説明

流体噴射装置、及び、流体噴射方法

【課題】画像の画質劣化を抑制すること。
【解決手段】媒体に対して第1のノズル列及び第2のノズル列を移動方向に移動させながらノズルから流体を噴射させる噴射動作と、第1のノズル列及び第2のズル列と媒体とをノズル列方向に相対移動させる相対移動動作と、を繰り返し、主画像と背景画像を異なる噴射動作にて媒体に重ねて形成させる場合に、画像の移動方向における端の位置に応じて第1のノズル列及び第2のノズル列の移動方向への移動距離を変動させる制御を実施しない噴射動作を含むように、前記噴射動作を繰り返し実行させる流体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び、流体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の一つとして、ヘッドからインク(流体)を噴射して媒体に画像を印刷するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。プリンターの中には、ヘッドを移動方向に移動させながらインクを噴射させる動作と、ヘッドに対して媒体を移動方向と交差する搬送方向に搬送する動作と、を繰り返し行うことによって、媒体に2次元の画像を印刷するプリンターがある。
また、プリンターの中には、シアン、マゼンタ、イエローといったカラーインクの他に、白色のインクを使用するプリンターがある(例えば、特許文献1参照)。このようなプリンターでは、白インクによる背景画像とカラーインクによる主画像を重ねて印刷することで、媒体の地色に影響されずに、発色性の良い画像を印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−38063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、画像の移動方向における端部(端)の位置に応じてヘッドの移動距離を変動させる制御を実施するプリンターがある。このようなプリンターでは、小さい画像を印刷する場合に、ヘッドの移動距離が短くなり、印刷時間を短縮することができる。
しかし、背景画像と主画像を重ねて印刷する場合は、ヘッドの移動距離が短くなってしまうと、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が短くなり、画像に滲みや混色が発生し、画像の画質が劣化してしまう。
そこで、本発明は、画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1のノズル列と、(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並ぶ第2のノズル列と、(C)媒体に対して前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記所定方向と交差する移動方向に移動させながら前記ノズルから流体を噴射させる噴射動作と、前記第1のノズル列及び前記第2のズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる搬送動作と、を繰り返し実行させる制御部であって、前記第1の流体により形成させる主画像と前記第2の流体により形成させる背景画像を異なる前記噴射動作にて前記媒体に重ねて形成させる場合に、画像の前記移動方向における端の位置に応じて前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列の前記移動方向への移動距離を変動させる制御を、実施しない制御部と、(D)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターの斜視図であり、図2Bはヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図3】プリンターが有する印刷モードを説明する図である。
【図4】図4Aは白使用モード・表刷りモードの印刷方法を説明する図であり、図4Bは白使用モード・裏刷りモードの印刷方法を説明する図である。
【図5】最短印刷制御を説明する図である。
【図6】比較例の印刷方法を説明する図である。
【図7】図7Aは第1実施例における印刷方法の設定フローであり、図7Bは第1実施例の印刷方法を説明する図である。
【図8】図8Aは第2実施例における印刷方法の設定フローであり、図8Bは第2実施例の印刷方法を説明する図である。
【図9】図9Aは第3実施例における印刷方法の設定フローであり、図9Bは第3実施例の印刷方法を説明する図である。
【図10】他の画像における画像端部から媒体端部までの最短距離を説明する図である。
【図11】第4実施例における印刷方法の設定フローである。
【図12】第4実施例の印刷方法を説明する図である。
【図13】第5実施例における印刷方法の設定フローである。
【図14】図14A及び図14Bは、第5実施例の印刷方法を説明する図である。
【図15】第7実施例における印刷方法の設定フローである。
【図16】図16Aは、第8実施例の使用ノズルを説明する図である。図16Bは、第8実施例の印刷方法を説明する図である。
【図17】図17は、第9実施例の説明図である。
【図18】図18Aは、第10実施例の印刷方式における使用ノズルの説明図である。図18Bは、第10実施例の印刷方式の説明図である。
【図19】図19は、第10実施例の別の印刷方式の説明図である。
【図20】図20は、第11実施例の印刷方法の設定フローである。
【図21】図21は、フラットベッドタイプのプリンターの説明図である。
【図22】図22A及び図22Bは、別のタイプのプリンターの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1のノズル列と、(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並ぶ第2のノズル列と、(C)媒体に対して前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記所定方向と交差する移動方向に移動させながら前記ノズルから流体を噴射させる噴射動作と、前記第1のノズル列及び前記第2のズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる搬送動作と、を繰り返し実行させる制御部であって、前記第1の流体により形成させる主画像と前記第2の流体により形成させる背景画像を異なる前記噴射動作にて前記媒体に重ねて形成させる場合に、画像の前記移動方向における端の位置に応じて前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列の前記移動方向への移動距離を変動させる制御を、実施しない制御部と、(D)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、主画像と背景画像を重ねて形成する場合にも画像の滲みや混色を防止することができ、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0009】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、前記媒体に前記背景画像と重ねずに前記主画像を形成させる場合に、画像の前記移動方向における端の位置に応じて前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列の前記移動方向への移動距離を変動させる制御を、実施すること。
このような流体噴射装置によれば、画像形成時間を短縮することができる。
【0010】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、前記媒体の所定領域に対して先に形成させる画像を形成させる際に前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向に移動させると想定した側の画像の端から、前記媒体の前記移動方向における前記想定した側の端まで、の距離が閾値未満の場合、前の前記噴射動作と移動方向における同じ側に前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させ、前記距離が前記閾値以上の場合、前の前記噴射動作とは移動方向における逆の側に前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させること。
このような流体噴射装置によれば、画像の画質劣化を抑制しつつ、画像形成時間を短縮することができる。
【0011】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の一の側に移動させる或る前記噴射動作時に前記媒体の所定領域に対して先に形成させる画像の前記移動方向における前記一の側の端から、前記媒体の前記移動方向における前記一の側の端まで、の距離が閾値未満の場合、或る前記噴射動作の次の前記噴射動作時には、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の前記一の側に移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させ、前記距離が前記閾値以上の場合、或る前記噴射動作の次の前記噴射動作時には、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の他の側に移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させること。
このような流体噴射装置によれば、画像の画質劣化を抑制しつつ、画像形成時間を短縮することができる。
【0012】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の一の側に移動させる或る前記噴射動作時に前記媒体の所定領域に対して先に形成させる画像のうち、後に形成させる画像と重なる領域の前記移動方向における前記一の側の端から、前記媒体の前記移動方向における前記一の側の端まで、の距離が閾値未満の場合、或る前記噴射動作の次の前記噴射動作時には、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の前記一の側に移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させ、前記距離が前記閾値以上の場合、或る前記噴射動作の次の前記噴射動作時には、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の他の側に移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させること。
このような流体噴射装置によれば、画像の画質劣化を抑制しつつ、画像形成時間を短縮することができる。
【0013】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の双方向に移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させる制御を実施し、前記媒体の所定領域に対して先に形成させる画像を形成させる際に前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向に移動させる側の画像の端から、前記媒体の前記移動方向における前記移動させる側の端まで、の距離が閾値未満の場合には、前記距離が前記閾値以上の場合に比べて、前記噴射動作の時間間隔を長くすること。
このような流体噴射装置によれば、画像の画質劣化を抑制しつつ、画像形成時間を短縮することができる。
