説明

流体噴射装置

【課題】実効性の高いメンテナンスを行うことが可能な流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】流体を噴射する噴射ヘッドと、前記流体を受ける流体受部と、前記流体受部に設けられ、前記流体受部で受けた前記流体を保持する流体保持部材と、前記流体保持部材の表面を押さえて前記流体保持部材を保持する押さえ部材と、前記押さえ部材を介して前記流体保持部材に洗浄液を供給する洗浄液供給部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を噴射する流体噴射装置として、例えば記録媒体に文字や画像等を記録するインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体を搬送しつつ、噴射ヘッドに設けられたノズルから当該記録媒体にインクを噴射することで、記録媒体にされる構成になっている。インクジェット式記録装置には、噴射ヘッドの噴射領域を覆うキャップが設けられている。
【0003】
インクジェット式記録装置においては、噴射ヘッドのノズルからインクが蒸発することによるインクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズルに目詰まりが生じ、印刷不良を引き起こす場合がある。このため、記録媒体に対しての噴射とは別に、ノズル内のインクを強制的に排出させるフラッシング動作などのメンテナンス動作を行うように構成されている。
【0004】
フラッシング動作では、排出されるインクを例えばキャップなどに受けさせるようにしている。キャップ内には、例えば受けたインクを排出する排出口や、インクが飛散しないように吸収する吸収部材が設けられており、装置内の環境が汚染されにくい構成となっている。
【0005】
一方、吸収部材に吸収されるインクが増粘したり固化したりすると、排出口を塞いでしまい、十分なメンテナンスを行うことが困難となる。この場合、インクがキャップ内に保持されたまま排出されなくなるなどの問題があるため、例えば特許文献1に示すように、キャップの底部から吸収部材に洗浄液を供給するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−143071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の構成では、吸収部材の上部まで洗浄液を供給することが困難であり、十分な洗浄を行うことができないため、メンテナンスの実効性の面で問題があった。
【0008】
上記のような事情に鑑み、本発明は、実効性の高いメンテナンスを行うことが可能な流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る流体噴射装置は、流体を噴射する噴射ヘッドと、前記流体を受ける流体受部と、前記流体受部に設けられ、前記流体受部で受けた前記流体を保持する流体保持部材と、前記流体保持部材の表面を押さえて前記流体保持部材を保持する押さえ部材と、前記押さえ部材を介して前記流体保持部材に洗浄液を供給する洗浄液供給部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、流体保持部材の表面を押さえる押さえ部材を伝わらせることで流体保持部材に洗浄液を供給することができるため、当該流体保持部材の表面から内部へ洗浄液を浸透させることができる。これにより、流体保持部材に満遍なく洗浄液を供給して洗浄することができるので、実効性の高いメンテナンスを行うことが可能となる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記噴射ヘッドは、前記流体を噴射する噴射面を有し、前記流体受部は、前記噴射面を覆うように形成されていることが好ましい。
本発明によれば、流体保持部材に満遍なく洗浄液が供給され、当該流体保持部材の表面に流体が残留しにくくなるため、噴射ヘッドの噴射面を覆う場合には流体保持部材上の流体が噴射面に付着するのを抑えることができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記流体受部は、前記流体及び前記洗浄液のうち少なくとも一方を排出する排出口を有することが好ましい。
本発明によれば、流体受部が流体及び洗浄液のうち少なくとも一方を排出する排出口を有することとしたので、洗浄された流体が流体受部に留まるのを回避することができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記排出口は、吸引装置に接続されていることが好ましい。
本発明によれば、排出口が吸引装置に接続されていることとしたので、流体受部内の流体や洗浄液を積極的に排出することができる。これにより、流体受部内を清浄な状態に維持することができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記流体受部との間で前記流体保持部材を含む空間を閉塞する蓋部材を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、流体受部との間で流体保持部材を含む空間を閉塞することができるので、洗浄液の乾燥を防ぐことができる。
【0015】
上記の流体噴射装置は、前記押さえ部材は、前記洗浄液を流通させる流路を有し、前記洗浄液供給部は、前記流路に接続された洗浄液供給源を有することが好ましい。
本発明によれば、押さえ部材が洗浄液を流通させる流路を有し、洗浄液供給部が流路に接続された洗浄液供給源を有することとしたので、洗浄液を効率的に流通させることができる。
【0016】
