流体減衰式プリントヘッド
【課題】優れたインクジェットプリンタ用プリントヘッドを得る。
【解決手段】インクを吐出するノズルを有するプリントヘッド集積回路(68)と、プリントヘッド集積回路を支持する支持構造体(64、176、108)とを有する、インクジェットプリンタ用プリントヘッド。支持構造体は、ノズルにインクを供給するインク導路(184)と、インク導路内のインク中の圧力パルスによって圧縮されて、圧力パルスを消散させる気体を入れた流体ダンパ(200)とを有する。気体の圧縮を利用する圧力パルスの減衰は、少量の気体によって達成することができる。これにより、インク圧力の過渡スパイクによるノズルの溢出しを回避しながらコンパクトな設計が維持される。
【解決手段】インクを吐出するノズルを有するプリントヘッド集積回路(68)と、プリントヘッド集積回路を支持する支持構造体(64、176、108)とを有する、インクジェットプリンタ用プリントヘッド。支持構造体は、ノズルにインクを供給するインク導路(184)と、インク導路内のインク中の圧力パルスによって圧縮されて、圧力パルスを消散させる気体を入れた流体ダンパ(200)とを有する。気体の圧縮を利用する圧力パルスの減衰は、少量の気体によって達成することができる。これにより、インク圧力の過渡スパイクによるノズルの溢出しを回避しながらコンパクトな設計が維持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関し、特にインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、従来の往復式プリントヘッド設計ではなくてページ幅のプリントヘッドを採用した広範囲のプリンタを開発してきた。ページ幅設計では、プリントヘッドが、画像の一行分を付着させるのに紙面を横切って行き来することがないので、印刷速度が速くなる。ページ幅プリントヘッドは、単純に、媒体が高速で通過しているときにその上にインクを付着させる。そのようなプリントヘッドは、フルカラー1600dpiの印刷を約60ページ毎分の速度で行うことを可能にし、その速度は、以前に従来のインクジェットプリンタでは達成できなかった。
【0003】
これらの速度で印刷するとインクを急速に消費し、その結果、プリントヘッドに十分なインクを供給することに問題を生じる。流量が多くなるばかりでなく、ページ幅プリントヘッドの長さ全体に亘ってインクを分配することが、比較的小さな往復式プリントヘッドへのインク供給よりも複雑になる。
【0004】
速い印刷速度は、比較的大きなインク供給流量を必要とする。この多量のインクが、比較的急速に供給ラインを通って移動する。印刷作業を急に終了すると、又は単に印刷紙面の終端では、比較的急速に流れているこの比較的大量のインクが、やはり、即時に停止しなければならないことになる。しかし、インクの運動量を突然拘束すると、インクライン中に衝撃波を引き起こす。プリントヘッドを構成する構成要素は、通常、剛性が高く、ライン中のインク柱が停止させられても殆ど撓むことがない。インクラインが追従しないことによって、衝撃波がラプラス圧力(ノズル開口でのインクの表面張力によって形成され、ノズルチャンバ内のインクを保持する圧力)を超え、プリントヘッドノズルの前面を溢れさせ得る。ノズルが溢れた場合、インクが吐出されず、印刷にアーティファクトが現れることがある。
【0005】
ノズルの発射率がインクラインの共振周波数に一致すると、インク中に共振パルスが発生する。この場合も、インクラインを形成する構造の剛性が高いので、同時に発射している或る色のノズルの大部分が、インクライン中に定常波又は共振パルスを生じ得る。これにより、ラプラス圧力を超えると、ノズルの溢出し、又は逆に、スパイク後の圧力の急降下によるノズルのプライミング解除が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開公報2005/0157040
【発明の概要】
【0007】
従って、第1の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリントヘッドICを支持する支持構造体であり、ノズル配列にインクを供給するインク導路を有する支持構造体と、
インク導路内のインク中の圧力パルスによって圧縮されることにより圧力パルスを消散させる気体を入れた流体ダンパと
を備えるプリントヘッドを提供する。
【0008】
気体の圧縮を利用する圧力パルスの減衰は、少量の気体によって達成することができる。これにより、インク圧力の過渡スパイクによるノズルの溢出しを回避しながらコンパクトな設計が維持される。
【0009】
任意選択的に、流体ダンパは気体を保持する空洞配列を有し、各空洞が気体の別々の溜まり場になる。任意選択的に、支持構造体のインク導路がインクでプライミングされたとき、空洞のそれぞれが、インクメニスカスによって部分的に画定される。
【0010】
任意選択的に、空洞のそれぞれは、1つ又は複数のインク導路に面している開口を有する盲陥凹である。任意選択的に、それぞれの盲陥凹の開口は、インク導路の1つだけに面している。任意選択的に、それぞれの盲陥凹の開口は、インクが毛管作用によって陥凹を満たすのを阻止するように構成されている。
【0011】
任意選択的に、支持構造体は、インク導路をインク供給部に接続する入口と、インク導路を廃棄インク出口に接続する出口とを有する。任意選択的に、各それぞれの空洞への開口が、上流側縁部と、下流側縁部とを有し、上流側縁部が、インク導路の、インク供給部からの最初のプライミングに際し、下流側縁部より先にインクに接触し、上流側縁部は、導路と空洞の内部との間に移行面を有し、その移行面が、インク導路の最初のプライミングに際しインクが毛管作用によって空洞を満たし気体を追い出すのを阻止するように構成されている。
【0012】
任意選択的に、プリントヘッドがページ幅プリントヘッドであり、支持構造体が一方の端部に入口、他方の端部に出口を有して延伸し、インク導路が、支持構造体に沿って入口と出口との間に長手方向に延在するチャネルを有し、チャネルのそれぞれが、それに沿って離間配置された一連のインク供給通路を有し、それによってチャネルとプリントヘッドICとの流体連通を形成する。任意選択的に、インク供給通路は、空洞への開口を備える壁に対向するチャネルの壁に並んでチャネルに接続する。
【0013】
任意選択的に、支持構造体は液晶ポリマー(LCP)である。任意選択的に、支持構造体は、2分割LCPモールディングであり、チャネル及び供給通路が一方の部分に形成され、空洞が他方の部分に形成されている。
【0014】
任意選択的に、支持構造体は、一方の側面に沿って端と端とを接して装着された複数のプリントヘッドICを有する。任意選択的に、プリントヘッドICは、インク供給通路とプリントヘッドICとを流体連通させる孔を有する粘着フィルムを挿入することによって側面に装着される。
【0015】