【0014】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の一の側に移動させる時にだけ前記ノズルから流体を噴射させる制御を実施すること。
このような流体噴射装置によれば、主画像と背景画像を重ねて形成する場合に、画像の滲みや混色をより確実に防止することができる。
【0015】
また、第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1のノズル列、及び、第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並ぶ第2のノズル列が、前記所定方向と交差する移動方向に移動しながら、前記ノズルから流体を噴射する噴射動作を実施する流体噴射方法であって、前記第1の流体により形成する主画像と前記第2の流体により形成する背景画像を異なる前記噴射動作にて前記媒体に重ねて形成する場合に、画像の前記移動方向における端の位置に応じて前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列の前記移動方向への移動距離を変動させずに、前記噴射動作を実施することと、前記第1のノズル列及び前記第2のズル列と前記媒体とが前記所定方向に相対移動する搬送動作を実施することと、を有することを特徴とする流体噴射方法である。
このような流体噴射方法によれば、主画像と背景画像を重ねて形成する場合にも画像の滲みや混色を防止することができ、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0016】
===印刷システムについて===
以下、インクジェットプリンター(以下、プリンター)とコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0017】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2Aは、プリンター1の斜視図であり、図2Bは、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。なお、図2Bはヘッド41の上面から仮想的にノズルを見た図である。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0018】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0019】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるためのものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0020】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを噴射するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク噴射部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが充填されたインク室(不図示)が設けられている。
【0021】
図2Bに示すように、ヘッド41の下面には、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔D(例:180dpi)で並んだノズル列が5列形成されている。移動方向の左側から、ブラックインクを噴射するブラックノズル列K・シアンインクを噴射するシアンノズル列C・マゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列M・イエローインクを噴射するイエローノズル列Y・白インクを噴射するホワイトノズル列Wが、順に並んでいる。なお、ブラックノズル列K・シアンノズル列C・マゼンタノズル列M・イエローノズル列Yが「第1のノズル列」に相当し、ホワイトノズル列Wが「第2のノズル列」に相当する。また、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0022】
このようなプリンター1において、コントローラー10は、媒体に対してヘッド41を移動方向に移動させながらノズルからインクを噴射させる噴射動作と、ヘッドに対して媒体を搬送方向に搬送させる搬送動作と、を繰り返し実行させる。そうすることで、先の噴射動作により形成されたドット位置とは異なる媒体上の位置に、後の噴射動作にてドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。
【0023】
以下の説明のため、ヘッド41が移動方向へ移動する動作を「パス」と呼び、ヘッド41が移動方向へ移動する際にノズルからインクが噴射させるパス(噴射動作)を「印刷パス」と呼び、ヘッド41が移動方向へ移動する際にノズルからインクが噴射されないパスを「戻りパス」と呼ぶ。そして、1ページ(1枚の媒体)に対する最初のパスから順に、「パス1・パス2・パス3…」と呼び、1ページに対する最初の印刷パスから順に、「印刷パス1・印刷パス2・印刷パス3…」と呼ぶ。
【0024】
===印刷モードについて===
図3は、本実施形態のプリンター1が有する印刷モードを説明する図である。プリンター1は、4色のインク(YMCK・第1の流体に相当)による主画像だけを媒体に印刷する「カラーモード」と、主画像に白インク(第2の流体に相当)による背景画像を重ねて媒体に印刷する「白使用モード」を有する。白使用モードのように主画像と背景画像を重ねて印刷することで、特に媒体が白色でない場合に、発色性の良い画像を印刷することができる。また、媒体が透明である場合に、主画像と背景画像を重ねて印刷することで、印刷物の反対側が透けてしまうことを防止できる。
【0025】
更に、プリンター1は、主画像を印刷面側から視認するように印刷する「表刷りモード」と、媒体を介して主画像を視認するように印刷する「裏刷りモード」を有する。よって、白使用モード・表刷りモードが設定された場合、媒体に先に背景画像が印刷され、背景画像上に主画像が重ねて印刷される。一方、白使用モード・裏刷りモードが設定された場合、媒体に先に主画像が印刷され、主画像の上に背景画像が重ねて印刷される。なお、媒体が透明性を有する場合に裏刷りモードを実施することが可能となる。
【0026】
以下の説明のため、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像を「下層画像(先の画像)」と呼び、媒体の所定領域に対して後に印刷する画像を「上層画像(後の画像)」と呼ぶ。
【0027】
===白使用モードにおける印刷方法について===
図4Aは、白使用モード・表刷りモードの印刷方法を説明する図であり、図4Bは、白使用モード・裏刷りモードの印刷方法を説明する図である。図では説明の簡略のため、1ノズル列に属するノズル数を14個に減らす。また、4色インク(YMCK)を各々噴射するノズル列をまとめて「カラーノズル列Co」と示す。図4に示す印刷方法は、バンド印刷である。バンド印刷とは、1回のパスで形成されるバンド画像が搬送方向に並ぶ印刷方法であり、あるパスで形成されたラスターライン(移動方向に沿うドット列)の間に他のパスのラスターラインが形成されない印刷方法である。
【0028】
白使用モード・表刷りモード(図4A)の印刷方法では、ホワイトノズル列Wの搬送方向上流側の半分のノズル#8〜#14(△)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル#1〜#7(●)を、主画像を印刷するための使用ノズルとする。なお、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル#1〜#7と、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズルは、不使用ノズルとする。そして、1回の媒体搬送量を、1回のパスで形成される背景画像または主画像の搬送方向の幅長さとする(ここでは、ノズル列の半分の長さ7Dとする)。
【0029】
そうすることで、媒体の所定領域は、まず、或る印刷パスにて、ホワイトノズル列Wの搬送方向上流側の使用ノズル(△)と対向し、媒体の所定領域には背景画像が印刷される。その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されると、媒体の所定領域は次の印刷パスにてカラーノズル列Coの搬送方向下流側の使用ノズル(●)と対向し、媒体の所定領域の背景画像上に主画像が重ねて印刷される。
【0030】
一方、白使用モード・裏刷りモード(図4B)の印刷方法では、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル#1〜#7(△)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル#8〜#14(●)を、主画像を印刷するための使用ノズルとする。そして、1回の媒体搬送量を、1回のパスで形成される背景画像または主画像の搬送方向の幅長さ(7D)とする。
【0031】
そうすることで、媒体の所定領域は、まず、或る印刷パスにて、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の使用ノズル(●)と対向し、媒体の所定領域には主画像が印刷される。その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されると、媒体の所定領域は次の印刷パスにてホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の使用ノズル(△)と対向し、媒体の所定領域の主画像上に背景画像が重ねて印刷される。
【0032】
このように白使用モードでは、媒体の所定領域に対して主画像と背景画像を異なる印刷パスにて印刷する。そのために、下層画像を印刷するための使用ノズルを、上層画像を印刷するための使用ノズルよりも、搬送方向上流側のノズルに設定する。そうすることで、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を比較的に長くすることができ、画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0033】
ただし、これに限らず、白使用モードであっても、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列Wに属する全ノズルを使用するようにしても良い。この場合、例えば、表刷りモードの場合には、ホワイトノズル列Wの全ノズルを使用して背景画像を印刷した後に、媒体を搬送することなく、次の印刷パスで、カラーノズル列Coに属する全ノズルを使用して背景画像上に主画像を印刷する。そうすることで、媒体の所定領域に対して主画像と背景画像を異なる印刷パスにて印刷することができる。
【0034】
また、カラーモードの印刷方法では、カラーノズル列Coに属する全ノズルを使用してもよいし、白使用モードと同様にカラーノズル列Coに属する半分のノズルだけを使用してもよい。
【0035】
また、バンド印刷に限らず、例えば、インターレース印刷(或る印刷パスにて印刷されたラスターライン間に他の印刷パスでラスターラインを印刷する印刷方法)を実施してもよいし、オーバーラップ印刷(1つのラスターラインを異なる印刷パスの複数のノズルで印刷する印刷方法)を実施してもよい。
【0036】
===最短印刷制御について===
図5は、最短印刷制御を説明する図である。以下の説明のため、ヘッド41を移動方向に移動可能な範囲のうち、移動方向の左端を「左側戻り位置LP(ホームポジションHPに相当)」と呼び、移動方向の右端を「右側戻り位置RP」と呼ぶ。図5の左図は最短印刷制御を実施しない場合を示し、図5の右図は最短印刷制御を実施する場合を示す。
【0037】
