説明

流体圧シリンダ

【課題】流体圧シリンダの製造コストを低減しつつ小型化を図る。
【解決手段】シリンダチューブ12のシリンダ孔20には、内周面からさらに窪んだ一組の凹部22a、22bが形成されると共に、前記シリンダチューブ12の両端部に装着されるヘッドカバー14及びロッドカバー16には、前記凹部22a、22bに対応した凸部38a、38bが設けられる。そして、シリンダ孔20に収容されたヘッドカバー14及びロッドカバー16は、凸部38a、38bが、凹部22a、22bの段差24に当接することにより位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力流体の供給作用下にピストンを軸線方向に沿って変位させる流体圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワーク等の搬送手段として、例えば、圧力流体の供給作用下に変位するピストンを有する流体圧シリンダが用いられている。このような流体圧シリンダでは、筒状のシリンダ本体の内部に画成されたシリンダ室にピストンが変位自在に設けられると共に、前記シリンダ本体の両端部にそれぞれヘッドカバー及びロッドカバーが装着され、前記シリンダ室を閉塞する構成としている。
【0003】
このような流体圧シリンダでは、水平方向に長径となる断面長円状のピストンを採用すると共に、断面長円状のシリンダ室を採用することにより前記ピストンが内装されるシリンダ本体の薄型化を図っているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この流体圧シリンダでは、ヘッドカバー及びロッドカバーがシリンダ本体の両端部に複数のボルトで固定されると共に、前記ヘッドカバー及びロッドカバーと前記シリンダ本体との間にガスケットが挟持され、前記ガスケットはピストン穴の断面形状に応じた断面略長円状に形成されている。そして、ガスケットの一部が、前記ピストン穴に収容されて内周面に当接し、前記ヘッドカバー及びロッドカバーと前記シリンダ本体との間の気密を保持している。
【0004】
【特許文献1】特開平9−303320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に係る従来技術においては、ピストン穴に当接するガスケットの外周面に対して加工を行う必要があるが、前記外周面は断面長円状に形成されているため、その全周に沿って加工を施す場合に多大な加工コストを要するという問題がある。その結果、流体圧シリンダの製造コストが高騰してしまうこととなる。
【0006】
また、特許文献1に係る従来技術では、ヘッドカバー及びロッドカバーをシリンダボディの両端部に対して複数のボルトで固定する構成としているため、流体圧シリンダの長手寸法が前記ヘッドカバー及びロッドカバーの厚さ分だけ増大し、前記流体圧シリンダが大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の種々の課題を考慮してなされたものであり、製造コストを低減しつつ小型化を図ることが可能な流体圧シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、断面長円状のシリンダ室を有する筒状のシリンダ本体と、
前記シリンダ室に対応した断面長円状に形成され、前記シリンダ室の内部に軸線方向に沿って変位自在に設けられるピストンと、
前記シリンダ室の内部に収容され、該シリンダ室を閉塞すると共に、該シリンダ室の内壁面側に向かって突出した第1凸部を外周面に有する一組のカバー部材と、
を備え、
前記シリンダ室には、断面長円状の内壁面に対して窪んだ凹部が形成され、前記凹部に前記凸部が挿入されて前記シリンダ室の軸線方向に係止されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、一組のカバー部材の外周面に第1凸部を設け、シリンダ本体のシリンダ室に前記カバー部材を収容すると共に、前記第1凸部が前記シリンダ室の凹部へと挿入されることによってカバー部材が軸線方向に係止される。従って、第1凸部と凹部との係合作用下にカバー部材の軸線方向に沿った変位を規制することができるため、従来の流体圧シリンダと比較して前記カバー部材における第1凸部、シリンダ本体における凹部のみを加工すればよいため、その加工コストを大幅に削減することができ、流体圧シリンダを安価に製造することができる。
【0010】
