説明

流体混合器

【課題】流路拡大域の前段において、第1及び第2流体の流れの乱れを抑制する。
【解決手段】流体混合器100は、小径管11とそれを収容する大径管12とを有し、小径管11内部に第1流路11aが構成されると共に大径管12内部で且つ小径管11外部に第2流路12aが構成された流体流路部10、流体流路部10の流体流出側に設けられ、第1流路11aを流通した第1流体と第2流路12aを流通した第2流体とが合流する流体合流域21を構成すると共に、その合流した第1及び第2流体が縮流する細孔22が穿孔された流体合流縮流部20、並びに流体合流縮流部20の流体流出側に設けられ、細孔22を縮流した第1及び第2流体が流入する流路拡大域31を構成する流路拡大部30を備える。小径管11は、流体流出側の管端部分11bが管端に行くに従って管厚が薄くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体混合器、並びにそれを用いた流体混合方法及び乳化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の流体を合流させて細孔に流通させる流体混合器として種々のものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、分散相が連続相に均一に分散したエマルジョンを生産する乳化装置であって、乳化器、分散相供給配管系、連続相供給配管系、及びエマルジョン排出配管系を有し、乳化器は、連続相供給配管系に連通する路内を流れる連続相に分散相供給配管系に連通した分散相導入路に設けたノズルから分散相が吐出することにより一次エマルジョンを生産する連続相導入路と、その連続相導入路にその下流側で隣接して一次エマルジョンを攪拌する攪拌室と、その攪拌室にその下流側で隣接して一次エマルジョンを微細化することにより二次エマルジョンを生産する流路と、その流路にその下流側で隣接して二次エマルジョンを減速させることによりエマルジョン排出配管系に送出する減速室を備えたものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、エマルジョンの分散相と連続相となる2種の液体を微小流路に供給して、その微小流路において乳化を行ない、エマルジョンを得る乳化装置であって、二重円筒構成を持ち、二重円筒の筒間を微小流路として流れる連続相となる液に対し、分散相となる液を内管に設けた複数の微小ノズルから直交するように分散して供給することにより第一次のエマルジョンを得る乳化器と、その乳化器に隣接して設けられ第一次のエマルジョンを通過させて微細な分散相の第二次のエマルジョンを得るベンチュリ管とを備えたものが開示されている。
【0005】
特許文献3には、流体を混合するための装置、特にガス噴射弁、混合ノズルまたはジェットコンプレッションノズルにおいて、第1の流体を案内するための第1の流体案内装置と、第2の流体を案内するための第2の流体案内装置とが設けられており、流体が、両流体案内装置に接続している混合領域で互いに混合されるようになっており、両流体案内装置のうちの少なくとも一方の流体案内装置に、当該流体に乱流を生ぜしめるための手段と、当該流体の流れ方向に関してその乱流を生ぜしめるための手段の下流側に配置された加熱装置とが対応配置されており、その加熱装置により流体が混合領域に到達する前に加熱可能であるものが開示されている。
【0006】
特許文献4には、筒状の吸収セルの一端から吸収セルの内径より小さい径の流体ジェットを毎秒500フィートより大きい速度で吸収セル内に噴射することにより、その流体ジェットと同軸で噴射速度より十分に低速の流体フローを吸収セル内に生成し、高速の流体ジェットと十分低速の流体フローとの界面において流体ジェットの運動エネルギーを剪断エネルギーに変換するように構成された乳化装置が開示されている。
【0007】
特許文献5には、管内部に相互に並行に延びる複数の流体流路が長さ方向に沿って構成された流体流通管と、その流体流通管の流体流出側に連続して設けられ流体流通管から流出した複数種の流体を混在状態に溜めるための流体溜め領域を形成すると共に、それらの複数種の流体を流通させて層流混合させるための混合用細孔が穿孔された流体混合部と、を備えたマイクロミキサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−313466号公報
【特許文献2】特開2007−111667号公報
【特許文献3】特表2004−536711号公報
【特許文献4】特開2000−33249号公報
【特許文献5】特開2006−289250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、分散相となる油相と連続相となる水相とを合流させ、そして、それらを細孔で縮流させて流路拡大域に流入させることにより乳化物を製造する場合、油相の水相への分散混合、すなわち、乳化は、主として流路拡大域での対流混合が支配的であることが分かった。従って、油相の水相への均一な分散混合による乳化を行うためには、対流混合が生じる流路拡大域の前段において、油相及び水相が予備混合されることで好ましくない不均一化を生じないこと、つまり、油相及び水相の流れの乱れが小さいことが望ましい。
【0010】
本発明の課題は、流路拡大域の前段において、第1及び第2流体の流れの乱れを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の流体混合器は、
小径管と、該小径管をその長さ方向を共通にして収容する大径管と、を有し、該小径管内部に第1流路が構成されると共に該大径管内部で且つ該小径管外部に第2流路が構成された流体流路部と、
上記流体流路部の流体流出側に設けられ、上記第1流路を流通した第1流体と上記第2流路を流通した第2流体とが合流する流体合流域を構成すると共に、その合流した第1及び第2流体が縮流する細孔が穿孔された流体合流縮流部と、