従って、第2の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリンタ内にプリントヘッドICを装着するための支持構造体であり、ノズル配列にインクを供給するインク導路を有し、インク導路が、インクを部分的に塞ぐ堰構造を有する、支持構造体と
を備え、
プリントヘッドをプライミングするとき、堰構造が、インク導路の上流部分を優先的にプライミングさせるプリントヘッドを提供する。
【0016】
十分にプライミングされない傾向のある領域の下流に堰を使用することによって、それらの領域をより素早く、又は下流部分に優先してプライミングさせることができる。下流部分が、堰によってたとえ遅くなっても、確実にプライミングされるものである限り、上流部分を優先的にプライミングすることに不都合はない。
【0017】
任意選択的に、堰構造は、前進するインク流のメニスカスの繋止点を形成するように構成された上端外形を有する。任意選択的に、上流部分は、その最上面に、プリントヘッドがプライミングされた後、空気溜りを保持するようになされた空洞を有する。任意選択的に、空洞は、上流部分の最上面に画成された開口を有し、各開口の上流側縁部は湾曲し、下流側縁部は比較的角張っており、その結果、上流方向から流れて来るインクは、毛管作用によって空洞に引き込まれない。任意選択的に、堰は、前進するインク流のメニスカスを一時的に繋止し、空洞の1つに関して開口の比較的角張った縁部に接触しないようにインク流の方向を変えるべく配置される。任意選択的に、プリントヘッドは、利用者が取り外し交換するように構成されたカートリッジである。任意選択的に、カートリッジは、装着時にはプライミングされておらず、その後、プリンタ内のポンプによってプライミングされる。
【0018】
従って、第3の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出する延伸ノズル配列と、
ノズル配列にインクを供給する複数のインク導路であり、その延伸配列に隣接して延在するインク導路と、
それぞれが、インク導路中の圧力パルスによって圧縮される或る量の気体を入れ、それぞれが、個々にインク導路と流体連通している複数のパルスダンパと
を備え、
パルスダンパを延伸配列の全長に亘って分布させたプリントヘッドを提供する。
【0019】
ページ幅プリントヘッドのような延伸プリントヘッドを通って移動する圧力パルスを、インク流ラインのいずれの箇所でも減衰することができる。しかし、パルスは、その後ダンパで消散させられるにせよ、プリントヘッド集積回路のノズルを通過するとノズルの溢出しを生じさせる。ノズル配列の直ぐ近くのインク供給導路に多数のパルスダンパを組み入れることによって、そうしなければ圧力スパイクが有害な溢出しを生じる箇所でもあらゆる圧力スパイクが減衰される。
【0020】
任意選択的に、複数のパルスダンパは、一方の面でインク導路に開口している一連の空洞である。任意選択的に、各空洞は1つだけのインク導路に開口を有し、インク導路のそれぞれは対応するインク供給部に接続され、開口は、インク導路が対応するインク供給部からプライミングされたとき、空洞がインクでプライミングされないように構成されている。
【0021】
任意選択的に、空洞のそれぞれは、開口が盲端部の面積に実質的に等しい面積を画成するような盲陥凹である。任意選択的に、開口は、それぞれインク導路の1つだけに面している。任意選択的に、開口は、インクが毛管作用によって陥凹を満たすのを阻止するように構成されている。
【0022】
任意選択的に、各それぞれの空洞への開口が、上流側縁部と、下流側縁部とを有し、上流側縁部が、インク導路の、インク供給部からの最初のプライミングに際し、下流側縁部より先にインクに接触し、上流側縁部が、導路と空洞の内部との間に移行面を有し、その移行面が、インク導路の最初のプライミングに際しインクが毛管作用によって空洞を満たし気体を追い出すのを阻止するように構成されている。
【0023】
任意選択的に、ノズル配列は、インク導路が形成されている支持構造体に装着された少なくとも1つのプリントヘッドICに形成される。任意選択的に、プリントヘッドがページ幅プリントヘッドであり、支持構造体が一方の端部に入口、他方の端部に出口を有して延伸し、インク導路が、支持構造体に沿って入口と出口との間に長手方向に延在するチャネルを有し、チャネルのそれぞれが、それに沿って離間配置された一連のインク供給通路を有し、それによってチャネルとプリントヘッドICとの流体連通を形成する。任意選択的に、インク供給通路は、空洞への開口を備える壁に対向するチャネルの壁に並んでチャネルに接続する。
【0024】
任意選択的に、支持構造体は液晶ポリマー(LCP)である。任意選択的に、支持構造体は、2分割LCPモールディングであり、チャネル及び供給通路が一方の部分に形成され、空洞が他方の部分に形成されている。
【0025】
任意選択的に、支持構造体は、一方の側面に沿って端と端とを接して装着された複数のプリントヘッドICを有する。任意選択的に、プリントヘッドICは、インク供給通路とプリントヘッドICとを流体連通させる孔を有する粘着フィルムを挿入することによって側面に装着される。
【0026】
従って、第4の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
延伸し、インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリントヘッドICを支持する支持構造体であり、ノズル配列にインクを供給するインク出口を有する支持構造体と
を備え、
インク出口が、その間隔がプリントヘッドICの端部で狭くなるようにプリントヘッドICに沿って離間配置されているプリントヘッドを提供する。
【0027】
端部領域近くでインク出口の数を増加させることによって、インクの供給が、端部のノズルのプライミングが相対的に遅いのを補償するように増強される。これは、ノズル配列全体をより一様にプライミングして、早目にプライミングしたノズル(或いは未プライミングの端部ノズル)からの溢出し及びインクの空費を回避する。
【0028】
任意選択的に、支持構造体は、端と端とが接する関係に構成された複数のプリントヘッドICを支持し、支持構造体は、インクをインク出口に供給する複数のインク供給通路を有し、2つのプリントヘッドICの端部間の連結部の近傍のインク供給通路の少なくとも幾つかは、2つのインク出口にインクを供給し、その2つのインク出口は連結部の両側にある。任意選択的に、支持構造体は、インク供給通路が形成されているモールド式インクマニホルドと、インク出口が形成されているポリマーフィルムを有し、ポリマーフィルムがモールド式インクマニホルドに装着され、プリントヘッドICがポリマーフィルムの他方の面に装着される。任意選択的に、プリントヘッドICは、ウェーハ基板の一方の面上のインク入口チャネルと、ウェーハ基板の他方の面に形成されたノズル配列とを有し、インク入口チャネルのそれぞれは、少なくとも1つのインク出口に接続する。
