説明

流体回収装置及び燃料電池システム

【課題】燃料電池システム内を循環する流体に含まれている液体と気体とを互いに分離でき、揺動や回転の影響を受けない無方位性能に優れた流体回収装置及び燃料電池システムを提供する。
【解決手段】本発明の実施の一形態による流体回収装置は、電気浸透材111を介して第1電極112と第2電極と113が配置され、第1電極112から第2電極113に電圧を印加して液体状態の流体を電気浸透材111内の電気流路に流動させる電気浸透ポンプ110と、電気浸透ポンプ110に接触して電気流路の流動方向の上流側に配置され、液体状態の流体を吸収可能な多孔性材質からなる気液分離部120と、を備え、気液分離部120には、気体状態の流体と液体状態の流体とが混合されて流入される流体流入孔121と、流体流入孔121に連通され、気体状態の流体が排出される気体排出孔122、123と、が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム内を循環する流体に含まれている水分を回収する流体回収装置及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、水素と酸素の電気化学反応によって電気エネルギーを発生させる発電装置である。燃料電池は使用される燃料により高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)、直接メタノール型燃料電池のような様々な種類の燃料電池に区分される。
【0003】
高分子電解質型燃料電池は、水素イオン交換特性を有する高分子膜を電解質として用いる燃料電池であり、水素を含有する燃料と酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて、電気エネルギーと熱とを連続的に発生させる。高分子電解質型燃料電池は他の燃料電池に比べて出力特性が卓越し、作動温度が低いのと同時に、速い始動及び応答特性を有する。このような高分子電解質型燃料電池を用いて構成された燃料電池システムは、移動用電源またはバッテリー代替電源のような様々な分野に利用されるが、多くの場合は酸化剤ガスと燃料とを各々燃料電池スタックに供給する構造を有する。
【0004】
直接メタノール型燃料電池は、燃料改質装置を使用せずに、メタノールのような液体燃料を燃料電池スタックに直接供給する。そして、直接メタノール型燃料電池は、液体燃料及び空気が提供されると、燃料の酸化反応と酸化剤ガスの還元反応とにより電気エネルギーを発生させる。このような直接メタノール型燃料電池を用いて構成された燃料電池システムは、その構成要素が簡単であるため、携帯用電源機器または小型電源機器に用いられる。
【0005】
このような燃料電池システムにおいては、燃料と酸化剤ガスとが電気化学的に反応した後に、アノード出口を通して未反応の燃料と二酸化炭素(CO)とが排出され、カソード出口を通して未反応の酸化剤ガスと水とが排出される。そこで、燃料電池システムでは、一般に未反応の燃料をリサイクルするために、二酸化炭素を分離排出させて、未反応の燃料を燃料電池スタックに再循環させる。また、未反応の酸化剤ガスも分離排出させ、電気化学反応によって生成された水(水分)を未反応の燃料に混合された状態で燃料電池スタックに供給している。
【0006】
燃料電池システムでは、電気化学反応によって生成された水分が未反応の酸化剤ガスに含まれている状態でカソード出口を通して排出される。そのため、従来の燃料電池システムは、未反応の酸化剤ガスに含まれている水分を分離させるための流体回収装置を別に備えている。このような流体回収装置は、一般に燃料電池スタックから排出される未反応の酸化剤ガスを既設定された温度以下に冷却し、凝縮させることによって、未反応の酸化剤ガスに含まれている水分を、水に状態変換させた後、重力によって互いに分離させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の燃料電池システムが、特に直接メタノール型燃料電池のように携帯用または小型機器用電源に用いられると、流体回収装置自体が揺れたり、回転したりする状態になる。そのため従来の燃料電池システムでは、未反応酸化剤ガスから分離された水が未反応の酸化剤ガスに再び混合されてしまったり、外部に漏れたりする問題が生じていた。このように、機器が上下左右何れの方向を向いているかよって動作が変化する問題は、一般に無方位性能が低いとされる。