流体流れ解析方法、流体流れ解析システム、コンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラム
【課題】構造物に流入する流体の経路に沿って流れ計算を分離・分割して行い、結果を足し合わせることで、容易に構造物全体の流体流れを解析する。
【解決手段】構造物内に流入する流体によって生じる流れを次の線形方程式
を用いて、コンピュータが解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップを有する。
【解決手段】構造物内に流入する流体によって生じる流れを次の線形方程式
を用いて、コンピュータが解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をコンピュータにより高速・簡便にシミュレーションするための流体流れ解析方法、流体流れ解析システム、コンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、家屋等の構造物を設計するに際して、その形状や部屋の間取り、ドア・窓の設置箇所等によって、風通しの良い快適な住空間を有する家屋を設計することになることから、家屋内の風流れを予測することは建築構造物等の設計に有用である。また、既存の家屋に空調設備や家具等を配置する場合、家屋内の任意の箇所に空調を設けた際の家屋内の風の流れを予測できれば、エネルギー効率上最適な位置に空調を設置することが可能となる。
【0003】
家屋等の構造物内の流体(風を含む)の流れを予測する方法としては、例えば、特許文献1の温熱気流解析システムを用いた予測方法が挙げられる。特許文献1の温熱気流解析システムは、構造物(建築)の部位を入力して室形状モデルを作成する室形状モデル作成手段11と、作成された室形状モデルの輪郭・境界に沿ってメッシュを作成し、概メッシュを輪郭・境界の条件に応じて分割するメッシュ作成手段12と、メッシュ作成手段12により作成されたメッシュに基づき数値流体流れ解析を行う解析手段13と、解析手段13による解析結果として室内外の温度、気流、濃度の分布状況や時間毎の変化を含む空気環境の検討情報を出力する出力手段14とを備えている。このシステムをコンピュータに導入すれば、上記の諸情報を入力することで、構造物内の流れ(風力・風向き)を解析計算でき、得られた解析結果をコンピュータの表示画面上に視覚化することが可能となる。
【特許文献1】特開2002−56039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に係る流体流れ解析システムに代表される現在の解析システムでは、流れ(風の流れ)を非圧縮性粘性流れとして仮定しているため、シミュレーションを行う際の解析式として、粘性項を含む非線形方程式(Navier−Stokes方程式)である次の数式(2)を用いている。
【数2】
ここで、uは流速のベクトル、pは圧力、Reは、Reynolds Numberである。この方程式は、渦や乱流等、複雑な流体運動全般に適用でき、その計算結果として正確な値を得ることができる反面、非線形方程式であるため、解を収束させるためには細かいメッシュ分割が必要となる。また、壁付近において複雑な現象をもたらすが、この現象を表現するためにも細かいメッシュ分割が必要となる。上記特許文献1に係る解析システムにも、流体流れ解析の効率化を図る上でメッシュ作成手段12により細かいメッシュ分割が行われている。また、この方程式は、非線形方程式であるため、家屋内に複数の開口から流体が流入する場合であっても、各流入口別に分離して解析計算を行い、得られた解析結果を重ね合わせて全体の解析結果を得るといったことができない。そのため、家屋内が複数ブロックに仕切られているか否かに関わらず、家屋全体を一つの空間として捉え、この空間の流れすべてを(数式2)に適用させて解析計算を行う必要がある。一般に、流体シミュレーションの計算量は、解析空間の体積の3乗に比例する。このため、解析空間を分割せずに解析計算すると、解析空間の体積が増大すればするほど、高性能のコンピュータが必要となり、一般のパーソナルコンピュータによる適用は困難になる。また、例え、解析計算を行えたとしても、計算量が膨大なため、解析計算に要する時間も長時間に及ぶ。
【0005】
そこで、本発明の目的は、先に述べた計算量と解析空間の体積との関係を利用し、家屋内流れの解析計算を全体一括ではなく、分割したブロックごとに流れに沿った順番で行い、流れの分岐および複数の流入に対しては、各々の流れを分離して解析計算した結果を重ね合わせて解を得ることにより、従来手法よりも大幅な計算量の削減を可能にし、高速かつ簡便なシミュレーションを実現できる流体流れ解析方法、流体流れ解析システム及びコンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、流体(気体・液体)の運動の様子が、慣性力と粘性力との比により変化し、慣性力の粘性力に対する比が大きいほど、流体の運動が粘性力の影響を受けなくなることに着目した。一般に、構造物内部の流れ(空気・風等)は、慣性力の方が粘性力よりも数千倍或いはそれ以上強いことが知られており、このことから本発明者は、構造物内での流れが、粘性力の影響を受けず、慣性力のみの影響を受ける流れであると仮定した。また、本発明者は、質量保存則(構造物内に流入した流体は、構造物内で増加したり、或いは、減少したりすることがなく常に一定である)))と上記仮定によって、構造物内部の流体の運動が、線形方程式(速度ポテンシャル方程式)により定義できることから、構造物内部の流体流れ解析に用いる解析式に、従来の非線形方程式(Navier−Stokes方程式)ではなく、線形方程式(速度ポテンシャル方程式)を適用することとした。
【0007】
すなわち、本発明の流体流れ解析方法は、構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析方法であって、構造物内に流入する流体によって生じる構造物内の流体流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いてコンピュータが解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップを有することを特徴とする。ここで、構造物とは、家屋内のような構造のほか不規則に配置された多数の家屋まわりのような構造も含まれ、ビル風の計算等を求めることもでき、また化学プラントなどで複雑に張り巡らされた配管での流れなどにも適用可能である。
【0008】
本発明によれば、構造物内での流体流れ解析に、所定の線形方程式を適用しているため、従来の非線形方程式を適用していた場合と比べ、コンピュータによる計算量が減少し、短時間で解析結果を得ることができる。
【0009】
先に述べたように流体シミュレーションにおいては、その計算量は解析空間体積の3乗に比例する。本発明では、流体が流れる経路に沿って、ブロックごとに順次計算を行うことにより、解析する回数は増えるが、1回の解析における空間体積が減少するため、結果として計算量を飛躍的に減少させることができる。
【0010】
本発明としては、上記構造物内に流入する各流入ごとに流れを分離して計算を行い、また上記構造物が分割可能な複数ブロックに仕切られていた場合、分離した流れに沿ってブロックごとに順次計算を行うステップと、分離した流れごとの解析結果を重ね合わせることで流体流れ解析を行うステップとを有する構成とすることができる。
【0011】
本発明によれば、構造物内に複数の箇所から流入する場合であっても(家屋の窓が複数で風が複数の箇所から流入する場合であっても)、線形方程式の性質上、解を重ね合わせることができるため、各流入ごとに分離して計算を行い、解析結果を重ね合わせることで構造物内の流体流れを容易に解析できる。
【0012】
本発明の流体流れ解析システムは、構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析システムであって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いて解析計算する流体流れ解析手段を有することを特徴とする。また、本発明のコンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムは、コンピュータにより構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をシミュレーションするための流体流れ解析プログラムであって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、上記所定の線形方程式(数式(1))を用いて解析計算する流体流れ解析ステップを有するようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、構造物内での流体流れの解析式に所定の線形方程式を適用した流体流れ解析手段を有しているため、従来の非線形方程式を適用した場合と比べ、計算量が減少し、短時間で解析結果を得ることができる流体流れ解析システムとなる。また、本発明によれば、構造物内での流体流れの解析式に所定の線形方程式を適用した流体流れ解析手段ステップを備えるようにコンピュータを機能させることで、従来の非線形方程式を適用した場合と比べ、計算量が減少し、短時間で解析結果を得ることができる流体流れ解析プログラムとなる。
【0014】
上記の構成により例えば、家の間取り、窓やドアの位置や数、風の方向や速度などを条件設定すれば、どんな形状や大きさの構造物(部屋ごとのブロック)であっても、短時間で風の流れ速度、方向、量を容易に分析ことが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の流体流れ解析方法、流体流れ解析システム、コンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムによれば、流体(気体・液体)の構造物内での流れをシミュレーションするに際して、家の間取り、窓やドアの位置や数、風の方向や速度などを条件設定すれば、どんな形状や大きさの構造物であっても、高性能のコンピュータでなく一般のパーソナルコンピュータでも数分で流体の流れの解を求めることが可能になる。また、建築CADに本発明の流体流れ解析方法を組み込むことにより、CAD図面から自動的に流体(風)による構造物の流体流れを予測するため、数値流体力学シミュレーションの専門知識がない建築設計者が構造物の流れを短時間で低コストで予測することが可能になり、家財の配置や空調設備等の位置などを考慮した構造物の設計等に活用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施の形態は、建築構造物内での風流れ(風速・風向)を解析するのに最適な流体流れ解析方法、流体流れ解析システム、コンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムに関する。
【0018】
(本発明の流体流れ解析システム)
本実施の形態は、構造物内での流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析システム1である(図1)。
【0019】
図12は、本発明の第1の実施の形態による流体流れ解析システム1の一構成を示すブロック図である。本実施の形態による流体流れ解析システム1は、内部バス11に、通信インタフェース12、CPU13、ROM14、RAM15、ディスプレイ9、キーボード/マウス8、ドライブ18、ハードディスク19を接続させ、アドレス信号、制御信号、データ等を伝送させ、本実施の形態による流体流れ解析システムを実現するコンピュータシステムとしての構成を備えている。
【0020】
通信インタフェース12は、インターネット等の通信網に接続する各種通信機能を有しており、コンピュータを下記各手段2〜7として機能させるプログラム19aをダウンロードしたりすることも可能である。CPU13は、ROM14に格納されたOSにより装置全体の制御を行うとともにハードディスク19に格納されたプログラムに基づいて処理を実行する機能を司る。
【0021】
ROM14は、OS等のように装置全体の制御を行うためのプログラムを格納しており、これらをCPU13に供給する機能を有している。RAM15は、CPU13による各種プログラムの実行時にワークエリアとして利用されるメモリ機能を有している。
【0022】
ディスプレイ9は、CPU13からの指令に基づいて後述する構造物内部形状や流体の流れをグラフィカルに表示したりする機能を有している。キーボード/マウス8は、文字、数字、記号等のデータを入力したり、画面上のポイント位置を操作して座標情報を入力することも可能である。
【0023】
ドライブ18は、各種のプログラム、データを記録したCD、DVD等の記録媒体からインストール作業を実行するための駆動ユニットである。コンピュータを流体流れ解析システム1として機能させるプログラム19a等を記憶媒体からインストールしたりすることも可能である。
【0024】
ハードディスク19は、プログラム19aや各種データを記憶する外部記憶装置である。プログラム19aは、前述した通信インタフェース12、ドライブ18等からインストールされたプログラムを実行形式で記憶したものに相当する。
【0025】
この流体流れ解析システム1はCADシステムと接続したりCADシステムに組み込み可能となっており、CADシステム10の座標情報等の各種データを利用可能にしたり、CADシステム10にて各種情報をグラフィカルに視覚化させたりすることが可能となっている。CADシステム10は、ハードディスク19にCADシステムとして機能させるプログラムが記憶されており、この命令に従ってCPUが処理を実行することにより、流体流れ解析システム1と同一コンピュータにて実現されている。なお、本発明の流体流れ解析システム1は、CADシステム10を一部機能として組み込むものでも良く、CADシステム10の一部機能として組み込まれるものでも良く、独立したCADシステム10と接続されるものでも良い。