最短印刷制御を実施しないと設定すると、図5の左図のように媒体の移動方向の中央部にしか画像を印刷しない場合であっても、コントローラー10は、ヘッド41を左側戻り位置LPと右側戻り位置RPの間を往復移動させながら、ヘッド41からインクを噴射させる。即ち、ヘッド41は、画像の印刷範囲だけでなく、画像を印刷しない範囲まで移動する。
【0038】
一方、最短印刷制御を実施すると設定すると、図5の右図に示すように、コントローラー10は、ヘッド41を画像の左端と右端の間を往復移動させながら、ヘッド41からインクを噴射させる。即ち、ヘッド41は、画像の印刷範囲だけを移動する。ただし、ヘッド41のクリーニング動作などが必要な場合には、ヘッド41はホームポジションHPまで移動する。
【0039】
つまり、最短印刷制御とは、印刷する画像の移動方向における端部(端)の位置に応じて、ヘッド41の移動距離を変動させる制御である。最短印刷制御を実施することで、印刷時間を短縮することができる。
【0040】
===比較例の印刷方法===
図6は、比較例の印刷方法を説明する図である。比較例の印刷方法では、背景画像と主画像を重ねて印刷する白使用モードが設定された場合に、コントローラー10は最短印刷制御を実施する。なお、図は、ヘッド41が移動方向の右側へ移動する時にも左側へ移動する時にもノズルからインクが噴射される印刷方法(以下、「双方向印刷」と呼ぶ)を実施し、表刷りモードを実施する場合を示す。
【0041】
具体的な印刷方法を説明すると、まず、パス1(印刷パス1)にて、ヘッド41は移動方向の右側へ移動しながら背景画像を印刷する。背景画像の右側端部の印刷が終了すると、ヘッド41は、右側戻り位置RPまで移動することなく、背景画像の右側端部の印刷を終了した地点に停止する。次に、媒体が搬送方向下流側に搬送された後、パス2(印刷パス2)にて、ヘッド41は、背景画像の右側端部の印刷を終了した地点から移動方向の左側へ移動しながら、パス1にて印刷された背景画像上に主画像を印刷する。
【0042】
そのため、特にパス1にてヘッド41が移動する側(移動方向の右側)の媒体上の地点P1では、背景画像が印刷されてから主画像が印刷されるまでの時間が短くなってしまう。具体的には、この比較例のように最短印刷制御を実施する場合は、最短印刷制御を実施しない場合に比べて、ヘッド41が背景画像の右側端部と右側戻り位置RPの間を往復移動する時間分だけ、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔(乾燥時間)が短くなってしまう。
【0043】
つまり、白使用モードにおいて最短印刷制御を実施すると、ヘッド41の移動距離が短くなり、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が短くなってしまう。そうすると、画像が滲んだり混色したりして、画像の画質が劣化してしまう。
そこで、本実施形態では、画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【0044】
===第1実施例===
図7Aは、第1実施例における印刷方法の設定フローであり、図7Bは、第1実施例の印刷方法を説明する図である。なお、図7Bは、双方向印刷・表刷りモードを実施する場合を示す。第1実施例では、コントローラー10は、白使用モードの印刷データを受信した場合(S001→Y)、最短印刷制御を実施しないと設定する(S002)。
【0045】
つまり、コントローラー10は、4色のインク(YMCK)により形成させる主画像と白インク(W)により形成させる背景画像を異なる印刷パスにて媒体に重ねて形成させる場合に、画像の移動方向における端部(端)の位置に応じてヘッド41の移動方向への移動距離を変動させる制御を、実施しない。
【0046】
図7Bを用いて具体的に説明すると、まず、パス1(印刷パス1)にて、ヘッド41は移動方向の右側へ移動しながら背景画像を印刷する。背景画像の右側端部の印刷が終了すると、ヘッド41は、その地点で停止することなく、右側戻り位置RPまで移動する。そして、媒体が搬送方向下流側に搬送された後、パス2(印刷パス2)にて、ヘッド41は、右側戻り位置RPから移動方向の左側へ移動しながら、パス1にて印刷された背景画像上に主画像を印刷する。
【0047】
そのため、第1実施例では、比較例の印刷方法(図6)に比べて、ヘッド41は、媒体上の或る地点P1に背景画像を印刷してから主画像を印刷するまでの間に、背景画像の右側端部から右側戻り位置RPまでの距離の2倍の距離だけ長く移動することになる。よって、第1実施例では、比較例の印刷方法に比べて、ヘッド41が背景画像の右側端部と右側戻り位置RPの間を往復移動する時間分だけ、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができる。
【0048】
つまり、白使用モードの場合に最短印刷制御を実施しないことで、ヘッド41が媒体上の或る地点P1を通過する時間間隔が長くなり、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができる。その結果、画像の滲みや混色を防止でき、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0049】
更に、第1実施例では、カラーモードの印刷データを受信した場合(S001→N)、コントローラー10は最短印刷制御を実施すると設定する(S003)。
【0050】
つまり、コントローラー10は、媒体に背景画像と重ねずに主画像を形成させる場合に、画像の移動方向における端部(端)の位置に応じてヘッド41の移動方向への移動距離を変動させる制御を、実施する。
【0051】
最短印刷制御を実施し、ヘッド41が媒体上の或る地点を通過する時間間隔が短くなったとしても、カラーモードの場合、媒体上の或る地点には主画像だけが印刷される。よって、画像の滲みや混色の問題が生じない。つまり、カラーモードの場合に最短印刷制御を実施することで、画像の画質を劣化させずに、印刷時間を短縮することができる。
【0052】
なお、カラーモードの場合、コントローラー10が最短印刷制御を実施すると決定するに限らず、例えば、ユーザーに最短印刷制御を実施するか否かを決定させてもよい。また、カラーモードの場合も、白使用モードの場合と同様に、最短印刷制御を実施しないとしてもよい。
【0053】
===第2実施例===
図8Aは、第2実施例における印刷方法の設定フローであり、図8Bは、第2実施例の印刷方法を説明する図である。なお、図8Bは、表刷りモードを実施する場合を示す。第2実施例では、コントローラー10は、白使用モードの印刷データを受信した場合に(S101→Y)、最短印刷制御を実施しないと設定し、更に、「単方向印刷」を実施するように設定する(S103)。単方向印刷とは、ヘッド41が移動方向の一方側に移動する時にだけインクを噴射し、ヘッド41が移動方向の他方側に移動する時にはインクを噴射しない印刷方法である。
【0054】
つまり、コントローラー10は、主画像と背景画像を重ねて形成させる場合に、ヘッド41を移動方向の一の側に移動させる時にだけノズルからインクを噴射させる制御を実施する。
【0055】
図8Bを用いて具体的に説明すると、まず、パス1(印刷パス1)にて、ヘッド41は移動方向の右側へ移動しながら背景画像を印刷する。背景画像の右側端部の印刷が終了すると、ヘッド41は、その地点で停止することなく、右側戻り位置RPまで移動する。そして、パス2(戻りパス)では、ヘッド41は、インクを噴射することなく、右側戻り位置RPから左側戻り位置LPまで移動する。その後、媒体が搬送方向下流側に搬送された後、パス3(印刷パス2)にて、ヘッド41は左側戻り位置LPから移動方向の右側へ移動しながら、パス1にて印刷された背景画像上に主画像を印刷する。
【0056】
そのため、第2実施例では、比較例の印刷方法(図6)に比べて、媒体上の或る地点P1に背景画像が印刷されてから主画像が印刷されるまでの間に、ヘッド41は、背景画像の右側端部から右側戻り位置RPまでの往復距離だけでなく、右側戻り位置RPから左側戻り位置LPまでの距離も、長く移動することになる。よって、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔をより長くすることができる。
【0057】
つまり、第2実施例では、白使用モードの場合に、単方向印刷を実施し、印刷パス間に戻りパスを設けることで、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔をより長くする。その結果、画像の滲みや混色をより確実に防止でき、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0058】
一方、コントローラー10は、カラーモードの印刷データを受信した場合に(S101→N)、双方向印刷を実施するか否かをユーザーに決定させる(S102)。コントローラー10は、ユーザーが双方向印刷を実施しないと決定した場合(S102→N)、単方向印刷を実施すると設定し(S103)、ユーザーが双方向印刷を実施すると決定した場合(S102→Y)、双方向印刷を実施すると設定する(S104)。
【0059】
ただし、双方向印刷を実施するか否かをユーザーに決定させるに限らない。双方向印刷を実施すると印刷時間を短縮することができ、単方向印刷を実施すると往復の特性差による画質劣化を防止することができる。そこで、例えば、「速いモード」が設定されている場合に双方向印刷を実施し、「きれいモード」が設定されている場合に単方向印刷を実施するようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態のプリンター1では、媒体の搬送動作を戻りパスと同時に実施しないとする。これは、媒体の搬送動作を戻りパスと同時に行うと、機械的な振動や駆動信号に対するノイズ等の影響により搬送精度が低下し、また、制御も複雑になるからである。媒体の搬送動作を戻りパスと同時に行わないことで、印刷パス間の時間間隔がより長くなり、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔をより長くすることができる。よって、画像の滲みや混色をより確実に防止することができる。
【0061】
また、印刷パス時のヘッド41の移動速度はインク噴射間隔に応じて固定されるが、戻りパス時のヘッド41の移動速度は変更可能である。そこで、画像の滲みや混色が確実に防止されるように、戻りパス時のヘッド41の移動速度を遅くして、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長くしてもよい。逆に、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が画像の滲みや混色を防止するために必要な時間よりも長い場合には、戻りパス時のヘッド41の移動速度を速くして、印刷時間を短縮してもよい。
【0062】
===第3実施例===
本実施形態では、白使用モードの場合に、最短印刷制御を実施しないため、ヘッド41が画像端部から右側戻り位置RP又は左側戻り位置LPまでの間を往復移動する時間分だけ、比較例(図6)よりも、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができる。
【0063】
ただし、下層画像(先の画像)を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離が短い場合、ヘッド41が下層画像の印刷を終了してから媒体端部まで移動する距離が短いということになる。よって、ヘッド41が、下層画像の端部から右側戻り位置RPまたは左側戻り位置LPまでの間を往復移動する距離も短くなる。そのため、この場合に双方向印刷を実施してしまうと、ヘッド41が下層画像の端部の印刷を終了してから上層画像の印刷を開始するまでの時間間隔が短くなり、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が短くなってしまうので、画像の滲みや混色が生じる虞がある。