上記の流体噴射装置は、前記押さえ部材は、線状に形成され、前記流路は、前記押さえ部材の延在方向に沿って形成されていることが好ましい。
本発明によれば、押さえ部材が線状に形成され、流路が押さえ部材の延在方向に沿って形成されているので、流体保持部材の全体に満遍なく洗浄液を供給させることができる。
【0017】
上記の流体噴射装置は、前記流路は、前記押さえ部材の表面に形成されていることが好ましい。
本発明によれば、流路が押さえ部材の表面に形成されていることとしたので、流体保持部材に洗浄液を効率的に供給することができる。
【0018】
上記の流体噴射装置は、前記流路は、前記押さえ部材の内部に形成されており、前記押さえ部材は、前記流路の内外を連通する開口部を有することが好ましい。
本発明によれば、流路が押さえ部材の内部に形成されており、押さえ部材が流路の内外を連通する開口部を有することとしたので、当該開口部を介して効率的に洗浄液を供給することができる。また、上記の蓋部材及び吸引装置を有する構成とした場合には、蓋部材によって流体保持部材を含む空間を閉塞させた状態で吸引装置を作動させることにより、閉塞される空間を負圧にすることができ、当該負圧を利用して開口部から洗浄液を供給することができる。また、流体受部によって噴射ヘッドの噴射面を閉塞させるように覆う場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0019】
上記の流体噴射装置は、前記押さえ部材は、前記流体保持部材の外周に沿って形成され、前記開口部は、前記押さえ部材の内周側に設けられることが好ましい。
本発明によれば、流体保持部材の外周側から内周側に向けて洗浄液を供給することができるので、流体保持部材に満遍なく洗浄液を供給することができる。
【0020】
上記の流体噴射装置は、前記流路は、前記洗浄液に対して親液性となるように形成されていることが好ましい。
本発明によれば、流路が洗浄液に対して親液性となるように形成されているので、洗浄液を流通させやすくすることができる。
【0021】
上記の流体噴射装置は、前記流路は、前記洗浄液供給源に対して下流に至るほど細く形成されていることが好ましい。
本発明によれば、流路が洗浄液供給源に対して下流に至るほど細く形成されていることとしたので、洗浄液供給源の供給圧が低い場合であっても洗浄液を流路の隅々まで流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの全体構成を示す概略図。
【図2】本実施形態に係るプリンタのキャッピング機構の構成を示す平面図。
【図3】キャッピング機構の構成を示す断面図。
【図4】メンテナンス動作を行うときのキャッピング機構の様子を示す図。
【図5】本発明に係るキャッピング機構の他の構成を示す図。
【図6】本発明に係るキャッピング機構の他の構成を示す図。
【図7】本発明に係るキャッピング機構の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面をもとにして本発明の実施の形態を説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る流体噴射装置として、インクジェット式プリンタを例示して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るプリンタ(流体噴射装置)1の構成を概略的に示す斜視図である。
同図に示すように、プリンタ1は、液体噴射ヘッドの一種である噴射ヘッド2を搭載すると共に液体貯留部材の一種であるインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、噴射ヘッド2の下方に配設され記録紙6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録紙6を紙送り方向に搬送する紙送り機構8とを有する構成となっている。また、プリンタ1全体の動作を制御する制御装置(図示しない)が設けられている。上記紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記紙送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
インクカートリッジ3としては、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものには限らず、プリンタ1の筐体側に装着してインク供給チューブを介して噴射ヘッド2に供給するタイプのものを採用してもよい。
【0025】
ガイドロッド9は、主走査方向に架設された支持部材である。キャリッジ4は、このガイドロッド9に支持された状態で取り付けられている。このキャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するようになっている。リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上の位置を検出する。この検出信号は、位置情報として制御部(図示せず)に送信されるようになっている。制御部は、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいて噴射ヘッド2の走査位置を認識し、噴射ヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御するようになっている。
【0026】
