説明

流体噴射装置、及び、流体噴射方法

【課題】乾燥時間のばらつきを抑制することができる流体噴射装置の提供。
【解決手段】第1の流体及び第2の流体により第1画像を形成し、乾燥時間を設けた後に、別の画像形成動作において、第1画像上に第2の流体により第2画像を形成する流体噴射装置であって、第1画像を形成するための第1ノズル及び第2ノズルは、第2画像を形成するための第2ノズルよりも、搬送方向の上流側に位置し、第1画像を形成するための第1ノズル及び第2ノズルよりも搬送方向の下流側に位置するノズルであり、第2画像を形成するための第2ノズルよりも搬送方向の上流側に位置するノズルであって、搬送方向の長さが所定の搬送量3dの整数倍の長さである領域に属するノズルからはインク滴が噴射されない流体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び、流体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の一つとして、媒体に対してインク(流体)を噴射するノズルが所定方向
に並んだノズル列を備えるインクジェットプリンターが挙げられる。インクジェットプリ
ンターの中には、ノズル列を所定方向と交差する移動方向に移動させながらノズルからイ
ンクを噴射させる動作と、媒体を所定方向に搬送する動作と、を繰り返すプリンターが知
られている。
【0003】
また、シアン、マゼンタ、イエローといったカラーインクの他に、白色インクを用いて
印刷を行う印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなプリンター
では、白インクによって下地処理を行うことで、媒体の地色に影響されずに、発色性の良
いカラー画像を印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−38063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
白インクによる下地処理として、例えば、媒体上に白インクの背景画像を印刷した後に
、その背景画像上にカラーインクでカラー画像を印刷する処理が挙げられる。また、同じ
白インクと呼ばれるインクであっても色が相違することがあるため、白インクとカラーイ
ンクを用いて所望の白色の背景画像を印刷する場合がある。このような下地処理を実施す
る際に、背景画像を印刷した後に、乾燥時間を設けてからカラー画像を印刷することで、
インクの滲みを防止することができる。ただし、背景画像の乾燥時間にばらつきが生じる
と、画像に濃度むらが発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、乾燥時間のばらつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)第1の流体を噴射する第1ノズルが所定
方向に並んだ第1ノズル列と、(B)第2の流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に
並んだ第2ノズル列と、(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を媒体に対して前
記所定方向と交差する移動方向に移動する移動機構と、(D)前記第1ノズル列及び前記
第2ノズル列に対して媒体を前記所定方向に搬送する搬送機構と、(E)前記移動機構に
よって前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記第1
ノズル及び前記第2ノズルから流体を噴射させる画像形成動作と、前記搬送機構によって
媒体を前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して前記所定方向に所定の搬送量を搬
送させる搬送動作と、を繰り返させる制御部であって、或る前記画像形成動作において、
前記第1の流体及び前記第2の流体により第1画像を形成し、乾燥時間を設けた後に、別
の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記第2の流体により第2画像を形成す
る制御部と、(F)を有する流体噴射装置であって、(G)前記第1画像を形成するため
の前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、前記第2画像を形成するための前記第2ノズル
よりも、前記所定方向の上流側に位置し、前記第1画像を形成するための前記第1ノズル
及び前記第2ノズルよりも前記所定方向の下流側に位置するノズルであり、前記第2画像
を形成するための前記第2ノズルよりも前記所定方向の上流側に位置するノズルであって
、前記所定方向の長さが前記所定の搬送量の整数倍の長さである領域に属するノズルから
は、インク滴が噴射されないこと、(H)を特徴とする流体噴射装置。である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターの斜視図であり、図2Bはプリンターの断面図である。
【図3】ヘッドの下面のノズル配列を示す図である。
【図4】背景画像の乾燥時間が短い印刷方法を示す図である。
【図5】乾燥パスを設ける比較例の印刷方法を説明する図である。
【図6】乾燥パスを設ける本実施形態の印刷方法を説明する図である。
【図7】背景画像(又はカラー画像)を形成するパス数が変動する印刷方法を示す図である。
【図8】更に乾燥時間を長くする印刷方法を説明する図である。
【図9】乾燥用ノズルがノズル列の中央部に位置しない場合の印刷方法を示す図である。
【図10】乾燥パスを設けずに3つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。
【図11】乾燥パスを設けて3つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。
【図12】乾燥パスを設けずに4つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。
【図13】乾燥パスを設けて4つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。
【図14】調色白指定用のウィンドウの一例を示す説明図である。
【図15】ラスターバッファーおよびヘッドバッファーの詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、(A)第1の流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、(
B)第2の流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列と、(C)前
記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を媒体に対して前記所定方向と交差する移動方向に
移動する移動機構と、(D)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して媒体を前記
所定方向に搬送する搬送機構と、(E)前記移動機構によって前記第1ノズル列及び前記
第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記第1ノズル及び前記第2ノズルから流
体を噴射させる画像形成動作と、前記搬送機構によって媒体を前記第1ノズル列及び前記
第2ノズル列に対して前記所定方向に所定の搬送量を搬送させる搬送動作と、を繰り返さ
せる制御部であって、或る前記画像形成動作において、前記第1の流体及び前記第2の流
体により第1画像を形成し、乾燥時間を設けた後に、別の前記画像形成動作において、前
記第1画像上に前記第2の流体により第2画像を形成する制御部と、(F)を有する流体
噴射装置であって、(G)前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノ
ズルは、前記第2画像を形成するための前記第2ノズルよりも、前記所定方向の上流側に
位置し、前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも前記所
定方向の下流側に位置するノズルであり、前記第2画像を形成するための前記第2ノズル
よりも前記所定方向の上流側に位置するノズルであって、前記所定方向の長さが前記所定
の搬送量の整数倍の長さである領域に属するノズルからは、インク滴が噴射されないこと
、(H)を特徴とする流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、第1画像の乾燥時間を一定にでき、例えば、流体噴
射装置が印刷装置であれば、画像の濃度むらを抑制できる。
【0011】
かかる流体噴射装置であって、前記媒体に形成される前記第1画像の乾燥性に応じて、
前記領域の前記所定方向の長さが変動すること。
このような流体噴射装置によれば、画像形成時間を短縮しつつ、画像の滲みを確実に防
止できる。
【0012】
かかる流体噴射装置であって、前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記
第2ノズルが属する領域の前記所定方向の長さ、及び、前記第2画像を形成するための前
記第2ノズルが属する領域の前記所定方向の長さは、前記所定の搬送量の整数倍の長さで
あること。
このような流体噴射装置によれば、各画像を形成する画像形成動作の回数を一定にでき
る。
【0013】
かかる流体噴射装置であって、前記第2画像を前記第2の流体及び前記第1の流体によ
り形成し、前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、前記第
2画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも、前記所定方向の上流
側に位置し、前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも前
記所定方向の下流側に位置するノズルであり、前記第2画像を形成するための前記第1ノ
ズル及び前記第2ノズルよりも前記所定方向の上流側に位置するノズルであって、前記所
定方向の長さが前記所定の搬送量の整数倍の長さである領域に属するノズルからは、イン
ク滴が噴射されないこと。
このような流体噴射装置によれば、画像の濃度むらを抑制でき、また、例えば、流体噴
射装置が印刷装置であれば、第2画像の色再現性を高めることができる。
【0014】
また、(A)第1の流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、(
B)第2の流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列と、(C)前
記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を媒体に対して前記所定方向と交差する移動方向に