【0064】
逆に、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離が長い場合、ヘッド41が下層画像の端部の印刷を終了してから媒体端部まで移動する距離が長いということになる。よって、ヘッド41が、下層画像の端部から右側戻り位置RPまたは左側戻り位置LPまでの間を往復移動する距離も長くなる。そのため、この場合に双方向印刷を実施したとしても、ヘッド41が下層画像の端部の印刷を終了してから上層画像の印刷を開始するまでの時間間隔が長く、即ち、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が長いので、画像の滲みや混色が生じる虞がない。
【0065】
そこで、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離(移動方向に沿う距離)に応じて、単方向印刷を実施するか、それとも、双方向印刷を実施するかを設定するとよい。
【0066】
つまり、コントローラー10は、主画像と背景画像を重ねて形成させる場合に、下層画像(媒体の所定領域に対して先に形成させる画像)を形成させる際にヘッド41を移動方向に移動させると想定した側の画像端部(画像の端)から媒体端部(媒体の端)までの距離が閾値未満の場合、前の印刷パスと移動方向の同じ側にヘッド41を移動させる時にノズルからインクを噴射させ(単方向印刷を実施し)、前記距離が閾値以上の場合、前の印刷パスと移動方向の逆側にヘッド41を移動させる時にノズルからインクを噴射させる(双方向印刷を実施する)。
【0067】
なお、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離が閾値以上の場合には、双方向印刷を実施しても、画像の滲みや混色が発生しないように閾値を設定する。
【0068】
図9Aは、第3実施例における印刷方法の設定フローであり、図9Bは、第3実施例の印刷方法を説明する図である。なお、図9Bは、表刷りモードを実施する場合を示す。第3実施例では、コントローラー10は、1ページごと(1枚の媒体に印刷する画像ごと)に、単方向印刷を実施するか、それとも双方向印刷を実施するかを設定する。
【0069】
そのために、コントローラー10は、白使用モードの印刷データを受信した場合に、最短印刷制御を実施しないと設定し、更に、印刷データに基づいて、1ページにおける画像の端部から媒体端部までの距離の中の最短距離を算出し、その最短距離と閾値を比較する(図9AのS201)。そして、コントローラー10は、算出した最短距離が閾値未満の場合(S201→Y)、単方向印刷を実施すると設定し(S202)、算出した最短距離が閾値以上の場合(S201→N)、双方向印刷を実施すると設定する(S203)。
【0070】
なお、単方向印刷が設定される場合と双方向印刷が設定される場合とでは、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側が異なり、また、双方向印刷が設定された場合、印刷パスごとに、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側が異なる。よって、下層画像を印刷する際にヘッド41が左側にも右側にも移動することを想定し、画像全域における画像の右側端部から媒体の右側端部までの距離、及び、画像の左側端部から媒体の左側端部までの距離の中の最短距離を算出する。
【0071】
また、主画像の端部から媒体端部までの距離を算出してもよいし、背景画像の端部から媒体端部までの距離を算出してもよい。また、2つの画像のうちの大きい方の画像の端部から媒体端部までの距離を算出してもよいし、小さい方の画像の端部から媒体端部までの距離を算出してもよい。
【0072】
図9Bを用いて具体的に説明する。なお、ここでは、背景画像が主画像よりも大きく、主画像の端部から媒体端部までの距離を算出する場合を例に挙げる。図9Bの左側に示す画像では、媒体に対して画像が大きく印刷されるので、移動方向における同じ側の主画像端部から媒体端部までの最短距離d1が短く閾値未満になるとする。この場合、コントローラー10は、図9Bの左側の画像を単方向印刷で印刷するように設定する(即ち、印刷パス間に戻りパスを設け、前の印刷パスと移動方向の同じ側にヘッド41を移動させる時にノズルからインクを噴射させる)。
【0073】
そうすることで、主画像の右側端部から媒体の右側端部までの距離d1が短く、パス1にてヘッド41が移動方向の右側に移動しながら媒体上の或る地点P1に背景画像を印刷してから、パス2にてヘッド41が移動方向の左側に移動しながら媒体上の或る地点P1を通過するまで、の時間が短くとも、パス2では主画像が印刷されないため、画像の滲みや混色を防止することができる。
【0074】
一方、図9Bの右側に示す画像では、移動方向の幅が狭い画像が媒体の中央部に印刷されるので、移動方向における同じ側の主画像端部から媒体端部までの最短距離d2が長く閾値以上になるとする。この場合、コントローラー10は、図9Bの右側の画像を双方向印刷で印刷するように設定する(即ち、印刷パス間に戻りパスを設けず、前の印刷パスと移動方向の逆側にヘッド41を移動させる時にノズルからインクを噴射させる)。
【0075】
そうすることで、パス1にてヘッド41が移動方向の右側に移動しながら、媒体上の或る地点P1に背景画像を印刷し、パス2にてヘッド41が移動方向の左側に移動しながら、媒体上の或る地点P1の背景画像上に主画像を印刷しても、主画像の右側端部から媒体の右側端部までの距離d2が長く、ヘッド41が媒体上の或る地点P1を通過する時間間隔が長いため、画像の滲みや混色を防止できる。
【0076】
逆に言えば、ヘッド41が媒体上の或る地点P1を通過する時間間隔が長いにもかかわらず印刷パス間に戻りパスを設けて、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を必要以上に長くしてしまうことを防止できる。つまり、印刷時間を無駄に長くしてしまうことを防止できる。
【0077】
図10は、他の画像における画像端部から媒体端部までの最短距離を説明する図である。図9Bに示す画像では、移動方向の側辺が搬送方向に沿っているため、搬送方向の全域において画像端部から媒体端部までの距離が等しい。また、図9Bに示す画像は媒体の移動方向における中央部に印刷されているため、画像の左側端部から媒体の左側端部までの距離と、画像の右側端部から媒体の右側端部までの距離が等しい。しかし、図9Bに示すような画像が印刷されるに限らない。
【0078】
例えば、図10の左側の画像のように、画像の上部から下部にかけて移動方向の幅が広くなる画像がある。この場合、画像の下部における画像端部から媒体端部までの距離d1が最短距離となる。この最短距離d1が閾値未満の場合、第3実施例では画像の上部も下部も単方向印刷で印刷される。
また、図10の右側の画像のように、画像の移動方向の幅が狭くとも、媒体に対して移動方向の一方側(図では左側)に寄って画像が印刷されることがある。この場合、画像が寄っている側の画像端部から媒体端部までの距離d1が短く閾値未満であれば、単方向印刷で画像が印刷される。
【0079】
また、画像全域における画像の右側端部から媒体の右側端部までの距離、及び、画像の左側端部から媒体の左側端部までの距離の中の最短距離を算出するに限らない。双方向印刷で画像を印刷することを想定し、1回の印刷パスで画像が印刷される領域ごとに、各領域に下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側の画像端部から媒体端部までの最短距離を算出してもよい。
例えば、印刷パス1でヘッド41が移動方向の右側に移動しながら媒体上の或る領域に下層画像を印刷する場合、媒体上の或る領域に印刷される画像の右側端部から媒体の右側端部までの最短距離を算出し、印刷パス2でヘッド41が移動方向の左側に移動しながら媒体上の別の領域に下層画像を印刷する場合、媒体上の別の領域に印刷される画像の左側端部から媒体の左側端部までの最短距離を算出する。
そして、各領域の最短距離の中の最も短い距離と、閾値とを比較し、単方向印刷を実施するか、それとも、双方向印刷を実施するかを設定してもよい。
【0080】
===第4実施例===
図11は、第4実施例における印刷方法の設定フローであり、図12は、第4実施例の印刷方法を説明する図である。なお、図12は、表刷りモードを実施する場合を示す。第4実施例では、印刷パスごとにヘッド41が移動する方向を決定する(即ち、ヘッド41を移動方向の何れの側に移動させる時にノズルからインクを噴射させるのかを決定する)。そして、或る印刷パスにてヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら印刷する下層画像の移動方向一方側の端部から媒体の移動方向一方側の端部までの距離に基づいて、次の印刷パスにてヘッド41が移動する方向を決定する。
【0081】
そのため、コントローラー10は、白使用モードの印刷データを受信した場合に、最短印刷制御を実施しないと設定し、更に、各印刷パスにてヘッド41が移動する方向を決定する。図11に示すように、コントローラー10は、まず、或る印刷パスnの次の印刷パスn+1の画像データの有無を確認する(S301)。次の印刷パスn+1の画像データが有る場合(S301→Y)、コントローラー10は、或る印刷パスnで印刷される下層画像の画像データを取得する(S302)。そして、コントローラー10は、取得した画像データに基づいて、或る印刷パスnでヘッド41が移動する側における下層画像の端部から媒体端部までの距離を算出し、算出した距離と閾値を比較する(S303)。
【0082】
算出した距離が閾値未満の場合(S303→Y)、コントローラー10は、或る印刷パスnと次の印刷パスn+1との間に戻りパスを設け、次の印刷パスn+1でヘッドが移動する方向を或る印刷パスnでヘッド41が移動する方向と同じ方向に設定する(S304)。一方、算出した距離が閾値以上の場合(S303→N)、コントローラー10は、或る印刷パスnと次の印刷パスn+1との間に戻りパスを設けず、次の印刷パスn+1でヘッド41が移動する方向を或る印刷パスnでヘッド41が移動する方向と逆の方向に設定する(S305)。コントローラー10は、次の印刷パスのデータが無くなるまで、この処理を繰り返し実行する。
【0083】
つまり、コントローラー10は、主画像と背景画像を重ねて形成させる場合に、ヘッド41を移動方向の一の側に移動させる或る印刷パス時に形成させる下層画像(媒体の所定領域に対して先に形成させる画像)の移動方向における一の側の端部(端)から、媒体の移動方向における一の側の端部(端)までの距離が閾値未満の場合、或る印刷パスの次の印刷パス時には、ヘッド41を移動方向の一の側(同じ側)に移動させる時にノズルからインクを噴射させ、前記距離が閾値以上の場合、或る印刷パスの次の印刷パス時には、ヘッド41を移動方向の他の側(逆側)に移動させる時にノズルからインクを噴射させる。
【0084】
そうすることで、ヘッド41が或る印刷パスで下層画像の印刷を終了してから媒体端部まで移動する距離が短く、即ち、ヘッド41が下層画像の端部と右側戻り位置RPまたは左側戻り位置LPとの間を往復移動する距離が短く、ヘッド41が画像印刷領域上の或る地点を通過する時間間隔が短い場合、印刷パス間に戻りパスが設けられる(前後の印刷パスでヘッド41が移動する方向が同じ方向になる、即ち、単方向印刷と同じ動きとなる)。よって、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができ、画像の滲みや混色を防止でき、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0085】