噴射ヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、噴射ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、キャッピング機構CPが設けられている。キャッピング機構CPは、キャップ部材61によって噴射ヘッド2のノズル開口形成面を封止し、インク溶媒の蒸発を防止する。このキャッピング機構CPは、封止状態のノズル開口面に負圧を与えてインクを強制的に吸引排出するクリーニング動作等にも用いられる。
【0027】
図2は、キャッピング機構CPの構成を示す平面図である。
図2に示すように、キャッピング機構CPは、噴射ヘッド2のノズル形成領域の一部を覆うキャップ部材61と、キャップ部材61内に固定された吸収部材64と、吸収部材64をキャップ部材61に固定させる固定ピン65と、吸収部材64の表面を押さえる押さえ部材66と、吸収部材64に洗浄液を供給する洗浄液供給部WSを備えた構成となっている。
【0028】
キャップ部材61は、例えばプラスチックなどの樹脂からなり、例えばトレイ状に形成されている。キャップ部材61の枠部63は、底部62の周縁に設けられており、枠部63の上端には例えばエラストマなどから構成されるシール部材63aが設けられている。シール部材63aは、噴射ヘッド2に当接するようになっている。
【0029】
吸収部材64は、例えばスポンジや多孔質膜等により構成されている。固定ピン65は、吸収部材64を貫通するように設けられており、底部62に固定されている。当該固定ピン65は、例えば平面視で吸収部材64の中央部を囲うように例えば6箇所に配置されている。
【0030】
押さえ部材66は、例えば針金等によって線状に形成されている。この押さえ部材66は、各固定ピン65に例えば熱かしめによって接合されており、吸収部材64の上面64cから底部62側へ当該吸収部材64を押さえるように各固定ピン65の間に設けられている。押さえ部材66は、平面視で吸収部材64の中央部を囲うように、当該吸収部材64の外周に沿って環状に形成されている。
【0031】
キャップ部材61の底部62には、吸引用の開口部67が設けられている。開口部67は、例えばキャップ部材61の一方の長辺に沿った部分に2箇所設けられている。この開口部67は1箇所又は3箇所以上配置しても構わないし、他の位置に配置しても構わない。底部62の下面側には、当該開口部67に接続される吸引管68が設けられている。吸引管68は、例えば吸引ポンプなどの吸引装置69に接続されている。
【0032】
図3は、図2におけるA−A断面に沿った図である。
図3に示すように、押さえ部材66は、内部に流路66aを有している。流路66は、押さえ部材66の延在方向に沿って形成されており、洗浄液供給部WSの洗浄液供給源71に接続されている。また、押さえ部材66には、洗浄液供給口66bが形成されている。洗浄液供給口66bは、例えば押さえ部材66の内周側に複数配置されている。洗浄液供給口66bは、押さえ部材66の流路66aと外部とを貫通するように形成されている。
【0033】
洗浄液供給源71は、洗浄液を貯留する貯留部71aと、当該貯留部71aを加圧する加圧機構71bとを有している。加圧機構71bによって貯留部71aを加圧することにより、貯留部71aから配管72を介して流路66a内に洗浄液が供給されるようになっている。流路66a内に供給された洗浄液は、洗浄液供給口66bを介して吸収部材64の上面64cに供給されるようになっている。配管72は、例えばキャップ部材61の枠部63を貫通し、吸収部材64の内部を介して流路66a内に接続される構成であっても構わない。
【0034】
洗浄液は、吸収部材64の洗浄に用いられ、例えば水と銀のナノ粒子とを含有する液体が用いられている。具体的には、水をベースにした銀コロイドなどが挙げられる。例えば保湿作用を有するグリセリンを洗浄液に加えることで、容易に乾燥しない構成とすることができる。
【0035】
洗浄液としては、例えば液状体に含有されている洗浄性材料を溶質として溶解する液体、洗浄性材料をコロイド状態にするための液体、液状体に含有されている洗浄性材料を粒子として分散する液体、洗浄性材料を膨潤させる液体、液状体に流動性を与えている主成分と同じ成分、のうちの少なくとも一つを採用することができる。さらに、洗浄液は、このような液体に加えて界面活性剤を含んでいていても構わない。また、洗浄液が、界面活性剤であってもよい。
【0036】
洗浄性材料としては、例えば銀のナノ粒子などが挙げられる。ただし、PEDOT/PSSなどの他の導電性材料であってもよいし、絶縁性材料でもあってもよいし、または半導体材料であってもよい。さらに、機能性材料は、顔料であってもよい。機能性材料が顔料の場合には、典型的な顔料は、液状体においてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、または2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチルアセテートに分散されているので、この場合の洗浄液は、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、または2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチルアセテートを含有すればよい。
【0037】
次に、上述の構成を有するプリンタ1の動作の一例を説明する。ここでは、吸引動作及び洗浄動作を含むメンテナンス部の動作を中心に説明する。
外部から印刷データが送信されると、不図示の制御装置は、ドットパターンに対応した噴射データに展開して噴射ヘッド2に送信する。そして、噴射ヘッド2では、受信した噴射データに基づき、記録(印字・印刷)処理、すなわち記録紙に対するインク滴の噴射を実行する。
【0038】