移動する移動機構と、(D)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して媒体を前記
所定方向に搬送する搬送機構と、(E)前記移動機構によって前記第1ノズル列及び前記
第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記第1ノズル及び前記第2ノズルから流
体を噴射させる画像形成動作と、前記搬送機構によって媒体を前記第1ノズル列及び前記
第2ノズル列に対して前記所定方向に所定の搬送量を搬送させる搬送動作と、を繰り返さ
せる制御部であって、或る前記画像形成動作において、前記第1の流体により第1画像を
形成し、乾燥時間を設けた後に、別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記
第1の流体及び前記第2の流体により第2画像を形成する制御部と、(F)を有する流体
噴射装置であって、(G)前記第1画像を形成するための前記第1ノズルは、前記第2画
像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも、前記所定方向の上流側に
位置し、前記第1画像を形成するための前記第1ノズルよりも前記所定方向の下流側に位
置するノズルであり、前記第2画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズル
よりも前記所定方向の上流側に位置するノズルであって、前記所定方向の長さが前記所定
の搬送量の整数倍の長さである領域に属するノズルからは、インク滴が噴射されないこと
、(H)を特徴とする流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、第1画像の乾燥時間を一定にでき、例えば、流体噴
射装置が印刷装置であれば、画像の濃度むらを抑制できる。
【0015】
また、第1の流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、第2の流
体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列と、を有し、前記第1ノズ
ル列及び前記第2ノズル列を前記所定方向と交差する移動方向に移動させながら前記第1
ノズル及び前記第2ノズルから流体を噴射させる画像形成動作と、前記搬送機構によって
媒体を前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して前記所定方向に所定の搬送量を搬
送させる搬送動作と、を繰り返す流体噴射装置の流体噴射方法であって、或る前記画像形
成動作において、前記第1の流体及び前記第2の流体により第1画像を形成し、乾燥時間
を設けた後に、別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記第2の流体により
第2画像を形成するために、前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2
ノズルと、前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも前記
所定方向の下流側に位置する前記第2ノズルであって、前記第2画像を形成するための前
記第2ノズルと、からインク滴を噴射し、前記第1画像を形成するための前記第1ノズル
及び前記第2ノズルよりも前記所定方向の下流側に位置するノズルであり、前記第2画像
を形成するための前記第2ノズルよりも前記所定方向の上流側に位置するノズルであって
、前記所定方向の長さが前記所定の搬送量の整数倍の長さである領域に属するノズルから
インク滴を噴射しないこと、を特徴とする流体噴射方法である。
このような流体噴射方法によれば、第1画像の乾燥時間を一定にでき、例えば、流体噴
射装置が印刷装置であれば、画像の濃度むらを抑制できる。
【0016】
===印刷システムについて===
以下、流体噴射装置をインクジェットプリンターとし、また、インクジェットプリンタ
ーの中のシリアル式プリンター(以下、プリンター1)を例に挙げて実施形態を説明する

【0017】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2Aは、プリンター1の斜視図
であり、図2Bは、プリンター1の断面図である。外部装置であるコンピューター60か
ら印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー10により、各ユニット(搬送
ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御し、媒体S(用紙
やフィルムなど)に画像を形成する。また、プリンター1内の状況を検出器群50が監視
し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0018】
コントローラー10(制御部)は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットであ
る。インターフェース部11は、外部装置であるコンピューター60とプリンター1との
間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は、プリンター1全体の制御を
行うための演算処理装置である。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領
域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12は、メモリー13に格納されて
いるプログラムに従ったユニット制御回路14により各ユニットを制御する。
【0019】
搬送ユニット20(搬送機構)は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬
送方向(所定方向)に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものであり、給紙ローラー21
と、搬送ローラー22と、排紙ローラー23とを有する。給紙ローラー21を回転させ、
印刷すべき媒体Sを搬送ローラー22まで送る。コントローラー10は搬送ローラー22
を回転させて媒体Sを印刷開始位置に位置決めする。
キャリッジユニット30(移動機構)は、ヘッド41を搬送方向と交差する方向(以下
、移動方向という)に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0020】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを噴射するためのものであり、ヘッド41を有
する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には
、インク噴射部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入ったインク室(
不図示)が設けられている。
【0021】
図3は、ヘッド41の下面のノズル配列を示す図である。ヘッド41の下面には、18
0個のノズルが搬送方向に所定の間隔(ノズルピッチd)で並んだノズル列が5列形成さ
れている。図示するように、ブラックインクを噴射するブラックノズル列K・シアンイン
クを噴射するシアンノズル列C・マゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列M・イエロ
ーインクを噴射するイエローノズル列Y・白インクを噴射するホワイトノズル列Wが、移
動方向に順に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方
向の下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0022】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断
続的に噴射させて媒体上にドットを形成するドット形成処理と、媒体をヘッド41に対し
て搬送方向に搬送する搬送処理(搬送動作に相当)とを繰り返す。そうすることで、先の
ドット形成処理により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置にドットを形成す
ることができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41がイン
ク滴を噴射しながら移動方向に1回移動する動作(1回のドット形成処理・画像形成動作
に相当)を「パス」と呼ぶ。
【0023】
===2つの画像を重ねて印刷する方法===
<印刷物について>
2つの画像を重ねた印刷物として、白色の背景画像上に、4色のインク(YMCK)に
よるカラー画像を形成する印刷物を例に挙げて説明する。このような印刷物によれば、透
明フィルム上に画像を印刷する場合であっても、印刷物の反対側が透けてしまうことを防
止できる。また、発色性の良い画像を印刷することが出来る。
【0024】
ところで、白色の背景画像を白インクのみで形成しようとすると、その白インクの色に
よって背景画像の色が決まってしまう。しかし、同じ白インクと呼ばれるインクであって
も色が相違することがあり、白インクのみでは所望の白色の画像を印刷できない場合があ
る。
【0025】
そこで、本実施形態では、白色の背景画像のうちのカラー画像と重なる領域(以下、重
複白領域と呼ぶ)は白インクのみにより背景画像を印刷し、白色の背景画像のうちのカラ
ー画像と重ならない領域(以下、非重複白領域と呼ぶ)は、白インクの他に4色のカラー
インクYMCKを適宜使用して、所望の白色の背景画像を印刷する。そうすることで、白
色の背景画像が見える部分、即ち、非重複白領域、を所望の白色にすることができる。な
お、重複白領域は印刷面側から見えないため、白インクのみによって印刷する。そうする
ことで、インク消費量を削減できる。ただし、これに限らず、重複白領域に相当する背景
画像も、白インクとカラーインクを混ぜて印刷を行ってもよい。
【0026】
なお、本明細書において「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物
体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、いわゆる「白っぽい色」のように、社会
通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。以下の説明では、白インクに他色のインク
を混ぜて白色を調整することを「白調色」と呼び、白調色により生成された白色(調整さ
れた白色)を「調色白」と呼ぶ。
【0027】
つまり、2つの画像を重ねて印刷する場合、媒体上の同じ領域に対して、先のパスにて