つまり、従来の燃料電池システムは、無方位性能が低いため、電力効率が低下する問題が生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、燃料電池システム内を循環する流体に含まれている液体と気体とを互いに分離でき、揺動や回転の影響を受けない無方位性能に優れた流体回収装置、及びこの流体回収装置を備えた燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、電気浸透材を間に介して第1電極と第2電極とが配置され、第1電極から第2電極に電圧を印加することによって液体状態の流体を電気浸透材内の電気流路に流動させる電気浸透ポンプと、電気浸透ポンプに接触して電気流路の流動方向の上流側に配置され、液体状態の流体を吸収可能な多孔性材質からなる気液分離部と、を備え、気液分離部には、気体状態の流体と液体状態の流体とが混合されて流入される流体流入孔と、流体流入孔に連通され、気体状態の流体が排出される気体排出孔と、が形成されていることを特徴とする、流体回収装置が提供される。
【0010】
本発明の流体回収装置によれば、気液分離部の流体流入孔から気体状態の流体と液体状態の流体とを円滑に流入させ、液体状態の流体を多孔性材質の空隙に吸収させて電気浸透ポンプに流動させ、気体排出孔から気体状態の流体を外部に排出させるので、流体に含まれている液体と気体とを容易に分離でき、揺動や回転の影響を受けず、無方位性能を高めることができる。
【0011】
気液分離部の多孔性材質の平均空隙直径は、流体流入孔の平均直径に比べて小さく、1μm〜100μmであるとよい。多孔性材質の平均空隙直径が、流体流入孔の平均直径に比べて小さいことにより、水分のような液体状態の流体は多孔性材質の空隙内に吸収することができる。また、多孔性材質の平均空隙直径が1μm〜100μmであると、毛細管現象によって液体の吸収効果が高くなる。一方、多孔性材質の平均空隙直径が1μm未満の場合には、液体状態の流体は流動し難く、100μmを超える場合には、液体状態の流体だけを選択的に吸収し難いため、流体吸収性能または回収率が低下する。
【0012】
本発明の実施の一形態による流体回収装置は、流体流入孔の形成された気液分離部の流入方向の上流側に位置すると共に、気液分離部の多孔性材質の平均空隙直径より大きい平均空隙直径を有する材質からなる流体拡散部をさらに備えることができる。流体は、流体拡散部を通過した後に気液分離部に流入するため、気液分離部の特定領域に集中的に流入することがなく、流体拡散部で均等に拡散した後に気液分離部に流入されるので、気液分離部での流体吸収を容易にすることができる。さらに、多量の流体が一時的に流入しても、流体拡散部で一次的に保存されてから気液分離部に流入されるので、気液分離部での回収がより容易にできる。
【0013】
流体拡散部は、複数のビーズで構成され、ビーズの直径は、0.3mm〜3mmであるとよい。ビーズの直径が0.3mm未満の場合には、空隙が狭すぎて流体の流動が円滑に行われずに圧力損失が大きく生じる恐れがある。また、ビーズの直径が3mm超える場合には、空隙が広すぎるために、流体の拡散効果と保存効果が顕著に減少する。
【0014】
また、本発明の実施の別の形態による流体回収装置は、気液分離部及び流体拡散部の外周面に付着され、気液分離部及び流体拡散部を既設定された温度に冷却させる熱交換部をさらに備えることができる。熱交換部は、気液分離部及び流体拡散部から熱を吸収して、既設定された(所定の)温度に冷却させ、凝縮現象によって気体状態の流体を液体状態の流体に変換させるので、液体状態の流体をより効率的に回収できる。
【0015】
この時、熱交換部は、冷却媒体が内部に流動しながら熱交換が行われるヒートパイプであることができ、熱交換部としてヒートパイプを用いることにより、気液分離部及び流体拡散部をより効果的に冷却することができる。
【0016】
また、熱交換部は、気液分離部及び流体拡散部の外周面に付着されるケーシングと、ケーシングから突出形成される複数のフィンと、複数のフィンに沿った方向に冷却用気体の流れを誘導する冷却ファンと、を有する構成とすることもできる。気液分離部及び流体拡散部から伝えられる熱は、複数のフィンから外部大気に放熱されて、気液分離部及び流体拡散部をより効果的に冷却することができる。
【0017】
また、熱交換部は、気液分離部及び流体拡散部の外周面に付着されるケーシングと、ケーシングから突出形成される複数のフィンと、気液分離部及び流体拡散部の内部に挿入形成される補助冷却部と、を有することができる。熱交換部は、補助冷却部を有することによって、気液分離部及び流体拡散部に接触する面積が広くなり、気液分離部及び流体拡散部からケーシングに熱を、より効果的に伝えることができる。
【0018】
