路時には、背景画像用の使用ノズルとカラー画像用の使用ノズルの境目の画素(ノズル#7,#8の画素)において、背景画像用のドットがカラー画像用のドットよりも下に(先に)形成される。そのため、境目の画素と他の画素において、背景画像用のドットとカラー画像用のドットの重なる順番を一定にでき、境目の画素の色味がずれてしまうことを防止できる。つまり、表刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、復路で画像を形成し、往路でヘッド41の位置を戻すとよい。
【0068】
また、図8Aのノズル#1及びノズル#8の中に番号を示している。なお、ノズル#1とノズル#8は同じ画素に割り当てられるとする。そして、ノズル内の番号は、復路に画像形成動作を実施し、往路にヘッド41の戻り動作を実施する場合に、所定の画素が対向するノズルの順番を示す。復路に画像を形成するため、同じ復路のパスにおいて、まず、搬送方向上流側の白の使用ノズル#8が所定の画素と対向してドットが形成され、次に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの使用ノズル#8が順に所定の画素と対向してドットが形成される。その後、媒体が下流側に搬送され、次の復路のパスにおいて、まず、搬送方向下流側の白の不使用ノズル#1が所定の画素と対向し、次に、カラーの各使用ノズル#1が所定の画素と対向しドットが形成される。
【0069】
つまり、表刷り(第1モードに相当)・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、復路で画像を形成することで(移動方向の右側へ(第1の方向側へ)の移動時に画像を形成することで)、媒体の所定領域に対して、背景画像を形成するパスにおいて比較的に早く、背景画像の大部分を占める白インクのドットを形成し、カラー画像を形成するパスにおいて比較的に遅くカラー画像用のドットを形成することができる。その結果、白インクの乾燥時間をより長くすることができる。逆に、往路時に画像を形成すると、媒体の所定領域は、カラーの使用ノズル#8よりも後に白の使用ノズル#8と対向し、カラーの使用ノズル#1の方が白の不使用ノズル#1よりも先に対向するため、白インクの乾燥時間が短くなる。このことからも、表刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、復路で画像を形成する方が好ましいといえる。
【0070】
図8Bは裏刷り(第2モードに相当)・白使用モードの印刷を示す。裏刷り・白使用モードでは、ホワイトノズル列Wのうちの搬送方向下流側半分のノズル#1〜#7とカラーノズル列(YMCK)のうちの搬送方向下流側半分のノズル#1〜#7を使用し、カラーノズル列(YMCK)のうちの搬送方向上流側半分のノズル#8〜#14を使用する。裏刷り・白使用モードでは、往路時に画像を形成することで(移動方向の左側へ(第2の方向側へ)の移動時に画像を形成することで)、図中の左の画素に示すように、背景画像用の使用ノズルとカラー画像用の使用ノズルの境目の画素において(ノズル#7,#8の画素)、カラー画像用のドット(●)が、背景画像の大部分を占める白インクのドット(△)よりも先に(下に)形成される。一方、復路時に画像を形成することで、図中の右の画素に示すように、境目の画素において、白インクのドットがカラー画像用のドットよりも先に形成される。裏刷りモードではカラー画像用のドット(●)が白インクのドット(△)よりも先に形成されるべきであるため、裏刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、往路で画像を形成し、復路でヘッド41の位置を戻すとよい。その結果、画像の全域において背景画像用のドットとカラー画像用のドットの重ね順を一定にすることができ、色味を一定にすることができる。
【0071】
また、図8Bのノズル#1,#8内の番号は、往路に画像形成動作を実施し、復路にヘッド41の戻り動作を実施する場合に、所定の画素が対向するノズルの順番を示す。裏刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、往路で画像を形成することで、媒体の所定領域に対して、カラー画像を形成するパスにおいて比較的に早くカラー画像用のドットを形成し、背景画像を形成するパスにおいて比較的に遅く白インクのドットを形成することができる。その結果、カラー画像が印刷されてから多量の白インクが噴射されるまでの乾燥時間をより長くすることができ、画像の滲みを抑制できる。そのため、裏刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、往路で画像を形成する方が好ましい。
【0072】
===画像の変形例について===