【0029】
任意選択的に、支持構造体は、プリントヘッドICに供給されるインク中の圧力パルスを減衰させる流体ダンパを有する。任意選択的に、流体ダンパは或る量の気体を保持する空洞配列を有し、各空洞が気体の別々の溜まり場になる。任意選択的に、空洞のそれぞれは、支持構造体のインク導路がインクでプライミングされたとき形成されるインクメニスカスによって部分的に画定される。
【0030】
任意選択的に、インクマニホルドは、プリントヘッドICと平行に延在する一連の主チャネルを有し、主チャネルは、インク供給通路にインクを供給し、空洞のそれぞれは、1つ又は複数の主チャネルに面する開口を有する盲陥凹である。任意選択的に、それぞれの盲陥凹の開口は、主チャネルの1つだけに面している。任意選択的に、それぞれの盲陥凹の開口は、インクが毛管作用によって陥凹を満たすのを阻止するように構成されている。
【0031】
任意選択的に、支持構造体は、インク導路をインク供給部に接続する入口と、インク導路を廃棄インク出口に接続する出口とを有する。任意選択的に、各それぞれの空洞への開口が、上流側縁部と、下流側縁部とを有し、上流側縁部が、主チャネルの、インク供給部からの最初のプライミングに際し、下流側縁部より先にインクに接触し、上流側縁部が、導路と空洞の内部との間に移行面を有し、その移行面が、インク導路の最初のプライミングに際しインクが毛管作用によって空洞を満たし気体を追い出すのを阻止するように構成されている。
【0032】
任意選択的に、プリントヘッドがページ幅プリントヘッドであり、支持構造体が一方の端部に入口、他方の端部に出口を有して延伸し、主チャネルが、支持構造体に沿って入口と出口との間に長手方向に延在し、インク供給通路が、空洞への開口を備える壁に対向する主チャネルの壁に並んで主チャネルの1つに接続する。
【0033】
任意選択的に、支持構造体は液晶ポリマー(LCP)である。任意選択的に、支持構造体は、2分割LCPモールディングであり、チャネル及び供給通路が一方の部分に形成され、空洞が他方の部分に形成されている。
【0034】
従って、第5の態様において、本発明は、インクジェットプリントヘッドとインク供給部との間にシールされた流体連通を確立する取外し可能な流体カップリングであって、
弁座を形成する固定バルブ部材と、
弁座に封止係合するシールカラーと、
固定バルブ部材に対して固定された一方の環状端部、及びシールカラーに係合して、シールカラーを弁座に封止係合させるように付勢する他方の環状端部を有する弾性スリーブと、
シールカラーに係合してシールカラーを弁座からシール解除させるように、固定バルブ部材に対して移動可能な導路開口と
を備え、
シールカラーを弁座からシール解除するにはスリーブの中間部分が両環状端部に対して外側に変位するように弾性スリーブを圧縮する、取外し可能な流体カップリングを提供する。
【0035】
座屈又は外に向かって褶曲する弾性スリーブでは、カップリングの直径は、残留張力を残してバルブが閉じるように付勢する環状弾性要素を使用する従来のカップリングより小さい。より小さな外径によって、様々なインク色全てのカップリングを、より小さくよりコンパクトなインターフェース内に配置することができる。
【0036】
任意選択的に、弾性スリーブの中間部分は、スリーブが軸方向に圧縮されると外向きに広がる環状の折目である。任意選択的に、弾性スリーブは、導路開口が引き抜かれると、復元力をシールカラーに加え、軸長が増加すると復元力が増加し、それにより、シールカラーが弁座に当たってシールするとき、最大復元力がシールカラーに掛かる。任意選択的に、弾性スリーブは、シールカラーの内径に連結する。任意選択的に、弾性スリーブの両方の環状端部は、実質的に同じ大きさである。
【0037】
任意選択的に、シールカラーは、導路開口がシールカラーに係合する場所に弾性材を有し、その結果、その係合に際し流体密封シールが形成される。任意選択的に、導路開口とシールカラーとの間の流体密封シールは、シールカラーが弁座からシール解除される前に形成される。
【0038】
任意選択的に、固定バルブ部材は、カップリングが開放されたとき、カップリングを通る流体流路の一部分を形成する中空断面を有する。任意選択的に、固定バルブ部材及び弾性スリーブは、カップリングの下流側にあり、導路開口は上流側にある。任意選択的に、下流側は、交換可能なプリントヘッドを有するカートリッジの一部分であり、上流側は、カートリッジを装着することができるプリンタの一部分である。
【0039】
従って、第6の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のフィルタであって、
フィルタ膜によって上流部分と下流部分に分割された部屋と、
インク供給部と上流部分との流体連通を確立する入口導路と、
下流部分とプリントヘッドとの流体連通を確立する出口導路と
を備え、使用中、
入口導路の少なくとも一部分が、フィルタ膜に対して高くなっているフィルタを提供する。
【0040】
入口導路をフィルタ膜に対して高くすることによって、入口導路が、そうしなければフィルタを詰まらせるであろうバブルを滞留させるバブルトラップとして作用する。これにより、よりコンパクトな全体設計のためにフィルタの大きさを縮小することができる。
【0041】
任意選択的に、部屋は、フィルタ膜の寸法に対応する内部高さ及び幅、並びに、高さ及び幅寸法よりかなり小さな厚さを有する。
【0042】
部屋をこのように構成することによって、全体容積が最小限に保たれ、フィルタ膜がほぼ垂直面内に配置される。部屋内のあらゆるバブルの浮力が、それらバブルを部屋の上端に近寄らせ、場合によっては入口導路に戻らせる。これにより、バブルがフィルタ膜の上流面に留まり難くなる。
【0043】
任意選択的に、出口導路は、下流部分にその中で使用中高さが最低の箇所で接続する。もしバブルがフィルタを詰まらせ始めても、バブルが部屋の最下領域を詰まらせるのは最後である。任意選択的に、フィルタ膜は矩形であり、入口は、上流部分に一方の隅で接続し、出口導路は、対角線上反対側の隅に接続する。
【0044】
任意選択的に、下流部分は、フィルタ膜が下流部分の対向する壁からの間隔を維持できるように、フィルタ膜が押し付けられる支持構造を有する。任意選択的に、その対向する壁は又、同様なフィルタ部材を格納する同様な部屋の上流部分を部分的に画成する壁であり、それにより、複数のフィルタが並んで構成されている。
【0045】
任意選択的に、フィルタは、定期的に交換するようになされたインクジェットプリンタの構成要素に装着される。
【0046】
任意選択的に、フィルタは、ページ幅プリントヘッドを有するカートリッジに装着される。任意選択的に、カートリッジは、インク供給部に接続する取外し可能なインクカップリングをフィルタの上流に有する。
【0047】