【0026】
この流体流れ解析システム1は、構造物内に流入する流体によって生じる構造物内の流れ(流速・流れ方向)を、所定の線形方程式を用いて解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析手段7を有する。また、本実施の形態は、構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成手段2と、構造物内部形状作成手段2により作成した内部形状に基づき構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割手段3と、構造物形状作成手段2により作成した内部形状に基づき、隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを表す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成手段4と、上記開口部共有情報に流入情報を付加する流入情報設定手段5と、流入情報が付加された開口部共有情報に基づき流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでのブロックの計算順序を決定する計算順序決定手段6を有する。そして、計算順序決定手段6により決定した順序に従って上記流体流れ解析手段7によりブロック内の流れの解析計算を行う。上記流体流れ解析手段7は、解析結果ストック手段7aと、ストックした解析結果を重ね合わせる解析結果重ね合わせ手段7bとを有する。
【0027】
ここで、本実施の形態の説明中、構造物とは、建築構造物を指すこととし、構造物内を流れる流体とは、特に言及のない場合は空気を指すこととする。また、流れとは構造物内の任意点での流体(空気)の流速(風速)・流れ方向(風向)を指すこととし、流れ(流速・流れ方向)とも表すこととする。特に、構造物の流入口あるいは流出口での流体の上記流れを流入あるいは流出と表し、流入(流速・流れ方向)あるいは流出(流速・流れ方向)とも表すこととする。また、ここでは、構造物内のブロックとは、内壁やパーティション、或いは家具等で仕切られた空間を指し、例えば、部屋、廊下、玄関等がこれに該当することとする。また、本実施の形態の説明中、解析結果とは、解析計算により得られた計算結果を指すこととする。また、流体流れを解析するとは、諸条件下で、上記解析計算を行い、その解析結果を数値等として得ることで、流体流れをこれらの数値等で表現することを指すこととする。
【0028】
流体流れ解析手段7は、構造物内に流入する流体によって生じる構造物内の流れ(流速・流れ方向)を、所定の線形方程式を用いて解析計算し、その解析結果を得るものである。所定の線形方程式には、
【数1】
で表される速度ポテンシャル方程式が用いられる。この方程式を解析式として適用すれば、構造物内に複数箇所から流体が流入する場合であっても、流入別に流れを分離して解析計算して得た解析結果を重ね合わることで、全体の解析結果を得ることができる。ここで、φは速度ポテンシャルと呼ばれる関数で、x、y、z各方向の速度u、v、wはφを空間微分することにより得られる。
【数3】
これは例えば「F(x)=0」という線形方程式に対して「F(x1+x2)=0を満たす解を得る」という問題が与えられた際に、方程式の線形性を用いて、まずF(x1)=0という問題を解いて解f1を得て、次いでF(x2)=0という問題を解いて解f2を得て、最終的に解f=f1+f2 として得られる、という方法で解を得るものである。
【0029】
構造物内部形状作成手段2は、ユーザーにより入力された所定の座標情報に基づいて流体(空気)が流入する構造物Aの内部形状A1(図2)を作成するものである。ここで、構造物Aの内部形状A1を作成するとは、ユーザーが構造物Aの形状の座標情報(部屋の間取り、ドア・窓の設置箇所等の位置情報等)を入力し、構造物内部形状作成手段2がこれら入力された座標情報に基づき、座標情報の集合として構造物Aの内部形状A1を作成することを指す。ドアや窓の開口の位置や大きさを入力することにより、その構造物の大きさも特定できる。ここで、ユーザーにより入力された座標情報はCADシステム10にてグラフィカルに視覚化させて表示手段9に表示しても良い。また、上記ユーザにより入力される座標情報として、CADシステム10に入力された座標情報を用いてもよく、入力された座標情報を用いて作成した構造物内部形状をCADシステムに渡して視覚化させ表示手段9に表示しても良い。
【0030】
メッシュ分割手段3は、上記構造物内部形状作成手段2により作成した内部形状A1に基づき、構造物A内をメッシュ分割するものである。上記流体流れ解析手段7により、実際に解析計算を行う際、分割するメッシュが細かければ、計算量は増加し、その分だけ解析時間は増加するが、精度の高い解析結果を得られる。一方、分割するメッシュが粗ければ、解析結果の精度は低下するが、計算量は減少し、その分だけ解析時間を短縮できる。本実施の形態では、メッシュ分割の細かさを任意に指定できることとし、時間に比重をおく場合や、精度に比重をおく場合等、それぞれの状況に応じてメッシュの細かさを指定することとする。入力されたメッシュの細かさの情報はCADシステム10にてグラフィカルに加工して表示手段に表示させても良いし、メッシュの細かさの指定をCADシステム10に入力させ、その情報をメッシュ分割手段3にて用いても良い。
【0031】
開口部共有情報作成手段4は、構造物形状作成手段2により作成した内部形状A1に基づき、構造物A内の隣接する各ブロックB1〜B4が開口部を共有しているかどうかを表す開口部共有情報を作成するものである。
【0032】
開口部共有情報作成手段4は具体的には最初のステップとして、構造物内部形状作成手段2により得た内部形状A1の開口部、壁等のオブジェクト情報を比較し、各ブロックがどの開口部を所有しているのかという情報と、各開口部がどの部屋に所属しているのかという情報を作成する。図3は、図2の構造物Aの内部形状A1を立体的に表したものである。例えば、この構造物AのブロックB1、ブロックB2、開口部W1とD1、D2の位置情報は、それぞれの基準点と寸法を用いて図4(a)のように表すことができる。これらの位置情報を比較することで、例えば、構造物AのブロックB1は、開口部W1と開口部D1、D2を所有し、ブロックB2は、開口部D1、D4、W2を所有していることが認識できる。これと同時に、例えば、開口部W1は、ブロックB1にのみ所属し、開口部D2は、ブロックB1とブロックB3の両方に所属することが認識できる。このように、構造物Aにおいて、各ブロックがどの開口部を所有しているのかという情報と、開口部がどの部屋に所属しているのかという情報を作成する(図4(b))。ここで、開口部が1つの部屋のみに所属している場合、その開口部は外部とを繋ぐ外側の開口部であることが認識でき、また、開口部が2つのブロックに所属している場合は、その開口部は2つのブロックを繋ぐ内側の開口部であると認識できる。
【0033】
そして次のステップとして、上記各ブロックB1〜B4がどの開口部を所有しているのかという情報と、開口部W1〜W4、D1〜D4がどの部屋に所属しているのかという情報に基づき開口部共有情報を作成する。ここで、開口部共有情報は、各ブロックB1〜B4をノードとし、2つのブロックに所属している各開口部をエッジとすると、単純なグラフ構造A2で表せる(図5)。ここで、1つのブロックのみに所属している開口部W1〜W4は、ブロックから突出したエッジとして表されている。
【0034】
流入情報設定手段5は、ユーザーにより入力された流れ(流速・流れ方向)の値を以下に述べる所定の規則に適用し、流入口・流出口を決定し、上記開口部共有情報作成手段4により作成された開口部共有情報に、これら流入口・流出口を含む流入情報を付加する。入力された流れの情報(流速・流れ方向)は、CADシステム10にてグラフィカルに表示しても良いし、CADシステム10にて入力可能として表示手段9にグラフィカルに表示するとともに、その流れの情報を流入情報設定手段5に用いても良い。
【0035】
例えば、図5において、ユーザーが構造物の南側(図2中の下方)から所定の流れ(流速・流れ方向)を入力すると、上記流入情報設定手段5は、この値から風上に面している外側の開口部が流入口となるという所定の規則を適用して、上記開口部共有情報に構造物Aの開口部W1、W2を所定の流れ(流速・流れ方向)を有する流体が流れこむ流入口として設定する。また、他の開口部W3、W4を流れこんだ流体が流出する流出口として設定する。
【0036】
ここで、複数の開口部から流体が流入する場合は、各流入口に流れこむ流体ごとに流れを分離して考えるので、上記流入情報設定手段5は、各流入口について当該流入口を開とし他のすべての流入口を閉としたパターンを作成し、各パターンごとの流入情報を上記開口部共有情報に付加する。例えば、構造物Aに開口部W1、W2からそれぞれ流体が流入する場合、まず、一方の開口部W1のみから構造物A内に流体が流入するものとして、開口部共有情報に、この流入情報を付加する。このとき、他方の開口部W2は、閉じていることとする。このパターンの開口部共有情報は、上記ノードとエッジを用いると、グラフ構造A3で表せる(図6(a))。同時に、開口部W2のみから流体が構造物A内に流入するものとして、開口部共有情報に、この流入情報を付加する。このとき、開口部W1は、閉じていることとする。このパターンの開口部共有情報は、上記ノードとエッジを用いると、グラフ構造A4で表せる(図6(b))。なお、流入情報設定手段5により上記複数のパターンが作成された場合は、計算順序決定6が各パターンごとに計算順序を決定し、上記流体流れ解析ステップ7が各パターンごとに上記計算順序に従って上記解析計算を行うことになる。
【0037】
計算順序決定手段6は、流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、流体が最初に流入するブロックからその流体が流出するブロックまでの各ブロックの計算順序を決定する。この計算順序決定手段6は、流入情報を設定した開口部共有情報に基づき、最初に流入するブロックから開口部を共有する隣接ブロックへと順次隣接探索を行う隣接探索手段をベースとしている。隣接探索とは、すでに計算順序に加わっているブロックの隣で、未だ計算順序に加わっていないブロックを「隣→隣→・・」と巡ることで全てのブロックを巡る方法である。そして、この計算順序決定手段6には、隣接探索途中でのブロックの計算順序決定に際し、選択したブロック以外の未だ計算順序に入っていない他のブロック群に少なくとも一箇所流出口が存在する場合に限り、選択したブロックの計算順序が決定するという条件を課している。
【0038】
上記W1、W2に流体が流入した場合で説明すると、まず、開口部W1から流体が流入するときのパターンの開口部共有情報は、上記グラフ構造A3で表せる(図6(a))。このパターンの開口部共有情報に基づき、計算順序を決定する場合は、最初のステップとして、開口部W1を所有するブロックB1から順次隣接探索を行い、ブロックB1に隣接するブロックB2、B3をピックアップする。次のステップとして、ピックアップしたブロックB2、B3が上記の流出口に関する条件を満たしているかを確認する。まず、ブロックB3を選択した場合、未だ計算順序に入っていない他のブロック群はブロック群B2、B4である(図7(a))。このブロック群B2、B4には、流出口となる開口部W3、W4が存在するため、上記の流出口に関する条件を満たしている。また、ブロックB2を選択した場合も、未だ計算順序に入っていない他のブロック群B3、B4に、流出口となる開口部W3、W4が存在し、上記の流出口に関する条件を満たす(図7(b))。よって、ここまでの計算順序は、{B1}、{B2、B3}となる。ここで、ブロックB2、B3の計算順序の優劣はない。そして最後のステップで、残されたブロックB4の計算順序が決定し、全体の計算順序は、{B1}、{B2、B3}、{B4}となる。
【0039】
一方、開口部W2から流体が流入するときのパターンの開口部共有情報は、上記グラフ構造A4で表せる(図6(b))。このパターンの開口部共有情報に基づき、計算順序を決定する場合は、最初のステップとして、開口部W2を所有するブロックB2から順次隣接探索を行い、ブロックB2に隣接するブロックB1、B4をピックアップする。次のステップとして、ピックアップしたブロックB1、B4が上記の流出口に関する条件を満たしているかを確認する。まず、ブロックB4を選択した場合、未だ計算順序に入っていない他のブロック群はブロック群B1、B3である(図7(c))。このブロック群B1、B3には、流出口となる開口部が存在しないため、上記の流出口に関する条件を満たさない。一方、ブロックB1を選択した場合、未だ計算順序に入っていない他のブロック群B3、B4には、流出口となる開口部W3、W4が存在するため、上記の流出口に関する条件を満たす(図7(d))。よって、ここまでの計算順序は、{B2}、{B1}となる。そして、ブロックB1から隣接探索することにより、全体の計算順序が{B2}、{B1}、{B3}、{B4}に決定する。もし先に述べた流出口に関する条件を課さなければ、ブロックB4がB3よりも先に選択されることになり、と最終的な計算順序は{B2}、{B4、B1}、{B3}となる。本来流れの方向を考えると、B4はB3の後で計算されるべきなのだが、この順序ではB4からB3へ流れることになり、流れはB3で詰まってしまう。これを避けるために本発明では前述の流出口に関する条件を課している。