ホワイトノズル列W(第1ノズル列に相当)および4色のインクのノズル列YMCK(第
2ノズル列に相当)により調色白の背景画像を印刷し、後のパスにて4色のインクのノズ
ル列YMCKにより背景画像上にカラー画像を印刷する。こうすることで、背景画像上に
カラー画像を印刷することができる。以下、4色のインクのノズル列YMCKを合わせて
「カラーノズル列Co」と呼ぶ。
【0028】
<乾燥パスを設けない印刷方法>
図4は、背景画像の乾燥時間が短い印刷方法を示す図である。図中では説明の簡略のた
め1つのノズル列に属するノズル数(#1〜#24)を減らして描いている。調色白の背
景画像を印刷するためのノズルを、図4の左図に示すように、ホワイトノズル列Wの中の
白丸(○)とカラーノズル列Co(=YMCK)の中の斜線の丸で示す。そして、カラー
画像を印刷するためのノズルを、カラーノズル列Coの中の黒丸(●)で示す。また、図
4の右図では、背景画像を印刷するノズル(○)とカラー画像を印刷するノズル(●)を
同じノズルで描き、各パスのインク噴射ノズルの位置関係を示す。なお、背景画像を印刷
するための白インクのノズル位置とカラーインクのノズル位置は同じであるため、背景画
像を印刷するためのノズルをホワイトノズル(○)で代表して描く。
【0029】
通常、媒体の上端部や下端部を印刷する場合、インク滴を噴射するノズル数を変動させ
たり、媒体の搬送量を変動させたりするが、図4では媒体の端部以外の印刷時である通常
印刷時(パスX〜パスX+9)の様子を示す。そのため、インク滴を噴射するノズルの数
および媒体の搬送量は一定である。
【0030】
媒体上の同じ領域に対して、背景画像を形成した後のパスでカラー画像を形成するため
に、ホワイトノズル列Wでは、搬送方向上流側の半分のノズル(#13〜#24)を、イ
ンク滴を噴射するノズル(以下、噴射ノズル)とし、搬送方向下流側の半分のノズル(#
1〜#12)を、インク滴を噴射しないノズル(以下、非噴射ノズル)とする。一方、カ
ラーノズル列Coでは、搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#12)を、カラー画像
を印刷するための噴射ノズルとし、搬送方向上流側の半分のノズル(#13〜#24)を
、背景画像を印刷するための噴射ノズルとする。
【0031】
このように各ノズル列Co,Wの噴射ノズルを設定することで、まず、媒体上の或る領
域はホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの上流側の噴射ノズル(#13〜#24
)と対向し、調色白の背景画像が印刷される。その後、媒体上の或る領域は、搬送動作に
よって下流側に搬送され、カラーノズル列Coの下流側の噴射ノズル(#1〜#12)と
対向し、背景画像上にカラー画像を印刷することができる。
【0032】
また、図4では、背景画像とカラー画像を重ねた印刷物をオーバーラップ印刷方式によ
り印刷する。オーバーラップ印刷とは、1つのラスターライン(移動方向に沿うドット列
)を複数のパス(即ち、複数のノズル)で形成する。そのため、各ノズルの特性の影響を
小さくでき、高画質な画像を印刷できる。背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成する1
ノズル列あたりの噴射ノズル数は12個であり、各画像をそれぞれ3回のパスで形成する
とした場合、1回の搬送動作における媒体の搬送量は、4個のノズルにより形成される画
像幅、即ち、ノズルピッチdの4倍の長さ「4d」となる。なお、図4に示す1マス(各
ノズルが納まっているマス目)の搬送方向の長さはノズルピッチ「d」に相当する。図4
では、1回の搬送動作を4dとしているため、あるパスのノズル位置と次のパスのノズル
位置は4マスずつずれている。
【0033】
このように、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの上流側の12個の噴射ノズ
ルとカラーノズル列Coの下流側の12個の噴射ノズルによって画像を形成する動作と、
媒体をノズルピッチdの4倍の長さ(4d)だけ搬送する動作と、を交互に繰り返すこと
で、先の3回のパスで背景画像を印刷し、後の3回のパスで背景画像上にカラー画像を印
刷することができる。
【0034】
図4の右図において、移動方向に並ぶ6個のノズルが1つのラスターラインを形成する
ノズルである。また、図中の太枠で示すように、1回の搬送動作ごとに4個のラスターラ
インの印刷が完成する。この図からも背景画像及びカラー画像が各3回のパスで完成する
ことが分かる。例えば、太枠内のノズルによって形成される4つのラスターラインでは、
先の3回の「パスX〜パスX+2」によって背景画像用のドットが形成され、後の3回の
「パスX+3〜パスX+5」によってカラー画像用のドットが形成される。
【0035】
ところで、図4ではノズル列に属する全てのノズル(#1〜#24)を噴射ノズルとし
(画像を形成するノズルとし)、カラー画像用の噴射ノズル(Coの#1〜#12)と背
景画像用の噴射ノズル(W,Coの#13〜#24)の間にインク滴を噴射しないノズル
を設けていない。そのため、媒体上の或る領域に対して、背景画像の印刷が終了すると、
その次のパスでカラー画像の印刷が開始する。図4右図の太枠内のノズルからも分かるよ
うに、背景画像の印刷が終了するパスX+2の次のパスX+3から、カラー画像の印刷が
開始する。そのため、背景画像の印刷が終了してからカラー画像を印刷するまでの時間、
即ち、背景画像の乾燥時間は、比較的に短く、1回の搬送動作に要する時間だけとなる。
【0036】
詳細は後述するが、ノズル列において、カラー画像用の噴射ノズルと背景画像用の噴射
ノズルとの間に、インク滴を噴射しないノズル(以下、乾燥用ノズル)を設けることで、
背景画像の印刷が終了してからカラー画像が印刷されるまでの間に、画像を形成しないパ
ス(以下、乾燥パス)を設けることができる。ただし、先に噴射する白インク及びカラー
インクの乾燥性が良かったり、媒体のインクの吸収性が良かったりする場合、背景画像は
乾燥し易いため、背景画像の乾燥時間を長くする必要がない。このような場合には、図4
に示すように、カラー画像用の噴射ノズルと背景画像用の噴射ノズルの間に乾燥用ノズル
を設けないとする。そうすることで、ノズル列に属するノズルを有効に利用することがで
きる。また、画像を形成しない乾燥パスを設けないため(言い換えれば画像を形成するノ
ズル数が多い為)、印刷時間を短縮することができる。
【0037】
<乾燥パスを設ける比較例の印刷方法>
先に噴射する白インク及びカラーインクの乾燥性が悪かったり、媒体のインクの吸収性
が悪かったりする場合、背景画像が乾燥し難い。この場合、図4に示す印刷方法のように
、背景画像の印刷が終了したパスの次のパスでカラー画像の印刷を開始すると、画像が滲
んでしまう。そこで、背景画像が乾燥し難い場合は、背景画像を印刷してからカラー画像
の印刷を開始するまでの間に、画像を形成しない「乾燥パス」を設けるとよい。以下、乾
燥パスを設ける比較例の印刷方法について説明する。
【0038】
図5は、乾燥パスを設ける比較例の印刷方法を説明する図である。図5では、1ノズル
列に属するノズル数を22個とし、調色白の背景画像を印刷するためのノズルを、ホワイ
トノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の9個のノズル(#14〜#22
)に設定し、カラー画像を印刷するためのノズルを、カラーノズル列Coの搬送方向下流
側の9個のノズル(#1〜#9)に設定する。そして、背景画像およびカラー画像をそれ
ぞれ印刷するパス数を3回とし、1回の搬送動作における媒体の搬送量を3個のノズルに
て形成される画像幅、即ち、ノズルピッチdの3倍の長さ「3d」とする。
【0039】
そして、カラー画像用(カラーノズル列Co)の噴射ノズル(#1〜#9)よりも搬送
方向上流側に位置するノズルであり、背景画像用(ホワイトノズル列W及びカラーノズル
列Co)の噴射ノズル(#14〜#22)よりも搬送方向下流側に位置するノズルである
4個のノズル(#10〜#13)を、インク滴を噴射しない「乾燥用ノズル(×)」とす
る。言い換えれば、1つのノズル列(#1〜#22)において、カラー画像用の噴射ノズ
ル(#1〜#9)と調色白の背景画像用の噴射ノズル(#14〜#22)の間のノズル(
#10〜#13)を乾燥用ノズルとする。そうすることで、背景画像の印刷が終了してか
らカラー画像が印刷されるまでの間に、画像を形成しない「乾燥パス」を設けることがで
きる。その結果、背景画像とカラー画像の滲みを防止できる。
【0040】
具体的に説明すると、媒体上の或る領域は、まず、搬送方向上流側のホワイトノズル列
W及びカラーノズル列Coの噴射ノズル(白丸・斜線丸)と対向し、背景画像が印刷され
る。次に、媒体上の或る領域は搬送動作によって下流側に搬送されて乾燥用ノズル(×)
と対向するため、背景画像上にインク滴は噴射されない。この間に背景画像を乾燥させる
ことができる。その後、媒体上の或る領域は搬送動作によって更に下流側に搬送されて、
搬送方向下流側のカラーノズル列Coの噴射ノズル(黒丸)と対向し、背景画像上にカラ
ー画像が印刷される。
【0041】
比較例の印刷方法では、搬送動作ごとに3個のラスターラインの印刷が完成し、図5の
右図の太枠で囲われたノズルが、搬送動作ごとに完成する3つのラスターラインを形成す
るノズルである。図5の右図において、移動方向に並ぶノズルが1つのラスターラインを
形成するノズルであり、白丸(○)が背景画像を印刷するノズルであり、黒丸(●)がカ
ラー画像を印刷するノズルである。太枠内のノズルによる3つのラスターラインの全てに
おいて、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの各3種類のノズル(3回のパス)
により背景画像用のドットが形成され、カラーノズル列Coの3種類のノズル(3回のパ
ス)によりカラー画像用のドットが形成される。
【0042】
しかし、図5の右図の太枠内において、搬送方向の最下流側のノズルで形成されるラス
ターラインでは、パスX〜パスX+2にて背景画像が印刷され、パスX+5〜パスX+7
にてカラー画像が印刷され、乾燥パスが2回となる。これに対して、太枠内の上流側のノ
ズルで形成される2つのラスターラインでは、パスX+1〜パスX+3にて背景画像が印
刷され、パスX+5〜パスX+7にてカラー画像が印刷され、乾燥パスが1回となる。こ
のように、比較例の印刷方法では、ラスターラインによって乾燥パスの回数が異なる。即
ち、比較例の印刷方法では、同じ画像の印刷中に、背景画像の乾燥時間にばらつきが生じ
てしまう。背景画像の乾燥時間にばらつきが生じると、カラー画像を印刷する際の背景画
像(白インク及びカラーインク)の乾き具合が異なるため、背景画像とカラー画像の滲み
具合が異なる。その結果、画像に濃度むらが発生してしまう。
【0043】