上記流体合流縮流部の流体流出側に設けられ、上記細孔を縮流した第1及び第2流体が流入する流路拡大域を構成する流路拡大部と、
を備え、
上記小径管は、流体流出側の管端部分が管端に行くに従って管厚が薄くなるように形成されている。
【0012】
本発明の流体混合方法は、本発明の流体混合器を用いたものであって、上記第1流路を流通した第1流体と上記第2流路を流通した第2流体とを、上記流体合流域で、第1流体を第2流体で覆うように合流させ、該流体合流域で合流させた第1及び第2流体を上記細孔に縮流させ、そして、該細孔を縮流した第1及び第2流体を流路拡大域に流入させるものである。
【0013】
本発明の乳化物の製造方法は、本発明の流体混合器を用いたものであって、第1流体として連続相及び分散相のうち一方となる流体及び第2流体として他方となる流体をそれぞれ用い、上記第1流路を流通した流体と上記第2流路を流通した流体とを上記流体合流域で合流させ、該流体合流域で合流させた流体を上記細孔に縮流させ、そして、該細孔を縮流した流体を流路拡大域に流入させるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小径管の流体流出側の管端部分が管端に行くに従って管厚が薄くなるように形成されているので、第1及び第2流体が漸次近接して緩やかに合流し、そのため流路拡大域の前段において、第1及び第2流体の流れの乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る流体混合システムの構成を示す図である。
【図2】流体混合器における要部の部分縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】流体混合器の変形例における要部の部分縦断面図である。
【図5】(a)実施例1〜3及び5〜7、並びに(b)実施例4で用いた流体混合器における要部の部分縦断面図である。
【図6】(a)比較例1及び2、並びに(b)比較例3で用いた流体混合器における要部の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は本実施形態に係る流体混合システムAを示す。
【0018】
本実施形態に係る流体混合システムAは、2種の流体の混合に用いられるものであり、流体混合器100と流体供給系等の付帯部とで構成されている。
【0019】
図2及び3は流体混合器100を示す。
【0020】
流体混合器100は、流体流路部10、その流体流出側に連続して設けられた流体合流縮流部20、及びさらにその流体流出側に連続して設けられた流路拡大部30を備えている。この流体混合器100は、以下に説明するように、流路拡大部30の前段における流体の流れの乱れを抑制するように構成されている。
【0021】
流体流路部10は、小径管11とその小径管11をその長さ方向を共通にして収容する大径管12とを有する。これにより、流体流路部10は、小径管11内部に第1流路11aが構成されると共に、大径管12内部で且つ小径管11外部に第2流路12aが構成されている。このように大径管12内部で且つ小径管11外部に第2流路12aが構成されていることで、大径管12の管内を流体流路として最大限に活用することができる。第1流路11a及び第2流路12aをそれぞれ第1及び第2流体が流通するが、それらの流れの乱れを抑制する観点からは、小径管11と大径管12とは、横断面形状が対称となるように同軸に設けられていることが好ましい。なお、小径管11内の第1流路11aは装置一端に設けられた第1流体供給部(不図示)に連通しており、また、大径管12内の第2流路12aは装置側面に設けられた第2流体供給部(不図示)に連通している。
【0022】
小径管11は、その外形及び孔のいずれの横断面形状も特に限定されるものではなく、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。大径管12は、その孔の横断面形状が特に限定されるものではなく、小径管11と同様、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。但し、第1流路11a及び第2流路12aをそれぞれ流通する第1及び第2流体の流れの乱れを抑制する観点からは、小径管11の外形及び孔、並びに大径管12の孔のそれぞれの横断面形状は円形であることが好ましい。つまり、第1流路11aの横断面形状は円形であることが好ましく、第2流路12aの横断面形状はドーナツ型形状であることが好ましい。
【0023】
小径管11は、その外形及び孔のいずれの横断面形状も長さ方向に沿って同一形状であってもよく、また、異なる形状であってもよい。大径管12は、その孔の横断面形状が長さ方向に沿って同一形状であってもよく、また、異なる形状であってもよい。但し、第1流路11a及び第2流路12aをそれぞれ流通する第1及び第2流体の流れの乱れを抑制する観点からは、小径管11の外形及び孔、並びに大径管12の孔のそれぞれの横断面形状は長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。つまり、第1流路11a及び第2流路12aのいずれも、横断面形状が長さ方向に沿って管端まで均一であることが好ましい。
【0024】
小径管11は、外形及び孔のいずれの横断面形状も円形である場合、その外径が例えば1.6〜25mmであり、3〜15mmであることが好ましい。小径管11は、その内径、つまり、第1流路11aの流路径が例えば0.8〜20mmであり、2〜10mmであることが好ましい。大径管12は、孔の横断面形状が円形である場合、その内径が例えば1.8〜50mmであり、4〜20mmであることが好ましい。また、小径管11と大径管12と間の第2流路12aの隙間は例えば0.1〜12.5mmであり、0.3〜6mmであることが好ましい。
【0025】