従って、第7の態様において、本発明は、交換可能なカートリッジをプリンタ内に取り付ける際にインクジェットプリンタとカートリッジとの間に流体連通を確立するインクカップリングであって、
カップリングのカートリッジ側のカートリッジバルブと、
カップリングのプリンタ側のプリンタ導路であり、カートリッジバルブとプリンタ導路とが、係合したときカップリングシールを形成するように構成された相補的構造を有する、プリンタ導路と
を備え、
カートリッジバルブが、閉じるように付勢され、プリンタ導路に係合させられると開くように構成され、
係合解除に際し、カップリングシールが、カートリッジバルブが閉じた後に解除され、インクメニスカスが、相補的構造が分離するときそれらから形成されて後退し、カートリッジバルブが、メニスカスがカートリッジバルブからきれいに離れプリンタ導路面のみに留まるように構成された表面を有する、インクカップリングを提供する。
【0048】
本発明では、インクメニスカスの既知の後退接触角を考慮して外面を注意深く設計することによって、カートリッジバルブの外側にインクが残留しないように保つ。カップリングシールが解除され、メニスカスが形成されると、インクの特性及びそれぞれのバルブ材質の親水性が、どこでメニスカスが移動を止め、その結果留まるかを決定する。インクの特性を知れば、係合の方向、バルブの材質、及び外側のデザインによって、メニスカスをプリンタ導路のみに留めることができる。
【0049】
任意選択的に、カートリッジバルブの外面の少なくとも1つは、プリンタ導路の外面の少なくとも1つより親水性が低い。任意選択的に、カートリッジは、垂直方向下方へ移動することによってプリンタに係合し、垂直方向上方へ移動することによって係合解除される。任意選択的に、係合に際し、カップリングシールが形成された後に、カートリッジバルブ及びプリンタバルブが開く。任意選択的に、カートリッジバルブは、弁座を形成する固定バルブ部材、及び弁座に封止係合するシールカラーと、固定バルブ部材に対して固定された一方の環状端部、及びシールカラーに係合して、シールカラーを弁座に封止係合させるように付勢する他方の環状端部を有する弾性スリーブとを有し、
プリンタ導路は導路開口を有し、
導路開口の軸方向端部、及びシールカラーは、プリンタ導路、及びカートリッジバルブそれぞれに相補的構造を形成する。
【0050】
任意選択的に、導路開口は、シールカラーに当たってシールした後に、カートリッジバルブを開く。任意選択的に、弾性スリーブとシールカラーは一体に形成されている。任意選択的に、弾性スリーブ及びシールカラーはシリコーンである。任意選択的に、固定バルブ部材は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)から形成される。任意選択的に、導路開口は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)から形成される。
【0051】
任意選択的に、カートリッジは、ページ幅プリントヘッドを有し、プリンタは、カップリングを介してプリントヘッドに供給するインク貯槽を有する。
【0052】
従って、第8の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリントヘッドICをプリンタ内に装着するための支持構造体であり、支持構造体がノズル配列にインクを供給するインク導路を有し、インク導路が、インク流を部分的に塞ぐ堰構造を有する、支持構造体と
を備え、
プリントヘッドをプライミングするとき、堰構造が、インク導路の上流部分を優先的にプライミングさせる、プリントヘッドを提供する。
【0053】
十分にプライミングされない傾向のある領域の下流に堰を使用することによって、それらの領域をより素早く、又は下流部分に優先してプライミングさせることができる。下流部分が、堰によってたとえ遅くなっても、確実にプライミングされるものである限り、上流部分を優先的にプライミングすることに不都合はない。
【0054】
任意選択的に、堰構造は、前進するインク流のメニスカスの繋止点を形成するように構成された上端外形を有する。任意選択的に、上流部分は、その最上面に、プリントヘッドがプライミングされた後、空気溜りを保持するようになされた空洞を有する。任意選択的に、空洞は、上流部分の最上面に画成された開口を有し、各開口の上流側縁部は湾曲し、下流側縁部は比較的角張っており、その結果、上流方向から流れて来るインクは、毛管作用によって空洞に引き込まれない。任意選択的に、堰は、前進するインク流のメニスカスを一時的に繋止し、空洞の1つに関して開口の比較的角張った縁部に接触しないようにインク流の方向を変えるべく配置される。任意選択的に、プリントヘッドは、利用者が取り外し交換するように構成されたカートリッジである。任意選択的に、カートリッジは、装着時にはプライミングされておらず、その後、プリンタ内のポンプによってプライミングされる。
【0055】
従って、第9の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリンタ内にプリントヘッドICを装着するための支持構造体であり、ノズル配列にインクを供給するインク導路を有し、インク導路が、インクの前進するメニスカスの一部分を留めて、そうしなければ取るであろう経路から前進するメニスカスを逸れさせるメニスカス繋止機構を有する、支持構造体と
を備えるプリントヘッドを提供する。
【0056】
プリントヘッドが、1つ又は複数の箇所にメニスカスが留まるために必ず正しくプライミングされ損なう場合、前進するメニスカスがこれら致命的な箇所に接触しないように前進するメニスカスを導くことができる。問題領域の直ぐ上流でインク導路に不連続機構を意図的に組み込むことによって、メニスカスを一時的に留め、それを斜めにして導路の片側に向け、望ましくない繋留点から逸れさせることができる。流れが側枝又は望ましくない繋留点の下流に入り始めたら、繋止機構がそれ以上インクメニスカスを保持する必要はなくなり、プライミングを続けることができる。
【0057】
任意選択的に、メニスカス繋止機構は、インク導路内への急な突出部である。任意選択的に、メニスカス繋止機構はインク流を部分的に塞ぐ堰構造であり、プリントヘッドをプライミングするとき、堰構造が、インク導路の上流部分を優先的にプライミングさせる。
【0058】
任意選択的に、上流部分は、その最上面に、プリントヘッドがプライミングされた後、空気溜りを保持するようになされた空洞を有する。任意選択的に、空洞は、上流部分の最上面に画成された開口を有し、各開口の上流側縁部は湾曲し、下流側縁部は比較的角張っており、その結果、上流方向から流れて来るインクは、毛管作用によって空洞に引き込まれない。任意選択的に、堰は、前進するインク流のメニスカスを一時的に繋止し、空洞の1つに関して開口の比較的角張った縁部に接触しないようにインク流の方向を変えるべく配置される。任意選択的に、プリントヘッドは、利用者が取り外し交換するように構成されたカートリッジである。任意選択的に、カートリッジは、装着時にはプライミングされておらず、その後、プリンタ内のポンプによってプライミングされる。