比較例の印刷方法では、1回の搬送動作における媒体の搬送量を、3個のノズルにて形
成される画像幅、即ち、ノズルピッチdの3倍の長さ「3d(3マス)」としているのに
対して、乾燥用ノズルを4個とし、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さをノズル
ピッチdの4倍の長さ「4d(4マス)」としているため、ラスターラインによって乾燥
パスの回数が異なってしまう。つまり、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(画
像を形成しないノズル列長さ)「4d」を、媒体の搬送量「3d」の非整数倍(4/3倍
)としているため、ラスターラインによって乾燥パスの回数が異なってしまう。
【0044】
図5では、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(4d)を媒体の搬送量(3d
)の非整数倍とし、更に、乾燥用ノズルの数(4個)を1回の搬送動作で媒体との位置関
係がずれるノズル数(3個)よりも多くしている。そのため、媒体上の或る領域に背景画
像が印刷された後、媒体上の或る領域は搬送動作によって下流側に搬送されて4個の乾燥
用ノズルと対向することになる。次の搬送動作によって媒体が3ノズル分(3d)だけ下
流側に搬送されると、4個の乾燥用ノズルのうちの下流側の3個のノズルと対向していた
媒体部分はカラー画像用のカラーノズル列Coの噴射ノズルと対向するが、4個の乾燥用
ノズルのうちの最上流側の1個のノズルと対向していた媒体部分は再び乾燥用ノズルと対
向することになる。その結果、あるラスターライン(下流側の3個の乾燥用ノズルと対向
していた媒体部分)では乾燥パスが1回となるのに対して、別のラスターライン(最上流
側の1個の乾燥用ノズルと対向していた媒体部分)では乾燥パスが2回となり、ラスター
ラインによって乾燥パスの回数にバラツキが生じてしまう。
【0045】
また、図示しないが、乾燥用ノズルの数を1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれる
ノズル数よりも少なくする場合(例えば、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さを
搬送量の1/3倍や2/3倍にする場合)にも、ラスターラインによって乾燥パスの回数
(背景画像の乾燥時間)にバラツキが生じてしまう。例えば、乾燥用ノズルの数を2個と
し、1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数を3個とする。この場合、背景
画像が印刷された媒体上の或る領域が搬送動作によって3ノズル分だけ下流側に搬送され
ると、媒体上の或る領域の上流側部分は2個の乾燥用ノズルと対向できるが、媒体上の或
る領域の下流部分は乾燥用ノズルと対向せずに、カラー画像用のカラーノズル列Coの噴
射ノズルと対向してしまう。そのため、同じ画像内において、乾燥パスが設けられて印刷
された部分と乾燥パスが設けられずに印刷された部分とが存在し、濃度むらが発生してし
まう。
【0046】
つまり、比較例の印刷方法では、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(又は乾
燥用ノズルの数)を、媒体の搬送量(又は1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノ
ズル数)の非整数倍としているため、背景画像の乾燥時間(乾燥パスの回数)にばらつき
が生じ、画像に濃度むらが発生してしまう。
そこで、本実施形態では、媒体上の或る領域に対して、背景画像の印刷が終了してから
カラー画像の印刷が開始するまでの時間(背景画像の乾燥時間、乾燥パスの回数)を一定
にすることを目的とする。
【0047】
<乾燥パスを設ける本実施形態の印刷方法>
図6は、乾燥パスを設ける本実施形態の印刷方法を説明する図である。図6では、1ノ
ズル列に属するノズル数を21個とし、調色白の背景画像を印刷するための噴射ノズルを
、ホワイトノズル列W(白丸)及びカラーノズル列Co(斜線の丸)の搬送方向上流側の
9個のノズル(#13〜#21)に設定し、カラー画像を印刷するための噴射ノズルを、
カラーノズル列Co(黒丸)の搬送方向下流側の9個のノズル(#1〜#9)に設定する
。そして、背景画像およびカラー画像をそれぞれ印刷するパス数を3回とし、1回の搬送
動作における媒体の搬送量を3個のノズルにて形成される画像幅、即ち、ノズルピッチd
の3倍の長さ「3d」とする。
【0048】
そして、背景画像の印刷が終了してからカラー画像が印刷されるまでの間に乾燥パスを
設けるために、カラー画像を印刷するためのカラーノズル列Coの噴射ノズル(#1〜#
9)よりも搬送方向上流側に位置するノズルであり、背景画像を印刷するためのホワイト
ノズル列W及びカラーノズル列Coの噴射ノズル(#13〜#21)よりも搬送方向下流
側に位置するノズルである3個のノズル(#10〜#12)を、インク滴を噴射しない「
乾燥用ノズル」とする。即ち、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さは、3ノズル
分であり、ノズルピッチdの3倍の長さ3d(3マス)である。即ち、本実施形態の印刷
方法では、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ3dは、1回の搬送動作における
媒体の搬送量3dの1倍(整数倍)となっている。言い換えると、乾燥用ノズルの数(3
個)が、1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数(3個)の整数倍(1倍)
となっている。
【0049】
本実施形態の印刷を具体的に説明すると、例えば、媒体上の或る領域(3つのラスター
ラインが形成される領域)は、搬送動作によって下流側に3ノズル分ずつ搬送されながら
、背景画像用の噴射ノズル(#13〜#21)とパスごとに3ノズルずつ対向し、3回の
パスで背景画像の印刷が完成する。そして、次の搬送動作によって媒体上の或る領域は下
流側に搬送されて3個の乾燥用ノズル(#10〜#12)と対向する。この間に背景画像
を乾燥させることができる。その後、搬送動作によって媒体上の或る領域は更に下流側に
搬送されて、カラー画像用の噴射ノズル(#1〜#9)とパスごとに3ノズルずつ対向し
、3回のパスでカラー画像の印刷が完成する。こうすることで、媒体上の或る領域では、
背景画像とカラー画像を印刷する間の乾燥パスを一定の1回にすることができる。即ち、
ラスターラインによって乾燥パスの回数にバラツキが生じてしまうことを防止できる。
【0050】
例えば、図6の右図の太枠内で移動方向に並ぶノズルは、背景画像用の3個の噴射ノズ
ル(○、WとCo)と1個の乾燥用ノズル(×)とカラー画像用の3個の噴射ノズル(●
、Co)から構成されている。このことから、太枠内のノズルにて形成されるラスターラ
インは、3回のパス(パスX〜パスX+2)で背景画像用のドットが形成され、1回の乾
燥パス(パスX+3)が設けられた後、3回のパス(パスX+4〜パスX+6)でカラー
画像用のドットが形成され、乾燥パスの回数が1回であることが分かる。また、太枠内の
ノズルに限らず、他の移動方向に並ぶノズルも、背景画像用の3個の噴射ノズル(○)と
1個の乾燥用ノズル(×)とカラー画像用の3個の噴射ノズル(●)から構成されている
。そのため、全てのラスターラインが、3回のパスで背景画像用のドットが形成され、1
回の乾燥パスが設けられた後、3回のパスでカラー画像用のドットが形成され、乾燥パス
の回数が一定(1回)であることが分かる。つまり、1つの画像の印刷中に、背景画像の
後の乾燥時間(乾燥パス数)を一定にすることが出来ている。
【0051】
このように本実施形態の印刷方法では、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ3
d(又は乾燥用ノズル数)を、媒体の搬送量3d(又は1回の搬送動作で媒体との位置関
係がずれるノズル数)の整数倍(図6では1倍)に設定することで、同じ画像内における
背景画像の乾燥時間(乾燥パスの回数)を一定にすることができ、濃度むらを抑制できる

【0052】
図7は、背景画像(又はカラー画像)を形成するパス数が変動する印刷方法を示す図で
ある。図7では、乾燥用ノズル(#11〜#13)を3個とし、1回の搬送動作における
媒体の搬送量をノズルピッチdの3倍とする。即ち、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方
向の長さ3dが、媒体の搬送量3dの整数倍(1倍)となっている。そのため、図中の移
動方向に並ぶノズルを見ると、背景画像用ノズル(○、W,Co)とカラー画像用ノズル
(●、Co)の間に乾燥用ノズル(×)が1個ずつ設けられており、全てのラスターライ
ンを形成する際の乾燥パスの回数を一定(1回)にすることが出来ている。
【0053】
ところで、図6では、背景画像(又はカラー画像)を形成する噴射ノズルが属する領域
の搬送方向の長さ「9d(9マス)」を、媒体の搬送量3d(3マス)の整数倍(3倍)
としている。言い換えれば、画像(背景画像又はカラー画像)を形成する1ノズル列あた
りの噴射ノズル数(9個)を、1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数(3
個)の整数倍(3倍)としている。そのため、同じ画像内において、背景画像(又はカラ
ー画像)を印刷するパス数(3回)を一定にすることが出来ている。
【0054】
これに対して、図7では、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流
側の10個の噴射ノズル(#14〜#23)によって背景画像を印刷し、カラーノズル列
Coの搬送方向下流側の10個の噴射ノズル(#1〜#10)によってカラー画像を印刷
する。即ち、画像(背景画像又はカラー画像)を形成する噴射ノズルが属する領域の搬送
方向の長さ「10d(10マス)」を、媒体の搬送量3d(3マス)の非整数倍(10/
3倍)としている。
【0055】
その結果、図7に示すように、ラスターラインによって、背景画像又はカラー画像を形
成するパス数が3回になったり4回になったりしてしまう。例えば、図7に示すラスター
ラインL1を形成するノズル群(移動方向に並ぶノズル)は3つの背景画像用ノズル(○
)と3つのカラー画像用ノズル(●)から構成され、背景画像及びカラー画像が共に3回
ずつのパスで形成される。これに対して、ラスターラインL2を形成するノズル群は3つ
の背景画像用ノズル(○)と4つのカラー画像用ノズル(●)から構成され、背景画像は
3回のパスで形成されるのに対して、カラー画像は4回のパスで形成される。即ち、カラ
ー画像を形成するパス数が異なっている。
【0056】
例えば、3つのラスターラインが形成される媒体上の或る領域が、搬送動作によって下