小径管11は、流体流出側の管端部分11bが管端に行くに従って管厚が薄くなるように形成されている。その小径管11の管端部分11bの形状は、特に限定されるものではないが、第1流路11aを流通する第1流体と第2流路12aを流通する第2流体とを緩やかに合流させてそれらの流れの乱れを抑制する観点から、その外周部がテーパ形状に形成されていることが好ましく、厚さ方向の横断面形状が内周側で尖った尖塔形状に形成されていることがより好ましい。また、小径管11の管端部分11bの形状は、同様の観点から、テーパー形状よりも管端部分11bの外径が長さ方向に沿って上流側から下流側に向かって緩やかに減少する形状であってもよい。具体的には、小径管11の管端部分11bは、図4に示すように、その外周面の縦断面における長さ方向に沿った輪郭が円弧等の外側に膨出した曲線に形成されていてもよい。その曲線の曲率半径は例えば1〜30mmである。
【0026】
大径管12は、小径管11の管端部分11bに対応する部分において、その管内壁と小径管11の管端部分11bとの間に構成される第2流路12aの一部分となる隙間δが流体流動方向で均一であることが好ましく、その隙間δが例えば0.02〜12.5mmであり、0.05〜12.5であることが好ましく、0.1〜12.5であることがより好ましく、0.3〜6mmであることが更に好ましい。また、その隙間δは、0.02〜0.1mmのオーダーであってもよく、0.1〜1.0mmのオーダーであってもよく、1.0〜12.5mmのオーダーであってもよい。 流体合流縮流部20は、小径管11の管端前方に流体合流域21が構成されており、その流体合流域21に連続して細孔22が穿孔されている。流体合流域21では、第1流路11aを流通した第1流体と第2流路12aを流通した第2流体とが合流し、細孔22では、流体合流域21で合流した第1及び第2流体が縮流する。
【0027】
流体合流域21は、その形状が特に限定されるものではなく、横断面形状が流体流動方向に沿って均一形状に形成されていてもよく、また、例えば、コーン形状のような細孔22に向かって収束するような先細り形状に形成されていてもよい。また、流体合流域21の形状は、コーン形状よりも内径が長さ方向に沿って上流側から下流側に向かって緩やかに減少する腕型形状であってもよい。具体的には、流体合流域21は、図4に示すように、その内壁面の縦断面における長さ方向に沿った輪郭が、各々、円弧等の外側に膨出した一対の曲線とそれらの曲線を連結する線分とで形成されていてもよい。その曲線の曲率半径は例えば1〜30mmである。流体合流域21は、小径管11の管端、つまり、流体流路部10の終端から細孔22までの距離Lが例えば0.02〜20mmであり、0.2〜20mmであることが好ましい。また、その距離Lは、0.02〜0.1mmのオーダーであってもよく、0.1〜1.0mmのオーダーであってもよく、1.0〜20.0mmのオーダーであってもよい。
【0028】
細孔22は、穿孔方向が流体流出方向に沿った方向に延びるように形成されていることが好ましく、また、小径管11及び大径管12と同軸に穿孔されていることが好ましい。
【0029】
細孔22は、その横断面形状が特に限定されるものではなく、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。細孔22は、その横断面形状が流体流動方向に沿って同一形状であってもよく、また、異なる形状であってもよい。但し、合流した第1及び第2流体の流れの乱れを抑制する観点からは、細孔22の横断面形状は円形であることが好ましく、また、長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。つまり、細孔22内の流路は、その横断面形状が流体流動方向に沿って流体流入端から流体流出端まで均一であることが好ましい。
【0030】
細孔22は、その孔長さlが例えば0.05〜5mmであり、0.1〜5mmであることが好ましく、0.1〜3mmであることがより好ましく、0.3〜3mmであることが更に好ましい。また、孔長さlは、0.05〜0.1mmのオーダーであってもよく、0.1〜1.0mmのオーダーであってもよく、1.0〜5.0mmのオーダーであってもよい。 横断面形状が円形である場合、その孔径dは、例えば0.1〜3mmであり、0.2〜1.5mmであることが好ましい。また、孔径dは、0.1〜1.0mmのオーダーであってもよく、1.0〜3.0mmのオーダーであってもよい。孔面積sは、例えば0.01〜7mm2であり、0.03〜2mm2であることが好ましい。細孔22は、孔長さlの孔径dに対する比l/dが0.15≦l/d≦40であることが好ましく、0.2≦l/d≦40であることがより好ましく、0.5≦l/d≦40であることが更に好ましく、1≦l/d≦20であることが更により好ましい。また、孔長さlの孔径dに対する比l/dは、0.15≦l/d≦1.0であってもよく、1.0≦l/d≦10であってもよく、10≦l/d≦40であってもよい。
【0031】
流路拡大部30は、細孔22の前方に流路拡大域31が構成されている。流路拡大域31には、細孔22を縮流した第1及び第2流体が流入する。なお、流路拡大域31は装置他端に設けられた流体排出部(不図示)に連通している。
【0032】
流路拡大域31は、その形状が特に限定されるものではなく、横断面形状が流体流動方向に沿って均一形状に形成されていてもよく、また、例えば、コーン形状のような細孔22から末広がりに開口した形状に形成されていてもよい。流路拡大域31は、横断面形状が円形である場合、最大内径Dが例えば0.8〜40mmであり、1.5〜25mmであることが好ましく、細孔22の孔径dの2.5〜100倍であることが好ましく、5〜40倍であることがより好ましい。
【0033】
流体混合器100は、各々、金属やセラミックス、樹脂等で形成された複数の部材で構成されていてもよく、そして、それらの部材の組合せによって流体流路部10、流体合流縮流部20、及び流路拡大部30が構成されていてもよい。