一方、ヘッド41が或る印刷パスで下層画像の印刷を終了してから媒体端部まで移動する距離が長く、即ち、ヘッド41が下層画像の端部と右側戻り位置RPまたは左側戻り位置LPとの間を往復移動する距離が長く、ヘッド41が画像印刷領域上の或る地点を通過する時間間隔が長い場合には、印刷パス間に戻りパスが設けられない(前後の印刷パスでヘッド41が移動する方向が逆方向になる、即ち、双方向印刷と同じ動きとなる)。よって、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を必要以上に長くしてしまうことを防止でき、画像の滲みや混色を防止しつつ、印刷時間を短縮することができる。
【0086】
図12を用いて具体的に説明すると、まず、パス1(印刷パス1)にて、ヘッド41は移動方向の右側に移動しながら背景画像(下層画像)を印刷する。パス1で印刷される背景画像の右側端部から媒体の右側端部までの距離d3は短く閾値未満である。この場合、コントローラー10は、次の印刷パス2では、ヘッド41を印刷パス1と同じ側(右側)に移動させる時にノズルからインクを噴射させる。よって、パス2は戻りパスとなる。
【0087】
そして、パス2の後に媒体が搬送方向下流側に搬送された後に、パス3(印刷パス2)にてヘッド41は移動方向の右側に移動しながら背景画像及び主画像を印刷する。パス3で印刷される背景画像の右側端部から媒体の右側端部までの距離d4は長く閾値以上である。この場合、コントローラー10は、次の印刷パス3では、ヘッド41を印刷パス2と逆側(左側)に移動させる時にノズルからインクを噴射させる。よって、パス3とパス4の間に戻りパスは設けられず、パス3の後に媒体が搬送方向下流側に搬送された後、パス4(印刷パス3)にてヘッド41が移動方向の左側に移動しながら背景画像及び主画像を印刷する。
【0088】
なお、図12では表刷りモードを例に挙げているため、背景画像が下層画像となり、背景画像の端部から媒体端部までの距離が閾値と比較される。一方、裏刷りモードの場合には(不図示)、主画像が下層画像となり、主画像の端部から媒体端部までの距離が閾値と比較される。よって、主画像と背景画像の大きさが異なる場合、閾値と比較する距離が若干異なることになる。
【0089】
===第5実施例===
図13は、第5実施例における印刷方法の設定フローであり、図14A及び図14Bは、第5実施例の印刷方法を説明する図である。なお、図14は、表刷りモードを実施する場合を示す。第5実施例では、印刷パスごとにヘッド41が移動する方向を決定する。そして、或る印刷パスにてヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら印刷する下層画像とそれに重なる上層画像とが重複する領域の移動方向一方側の端部から、媒体の移動方向一方側の端部までの距離に基づいて、次の印刷パスにてヘッド41が移動する方向を決定する。
【0090】
そのために、コントローラー10は、白使用モードの印刷データを受信した場合に、最短印刷制御を実施しないと設定し、更に、各印刷パスにてヘッド41が移動する方向を決定する。図13に示すように、コントローラー10は、まず、或る印刷パスnの次の印刷パスn+1の画像データの有無を確認する(S401)。次の印刷パスn+1の画像データが有る場合(S401→Y)、コントローラー10は、或る印刷パスnで印刷される下層画像の画像データと、それに重ねて印刷される上層画像の画像データを取得する(S402)。以下、或る印刷パスnで印刷される下層画像とそれに重なる上層画像とが重複する領域を「重複領域」と呼ぶ。そして、コントローラー10は、取得した画像データに基づいて、或る印刷パスnでヘッド41が移動する側における重複領域の端部から媒体端部までの距離を算出し、算出した距離と閾値を比較する(S403)。
【0091】
算出した距離が閾値未満の場合(S403→Y)、コントローラー10は、或る印刷パスnと次の印刷パスn+1との間に戻りパスを設け、次の印刷パスn+1でヘッドが移動する方向を或る印刷パスnでヘッド41が移動する方向と同じ方向に設定する(S404)。一方、算出した距離が閾値以上の場合(S403→N)、コントローラー10は、或る印刷パスnと次の印刷パスn+1との間に戻りパスを設けず、次の印刷パスn+1でヘッド41が移動する方向を或る印刷パスnでヘッド41が移動する方向と逆の方向に設定する(S405)。コントローラー10は、次の印刷パスのデータが無くなるまで、この処理を繰り返し実行する。
【0092】
つまり、コントローラー10は、主画像と背景画像を重ねて形成させる場合に、ヘッド41を移動方向の一の側に移動させる或る印刷パス時に媒体の所定領域に対して先に形成させる画像のうち、後に形成させる画像と重なる領域の移動方向における一の側の端部(端)から、媒体の移動方向における一の側の端部(端)まで、の距離が閾値未満の場合、或る印刷パスの次の印刷パス時には、ヘッド41を移動方向の一の側(同じ側)に移動させる時にノズルからインクを噴射させ、前記距離が閾値以上の場合、或る印刷パスの次の印刷パス時には、ヘッド41を他の側(逆側)に移動させる時にノズルからインクを噴射させる。
【0093】
よって、ヘッド41が、或る印刷パスで移動方向の一方側に移動しながら下層画像の印刷を終えた時から、媒体の移動方向一方側の端部を通過して右側戻り位置RP又は左側戻り位置LPから折り返して来る際に下層画像と上層画像の重複領域の移動方向一方側の端部(を印刷する地点)を通過する時まで、の時間が短い場合、ヘッド41の折り返し時に上層画像は印刷されない。そのため、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が長くなり、画像の滲みや混色を防止し、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0094】
一方、ヘッド41が、或る印刷パスで移動方向の一方側に移動しながら下層画像の印刷を終えた時から、媒体の移動方向一方側の端部を通過して右側戻り位置RP又は左側戻り位置LPから折り返して来る際に下層画像と上層画像の重複領域の移動方向一方側の端部(を印刷する地点)を通過する時まで、の時間が長い場合、ヘッド41の折り返し時に上層画像が印刷される。そのため、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が必要以上に長くされてしまうことを防止でき、画像の滲みや混色を防止しつつ、印刷時間を短縮することができる。
【0095】
図14を用いて具体的に説明すると、まず、図14Aの左図に示すように、パス1(印刷パス1)にてヘッド41は移動方向の右側に移動しながら背景画像(下層画像)を印刷する。印刷パス1にて印刷される背景画像上には、図14Aの右図に示すように主画像が重ねて印刷される。この背景画像と主画像の重複領域(太枠)の右側端部から媒体の右側端部までの距離d5は短く閾値未満であるとする。この場合、コントローラー10は、次の印刷パス2では、ヘッド41を印刷パス1と同じ側(右側)に移動させる時にノズルからインクを噴射させる。よって、パス2(不図示)は戻りパスとなる。
【0096】
そして、パス2の後に媒体が搬送方向下流側に搬送された後に、図14Bの左図に示すように、パス3(印刷パス2)にてヘッド41は移動方向の右側に移動しながら背景画像及び主画像を印刷する。印刷パス2にて印刷される背景画像上には、図14Bの右図に示すように、主画像が重ねて印刷される。パス3で印刷される背景画像と主画像の重複領域(太枠)の右側端部から媒体の右側端部までの距離d6は長く閾値以上である。この場合、コントローラー10は、次の印刷パス3では、ヘッド41を印刷パス2と逆側(左側)に移動させる時にノズルからインクを噴射させる。よって、パス3とパス4の間に戻りパスは設けられない。
【0097】
===第6実施例===
前述の第4実施例及び第5実施例では、印刷パスごとにヘッド41が移動する方向を決定する。そのために、第4実施例では、或る印刷パスにてヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら印刷する下層画像の移動方向一方側の端部から媒体の移動方向一方側の端部までの距離と、閾値を比較している。また、第5実施例では、或る印刷パスにてヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら印刷する下層画像とそれに重なる上層画像とが重複する領域の移動方向一方側の端部から、媒体の移動方向一方側の端部までの距離と、閾値を比較している。
【0098】
この第6実施例においても、印刷パスごとにヘッド41が移動する方向を決定する。そして、或る印刷パスにてヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら印刷する下層画像上に重ねて印刷する上層画像の移動方向一方側の端部(端)から、媒体の移動方向一方側の端部(端)までの距離と、閾値を比較する。コントローラー10は、前記距離が閾値未満であれば、或る印刷パスと次の印刷パスとの間に戻りパスを設け、次の印刷パスでヘッドが移動する方向を或る印刷パスでヘッド41が移動する方向と同じ方向に設定し、前記距離が閾値以上であれば、或る印刷パスと次の印刷パスとの間に戻りパスを設けず、次の印刷パスでヘッド41が移動する方向を或る印刷パスでヘッド41が移動する方向と逆の方向に設定する。
【0099】
そうすることで、或る印刷パスでヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら下層画像を印刷した後に右側戻り位置RP又は左側戻り位置LPから折り返して来る際に、ヘッド41が、媒体の移動方向一方側の端部を通過する時から、上層画像の移動方向一方側の端部(が印刷される地点)を通過する時まで、の時間が短い場合には、ヘッド41の折り返し時に上層画像は印刷されない。よって、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができ、画像の滲みや混色を防止することができる。
【0100】
一方、或る印刷パスでヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら下層画像を印刷した後に右側戻り位置RP又は左側戻り位置LPから折り返して来る際に、ヘッド41が、媒体の移動方向一方側の端部を通過する時から、上層画像の移動方向一方側の端部を通過する時まで、の時間が長い場合には、ヘッド41の折り返し時に上層画像が印刷される。よって、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が必要以上に長くされてしまうことを防止でき、画像の画質を劣化させずに印刷時間を短縮することができる。
【0101】
===第7実施例===
図15は、第7実施例における印刷方法の設定フローである。前述の第3実施例から第6実施例では、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離に応じて、印刷パス間に戻りパスを設けるか否かを決定する(単方向印刷を実施するか否かを決定している)。
【0102】
これに対して、第7実施例では、白使用モードの場合に常に双方向印刷を実施する。そして、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離が短い場合には、印刷パス間に休止時間を設ける。即ち、右側戻り位置RP又は左側戻り位置LPにてヘッド41を所定の時間だけ停止させておく。よって、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離が短い場合には、通常の双方向印刷を実施する場合に比べて、前後の印刷パスの時間間隔が長くなる。そのために、例えば、休止時間をカウントするカウンターをコントローラー10に設けるとよい。また、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離が短いほど、休止時間を長くしてもよい。