【0040】
流体流れ解析手段7は、上記計算順序決定手段6により決定した順序に従って、各ブロックごとに順次解析計算を行う。この流体流れ解析手段7は、複数の開口部にそれぞれ流体が流入したとき、上記計算順序決定手段6により複数のパターンの開口部共有情報ごとに計算順序が決定されるが、これら各パターンごとの計算順序に従って上記解析計算を行う。この流体流れ解析手段7は、上記各パターンごとの、各流入ごとの解析結果をメモリ等の記憶手段に記憶させてストックする解析結果ストック手段7aと、ストックした各解析結果を重ね合わせる解析結果重ね合わせ手段7bとを有している。以下に述べる例では、開口部W1、W2に流体がそれぞれ流れ込んだ場合を想定する。各流体ごとの計算順序は、それぞれ{B1}、{B2、B3}、{B4}と、{B2}、{B1}、{B3}、{B4}である。この順序に従って、まず、開口部W1から流入した流体について、ブロックB1内で流れの解析計算が行われる。ここで得られた解析結果は、解析結果ストック手段7aによりストックされる。次に、ブロックB1の解析結果からブロックB2、B3に流入する流体の開口部D1、D2での流れ(流速・流れ方向)が決定するので、この結果を用いて、ブロックB2、B3でも流れの解析計算を行う。そして、ここで得られた解析結果も、解析結果ストック手段7aによりストックされる。最後に、ブロックB2、B3の解析結果からブロックB4に流入する流体の開口部D3、D4での流れ(流速・流れ方向)が決定するので、この結果を用いて、ブロックB4での流れの解析計算を行う。そして、この解析結果も、解析結果ストック手段7aによりストックされる。同様にして、開口部W2からの流入について、ブロックB2、B1、B3、B4の順に、流れの解析計算を行い、各ブロックでの解析結果を、上記解析結果ストック手段7aによりストックする。最後に、解析結果ストック手段7aによりストックされたブロックごとの解析結果を、上記解析結果重ね合わせ手段7bにより重ね合わせる。これによって、構造物Aに開口部W1、W2から所定の流れ(流速・流れ方向)を有する流体が流入した場合の構造物A内の流れ(流速・流れ方向)を解析することができる。なお、流体流れ解析手段7は、差分法と呼ばれる方法を用いて、壁・流入・流出に適切な境界条件を課すことで計算する。なお、上記解析結果ストック手段7aでストックされた各ブロックごとの解析結果を、上記表示手段9上でファイルとして出力し、各ブロックごとの解析計算過程を視覚的に認識できるようにしてもよい。流体流れ解析手段7による解析結果をCADシステム10にてグラフィカルなデータに変換し、表示手段9に表示可能にしてもよい。
【0041】
本実施の形態の流体流れ解析システムによれば、家屋内の流れの解析を家屋を構成するブロック(部屋や廊下など)ごとに計算することで行う。流体流れ解析に要する計算量は、解析空間の体積の3乗に比例することは先に述べたが、ブロックごとに計算することにより、数式(4)に示すようにトータルの計算量を飛躍的に減少させることができる。
【数4】
ここで、Viは部屋iの体積でありNは部屋(ブロック)の数である。
【0042】
次に、本実施の形態の流体流れ解析システムを種々の構造物に適用して、流体流れ解析を行う。
【0043】
本発明の流体流れ解析システムでは、図8に示すようなフローにより流体流れ解析が行われる。すなわち、上記構造物内部形状作成手段2による構造物内部形状の作成(ステップ1)−上記メッシュ分割手段3によるメッシュ分割(ステップ2)−上記開口部共有情報作成手段4による開口部共有情報の作成(ステップ3)−上記流入情報設定手段5による流入情報の付加(ステップ4)−上記計算順序決定手段6による計算順序の設定(ステップ5)−上記流体流れ解析手段7による解析計算(ステップ6)−上記解析結果重ね合わせ手段7bによる解析結果の重ね合わせ(ステップ7)−表示方法の選択(ステップ8)の順序で行われる。なお、ステップ1,2及び4については、ユーザーによる形状データ・メッシュ分割のサイズ・風向き・風速などのパラメータの手動設定によって行われる。以下、これらのステップを順に説明する。ここで、本実施の形態は、流体流れ解析システム1の各手段2,3,5がCADシステム10と接続されており、上記各手段2〜7から出力される座標情報をCADシステム10の座標情報に反映させることで、これら各手段2〜7の座標情報を上記表示手段9上で視覚化することが可能である。また、CADシステムに入力された座標情報を上記各手段2,3,5に反映させることで、例えば、上記入力手段8を用いて表示手段9上の座標点を指定し、CADシステムを介して、上記各手段2,3,5へ座標情報を入力することが可能となる。
【0044】
上記構造物内部形状作成手段2による構造物内部形状作成(ステップ1)では、構造物内部形状作成手段2が表示手段9上に座標入力用画面を表示し、ユーザーにより上記座標入力用画面から座標情報が入力されると、構造物内部形状作成手段2が、入力された座標情報を用いて構造物内部形状を作成する。
【0045】
上記メッシュ分割手段3によるメッシュ分割サイズの設定(ステップ2)では、ユーザーが格子分割の細かさについて、x、 y、 z方向それぞれを何cm単位で分割するか決定し、この情報を上記メッシュ分割手段3に入力する。そして、この情報に基づいて、メッシュ分割手段3がメッシュ分割を行う。
【0046】
上記開口部共有情報作成手段4による開口部共有情報の作成(ステップ3)では、開口部共有情報作成手段4が、各ブロック(部屋およびドアや窓などの開口)の座標値を比較することにより、物体間の所有する・所有されるの関係情報を作成する。ここで、この開口部共有情報に、上記ステップ3の流入情報が付加される。
【0047】
上記流入情報設定手段5による流入情報の設定(ステップ4)では、ユーザーにより入力された流れ(流速・流れ方向)の値を前述の風上に面している外側の開口部が流入口となるという規則に適用し、流入口・流出口を決定し、上記開口部共有情報作成手段4により作成された開口部共有情報に、これら流入口・流出口を含む流入情報を付加する。
【0048】
上記計算順序決定手段6による計算順序の設定(ステップ5)では、作成した開口部共有情報を元に各流入からの流れの計算順序を決定する。
【0049】
上記流体流れ解析手段7による解析計算(ステップ6)では、流体が流れる経路に沿って、ブロックごとに順次計算を行う。ここで、流入が複数の場合、上記流体流れ解析手段7の解析結果ストック手段7aにより、あるブロックについて、流入ごとに解析結果をストックしておく。
【0050】
上記解析結果重ね合わせ手段7bによる計算結果の重ね合わせ(ステップ7)では、ここまでに、分離したそれぞれの流入について、ブロックごとに解析結果がストックされている。ここではストックされた各解析結果のうち、同一ブロックについての各解析結果を選択する。分離した流れの数だけ同一ブロックについてストックされた解析結果が存在するため、これらの各解析結果を重ね合わせる。すなわち、同一ブロック内の同一点に関する情報(流れの速度の、x方向成分とy方向成分とz方向成分)をベクトルとして重ね合わせる。具体的な計算を挙げると、例えば二つの流入があった場合、ある点pの最終的な速度成分px、 py、 pzは下式のように求められる。(ここでp1xは流入1に対する解析結果の点pでのx方向速度成分、 p2xは流入2に対する解析結果の点pでのx方向速度成分である。以下同様にp1y、p2yは点pのy方向速度成分、p1z、p2zは点pのz方向速度成分を示している。) なお、上記解析結果ストック手段7aでストックされた各ブロックごとの解析結果を、上記表示手段9上でファイルとして出力し、各ブロックごとの解析計算過程を視覚的に認識できるようにしてもよい。すなわち、分離したそれぞれの流入について、ブロックごとに解析結果をファイルとして出力する。そして、出力された各ファイルのうち、同一ブロックについてのファイルを選択する。分離した流れの数だけ同一ブロックについてのファイルが存在するため、これらのファイル内の解析結果を重ね合わせる。
【0051】
【数5】
【0052】
表示方法の選択(ステップ8)では、最終的に求められた家屋内の風の流れの様子をどのように表示するかを選択し実行する。すなわち、表示方法選択手段(図示せず)が上記表示手段9上にベクトルでの表示、流線での表示、粒子での表のいづれかを選択する選択画面を表示する。そして、例えば、ユーザーが、ベクトルでの表示を選択すると、この指令に基づき、表示方法選択手段が、上記で求められた各場所の流れの方向と速度を矢印により表示し(ステップ8(a))、また、その他の選択によっては、流線や点状(粒子状)で表示する(ステップ8(b)(c))。なお、上記表示方法選択手段については、上記各手段と独立して設けてもよいし、上記流体流れ解析手段7に上記表示方法選択手段としての機能を備えさせてもよい。
【0053】
次に、本実施の形態を適用して一つのブロックE1内での流体流れ解析を行う場合について説明する(図9)。このブロックは、南面、東面にそれぞれ開口部W5、W6を有する。ここでは、開口部W5が流入で開口部W6が流出口と想定しよう。解析計算を行うと、W5からの流入に対するブロックE1の解析結果がファイルに出力される。この例では流入は一つであるため、重ね合わせの式は数式(6)に示すものとなる。そのためステップ6の解析結果が、流入する流体により生じるブロックE1内の流れ(流速・流れ方向)を示すことになる。
【0054】
【数6】
【0055】
次に、実施の形態を適用してブロックE2内での流体流れ解析を行う場合について説明する(図10)。このブロックは、南面に開口部W7、W8、東面に開口部W9を有する。ここでは開口部W7、W8が流入で開口部W9が流出であると想定しよう。計算は上記W7からの流入の解析計算と、W8からの流入の解析計算をそれぞれ行う。このとき、それぞれの流入の解析結果がファイルとして出力される。流入が二つあるため重ね合わせの式は先に示した数式(5)に示すものとなる。この重ね合わせた解が、流入する流体により生じるブロックE2内の流れ(流速・流れ方向)を示すことになる。
【0056】
上記ブロックE2では、各流入別に解析を行い、解析式の線形性からこの解を重ね合わせることで、ブロックE2内での流体流れ解析を行っている。従来の粘性項を含む非線形方程式を用いた流体流れ解析システムと比較すると、単純な線形方程式を用いる分だけ計算量が減少するため、高性能のコンピュータではなく、一般のパーソナルコンピュータへの導入が可能である。
【0057】
次に、本実施の形態を適用して構造物E3内での流体流れ解析を行う場合を説明する(図11(a))。構造物E3は、ブロックB11の南面に開口部W10、B13の東側にW11、ブロックB18の北面に開口部W12を有する。まず、上記ステップ1、2で、構造物内部形状の作成、空間分割サイズの設定を行う。次に、ステップ3及びステップ4で、開口部共有情報の作成及びこの開口部共有情報に流入情報を付加する。ここで、ステップ3及びステップ4の手順を逆に行ってもよい。すなわち、まず、ステップ4で、流入情報を設定する。ここでは南側から風が吹いていると想定しよう。すると、流入情報設定手段5により、自動的に、南面の開口W10が流入口と決定され、東面の開口部W11と、北面の開口部W12が流出口と決定される。次に、ステップ3で、開口部共有情報の作成を行う。そして、この開口部共有情報に上記流入情報が付加される。ここで、開口部の流入・流出を設定した開口部共有情報は、各ブロックをノード、各ブロックが共有する開口部をエッジで表示すると、グラフ構造A5として表せる(図11(b))。次にステップ5で、計算順序を決定する。流体が流入するブロック11から順次先に述べた流出口に関する条件を課した隣接探索を行う。{B11}の隣であるB12とB14をピックアップするとどちらも条件に合格するので順序は{B11}、{B14、B12}、次いでB14とB12の隣であるB17、B15、B13をピックアップするが、いずれも流出口に関する条件に合格するので順序は{B11}、{B14、B12}、{B17、B15、B13}のように、各ブロックの計算順序が決定してゆく(図11(c))。次にピックアップされるのはB17、B15、B13の隣であるB18、B16である。B18に関して流出口に関する条件をチェックすると未だ計算順序に入っていない他のブロック群はB16、B19となる(図11(d))。このブロック群B16、B19には、一箇所も流出口が存在しないため、計算順序の決定のための流出口に関する条件を満たさない。一方、B16に関して流出口に関する条件をチェックすると未だ計算順序に入っていない他のブロック群はB18、B19となる(図11(e))。このブロック群B18、B19には、流出口が存在し、上記流出口に関する条件を満たす。よって、ここまでの計算順序は、{B11}、{B14、B12}、{B17、B15、B13}、{B16}となる。最後に、B16から隣接探索を行い、最終的な計算順序が{B11}、{B14、B12}、{B17、B15、B13}、{B16}、{B19}、{B18}と決定する。次に、ステップ6で、この計算順序に沿ってブロックごとに順次解析計算を行う。そして、ステップ7で、ブロックごとにファイルの解析結果を重ね合わせる。この重ね合わせた解が流入する流体により生じる構造物E3内の流れ(流速・流れ方向)を示すことになる。
【0058】
(本発明のコンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラム)