【0034】
以上に説明した流体混合器100によれば、小径管11の流体流出側の管端部分11bが管端に行くに従って管厚が薄くなるように形成されているので、第1及び第2流体が漸次近接して緩やかに合流し、そのため流路拡大域31の前段において、第1及び第2流体の流れの乱れを抑制することができる。
【0035】
なお、上記構成の流体混合器100では、1本の小径管11を大径管12に収容した構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、複数本の小径管11を大径管12に収容した構成であってもよい。
【0036】
この流体混合器100は、第1流路11aに連通した第1流体供給部に、第1原料貯槽41aから延びた第1原料供給管42aが接続されている。第1原料供給管42aには、第1流体を流通させる第1ポンプ43a、第1流体の流量を検知する第1流量計44a、及び第1流体の夾雑物を除去する第1フィルタ45aが上流側から順に介設されており、第1流量計44aと第1フィルタ45aとの間の部分に第1流体の圧力を検知する第1圧力計46aが取り付けられている。第1ポンプ43a、第1流量計44a及び第1圧力計46aのそれぞれは、流量コントローラ47に電気的に接続されている。
【0037】
第2流路12aに連通した第2流体供給部には、第2原料貯槽41bから延びた第2原料供給管42bが接続されている。第2原料供給管42bには、第2流体を流通させる第2ポンプ43b、第2流体の流量を検知する第2流量計44b、及び第2流体の夾雑物を除去する第2フィルタ45bが上流側から順に介設されており、第2流量計44bと第2フィルタ45bとの間の部分に第2流体の圧力を検知する第2圧力計46bが取り付けられている。第2ポンプ43b、第2流量計44b及び第2圧力計46bのそれぞれは、流量コントローラ47に電気的に接続されている。
【0038】
流量コントローラ47は、第1流体の設定流量及び設定圧力の入力が可能に構成されていると共に演算素子が組み込まれており、第1流体の設定流量情報、第1流量計44aで検知された流量情報及び第1圧力計46aで検知された圧力情報に基づいて第1ポンプ43aを運転制御する。同様に、流量コントローラ47は、第2流体の設定流量及び設定圧力の入力も可能に構成されており、第2流体の設定流量情報、第2流量計44bで検知された流量情報及び第2圧力計46bで検知された圧力情報に基づいて第2ポンプ43bを運転制御する。
【0039】
流路拡大域31に連通した流体排出部からは混合流体回収管48が延びて回収槽49に接続されている。
【0040】
次に、この流体混合システムAの動作について、第1流体を連続相となる水相及び第2流体を分散相となる油相として水中油型乳化物を製造する場合を説明する。なお、第1流体を油相及び第2流体を水相として水中油型乳化物を製造してもよいが、均一な乳化物を製造する観点から、第1流体を連続相及び第2流体を分散相とすることが好ましい。また、第1及び第2流体は、特にこれに限定されるものではなく、気相、液相、気液混合相、乳化相、固液混合相(スラリー)など固相状態以外の流動性を保持する性状のものであればよい。
【0041】
油相としては、例えば、鉱物油、植物油、合成油等が挙げられる。
【0042】
水相としては、例えば、水、水溶液、水と有機溶媒の混合液等が挙げられる。
【0043】
流体混合システムAが稼働すると、第1ポンプ43aは、連続相となる水相を、第1原料貯槽41aから第1原料供給管42aを介し、第1流量計44a及び第1フィルタ45aを順に経由させて流体流路部10の小径管11の第1流路11aに継続的に供給する。第1流量計44aは、検知した水相の流量情報を流量コントローラ47に送る。また、第1圧力計46aは、検知した第1圧力計46aの圧力情報を流量コントローラ47に送る。
【0044】
第2ポンプ43bは、分散相となる油相を、第2原料貯槽41bから第2原料供給管42bを介し、第2流量計44b及び第2フィルタ45bを順に経由させて流体流路部10の大径管12と小径管11との間の第2流路12aに継続的に供給する。第2流量計44bは、検知した油相の流量情報を流量コントローラ47に送る。また、第2圧力計46bは、検知した第2圧力計46bの圧力情報を流量コントローラ47に送る。
【0045】
流量コントローラ47は、水相の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第1流量計44aで検知された流量情報及び第1圧力計46aで検知された圧力情報に基づいて、水相の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第1ポンプ43aを運転制御する。それと共に、流量コントローラ47は、油相の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第2流量計44bで検知された流量情報及び第2圧力計46bで検知された圧力情報に基づいて、油相の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第2ポンプ43bを運転制御する。
【0046】
そして、流体混合器100において、流体流路部10では、水相が第1流路11aを流通すると共に、油相が第2流路12aを流通する。このとき、水相の流量(第1流路11aから流体合流域21に流入する水相の流速)は例えば1〜100L/hであり、圧力は例えば0.01〜5MPaである。油相の流量(第2流路12aから流体合流域21に流入する油相の流速)は、水相の流量よりも少なく、例えば0.1〜50L/hであり、圧力は例えば0.01〜5MPaである。そして、水相の流量設定及び圧力設定により、水相の流速は例えば0.05〜2m/sとされ、また、油相の流量設定及び圧力設定により、油相の流速は例えば0.05〜2m/sとされる。流体流路部10では、水相及び油相を合わせた流体の流速は例えば0.05〜2m/sである。