また、カバー部材が、シリンダ本体のシリンダ室の内部に収容されるため、前記シリンダ本体を含む流体圧シリンダの長手寸法を抑制することができ、シリンダ本体の両端部に対して複数のボルトでヘッドカバー及びロッドカバーを装着していた従来の流体圧シリンダと比較して小型化を図ることができる。
【0011】
また、第1凸部は、カバー部材の軸線を中心として対称となる位置に一組配置され、前記カバー部材の外周面に膨出するように形成するとよい。
【0012】
さらに、シリンダ室には、内壁面に沿って形成された装着溝に係止部材を装着し、カバー部材を、凹部及び係止部材によって軸線方向への変位を規制するとよい。これにより、カバー部材がシリンダ本体のシリンダ室に収容された状態で確実に固定される。
【0013】
さらにまた、カバー部材の外周面に、シリンダ室の内壁面に当接する第2凸部を設けることにより、前記カバー部材を前記シリンダ室に挿入する際に前記第2凸部によって案内され、前記カバー部材の中心と前記シリンダ室の中心とを一致させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0015】
すなわち、外周面に第1凸部を有するカバー部材をシリンダ本体のシリンダ室に収容すると共に、前記凸部を前記シリンダ室の凹部へと挿入することにより軸線方向への変位を規制することができる。この場合、カバー部材における第1凸部、シリンダ本体における凹部のみを加工すればよいため、従来の流体圧シリンダと比較して加工コストを大幅に削減することができ、流体圧シリンダを安価に製造することができる。また、カバー部材が、シリンダ本体のシリンダ室の内部に収容されるため、前記シリンダ本体を含む流体圧シリンダの長手寸法を抑制することができ、従来の流体圧シリンダと比較して小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る流体圧シリンダについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る流体圧シリンダを示す。
【0018】
この流体圧シリンダ10は、図1〜図4に示されるように、筒状のシリンダチューブ(シリンダ本体)12と、前記シリンダチューブ12の一端部に装着されるヘッドカバー(カバー部材)14と、前記シリンダチューブ12の他端部に装着されるロッドカバー(カバー部材)16と、前記シリンダチューブ12の内部に変位自在に設けられるピストン18とを含む。
【0019】
シリンダチューブ12は、断面略長方形状に形成され、その内部には軸線方向に沿って貫通した断面略長円状のシリンダ孔(シリンダ室)20が形成される。このシリンダ孔20は、略水平方向に長径となるように断面略長円状に形成され、その両端部には、該シリンダ孔20の中心から離間する方向に拡幅した一対の凹部22a、22bを有する。この一対の凹部22a、22bは、扁平状のシリンダチューブ12に対して略水平方向となるように円弧状に窪んだ両側部に形成される。詳細には、凹部22a、22bは、シリンダ孔20の中心から離間する方向に向かって円弧状に窪んで対向するように配置され、前記凹部22a、22bの半径は、前記シリンダ孔20の両側部の半径に対して小さく形成されている。
【0020】
すなわち、シリンダ孔20の内周面は、該シリンダ孔20の両端部側が凹部22a、22bの分だけ大きく形成され、この凹部22a、22bと前記シリンダ孔20の軸線方向に沿った中央部位との間には段差24が設けられる。
【0021】
また、シリンダ孔20の両端部には、凹部22a、22bに対して開口部側となる部位に内周面に沿ったリング溝(装着溝)26がそれぞれ形成され、前記リング溝26には、それぞれ係止リング(係止部材)28a、28bが装着される。
【0022】
一方、シリンダチューブ12の外側面には、圧力流体が供給・排出される一組の第1及び第2流体ポート30、32が形成され、前記第1及び第2流体ポート30、32は前記シリンダチューブ12の軸線方向に沿って所定間隔離間し、それぞれ連通路34(図3参照)を介してシリンダ孔20に連通している。これにより、第1及び第2流体ポート30、32に供給された圧力流体が、連通路34を通じてシリンダ孔20の内部に導入される。また、シリンダチューブ12の外側面には、ピストン18の位置を検出可能なセンサの装着される複数のセンサ溝36が軸線方向(矢印A、B方向)に沿って延在している。
【0023】