記録処理の後、動作を継続すると判断した場合、予め設定されている時間が経過すると、定期メンテナンス処理を開始する。また、記録処理の後、動作を継続しないと判断した場合、プリンタ1の処理を終了する。以下、動作を継続すると判断した場合について、説明する。
【0039】
定期メンテナンス処理が開始されると、噴射ヘッド2をメンテナンス位置まで下降させ、噴射ヘッド2とキャップ部材61のシール部材63aとが対向するように、キャップ部材61に噴射ヘッド2を近接させる。この状態で、キャップ部材61のシール部材63aを噴射ヘッド2に当接させる。これにより、キャップ部材61と噴射ヘッド2との間には密閉された空間が形成され、キャップ部材61によって噴射ヘッド2の噴射面が覆われた状態になる。
【0040】
続いて、制御装置は、吸引装置69を駆動させ、空間を負圧状態とする。これによって噴射ヘッド2の内部からインクが吸引される。空間を負圧状態にすることで、噴射ヘッド2内のインクが排出される。排出されたインクは、吸収部材64によって吸収されると共に、開口部67に吸い寄せられる。
【0041】
その後、吸引装置69を逆駆動することによって、キャップ部材61と噴射ヘッド2との間に形成されている負圧の空間を大気開放する。吸引装置69を逆駆動することによってキャップ部材61と噴射ヘッド2との間に空気が流入し、大気開放される。大気開放の後、噴射ヘッド2を上昇させてキャップ部材61を離間させる。
【0042】
その後、制御装置は、洗浄液供給部WSの加圧機構71bによって洗浄液貯留部71aを加圧させる。この加圧により、洗浄液貯留部71a内に貯留されていた洗浄液が配管72を介して押さえ部材66の流路66a内に流入する。流路66a内に流入した洗浄液は、流路66aの全体に亘って流通すると共に、図4に示すように、一部が供給口66bから流路66aの外部に噴出される。噴出された洗浄液WQは、吸収部材64の上面64cに供給され、当該上面64cから吸収部材64内に吸収され、吸収部材64の全体に満遍なく行き渡ることになる。この洗浄液WQにより、吸収部材64内に吸収されていたインクが洗い流される。
【0043】
制御装置は、洗浄液WQを吸収部材64に供給すると同時に、吸引装置69を作動させる。キャップ部材61内の洗浄液WQ及びインクは、開口部67を介して排出されることとなる。このようにして吸収部材64の洗浄動作を終えた後、制御装置は、噴射ヘッド2を用いて記録紙に対する記録動作を再開させる。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、吸収部材64の表面を押さえる押さえ部材66を伝わらせることで吸収部材64に洗浄液を供給することができるため、当該吸収部材64の表面から内部へ洗浄液を浸透させることができる。これにより、吸収部材64に満遍なく洗浄液を供給して洗浄することができるので、実効性の高いメンテナンスを行うことが可能となる。
【0045】
また、本実施形態によれば、押さえ部材66が洗浄液を流通させる流路66aを有し、洗浄液供給部WSが流路66aに接続された洗浄液供給源71を有することとしたので、吸収部材64に対して洗浄液を効率的に流通させることができる。また、押さえ部材66が線状に形成され、流路66aが押さえ部材66の延在方向に沿って形成されているので、吸収部材64の全体に満遍なく洗浄液を供給させることができる。また、流路66aが押さえ部材66の内部に形成されており、押さえ部材66が流路66aの内外を連通する洗浄液供給口66bを有することとしたので、当該洗浄液供給口66bを介して効率的に洗浄液を供給することができる。
【0046】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、押さえ部材66の内部に流路66aが形成された構成としたが、これに限られることは無く、例えば押さえ部材66の表面に流路が形成された構成としても構わない。
【0047】
例えば図5(a)〜図5(c)に示す構成においては、押さえ部材66は、キャップ部材61の上面側の表面が平坦に形成されており、当該平坦部分が図中上側となるように環状に構成されている。また、この押さえ部材66の平坦部分には、溝状に形成された流路66cが設けられている。洗浄液の流路66cは、当該平坦部分に形成されている。この平坦部分には、流路66cから押さえ部材66の内周側に分岐するように、洗浄液供給口66dが形成されている。上記実施形態と同様、流路66cは配管72等を介して洗浄液供給部71に接続されている。このように、流路66cが押さえ部材66の表面に形成されていることとしたので、吸収部材64に洗浄液を効率的に供給することができる。
【0048】
また、図6(a)及び図6(b)に示す構成においては、押さえ部材66のうちキャップ部材61の上面側の表面が平坦に形成されている点では図5(a)〜図5(b)に示す構成と同様であるが、流路66eが平坦部分の一部に形成されている点で異なっている。また、図6(a)及び図6(b)に示す構成では、流路66eのうち上流側の2つの端部から下流側に至るにつれて、流路66eが徐々に細く形成されている。このように流路66eが洗浄液の流通方向の下流に至るほど細く形成されていることで、洗浄液供給部71からの供給圧が低い場合であっても洗浄液を流路66eの下流側まで流通させることができる。
【0049】
更に、図6(a)及び図6(b)に示す構成では、押さえ部材66のうち流路66eが形成されていない部分66gに配管72が接続されている。この場合、配管72から供給されてくる洗浄液は、押さえ部材66の平坦部分66gを伝わって流路66eに供給されるようになっている。このように、押さえ部材66のうち平坦部分66gを用いて洗浄液を流通させる構成であっても構わない。なお、この場合、押さえ部材66の平坦部分66g自体が洗浄液の流路となる。
【0050】