本実施の形態は、パーソナルコンピュータ等にインストールされ、当該コンピュータを構造物内での流れ現象をシミュレーションするための上記流体流れ解析システム1として機能させる流体流れ解析プログラムである。本実施の形態は、例えば、CD−ROM(−R/−RW)、光磁気ディスク、DVD−ROM、FD、フラッシュメモリ、メモリカード、メモリディスク及びその他各種ROMやRAM等に記録される。本実施の形態は、パーソナルコンピュータ等にインストールされ、構造物内に流入する流体によって生じる構造物内の流れ(流速・流れ方向)を、上記所定の線形方程式(数式(1))を用いて解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップ6を備えるように当該コンピュータを機能させる流体流れ解析プログラムである。具体的には、本実施の形態は、構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成ステップ1と、構造物内部形状作成ステップ1で作成した内部形状に基づき構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割ステップ2と、構造物形状作成ステップ1により作成した内部形状に基づき、隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを表す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成ステップ3と、上記開口部共有情報に流入情報を付加する流入情報設定ステップ4と、上記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでのブロックの計算順序を決定する計算順序決定ステップ5とを備えるように当該コンピュータを機能させ、さらに、計算順序決定ステップ5により決定した順序に従って上記流体流れ解析ステップ6によりブロック内の流れの解析計算を行うように当該コンピュータを機能させる流体流れ解析プログラムである。流体流れ解析プログラムは、流体流れ解析システムをCADシステムの一部として機能させるものであっても良いし、一部機能にCADシステムを含むように流体流れシステムを機能させるものであっても良いし、両システムを独立して機能させるものであっても良い。本実施の形態は、当該コンピュータを上記流体流れ解析システム1として構築した際、このシステム1の上記各手段へ入力する(或いは上記各手段から出力される)座標情報を、CADシステムの座標情報に反映させることが出来るため、当該CADシステムを介して上記流体流れ解析システム1の上記座標情報を表示手段上で視覚化することが可能となる。また、本実施の形態である上記流体流れ解析プログラムを、搬送波に重畳されるコンピュータデータ信号として表してもよい。例えば、インターネット等のネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に上記プログラムを格納しておき、これを上記コンピュータデータ信号に変換して、搬送波に重畳させて、ネットワークを共有する他のコンピュータに送信し、上記プログラムを当該コンピュータにダウンロードさせるようにしてもよい。
【0059】
上記の実施の形態によりどれほど複雑な形状の建築構造物であっても一部屋単位での室内流れへの問題へと帰着し、流れの方向に沿った計算順序で計算し、重ね合わせることで、その内部の風による流れを高速かつ簡便に解析することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態の流体流れ解析システムの概要を示す図である。
【図2】本実施の形態を適用する構造物を表す模式図である。
【図3】上記構造物の立体図である。
【図4】図4(a)は、上記構造物の各オブジェクトの位置情報(基準点及び寸法)を示す表であり、図4(b)は、上記構造物の各ブロックがどの開口部を所有しているのかという情報と、開口部がどの部屋に所属しているのかという情報を表した図である。
【図5】上記構造物の開口部共有情報を、ノードとエッジを用いて表現したイメージ図である。
【図6】図6(a)は、複数の流入がある場合、一方の流入のパターンの開口部共有情報を、ノードとエッジを用いて表現したイメージ図であり、図6(b)は、他方の流入のパターンの開口部共有情報を、ノードとエッジを用いて表現したイメージ図である。
【図7】図7は計算順序を決定する過程を示す図である。図7(a)は流入のあるブロックB1に続いてブロックB3を選択した際の未だ計算順序に入っていない他のブロック群B2、B4とを示す図である。図7(b)は、流入のあるブロックB1に続いてブロックB2を選択した際の未だ計算順序に入っていない他のブロック群B3、B4とを示す図である。図7(c)は、流入のあるブロックB2に続いてブロックB4を選択した際の未だ計算順序に入っていない他のブロック群B1、B3とを示す図である。図7(d)は、流入のあるブロックB2に続いてブロックB1を選択した際の未だ計算順序に入っていない他のブロック群B3、B4とを示す図である。
【図8】本発明の流体流れ解析システムによる流体流れ解析過程を示すフローチャートである。
【図9】本実施の形態を適用するブロックへの一つの流入に対する流れ方向を表す模式図である。
【図10】本実施の形態を適用するブロックへの複数の流入に対する流れ方向を表す模式図である。
【図11】図11(a)は、本実施の形態を適用する構造物と、これに流入・流出する流れ方向を表す模式図である。図11(b)は開口部共有情報をノードとエッジを用いて表現したイメージ図である。図11(c)は、計算順序を決定する過程を示す図である。図11(d)は、計算順序を決定する過程を示す図であり、選択したブロックB18に対する未だ計算順序に入っていない他のブロック群B16、B19とを示す図である。図11(e)は、計算順序を決定する過程を示す図であり、選択したブロックB16に対する未だ計算順序に入っていない他のブロック群B18、B19とを示す図である。
【図12】本実施の形態による流体流れ解析システムの一構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1 流体流れ解析システム、
2 構造物内部形状作成手段、
3 メッシュ作成手段、
4 開口部共有情報作成手段、
5 流入情報設定手段、
6 計算順序決定手段、
7 流体流れ解析手段、
7a 解析結果ストック手段、
7b 解析結果重ね合わせ手段、
10 CADシステム、
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をコンピュータにより高速・簡便にシミュレーションするための流体流れ解析方法、流体流れ解析システム、コンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、家屋等の構造物を設計するに際して、その形状や部屋の間取り、ドア・窓の設置箇所等によって、風通しの良い快適な住空間を有する家屋を設計することになることから、家屋内の風流れを予測することは建築構造物等の設計に有用である。また、既存の家屋に空調設備や家具等を配置する場合、家屋内の任意の箇所に空調を設けた際の家屋内の風の流れを予測できれば、エネルギー効率上最適な位置に空調を設置することが可能となる。
【0003】
家屋等の構造物内の流体(風を含む)の流れを予測する方法としては、例えば、特許文献1の温熱気流解析システムを用いた予測方法が挙げられる。特許文献1の温熱気流解析システムは、構造物(建築)の部位を入力して室形状モデルを作成する室形状モデル作成手段11と、作成された室形状モデルの輪郭・境界に沿ってメッシュを作成し、概メッシュを輪郭・境界の条件に応じて分割するメッシュ作成手段12と、メッシュ作成手段12により作成されたメッシュに基づき数値流体流れ解析を行う解析手段13と、解析手段13による解析結果として室内外の温度、気流、濃度の分布状況や時間毎の変化を含む空気環境の検討情報を出力する出力手段14とを備えている。このシステムをコンピュータに導入すれば、上記の諸情報を入力することで、構造物内の流れ(風力・風向き)を解析計算でき、得られた解析結果をコンピュータの表示画面上に視覚化することが可能となる。
【特許文献1】特開2002−56039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に係る流体流れ解析システムに代表される現在の解析システムでは、流れ(風の流れ)を非圧縮性粘性流れとして仮定しているため、シミュレーションを行う際の解析式として、粘性項を含む非線形方程式(Navier−Stokes方程式)である次の数式(2)を用いている。
【数2】
ここで、uは流速のベクトル、pは圧力、Reは、Reynolds Numberである。この方程式は、渦や乱流等、複雑な流体運動全般に適用でき、その計算結果として正確な値を得ることができる反面、非線形方程式であるため、解を収束させるためには細かいメッシュ分割が必要となる。また、壁付近において複雑な現象をもたらすが、この現象を表現するためにも細かいメッシュ分割が必要となる。上記特許文献1に係る解析システムにも、流体流れ解析の効率化を図る上でメッシュ作成手段12により細かいメッシュ分割が行われている。また、この方程式は、非線形方程式であるため、家屋内に複数の開口から流体が流入する場合であっても、各流入口別に分離して解析計算を行い、得られた解析結果を重ね合わせて全体の解析結果を得るといったことができない。そのため、家屋内が複数ブロックに仕切られているか否かに関わらず、家屋全体を一つの空間として捉え、この空間の流れすべてを(数式2)に適用させて解析計算を行う必要がある。一般に、流体シミュレーションの計算量は、解析空間の体積の3乗に比例する。このため、解析空間を分割せずに解析計算すると、解析空間の体積が増大すればするほど、高性能のコンピュータが必要となり、一般のパーソナルコンピュータによる適用は困難になる。また、例え、解析計算を行えたとしても、計算量が膨大なため、解析計算に要する時間も長時間に及ぶ。
【0005】
そこで、本発明の目的は、先に述べた計算量と解析空間の体積との関係を利用し、家屋内流れの解析計算を全体一括ではなく、分割したブロックごとに流れに沿った順番で行い、流れの分岐および複数の流入に対しては、各々の流れを分離して解析計算した結果を重ね合わせて解を得ることにより、従来手法よりも大幅な計算量の削減を可能にし、高速かつ簡便なシミュレーションを実現できる流体流れ解析方法、流体流れ解析システム及びコンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、流体(気体・液体)の運動の様子が、慣性力と粘性力との比により変化し、慣性力の粘性力に対する比が大きいほど、流体の運動が粘性力の影響を受けなくなることに着目した。一般に、構造物内部の流れ(空気・風等)は、慣性力の方が粘性力よりも数千倍或いはそれ以上強いことが知られており、このことから本発明者は、構造物内での流れが、粘性力の影響を受けず、慣性力のみの影響を受ける流れであると仮定した。また、本発明者は、質量保存則(構造物内に流入した流体は、構造物内で増加したり、或いは、減少したりすることがなく常に一定である)))と上記仮定によって、構造物内部の流体の運動が、線形方程式(速度ポテンシャル方程式)により定義できることから、構造物内部の流体流れ解析に用いる解析式に、従来の非線形方程式(Navier−Stokes方程式)ではなく、線形方程式(速度ポテンシャル方程式)を適用することとした。
【0007】
すなわち、本発明の流体流れ解析方法は、構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析方法であって、構造物内に流入する流体によって生じる構造物内の流体流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いてコンピュータが解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップを有することを特徴とする。ここで、構造物とは、家屋内のような構造のほか不規則に配置された多数の家屋まわりのような構造も含まれ、ビル風の計算等を求めることもでき、また化学プラントなどで複雑に張り巡らされた配管での流れなどにも適用可能である。
【0008】
本発明によれば、構造物内での流体流れ解析に、所定の線形方程式を適用しているため、従来の非線形方程式を適用していた場合と比べ、コンピュータによる計算量が減少し、短時間で解析結果を得ることができる。
【0009】
先に述べたように流体シミュレーションにおいては、その計算量は解析空間体積の3乗に比例する。本発明では、流体が流れる経路に沿って、ブロックごとに順次計算を行うことにより、解析する回数は増えるが、1回の解析における空間体積が減少するため、結果として計算量を飛躍的に減少させることができる。
【0010】
本発明としては、上記構造物内に流入する各流入ごとに流れを分離して計算を行い、また上記構造物が分割可能な複数ブロックに仕切られていた場合、分離した流れに沿ってブロックごとに順次計算を行うステップと、分離した流れごとの解析結果を重ね合わせることで流体流れ解析を行うステップとを有する構成とすることができる。
【0011】
本発明によれば、構造物内に複数の箇所から流入する場合であっても(家屋の窓が複数で風が複数の箇所から流入する場合であっても)、線形方程式の性質上、解を重ね合わせることができるため、各流入ごとに分離して計算を行い、解析結果を重ね合わせることで構造物内の流体流れを容易に解析できる。
【0012】