ヘッドカバー14は、シリンダチューブ12の一端部側(矢印A方向)に装着され、シリンダ孔20の形状に対応した断面略長円状に形成され、前記シリンダ孔20の凹部22aに対応する両側部には、外周面から所定長だけ突出した一組の凸部(第1凸部)38aが形成される。この凸部38aは、ヘッドカバー14において円弧状に膨出した両側部に設けられ、前記凹部22aに対応した所定半径で膨出している(図5参照)。
【0024】
また、ヘッドカバー14の外周面には、環状溝を介してOリング40が装着され、前記ヘッドカバー14がシリンダチューブ12のシリンダ孔20に装着された際、該シリンダ孔20の内周面に当接することによって気密が保持される。
【0025】
ロッドカバー16は、シリンダチューブ12の他端部側(矢印B方向)に装着され、ヘッドカバー14と同様にシリンダ孔20の形状に対応した断面略長円状に形成される。そして、前記シリンダ孔20の凹部22bに対応する両側部には、外周面に対して所定長だけ突出した一組の凸部(第1凸部)38bが形成される。この凸部38bは、ロッドカバー16において円弧状に膨出した両側部に設けられ、凹部22bに対応した所定半径で膨出している(図6参照)。
【0026】
また、ロッドカバー16の略中央部には、軸線方向に沿って貫通したロッド孔42が形成され、前記ロッド孔42にはピストン18に連結されたピストンロッド44が挿通される。なお、ロッド孔42の内部にはロッドパッキン46及びブッシュ48が装着され、シリンダ孔20の内部の気密を保持している。
【0027】
さらに、ロッドカバー16の外周面には、該ロッドカバー16の軸線方向に沿った略中央部に環状溝を介してOリング40が装着されると共に、前記環状溝を挟んで凸部38bと対称となる端部には、所定間隔離間した複数(例えば、6個)のガイド部(第2凸部)49が設けられる(図7参照)。このガイド部49は、前記外周面に対して所定高さで突出し、前記ロッドカバー16をシリンダ孔20に挿入した際に、該シリンダ孔20の内周面に摺接する。すなわち、ガイド部49は、シリンダ孔20の内周面に対応した形状で形成される。なお、ガイド部49の数量は、4個以上と設定して互いに所定間隔離間して配置されれば、特にその数量には限定されない。
【0028】
これにより、シリンダ孔20にロッドカバー16が挿入された際、該ロッドカバー16が複数のガイド部49によってシリンダ孔20に対して案内され、前記シリンダ孔20においてロッドカバー16が半径方向へ位置決めされる。その結果、シリンダ孔20の中心とロッドカバー16の軸線とを一致させることができ、前記シリンダ孔20に挿通されたピストンロッド44をロッドカバー16のロッド孔42に対して確実且つ高精度に挿通させることが可能となる。
【0029】
また、ロッドカバー16がシリンダ孔20に装着された際、Oリング40が該シリンダ孔20の内周面に当接することによって気密が保持される。
【0030】
ピストン18は、断面略長円状に形成され、その外周面には、一組の平面部50と、該平面部50の端部同士を接続し、所定半径で外側へと膨出した一組の円弧部52とを備える。この外周面にはピストンパッキン54及び磁性体56が装着され、前記磁性体56がピストンカバー58によって覆われると共に、前記ピストンカバー58の外周面がピストン18の外周面と略同一面となる。
【0031】
また、ピストン18の内部には、軸線方向(矢印A、B方向)に沿って貫通したピストン孔60が形成され、前記ピストン孔60にはピストンロッド44の連結部62が挿通される。このピストン孔60は、ロッドカバー16側(矢印B方向)に開口した第1孔部64と、前記第1孔部64に隣接して縮径した第2孔部66と、ヘッドカバー14側(矢印A方向)に向かって徐々に拡径して前記第2孔部66と隣接したテーパ孔68とを有する。なお、第1及び第2孔部64、66、テーパ孔68は互いに連通している。
【0032】
一方、ピストン18の両端面には、所定深さで窪んだ一組のダンパ溝70a、70bがそれぞれ形成され、該ダンパ溝70a、70bには一組のクッションダンパ72a、72bがそれぞれ装着される。
【0033】
このダンパ溝70a、70bは、ピストン18の軸線と略直交するように一組の平面部50の間を貫通するように両端面に沿って延在している。そして、ダンパ溝70a、70bは、ピストン18の両端面に近接して形成される第1溝部74と、前記第1溝部74に対してさらに両端面から窪んで形成され、前記第1溝部74に対して拡幅した第2溝部76とを含む。この第2溝部76は、ダンパ溝70a、70bの延在方向と略直交する方向に所定幅で拡幅して形成される。
【0034】