【0059】
従って、第10の態様において、本発明は、印刷データを受け取りそれをプリントヘッドへ送り出すためのプリントエンジン制御部を有するインクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッドICと、
プリンタ内で紙の経路に隣接してプリントヘッドICを装着するための支持構造体であり、プリントヘッドICが、使用時に紙の経路に面する支持構造体の面に装着された支持構造体と、
プリントヘッドIC上のノズル配列を作動させる駆動回路を有する可撓プリント回路基板(可撓PCB)であり、駆動回路が、可撓PCB中のトレースによって接続される回路構成要素を有し、可撓PCBが又、プリントエンジン制御部から印刷データを受け取る接点を有し、接点位置での可撓PCBが、紙の経路に面していない面上で支持構造体に装着され、その結果、可撓PCBが、プリントヘッドICと接点との間の湾曲部分を通って延在する、可撓プリント回路基板(可撓PCB)と
を備え、
プリントヘッドICと回路構成要素とは互いに隣接し、それらが、可撓PCBの湾曲部分によって接点から離されている、プリントヘッドを提供する。
【0060】
任意選択的に、支持構造体は、可撓PCBの湾曲部分を支持する湾曲面を有する。湾曲面は、可撓PCBに湾曲部分で不規則な曲面をたどらせることによってトレース上に局部的高応力点を生じさせる危険を冒すことなく、定められた半径で可撓PCBを保持することによって、トレースが割れる可能性を低減させる。
【0061】
任意選択的に、可撓PCBは、回路構成要素位置で支持構造体に繋止されている。任意選択的に、回路構成要素は、プリントヘッドIC上のノズルの発射シーケンス中に放電するコンデンサを備える。任意選択的に、支持構造体は液晶ポリマー(LCP)モールディングである。LCPは、その熱膨張係数(CTE)が、プリントヘッドICのシリコーン基板の熱膨張係数とほぼ同じになるようにモールドすることができる。
【0062】
任意選択的に、LCPモールディングは、インクをプリントヘッドICに供給するインク導路を有する。任意選択的に、インク導路は、LCPモールディングの、プリントヘッドICが装着されている面にある出口に通じる。
【0063】
任意選択的に、プリントヘッドはページ幅プリントヘッドである。任意選択的に、支持構造体が、接点とは反対側に配置されたカートリッジ担持部分を有し、力伝達部材が接点からカートリッジ担持部分まで延在し、それにより、プリンタ内に装着されたとき、プリンタの相補的接点からの圧力が、力伝達部材を介してカートリッジ担持部分に直接伝達される。任意選択的に、担持部分は、プリンタの相補的構造に係合する位置決め構造を備える。任意選択的に、位置決め構造は、丸い先端を有する隆起機構であり、隆起機構がプリンタに係合すれば、カートリッジは回転して所定位置に納まることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明によるプリンタの実施形態の前面及び側面透視図である。
【図2】前面が開いた状態の図1のプリンタの図である。
【図3】プリントヘッドカートリッジが取り外された図2のプリンタを示す図である。
【図4】外側ハウジングが取り外された図3のプリンタを示す図である。
【図5】外側ハウジングが取り外され、プリントヘッドカートリッジが装着された図3のプリンタを示す図である。
【図6】プリンタの流体システムの概略図である。
【図7】プリントヘッドカートリッジの上面及び前面透視図である。
【図8】保護カバーに入ったプリントヘッドカートリッジの上面及び前面透視図である。
【図9】保護カバーから取り外されたプリントヘッドカートリッジの上面及び前面透視図である。
【図10】プリントヘッドカートリッジの下面及び前面透視図である。
【図11】プリントヘッドカートリッジの下面及び背面透視図である。
【図12】プリントヘッドカートリッジの全ての面の図である。
【図13】プリントヘッドカートリッジの分解組立透視図である。
【図14】プリントヘッドカートリッジのインク入口カップリングを通る横断面図である。
【図15】インク入口及びフィルタアセンブリの分解組立透視図である。
【図16】プリンタバルブに係合したカートリッジバルブの断面図である。
【図17】LCPモールディング及び可撓PCBの透視図である。
【図18】図17に示される部分Aの拡大図である。
【図19】LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの分解組立下面透視図である。
【図20】LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの分解組立上面透視図である。
【図21】LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの下面の拡大図である。
【図22】プリントヘッドIC及び可撓PCBを取り外した状態での図21の拡大図である。
【図23】プリントヘッドIC取付フィルムを取り外した状態での図22の拡大図である。
【図24】LCPチャネルモールディングを取り外した状態での図23の拡大図である。
【図25】背面チャネル及びノズルを有するプリントヘッドICをインク供給通路上に重ね合わせて示す図である。
【図26】LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの拡大横断面透視図である。
【図27】LCPチャネルモールディングの平面図である。
【図28A】堰が無い状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図28B】堰が無い状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図29A】堰を有する状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図29B】堰を有する状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図29C】堰を有する状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図30】接点力及び反力の位置を伴う、LCPモールディングの拡大横断面透視図である。
【図31】IC取付フィルムのリールの図である。
【図32】ライナ間のIC取付フィルムの断面図である。
【図33】取付フィルムの積層構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の実施形態が、添付図面を参照して、単に例として以下に説明される。
【0066】
概要