本発明の流体流れ解析システムは、構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析システムであって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いて解析計算する流体流れ解析手段を有することを特徴とする。また、本発明のコンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムは、コンピュータにより構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をシミュレーションするための流体流れ解析プログラムであって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、上記所定の線形方程式(数式(1))を用いて解析計算する流体流れ解析ステップを有するようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、構造物内での流体流れの解析式に所定の線形方程式を適用した流体流れ解析手段を有しているため、従来の非線形方程式を適用した場合と比べ、計算量が減少し、短時間で解析結果を得ることができる流体流れ解析システムとなる。また、本発明によれば、構造物内での流体流れの解析式に所定の線形方程式を適用した流体流れ解析手段ステップを備えるようにコンピュータを機能させることで、従来の非線形方程式を適用した場合と比べ、計算量が減少し、短時間で解析結果を得ることができる流体流れ解析プログラムとなる。
【0014】
上記の構成により例えば、家の間取り、窓やドアの位置や数、風の方向や速度などを条件設定すれば、どんな形状や大きさの構造物(部屋ごとのブロック)であっても、短時間で風の流れ速度、方向、量を容易に分析ことが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の流体流れ解析方法、流体流れ解析システム、コンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムによれば、流体(気体・液体)の構造物内での流れをシミュレーションするに際して、家の間取り、窓やドアの位置や数、風の方向や速度などを条件設定すれば、どんな形状や大きさの構造物であっても、高性能のコンピュータでなく一般のパーソナルコンピュータでも数分で流体の流れの解を求めることが可能になる。また、建築CADに本発明の流体流れ解析方法を組み込むことにより、CAD図面から自動的に流体(風)による構造物の流体流れを予測するため、数値流体力学シミュレーションの専門知識がない建築設計者が構造物の流れを短時間で低コストで予測することが可能になり、家財の配置や空調設備等の位置などを考慮した構造物の設計等に活用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施の形態は、建築構造物内での風流れ(風速・風向)を解析するのに最適な流体流れ解析方法、流体流れ解析システム、コンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラムに関する。
【0018】
(本発明の流体流れ解析システム)
本実施の形態は、構造物内での流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析システム1である(図1)。
【0019】
図12は、本発明の第1の実施の形態による流体流れ解析システム1の一構成を示すブロック図である。本実施の形態による流体流れ解析システム1は、内部バス11に、通信インタフェース12、CPU13、ROM14、RAM15、ディスプレイ9、キーボード/マウス8、ドライブ18、ハードディスク19を接続させ、アドレス信号、制御信号、データ等を伝送させ、本実施の形態による流体流れ解析システムを実現するコンピュータシステムとしての構成を備えている。
【0020】
通信インタフェース12は、インターネット等の通信網に接続する各種通信機能を有しており、コンピュータを下記各手段2〜7として機能させるプログラム19aをダウンロードしたりすることも可能である。CPU13は、ROM14に格納されたOSにより装置全体の制御を行うとともにハードディスク19に格納されたプログラムに基づいて処理を実行する機能を司る。
【0021】
ROM14は、OS等のように装置全体の制御を行うためのプログラムを格納しており、これらをCPU13に供給する機能を有している。RAM15は、CPU13による各種プログラムの実行時にワークエリアとして利用されるメモリ機能を有している。
【0022】
ディスプレイ9は、CPU13からの指令に基づいて後述する構造物内部形状や流体の流れをグラフィカルに表示したりする機能を有している。キーボード/マウス8は、文字、数字、記号等のデータを入力したり、画面上のポイント位置を操作して座標情報を入力することも可能である。
【0023】
ドライブ18は、各種のプログラム、データを記録したCD、DVD等の記録媒体からインストール作業を実行するための駆動ユニットである。コンピュータを流体流れ解析システム1として機能させるプログラム19a等を記憶媒体からインストールしたりすることも可能である。
【0024】
ハードディスク19は、プログラム19aや各種データを記憶する外部記憶装置である。プログラム19aは、前述した通信インタフェース12、ドライブ18等からインストールされたプログラムを実行形式で記憶したものに相当する。
【0025】
この流体流れ解析システム1はCADシステムと接続したりCADシステムに組み込み可能となっており、CADシステム10の座標情報等の各種データを利用可能にしたり、CADシステム10にて各種情報をグラフィカルに視覚化させたりすることが可能となっている。CADシステム10は、ハードディスク19にCADシステムとして機能させるプログラムが記憶されており、この命令に従ってCPUが処理を実行することにより、流体流れ解析システム1と同一コンピュータにて実現されている。なお、本発明の流体流れ解析システム1は、CADシステム10を一部機能として組み込むものでも良く、CADシステム10の一部機能として組み込まれるものでも良く、独立したCADシステム10と接続されるものでも良い。
【0026】
この流体流れ解析システム1は、構造物内に流入する流体によって生じる構造物内の流れ(流速・流れ方向)を、所定の線形方程式を用いて解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析手段7を有する。また、本実施の形態は、構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成手段2と、構造物内部形状作成手段2により作成した内部形状に基づき構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割手段3と、構造物形状作成手段2により作成した内部形状に基づき、隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを表す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成手段4と、上記開口部共有情報に流入情報を付加する流入情報設定手段5と、流入情報が付加された開口部共有情報に基づき流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでのブロックの計算順序を決定する計算順序決定手段6を有する。そして、計算順序決定手段6により決定した順序に従って上記流体流れ解析手段7によりブロック内の流れの解析計算を行う。上記流体流れ解析手段7は、解析結果ストック手段7aと、ストックした解析結果を重ね合わせる解析結果重ね合わせ手段7bとを有する。
【0027】
ここで、本実施の形態の説明中、構造物とは、建築構造物を指すこととし、構造物内を流れる流体とは、特に言及のない場合は空気を指すこととする。また、流れとは構造物内の任意点での流体(空気)の流速(風速)・流れ方向(風向)を指すこととし、流れ(流速・流れ方向)とも表すこととする。特に、構造物の流入口あるいは流出口での流体の上記流れを流入あるいは流出と表し、流入(流速・流れ方向)あるいは流出(流速・流れ方向)とも表すこととする。また、ここでは、構造物内のブロックとは、内壁やパーティション、或いは家具等で仕切られた空間を指し、例えば、部屋、廊下、玄関等がこれに該当することとする。また、本実施の形態の説明中、解析結果とは、解析計算により得られた計算結果を指すこととする。また、流体流れを解析するとは、諸条件下で、上記解析計算を行い、その解析結果を数値等として得ることで、流体流れをこれらの数値等で表現することを指すこととする。
【0028】
流体流れ解析手段7は、構造物内に流入する流体によって生じる構造物内の流れ(流速・流れ方向)を、所定の線形方程式を用いて解析計算し、その解析結果を得るものである。所定の線形方程式には、
【数1】
で表される速度ポテンシャル方程式が用いられる。この方程式を解析式として適用すれば、構造物内に複数箇所から流体が流入する場合であっても、流入別に流れを分離して解析計算して得た解析結果を重ね合わることで、全体の解析結果を得ることができる。ここで、φは速度ポテンシャルと呼ばれる関数で、x、y、z各方向の速度u、v、wはφを空間微分することにより得られる。
【数3】
これは例えば「F(x)=0」という線形方程式に対して「F(x1+x2)=0を満たす解を得る」という問題が与えられた際に、方程式の線形性を用いて、まずF(x1)=0という問題を解いて解f1を得て、次いでF(x2)=0という問題を解いて解f2を得て、最終的に解f=f1+f2 として得られる、という方法で解を得るものである。
【0029】
構造物内部形状作成手段2は、ユーザーにより入力された所定の座標情報に基づいて流体(空気)が流入する構造物Aの内部形状A1(図2)を作成するものである。ここで、構造物Aの内部形状A1を作成するとは、ユーザーが構造物Aの形状の座標情報(部屋の間取り、ドア・窓の設置箇所等の位置情報等)を入力し、構造物内部形状作成手段2がこれら入力された座標情報に基づき、座標情報の集合として構造物Aの内部形状A1を作成することを指す。ドアや窓の開口の位置や大きさを入力することにより、その構造物の大きさも特定できる。ここで、ユーザーにより入力された座標情報はCADシステム10にてグラフィカルに視覚化させて表示手段9に表示しても良い。また、上記ユーザにより入力される座標情報として、CADシステム10に入力された座標情報を用いてもよく、入力された座標情報を用いて作成した構造物内部形状をCADシステムに渡して視覚化させ表示手段9に表示しても良い。
【0030】
メッシュ分割手段3は、上記構造物内部形状作成手段2により作成した内部形状A1に基づき、構造物A内をメッシュ分割するものである。上記流体流れ解析手段7により、実際に解析計算を行う際、分割するメッシュが細かければ、計算量は増加し、その分だけ解析時間は増加するが、精度の高い解析結果を得られる。一方、分割するメッシュが粗ければ、解析結果の精度は低下するが、計算量は減少し、その分だけ解析時間を短縮できる。本実施の形態では、メッシュ分割の細かさを任意に指定できることとし、時間に比重をおく場合や、精度に比重をおく場合等、それぞれの状況に応じてメッシュの細かさを指定することとする。入力されたメッシュの細かさの情報はCADシステム10にてグラフィカルに加工して表示手段に表示させても良いし、メッシュの細かさの指定をCADシステム10に入力させ、その情報をメッシュ分割手段3にて用いても良い。
【0031】
開口部共有情報作成手段4は、構造物形状作成手段2により作成した内部形状A1に基づき、構造物A内の隣接する各ブロックB1〜B4が開口部を共有しているかどうかを表す開口部共有情報を作成するものである。
【0032】
開口部共有情報作成手段4は具体的には最初のステップとして、構造物内部形状作成手段2により得た内部形状A1の開口部、壁等のオブジェクト情報を比較し、各ブロックがどの開口部を所有しているのかという情報と、各開口部がどの部屋に所属しているのかという情報を作成する。図3は、図2の構造物Aの内部形状A1を立体的に表したものである。例えば、この構造物AのブロックB1、ブロックB2、開口部W1とD1、D2の位置情報は、それぞれの基準点と寸法を用いて図4(a)のように表すことができる。これらの位置情報を比較することで、例えば、構造物AのブロックB1は、開口部W1と開口部D1、D2を所有し、ブロックB2は、開口部D1、D4、W2を所有していることが認識できる。これと同時に、例えば、開口部W1は、ブロックB1にのみ所属し、開口部D2は、ブロックB1とブロックB3の両方に所属することが認識できる。このように、構造物Aにおいて、各ブロックがどの開口部を所有しているのかという情報と、開口部がどの部屋に所属しているのかという情報を作成する(図4(b))。ここで、開口部が1つの部屋のみに所属している場合、その開口部は外部とを繋ぐ外側の開口部であることが認識でき、また、開口部が2つのブロックに所属している場合は、その開口部は2つのブロックを繋ぐ内側の開口部であると認識できる。
【0033】
そして次のステップとして、上記各ブロックB1〜B4がどの開口部を所有しているのかという情報と、開口部W1〜W4、D1〜D4がどの部屋に所属しているのかという情報に基づき開口部共有情報を作成する。ここで、開口部共有情報は、各ブロックB1〜B4をノードとし、2つのブロックに所属している各開口部をエッジとすると、単純なグラフ構造A2で表せる(図5)。ここで、1つのブロックのみに所属している開口部W1〜W4は、ブロックから突出したエッジとして表されている。
【0034】
流入情報設定手段5は、ユーザーにより入力された流れ(流速・流れ方向)の値を以下に述べる所定の規則に適用し、流入口・流出口を決定し、上記開口部共有情報作成手段4により作成された開口部共有情報に、これら流入口・流出口を含む流入情報を付加する。入力された流れの情報(流速・流れ方向)は、CADシステム10にてグラフィカルに表示しても良いし、CADシステム10にて入力可能として表示手段9にグラフィカルに表示するとともに、その流れの情報を流入情報設定手段5に用いても良い。