この時、補助冷却部は複数形成され、ピン形状を有することができる。または、補助冷却部は、冷却媒体が内部に流動しながら熱交換が行われるヒートパイプであることができ、多様な形態で、気液分離部及び流体拡散部の内部に挿入され、より効果的な冷却を実現できる。または、補助冷却部は、熱伝導性を有する金属棒であることができ、多様な形態で気液分離部及び流体拡散部の内部に挿入され、より効果的に冷却することができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、水素と酸素とを電気化学的に反応させて電気エネルギーを生成する燃料電池本体と、燃料電池本体に水素を含有する燃料を供給する燃料供給部と、燃料電池本体に酸素を含有する酸化剤ガスを供給する酸化剤供給部と、燃料電池本体から排出される流体を液体状態の流体と気体状態の流体とに各々分離させる流体回収装置と、を備え、流体回収装置は、電気浸透材を間に介して第1電極と第2電極とが配置され、第1電極から第2電極に電圧を印加することによって液体状態の流体を前記電気浸透材内の電気流路に流動させる電気浸透ポンプと、電気浸透ポンプに接触して電気流路の流動方向の上流側に配置され、液体状態の流体を吸収可能な多孔性材質からなる気液分離部と、を有し、気液分離部には、気体状態の流体と液体状態の流体とが、混合されて流入される流体流入孔と、流体流入孔に連通され、気体状態の流体が排出される気体排出孔と、が形成されていることを特徴とする、燃料電池システムが提供される。
【0020】
このように、燃料電池システムにおいて、気体状態の流体と液体状態の流体とを容易に分離できる流体回収装置を用いることにより、燃料電池システム内を循環する流体に含まれている液体状態の流体である水を効率的に回収できるとともに、揺動や回転の影響を受けず、無方位性能を高めることができる。また、重力方式を利用した従来の流体回収装置に比べ占有体積が小さい流体回収装置を用いているので、燃料電池システムの小型化ができる。
【0021】
ここで、流体回収装置は、燃料電池本体のカソード出口に設置され、液体状態の水と気体状態の未反応の酸化剤ガスとに分離させることができる。酸化剤ガスは、燃料電池本体のカソード入口に流入されるが、燃料電池本体で電気化学反応に利用された後に、電気化学反応で生成された水分を含んで燃料電池本体のカソード出口を通して排出されるので、流体回収装置によって、燃料電池本体から排出される流体を、気体状態の未反応の酸化剤ガスと液体状態の流体である水とに分離させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように本発明の流体回収装置によれば、燃料電池システム内を循環する流体のうち液体状態の流体を多孔性材質の空隙に吸収させ、気体排出孔から気体状態の流体を外部に排出させるので、流体に含まれている液体と気体とを容易に分離でき、揺動や回転の影響を受けず、無方位性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態による流体回収装置100の概略の説明図であり、図2は図1に示された流体回収装置100を流体の流動方向に沿って切断して(図1のxy平面で切断して)示した断面図である。図1及び図2に示したように、本発明の第1の実施の形態による流体回収装置100は、電気浸透ポンプ110と気液分離部120とを備えており、流体に含まれている水分を別途に分離できる。
【0025】
例えば、燃料電池システムは、酸化剤ガスとして大気中の空気を用いるが、燃料電池スタックでの電気化学反応によって生成された水分が未反応の空気に含まれている状態で排出される。燃料電池システムは、未反応の空気と水分とが混合された流体を空気と水とに互いに分離させ、空気から分離された水を燃料電池スタックに流入させてリサイクルする。このように流体回収装置100は、液体状態の流体と気体状態の流体とを互いに分離できるように構成されている。
【0026】
電気浸透ポンプ110は、電気浸透材111を間において、第1電極112と第2電極113とが各々電気浸透材111の側面に配置される。電気浸透材111は電気電圧を伝達できる素材であり、液体状態の流体が通過できる微細な電気流路が形成される。そして、電気浸透ポンプ110は、第1電極112と第2電極113との間を連結する電源部114をさらに有している。
【0027】
電源部114は、バッテリー、キャパシタ、燃料電池、常用電源のような装置であって、既設定の電圧を第1電極112と第2電極113との間に印加する。ここで、既設定の電圧は、液体状態の流体を電気浸透圧(electroosmotically)方式で電気浸透材111の電気流路内に流動させることのできる大きさの電圧を意味する。既設定された電圧は、第1電極112と第2電極113との間の間隔により、異なって設定されるが、数ボルト〜数十ボルトが適用できる。