【0047】
流体合流縮流部20では、流体流路部10から流出した水相及び油相は、流体合流域21において、第1流路11aからの水相の前方に第2流路12aからの油相が流入し、水相を油相で覆うような形態で合流する。このとき、流体合流縮流部20では、水相及び油相を合わせた流体の流速は例えば0.05〜2m/sである。水相及び油相の流れの乱れを抑制する観点からは、第1流路11aから流体合流域21に流入する水相の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入する油相の流速に対する比を0.5〜2とすることが好ましい。また、流体流路部10における水相及び油相を合わせた流体の流速と流体合流縮流部20における水相及び油相が初めて合流した時点の流速とを同一にし、合流前後での流速変化を無くすことが好ましい。さらに、流体混合器100の前後の圧力損失を0.01〜5MPaとすることが好ましい。これらは、油相及び水相のそれぞれの流量設定及び圧力設定により制御することができる。
【0048】
流体合流域21において合流した水相及び油相は細孔22において縮流する。このとき、水相及び油相の流れの乱れを抑制する観点からは、流体合流域21で合流させた水相及び油相を層流条件で細孔22に縮流させることが好ましい。これも、水相及び油相のそれぞれの流量設定及び圧力設定により制御することができる。なお、層流条件とは、レイノルズ数(Re)が2300よりも小さくなる流動条件であり、層流条件で縮流させるとは、縮流が始まる前の、すなわち水相及び油相が初めて合流した時点での流動条件が層流条件であることをいう。
【0049】
流路拡大部30では、流路拡大域31において、細孔22を縮流した水相及び油相が流入し、水相と油相間の対流混合により乳化物が製造される。流路拡大域31での水相と油相間の対流混合が乳化を支配することから、油相の水相への均一な分散混合を行うためには、流路拡大域31の前段において、水相及び油相が予備混合されることで好ましくない不均一化を生じないことが好ましいが、本実施形態に係る流体混合システムAによれば、流体混合器100が、小径管11の流体流出側の管端部分11bが管端に行くに従って管厚が薄くなるように形成されているので、水相及び油相が漸次近接して緩やかに合流し、そのため流路拡大域31の前段において水相及び油相の流れの乱れを抑制することができる。従って、流路拡大域31の前段において、水相及び油相が予備混合されることで好ましくない不均一化を生じることがなく、流路拡大域31における乳化を支配する対流混合により短時間で水相と油相間の均一な分散混合を行うことができ、その結果として、液滴径が小さく且つその分布が狭い乳化物を得ることができる。
【実施例】
【0050】
[実験1]
以下の実施例1〜4及び比較例1〜2の乳化物の製造実験を行った。それぞれの内容については表1にも示す。
【0051】
(実施例1)
分散相となる油相として環状シリコーン(信越化学社製 商品名:KF−995)を、及び連続相となる水相としてポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製 商品名:ゴーセノールEG−05)の0.5質量%水溶液をそれぞれ準備した。
【0052】
そして、上記実施形態と同一構成の流体混合システムAを用い、上記油相を第1流体及び上記水相を第2流体として乳化物の製造を行った。流体混合器100には、油相及び水相を、前者20質量%及び後者80質量%の割合で混合がなされるように供給し、また、油相及び水相の流量を3.0〜7.0L/hの範囲で変量した。
【0053】
流体混合器100は、図5(a)に示すように、小径管11及び大径管12のそれぞれの横断面形状が円形であって、小径管11における長さ方向に沿って管端まで均一である円形の横断面形状の内径が4mm(従って、第1流路11aの流路径は4mm)及び外径が8mm、並びに大径管の内径が10mm(従って、第2流路12aの隙間は1mm)である。小径管11の管端部分11bは、その外周部がテーパ形状に形成され、管端に行くに従って管厚が薄くなるように形成されており、それと大径管12の管内壁との間に構成される第2流路12aの一部分となる隙間δは均一で2.5mmである。流体合流域21は、120°の角度で収束するコーン形状に形成されている。細孔22は、孔長さlが0.75mm、孔径dが0.3mm(従って、l/d=2.5)、及び孔面積sが0.07065mm2である。流路拡大域31は、120°の角度で広がるコーン形状に円筒形状が連続した形状に形成されており、最大内径Dが7mmであり、これは細孔22の孔径dの23倍である。第1流路11aから流体合流域21に流入する油相の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入する水相の流速に対する比は1.0であった。
【0054】
上記の結果、流体混合器100の前後の圧力損失を0.15MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は20.0μmであった。圧力損失を0.34MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は11.4μmであった。圧力損失を0.63MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は7.6μmであった。なお、面積基準の平均液滴径はレーザー散乱/回折法(堀場製作所:装置名LA−910)により測定した(以下実施例2〜4及び比較例1〜2でも同様)。
【0055】
(実施例2)