流側に3ノズル分ずつ搬送されながら、3回のパスに亘って背景画像用の噴射ノズル(○
、W,Co)と対向する。ただし、その次の搬送動作によって、媒体上の或る領域の下流
側部分は乾燥用ノズル(×)と対向するが、媒体上の或る領域の上流側部分は再び背景画
像用の噴射ノズル(○)と対向してしまう。即ち、媒体上の或る領域の下流側部分は3回
のパスで背景画像が印刷されるのに対して、媒体上の或る領域の上流側部分は4回のパス
で背景画像が印刷されてしまう。このように、画像を形成する噴射ノズルが属する領域の
搬送方向の長さを、媒体の搬送量の非整数倍にすると、ラスターラインによって、各画像
(背景画像又はカラー画像)を印刷するパス数にばらつきが生じてしまう。
【0057】
ラスターラインによって画像を印刷するパス数にばらつきが生じると、印刷データを作
成する際に、ラスターラインを構成するドットをパス(ノズル)に割り当てる処理が複雑
になってしまう。
また、仮に、図7のラスターラインL2を形成するノズル群において、カラー画像を形
成する4個のノズルのうちのパスX+5のノズルからインク滴を噴射しないとする。そう
すると、乾燥パス(パスX+4,パスX+5)が2回となり、他のラスターラインを形成
する際の乾燥パス数(1回)と異なってしまう。その結果、画像に濃度むらが生じてしま
う。
また、乾燥パスの回数が変動しないように、例えば、図7のラスターラインL2を形成
するノズル群において、パスX+8のノズルからインク滴を噴射しないとする。そうする
と、上端印刷や下端印刷でないにも関わらず、噴射ノズル数が変動し、印刷制御処理が複
雑になってしまう。
【0058】
そのため、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さに限らず、背景画像又はカラー
画像をそれぞれ形成する噴射ノズルが属する領域の搬送方向の長さも、媒体の搬送量の整
数倍にすることが好ましい。そうすることで、各画像を形成するパス数を一定にできる。
【0059】
図8は、乾燥時間を更に長くする印刷方法を説明する図である。図8では、背景画像を
印刷するためにホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の9個のノ
ズルを噴射ノズル(#16〜#24)とし、カラー画像を印刷するためにカラーノズル列
Coの搬送方向下流側の9個のノズルを噴射ノズル(#1〜#9)とする。そして、背景
画像およびカラー画像をそれぞれ印刷するパス数を3回とし、1回の搬送動作における媒
体の搬送量をノズルピッチdの3倍の長さ3dとする。
【0060】
そして、図6に示す印刷方法よりも背景画像の乾燥時間を長くするために、図8に示す
印刷方法では、背景画像用の9個の噴射ノズル(#16〜#24)とカラー画像用の9個
の噴射ノズル(#1〜#9)の間に、6個の乾燥用ノズル(#10〜#15)を設ける。
即ち、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ6d(又は乾燥用ノズル数=6個)を
、媒体の搬送量3d(又は1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数=3個)
の2倍に設定する。
【0061】
そうすると、図8の右図の太枠内で移動方向に並ぶノズルにて示されるように、背景画
像用の3個の噴射ノズル(○)とカラー画像用の3個の噴射ノズル(●)の間に2個の乾
燥用ノズル(×)が設けられ、乾燥パスが2回となる。ゆえに、図8の印刷方法では、乾
燥パス数が1回である図6の印刷方法に比べて、乾燥時間を2倍にすることができ、背景
画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0062】
複数の画像を重ねて印刷する場合、先に噴射するインクの乾燥性や媒体のインクの吸収
性などによって、背景画像を乾燥させるために必要な時間が異なってくる。そのため、イ
ンクや媒体の特性(即ち、媒体に形成される画像の乾燥性)に応じて乾燥用ノズルの数を
変動させ、例えば、背景画像の乾燥時間を長くしたい場合には乾燥用ノズルの数を増やし
、乾燥パスの回数を増やすとよい。言い換えれば、インクや媒体の特性に応じて、乾燥用
ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(図8では6d)と媒体の搬送量(3d)との比率
を変更するとよい。
【0063】
このように、乾燥用ノズルの数を増やすことで、背景画像の乾燥時間を長くし、画像の
滲みを確実に防止できる。ただし、ノズル列に属するノズル数は決まっているので(図3
では180個)、乾燥用ノズルの数を増やし過ぎると、画像を形成するための噴射ノズル
の数が少なくなり、印刷時間が長くなってしまう。逆に言えば、画像を形成するための噴
射ノズルの数を確保するために、ノズル列に属するノズル数を増やさなければならない。
【0064】
図9は、乾燥用ノズルがノズル列の中央部に位置しない場合の印刷方法を示す図である
。ここまで(図6,図8)、背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成するための噴射ノズ
ル数を等しくし、背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成するパス数を等しくしている。
そのため、背景画像用の噴射ノズルとカラー画像用の噴射ノズルとの間に設けられる乾燥
用ノズルは、ノズル列の中央部に位置している。例えば、図6では、1ノズル列を構成す
る21個のノズルのうちの10番目から12番目に乾燥用ノズルが位置する。しかし、こ
れに限らず、背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成するパス数を異ならせ、そのために
、背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成するための噴射ノズルの数を異ならせてもよい

【0065】
例えば、図9では、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の6
個の背景画像用噴射ノズル(#16〜#21)とカラーノズル列Coの搬送方向下流側の
12個のカラー画像用噴射ノズル(#1〜#12)との間に、3個の乾燥用ノズル(#1
3〜#15)を設ける。そうすると、背景画像は2回のパスで形成され、カラー画像は4
回のパスで形成され、その間に、1回の乾燥パスが設けられる。この場合、ノズル列の中
央部よりも搬送方向の上流側に乾燥用ノズルが位置する。なお、各画像を形成する噴射ノ
ズルの数が異なっても、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(3d)を、媒体の
搬送量(3d)の整数倍(1倍)に設定することで、背景画像の乾燥時間を一定にするこ
とができ、画像の濃度むらを抑制できる。
【0066】
===3つの画像を重ねて印刷する方法===
図10は、乾燥パスを設けずに3つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。異な
るパスで形成した3つの画像を重ねて印刷する印刷物として、例えば、白インク及びカラ
ーインクによる調色白の背景画像上にカラー画像を印刷し、最後に、画像全面にクリアイ
ンクを噴射する印刷物が挙げられる。なお、図3に示すヘッド41では、4色インクのノ
ズル列YMCK(=カラーノズル列Co)とホワイトノズル列Wだけしか形成されていな
いが、図10に示すヘッド41ではクリアインクノズル列Clも形成されている。
【0067】
図10では、1つのノズル列に属するノズル数を24個とし、3つの各画像を形成する
噴射ノズル数を1ノズル列あたり8個ずつとする。また、各画像を形成するパス数を2回
ずつとするため、1回の搬送動作における媒体の搬送量をノズルピッチdの4倍の長さ「
4d」とする。そして、最初に印刷する背景画像用の噴射ノズルをホワイトノズル列W及
びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の8個のノズル「#17〜#24」とし、次に印
刷するカラー画像用の噴射ノズルをカラーノズル列Coの中央部の8個のノズル「#9〜
#16」とし、最後に印刷するクリアインク画像用の噴射ノズルをクリアインクノズル列
Clの搬送方向下流側の8個のノズル「#1〜#8」とする。
【0068】
こうすることで、先の2回のパスで背景画像が印刷され、次の2回のパスでカラー画像
が印刷され、最後の2回のパスでクリア画像が印刷される。なお、図10では、各画像を
形成するための噴射ノズルの間に「乾燥用ノズル」を設けていないため、各画像の印刷間
に乾燥パスは設けられていない。先に吐出するインクの乾燥性が良かったり、媒体の吸収
性が良かったりして、背景画像及びカラー画像の乾燥時間が短くても良い場合には、図1
0に示す印刷方法を実施するとよい。
【0069】
図11は、乾燥パスを設けて3つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。図11
では、1ノズル列に属するノズル数を24個とし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル
列Coの搬送方向上流側の4個のノズル(#21〜#24)を背景画像用の噴射ノズルと
し、それよりも下流側のカラーノズル列Coの4個のノズル(#9〜#12)をカラー画
像用の噴射ノズルとし、クリアインクノズル列Clの最下流側の4個のノズル(#1〜#
4)をクリアインク画像用の噴射ノズルとする。各画像を形成するパス数を1回ずつとし
、1回の搬送動作における媒体の搬送量をノズルピッチdの4倍の長さ「4d」とする。
【0070】
ここでは、背景画像の方がカラー画像よりも乾燥し難いとする。そのため、背景画像の
乾燥時間をカラー画像の乾燥時間よりも長く設定したいとする。言い換えれば、媒体上の
或る領域に対して、背景画像の印刷が終了してからカラー画像が印刷されるまでの乾燥パ
スの回数を、カラー画像の印刷が終了してからクリアインク画像が印刷されるまでの乾燥
パスの回数よりも多くしたいとする。
【0071】
この場合、背景画像用の噴射ノズル(白丸と斜線の丸)とカラー画像用の噴射ノズル(
黒丸)の間の乾燥用ノズルの数「8個(=8マス)」を、搬送量4dに相当するノズル数
「4個(=4マス)」の「2倍」とし、カラー画像用の噴射ノズル(黒丸)とクリア画像
用の噴射ノズル(三角)の間の乾燥用ノズルの数「4個(=4マス)」を、搬送量に相当
するノズル数「4個」の「1倍」にするとよい。即ち、背景画像用の噴射ノズルとカラー
画像用の噴射ノズルの間の乾燥用ノズルの数を、カラー画像用の噴射ノズルとクリアイン
ク画像用の噴射ノズルの間の乾燥用ノズルの数よりも多くする。
【0072】
そうすることで、媒体上の或る領域は、背景画像の印刷後の2回のパスにて乾燥用ノズ