ここまで、白インクとカラーインクを使用して白色の色味を調整した背景画像を例に挙げているが、これに限らない。白インクだけを用いて印刷した背景画像であっても良い。しかし、この場合、白インクの色そのものの色である背景画像しか印刷することが出来ない。そのため、所望の色の背景画像を印刷することが出来なかったり、背景画像の色と媒体の地色の差が目立ってしまったりする。よって、高品質の背景画像を印刷することが出来ない。以下、白インクだけで背景画像を印刷する場合の印刷例を示す。
【0073】
図9は、表刷り・白使用モードの印刷例を示す図であり、図10は、裏刷り・白使用モードの印刷例を示す図である。図では説明の簡略のため、1ノズル列に属するノズル数を14個に減らして描く。また、4色インク(YMCK)を各々噴射するノズル列をまとめて「カラーノズル列Co(第1ノズル列に相当)」と示す。図9および図10はバンド印刷を示す。バンド印刷とは、1回のパスで形成されるバンド画像が搬送方向に並ぶ印刷方法であり、あるパスで形成されたラスターライン(移動方向に沿うドット列)の間に他のパスのラスターラインを形成しない印刷方法である。
【0074】
図9の表刷り・白使用モードでは、媒体の所定領域に対して先に背景画像を印刷し、その上にカラー画像を印刷する。そのため、ホワイトノズル列W(第2ノズル列に相当)の搬送方向上流側(所定方向の他の方向側に相当)の半分のノズル(#8〜#14・△・ノズル群に相当)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#7・●・ノズル群に相当)を、カラー画像を印刷するための使用ノズルとする。なお、表刷り・白使用モードでは、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#7)、及び、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(#8〜#14)からはインクが噴射されない。また、図9はバンド印刷であるため、1回の媒体搬送量は、1回のパスで形成される画像の搬送方向の幅長さに相当する。白使用モードでは1回のパスで2種類の画像が形成されるため、1回の媒体搬送量は、1回のパスで形成される背景画像またはカラー画像の搬送方向の幅長さに相当する。よって、図9では1回の媒体搬送量がノズル列の半分の長さ(7個のノズル分長さ)「7D」となる。
【0075】
つまり、表刷り・白使用モードでは、ホワイトノズル列Wの搬送方向上流側の使用ノズルとカラーノズル列Coの搬送方向下流側の使用ノズルで画像を形成する動作と、媒体を搬送量7Dだけ搬送する動作と、を繰り返す。その結果、媒体の所定領域はまずホワイトノズル列Wの搬送方向上流側の使用ノズル(#8〜#14)と対向し、媒体の所定領域には背景画像が印刷される。その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されることによって、媒体の所定領域はカラーノズル列Coの搬送方向下流側の使用ノズル(#1〜#7)と対向し、媒体の所定領域の背景画像上にカラー画像が印刷される。
【0076】
逆に、裏刷り・白使用モードでは、図10に示すように、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#7・△)を、背景画像を印刷する使用ノズルとし、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(#8〜#14・●)を、カラー画像を印刷する使用ノズルとする。なお、1回の媒体搬送量はノズル列の半分の長さ7Dである。その結果、媒体の所定領域はまずカラーノズル列Coの搬送方向上流側の使用ノズル(#8〜#14)と対向し、媒体の所定領域にはカラー画像が印刷される。その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されることによって、媒体の所定領域はホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の使用ノズル(#1〜#7)と対向し、媒体の所定領域のカラー画像上に背景画像が印刷される。
【0077】
また、白インクだけで背景画像を印刷する場合であり、且つ、往路と復路の一方を選択して画像を印刷する印刷例は以下に示す通りとなる。
図11Aおよび図11Bは、白使用モードにおいて表刷りモードと裏刷りモードにそれぞれ適した単方向印刷の方向を説明する図である。前述の実施形態の単方向印刷では、往路時に(ホームポジションからのヘッド41の移動時)に画像を形成するとしているが、これに限らない。同じ単方向印刷であっても、印刷モードに応じて、往路時に画像を形成しても良いし、復路時に画像を形成してもよい。
【0078】
図11Aは表刷り・白使用モードの印刷を示す。図中では1ノズル列に属するノズル数を14個とし、図の中央部には表刷り・白使用モードで使用するノズルを示す。表刷り・白使用モードでは、ホワイトノズル列Wのうちの搬送方向上流側半分のノズル#8〜#14を使用し、カラーノズル列(YMCK)のうちの搬送方向下流側半分のノズル#1〜#7を使用する。ここでは、白の使用ノズルとカラーの使用ノズルの境目に対応する画素(図ではノズル#6〜#9が割り当てられる画素)のドット形成の仕方を説明する。