図1は本発明を実施したプリンタ2を示す。プリンタの本体4は、背面に媒体供給トレイ14と、前面に枢動面6とを支持する。図1は、表示スクリーン8がその直立可視位置に来るように枢動面6が閉じている。作業者がスクリーンを見ながら入力するのに好都合なように、制御ボタン10がスクリーン8の側端から延出している。印刷に際し、供給トレイ14中の媒体の束12からシート1枚だけが引き出され、プリントヘッド(プリンタ内に隠れている)を通して送り込まれる。印刷済シート16は、印刷済媒体出口スロット18を通って排出される。
【0067】
図2は、枢動前面6を開いて、プリンタ2の内部を見せたところを示す。プリンタの前面を開くと、内部に装着されたプリントヘッドカートリッジ96が露出される。プリントヘッドカートリッジ96は、プリントヘッドカートリッジ96を押し下げて、インクカップリング(後述)が十分に係合され、プリントヘッドIC(後述)が用紙供給経路に隣接して正確に配置されることを保証するカートリッジ係合カム20によって、定位置に固定される。カム20は、解放レバー24によって手動で操作される。解放レバー24が押し下げられてカムに十分に係合するまで、前面6は閉じることなく、従ってプリンタは作動しない。枢動面6を閉じると、プリンタ接点22がカートリッジ接点104と係合する。
【0068】
図3は、枢動面6が開かれ、プリントヘッドカートリッジ96が取り外されたプリンタ2を示す。枢動面6が前方に倒された状態で、利用者が、カートリッジ解放レバー24を引き上げて、カム20を係合解除する。これにより、カートリッジ96のハンドル26を把持し引き上げることができる。上流インクカップリング112A及び下流インクカップリング112Bがプリンタ導路142から係合解除される。このことを、より詳細に以下に説明する。新しいカートリッジを装着するには、手順が逆になる。新品のカートリッジは、未プライミング状態で出荷、販売される。従って、プリンタに印刷の準備をさせるために、能動的流体システム(下記)が、カートリッジ及びプリントヘッドをインクでプライミングするために下流のポンプを使用する。
【0069】
図4では、プリンタ2の外側ケーシングが、内部を見せるために取り外されている。大きなインクタンク60が、4つの異なるインク全てに対して別々の貯槽を有する。インクタンク60はそれ自体が、シャットオフバルブ66(図6参照)の上流でプリンタに結合する交換可能なカートリッジである。又、カートリッジ96からポンプ62によって引き抜かれたインクのための廃液槽92がある。プリンタ流体システムが、図6を参照して詳細に説明される。簡単には、タンク60からのインクが、上流インクライン84を通ってシャットオフバルブ66へ、そしてプリンタ導路142に向かって流れる。図5に示すように、カートリッジ96が装着されると、ポンプ62(モータ196によって駆動される)が、インクをLCPモールディング64(図6及び17〜20参照)に引き込み、それにより、プリントヘッドIC68(やはり、図6及び17〜20参照)を毛管作用によってプライミングすることができる。ポンプ62によって吸引された余分なインクは、インクタンク60と共に収納されている廃液槽92へ送り込まれる。
【0070】
カートリッジ接点104とプリンタ接点22との間の総コネクタ力は、用いられる接点の数のために比較的大きい。図示の実施形態では、総接点力は45ニュートンである。この荷重は、カートリッジを撓ませ変形させるのに十分である。図30に簡単に触れると、シャシモールディング100の内部構造が示されている。図3に示される担持面28が、図30に概略的に示されている。カートリッジ接点104へのプリンタ接点の圧縮荷重が、矢印で表されている。担持面28での反力が、同様に矢印で表されている。カートリッジ96の構造的健全性を維持するために、シャシモールディング100は、コネクタ力の面内に延在する構造部材30を有する。コネクタ力の面内に作用する反力を維持するために、シャシは、又、担持面28に押し付けられる接触リブ32を有する。これにより構造部材30への荷重が完全に圧縮に保たれることによって、カートリッジの剛性が最大になり、撓みが最小限に抑えられる。
【0071】
プリントエンジンパイプライン
プリントエンジンパイプラインは、外部供給源から受け取り、印刷するためにプリントヘッドに出力する印刷データをプリンタが処理する機構を意味する。プリントエンジンパイプラインは、前述した特許文献1に詳細に記載されており、同文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0072】
流体システム
従来、プリンタは、流体上の問題を回避するのに、プリントヘッド、カートリッジ、及びインクライン内部の構造及び構成要素に依存してきた。幾つかの共通の流体上の問題は、プライミング解除又は枯渇ノズル、気体放出バブルアーティファクト、及び相互汚染による色の混交である。これらの問題を回避するためにプリンタ構成要素の設計を最適化することは、流体を制御する受動的手法である。通常、これらの問題を修正するために用いられる唯一の能動的構成要素は、ノズルアクチュエータ自体である。しかし、これでは不十分なことが多く、及び/又は問題を修正しようとするのに大量のインクを消耗する。ページ幅プリントヘッドでは、プリントヘッドICに供給するインク導路が長く複雑なために、問題が悪化する。
【0073】
本出願人は、プリンタ用の能動的流体システムを開発することによってこれに対処した。幾つかのそのようなシステムが、米国特許出願第11/677049号(出願人整理番号SBF006US)明細書に詳細に記載されており、同明細書の内容は、参照によって本明細書に組み込まれるものとする。図6は、本明細書に記載されたプリントヘッドと共に用いるのに適した能動的流体システムの単一ポンプ実装形態の1つを示す。
【0074】
図6に示される流体機構は、単色のみのための単一インクラインである。カラープリンタは、各インク色に対して、独立したライン(及び当然独立したインクタンク60)を有する。図6に示されるように、この機構は、LCPモールディング64の下流に単一のポンプ62と、LCPモールディングの上流にシャットオフバルブ66とを有する。LCPモールディングは、粘着IC取付フィルム174(図26参照)を介してプリントヘッドIC68を支持している。シャットオフバルブ66は、プリンタの電源が切断されるとすぐに、インクタンク60内のインクをプリントヘッドIC68から遮断する。これにより、プリントヘッドIC68での色の混交が、非作動時間中にインクタンク60に到達するのが防止される。これらの事項が、相互参照明細書米国特許出願第11/677049号(出願人整理番号SBF006US)により詳細に説明されている。
【0075】