【0028】
気液分離部120は、電気浸透ポンプ110に接触された状態で電気流路の上側に配置される。電気流路の上側とは、気体状態の流体と液体状態の流体との混合流体が流れる上流を意味するものであり、つまり、電気浸透ポンプ110で電源部114の正極(+)端子が第1電極112に連結され、気液分離部120は、第1電極112に結合される。ここで、気液分離部120は、液体状態の流体を吸収できる磁気充電構造の多孔性材質である。
【0029】
また、気液分離部120には、流体流入孔121と、この流体流入孔121に連通される気体排出孔122、123が内部に各々形成されている特徴がある。流体流入孔121には、気体状態の流体と液体状態の流体とが互いに混合された状態で流入する。気液分離部120は、それ自体が多孔性材質であるため、流体流入孔121を別途に形成しなくても気体状態の流体と液体状態の流体とが流動できる。しかし、気液分離部120の多孔性材質は、液体状態の流体を自己充填できるほど空隙が非常に小さいので、流体流入孔121を形成しない場合には、流体の圧力損失が大量に発生する恐れがある。
【0030】
そのため、本発明の第1の実施の形態による流体回収装置100の気液分離部120は、流体流入孔121を形成することによって、気体状態の流体と液体状態の流体とがより円滑に流入できる。そして、液体状態の流体は、多孔性材質の空隙に吸収された後に電気浸透ポンプ110方向に流動され、気体状態の流体は気体排出孔122、123を通して外部に排出される。この時、流体流入孔121をはじめとして、気体排出孔122、123は流体処理能力を考慮して、複数形成されてもよい。
【0031】
図3は、図2に示された多孔性材質の気液分離部120について、多孔質材料の写真で平均空隙直径を観察した説明図である。図1〜図3に示したように、気液分離部120の多孔性材質の平均空隙直径124は、流体流入孔121の平均直径に比べて小さい。そのため、気液分離部120は、水分のような液体状態の流体を多孔性材質の空隙内に吸収する。
【0032】
この時、多孔性材質の平均空隙直径124が1μm〜100μmの範囲であると、気液分離部120においては、毛細管現象による液体の吸収効果が優れている。一方、多孔性材質の平均空隙直径124が1μm未満の場合には、液体状態の流体は流動し難い。また、多孔性材質の平均空隙直径124が100μmを超える場合には、液体状態の流体だけを選択的に吸収し難いため、流体吸収性能または回収率が低下する。
【0033】
こうして、本発明の第1の実施の形態による流体回収装置100によれば、気液分離部120の流体流入孔121から気体状態の流体と液体状態の流体とを円滑に流入させ、液体状態の流体を多孔性材質の空隙に吸収させて電気浸透ポンプ110に流動させ、気体排出孔122、123から気体状態の流体を外部に排出させるので、流体に含まれている液体と気体とを容易に分離でき、揺動や回転の影響を受けず、無方位性能を高めることができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態による流体回収装置200の断面を示した説明図である。図4に示したように、本発明の第2の実施の形態による流体回収装置200は、図1及び図2に示された流体回収装置100と同様に、電気浸透ポンプ210と気液分離部220とを備える。そして、本発明の第2の実施の形態による流体回収装置200は、流体流入孔221が形成された気液分離部220の上側(混合流体の流入方向の上流側)に位置する流体拡散部230をさらに備えている特徴がある。流体拡散部230は、気液分離部220の多孔性材質の平均空隙直径に比べて、もっと大きい平均空隙直径を有する材質で形成される。つまり、流体拡散部230は、ビーズ、粉砕物、繊維のような構成物で構成される集合体であり、このような構成物の間に空隙が存在している。また、流体流入孔221には、第1の実施の形態と同様に、流体流入孔221に連通される気体排出孔(図示せず)が内部に形成されており、気体状態の流体が気体排出孔を通じて外部に排出される。
【0035】
流体は、一次的に流体拡散部230を通過した後に、気液分離部220に流入される。そのため流体は、気液分離部220のある特定領域に集中的に流入されず、流体拡散部230で均等に拡散した後に気液分離部220に流入される。また、多量の流体が一時的に流入されても、流体拡散部230で一次的に保存された後に気液分離部220に流入されるので、液体状態の流体は、気液分離部220での回収がより容易にできる。
【0036】