【0079】
まず往路時の境目の画素に着目する(図中の左側の画素)。なお、ノズル#6,#7が対応する画素には背景画像のドットが既に形成されているとする。本実施形態のプリンター1ではヘッド41において移動方向の左側(第2の方向側に相当)から、ブラックノズル列K,シアンノズル列C,マゼンタノズル列M,イエローノズル列Y,ホワイトノズル列Wの順に並んでいる。そのため、移動方向の右側から左側へ移動する往路時には、先にノズル#6,#7の画素にカラー画像用のドット(●)が形成され、その後ノズル#8,#9の画素に背景画像用のドット(△)が形成される。通常、最大で1画素の面積よりも大きなドットが形成される。特に背景画像は白色のベタ塗り印刷で形成されるため画素よりも大きなドットが形成される。よって、表刷りモードでは背景画像用のドットがカラー画像用のドットよりも下に(先に)形成されるべきであるところを、白の使用ノズルとカラーの使用ノズルの境目の画素(ノズル#7,#8の画素)では、背景画像用のドットとカラー画像用のドットの重なる順番が逆転してしまう。そうすると、境目の画素だけ、他の画素と色味が異なってしまう虞がある。
【0080】
一方、移動方向の左側から右側へ移動する復路時には、先にノズル#8,#9の画素に背景画像用のドット(△)が形成され、その後ノズル#6,#7の画素にカラー画像用のドット(●)が形成される。よって、復路時には、白の使用ノズルとカラーの使用ノズルの境目の画素(ノズル#7,#8の画素)において、背景画像用のドットがカラー画像用のドットよりも下に(先に)形成される。そのため、境目の画素と他の画素において、背景画像用のドットとカラー画像用のドットの重なる順番を一定にでき、境目の画素の色味がずれてしまうことを防止できる。つまり、表刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、復路で画像を形成し、往路でヘッド41の位置を戻すとよい。
【0081】
また、図11Aのノズル#1及びノズル#8の中に番号を示している。なお、ノズル#1とノズル#8は同じ画素に割り当てられるとする。そして、ノズル内の番号は、復路に画像形成動作を実施し、往路にヘッド41の戻り動作を実施する場合に、所定の画素が対向するノズルの順番を示す。復路に画像を形成するため、同じ復路のパスにおいて、まず、搬送方向上流側の白の使用ノズル#8が所定の画素と対向してドットが形成され、次に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各不使用ノズル#8が順に所定の画素と対向する。その後、媒体が下流側に搬送され、次の復路のパスにおいて、まず、搬送方向下流側の白の不使用ノズル#1が所定の画素と対向し、次に、カラーの各使用ノズル#1が所定の画素と対向しドットが形成される。
【0082】
つまり、表刷り(第1モードに相当)・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、復路で画像を形成することで(移動方向の右側へ(第1の方向側へ)の移動時に画像を形成することで)、媒体の所定領域に対して、背景画像を形成するパスにおいて比較的に早く背景画像用のドットを形成し、カラー画像を形成するパスにおいて比較的に遅くカラー画像用のドットを形成することができる。その結果、背景画像の乾燥時間をより長くすることができる。逆に、往路時に画像を形成すると、媒体の所定領域は、カラーの不使用ノズル#8よりも後に白の使用ノズル#8と対向し、カラーの使用ノズル#1の方が白の不使用ノズル#1よりも先に対向するため、背景画像の乾燥時間が短くなる。このことからも、表刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、復路で画像を形成する方が好ましいといえる。
【0083】
図11Bは裏刷り(第2モードに相当)・白使用モードの印刷を示す。裏刷り・白使用モードでは、ホワイトノズル列Wのうちの搬送方向下流側半分のノズル#1〜#7を使用し、カラーノズル列(YMCK)のうちの搬送方向上流側半分のノズル#8〜#14を使用する。裏刷り・白使用モードでは、往路時に画像を形成することで(移動方向の左側へ(第2の方向側へ)の移動時に画像を形成することで)、図中の左の画素に示すように、白の使用ノズルとカラーの使用ノズルの境目の画素において(ノズル#7,#8の画素)、カラー画像用のドット(●)が背景画像用のドット(△)よりも先に(下に)形成される。一方、復路時に画像を形成することで、図中の右の画素に示すように、境目の画素において、背景画像用のドットがカラー画像用のドットよりも先に形成される。裏刷りモードではカラー画像用のドット(●)が背景画像用のドット(△)よりも先に形成されるべきであるため、裏刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、往路で画像を形成し、復路でヘッド41の位置を戻すとよい。その結果、画像の全域において背景画像用のドットとカラー画像用のドットの重ね順を一定にすることができ、色味を一定にすることができる。