【0035】
例えば、図5において、ユーザーが構造物の南側(図2中の下方)から所定の流れ(流速・流れ方向)を入力すると、上記流入情報設定手段5は、この値から風上に面している外側の開口部が流入口となるという所定の規則を適用して、上記開口部共有情報に構造物Aの開口部W1、W2を所定の流れ(流速・流れ方向)を有する流体が流れこむ流入口として設定する。また、他の開口部W3、W4を流れこんだ流体が流出する流出口として設定する。
【0036】
ここで、複数の開口部から流体が流入する場合は、各流入口に流れこむ流体ごとに流れを分離して考えるので、上記流入情報設定手段5は、各流入口について当該流入口を開とし他のすべての流入口を閉としたパターンを作成し、各パターンごとの流入情報を上記開口部共有情報に付加する。例えば、構造物Aに開口部W1、W2からそれぞれ流体が流入する場合、まず、一方の開口部W1のみから構造物A内に流体が流入するものとして、開口部共有情報に、この流入情報を付加する。このとき、他方の開口部W2は、閉じていることとする。このパターンの開口部共有情報は、上記ノードとエッジを用いると、グラフ構造A3で表せる(図6(a))。同時に、開口部W2のみから流体が構造物A内に流入するものとして、開口部共有情報に、この流入情報を付加する。このとき、開口部W1は、閉じていることとする。このパターンの開口部共有情報は、上記ノードとエッジを用いると、グラフ構造A4で表せる(図6(b))。なお、流入情報設定手段5により上記複数のパターンが作成された場合は、計算順序決定6が各パターンごとに計算順序を決定し、上記流体流れ解析ステップ7が各パターンごとに上記計算順序に従って上記解析計算を行うことになる。
【0037】
計算順序決定手段6は、流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、流体が最初に流入するブロックからその流体が流出するブロックまでの各ブロックの計算順序を決定する。この計算順序決定手段6は、流入情報を設定した開口部共有情報に基づき、最初に流入するブロックから開口部を共有する隣接ブロックへと順次隣接探索を行う隣接探索手段をベースとしている。隣接探索とは、すでに計算順序に加わっているブロックの隣で、未だ計算順序に加わっていないブロックを「隣→隣→・・」と巡ることで全てのブロックを巡る方法である。そして、この計算順序決定手段6には、隣接探索途中でのブロックの計算順序決定に際し、選択したブロック以外の未だ計算順序に入っていない他のブロック群に少なくとも一箇所流出口が存在する場合に限り、選択したブロックの計算順序が決定するという条件を課している。
【0038】
上記W1、W2に流体が流入した場合で説明すると、まず、開口部W1から流体が流入するときのパターンの開口部共有情報は、上記グラフ構造A3で表せる(図6(a))。このパターンの開口部共有情報に基づき、計算順序を決定する場合は、最初のステップとして、開口部W1を所有するブロックB1から順次隣接探索を行い、ブロックB1に隣接するブロックB2、B3をピックアップする。次のステップとして、ピックアップしたブロックB2、B3が上記の流出口に関する条件を満たしているかを確認する。まず、ブロックB3を選択した場合、未だ計算順序に入っていない他のブロック群はブロック群B2、B4である(図7(a))。このブロック群B2、B4には、流出口となる開口部W3、W4が存在するため、上記の流出口に関する条件を満たしている。また、ブロックB2を選択した場合も、未だ計算順序に入っていない他のブロック群B3、B4に、流出口となる開口部W3、W4が存在し、上記の流出口に関する条件を満たす(図7(b))。よって、ここまでの計算順序は、{B1}、{B2、B3}となる。ここで、ブロックB2、B3の計算順序の優劣はない。そして最後のステップで、残されたブロックB4の計算順序が決定し、全体の計算順序は、{B1}、{B2、B3}、{B4}となる。
【0039】
一方、開口部W2から流体が流入するときのパターンの開口部共有情報は、上記グラフ構造A4で表せる(図6(b))。このパターンの開口部共有情報に基づき、計算順序を決定する場合は、最初のステップとして、開口部W2を所有するブロックB2から順次隣接探索を行い、ブロックB2に隣接するブロックB1、B4をピックアップする。次のステップとして、ピックアップしたブロックB1、B4が上記の流出口に関する条件を満たしているかを確認する。まず、ブロックB4を選択した場合、未だ計算順序に入っていない他のブロック群はブロック群B1、B3である(図7(c))。このブロック群B1、B3には、流出口となる開口部が存在しないため、上記の流出口に関する条件を満たさない。一方、ブロックB1を選択した場合、未だ計算順序に入っていない他のブロック群B3、B4には、流出口となる開口部W3、W4が存在するため、上記の流出口に関する条件を満たす(図7(d))。よって、ここまでの計算順序は、{B2}、{B1}となる。そして、ブロックB1から隣接探索することにより、全体の計算順序が{B2}、{B1}、{B3}、{B4}に決定する。もし先に述べた流出口に関する条件を課さなければ、ブロックB4がB3よりも先に選択されることになり、と最終的な計算順序は{B2}、{B4、B1}、{B3}となる。本来流れの方向を考えると、B4はB3の後で計算されるべきなのだが、この順序ではB4からB3へ流れることになり、流れはB3で詰まってしまう。これを避けるために本発明では前述の流出口に関する条件を課している。
【0040】
流体流れ解析手段7は、上記計算順序決定手段6により決定した順序に従って、各ブロックごとに順次解析計算を行う。この流体流れ解析手段7は、複数の開口部にそれぞれ流体が流入したとき、上記計算順序決定手段6により複数のパターンの開口部共有情報ごとに計算順序が決定されるが、これら各パターンごとの計算順序に従って上記解析計算を行う。この流体流れ解析手段7は、上記各パターンごとの、各流入ごとの解析結果をメモリ等の記憶手段に記憶させてストックする解析結果ストック手段7aと、ストックした各解析結果を重ね合わせる解析結果重ね合わせ手段7bとを有している。以下に述べる例では、開口部W1、W2に流体がそれぞれ流れ込んだ場合を想定する。各流体ごとの計算順序は、それぞれ{B1}、{B2、B3}、{B4}と、{B2}、{B1}、{B3}、{B4}である。この順序に従って、まず、開口部W1から流入した流体について、ブロックB1内で流れの解析計算が行われる。ここで得られた解析結果は、解析結果ストック手段7aによりストックされる。次に、ブロックB1の解析結果からブロックB2、B3に流入する流体の開口部D1、D2での流れ(流速・流れ方向)が決定するので、この結果を用いて、ブロックB2、B3でも流れの解析計算を行う。そして、ここで得られた解析結果も、解析結果ストック手段7aによりストックされる。最後に、ブロックB2、B3の解析結果からブロックB4に流入する流体の開口部D3、D4での流れ(流速・流れ方向)が決定するので、この結果を用いて、ブロックB4での流れの解析計算を行う。そして、この解析結果も、解析結果ストック手段7aによりストックされる。同様にして、開口部W2からの流入について、ブロックB2、B1、B3、B4の順に、流れの解析計算を行い、各ブロックでの解析結果を、上記解析結果ストック手段7aによりストックする。最後に、解析結果ストック手段7aによりストックされたブロックごとの解析結果を、上記解析結果重ね合わせ手段7bにより重ね合わせる。これによって、構造物Aに開口部W1、W2から所定の流れ(流速・流れ方向)を有する流体が流入した場合の構造物A内の流れ(流速・流れ方向)を解析することができる。なお、流体流れ解析手段7は、差分法と呼ばれる方法を用いて、壁・流入・流出に適切な境界条件を課すことで計算する。なお、上記解析結果ストック手段7aでストックされた各ブロックごとの解析結果を、上記表示手段9上でファイルとして出力し、各ブロックごとの解析計算過程を視覚的に認識できるようにしてもよい。流体流れ解析手段7による解析結果をCADシステム10にてグラフィカルなデータに変換し、表示手段9に表示可能にしてもよい。
【0041】
本実施の形態の流体流れ解析システムによれば、家屋内の流れの解析を家屋を構成するブロック(部屋や廊下など)ごとに計算することで行う。流体流れ解析に要する計算量は、解析空間の体積の3乗に比例することは先に述べたが、ブロックごとに計算することにより、数式(4)に示すようにトータルの計算量を飛躍的に減少させることができる。
【数4】
ここで、Viは部屋iの体積でありNは部屋(ブロック)の数である。
【0042】
次に、本実施の形態の流体流れ解析システムを種々の構造物に適用して、流体流れ解析を行う。
【0043】
本発明の流体流れ解析システムでは、図8に示すようなフローにより流体流れ解析が行われる。すなわち、上記構造物内部形状作成手段2による構造物内部形状の作成(ステップ1)−上記メッシュ分割手段3によるメッシュ分割(ステップ2)−上記開口部共有情報作成手段4による開口部共有情報の作成(ステップ3)−上記流入情報設定手段5による流入情報の付加(ステップ4)−上記計算順序決定手段6による計算順序の設定(ステップ5)−上記流体流れ解析手段7による解析計算(ステップ6)−上記解析結果重ね合わせ手段7bによる解析結果の重ね合わせ(ステップ7)−表示方法の選択(ステップ8)の順序で行われる。なお、ステップ1,2及び4については、ユーザーによる形状データ・メッシュ分割のサイズ・風向き・風速などのパラメータの手動設定によって行われる。以下、これらのステップを順に説明する。ここで、本実施の形態は、流体流れ解析システム1の各手段2,3,5がCADシステム10と接続されており、上記各手段2〜7から出力される座標情報をCADシステム10の座標情報に反映させることで、これら各手段2〜7の座標情報を上記表示手段9上で視覚化することが可能である。また、CADシステムに入力された座標情報を上記各手段2,3,5に反映させることで、例えば、上記入力手段8を用いて表示手段9上の座標点を指定し、CADシステムを介して、上記各手段2,3,5へ座標情報を入力することが可能となる。
【0044】
上記構造物内部形状作成手段2による構造物内部形状作成(ステップ1)では、構造物内部形状作成手段2が表示手段9上に座標入力用画面を表示し、ユーザーにより上記座標入力用画面から座標情報が入力されると、構造物内部形状作成手段2が、入力された座標情報を用いて構造物内部形状を作成する。
【0045】
上記メッシュ分割手段3によるメッシュ分割サイズの設定(ステップ2)では、ユーザーが格子分割の細かさについて、x、 y、 z方向それぞれを何cm単位で分割するか決定し、この情報を上記メッシュ分割手段3に入力する。そして、この情報に基づいて、メッシュ分割手段3がメッシュ分割を行う。
【0046】
上記開口部共有情報作成手段4による開口部共有情報の作成(ステップ3)では、開口部共有情報作成手段4が、各ブロック(部屋およびドアや窓などの開口)の座標値を比較することにより、物体間の所有する・所有されるの関係情報を作成する。ここで、この開口部共有情報に、上記ステップ3の流入情報が付加される。
【0047】
上記流入情報設定手段5による流入情報の設定(ステップ4)では、ユーザーにより入力された流れ(流速・流れ方向)の値を前述の風上に面している外側の開口部が流入口となるという規則に適用し、流入口・流出口を決定し、上記開口部共有情報作成手段4により作成された開口部共有情報に、これら流入口・流出口を含む流入情報を付加する。
【0048】
上記計算順序決定手段6による計算順序の設定(ステップ5)では、作成した開口部共有情報を元に各流入からの流れの計算順序を決定する。
【0049】
上記流体流れ解析手段7による解析計算(ステップ6)では、流体が流れる経路に沿って、ブロックごとに順次計算を行う。ここで、流入が複数の場合、上記流体流れ解析手段7の解析結果ストック手段7aにより、あるブロックについて、流入ごとに解析結果をストックしておく。
【0050】
上記解析結果重ね合わせ手段7bによる計算結果の重ね合わせ(ステップ7)では、ここまでに、分離したそれぞれの流入について、ブロックごとに解析結果がストックされている。ここではストックされた各解析結果のうち、同一ブロックについての各解析結果を選択する。分離した流れの数だけ同一ブロックについてストックされた解析結果が存在するため、これらの各解析結果を重ね合わせる。すなわち、同一ブロック内の同一点に関する情報(流れの速度の、x方向成分とy方向成分とz方向成分)をベクトルとして重ね合わせる。具体的な計算を挙げると、例えば二つの流入があった場合、ある点pの最終的な速度成分px、 py、 pzは下式のように求められる。(ここでp1xは流入1に対する解析結果の点pでのx方向速度成分、 p2xは流入2に対する解析結果の点pでのx方向速度成分である。以下同様にp1y、p2yは点pのy方向速度成分、p1z、p2zは点pのz方向速度成分を示している。) なお、上記解析結果ストック手段7aでストックされた各ブロックごとの解析結果を、上記表示手段9上でファイルとして出力し、各ブロックごとの解析計算過程を視覚的に認識できるようにしてもよい。すなわち、分離したそれぞれの流入について、ブロックごとに解析結果をファイルとして出力する。そして、出力された各ファイルのうち、同一ブロックについてのファイルを選択する。分離した流れの数だけ同一ブロックについてのファイルが存在するため、これらのファイル内の解析結果を重ね合わせる。
【0051】
【数5】
【0052】