図5は、図4に示された流体拡散部230について、写真で平均空隙直径を観察した説明図である。図4及び図5に示したように、流体拡散部230は、例えば、複数のビーズ234で構成されており、この複数のビーズ234の直径は、0.3mm〜3mmの範囲で形成されることが好ましい。ビーズ234の直径が0.3mm未満の場合には、ビーズ234の間の空隙が狭くなり、流体の流動が円滑に行われずに圧力損失が大きく生じる恐れがある。一方、ビーズ234の直径が3mm超える場合には、ビーズ234の間の空隙が広くなり、流体の拡散効果と保存効果が顕著に減少する。
【0037】
こうして、本発明の第2の実施の形態による流体回収装置200によれば、流体拡散部230をさらに備えたことにより、流体は、流体拡散部230で均等に拡散した後に気液分離部220に流入されるので、第1の実施の形態による流体回収装置100よりも流体の回収を容易にできる。
【0038】
(第3の実施の形態)
図6は本発明の第3の実施の形態による流体回収装置300の断面を示した説明図である。図6に示したように、本発明の第3の実施の形態による流体回収装置300は、図3に示された流体回収装置200と同様に、電気浸透ポンプ310と、気液分離部320と、流体拡散部330とを備える。また、第3の実施の形態による流体回収装置300は、気液分離部320及び流体拡散部330の各外周面に付着され、気液分離部320と流体拡散部330を既設定された温度に冷却させる一種のヒートシンク(heat sink)として熱交換部340をさらに備えている。
【0039】
熱交換部340は、気液分離部320及び流体拡散部330から熱を吸収して、気液分離部320及び流体拡散部330を既設定された温度に各々冷却させる。その後、水蒸気のように気体状態の流体も既設定された温度に冷却されて、凝縮現象によって水のような液体状態の流体に変換される。こうして、本発明の第3の実施の形態による流体回収装置300は、第2の実施の形態による流体回収装置200に比べて、液体状態の流体をより効率的に回収できる。
【0040】
また、図6に示す流体回収装置300では、気液分離部320及び流体拡散部330に、熱交換部340が付着されているが、必要に応じて気液分離部320の一側にだけ設置されてもよい。
【0041】
(第4の実施の形態)
図7は本発明の第4の実施の形態による流体回収装置400の断面を示した説明図である。図7に示したように、本発明の第4の実施の形態による流体回収装置400は、図6に示された流体回収装置300と同様に、電気浸透ポンプ410と、気液分離部420と、流体拡散部430と、熱交換部440とを備える。しかし、本発明の第4の実施の形態による流体回収装置400の熱交換部440は、図6に示された熱交換部340と異なって、ヒートパイプ(heat pipe)で形成されている特徴がある。熱交換部440は、ヒートパイプの内部では冷却水が持続的に循環するため、気液分離部420及び流体拡散部430をより効果的に冷却できる効果がある。
【0042】
(第5の実施の形態)
図8は本発明の第5の実施の形態による流体回収装置500の断面を示した説明図である。図8に示したように、本発明の第5の実施の形態による流体回収装置500は、図6に示された流体回収装置300と同様に、電気浸透ポンプ510と、気液分離部520と、流体拡散部530と、熱交換部540とを備える。しかし、本発明の第5の実施の形態による流体回収装置500は、図6に示された熱交換部340とは異なる冷却構造を有する熱交換部540を備える。
【0043】
熱交換部540は、気液分離部520及び流体拡散部530の各外周面に付着されるケーシング541、ケーシング541から突出形成される複数のフィン542、および複数のフィン542に沿った方向に冷却用気体の流れを誘導する冷却ファン543を有して構成される。この時、ケーシング541及び複数のフィン542は、熱伝達性能に優れた金属素材で形成され、気液分離部520及び流体拡散部530から伝えられる熱は、複数のフィン542から外部大気に放熱される。このような構成によって、熱交換部540は気液分離部520及び流体拡散部530を効果的に冷却できる。
【0044】
(第6の実施の形態)
図9は本発明の第6の実施の形態による流体回収装置の断面を示す説明図である。図9に示したように、本発明の第6の実施の形態による流体回収装置600は、図8に示された流体回収装置500と同様に、電気浸透ポンプ610と、気液分離部620と、流体拡散部630と、熱交換部640とを備える。しかし、本発明の第6の実施の形態による流体回収装置600は、図8に示された流体回収装置500と異なって、気液分離部620及び流体拡散部630の内部に挿入形成される補助冷却部644が形成されている特徴がある。この補助冷却部644は、例えばピン形状を有しており、ケーシング641から突出して複数形成されている。