クッションダンパ72a、72bは、例えば、ウレタンゴム等の弾性部材から形成された断面略矩形状のプレート体からなり、ピストン18の両端面から所定長だけ突出するようにそれぞれ配設されている。このクッションダンパ72a、72bは、略中央部に軸線方向に沿って貫通した孔部78と、ダンパ溝70a、70bにそれぞれ挿入されるベース部80と、前記ベース部80に対して拡幅して該ダンパ溝70a、70bの第2溝部76にそれぞれ挿入されるガイド部82とを有する。
【0035】
また、クッションダンパ72a、72bは、ダンパ溝70a、70bの断面形状と略同一の断面形状で形成され、ガイド部82が第2溝部76に挿入されると共に、ベース部80が第1溝部74に挿入されてピストン18の両端面に対してそれぞれ所定長だけ突出する。
【0036】
さらに、クッションダンパ72a、72bの長手寸法は、ダンパ溝70a、70bの長手寸法と略同等に設定されているため、前記クッションダンパ72a、72bをダンパ溝70a、70bに装着した際、前記クッションダンパ72a、72bをの端面が前記ピストン18の平面部50から突出することがないと共に、孔部78がピストン18のピストン孔60に臨むように配置される。そして、ピストン18においてロッドカバー16側(矢印B方向)に配設されたクッションダンパ72bの孔部78には、ピストンロッド44が挿通される。なお、ダンパ溝70a、70bは、クッションダンパ72a、72bが装着されることによって該クッションダンパ72a、72bによって全体的に覆われることとなる。
【0037】
このように、クッションダンパ72a、72bは、ベース部80に対して拡幅したガイド部82がダンパ溝70a、70bの第2溝部76に対して係合されているため、前記クッションダンパ72a、72bがピストン18に対して軸線方向に沿って相対変位することが規制される。換言すれば、クッションダンパ72a、72bは、ダンパ溝70a、70bの延在するピストン18の軸線と略直交する方向にのみ移動可能に装着されている。
【0038】
そして、クッションダンパ72a、72bは、ピストン18がシリンダチューブ12に沿って変位した変位終端位置において、前記ピストン18より先にヘッドカバー14及びロッドカバー16に対してそれぞれ当接する。そのため、ヘッドカバー14及びロッドカバー16に当接した際の衝撃がクッションダンパ72a、72bによって好適に吸収され、ピストン18に対して衝撃が付与されることが防止される。換言すれば、クッションダンパ72a、72bは、ピストン18への衝撃に付与を吸収して緩衝可能な緩衝機構として機能する。
【0039】
ピストンロッド44は、軸線方向に沿って所定長を有する軸体からなり、ピストン18に連結される一端部には、半径内方向に縮径した連結部62が形成され、前記連結部62がピストン孔60の第2孔部66及びテーパ孔68に挿通される。一方、ピストンロッド44の他端部は、ロッド孔42に挿通されてブッシュ48及びロッドパッキン46によって変位自在に支持される。
【0040】
また、ピストンロッド44は、連結部62との境界部位が第1孔部64と第2孔部66との間の段部に係合されて前記ピストン18に対して位置決めされる。さらに、テーパ孔68に挿入された連結部62の端部に対して第2孔部66側(矢印B方向)に向かって押圧力を付与することにより、前記端部が拡径するように前記テーパ孔68に沿って塑性変形する。これにより、連結部62が変形した端部を介してピストン18のテーパ孔68に加締められ、前記ピストンロッド44とピストン18とが連結される。なお、ピストンロッド44の連結部62は、ピストン18の端面から突出することなく、略同一面となるように加締められている。
【0041】
係止リング28a、28bは、図8に示されるように、金属製材料から断面略U字状に形成され、シリンダチューブ12のシリンダ孔20に形成された一組のリング溝26にそれぞれ装着される。この係止リング28a、28bは、リング溝26に応じた形状に形成され、所定半径で湾曲した湾曲部84と、前記湾曲部84の両端部から略一直線状に延在した一組のアーム部86と、前記アーム部86の先端に設けられ、所定半径で湾曲すると共に互いに所定間隔離間した一組の爪部88とを含む。この爪部88は、アーム部86を挟んで湾曲部84と対向するように配置され、前記係止リング28a、28bは、一組の爪部88同士が互いに所定間隔離間する方向に付勢する弾発力を有している。
【0042】
湾曲部84は、シリンダ孔20の両側部に応じた所定半径で形成されると共に、爪部88も同様に前記シリンダ孔20の側部に応じた所定半径で形成される。
【0043】