ルと対向し、カラー画像の印刷後の1回のパスにて乾燥用ノズルと対向し、背景画像の印
刷後の乾燥パス数「2回」を、カラー画像の印刷後の乾燥パス数「1回」よりも多くでき
る。このことは、図11の右図の太枠内において移動方向に並ぶノズル群が、背景画像用
の1個の噴射ノズル(○、W,Co)と、2個の乾燥用ノズル(×)と、カラー画像用の
1個の噴射ノズル(●、Co)と、1個の乾燥用ノズル(×)と、クリアインク画像用の
1個の噴射ノズル(△、Cl)から構成されていることからも分かる。
【0073】
図5の比較例の印刷方法のように同じ画像(図5では背景画像)を印刷した後の乾燥時
間(乾燥パス数)にばらつきが生じると、画像に濃度むらが発生してしまう。しかし、3
つ以上の画像を重ねて印刷する場合に、或る画像(例えば背景画像)を印刷した後の乾燥
時間と、別の画像(例えばカラー画像)を印刷した後の乾燥時間を、各画像の乾燥性に応
じて異ならせたとしても、画像に濃度むらは発生しない。また、各画像の乾燥性に応じて
乾燥時間を変動させることで、乾燥性の悪い画像に合わせて乾燥時間を長くする必要が無
く、印刷時間を短縮でき、また、乾燥性の良い画像に合わせて乾燥時間を短くする必要が
なく、画像の滲みを確実に防止することができる。
【0074】
===4つの画像を重ねて印刷する方法===
図12は、乾燥パスを設けずに4つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。異な
るパスで形成した4つの画像を重ねて印刷する印刷物として、例えば、白インク及びカラ
ーインク(YMCK)による調色白の背景画像上に3色のカラーインク(YMC)による
3色カラー画像を印刷し、その上に、ブラックインク(K)によるテキスト画像を印刷し
、最後に、画像全面にクリアインクを噴射する印刷物が挙げられる。
【0075】
図12では、1つのノズル列に属するノズル数を24個とし、4つの各画像を形成する
噴射ノズル数を1ノズル列あたり6個ずつとする。また、各画像を形成するパス数を2回
ずつとするため、1回の搬送動作における媒体の搬送量をノズルピッチdの3倍の長さ「
3d」とする。そして、最初に印刷する背景画像用の噴射ノズルをホワイトノズル列W及
びカラーノズル列Co(=YMCK)の搬送方向上流側の6個のノズル「#19〜#24
」とし、次に印刷する3色カラー画像用の噴射ノズルを3色のノズル列(YMC)の6個
のノズル「#13〜#18」とし、3番目に印刷するテキスト画像用の噴射ノズルをブラ
ックノズル列Kの6個のノズル「#7〜#12」とし、最後に印刷するクリアインク画像
用の噴射ノズルをクリアインクノズル列Clの6個のノズル「#1〜#6」とする。この
ように設定することで、媒体上の或る領域に対して、先の2回のパスで背景画像が印刷さ
れ、次の2回のパスで3色カラー画像が印刷され、次の2回のパスでテキスト画像が印刷
され、最後の2回のパスでクリア画像が印刷される。
【0076】
図13は、乾燥パスを設けて4つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。図13
では、1つのノズル列に属するノズル数を24個とし、1回の搬送動作における媒体の搬
送量を「3d」とし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Co(=YMCK)の各3
個のノズル「#22〜#24」と、3色ノズル列(YMC)の3個のノズル「#13〜#
15」と、ブラックノズル列Kの3個のノズル「#10〜#12」と、クリアインクノズ
ル列Clの3個のノズル「#1〜#3」と、を噴射ノズルとする。
【0077】
ここでは、背景画像及びテキスト画像の乾燥性は悪く、カラー画像の乾燥性は良いとす
る。そこで、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Co(YMCK)の背景画像用の噴
射ノズルと3色ノズル列(YMC)の3色カラー画像用の噴射ノズルとの間、及び、ブラ
ックノズル列Kのテキスト画像用の噴射ノズルとクリアインクノズル列Clのクリアイン
ク画像用の噴射ノズルとの間には、それぞれ6個の乾燥用ノズルを設けるとする。
【0078】
そして、3色カラー画像用の噴射ノズルとテキスト画像用の噴射ノズルとの間には、乾
燥用ノズルを設けないとする。即ち、3色カラー画像用の噴射ノズル(●)のうちの最下
流側のノズルと、テキスト画像用の噴射ノズル(■)のうちの最上流側のノズルと、の間
隔をノズルピッチとしている。そうすることで、媒体上の或る領域に対して、背景画像の
印刷後、及び、テキスト画像の印刷後に、2回の乾燥用パスが設けられ、3色カラー画像
の印刷後には乾燥用パスが設けられずにテキスト画像が印刷される。なお、図13におい
ても、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(6d)を、媒体の搬送量(3d)の
整数倍(2倍)としているため、乾燥用パスの数を一定にすることができ、画像の濃度む
らを抑制できている。
【0079】
このように、(3つ以上の)画像を重ねて印刷する場合に、各画像の乾燥性に応じて、
或る画像(例えば背景画像,テキスト画像)を印刷した後には乾燥パスを設けるが、別の
画像(例えばカラー画像)を印刷した後には乾燥パスを設けなくともよい。そうすること
で、印刷時間を出来る限り短縮でき、また、画像の滲みを確実に防止することができる。
【0080】
===調色白の背景画像について===
ここまで、白インクとカラーインク(YMCK)による調色白の背景画像上にカラーイ
ンクによるカラー画像を印刷する際に、背景画像用の噴射ノズルとカラー画像用の噴射ノ
ズルの間に乾燥用ノズルを設けることについて説明した。次に、白インクにカラーインク
を混ぜて、所望の白色を印刷するための調色白の指定処理、及び、調色白の背景画像を印
刷するための印刷データの作成処理について説明する。以下の処理は、プリンター1に外
部接続されたコンピューター60にインストールされたプリンタードライバーによって実
施されるとする。
【0081】
<調色白の指定処理について>
図14は、調色白指定用のウィンドウの一例を示す説明図である。プリンタードライバ
ーは、各種アプリケーションプログラムから調色白の(背景)画像を含む画像データを受
信すると、図14に示す調色白指定用のウィンドウW1をユーザーに対して表示する。調
色白指定用のウィンドウW1は、サンプル画像表示エリアSaと、2つのスライダーバー
Sl1,Sl2と、ab平面表示エリアPlと、印刷順指定欄Se1と、値入力ボックス
Bo1と、測定ボタン(Measurement)B1と、OKボタンB2と、が含まれ
ている。
【0082】
図14に示した調色白指定用のウィンドウW1において、サンプル画像表示エリアSa
は、指定された調色白のサンプル画像を表示するための領域である。サンプル画像表示エ
リアSaは、左右に2分割されており、左側が白色背景(White Backing)
における調色白を示す領域(白色背景エリア)であり、右側が黒色背景(Black B
acking)における調色白を示す領域(黒色背景エリア)である。なお、サンプル画
像表示エリアSaの最外周領域は、背景色(白色または黒色)を示す領域(背景色領域)
であり、背景色領域の内側の領域が調色白を示す「白画像領域」である(即ち、調色白の
背景画像を印刷した時の色を示す)。また、サンプル画像表示エリアSaの中央付近には
カラー画像(図中の「A」の画像)が表示されている。
【0083】
ウィンドウW1において値入力ボックスBo1は、L***表色系における表色値(
*値(以下、単に「L値」とも表す)、a*値(以下、単に「a値」とも表す)、b*
(以下、単に「b値」とも表す))およびT値を入力することによって「調色白」を指定
するための部分である。L値は、調色白の明るさを示す値であり、調色白の画像を印刷す
る際の黒インク(K)の量に相関する。a値およびb値は、調色白の赤−緑軸および黄−
青軸に沿った色度を表す値であり、調色白の画像を印刷する際のカラーインク(YMC)
の量に相関する。T値は、濃度を示す値であり、調色白の画像を印刷する際の単位面積あ
たりのインク量に相関する。すなわち、T値は、背景色の透過度に相関する。なお、スラ
イダーバーSl1,Sl2およびab平面表示エリアPlによっても、Lab値およびT
値に対応した調色白を指定できる。
【0084】
ウィンドウW1の印刷順指定欄Se1は、各種アプリケーションプログラムにより設定
された印刷順の指定を示す部分である。なお、説明の簡略のため、2つの画像を重ねて印
刷する場合の印刷順を指定する指定欄を例に挙げる。また、ここまで、白インク及びカラ
ーインク(YMCK)によって調色白の背景画像を印刷し、その上にカラーインクによっ
てカラー画像を印刷する印刷物(所謂、表刷り印刷、図中の「W−C Print」)を
例に挙げているがこれに限らない。例えば、透明フィルムなどの媒体上に、カラー画像を
印刷し、その上に背景画像を印刷する印刷物(所謂、裏刷り印刷、図中の「C−W Pr
int」)であって、媒体の印刷面とは反対側から画像を見る印刷物であってもよい。す
なわち、印刷順指定欄Se1では、調色白の画像を先に印刷するのか、それともカラー画
像を先に印刷するのか、が示される。
【0085】
ユーザーが値入力ボックスBo1に値を入力すると、サンプル画像表示エリアSaの色
が入力値により特定される色(調色白)に変更される。例えば、ユーザーが、a値やb値
を変更するとサンプル画像表示エリアSaの白画像領域の色(調色白)の色味が変更され
、L値を変更すると白画像領域の色の明るさが変更される。なお、T値を変更した場合に
は背景色の透過度が変更されるため、サンプル画像表示エリアSaの黒色背景エリアにお
ける白画像領域の色の明るさが変更されるが、白色背景エリアにおける白画像領域の色は
変更されない。そのため、T値(濃度値)の変化に応じた色の変化を、サンプル画像表示
エリアSaの黒色背景エリアと白色背景エリアとを対比することで容易に確認することが
でき、ユーザーは調色白をより正確にかつより容易に指定することができる。そして、サ
ンプル画像表示エリアSaの白画像領域がユーザーの所望の白色と一致した時に、ユーザ
ーによってOKボタンが操作される。
【0086】
こうして、プリンタードライバーは、ユーザーが所望する調色白画像の色に関する値(
Lab値およびT値)を取得することができる。なお、ユーザーが指定した値(Lab値
やT値)に基づき、実際に調色白の画像を印刷し、印刷画像を測色(Measureme
nt)してもよい。この測色結果に基づいて、ユーザーは、調色白画像の色に関する値(
Lab値およびT値)をより正確にかつより容易に調整することができる。
【0087】
<印刷データの作成処理について>
次に、プリンタードライバーは、調色白画像に関して、色変換処理と、インク色分版処
理と、ハーフトーン処理を実行する。まず、プリンタードライバーは、調色白指定処理に