【0045】
本発明の第6の実施の形態による流体回収装置600の熱交換部640は、気液分離部620及び流体拡散部630の各外周面に付着されるケーシング641と、ケーシング641から突出形成される複数のフィン642とを有している。そして、熱交換部640は、気液分離部620及び流体拡散部630から伝えられる熱を、ケーシング64及び複数のフィン642を経て外部大気に放熱することができる。さらに、熱交換部640は、補助冷却部644をさらに有することによって、気液分離部620及び流体拡散部630に接触する面積が広くなり、気液分離部620及び流体拡散部630からケーシング641に熱を、より効果的に伝えることができる。
【0046】
(第7の実施の形態)
図10は、本発明の第7の実施の形態による流体回収装置700の断面を示す説明図である。図10に示したように、本発明の第7の実施の形態による流体回収装置700は、図9に示された流体回収装置600と同様に、電気浸透ポンプ710と、気液分離部720と、流体拡散部730とを備える。しかし、本発明の第7の実施の形態による流体回収装置700は、図9に示された流体回収装置600とは異なる冷却構造の熱交換部740を備えている特徴がある。
【0047】
本発明の第7の実施の形態による流体回収装置700の熱交換部740は、気液分離部720及び流体拡散部730の各外周面に付着されるケーシング741と、ケーシング741から突出形成される複数のフィン742と、気液分離部720及び流体拡散部730の内部に挿入形成される補助冷却部745とを有している。この補助冷却部745は、冷却媒体が内部に満たされたヒートパイプであり、多様な形態で、気液分離部720及び流体拡散部730の内部に挿入され、より効果的な冷却を実現できる。
【0048】
(第8の実施の形態)
図11は本発明の第8の実施の形態による流体回収装置800の断面を示す説明図である。図11に示したように、本発明の第8の実施の形態による流体回収装置800は、図9に示された流体回収装置600と同様に、電気浸透ポンプ810と、気液分離部820と、流体拡散部830とを備える。しかし、本発明の第8の実施の形態による流体回収装置800は、図9に示された流体回収装置600の冷却構造とは異なる熱交換部840を備えている。
【0049】
本発明の第8の実施の形態による流体回収装置800の熱交換部840は、気液分離部820及び流体拡散部830の各外周面に付着されるケーシング841と、ケーシング841から突出形成される複数のフィン842と、気液分離部820及び流体拡散部830の内部に挿入形成される補助冷却部845とを有している。この補助冷却部845は、熱伝導性を有する金属棒(metal bar)であり、多様な形態で気液分離部820及び流体拡散部830の内部に挿入され、より効果的に冷却することができる。
【0050】
以上のような本発明の第1の実施の形態による流体回収装置100、第2の実施の形態による流体回収装置200、第3の実施の形態による流体回収装置300、第4の実施の形態による流体回収装置400、第5の実施の形態による流体回収装置500、第6の実施の形態による流体回収装置600、第7の実施の形態による流体回収装置700、及び、第8の実施の形態による流体回収装置800は、下記のような燃料電池システムに設置されて下記のように作動する。
【0051】
図12は、図1に示された流体回収装置100を用いた本願発明の実施の形態による燃料電池システムの概略構成を示した説明図である。図12に示したように、燃料電池システムは、水素と酸素を電気化学的に反応させて、電気エネルギーを生成する燃料電池本体10を備える。燃料電池本体10は、電気エネルギーを発生させる最小単位として単位セルを有し、このような数個または数十個の単位セルが連続的に積層配列された集合体で構成される。そして、燃料電池本体10は、単位セル集合体の最外側にエンドプレートが各々結合される。このような構造的な特徴により、燃料電池本体10は、一般に燃料電池スタック(Fuel Cell Stack)と称される。
【0052】
燃料供給部20は、燃料電池本体10に水素を含有する燃料を供給する。水素を含有する燃料としては、炭化水素系(LNG、LPG)のような燃料または純粋水素が用いられる。燃料供給部20は、水素を含有する燃料が保存される燃料タンク21、および水素を含有する燃料を既設定された圧力に維持しながら燃料供給量を調節する第1燃料ポンプ22を有して構成される。その他に、燃料供給部20には、燃料の種類によって、燃料改質装置のような構成要素をさらに有することもできる。