アーム部86には、互いに対向する内側面に膨出した膨出部90を有し、前記膨出部90には治具孔92がそれぞれ形成される。詳細には、膨出部90及び治具孔92は、アーム部86において湾曲部84側となる位置に設けられる。そして、一組の治具孔92に対して図示しない治具を挿入し、該治具孔92を有する膨出部90を互いに接近させる方向へと変位させることにより、湾曲部84に対する接合部位を基点としてアーム部86及び爪部88を互いに接近させるように弾性変形させることができる。
【0044】
すなわち、係止リング28a、28bは、湾曲部84及び爪部88がリング溝26においてシリンダ孔20の両側部側に係合される。
【0045】
そして、シリンダチューブ12のシリンダ孔20に対してヘッドカバー14及びロッドカバー16を装着した後に、リング溝26に対してそれぞれ係止リング28a、28bを装着することにより、前記ヘッドカバー14及びロッドカバー16が凸部38a、38bと係止リング28a、28bによって固定されることとなる。この際、ヘッドカバー14及びロッドカバー16が、シリンダチューブ12の端面から突出することがない。
【0046】
本発明の実施の形態に係る流体圧シリンダ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、前記流体圧シリンダ10の組み付けについて簡単に説明する。
【0047】
先ず、ピストン18に対してクッションダンパ72a、72bを装着する場合には、該クッションダンパ72a、72bのガイド部82を前記ピストン18側とし、開口したダンパ溝70a、70bの端部側に前記クッションダンパ72a、72bを配置する。そして、ガイド部82が第2溝部76に挿入されるようにクッションダンパ72a、72bをピストン18側に向かってスライド変位させる。すなわち、クッションリングをダンパ溝70a、70bに沿ってピストン18の軸線と略直交方向に変位させる。これにより、クッションダンパ72a、72bを構成するガイド部82が第2溝部76に対して挿入されると共に、ベース部80が第1溝部74に対して挿入される。
【0048】
そして、ピストン18の平面部50とクッションダンパ72a、72bの端部とが一致するまで移動させることにより前記クッションダンパ72a、72bの装着が完了する。この場合、クッションダンパ72a、72bの孔部78がピストン18のピストン孔60と同軸上に配置されると共に、ピストン18の両端面に対して前記クッションダンパ72a、72bが所定高さだけ突出している(図3参照)。
【0049】
このように、クッションダンパ72a、72bを、ピストン18の両端面に設けられたダンパ溝70a、70bに対してピストン18の軸線と略直交方向にスライド変位させることにより、前記クッションダンパ72a、72bを簡便に装着することができると共に、ガイド部82が第2溝部76に係合されているためクッションダンパ72a、72bが前記ピストン18に対して軸線方向に変位することがない。
【0050】
また、クッションダンパ72a、72bは、ピストン18の軸線と略直交方向に変位自在であるが、該ピストン18がシリンダチューブ12のシリンダ孔20に挿入されることにより、前記ピストン18の外周面が前記シリンダ孔20の内周面によって囲繞されることとなるため、前記クッションダンパ72a、72bの前記ピストン18の軸線と略直交方向への変位も規制されることとなる。
【0051】
その結果、クッションダンパ72a、72bは、ピストン18の変位作用下に常に一体的に変位し、該ピストン18の変位終端位置において該ピストン18に付与される衝撃を確実且つ好適に緩衝することが可能となる。
【0052】
次に、このように一組のクッションダンパ72a、72bが装着されたピストン18をシリンダチューブ12に挿通させ、前記シリンダチューブ12の両端部にヘッドカバー14及びロッドカバー16を組み付ける場合には、前記シリンダチューブ12の一端部側からシリンダ孔20を介してヘッドカバー14を挿入し、その凸部38aがシリンダ孔20に設けられた凹部22aの段差24に当接するまで前記ピストン18側(矢印B方向)に向かってシリンダ孔20の内部へと押し込む。そして、凸部38aが段差24に当接してピストン18側(矢印B方向)となるシリンダチューブ12の他端部側へのヘッドカバー14の変位が規制された後、係止リング28aを前記シリンダチューブ12の一端部側からシリンダ孔20へと挿入してリング溝26に装着させる。
【0053】