より設定された「Lab値」を「YMCK値」に色変換する。色変換は、調色白画像用ル
ックアップテーブルLUTw1(不図示)を参照して実行される。調色白画像用ルックア
ップテーブルLUTw1には、予め設定されたLab値とYMCK値との対応関係が規定
されている。なお、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw1において、YMCKの
各階調値は0以上100以下の範囲の値(比較的に淡い値)として規定されている。
【0088】
次にプリンタードライバーは、調色白画像のLab値から色変換した「YMCK値」と
調色白指定処理により設定された「T値」との組み合わせを、インクの色別の階調値に変
換する「インク色分版処理」を行う。本実施形態のプリンター1は、シアンC、マゼンタ
M、イエローYと、ブラックKと、ホワイトW、の合計5色のインクが印刷に使用可能で
ある。従って、インク色分版処理では、YMCK値およびT値の組み合わせが、5つのイ
ンク色(YMCKW)のそれぞれの階調値に変換される。
【0089】
インク色分版処理も、別の調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2(不図示)を
参照して実行される。調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2には、予め設定され
たYMCK値およびT値の組み合わせと、各インク(YMCKW)の階調値と、の対応関
係が規定されている。なお、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2において、各
インク(YMCKW)の階調値は、0以上255以下の範囲の値として(256階調値で
)規定されている。
【0090】
次にプリンタードライバーは、高階調のデータ(256階調データ)をプリンターが表
現可能なドットのON・OFFデータ(以下、ドットデータ)に変換するハーフトーン処
理を実行する。ハーフトーン処理方法として、例えば、プリンタードライバーは、1画素
のインク色別階調値(高階調データ)を取り出し、インク色毎にディザパターンを参照し
て、低階調のデータ(ドットデータ)に変換する。
【0091】
同様にして、プリンタードライバーは、カラー画像(YMCK画像)に対しても、イン
ク色分版処理と、ハーフトーン処理を実行する。プリンタードライバーは、カラー画像用
ルックアップテーブル(不図示)を参照し、カラー画像データを、プリンター1で使用可
能なインク色(YMCK)のそれぞれの階調値に変換する。プリンタードライバーがアプ
リケーションプログラムから受信したカラー画像データが例えばRGBデータであれば、
プリンタードライバーは、インク色分版処理によりYMCKデータに変換する。そして、
プリンタードライバーは、カラー画像用のYMCKデータに対してハーフトーン処理を実
行し、高階調データをドットデータに変換する。
【0092】
以上の処理により、プリンタードライバーは、調色白の(背景)画像を印刷するための
ドットデータ(YMCKW)と、カラー画像を印刷するためのドットデータ(YMCK)
を取得する。こうして取得したドットデータを、プリンタードライバーは、他のコマンド
データ(インク種別や印刷順など)と共に、プリンター1に送信する。
【0093】
<プリンター1の処理について>
図15は、ラスターバッファーおよびヘッドバッファーの詳細構成を示す説明図である
。本実施形態のプリンター1はラスターバッファーを有している。コントローラー10は
、プリンター1がプリンタードライバーから受信したドットデータの一部(例えば1パス
分のデータ)を、ラスターバッファーに格納する。また、ラスターバッファーは、カラー
画像用ラスターバッファー132cと、白画像用(調色白画像用)ラスターバッファー1
32wの2つの領域を含んでいる。なお、図15の上段にはカラー画像用のラスターバッ
ファー132cを示しており、中段には白画像用(調色白画像用)のラスターバッファー
132wを示している。また、ヘッドユニット40は、ヘッドバッファーを有している。
ヘッドバッファーは上流用ヘッドバッファー142uと下流用ヘッドバッファー142l
を含んでいる。
【0094】
コントローラー10は、カラー画像に関するドットデータは、カラー画像用のラスター
バッファー132cに格納し、白画像(調色白画像・背景画像)に関するドットデータは
、白画像用のラスターバッファー132wに格納する。また、図15に示すように、ラス
ターバッファーは、インク別(YMCKW)に領域が割り当てられている。そのため、コ
ントローラー10は、受信したドットデータの一部を、インク別に、対応するラスターバ
ッファーへ格納する。なお、ここでは、ラスターバッファーの各領域のX方向(ヘッド4
1の移動方向に相当)のサイズは画像幅(ヘッド41の移動距離)のサイズとなっており
、各領域のY方向(搬送方向に相当)のサイズはノズル列長さの2分の1以上のサイズと
なっている。
【0095】
図15の下段にはヘッドバッファーを示している。図15に示すように、ヘッドバッフ
ァーは、ヘッド41が有するノズル列ごと(YMCKW)に領域が割り当てられている。
即ち、ヘッドバッファーは、イエロー用の領域と、マゼンタ用の領域と、シアン用の領域
と、ブラック用の領域と、ホワイト用の領域との集合として構成されている。ヘッドバッ
ファーの各領域のX方向(移動方向)のサイズはヘッド41の移動距離のサイズであり、
各領域のY方向(搬送方向)のサイズはノズル列を構成するノズル数に対応するサイズで
ある。
【0096】
また、ヘッドバッファーの各領域は、上流用142uと下流用142lとに2分されて
いる。図3に示すように、本実施形態のプリンター1のヘッド41に設けられたノズル列
は180個のノズルから構成される。ここで、搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#
90)を「下流ノズル群」と呼び、搬送方向上流側の半分のノズル(#91〜#180)
を「上流ノズル群」と呼ぶ。図15に示す上流用ヘッドバッファー142uは、上流ノズ
ル群(#91〜#180)に対応するヘッドバッファーであり、下流用ヘッドバッファー
142lは、下流ノズル群(#1〜#90)に対応するヘッドバッファーである。
【0097】
コントローラー10は、画像データのうちの或る領域(例えば1パス分の領域)を印刷
するために、まず、或る領域に対応するドットデータをインクの色ごとにラスターバッフ
ァーに格納する。その後、コントローラー10は、ラスターバッファーに格納したドット
データを印刷のタイミングに合わせてヘッドバッファーに転送する。そうして、ヘッドバ
ッファーに格納されたドットデータに基づいて、ヘッド41の各ノズル列(YMCKW)
からインク滴を噴射し、画像を印刷する。なお、ヘッドバッファーにドットデータを送信
した後、コントローラー10は、全てのドットデータによる印刷が終了するまで、ラスタ
ーバッファーに新たなドットデータを格納する。
【0098】
ところで、本実施形態では、白インク(W)とカラーインク(YMCK)を混ぜた調色
白の背景画像上に、カラーインク(YMCK)によってカラー画像を印刷する。例えば、
図6に示すように、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側のノズ
ルによって調色白の背景画像を印刷し、カラーノズル列Coの搬送方向下流側のノズルに
よってカラー画像を印刷する。そのため、(通常印刷時には)コントローラー10は、図
15に示すように、カラー画像用ラスターバッファー132cに格納されたドットデータ
を下流用ヘッドバッファー142lに転送し、白画像用ラスターバッファー132wに格
納されたドットデータを上流用ヘッドバッファー142uに転送する。これにより、カラ
ーノズル列Coの搬送方向下流側のノズルによってカラー画像を印刷することができ、カ
ラーノズル列Co及びホワイトノズル列Wの搬送方向上流側のノズルによって背景画像を
印刷することができる。
【0099】
また、媒体(透明フィルム)の上に、先にカラー画像を印刷し、その上に調色白の背景
画像を印刷する場合もある。この場合、通常印刷時において、カラーノズル列Coの搬送
方向上流側のノズルによって先にカラー画像を印刷し、ホワイトノズル列W及びカラーノ
ズル列Coの搬送方向下流側のノズルによってカラー画像上に背景画像が印刷される。そ
のため、コントローラー10は、カラー画像用ラスターバッファー132cに格納された
ドットデータを上流用ヘッドバッファー142uに転送し、白画像用ラスターバッファー
132wに格納されたドットデータを下流用ヘッドバッファー142lに転送する。
【0100】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについ
て記載されているが、濃度むらの補正方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形
態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのも
のではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発
明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっ
ても、本発明に含まれるものである。
【0101】
<印刷物について>
前述の実施形態では、白インクとカラーインクによって調色白の背景画像を印刷する印
刷物を例に挙げているが、これに限らない。例えば、背景画像を白インク以外のインク(
例えばカラーインクやメタリックインクなど)で印刷し、背景画像上の画像を形成するイ
ンクによって、背景画像の色味を調整してもよい。また、調色白の背景画像上に、画像の
色再現性を高めるために、カラーインク(YMCK)と白インクによってカラー画像を印
刷してもよい。
【0102】
また、例えば、白インクのみによって背景画像を印刷し、その上に、白インクとカラー
インク(YMCK)によってカラー画像を印刷してもよい。この場合、例えば、通常印刷
時には、ホワイトノズル列Wの搬送方向上流側のノズル(例えば図6のノズル#13〜#
21)にて背景画像を印刷し、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列Wの搬送方向下
流側のノズル(図6のノズル#1〜#9)にてカラー画像を印刷することになる。この場
合にも、背景画像用の噴射ノズルとカラー画像用の噴射ノズルの間の乾燥用ノズルが属す
る領域の搬送方向の長さを、媒体の搬送量の整数倍に設定するとよい。
【0103】
<印刷方法について>
前述の実施形態では、オーバーラップ印刷を例に挙げているがこれに限らない。他の印
刷方法(例えばインターレース印刷のようにノズルピッチ間隔で並ぶラスターラインの間
に異なるパスにて複数のラスターラインを形成する印刷方法)であってもよい。また、バ