細孔の孔長さlが1.75mm、孔径dが0.7mm(従って、l/d=2.5、孔面積sが0.3847mm2)であり、流路拡大域31の最大内径Dがその10倍の7mmであり、小径管11の管端部分11bと大径管12の管内壁との間に構成される第2流路12aの一部分となる隙間δは均一で0.5mmである図5(a)に示す構成の流体混合器100を用い、上記油相を第2流体及び上記水相を第1流体として、油相及び水相の流量を20.0〜44.0L/hの範囲で変量したことを除いて実施例1と同様にして乳化物の製造を行った。第1流路11aから流体合流域21に流入する水相の流速の第2流路12aから流体合流域12に流入する油相の流速に対する比は1.2であった。
【0056】
上記の結果、流体混合器100の前後の圧力損失を0.17MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は16.1μmであった。圧力損失を0.56MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は8.6μmであった。圧力損失を0.89MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は7.4μmであった。
【0057】
(実施例3)
細孔の孔長さlが0.15mm、孔径dが0.3mm(従って、l/d=0.5、孔面積sが0.07065mm2)であり、流路拡大域31の最大内径Dがその23倍の7mmであり、小径管11の管端部分11bと大径管12の管内壁との間に構成される第2流路12aの一部分となる隙間δは均一で0.5mmである図5(a)に示す構成の流体混合器100を用い、上記油相を第2流体及び上記水相を第1流体として、油相及び水相の流量を3.0〜6.6L/hの範囲で変量したことを除いて実施例1と同様にして乳化物の製造を行った。第1流路11aから流体合流域21に流入する水相の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入する油相の流速に対する比は1.0であった。
【0058】
上記の結果、流体混合器100の前後の圧力損失を0.11MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は21.3μmであった。圧力損失を0.33MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は10.0μmであった。圧力損失を0.50MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は7.7μmであった。
【0059】
(実施例4)
細孔の孔長さlが0.85mm、孔径dが0.33mm(従って、l/d=2.6、孔面積sが0.08549mm2)であり、流路拡大域31の最大内径Dがその21倍の7mmであり、小径管11の管端部分11bと大径管12の管内壁との間に構成される第2流路12aの一部分となる隙間δは均一で0.5mmであり、小径管11の管端部分11bの外周面の縦断面における長さ方向に沿った輪郭が中心角90°の円弧に形成されていると共に、流体合流域21の内壁面の縦断面における長さ方向に沿った輪郭が、各々、中心角90°の一対の円弧とそれらの円弧曲線を連結する線分とで形成された図5(b)に示す構成の流体混合器100を用い、上記油相を第2流体及び上記水相を第1流体として、油相及び水相の流量を3.0〜7.2L/hの範囲で変量したことを除いて実施例1と同様にして乳化物の製造を行った。第1流路11aから流体合流域21に流入する水相の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入する油相の流速に対する比は1.2であった。
【0060】
上記の結果、流体混合器100の前後の圧力損失を0.10MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は23.3μmであった。圧力損失を0.32MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は10.9μmであった。圧力損失を0.65MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は7.4μmであった。
【0061】
(比較例1)
図6(a)に示す構成の流体混合器100’を用い、油相及び水相の流量を9.6〜21.0L/hの範囲で変量したことを除いて実施例1と同様にして乳化物の製造を行った。
【0062】
流体混合器100’は、図6(a)に示すように、小径管11’及び大径管12’のそれぞれの横断面形状が円形であって、小径管11’における長さ方向に沿って管端まで均一である円形の横断面形状の内径が4.5mm(従って、第1流路11a’の流路径は4.5mm)及び外径が6.4mm、並びに大径管12’の内径が18mm(従って、第2流路12a’の隙間は5.8mm)である。小径管11’は、軸方向に垂直な管端面を有し、大径管12’内において、流体合流域21’のコーン形状への収束開始位置から2mm後方に管端が位置付けられている。流体合流域21’は、120°の角度で収束するコーン形状に形成されている。細孔22’は、孔長さlが2mm、孔径dが0.5mm(従って、l/d=4)、及び孔面積sが0.1963mm2である。流路拡大域31’は、120°の角度で広がるコーン形状に円筒形状が連続した形状に形成されており、最大内径Dが18mmであり、これは細孔22’の孔径dの36倍である。第1流路11aから流体合流域21に流入する油相の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入する水相の流速に対する比は3.4であった。
【0063】