この場合、係止リング28aは、一組の治具孔92に挿入された治具によってアーム部86及び爪部88が互いに接近する方向へと変形させられており、前記係止リング28aがリング溝26まで挿入された後に、前記治具による前記アーム部86の保持状態を解除することによって、その弾発作用下に係止リング28aが半径外方向へと拡大するように変形して前記リング溝26に係合されることとなる。
【0054】
これにより、ヘッドカバー14は、該ヘッドカバー14の凸部38aとシリンダ孔20の凹部22aとの係合作用下に軸線方向に沿ったシリンダチューブ12の内側(矢印B方向)への変位が規制され、且つ、リング溝26に装着された係止リング28aによって前記シリンダチューブ12の外部側(矢印A方向)への変位も規制される。すなわち、ヘッドカバー14がシリンダチューブ12の一端部側に固定されることとなり、前記シリンダチューブ12の一端部から外部に突出することなく収容される。
【0055】
一方、シリンダチューブ12の他端部側からシリンダ孔20を介してロッドカバー16を挿入し、ロッド孔42にピストンロッド44を挿通させると共に、その凸部38bがシリンダ孔20に設けられた凹部22bの段差24に当接するまで前記ピストン18側(矢印A方向)に向かってシリンダ孔20の内部へと押し込む。そして、凸部38bが凹部22bの段差24に当接してピストン18側(矢印A方向)となるシリンダチューブ12の一端部側へのロッドカバー16の変位が規制された後、係止リング28bを前記シリンダチューブ12の他端部側からシリンダ孔20へと挿入してリング溝26に装着させる。この場合、係止リング28bは、一組の治具孔92に挿入された治具によってアーム部86及び爪部88が互いに接近する方向へと変形させられており、前記係止リング28bがリング溝26まで挿入された後に、前記治具による前記アーム部86の保持状態を解除することによって、その弾発作用下に係止リング28bが半径外方向へと拡大するように変形して前記リング溝26に係合されることとなる。
【0056】
これにより、ロッドカバー16は、該ロッドカバー16の凸部38bとシリンダ孔20の凹部22bとの係合作用下に軸線方向に沿ったシリンダチューブ12の内側(矢印A方向)への変位が規制され、且つ、リング溝26に装着された係止リング28bによって前記シリンダチューブ12の外部側(矢印B方向)への変位も規制される。すなわち、ロッドカバー16がシリンダチューブ12の他端部側に固定されることとなり、前記シリンダチューブ12の他端部から外部に突出することなく収容される。
【0057】
また、ロッドカバー16は、その外周面に設けられた複数のガイド部49によってシリンダ孔20に沿って案内されるため、前記ロッドカバー16におけるロッド孔42の軸線とシリンダ孔20の中心とを好適に一致させることができ、前記シリンダ孔20に挿通されたピストンロッド44を前記ロッド孔42に対して確実且つ容易に挿通させることができる。
【0058】
このように、シリンダチューブ12の両端部に対してヘッドカバー14及びロッドカバー16を装着する際に、前記シリンダチューブ12のシリンダ孔20に設けられた一組の凹部22a、22bにそれぞれ一組の凸部38a、38bを係合させると共に、前記シリンダ孔20の端部から挿入された係止リング28a、28bをリング溝26に係合させることにより、前記ヘッドカバー14及びロッドカバー16の軸線方向に沿った変位を簡便且つ確実に規制することができる。
【0059】
次に、このように組み付けられた流体圧シリンダ10の動作並びに作用効果について説明する。なお、図1に示されるピストン18がヘッドカバー14側(矢印A方向)に変位した状態を初期位置として説明する。
【0060】
先ず、図示しない圧力流体供給源から圧力流体を第1流体ポート30へと導入する。この場合、第2流体ポート32は、図示しない切換弁による切換作用下に大気開放状態としておく。これにより、圧力流体が、第1流体ポート30から連通路34を通じてシリンダ孔20の内部に導入され、前記ヘッドカバー14とピストン18との間に導入された圧力流体によってピストン18がロッドカバー16側(矢印B方向)へと押圧される。そして、ピストン18の端面に装着されたクッションダンパ72bがロッドカバー16の端面に当接することによって前記ピストン18の変位が規制された変位終端位置となる。この際、クッションダンパ72bによって当接時に発生する衝撃が緩衝され、前記衝撃がピストン18に対して付与されることが防止される。
【0061】