【0084】
また、図11Bのノズル#1,#8内の番号は、往路に画像形成動作を実施し、復路にヘッド41の戻り動作を実施する場合に、所定の画素が対向するノズルの順番を示す。裏刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、往路で画像を形成することで、媒体の所定領域に対して、カラー画像を形成するパスにおいて比較的に早くカラー画像用のドットを形成し、背景画像を形成するパスにおいて比較的に遅く背景画像用のドットを形成することができる。その結果、カラー画像の乾燥時間をより長くすることができ、画像の滲みを抑制できる。そのため、裏刷り・白使用モードにおいて単方向印刷を実施する場合、往路で画像を形成する方が好ましい。
【0085】
また、前述の実施形態では、4色のカラーインク(YMCK)だけでカラー画像を印刷しているが、これに限らない。例えば、4色のカラーインクと共に白インクを用いてカラー画像を印刷するとよい。この場合、前述の図5に示す表刷り・白使用モードでは、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#7)を用いてカラー画像を印刷する。一方、前述の図6に示す裏刷り・白使用モードでは、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列Wの搬送方向上流側の半分のノズル(#8〜#14)を用いてカラー画像を印刷する。このように、カラー画像を印刷するカラーノズル列Coのノズルの搬送方向の位置とカラー画像を印刷するホワイトノズル列Wのノズルの搬送方向の位置とを揃える。そうすると、カラー画像を印刷するために、媒体の所定領域に対して同じパスでカラーインクと白インクが噴射される。このように、カラーインクに白インクを加えてカラー画像を印刷することで、高明度、且つ、高彩度の色を再現した画像を印刷することができる。
【0086】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、印刷方法の設定等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0087】
<インクと記録媒体について>
本実施形態では、インクと該インクを吸収するインク吸収性の有る媒体(インク吸収性記録媒体)を用いる。インク吸収性記録媒体としては、インク吸収性の有る基材からなる記録媒体や基材にインク受容層を設けた記録媒体が使用可能である。インク吸収性の有る基材としては、紙、布などが挙げられる。インクは吸収性媒体に吸収されるインクであればよいが、インク吸収性媒体への吸収性を確保するために蒸発性の溶剤を含むことが好ましい。また、溶剤として水を少なくとも含む「水系インク」が特に好ましい。インクを構成する他の成分としては、色材としての染料や顔料がある。また、インクジェットヘッドからの吐出安定性のために水溶性の有機溶剤をも含有していてもよいし、保湿剤、浸透促進剤、ph調整剤、防虫剤、紫外線吸収剤などを必要により含有していてもよい。このようなカラーインクとして、例えば、特開2008−81693、特開2005−105135、特開2003−292834に記載のインクを使用できる。
【0088】
記録媒体は、インク組成物の溶剤を吸収することでインク組成物の色材を固着するものである。例えば、紙、布などのインクを吸収する基材を用いた媒体でも良いし、インクを吸収する基材或いはインクを吸収しない基材にインクを吸収するインク受容層を設けたものでもよい。透明性の有る媒体を用いる場合は、例えば、特開2009−925、特開平9−99634、特開平9−208870に記載の記録媒体が使用できる。
【0089】
インク受容層としては、インクジェット記録方法用の記録媒体上に通常設けられる公知のインク受容層を用いることができる。公知のインク受容層としては、例えば、樹脂からなるインク受容層が知られており、インク受容層に用いられる樹脂の例としては、例えば、特開昭57−38185号、同62−184879号公報等に開示されているようなポリビニルピロリドンもしくはビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、特開昭60−168651号、同60−171143号、同61−134290号公報に開示されているようなポリビニルアルコールを主体とする樹脂組成物、特開昭60−234879号公報に開示されているようなビニルアルコールとオレフィン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体、特開昭61−74879号公報に開示されているようなポリエチレンオキサイドとイソシアネートとの架橋物、特開昭61−181679号公報に開示されているようなカルボキシメチルセルロースとポリエチレンオキサイドとの混合物、特開昭61−132377号公報に開示されているようなポリビニルアルコールにメタクリルアミドをグラフト化したポリマー、特開昭62−220383号公報に開示されているようなカルボキシル基を有するアクリル系ポリマー、特開平4−214382号公報等に開示されているようなポリビニルアセタール系ポリマー、特開平4−282282号、同4−285650号公報に開示されているような架橋性アクリル系ポリマー等種々のインク吸収性ポリマーを挙げることができる。