上記の結果、流体混合器100’の前後の圧力損失を0.14MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は26.7μmであった。圧力損失を0.20MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は20.7μmであった。圧力損失を0.35MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は13.8μmであった。圧力損失を0.53MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は10.3μmであった。圧力損失を0.75MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は8.9μmであった。
【0064】
(比較例2)
細孔22’の孔長さlが2mm、孔径dが0.56mm(従って、l/d=3.6)、及び孔面積sが0.2462mm2である図6(a)に示す構成の流体混合器100’を用い、上記油相を第2流体及び上記水相を第1流体として、油相及び水相の流量を16.0〜30.0L/hの範囲で変量したことを除いて比較例1と同様にして乳化物の製造を行った。第1流路11aから流体合流域21に流入する水相の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入する油相の流速に対する比は53.7であった。
【0065】
上記の結果、流体混合器100’の前後の圧力損失を0.25MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は19.0μmであった。圧力損失を0.51MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は11.7μmであった。圧力損失を0.80MPaとしたときにおける面積基準の平均液滴径は9.2μmであった。
【0066】
【表1】

【0067】
以上の実施例1〜4及び比較例1〜2の結果によれば、同一の圧力損失下での平均液滴径を比較した場合、実施例1〜4では、比較例1〜2に比べて平均液滴径が小さいことが分かる。
【0068】
[実験2]
以下の実施例5〜7及び比較例3の反応実験を行った。それぞれの内容については表2にも示す。
【0069】
(実施例5)
混合により反応する2つの水溶液として、0.022N硫酸と、ほう酸緩衝液をそれぞれ準備した。ほう酸緩衝液の組成は、ほう酸0.009mol/L、水酸化ナトリウム0.09mol/L、よう素酸カリウム0.00625mol/L、よう化カリウム0.0313mol/Lからなる。この2液を混合すると、中和反応(I)と、よう素が生成する酸化還元反応(II)が同時に進行する。
【0070】
【化1】

【0071】
ここで、2液の混合が短時間で完結するほどよう素の生成量は減少するため、生成したよう素と化学平衡関係(III)にあるI3-イオンを吸収波長353nmで定量することで混合時間を評価することが可能である。すなわち、混合後の液体をサンプリングし吸光度を測定したとき、吸光度が小さいほど流体混合器の混合性能が高いと評価することができる。本反応系は学術的に混合器の混合性能評価に汎用的に用いられており、一般にVillermaux/Dushman reactionと呼ばれている。本反応系の詳細は、P. Guichardon and L. Falk, Chemical Engineering Science 55 (2000) 4233-4243に記されている。
【0072】
そして、上記実施形態と同一構成の流体混合システムAを用い、上記硫酸を第1流体及び上記ほう酸緩衝液を第2流体として反応実験を行った。
【0073】
実施例1で用いた流体混合器100(図5(a))に、硫酸及びほう酸緩衝液を、前者50質量%及び後者50質量%の割合で混合がなされるように供給した。このとき、硫酸及びほう酸緩衝液の流量を3.0L/hとした。第1流路11aから流体合流域21に流入する硫酸の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入するほう酸緩衝液の流速に対する比は0.25であった。
【0074】
上記の結果、流体混合器100の前後の圧力損失は0.118MPaであり、吸光度は0.033であった。なお、吸光度は分光光度計(島津製作所:装置名UVmini−1240)により測定した(以下実施例6,7及び比較例3でも同様)。
【0075】
(実施例6)
実施例2で用いた流体混合器100(図5(a))に、硫酸及びほう酸緩衝液を、それらの流量を12.0L/hとして供給したことを除いて実施例5と同様に反応実験を行った。第1流路11aから流体合流域21に流入する硫酸の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入するほう酸緩衝液の流速に対する比は0.3であった。
【0076】
上記の結果、流体混合器100の前後の圧力損失は0.094MPaであり、吸光度は0.021であった。
【0077】
(実施例7)
実施例3で用いた流体混合器100(図5(a))に硫酸及びほう酸緩衝液を供給したことを除いて実施例5と同様に反応実験を行った。第1流路11aから流体合流域21に流入する硫酸の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入するほう酸緩衝液の流速に対する比は0.25であった。
【0078】
上記の結果、流体混合器100の前後の圧力損失は0.104MPaであり、吸光度は0.020であった。
【0079】
(比較例7)
図6(b)に示す構成の流体混合器100’に、硫酸及びほう酸緩衝液を、それらの流量を4.8L/hとして供給したことを除いて実施例5と同様に反応実験を行った。
【0080】