一方、ピストン18を前記とは反対方向(矢印A方向)に変位させる場合には、第2流体ポート32に圧力流体を供給すると共に、第1流体ポート30を切換弁(図示せず)の切換作用下に大気開放状態とする。そして、圧力流体が、第2流体ポート32から連通路34を通じてシリンダ孔20の内部へと供給され、ロッドカバー16とピストン18との間に導入された圧力流体によってピストン18がヘッドカバー14側(矢印A方向)へと押圧される。そして、ピストン18の変位作用下にピストンロッド44及びクッションダンパ72aが一体的にヘッドカバー14側に向かって変位し、前記ヘッドカバー14に対峙したクッションダンパ72aが該ヘッドカバー14の端面に当接することにより、前記ピストン18の変位が規制された初期位置へと復帰する。この場合も同様に、クッションダンパ72aによって当接時に発生する衝撃が緩衝され、前記衝撃がピストン18に対して付与されることが防止される。
【0062】
以上のように、本実施の形態では、ヘッドカバー14及びロッドカバー16における両側部に凸部38a、38bを設け、シリンダチューブ12のシリンダ孔20に一対の凹部22a、22bを設けることにより、前記ヘッドカバー14及びロッドカバー16の軸線方向に沿った変位を規制することができる。そのため、ヘッドカバー14及びロッドカバー16において凸部38a、38bのみを部分的に加工すればよく、シリンダチューブ12においては凹部22a、22bのみを加工すればよいため、ガスケット及びピストン穴の全周にわたって加工を行っていた従来の流体圧シリンダと比較して加工コストを大幅に削減することができる。
【0063】
このように、シリンダチューブ12に対してヘッドカバー14及びロッドカバー16を固定する際に、前記シリンダチューブ12のシリンダ孔20、ヘッドカバー14及びロッドカバー16の外周面に対して部分的に加工を施せばよいため、前記シリンダチューブ12、ヘッドカバー14及びロッドカバー16に対する加工コストを低減して安価に流体圧シリンダ10を製造することができる。
【0064】
また、ヘッドカバー14及びロッドカバー16をシリンダチューブ12に組み付ける際に、該ヘッドカバー14及びロッドカバー16を確実に位置決めすることができるため、前記シリンダチューブ12に対する組み付け性を良好とすることができると共に、前記ヘッドカバー14及びロッドカバー16を誤ってシリンダチューブ12の内部側に挿入し過ぎてしまうことがないため、前記ヘッドカバー14及びロッドカバー16によって第1及び第2流体ポート30、32が塞がれることを阻止できる。
【0065】
さらに、ヘッドカバー14及びロッドカバー16をシリンダチューブ12の内部に収容した状態で装着することができるため、前記シリンダチューブ12を含む流体圧シリンダ10の長手寸法を抑制することが可能となり、シリンダ本体の両端部に対して複数のボルトでヘッドカバー及びロッドカバーを装着していた従来の流体圧シリンダと比較し、前記流体圧シリンダ10の小型化を図ることができる。換言すれば、シリンダチューブ12の両端部に装着されるヘッドカバー14及びロッドカバー16が前記両端部から突出することがない。
【0066】
さらにまた、シリンダ孔20にリング溝26を設け、前記リング溝26に係止リング28a、28bを装着することにより、シリンダチューブ12に対するヘッドカバー14及びロッドカバー16の脱落を簡便且つ確実に防止することができ、前記ヘッドカバー14及びロッドカバー16を固定することができる。
【0067】
なお、ヘッドカバー14及びロッドカバー16をシリンダチューブ12に対して係止する係止リング28a、28bは、上述した一組のアーム部86の途中に膨出部90及び治具孔92を有するものに限定されるものではない。
【0068】
例えば、図9〜図12に示される係止リング100a、100bのように、アーム部102の両端部にそれぞれ治具孔104を有するものを適用するようにしてもよい。
【0069】
この係止リング100a、100bは、図9〜図12に示されるように、金属製材料から断面略U字状に形成され、シリンダチューブ12のシリンダ孔20に形成された一組のリング溝26にそれぞれ装着される(図9参照)。
【0070】
この係止リング100a、100bは、リング溝26に応じた形状に形成され、所定半径で湾曲した湾曲部106と、前記湾曲部106の両端部から略一直線状に延在した一組のアーム部102と、前記アーム部102の先端に設けられ、所定半径で湾曲すると共に互いに所定間隔離間した一組の爪部108とを含む。この爪部108は、アーム部102を挟んで湾曲部106と対向するように配置され、前記係止リング100a、100bは、一組の爪部108同士が互いに所定間隔離間する方向に付勢する弾発力を有している。なお、湾曲部106は、係止リング28a、28bを構成する湾曲部84と同一の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0071】