【0103】
つまり、コントローラー10は、主画像と背景画像を重ねて形成させる場合に、ヘッド41を移動方向の双方向に移動させる時にノズルから流体を噴射させる制御を実施し、下層画像を印刷させる際にヘッド41を移動方向に移動させる側における画像端部(端)から媒体端部(端)までの距離が閾値未満の場合には、前記距離が閾値以上の場合に比べて、印刷パスの時間間隔を長くする。
【0104】
そうすることで、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離が短く、ヘッド41が画像印刷領域上の或る地点を通過する時間間隔が短い場合には、休止時間が設けられ、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができる。逆に、下層画像を印刷する際にヘッド41が移動する側における画像端部から媒体端部までの距離が長く、ヘッド41が画像印刷領域上の或る地点を通過する時間間隔が長い場合には、休止時間が設けられず、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔が必要以上に長くなってしまうことを防止できる。その結果、画像の滲みや混色を防止しつつ、印刷時間を短縮することができる。
【0105】
そのために、例えば、図15のフローのように、コントローラー10が、1ページごと(1枚の媒体に印刷する画像ごと)に、休止時間を設けるか否かを設定するようにしてもよい。具体的には、コントローラー10は、白使用モードの印刷データを受信した場合に(S501)、印刷データに基づいて、1ページにおける画像の端部から媒体端部までの距離の中の最短距離を算出し(第3実施例と同様)、その最短距離と閾値を比較する(S502)。そして、コントローラー10は、算出した最短距離が閾値未満の場合(S502→Y)、印刷パス間に休止時間を設け(S503)、算出した最短距離が閾値以上の場合(S502→N)、印刷パス間に休止時間を設けない(S504)。
【0106】
また、これに限らず、印刷パスごとに休止時間を設けるか否かを決定してもよい。そのために、第4実施例のように、或る印刷パスにてヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら印刷する下層画像の移動方向一方側の端部から媒体の移動方向一方側の端部までの距離を算出し、その距離が閾値未満の場合に、或る印刷パスと次の印刷パスとの間に休止時間を設けるようにしてもよい。
また、第5実施例のように、或る印刷パスにてヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら印刷する下層画像とそれに重なる上層画像とが重複する領域の移動方向一方側の端部から、媒体の移動方向一方側の端部までの距離を算出し、その距離が閾値未満の場合に、或る印刷パスと次の印刷パスとの間に休止時間を設けるようにしてもよい。
また、第6実施例のように、或る印刷パスにてヘッド41が移動方向の一方側に移動しながら印刷する下層画像上に重ねて印刷する上層画像の移動方向一方側の端部から、媒体の移動方向一方側の端部までの距離を算出し、その距離が閾値未満の場合に、或る印刷パスと次の印刷パスとの間に休止時間を設けるようにしてもよい。
【0107】
===第8実施例===
前述の白使用モードにおける印刷方法では、各印刷パスにおいてカラーノズル列Coの半分のノズルと、ホワイトノズル列Wの半分のノズルが用いられていた。そして、各印刷パスにおいて主画像と背景画像が印刷されていた。つまり、前述の白使用モードにおける印刷方法では、各印刷パスにおいて、下層画像と上層画像の両方が印刷されていた。
【0108】
一方、各印刷パスにおいて、カラーノズル列Co又はホワイトノズル列Wの一方を用いて下層画像を先に印刷し、その後に逆搬送(バックフィード)を行い、他方のノズル列を用いて上層画像を下層画像上に印刷することができる。そうすることで、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列の全てのノズルを用いることができ、不使用ノズルを減らすことができる。
【0109】
図16Aは、第8実施例の使用ノズルを説明する図である。図16Bは、第8実施例の印刷方法を説明する図である。図では説明の簡略のため、図4の場合と同様に、1ノズル列に属するノズル数を14個に減らす。また、背景画像と主画像の搬送方向の幅長さは、42Dであり、それぞれ3回のパスで形成可能である。ここでは、白使用モード・表刷りモードの印刷方法について説明する。
【0110】
まず、パス1〜パス3では、ホワイトノズル列Wの全てのノズル#1〜#14(△)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとする。なお、カラーノズル列Coの全てのノズルは、不使用ノズルとする。そして、1回の媒体搬送量を、ノズル列の長さ14Dとする。そうすることで、パス1〜パス3にて、搬送方向の幅長さが42Dの背景画像が印刷される。
【0111】
次に、搬送方向とは逆方向に媒体が搬送される(逆搬送)。図ではノズル列が移動しているように描かれているが、実際には媒体の方が移動することになる。
【0112】
逆搬送後のパス4〜パス6では、カラーノズル列Coの全てのノズル#1〜#14(●)を、主画像を印刷するための使用ノズルとする。なお、ホワイトノズル列Wの全てのノズル#1〜#14(△)は、不使用ノズルとする。そして、1回の媒体搬送量を、ノズル列の長さ14Dとする。そうすることで、パス4〜パス6にて、背景画像の上に主画像が重ねて印刷される。
【0113】
第8実施例では、コントローラー10は、第1実施例のように、白モードの印刷データを受信した場合(図7A:S001→Y)、最短印刷制御を実施しないと設定する(図7A:S002)。これにより、下層画像(図16Bでは背景画像)を印刷してから上層画像(図16Bでは主画像)を印刷するまでの間にヘッド41の移動する距離が長くなり、下層画像と上層画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができる。その結果、画像の滲みや混色を防止でき、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0114】
なお、第8実施例では、コントローラー10は、第1実施例のように、カラーモードの印刷データを受信した場合(図7A:S001→N)、最短印刷制御を実施すると設定する(図7A:S003)。カラーモードの場合、主画像だけが印刷されるので、画像の滲みや混色の問題が生じないため、最短印刷制御を実施することで、画像の画質を劣化させずに印刷時間を短縮することができる。
【0115】
===第9実施例===
図17は、第9実施例の説明図である。理解を容易にするため、図中では第8実施例と比較しながら第9実施例が説明されている。
【0116】
第9実施例では、白使用モードの場合、第8実施例(図16A及び図16B)と同様に、各印刷パスにおいて、カラーノズル列Co又はホワイトノズル列Wの一方を用いて下層画像を先に印刷し、その後に逆搬送(バックフィード)を行い、他方のノズル列を用いて上層画像を下層画像上に印刷する。その上で、第9実施例では、白使用モードの場合においても、最短印刷制御を実施することがある。
【0117】
白使用モード・表刷りモードの場合、主画像は、背景画像の上に重ねて印刷される(図3の白使用モード・表刷りモードを参照)。白インクで印刷された背景画像の表面は凹凸になっているため、その背景画像の上に印刷される主画像の画質は、劣化しやすい。また、主画像の印刷前に媒体Sが白インクを既に吸収しているため、主画像が滲んだり混色したりして、主画像の画質が劣化しやすい。
【0118】
一方、白使用モード・裏刷りモードの場合、主画像は、媒体Sの表面に印刷される(図3の白使用モード・裏刷りモードを参照)。媒体Sの印刷面は比較的平滑であるため、媒体Sの印刷面に印刷された主画像の画質は、白使用モード・表刷りモードの場合の主画像と比べて劣化しにくい。また、4色のインクが媒体Sの印刷面で吸収されやすいため、主画像の画質は、白使用モード・表刷りモードの場合の主画像と比べて劣化しにくい。
【0119】
そこで、第9実施例では、白使用モード・表刷りモードの印刷データを受信した場合には、コントローラー10は、最短印刷制御を実施しないと設定する。そうすることで、背景画像を印刷してから主画像を印刷するまでの間にヘッド41の移動する距離が長くなり、背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができる。その結果、主画像の滲みや混色を防止でき、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0120】
一方、白使用モード・裏刷りモードの印刷データを受信した場合には、コントローラー10は、下層画像である主画像の印刷時には最短印刷制御を実施すると設定し、上層画像である背景画像の印刷時には最短印刷制御を実施しないと設定する。そうすることで、主画像の画質を劣化させずに、第8実施形態と比べて印刷時間を短縮することができる。
【0121】
===第10実施例===
前述の印刷方法では、1回のパスでバンド画像が形成されるバンド印刷が行われていたため、搬送方向におけるノズルの間隔と、搬送方向におけるドット列の間隔は、同じ間隔Dであった。第10実施例では、或る印刷パスにて形成されたドット列の間に、他の印刷パスでドット列を形成するインターレース印刷方法を採用している。インターレース印刷方法では、搬送方向におけるノズルの間隔は、搬送方向におけるドット列の間隔の整数倍になる。以下に説明する第10実施例では、搬送方向におけるノズルの間隔(1/180インチ)は、搬送方向におけるドット列の間隔(1/360インチ)の2倍になっている。
【0122】
図18Aは、第10実施例の印刷方式における使用ノズルの説明図である。
【0123】
第10実施例ではドット列の間隔Dが1/360インチになるため、ノズルの表記が前述の実施例と異なっているが、第10実施例のノズルの配置は、前述の実施例と同様である。つまり、第10実施例においても、カラーノズル列Coはノズルが搬送方向に1/180インチ(180dpi)で並んでおり、ホワイトノズル列Wもノズルが搬送方向に1/180インチ(180dpi)で並んでいる。搬送方向におけるノズルの間隔は、2D(Dは搬送方向におけるドット列の間隔)と表記されているが、前述の実施例と同様に1/180インチである。
【0124】
第10実施例においても、白使用モード・表刷りモードの印刷方法では、ホワイトノズル列Wの搬送方向上流側の半分のノズル#8〜#14(△)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル#1〜#7(●)を、主画像を印刷するための使用ノズルとする。また、第10実施例においても、白使用モード・裏刷りモードの印刷方法では、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル#1〜#7(△)を、背景画像を印刷するための使用ノズルとし、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル#8〜#14(●)を、主画像を印刷するための使用ノズルとする。
【0125】
図18Bは、第10実施例の印刷方式の説明図である。ここでは、白使用モード・表刷りモードの印刷方法について説明し、裏刷りモードの印刷方法については説明を省略する。