【0090】
また、公知のインク受容層としては、特開平4−282282号、同4−285650号公報等には架橋性ポリマーから構成されるポリマーマトリックスと吸収性ポリマーとを併用したインク受容層が開示されている。更に、アルミナ水和物(カチオン性アルミナ水和物)を用いたインク受容層も知られており、例えば、特開昭60−232990号、同60−245588号公報、特公平3−24906号公報、特開平6−199035号、同7−82694号公報等には、微細な擬ベーマイト形アルミナ水和物を水溶性バインダーと共に基材表面に塗工した記録媒体が開示されている。また、例えば特開平10−203006号公報には、一次粒子径が3nm〜30nmである主として気相法による合成シリカを使用するインク受容層が開示されている。更にまた、特開2001−328344号公報には、無機顔料及び高分子接着剤を含むインク受容層が開示されている。本発明においては、これらの各インク受容層を設けたフィルム基材を用いることが好ましい。
【0091】
本発明方法においては、背景画像用の白インク組成物として、インクジェット記録方法において通常使用されている任意の白色インク組成物を用いることができる。このような白色顔料としては、例えば、無機白色顔料や有機白色顔料、白色の中空ポリマー微粒子を挙げることができ、白色インク組成物としては、着色剤成分として中空ポリマー微粒子を含有する水系インク組成物を用いることが好ましい。
【0092】
無機白色顔料としては、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。特に酸化チタンは、隠蔽性、着色性及び分散粒径が好ましい白色顔料として知られている。
【0093】
有機白色顔料としては、特開平11−129613号に示される有機化合物塩や特開平11−140365号、特開2001−234093号に示されるアルキレンビスメラミン誘導体が挙げられる。上記白色顔料の具体的な商品としては、ShigenoxOWP、ShigenoxOWPL、ShigenoxFWP、ShigenoxFWG、ShigenoxUL、ShigenoxU(以上、ハッコールケミカル社製、何れも商品名)などが挙げられる。
【0094】
着色剤成分として含有させる中空ポリマー微粒子は、例えば、その外径が約0.1〜1μm、内径が約0.05〜0.8μmの微粒子であることができ、白色インク組成物の溶剤に不溶で、その他の成分、例えば、バインダー樹脂成分とは化学的に反応しないものであることが必要である。この中空ポリマー微粒子は、壁が液体を透過可能な合成重合体でつくられ、中空ポリマー微粒子中央部の空間はその壁を透過して液体の出入りが可能である。したがつて、この中空ポリマー微粒子中央部の空間はインク組成物の状態では溶媒によって満たされ、中空ポリマー微粒子の比重とインク組成物の比重が実質的に同一になり、中空ポリマー微粒子はインク組成物中に安定に分散されている。一方、このインク組成物を印字面に印字して乾燥すると、中空ポリマー微粒子中央部の空間は空気で置換されるため、樹脂と空間部で入射光が乱反射されて、実質的に白色を呈する。
【0095】
また、中空ポリマー微粒子は、前記のように、印刷前には微粒子内に液体を含有しているが、その微粒子内に入り込んでいた液体が印刷後に微粒子の璧を通過して拡散し、微粒子の微細気孔を空気で充満させるというタイプであるか、もしくは最初から内部に空気を含んだ完全密封タイプであることもできる。白色インク組成物に用いられる中空ポリマー微粒子はインク組成物中で沈殿しないことが望まれるため、インク組成物溶液の比重とほぼ同等の比重を有するものが好ましい。このため、必要に応じてグリセロールのような比重調整剤を用いてインク組成物溶液の比重を調節することが好ましい。
【0096】
上記の性質を満たす中空ポリマー微粒子市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)社から市販されているロペーグ(Ropaque)OP−62等を挙げることができる。これは、アクリル・スチレン共重合体からなる中空ポリマー微粒子を38重量%含んだ水分散液である。この微粒子の内径は約0.3μmで、外径は約0.5μmであり、内部には水が充満している。
【0097】
また、前記中空ポリマー微粒子は、公知の製造方法、例えば米国特許第4,089,800号明細書に開示されている方法により得ることもできる。この中空ポリマー微粒子は、実質的に有機重合体で作られており、熟可塑性を示す。中空ポリマー微粒子の製造に使用される熱可塑性樹脂としては、好ましくは、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーポネート、ポリスチレン、スチレン若しくは他のビニルモノマーの共重合体、ビニルアセテート、ビニルアルコール、塩化ビニル又はビニルブチラールのホモ重合体あるいは共重合体のようなビニルポリマー、ジエンのホモ重合体及び共重合体等を挙げることができる。特に好ましい熱可塑性重合体としては、2−へキシルアクリレートの共重合体、メチルメタアクリレートの共重合体のような共重合体、スチレンとアクリロニトリルのようなその他のビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0098】