また、図7に示すように、キャップ部材61との間で吸収部材64を含む空間を閉塞する蓋部材80を備える構成であっても構わない。蓋部材80は、例えばキャリッジ4に取り付けられており、当該キャリッジ4と一体的に移動可能に設けられている。したがって、キャリッジ4が移動することにより、蓋部材80とキャップ部材61とが対向するようになっている。蓋部材80とキャップ部材61とのそれぞれの対向面の寸法は、例えばほぼ同一に形成されていることが好ましい。当該吸収部材64を含む空間を閉塞する場合、まずキャリッジ4を移動させて蓋部材80とキャップ部材61との間の位置合わせを行った後、キャップ部材61を上昇させて蓋部材80に当接させるようにすれば良い。このような構成により、洗浄液の乾燥を防ぐことができる。
【0051】
また、図7に示す蓋部材80と上記実施形態に記載の吸引装置69とを有する構成とした場合には、蓋部材80によって吸収部材64を含む空間を閉塞させた状態で吸引装置69を作動させることにより、閉塞される空間を負圧にすることができ、当該負圧を利用して洗浄液供給口66bから洗浄液を供給することができる。なお、キャップ部材61によって噴射ヘッド2の噴射面2Aを閉塞させるように覆う場合においても、同様の動作を行うことができる。
【0052】
また、上記実施形態では、押さえ部材66が環状に形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、他の形状であっても構わない。また、環状に形成された押さえ部材66の内周側に向けて洗浄液を供給する構成としたが、これに限られることは無く、外周側に向けて洗浄液を供給する構成としても構わない。具体的には、洗浄液供給口66bを押さえ部材66の外周側に配置させても構わない。これにより、吸収部材64の隅々まで確実に洗浄液を行き渡らせることができる。
【0053】
また、上記各構成に加えて、押さえ部材66のうち洗浄液が流通する流路を洗浄液に対して親液性となるように形成する構成であっても構わない。特に、図6(a)及び図6(b)に示す構成において、流路66eが形成されないが洗浄液が流通する平坦部分66gなどを洗浄液に対して親液性にすることで、当該洗浄液を流通させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…プリンタ 2…噴射ヘッド CP…キャッピング機構 61…キャップ部材 64…吸収部材 66…押さえ部材 70…洗浄液供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する噴射ヘッドと、
前記流体を受ける流体受部と、
前記流体受部に設けられ、前記流体受部で受けた前記流体を保持する流体保持部材と、
前記流体保持部材の表面を押さえて前記流体保持部材を保持する押さえ部材と、
前記押さえ部材を介して前記流体保持部材に洗浄液を供給する洗浄液供給部と
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
前記噴射ヘッドは、前記流体を噴射する噴射面を有し、
前記流体受部は、前記噴射面を覆うように形成されている
請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体受部は、前記流体及び前記洗浄液のうち少なくとも一方を排出する排出口を有する
請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記排出口は、吸引装置に接続されている
請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記流体受部との間で前記流体保持部材を含む空間を閉塞する蓋部材を更に備える
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記押さえ部材は、前記洗浄液を流通させる流路を有し、
前記洗浄液供給部は、前記流路に接続された洗浄液供給源を有する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記押さえ部材は、線状に形成され、
前記流路は、前記押さえ部材の延在方向に沿って形成されている
請求項6に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記流路は、前記押さえ部材の表面に形成されている
請求項6又は請求項7に記載の流体噴射装置。
【請求項9】
前記流路は、前記押さえ部材の内部に形成されており、
前記押さえ部材は、前記流路の内外を連通する開口部を有する
請求項6から請求項8のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項10】
前記押さえ部材は、前記流体保持部材の外周に沿って形成され、
前記開口部は、前記押さえ部材の内周側に設けられる
請求項9に記載の流体噴射装置。
【請求項11】
前記流路は、前記洗浄液に対して親液性となるように形成されている
請求項6から請求項10のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項12】
前記流路は、前記洗浄液供給源に対して下流に至るほど細く形成されている
請求項6から請求項11のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−121295(P2011−121295A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281481(P2009−281481)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】