【0126】
第10実施例では、奇数番目の印刷パスにて、各ノズル列が2D(=1/180インチ)の間隔でドット列を形成する。奇数番目の印刷パスの後、媒体がD(=1/360インチ)にて搬送され、次に偶数番目の印刷パスが行われる。偶数番目の印刷パスでは、奇数番目の印刷パスで形成されたドット列の間にドット列が形成されるように、各ノズル列が2D(=1/180インチ)の間隔でドット列を形成する。2回の印刷パスが行われることによって、バンド画像が形成される。つまり、前述の図4Aでは1回の印刷パスでバンド画像が形成されたのに対し、第10実施例では複数回(2回)の印刷パスでバンド画像が形成される。そして、2回の印刷パスでバンド画像が形成された後、媒体が13Dにて搬送される。その後は、同様に印刷パス(奇数番目の印刷パスと偶数番目の印刷パス)と搬送(搬送量がDの搬送と、搬送量が13Dの搬送)とが繰り返される。
【0127】
図19は、第10実施例の別の印刷方式の説明図である。ここでも、白使用モード・表刷りモードの印刷方法について説明し、裏刷りモードの印刷方法については説明を省略する。
【0128】
この印刷方式では、印刷パスが終わる毎に媒体が搬送量7Dにて搬送される。このように、一定量にて媒体を搬送しながら、或る印刷パスにて形成されたドット列の間に、他の印刷パスでドット列を形成することも可能である。
【0129】
そして、第10実施例の印刷方法を採用する場合においても、コントローラー10は、第1実施例のように、白モードの印刷データを受信した場合(図7A:S001→Y)、最短印刷制御を実施しないと設定する(図7A:S002)。これにより、下層画像(図16Bでは背景画像)を印刷してから上層画像(図16Bでは主画像)を印刷するまでの間にヘッド41の移動する距離が長くなり、下層画像と上層画像を重ねて印刷する時間間隔を長くすることができる。その結果、画像の滲みや混色を防止でき、画像の画質劣化を抑制することができる。
【0130】
また、第10実施例の印刷方法を採用する場合においても、コントローラー10は、第1実施例のように、カラーモードの印刷データを受信した場合(図7A:S001→N)、最短印刷制御を実施すると設定する(図7A:S003)。カラーモードの場合、主画像だけが印刷されるので、画像の滲みや混色の問題が生じないため、最短印刷制御を実施することで、画像の画質を劣化させずに印刷時間を短縮することができる。
【0131】
===第11実施例===
前述の実施例では、コントローラー10が最短印刷制御を実施しないと設定すると、全ての印刷パスにおいて最短印刷制御が実施されないことになる。但し、以下に説明するように、最短印刷制御を実施する印刷パスと最短印刷制御を実施しない印刷パスとを混在させても良い。
【0132】
図20は、第11実施例の印刷方法の設定フローである。第1実施例(図7A)と比べると、第11実施例では、S602及びS604の処理が加わっている点で異なる。
【0133】
コントローラー10は、白使用モードの印刷データを受信した場合(S601→Y)、その印刷データの示す印刷方法がインターレース印刷か否かを判断する(S602)。印刷データの示す印刷方法がバンド印刷の場合(S602→N)、コントローラー10は、第1実施例のS002と同様に、最短印刷制御を実施しないと設定する(S603)。
【0134】
一方、印刷データの示す印刷方法がインターレース印刷の場合(S602→Y)、コントローラー10は、印刷パスに応じて最短印刷制御をオン又はオフに設定する(S604)。つまり、この場合、白使用モードの印刷方法であるにも関わらず、最短印刷制御を実施する印刷パスが存在する。
【0135】
例えば図18Bに示す白使用モード・表刷りモードのインターレース印刷の場合、印刷パス1によって背景画像が形成された領域には、印刷パス2が行われた後に、印刷パス3や印刷パス4にて主画像が印刷されることになる。このように、第10実施例の図18Bの白使用モード・表刷りモードの印刷方法の場合、奇数番目の印刷パスによって背景画像が印刷された領域には、偶数番目の印刷パスが行われた後に、主画像が印刷されることになる。この結果、奇数番目の印刷パスで吐出された白インクは、偶数番目の印刷パスで吐出された白インクよりも、主画像が重なるまでの時間間隔が比較的長い。
【0136】
そこで、コントローラー10は、図18Bに示す白使用モード・表刷りモードのインターレース印刷の場合(S601→Y、S602→Y)、奇数番目の印刷パスに対しては最短印刷制御を実施すると設定し、偶数番目の印刷パスに対しては最短印刷制御を実施しないと設定する(S604)。
【0137】
また、例えば図19に示す白使用モード・表刷りモードのインターレース印刷の場合、印刷パス1によって背景画像が形成された領域には、印刷パス2が行われた後に、印刷パス3や印刷パス4にて主画像が印刷されることになる。このため、印刷パス1で吐出された白インクは、印刷パス2で吐出された白インクよりも、主画像が重なるまでの時間間隔が比較的長い。
【0138】
但し、図19のインターレース印刷の場合、図18Bのインターレース印刷の場合と異なり、印刷パス2以後の印刷パスで最短印刷制御を実施することは好ましくない。この理由は、印刷パス2以後の印刷パスでは、白インクを吐出するノズル#8〜#14(△)のうちの搬送方向下流側の半分のノズル♯8〜#10によって背景画像が形成された領域には、次に印刷パスで主画像が印刷されることになるためである。
【0139】
そこで、コントローラー10は、図19に示す白使用モード・表刷りモードのインターレース印刷の場合(S601→Y、S602→Y)、印刷パス1に対しては最短印刷制御を実施すると設定し、その他の印刷パスに対しては最短印刷制御を実施しないと設定する(S604)。
【0140】
このように、第11実施例では、白使用モードの場合であっても(S601→Y)、印刷パスに応じて最短印刷制御を実施する。特にインターレース印刷の場合(S602→Y)、或る印刷パスによって背景画像が印刷された領域に次の印刷パスで主画像が重ねて印刷されないことがあるため、その様な印刷パスでは最短印刷制御を実施することができる。その結果、白使用モードの場合であっても、画像の画質を劣化させずに、最短印刷制御を実施した印刷パスの分だけ印刷時間を短縮することができる。
【0141】
なお、第11実施例においても、カラーモードの印刷データを受信した場合(S601→N)、コントローラー10は最短印刷制御を実施すると設定する(S605)。最短印刷制御を実施し、ヘッド41が媒体上の或る地点を通過する時間間隔が短くなったとしても、カラーモードの場合、媒体上の或る地点には主画像だけが印刷される。よって、画像の滲みや混色の問題が生じない。つまり、カラーモードの場合に最短印刷制御を実施することで、画像の画質を劣化させずに、印刷時間を短縮することができる。この点は第1実施例と同様である。
【0142】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として流体噴射装置について記載されているが、流体噴射方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0143】
<制御部について>
前述の実施形態では、プリンター1内のコントローラー10が、白使用モードの印刷データを受信した際に、最短印刷制御を実施すると設定している。よって、コントローラー10が制御部に相当し、プリンター1単体が流体噴射装置に相当する。ただし、これに限らず、プリンター1に接続されたコンピューター60にインストールされたプリンタードライバー(プログラム)が、コンピューター60のハードウェア資源を利用して、白使用モードの印刷データを作成する際に、この印刷データを最短印刷制御を実施せずに印刷するように設定してもよい。この場合、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター60とプリンター1のコントローラーが制御部に相当し、プリンター1とコンピューター60が接続された印刷システムが流体噴射装置に相当する。
【0144】
<背景画像について>
前述の実施形態では、白インクによって背景画像を印刷するとしている。しかし、これに限らず、白以外の色インク(例えば、メタリック系のインク)によって背景画像を印刷してもよい。
また、白インクのみを使用して背景画像を印刷すると、背景画像を印刷する白インクの色そのものの色が背景画像の色となる。同じように白インクと呼ばれるインクであっても、インクの材料などによって白色の色味が若干異なる。単純な白ではなく若干の有彩色を有する背景画像が所望されることもある。そのため、白インクと共に、少量の他色のインク(YMCK)を適宜使用して、所望の白色の背景画像を印刷してもよい。この場合、例えば、図4Aに示すヘッド41内のカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(#8〜#14)が背景画像を印刷するための使用ノズルとなる。また、白インクが若干の色彩を有する場合には、逆に、白インクとカラーインクで背景画像を印刷することで、その色彩を打ち消すこともできる。
【0145】
<ノズル列構成について>
前述の実施形態では(図2)、1つのヘッド41内において、主画像を印刷するための4色ノズル列(YMCK)と背景画像を印刷するためのホワイトノズル列(W)が、ヘッド41の移動方向に並んでいるが、これに限らない。例えば、4色ノズル列(YMCK)とホワイトノズル列(W)がノズル列方向にずれていてもよい。表刷りモードと裏刷りモードの両方を実現するために、4色ノズル列に対して、ホワイトノズル列Wをノズル列方向の両端側に設けてもよい。また、4色ノズル列(YMCK)とホワイトノズル列(W)を異なるヘッド41に設けてもよい。
【0146】
<白色について>
なお、背景画像を白色としているが、本明細書における「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、所謂「白っぽい色」のように社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-oneProを用いて、測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、L色空間での標記がa平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L値が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製測色計CM2022を用いて測定モードD502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、L色空間での標記がa平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L値が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色か、をいい、背景として用いられるのであれば純粋な白に限られない。
【0147】
<インクと媒体について>
本実施形態では、インクと該インクを吸収するインク吸収性の有る媒体を用いる。インクは吸収性媒体に吸収されるインクであればよいが、インク吸収性媒体への吸収性を確保するために蒸発性の溶剤を含むことが好ましい。また、溶剤として水を少なくとも含む「水系インク」が特に好ましい。インクを構成する他の成分としては、色材としての染料や顔料がある。また、インクジェットヘッドからの吐出安定性のために水溶性の有機溶剤をも含有していてもよいし、保湿剤、浸透促進剤、ph調整剤、防虫剤、紫外線吸収剤などを必要により含有していてもよい。このようなカラーインクとして、例えば、特開2008−81693、特開2005−105135、特開2003−292834に記載のインクを使用できる。