インクタンク60は、ノズルでのインクに比較的一定の負の静水圧を維持するために、通気バブル点圧力レギュレータ72を有する。インク貯槽内のバブル点圧力レギュレータは、同時係属の米国特許出願第11/640355号(出願人整理番号RMC007US)明細書に包括的に記載されており、同明細書は参照により本明細書に組み込まれる。しかしながらこの説明のために、レギュレータ72が、タンク60内のインク中に沈められ、空気入口78まで延在する気密導路76を介して大気に通気するバブル出口74として示されている。プリントヘッドIC68がインクを消費するにつれて、バブル出口74での差圧がタンクに空気を吸い込むまで、タンク60内の圧力が下がる。この空気が、インク中に、タンクの上部空間へ上昇するバブルを形成する。この差圧がバブル点圧力であり、バブル出口74の直径(又は最小寸法)と、空気の進入に抵抗する、出口のインクメニスカスのラプラス圧力とに依存する。
【0076】
バブル点レギュレータは、沈められたバブル出口74にバブルを発生させるのに必要なバブル点圧力を使用して、出口での静水圧を実質的に一定に保持する(膨らむ空気のメニスカスがバブルを形成し、インクタンクの上部空間へ上昇するとき僅かな変動がある)。出口での静水圧がバブル点であれば、タンクからどれだけの量のインクが消費されたかに拘わらず、インクタンク内の静水圧プロフィールも知ることができる。インクタンク内のインクの表面の圧力は、インクのレベルが出口に向かって降下するにつれて、バブル点圧力に向かって低下する。当然、出口74が露出した後は、上部空間は大気に通気し、負圧は消失する。インクレベルがバブル出口74に達する前に、インクタンクを再充填し、又は交換(インクタンクがカートリッジである場合)しなければならない。
【0077】
インクタンク60は、再充填することができる固定式貯槽、交換可能なカートリッジ、又は(参照によって組み込まれるRRC001US明細書に開示されるように)再充填可能なカートリッジであり得る。粒子の詰まりを防止するために、インクタンク60の出口80は粗いフィルタ82を有する。システムは、又、プリントヘッドカートリッジへのカップリング位置に細かいフィルタも使用している。フィルタは寿命が有限なので、インクカートリッジ又はプリントヘッドカートリッジを単に交換することによって古いフィルタが交換されると、利用者にとって特に好都合である。フィルタが独立した消耗品である場合は、定期交換は利用者の注意に頼ることになる。
【0078】
バブル出口74がバブル点圧力であり、シャットオフバルブ66が開いているとき、ノズルでの静水圧も又一定で大気圧より低い。しかし、シャットオフバルブ66が、或る時間閉じていた場合、ノズルでの圧力を変化させる気体放出バルブがLCPモールディング64又はプリントヘッドIC68内に生じ得る。同様に、昼夜の温度変化によるバブルの膨張及び収縮が、シャットオフバルブ66の下流のインクライン84内の圧力を変化させ得る。同様に、インクタンク内の圧力が、非稼動時間中、溶解ガスが溶液から出てくるので変化し得る。
【0079】
LCP64からポンプ62へ向かう下流インクライン86は、ポンプ用の電子制御部90に接続されたインクセンサ88を備え得る。センサ88は、下流インクライン86内のインクの有無を感知する。或いは、システムはセンサ88を省くことができ、ポンプが、様々な作動状態のそれぞれに対して適切な時間だけ働くように、ポンプ62を構成することができる。これは、インクの消耗が増加するので、運用コストに不利に影響する。
【0080】
ポンプ62は、廃液槽92中に吐出する(前方方向に給送した場合)。廃液槽92は、プリントヘッドIC68よりも低くなるように、プリンタ内に物理的に配置されている。これにより、下流インクライン86内のインク柱を待機時間中LCP64から「吊下」させることが可能になり、それによって、プリントヘッドIC68位置で負の静水圧を生成する。ノズル位置での負圧が、インクのメニスカスを内側に引き込み、色の混交を阻止する。当然、LCP64と廃液槽92内のインク出口との間に流体連通をもたらすために、蠕動ポンプ62を開状態で停止させる必要がある。
【0081】
非稼動時間中に、異なる色のインクライン間に差圧が生じ得る。更に、ノズルプレート上の紙埃や他の粒子が、或るノズルから別のノズルへインクを渡し得る。各インクライン間の僅かな圧力の差によって付勢されて、プリンタの非稼動中に色の混交が生じ得る。シャットオフバルブ66が、インクタンク60をプリントヘッドIC68のノズルから遮断して、色の混交がインクタンク60まで至るのを防止する。インクタンク内のインクが異なる色で汚染されると、そのインクは元に戻らず、交換する必要がある。
【0082】
キャッパ94は、待機時間中ノズルをシールしてプリントヘッドIC68の乾燥を回避すると共に、ノズルプレートを紙埃や他の粒子から保護するプリントヘッド保全器である。キャッパ94は、又、ノズルプレートを払拭して、乾いたインクや他の汚れを取り除くように構成されている。プリントヘッドIC68の乾燥は、通常は水であるインク溶剤が蒸発し、インクの粘度を増加させると生じる。インクの粘度が高過ぎると、インク吐出アクチュエータがインク液滴の吐出に失敗する。キャッパのシールに不備があると、電源切断又は待機時間後にプリンタを再起動したとき、乾燥したノズルが問題になり得る。
【0083】
上記に概説した問題は、プリンタの運用寿命を通して珍しいことではなく、図6に示された比較的簡単な流体機構によって効果的に修正することができる。その機構は、利用者が、最初にプリンタをプライミングし、プリンタを移動する前にプリンタのプライミング解除を行い、又は、簡単なトラブルシューティングプロトコルを用いてプリンタを既知の印刷待機状態に回復することを可能にする。これらの状況の幾つかの例が、上記の米国特許出願第11/677049号(出願人整理番号SBF006US)明細書に詳細に記載されている。
【0084】
プリントヘッドカートリッジ
プリントヘッドカートリッジ96が、図7〜16に示されている。図7は、カートリッジ96をその組立完成形態で示す。カートリッジの大部分は、カートリッジシャシ100及びシャシ蓋102内に納められている。シャシ100の窓が、プリンタのプリントエンジン制御部からデータを受け取るカートリッジ接点104を露出する。
【0085】
図8及び9は、カートリッジ96をそのスナップ式防護カバー98と共に示す。防護カバー98は、電気接点104及びプリントヘッドIC68での接触損傷を防止する(図10参照)。利用者は、プリンタに装着する直前に、カートリッジ96の上端を保持し、防護カバー98を取り外すことができる。
【0086】
図10は、プリントヘッドカートリッジ96の下面及び「背面」(給紙方向に対して)を示す。プリントヘッド接点104は、可撓プリント回路基板108上の導電性パッドであり、その基板は、湾曲支持面(後にLCPモールディングに関する記述中で説明する)の周りに、プリントヘッドIC68の一方の側にあるワイヤボンド110の列まで巻かれている。プリントヘッドIC68の他方の側には、媒体素地に直接接触するのを防止するペーパシールド106がある。
【0087】