ンド印刷のように1パスで形成される画像幅分だけ媒体を搬送させる印刷方法では、例え
ば、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの上流側の1/3のノズルを噴射ノズル
とし、カラーノズル列Coの下流側の1/3のノズルを噴射ノズルとする。この場合、1
回の搬送動作における媒体の搬送量がノズル列の1/3の長さになるため、ノズル列の中
央部の1/3のノズルを乾燥用ノズルとすればよい。
【0104】
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示していたが
、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンターではなく、様々な工業用装置に適
用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置
や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗
布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用する
ことができる。
また、流体の噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・
収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内
に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
また、ヘッド41から噴射するインクは、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型イ
ンクであってもよい。この場合、紫外線硬化型インクを噴射するヘッドと紫外線硬化型イ
ンクに紫外線を照射する照射器をキャリッジ31に搭載するとよい。また、ヘッドから粉
体を噴射してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラー、22 搬送ローラー、23 排紙ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、60 コンピューター、
132c カラー画像用ラスターバッファー、132w 白画像量ラスターバッファー、
142u 上流用ヘッドバッファー、142l 下流用ヘッドバッファー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1の流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、
(B)第2の流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列と、
(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を媒体に対して前記所定方向と交差する移
動方向に移動する移動機構と、
(D)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して媒体を前記所定方向に搬送する搬
送機構と、
(E)前記移動機構によって前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移
動させながら前記第1ノズル及び前記第2ノズルから流体を噴射させる画像形成動作と、
前記搬送機構によって媒体を前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して前記所定方
向に所定の搬送量を搬送させる搬送動作と、を繰り返させる制御部であって、
或る前記画像形成動作において、前記第1の流体及び前記第2の流体により第1画像を
形成し、乾燥時間を設けた後に、別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記
第2の流体により第2画像を形成する制御部と、
(F)を有する流体噴射装置であって、
(G)前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、前記第2画
像を形成するための前記第2ノズルよりも、前記所定方向の上流側に位置し、
前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも前記所定
方向の下流側に位置するノズルであり、前記第2画像を形成するための前記第2ノズルよ
りも前記所定方向の上流側に位置するノズルであって、前記所定方向の長さが前記所定の
搬送量の整数倍の長さである領域に属するノズルからは、インク滴が噴射されないこと、
(H)を特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置であって、
前記媒体に形成される前記第1画像の乾燥性に応じて、前記領域の前記所定方向の長さ
が変動する、
流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルが属する領域の前記
所定方向の長さ、及び、前記第2画像を形成するための前記第2ノズルが属する領域の前
記所定方向の長さは、前記所定の搬送量の整数倍の長さである、
流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のずれか一項に記載の流体噴射装置であって、
前記第2画像を前記第2の流体及び前記第1の流体により形成し、
前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、前記第2画像を
形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも、前記所定方向の上流側に位置
し、
前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも前記所定方向
の下流側に位置するノズルであり、前記第2画像を形成するための前記第1ノズル及び前
記第2ノズルよりも前記所定方向の上流側に位置するノズルであって、前記所定方向の長
さが前記所定の搬送量の整数倍の長さである領域に属するノズルからは、インク滴が噴射
されない、
流体噴射装置。
【請求項5】
(A)第1の流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、
(B)第2の流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列と、
(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を媒体に対して前記所定方向と交差する移
動方向に移動する移動機構と、
(D)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して媒体を前記所定方向に搬送する搬
送機構と、
(E)前記移動機構によって前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移
動させながら前記第1ノズル及び前記第2ノズルから流体を噴射させる画像形成動作と、
前記搬送機構によって媒体を前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して前記所定方
向に所定の搬送量を搬送させる搬送動作と、を繰り返させる制御部であって、
或る前記画像形成動作において、前記第1の流体により第1画像を形成し、乾燥時間を
設けた後に、別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記第1の流体及び前記
第2の流体により第2画像を形成する制御部と、
(F)を有する流体噴射装置であって、
(G)前記第1画像を形成するための前記第1ノズルは、前記第2画像を形成するための
前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも、前記所定方向の上流側に位置し、
前記第1画像を形成するための前記第1ノズルよりも前記所定方向の下流側に位置
するノズルであり、前記第2画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよ
りも前記所定方向の上流側に位置するノズルであって、前記所定方向の長さが前記所定の
搬送量の整数倍の長さである領域に属するノズルからは、インク滴が噴射されないこと、
(H)を特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
第1の流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、第2の流体を噴
射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列と、を有し、前記第1ノズル列及
び前記第2ノズル列を前記所定方向と交差する移動方向に移動させながら前記第1ノズル
及び前記第2ノズルから流体を噴射させる画像形成動作と、前記搬送機構によって媒体を
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して前記所定方向に所定の搬送量を搬送させ
る搬送動作と、を繰り返す流体噴射装置の流体噴射方法であって、
或る前記画像形成動作において、前記第1の流体及び前記第2の流体により第1画像を
形成し、乾燥時間を設けた後に、別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記
第2の流体により第2画像を形成するために、
前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルと、前記第1画像を
形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも前記所定方向の下流側に位置す
る前記第2ノズルであって、前記第2画像を形成するための前記第2ノズルと、からイン
ク滴を噴射し、
前記第1画像を形成するための前記第1ノズル及び前記第2ノズルよりも前記所定方向
の下流側に位置するノズルであり、前記第2画像を形成するための前記第2ノズルよりも
前記所定方向の上流側に位置するノズルであって、前記所定方向の長さが前記所定の搬送
量の整数倍の長さである領域に属するノズルからインク滴を噴射しないこと、
を特徴とする流体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−37222(P2011−37222A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188944(P2009−188944)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】