また、白インクは、色材として中空樹脂や酸化チタンなどの白色顔料を含有し、色材以外の成分はカラーインクと同様のものでよい。このような白インクとして、例えば、特開2009−138078、特開2009−137124に記載のインクを使用できる。
媒体は、インク組成物の溶剤を吸収することでインク組成物の色材を固着するものである。例えば、紙、布などのインクを吸収する基材を用いた媒体でも良いし、インクを吸収する基材或いはインクを吸収しない基材にインクを吸収するインク吸収層を設けたものでもよい。透明性の有る媒体を用いる場合は、例えば、特開2009−925、特開平9−99634、特開平9−208870に記載の媒体が使用できる。
本実施形態で用いるインクと媒体が上述のものであれば、前述の実施形態のように背景画像と主画像を重ねて印刷する時間間隔を長く設けることで、インクの乾燥時間を長く設けることができ、画像の滲みや混色を防止することができる。ただし、本実施形態で用いるインクや媒体は上述のものに限るものでは無く、インク中の成分が媒体に固着する時間を設ける必要のあるものであればよい。
【0148】
<プリンターについて>
前述の図2に記載されたプリンターは、媒体に直接接触した搬送ローラーを回転させて媒体を搬送する搬送ユニットを備えていた。但し、このようなプリンターに限られない。
【0149】
図21は、フラットベッドタイプのプリンターの説明図である。このプリンターでは、媒体SはテーブルTに吸着されており、搬送ユニットによって媒体が直接搬送されるのではなく、搬送ユニットがテーブルTを移動することによって媒体Sが搬送方向に搬送される。そして、このプリンターは、ヘッド41を移動方向に移動しながら媒体Sに画像を印刷する動作と、テーブルTを移動することによって媒体Sをヘッド41に対して搬送方向に搬送する動作とを繰り返す。このようなプリンターを用いて前述の実施例を実現しても良い。
【0150】
図22A及び図22Bは、別のタイプのプリンターの説明図である。このプリンターでは、このプリンターの搬送ユニットは、ロール状の媒体SをX方向(搬送方向)に搬送する。また、このプリンターのキャリッジユニットは、ヘッド41を搭載したキャリッジ31をX方向に移動させるためのXテーブル32Xと、Xテーブル32をY方向(媒体の幅方向)に移動させるためのYテーブル32Yとを有する。このため、ヘッド41は、媒体に対して、2次元方向に移動可能である。このプリンター1は、ヘッドをX方向(媒体の搬送方向、ロール状の媒体の連続する方向)に移動させながら画像を印刷する動作と、ヘッドをY方向(媒体の幅方向)に移動する動作とを繰り返して、印刷領域に画像を印刷する。また、このプリンターは、印刷領域に画像が印刷された後、媒体を搬送方向に搬送することによって、未だ画像が印刷されていない部分を印刷領域に搬送する。このようなプリンターを用いて前述の実施例を実現しても良い。
【0151】
さらに、図22A及び図22Bのようにヘッドが2次元方向に移動するタイプのプリンターであって、媒体の搬送に図21のようなテーブルを用いても良い。
【0152】
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示していたが、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンター(印刷装置)ではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
また、ノズルからの流体噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて圧力室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
また、ヘッド41から噴射するインクは、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型インクであってもよい。
【符号の説明】
【0153】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、20 搬送ユニット、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、40 ヘッドユニット、
41 ヘッド、50 検出器群、60 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1のノズル列と、
(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並ぶ第2のノズル列と、
(C)媒体に対して前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記所定方向と交差する移動方向に移動させながら前記ノズルから流体を噴射させる噴射動作と、前記第1のノズル列及び前記第2のズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる相対移動動作と、を繰り返し実行させる制御部であって、
前記第1の流体により形成させる主画像と前記第2の流体により形成させる背景画像を異なる前記噴射動作にて前記媒体に重ねて形成させる場合に、画像の前記移動方向における端の位置に応じて前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列の前記移動方向への移動距離を変動させる制御を実施しない前記噴射動作を含むように、前記噴射動作を繰り返し実行させる制御部と、
(D)を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、前記媒体に前記背景画像と重ねずに前記主画像を形成させる場合に、画像の前記移動方向における端の位置に応じて前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列の前記移動方向への移動距離を変動させる制御を、実施する、
流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、
前記媒体の所定領域に対して先に形成させる画像を形成させる際に前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向に移動させると想定した側の画像の端から、前記媒体の前記移動方向における前記想定した側の端まで、の距離が閾値未満の場合、前の前記噴射動作と移動方向における同じ側に前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させ、
前記距離が前記閾値以上の場合、前の前記噴射動作とは移動方向における逆の側に前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させる、
流体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、
前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の一の側に移動させる或る前記噴射動作時に前記媒体の所定領域に対して先に形成させる画像の前記移動方向における前記一の側の端から、前記媒体の前記移動方向における前記一の側の端まで、の距離が閾値未満の場合、或る前記噴射動作の次の前記噴射動作時には、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の前記一の側に移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させ、
前記距離が前記閾値以上の場合、或る前記噴射動作の次の前記噴射動作時には、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の他の側に移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させる、
流体噴射装置。
【請求項5】
請求項3に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、
前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の一の側に移動させる或る前記噴射動作時に前記媒体の所定領域に対して先に形成させる画像のうち、後に形成させる画像と重なる領域の前記移動方向における前記一の側の端から、前記媒体の前記移動方向における前記一の側の端まで、の距離が閾値未満の場合、或る前記噴射動作の次の前記噴射動作時には、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の前記一の側に移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させ、
前記距離が前記閾値以上の場合、或る前記噴射動作の次の前記噴射動作時には、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の他の側に移動させる時に、前記ノズルから流体を噴射させる、
流体噴射装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、
前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の双方向に移動させる時に前記ノズルから流体を噴射させる制御を実施し、
前記媒体の所定領域に対して先に形成させる画像を形成させる際に前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向に移動させる側の画像の端から、前記媒体の前記移動方向における前記移動させる側の端まで、の距離が閾値未満の場合には、前記距離が前記閾値以上の場合に比べて、前記噴射動作の時間間隔を長くする、
流体噴射装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、前記主画像と前記背景画像を重ねて形成させる場合に、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を前記移動方向の一の側に移動させる時にだけ前記ノズルから流体を噴射させる制御を実施する、
流体噴射装置。
【請求項8】
第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1のノズル列、及び、第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並ぶ第2のノズル列が、前記所定方向と交差する移動方向に移動しながら、前記ノズルから流体を噴射する噴射動作を実施することと、
前記第1のノズル列及び前記第2のズル列と前記媒体とが前記所定方向に相対移動する相対移動動作を実施することと
を繰り返し実行する流体噴射方法であって、
前記第1の流体により形成する主画像と前記第2の流体により形成する背景画像を異なる前記噴射動作にて前記媒体に重ねて形成する場合に、画像の前記移動方向における端の位置に応じて前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列の前記移動方向への移動距離を変動させない前記噴射動作を含むように、前記噴射動作を繰り返し実行することを特徴とする流体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−14093(P2013−14093A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149341(P2011−149341)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】