表示方法の選択(ステップ8)では、最終的に求められた家屋内の風の流れの様子をどのように表示するかを選択し実行する。すなわち、表示方法選択手段(図示せず)が上記表示手段9上にベクトルでの表示、流線での表示、粒子での表のいづれかを選択する選択画面を表示する。そして、例えば、ユーザーが、ベクトルでの表示を選択すると、この指令に基づき、表示方法選択手段が、上記で求められた各場所の流れの方向と速度を矢印により表示し(ステップ8(a))、また、その他の選択によっては、流線や点状(粒子状)で表示する(ステップ8(b)(c))。なお、上記表示方法選択手段については、上記各手段と独立して設けてもよいし、上記流体流れ解析手段7に上記表示方法選択手段としての機能を備えさせてもよい。
【0053】
次に、本実施の形態を適用して一つのブロックE1内での流体流れ解析を行う場合について説明する(図9)。このブロックは、南面、東面にそれぞれ開口部W5、W6を有する。ここでは、開口部W5が流入で開口部W6が流出口と想定しよう。解析計算を行うと、W5からの流入に対するブロックE1の解析結果がファイルに出力される。この例では流入は一つであるため、重ね合わせの式は数式(6)に示すものとなる。そのためステップ6の解析結果が、流入する流体により生じるブロックE1内の流れ(流速・流れ方向)を示すことになる。
【0054】
【数6】
【0055】
次に、実施の形態を適用してブロックE2内での流体流れ解析を行う場合について説明する(図10)。このブロックは、南面に開口部W7、W8、東面に開口部W9を有する。ここでは開口部W7、W8が流入で開口部W9が流出であると想定しよう。計算は上記W7からの流入の解析計算と、W8からの流入の解析計算をそれぞれ行う。このとき、それぞれの流入の解析結果がファイルとして出力される。流入が二つあるため重ね合わせの式は先に示した数式(5)に示すものとなる。この重ね合わせた解が、流入する流体により生じるブロックE2内の流れ(流速・流れ方向)を示すことになる。
【0056】
上記ブロックE2では、各流入別に解析を行い、解析式の線形性からこの解を重ね合わせることで、ブロックE2内での流体流れ解析を行っている。従来の粘性項を含む非線形方程式を用いた流体流れ解析システムと比較すると、単純な線形方程式を用いる分だけ計算量が減少するため、高性能のコンピュータではなく、一般のパーソナルコンピュータへの導入が可能である。
【0057】
次に、本実施の形態を適用して構造物E3内での流体流れ解析を行う場合を説明する(図11(a))。構造物E3は、ブロックB11の南面に開口部W10、B13の東側にW11、ブロックB18の北面に開口部W12を有する。まず、上記ステップ1、2で、構造物内部形状の作成、空間分割サイズの設定を行う。次に、ステップ3及びステップ4で、開口部共有情報の作成及びこの開口部共有情報に流入情報を付加する。ここで、ステップ3及びステップ4の手順を逆に行ってもよい。すなわち、まず、ステップ4で、流入情報を設定する。ここでは南側から風が吹いていると想定しよう。すると、流入情報設定手段5により、自動的に、南面の開口W10が流入口と決定され、東面の開口部W11と、北面の開口部W12が流出口と決定される。次に、ステップ3で、開口部共有情報の作成を行う。そして、この開口部共有情報に上記流入情報が付加される。ここで、開口部の流入・流出を設定した開口部共有情報は、各ブロックをノード、各ブロックが共有する開口部をエッジで表示すると、グラフ構造A5として表せる(図11(b))。次にステップ5で、計算順序を決定する。流体が流入するブロック11から順次先に述べた流出口に関する条件を課した隣接探索を行う。{B11}の隣であるB12とB14をピックアップするとどちらも条件に合格するので順序は{B11}、{B14、B12}、次いでB14とB12の隣であるB17、B15、B13をピックアップするが、いずれも流出口に関する条件に合格するので順序は{B11}、{B14、B12}、{B17、B15、B13}のように、各ブロックの計算順序が決定してゆく(図11(c))。次にピックアップされるのはB17、B15、B13の隣であるB18、B16である。B18に関して流出口に関する条件をチェックすると未だ計算順序に入っていない他のブロック群はB16、B19となる(図11(d))。このブロック群B16、B19には、一箇所も流出口が存在しないため、計算順序の決定のための流出口に関する条件を満たさない。一方、B16に関して流出口に関する条件をチェックすると未だ計算順序に入っていない他のブロック群はB18、B19となる(図11(e))。このブロック群B18、B19には、流出口が存在し、上記流出口に関する条件を満たす。よって、ここまでの計算順序は、{B11}、{B14、B12}、{B17、B15、B13}、{B16}となる。最後に、B16から隣接探索を行い、最終的な計算順序が{B11}、{B14、B12}、{B17、B15、B13}、{B16}、{B19}、{B18}と決定する。次に、ステップ6で、この計算順序に沿ってブロックごとに順次解析計算を行う。そして、ステップ7で、ブロックごとにファイルの解析結果を重ね合わせる。この重ね合わせた解が流入する流体により生じる構造物E3内の流れ(流速・流れ方向)を示すことになる。
【0058】
(本発明のコンピュータを流体流れ解析システムとして機能させるプログラム)
本実施の形態は、パーソナルコンピュータ等にインストールされ、当該コンピュータを構造物内での流れ現象をシミュレーションするための上記流体流れ解析システム1として機能させる流体流れ解析プログラムである。本実施の形態は、例えば、CD−ROM(−R/−RW)、光磁気ディスク、DVD−ROM、FD、フラッシュメモリ、メモリカード、メモリディスク及びその他各種ROMやRAM等に記録される。本実施の形態は、パーソナルコンピュータ等にインストールされ、構造物内に流入する流体によって生じる構造物内の流れ(流速・流れ方向)を、上記所定の線形方程式(数式(1))を用いて解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップ6を備えるように当該コンピュータを機能させる流体流れ解析プログラムである。具体的には、本実施の形態は、構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成ステップ1と、構造物内部形状作成ステップ1で作成した内部形状に基づき構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割ステップ2と、構造物形状作成ステップ1により作成した内部形状に基づき、隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを表す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成ステップ3と、上記開口部共有情報に流入情報を付加する流入情報設定ステップ4と、上記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでのブロックの計算順序を決定する計算順序決定ステップ5とを備えるように当該コンピュータを機能させ、さらに、計算順序決定ステップ5により決定した順序に従って上記流体流れ解析ステップ6によりブロック内の流れの解析計算を行うように当該コンピュータを機能させる流体流れ解析プログラムである。流体流れ解析プログラムは、流体流れ解析システムをCADシステムの一部として機能させるものであっても良いし、一部機能にCADシステムを含むように流体流れシステムを機能させるものであっても良いし、両システムを独立して機能させるものであっても良い。本実施の形態は、当該コンピュータを上記流体流れ解析システム1として構築した際、このシステム1の上記各手段へ入力する(或いは上記各手段から出力される)座標情報を、CADシステムの座標情報に反映させることが出来るため、当該CADシステムを介して上記流体流れ解析システム1の上記座標情報を表示手段上で視覚化することが可能となる。また、本実施の形態である上記流体流れ解析プログラムを、搬送波に重畳されるコンピュータデータ信号として表してもよい。例えば、インターネット等のネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に上記プログラムを格納しておき、これを上記コンピュータデータ信号に変換して、搬送波に重畳させて、ネットワークを共有する他のコンピュータに送信し、上記プログラムを当該コンピュータにダウンロードさせるようにしてもよい。
【0059】
上記の実施の形態によりどれほど複雑な形状の建築構造物であっても一部屋単位での室内流れへの問題へと帰着し、流れの方向に沿った計算順序で計算し、重ね合わせることで、その内部の風による流れを高速かつ簡便に解析することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態の流体流れ解析システムの概要を示す図である。
【図2】本実施の形態を適用する構造物を表す模式図である。
【図3】上記構造物の立体図である。
【図4】図4(a)は、上記構造物の各オブジェクトの位置情報(基準点及び寸法)を示す表であり、図4(b)は、上記構造物の各ブロックがどの開口部を所有しているのかという情報と、開口部がどの部屋に所属しているのかという情報を表した図である。
【図5】上記構造物の開口部共有情報を、ノードとエッジを用いて表現したイメージ図である。
【図6】図6(a)は、複数の流入がある場合、一方の流入のパターンの開口部共有情報を、ノードとエッジを用いて表現したイメージ図であり、図6(b)は、他方の流入のパターンの開口部共有情報を、ノードとエッジを用いて表現したイメージ図である。
【図7】図7は計算順序を決定する過程を示す図である。図7(a)は流入のあるブロックB1に続いてブロックB3を選択した際の未だ計算順序に入っていない他のブロック群B2、B4とを示す図である。図7(b)は、流入のあるブロックB1に続いてブロックB2を選択した際の未だ計算順序に入っていない他のブロック群B3、B4とを示す図である。図7(c)は、流入のあるブロックB2に続いてブロックB4を選択した際の未だ計算順序に入っていない他のブロック群B1、B3とを示す図である。図7(d)は、流入のあるブロックB2に続いてブロックB1を選択した際の未だ計算順序に入っていない他のブロック群B3、B4とを示す図である。
【図8】本発明の流体流れ解析システムによる流体流れ解析過程を示すフローチャートである。
【図9】本実施の形態を適用するブロックへの一つの流入に対する流れ方向を表す模式図である。
【図10】本実施の形態を適用するブロックへの複数の流入に対する流れ方向を表す模式図である。
【図11】図11(a)は、本実施の形態を適用する構造物と、これに流入・流出する流れ方向を表す模式図である。図11(b)は開口部共有情報をノードとエッジを用いて表現したイメージ図である。図11(c)は、計算順序を決定する過程を示す図である。図11(d)は、計算順序を決定する過程を示す図であり、選択したブロックB18に対する未だ計算順序に入っていない他のブロック群B16、B19とを示す図である。図11(e)は、計算順序を決定する過程を示す図であり、選択したブロックB16に対する未だ計算順序に入っていない他のブロック群B18、B19とを示す図である。
【図12】本実施の形態による流体流れ解析システムの一構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1 流体流れ解析システム、
2 構造物内部形状作成手段、
3 メッシュ作成手段、
4 開口部共有情報作成手段、
5 流入情報設定手段、
6 計算順序決定手段、
7 流体流れ解析手段、
7a 解析結果ストック手段、
7b 解析結果重ね合わせ手段、
10 CADシステム、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析方法であって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いて、コンピュータが解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップを有することを特徴とする流体流れ解析方法。
【請求項2】
上記構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成ステップと、前記内部形状に基づき、構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割ステップと、前記内部形状に基づき、構造物内の隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを示す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成ステップと、前記開口部共有情報に開口部での流体の流入情報を付加する流入情報設定ステップと、前記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでの計算順序を決定する計算順序決定ステップを備えるとともに、前記計算順序決定ステップにより決定した計算順序に従って各ブロック内の流体流れの解析計算を行う上記流体流れ解析ステップを備えることを特徴とする請求項1記載の流体流れ解析方法。
【請求項3】
前記流入情報設定ステップにおいて、設定された流入口が複数の場合は、各流入口について当該流入口を開とし他のすべての流入口を閉としたパターンを作成し、上記計算順序決定ステップでは各パターンごとに計算順序を決定し、上記流体流れ解析ステップでは各パターンごとに上記計算順序に従って上記解析計算を行うことを特徴とする請求項2記載の流体流れ解析方法。
【請求項4】