【0053】
酸化剤供給部30は、燃料電池本体10に酸素を含有する酸化剤ガスを供給する。この酸化剤供給部30は、一般に空気ポンプのような装備であって、酸素と窒素の混合物である大気を酸化剤ガスとして燃料電池本体10に供給する。
【0054】
水素を含有する燃料は、燃料電池本体10のアノード入口11に流入され、燃料電池本体10で電気化学反応に利用された後に、燃料電池本体10のアノード出口13を通して排出される。燃料電池本体10のアノード出口13から排出される流体は、未反応の燃料と一緒に電気化学反応で生成された二酸化炭素(CO)も共に排出される。
【0055】
また、燃料電池システムは、水素の利用率を極大化するために、燃料再循環部40を具備し、未反応の燃料を燃料電池本体10のアノード入口11に再循環させる。この燃料再循環部40は、アノード入口11とアノード出口13を連結する第1再循環ラインに設けられる。燃料再循環部40は、二酸化炭素を分離排出させるための二酸化炭素除去機41と、未反応の燃料を既設定された圧力(所定の圧力)に維持しながら燃料供給量を調節する第2燃料ポンプ42とを有して構成される。
【0056】
酸化剤ガスとして供給される空気は、燃料電池本体10のカソード入口12に流入されて、燃料電池本体10で電気化学反応に利用された後に、燃料電池本体10のカソード出口14を通して排出される。燃料電池本体10のカソード出口14から排出される流体は、未反応の空気と一緒に電気化学反応で生成された水分も含んでいる。
【0057】
本願発明の実施の形態による燃料電池システムは、流体回収装置100によって、燃料電池本体10から排出される流体を、気体状態の未反応の流体である空気と液体状態の流体である水とに各々分離させる。流体回収装置100は、燃料電池本体10のカソード出口14から第1再循環ラインに連結される第2再循環ラインに設けられる。
【0058】
このように、本願発明の実施の形態による燃料電池システムは、気体状態の流体と液体状態の流体とを容易に分離できる流体回収装置100を用いることにより、燃料電池システム内を循環する流体に含まれている水を効率的に回収し、未反応の燃料とともにリサイクルできるとともに、揺動や回転の影響を受けず、無方位性能を高めることができる。また、流体回収装置100で分離された水を用いて、燃料再循環部40の第2燃料ポンプ42から供給される未反応の燃料を適切に加湿することによって、燃料電池本体10内での電子イオンをより円滑に誘導することができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、燃料電池システム内を循環する流体に含まれている水分を回収する流体回収装置、及び燃料電池システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態による流体回収装置の概略の説明図である。
【図2】図1に示された流体回収装置をxy平面で切断した断面図である。
【図3】図2に示された気液分離部を写真で観察した説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による流体回収装置の概略の断面を示した説明図である。
【図5】図4に示された流体拡散部を写真で観察した説明図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態による流体回収装置の概略の断面を示した説明図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態による流体回収装置の概略の断面を示した説明図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態による流体回収装置の概略の断面を示した説明図である。
【図9】本発明の第6の実施の形態による流体回収装置の概略の断面を示した説明図である。
【図10】本発明の第7の実施の形態による流体回収装置の概略の断面を示した説明図である。
【図11】本発明の第8の実施の形態による流体回収装置の概略の断面を示した説明図である。
【図12】燃料電池システムの概略構成を示した説明図である。
【符号の説明】
【0062】
100 流体回収装置
110 電気浸透ポンプ
120 気液分離部
121 流体流入孔
122 気体排出孔
123 気体排出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気浸透材を間に介して第1電極と第2電極とが配置され、前記第1電極から前記第2電極に電圧を印加することによって液体状態の流体を前記電気浸透材内の電気流路に流動させる電気浸透ポンプと、