本発明で用いる白色インク組成物中の中空ポリマー微粒子の含有量は、例えば、0.1〜20重量%とすることができる。中空ポリマー微粒子の含有量を0.1重量%以上にすると、充分な白色度を得ることができる。一方、20重量%以下にすると、インクジェット印刷用インク組成物に要求される粘度を確保するために必要なインクバインダー樹脂成分を充分な量で含有させることができ、その結果として、充分な印字密着性を確保することができる。
【0099】
本発明においては、前記の白色顔料を単独で用いてもよいし、併用してもよい。顔料の分散には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。
【0100】
本発明で用いる白色インク組成物は、白色着色剤成分の他に、インクジェット印刷用インク組成物に通常含有される種々の成分、例えば、樹脂成分、分散剤成分、溶媒成分(特に水)などを含有することができる。なお、本願明細書では溶媒と溶剤は同じ意味で用いる。また、中空ポリマー微粒子を白色着色剤として含有する白色インク組成物としては、例えば、特許第3562754号公報(特許文献1)又は特許第3639479号公報(特許文献2)に記載の組成物を用いることもできる。
【0101】
本発明で用いるカラー画像用の非白色インク組成物は、例えば、カラーインク組成物、黒色インク組成物、又は灰色インク組成物である。また、カラーインク組成物としては、例えば、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、あるいはライトシアンインク組成物、ライトマゼンタインク組成物、更には、レッドインク組成物、グリーンインク組成物、又はブルーインク組成物等を挙げることができる。非白色インク組成物は、前記の各種インク組成物を1種又は2種以上の組合せで用いることができる。
【0102】
非白色インク組成物としては、インクジェット記録方法において通常使用されている任意の非白色インク組成物を用いることができ、着色剤成分として染料又は顔料を含有する水系インク組成物を用いることが好ましい。特に、透明フィルム基材又はインク受容層に対して良好な特性(例えば、発色性や定着性)を示すインク組成物を用いることが好ましい。
【0103】
本発明で用いるインクと記録媒体が上述のものであれば、前述の実施形態のように先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、インクの乾燥時間を長く設けることができ、画像の滲みや混色を防止することができる。ただし、本発明で用いるインクや記録媒体は上述のものに限るものでは無い。先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、インク中の成分が記録媒体に固着する時間を設けるものであればよい。即ち、前述の実施形態により先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、画像の滲みや混色を防止するものであれば、他のインクや記録媒体を用いても良い。
【0104】
<上端・下端印刷について>
媒体の上端・下端印刷では通常印刷に比べて、媒体の搬送量が短くなることがある。白使用モードで単方向印刷を実施する場合、媒体の搬送時間とヘッド41の戻り時間の合計時間が、先に印刷する画像の乾燥時間に相当する。そのため、上端・下端印刷時に媒体の搬送量が短くなると、媒体の搬送時間が短くなり、先に印刷する画像の乾燥時間が短くなる。乾燥時間にばらつきが生じると、画像に濃度むらが生じる原因となる。そこで、上端・下端印刷時に媒体搬送量が短くなり、通常印刷時に比べて乾燥時間が短くなる場合、上端・下端印刷時には、例えば画像形成動作の後に休止時間を設けても良い。そうして、上端・下端印刷時の乾燥時間と通常印刷時の乾燥時間を一定にすることで、画像の濃度むらを抑制することができる。
【0105】
<背景画像について>
前述の実施形態では、白インクによって背景画像を印刷するとしているがこれに限らず、白以外の色インク(例えば、メタリック系のインク)によって背景画像を印刷してもよい。また、背景画像を白インクのみによって印刷するに限らず、白インクと他のカラーインクを混ぜて、白色の色味を調整した背景画像を印刷してもよい。また、4色インク(YMCK)に白インクを加えてカラー画像を印刷してもよい。この場合においても、2つの画像を重ねて印刷する場合には単方向印刷が設定されるようにするとよい。