上記計算順序決定ステップは、上記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、最初に流体が流入したブロックから開口部を共有する隣接ブロックを探索する手段をベースとし、計算順序決定に際し、選択したブロック以外の他のブロック群に少なくとも一箇所流出口が存在する場合に限り、選択したブロックの計算順序が確定するという条件を有することを特徴とする請求項2記載の流体流れ解析方法。
【請求項5】
上記流体流れ解析ステップは、上記各パターンごとに解析計算された上記各解析結果をストックする解析結果ストックステップと、上記ストックされた各解析結果を重ね合わせる解析結果重ね合わせステップとを有することを特徴とする請求項3記載の流体流れ解析方法。
【請求項6】
構造物内での流体の流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析システムであって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いて解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析手段を有することを特徴とする流体流れ解析システム。
【請求項7】
上記構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成手段と、前記内部形状に基づき、構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割手段と、前記内部形状に基づき、構造物内の隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを示す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成手段と、前記開口部共有情報に開口部での流入情報を付加する流入情報設定手段と、前記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでの計算順序を決定する計算順序決定手段を有し、前記計算順序決定手段により決定した計算順序に従って上記流体流れ解析手段により各ブロック内の流体流れの解析計算を行うことを特徴とする請求項6記載の流体流れ解析システム。
【請求項8】
前記流入情報設定手段により設定される流入口が複数の場合は、各流入口について当該流入口を開とし他のすべての流入口を閉としたパターンを作成し、上記計算順序決定手段が各パターンごとに計算順序を決定し、上記流体流れ解析手段が各パターンごとに上記計算順序に従って上記解析計算を行うことを特徴とする請求項7記載の流体流れ解析システム。
【請求項9】
上記計算順序決定手段は、上記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、最初に流体が流入したブロックから開口部を共有する隣接ブロックを探索する手段をベースとし、計算順序決定に際し、選択したブロック以外の他のブロック群に少なくとも一箇所流出口が存在する場合に限り、選択したブロックの計算順序が確定するという条件を有することを特徴とする請求項7記載の流体流れ解析システム。
【請求項10】
上記流体流れ解析手段は、各パターンごとに解析計算された上記各解析結果をストックする解析結果ストック手段と、上記ストックされた各解析結果を重ね合わせる解析結果重ね合わせ手段とを有することを特徴とする請求項8記載の流体流れ解析システム。
【請求項11】
CAD(computer-aided design)システムと接続可能であり、CADシステムに入力された座標情報を上記各手段のうち少なくとも一つの手段への座標情報へと変換するとともに、上記各手段のうちの少なくとも一つの手段からの座標情報をCADシステムの座標情報へと変換し、当該座標情報を表示手段にグラフィカルに表示させることを特徴とする請求項6記載の流体流れ解析システム。
【請求項12】
構造物内での流体の流れ現象をシミュレーションするための流体流れ解析システムとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いて解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップを備えるようにコンピュータを機能させることを特徴とする流体流れ解析プログラム。
【請求項13】
前記構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成ステップと、前記内部形状に基づき、構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割ステップと、前記内部形状に基づき、構造物内の隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを示す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成ステップと、前記開口部共有情報に開口部からの流入情報を付加する流入情報設定ステップと、前記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでの計算順序を決定する計算順序決定ステップを備えるとともに、前記計算順序決定ステップにより決定した計算順序に従って各ブロック内の流体流れの解析計算を行う上記流体流れ解析ステップを備えるようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項12記載の流体流れ解析プログラム。
【請求項1】
構造物内での流体(気体・液体)の流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析方法であって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いて、コンピュータが解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップを有することを特徴とする流体流れ解析方法。
【請求項2】
上記構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成ステップと、前記内部形状に基づき、構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割ステップと、前記内部形状に基づき、構造物内の隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを示す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成ステップと、前記開口部共有情報に開口部での流体の流入情報を付加する流入情報設定ステップと、前記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでの計算順序を決定する計算順序決定ステップを備えるとともに、前記計算順序決定ステップにより決定した計算順序に従って各ブロック内の流体流れの解析計算を行う上記流体流れ解析ステップを備えることを特徴とする請求項1記載の流体流れ解析方法。
【請求項3】
前記流入情報設定ステップにおいて、設定された流入口が複数の場合は、各流入口について当該流入口を開とし他のすべての流入口を閉としたパターンを作成し、上記計算順序決定ステップでは各パターンごとに計算順序を決定し、上記流体流れ解析ステップでは各パターンごとに上記計算順序に従って上記解析計算を行うことを特徴とする請求項2記載の流体流れ解析方法。
【請求項4】
上記計算順序決定ステップは、上記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、最初に流体が流入したブロックから開口部を共有する隣接ブロックを探索する手段をベースとし、計算順序決定に際し、選択したブロック以外の他のブロック群に少なくとも一箇所流出口が存在する場合に限り、選択したブロックの計算順序が確定するという条件を有することを特徴とする請求項2記載の流体流れ解析方法。
【請求項5】
上記流体流れ解析ステップは、上記各パターンごとに解析計算された上記各解析結果をストックする解析結果ストックステップと、上記ストックされた各解析結果を重ね合わせる解析結果重ね合わせステップとを有することを特徴とする請求項3記載の流体流れ解析方法。
【請求項6】
構造物内での流体の流れ現象をコンピュータによりシミュレーションするための流体流れ解析システムであって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いて解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析手段を有することを特徴とする流体流れ解析システム。
【請求項7】
上記構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成手段と、前記内部形状に基づき、構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割手段と、前記内部形状に基づき、構造物内の隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを示す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成手段と、前記開口部共有情報に開口部での流入情報を付加する流入情報設定手段と、前記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでの計算順序を決定する計算順序決定手段を有し、前記計算順序決定手段により決定した計算順序に従って上記流体流れ解析手段により各ブロック内の流体流れの解析計算を行うことを特徴とする請求項6記載の流体流れ解析システム。
【請求項8】
前記流入情報設定手段により設定される流入口が複数の場合は、各流入口について当該流入口を開とし他のすべての流入口を閉としたパターンを作成し、上記計算順序決定手段が各パターンごとに計算順序を決定し、上記流体流れ解析手段が各パターンごとに上記計算順序に従って上記解析計算を行うことを特徴とする請求項7記載の流体流れ解析システム。
【請求項9】
上記計算順序決定手段は、上記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、最初に流体が流入したブロックから開口部を共有する隣接ブロックを探索する手段をベースとし、計算順序決定に際し、選択したブロック以外の他のブロック群に少なくとも一箇所流出口が存在する場合に限り、選択したブロックの計算順序が確定するという条件を有することを特徴とする請求項7記載の流体流れ解析システム。
【請求項10】
上記流体流れ解析手段は、各パターンごとに解析計算された上記各解析結果をストックする解析結果ストック手段と、上記ストックされた各解析結果を重ね合わせる解析結果重ね合わせ手段とを有することを特徴とする請求項8記載の流体流れ解析システム。
【請求項11】
CAD(computer-aided design)システムと接続可能であり、CADシステムに入力された座標情報を上記各手段のうち少なくとも一つの手段への座標情報へと変換するとともに、上記各手段のうちの少なくとも一つの手段からの座標情報をCADシステムの座標情報へと変換し、当該座標情報を表示手段にグラフィカルに表示させることを特徴とする請求項6記載の流体流れ解析システム。
【請求項12】
構造物内での流体の流れ現象をシミュレーションするための流体流れ解析システムとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、構造物内に流入する流体によって生じる流れを、次の線形方程式
【数1】
を用いて解析計算し、その解析結果を得る流体流れ解析ステップを備えるようにコンピュータを機能させることを特徴とする流体流れ解析プログラム。
【請求項13】
前記構造物の内部形状を作成する構造物内部形状作成ステップと、前記内部形状に基づき、構造物内部をメッシュ分割するメッシュ分割ステップと、前記内部形状に基づき、構造物内の隣接する各ブロックが開口部を共有しているかどうかを示す開口部共有情報を作成する開口部共有情報作成ステップと、前記開口部共有情報に開口部からの流入情報を付加する流入情報設定ステップと、前記流入情報が付加された開口部共有情報に基づき、流体が最初に流入するブロックから最後に流出するブロックまでの計算順序を決定する計算順序決定ステップを備えるとともに、前記計算順序決定ステップにより決定した計算順序に従って各ブロック内の流体流れの解析計算を行う上記流体流れ解析ステップを備えるようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項12記載の流体流れ解析プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−198161(P2008−198161A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41617(P2007−41617)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【特許番号】特許第4081555号(P4081555)
【特許公報発行日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【特許番号】特許第4081555号(P4081555)
【特許公報発行日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】
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