爪部108には、互いに対向する内側面に膨出した膨出部110を有し、前記膨出部110には治具孔104がそれぞれ形成される。そして、一組の治具孔104に対して図示しない治具を挿入し、該治具孔104を有する膨出部110を互いに接近させる方向へと変位させることにより、湾曲部106に対する接合部位を基点としてアーム部102及び爪部108を互いに接近させるように弾性変形させることができる。
【0072】
そして、シリンダチューブ12のシリンダ孔20に対してヘッドカバー14及びロッドカバー16を装着した後に、リング溝26に対してそれぞれ係止リング100a、100bを装着することにより、前記ヘッドカバー14及びロッドカバー16が凸部38a、38bと係止リング100a、100bによって固定されることとなる。この際、ヘッドカバー14及びロッドカバー16が、シリンダチューブ12の端面から突出することがない。
【0073】
本発明に係る流体圧シリンダ10は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係る流体圧シリンダの外観斜視図である。
【図2】図1に示す流体圧シリンダの分解斜視図である。
【図3】図1の流体圧シリンダの全体縦断面図である。
【図4】図3に示す流体圧シリンダの分解縦断面図である。
【図5】図1に示す流体圧シリンダをヘッドカバー側から見た側面図である。
【図6】図1に示す流体圧シリンダをロッドカバー側から見た側面図である。
【図7】図3のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図2に示す係止リングの単体平面図である。
【図9】変形例に係る係止リングが流体圧シリンダに装着された状態を示す外観斜視図である。
【図10】図9に示す係止リングの単体平面図である。
【図11】図9に示す流体圧シリンダをヘッドカバー側から見た側面図である。
【図12】図9に示す流体圧シリンダをロッドカバー側から見た側面図である。
【符号の説明】
【0075】
10…流体圧シリンダ 12…シリンダチューブ
14…ヘッドカバー 16…ロッドカバー
18…ピストン 20…シリンダ孔
22a、22b…凹部 26…リング溝
28a、28b、100a、100b…係止リング
30…第1流体ポート 32…第2流体ポート
38a、38b…凸部 42…ロッド孔
44…ピストンロッド 49…ガイド部
50…平面部 52…円弧部
60…ピストン孔 70a、70b…ダンパ溝
72a、72b…クッションダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面長円状のシリンダ室を有する筒状のシリンダ本体と、
前記シリンダ室に対応した断面長円状に形成され、前記シリンダ室の内部に軸線方向に沿って変位自在に設けられるピストンと、
前記シリンダ室の内部に収容され、該シリンダ室を閉塞すると共に、該シリンダ室の内壁面側に向かって突出した第1凸部を外周面に有する一組のカバー部材と、
を備え、
前記シリンダ室には、断面長円状の内壁面に対して窪んだ凹部が形成され、前記凹部に前記第1凸部が挿入されて前記シリンダ室の軸線方向に係止されることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
請求項1記載の流体圧シリンダにおいて、
前記第1凸部は、前記カバー部材の軸線を中心として対称となる位置に一組配置され、前記カバー部材の外周面に膨出して形成されることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流体圧シリンダにおいて、
前記シリンダ室には、前記内壁面に沿って形成された装着溝に係止部材が装着され、前記カバー部材は、前記凹部及び前記係止部材によって軸線方向への変位が規制されることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体圧シリンダにおいて、
前記カバー部材の外周面には、前記シリンダ室の内壁面に当接する第2凸部が設けられることを特徴とする流体圧シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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