【0106】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッド41を移動方向に移動しながら単票紙に画像を形成する動作と、ヘッドに対して単票紙を移動方向と交差する搬送方向に搬送する動作と、を繰り返すプリンターを例に挙げているが、これに限らない。例えば、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、(複数の)ヘッド41を有するヘッドユニット40を媒体搬送方向に移動しながら画像を形成する動作と、ヘッドユニット40を紙幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0107】
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示していたが、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンター(印刷装置)ではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
また、ノズルからの流体噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて圧力室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
また、ヘッド41から噴射するインクは、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型インクであってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 プリンター、10 コントローラー、
11 インターフェース部、12 CPU、
13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、
31 キャリッジ、40 ヘッドユニット、
41 ヘッド、50 検出器群、60 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、
(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び前記第1ノズル列に対し前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列と、
(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と媒体の相対位置を前記移動方向のうちの一方の方向に相対移動させる時にだけ前記ノズルから流体を噴射させる噴射動作と前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作とを繰り返す第1画像形成方法と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の双方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させる動作と前記移動動作とを繰り返す第2画像形成方法のうちの、何れか一方の方法を設定し、前記媒体に画像を形成させる制御部であって、
前記第1ノズル列の一部のノズル群による前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2ノズル列の一部のノズル群による前記第2の流体による背景画像の形成とを、前記媒体に重ねて行う場合であって、前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方が、他方よりも前記所定方向の他の方向側に位置し、前記媒体の所定領域に対して前記他方よりも先に画像形成を行う場合に、前記第1画像形成方法に設定する制御部と、
(D)を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置であって、
前記第1画像形成方法において、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向のうちの他方の方向に相対移動させる動作であり前記ノズルから流体を噴射させない1回の戻り動作に要する時間は、1回の前記移動動作に要する時間よりも長い、
流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記第1画像形成方法において、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向のうちの他方の方向に相対移動させる動作であり前記ノズルから流体を噴射させない戻り動作に要する時間は、
1回の前記噴射動作に要する時間以下であり、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の前記一の方向に前記ノズル群の前記所定方向の長さだけ相対移動させるために要する時間よりも長い、
流体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体噴射装置であって、