流体混合器100’は、図6(b)に示すように、小径管11’及び大径管12’のそれぞれの横断面形状が円形であって、小径管11’における長さ方向に沿って管端まで均一である円形の横断面形状の内径が1.7mm(従って、第1流路11a’の流路径は1.7mm)及び外径が3.2mm、並びに大径管12’の内径が4.4mm(従って、第2流路12a’の隙間は0.6mm)である。小径管11’は、軸方向に垂直な管端面を有し、大径管12’内において、細孔22’から0.5mm後方に管端が位置付けられている。流体合流域21’は、円筒形状に形成されている。小径管11’の管端面の対向面は縦壁状の平坦面に形成されている。細孔22’は、孔長さlが0.9mm、孔径dが0.3mm(従って、l/d=3)、及び孔面積sが0.07065mm2である。流路拡大域31’は、180°の角度で広がる円筒形状に形成されており、最大内径Dが1.1mmであり、これは細孔22’の孔径dの3.7倍である。第1流路11aから流体合流域21に流入する硫酸の流速の第2流路12aから流体合流域21に流入するほう酸緩衝液の流速に対する比は3.56であった。
【0081】
上記の結果、流体混合器100‘の前後の圧力損失は0.109MPaであり、吸光度は0.063であった。
【0082】
【表2】

【0083】
以上の実施例5〜7並びに比較例3の結果によれば、同一の圧力損失下での吸光度を比較した場合、実施例5〜7では、比較例3に比べて吸光度が小さいことが分かる。これは前記したように、実施例5〜7で用いた流体混合器の混合性能が比較例3で用いた流体混合器に比べて高いことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、流体混合器、並びにそれを用いた流体混合方法及び乳化物の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0085】
100 流体混合器
10 流体流路部
11 小径管
11a 第1流路
11b 管端部分
12 大径管
12a 第2流路
20 流体合流縮流部
21 流体合流域
22 細孔
30 流路拡大部
31 流路拡大域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径管と、該小径管をその長さ方向を共通にして収容する大径管と、を有し、該小径管内部に第1流路が構成されると共に該大径管内部で且つ該小径管外部に第2流路が構成された流体流路部と、
上記流体流路部の流体流出側に設けられ、上記第1流路を流通した第1流体と上記第2流路を流通した第2流体とが合流する流体合流域を構成すると共に、その合流した第1及び第2流体が縮流する細孔が穿孔された流体合流縮流部と、
上記流体合流縮流部の流体流出側に設けられ、上記細孔を縮流した第1及び第2流体が流入する流路拡大域を構成する流路拡大部と、
を備え、
上記小径管は、流体流出側の管端部分が管端に行くに従って管厚が薄くなるように形成されている、流体混合器。
【請求項2】
上記小径管は、上記第1流路の横断面形状が長さ方向に沿って管端まで均一である、請求項1に記載された流体混合器。
【請求項3】
上記小径管は、流体流出側の管端部分の外周部がテーパ形状に形成されている、請求項1又は2に記載された流体混合器。
【請求項4】
上記小径管は、流体流出側の管端部分の外周面の縦断面における長さ方向に沿った輪郭が外側に膨出した曲線に形成されている、請求項1又は2に記載された流体混合器。
【請求項5】
上記大径管は、その管内壁と上記小径管の管端部分との間に構成される上記第2流路の一部分となる隙間が流体流動方向に均一に形成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載された流体混合器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された流体混合器を用いた流体混合方法であって、
上記第1流路を流通した第1流体と上記第2流路を流通した第2流体とを上記流体合流域で合流させ、該流体合流域で合流させた第1及び第2流体を上記細孔に縮流させ、そして、該細孔を縮流した第1及び第2流体を流路拡大域に流入させる、流体混合方法。
【請求項7】
上記流体合流域における第1流体と第2流体との合流を、第1流体を第2流体で覆うように行わせる、請求項6に記載された流体混合方法。
【請求項8】
上記第1流路から上記流体合流域に流入する第1流体の流速の上記第2流路から上記流体合流域に流入する第2流体の流速に対する比を0.5〜2とする、請求項6又は7に記載された流体混合方法。
【請求項9】
上記流体合流域で合流させた第1及び第2流体を層流条件で上記細孔に縮流させる、請求項6乃至8のいずれかに記載された流体混合方法。
【請求項10】
上記流体流路部における第1及び第2流体を合わせた流体の流速と、上記流体合流縮流部における第1及び第2流体が初めて合流した時点での第1及び第2流体を合わせた流体の流速と、を同一にする、請求項6乃至9のいずれかに記載された流体混合方法。
【請求項11】
上記流体混合器の前後の圧力損失を0.01〜5MPaとする、請求項6乃至10のいずれかに記載された流体混合方法。
【請求項12】
請求項1乃至5のいずれかに記載された流体混合器を用いた乳化物の製造方法であって、
第1流体として連続相及び分散相のうち一方となる流体及び第2流体として他方となる流体をそれぞれ用い、
上記第1流路を流通した流体と上記第2流路を流通した流体とを上記流体合流域で合流させ、該流体合流域で合流させた流体を上記細孔に縮流させ、そして、該細孔を縮流した流体を流路拡大域に流入させる、乳化物の製造方法。
【請求項13】
第1流体として連続相となる水相及び第2流体として分散相となる油相をそれぞれ用いることにより水中油型乳化物を製造する、請求項12に記載された乳化物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−147932(P2011−147932A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285997(P2010−285997)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】