前記電気浸透ポンプに接触して前記電気流路の流動方向の上流側に配置され、前記液体状態の流体を吸収可能な多孔性材質からなる気液分離部と、
を備え、
前記気液分離部には、
気体状態の流体と前記液体状態の流体とが混合されて流入される流体流入孔と、
前記流体流入孔に連通され、前記気体状態の流体が排出される気体排出孔と、
が形成されていることを特徴とする、流体回収装置。
【請求項2】
前記気液分離部の前記多孔性材質の平均空隙直径は、前記流体流入孔の平均直径に比べて小さく、1μm〜100μmであることを特徴とする、請求項1に記載の流体回収装置。
【請求項3】
前記流体流入孔の形成された前記気液分離部の流入方向の上流側に位置すると共に、前記気液分離部の前記多孔性材質の平均空隙直径より大きい平均空隙直径を有する材質からなる流体拡散部をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体回収装置。
【請求項4】
前記流体拡散部は、複数のビーズで構成され、前記ビーズの直径は、0.3mm〜3mmであることを特徴とする、請求項3に記載の流体回収装置。
【請求項5】
前記気液分離部及び前記流体拡散部の外周面に付着され、前記気液分離部及び前記流体拡散部を既設定された温度に冷却させる熱交換部をさらに備えることを特徴とする、請求項3または4に記載の流体回収装置。
【請求項6】
前記熱交換部は、冷却媒体が内部に流動しながら熱交換が行われるヒートパイプであることを特徴とする、請求項5に記載の流体回収装置。
【請求項7】
前記熱交換部は、
前記気液分離部及び前記流体拡散部の外周面に付着されるケーシングと、
前記ケーシングから突出形成される複数のフィンと、
前記複数のフィンに沿った方向に冷却用気体の流れを誘導する冷却ファンと、
を有することを特徴とする、請求項5に記載の流体回収装置。
【請求項8】
前記熱交換部は、
前記気液分離部及び前記流体拡散部の外周面に付着されるケーシングと、
前記ケーシングから突出形成される複数のフィンと、
前記気液分離部及び前記流体拡散部の内部に挿入形成される補助冷却部と、
を有することを特徴とする、請求項5に記載の流体回収装置。
【請求項9】
前記補助冷却部は複数形成され、ピン形状を有することを特徴とする、請求項8に記載の流体回収装置。
【請求項10】
前記補助冷却部は、冷却媒体が内部に流動しながら熱交換が行われるヒートパイプであることを特徴とする、請求項8に記載の流体回収装置。
【請求項11】
前記補助冷却部は、熱伝導性を有する金属棒であることを特徴とする、請求項8に記載の流体回収装置。
【請求項12】
水素と酸素とを電気化学的に反応させて電気エネルギーを生成する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体に前記水素を含有する燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃料電池本体に前記酸素を含有する酸化剤ガスを供給する酸化剤供給部と、
前記燃料電池本体から排出される流体を液体状態の流体と気体状態の流体とに各々分離させる流体回収装置と、
を備え、
前記流体回収装置は、
電気浸透材を間に介して第1電極と第2電極とが配置され、前記第1電極から前記第2電極に電圧を印加することによって前記液体状態の流体を前記電気浸透材内の電気流路に流動させる電気浸透ポンプと、
前記電気浸透ポンプに接触して前記電気流路の流動方向の上流側に配置され、前記液体状態の流体を吸収可能な多孔性材質からなる気液分離部と、
を有し、
前記気液分離部には、
前記気体状態の流体と前記液体状態の流体とが混合されて流入される流体流入孔と、
前記流体流入孔に連通され、前記気体状態の流体が排出される気体排出孔と、
が形成されていることを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項13】
前記流体回収装置は、前記燃料電池本体のカソード出口に設置され、液体状態の水と気体状態の未反応の酸化剤ガスとを分離させることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−200029(P2009−200029A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199698(P2008−199698)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【出願人】(506320875)ナノフュージョン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】