前記第1画像形成方法において、前記戻り動作に要する時間は、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を、前記所定方向の前記一の方向に、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列のうちの少なくとも一方のノズル列の前記所定方向の長さだけ、相対移動させるために要する時間よりも長い、
流体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の流体噴射装置であり、
前記第1画像形成方法において、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向のうちの他方の方向に相対移動させる動作であり前記ノズルから流体を噴射させない戻り動作と、前記移動動作とを、同時に実施しない、
流体噴射装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体噴射装置であり、
前記制御部は、前記背景画像は形成せずに前記主画像を前記媒体に形成する場合に、前記第2画像形成方法に設定する、
流体噴射装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の流体噴射装置であり、
前記第2ノズル列は前記第1ノズル列よりも前記移動方向のうちの第1の方向側に位置し、
前記制御部は、前記主画像と前記背景画像とを重ねて前記媒体に形成する場合に、前記媒体の所定領域に対して前記主画像よりも前記背景画像を先に形成する第1モードと、前記媒体の所定領域に対して前記背景画像よりも前記主画像を先に形成する第2モードのうちの何れか一方のモードを設定し、
前記第1モードを設定した場合には、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の前記第1の方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させ、
前記第2モードを設定した場合には、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の第2の方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させる、
流体噴射装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の流体噴射装置であり、
前記主画像の形成と前記背景画像の形成とを前記媒体に重ねて行う場合に、前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群と前記所定方向の位置が同じである前記第1ノズル列のノズルも使用して、前記背景画像を形成する、
流体噴射装置。
【請求項9】
第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列及び第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び前記第1ノズル列に対し前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列と媒体の相対位置を前記移動方向のうちの一方の方向に相対移動させる時にだけ前記ノズルから流体を噴射させる噴射動作と前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作とを繰り返す第1画像形成方法と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体の相対位置を前記移動方向の双方向に相対移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させる動作と前記移動動作とを繰り返す第2画像形成方法のうちの何れか一方の方法を設定し、設定した方法に応じて前記媒体に画像を形成する流体噴射方法であり、
前記第1ノズル列の一部のノズル群による前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2ノズル列の一部のノズル群による前記第2の流体による背景画像の形成とを、前記媒体に重ねて行う場合であって、前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方が、他方よりも前記所定方向の他の方向側に位置し、前記媒体の所定領域に対して前記他方よりも先に画像形成を行う場合に、前記第1画像形成方法に設定する、
ことを特徴とする流体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−143703(P2011−143703A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86399(P2010−86399)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】