図11は、プリントヘッドカートリッジ96の下面及び「前面」を示す。カートリッジの前面は、両端に2つのインクカップリング112A及び112Bを有する。各インクカップリングは、4つのカートリッジバルブ114を有する。カートリッジがプリンタに装着されると、インクカップリング112A及び112Bは、相補的インク供給インターフェース(以下により詳細に説明する)に係合する。インク供給インターフェースは、カートリッジバルブ114に係合しそれらを開くプリンタ導路142を有する。インクカップリングの一方112Aは上流インクカップリングであり、他方は下流カップリング112Bである。上流カップリング112Aは、プリントヘッドIC68とインク供給部60(図6参照)との間の流体連通を確立し、下流カップリング112Bは、廃液槽92(やはり図6参照)に接続する。
【0088】
プリントヘッドカートリッジ96を様々な面から見た図が、図12に示されている。カートリッジ96の平面図は又、図14、26、28及び29に示される断面図の位置も示す。
【0089】
図13は、カートリッジ96の分解組立透視図である。LCPモールディング64は、カートリッジシャシ100の下側に取り付けられる。更に、可撓PCB108が、LCPモールディング64の下側に取り付けられ、一方の側面を巻いてプリントヘッド接点104を露出する。入口マニホルド及びフィルタ116及び出口マニホルド118が、シャシ100の上部に取り付けられる。入口マニホルド及びフィルタ116は、エラストマーコネクタ120を介してLCP入口122に接続されている。同様に、LCP出口124は、別の組のエラストマーコネクタ120を介して出口マニホルド118に接続されている。シャシ蓋102が、シャシ100内の入口及び出口マニホルドを上部から覆い、取外し可能な防護カバー98が、底部を覆ってスナップ止めされ、それにより、接点104及びプリントヘッドIC(図11参照)を防護する。
【0090】
入口及びフィルタマニホルド
図14は、図12の14−14に沿った拡大断面図である。この図は、上流カップリング112Aのカートリッジバルブ114の1つを通りLCPモールディング64へ向かう流路を示す。カートリッジバルブ114は、付勢されて固定バルブ部材128と封止係合するエラストマースリーブ126を有する。カートリッジバルブ114は、プリンタ導路142(図16参照)によって、エラストマースリーブ126をそれが固定バルブ部材128から離れるように圧縮することにより開かれ(図16参照)、インクが、入口及びフィルタマニホルド116の上部に沿う天井チャネル138まで流れ上るのを可能にする。天井チャネル138は、一方の壁をフィルタ膜130によって画定された上流フィルタ室132に通じる。インクは、フィルタ膜130を通過して下流フィルタ室134に入り、LCP入口122へ出て行く。そこから、濾過されたインクは、LCP主チャネル136に沿って流れ、プリントヘッドIC(図示せず)に送り込まれる。
【0091】
次いで、入口及びフィルタマニホルド116の詳細な特徴及び利点を、図15を参照して説明する。図15の分解組立透視図が、入口及びフィルタマニホルド116のコンパクトな設計を最も良く示す。そのコンパクトな形態に寄与する幾つかの設計上の態様がある。第1に、カートリッジバルブが互いに近接して離隔配置されている。これは、従来の自己シールインクバルブ構成を採用しないことによって達成される。以前の設計は、やはり、付勢されて固定部材に封止係合するエラストマー部材を使用していた。但し、エラストマー部材は、インクがその周りを流れる中実形状か、又はインクがそれを通って流れる場合にはダイヤフラムの形態かのいずれかであった。
【0092】
カートリッジカップリングでは、装着に際し、カートリッジバルブが自動的に開くと極めて好都合である。これは、一方のバルブが、他方のバルブの剛性部材によって係合されるエラストマー部材を有するカップリングによって、最も容易且つ安価に実現することができる。エラストマー部材が、ダイヤフラム形態である場合には、そのダイヤフラムは、通常は、伸張状態で中央の剛性部材に押し付けられて保持されている。これは、効果的なシールを実現するが、比較的小さな許容誤差を必要とする。一方で、それは又、大きな外周取付部を有するエラストマー要素を必要とする。エラストマーの大きさは、所望のカップリング力と、シールの健全性と、使用されるエラストマーの材料特性との間の兼ね合いである。
【0093】
図16に最も良く示されるように、本発明のカートリッジバルブ114は、残留圧縮の下に固定バルブ部材128に押し付けられてシールするエラストマースリーブ126を使用する。バルブ114は、カートリッジがプリンタに取り付けられ、プリンタバルブ142の導路端部148がスリーブ126を更に圧縮すると開く。カラー146は、固定バルブ部材128とのシールを解除され、それにより、上流インクカップリング112A及び下流インクカップリング112Bを介してLCP64をプリンタ流体システム(図6参照)に繋ぎ込む。スリーブの側壁は、内側に潰れると流れを妨害し得るので、外側に膨れるように構成されている。図16に示されるように、スリーブ126は、座屈の進行を促進し誘導する相対的に弱い線をその中間部分を廻って有する。これにより、カートリッジをプリンタに係合させるのに必要な力が低減され、スリーブが確実に外側に座屈するようになる。
【0094】
カップリングは、カートリッジをプリンタから「無滴下状態」で係合解除できるように構成されている。カートリッジがプリンタから引き上げられると、エラストマースリーブ126は、カラー146を固定バルブ部材128に押し付けてシールする。スリーブ126がバルブ部材128に押し付けられてシールを行った(それによってカップリングのカートリッジ側がシールされる)後は、シールカラー146はカートリッジと一体に持ち上がる。これにより、カラー146が導路端部148とのシールから解除される。シールが解かれると、カラーと導路端部148との間の空隙を渡って、インクメニスカスが形成される。固定バルブ部材128の端部の形状が、メニスカスを導いて、一点に固定せずに、固定バルブ部材の底面の中央に向かって移動させる。固定バルブ部材128の丸みを帯びた底面の中央で、メニスカスは、その時には殆ど水平になった底面から引き離される。最小可能エネルギー状態を実現するために、表面張力が、メニスカスを固定バルブ部材128から分離させる。メニスカス表面積の最小値への付勢力が強く、従って、分離は、インクをカートリッジバルブ114に殆ど残留させずに達成される。インクが残ったとしても、カートリッジを廃棄する前に滴下し汚れを作り得るに十分な液滴にはならない。
【0095】
新しいカートリッジがプリンタに装着されたとき、導路150内の空気は、インク流152に取り込まれカートリッジによって吸入される。この点で、入口マニホルド及びフィルタアセンブリは、高いバブル許容度を有する。図15に戻ると、インクは、固定バルブ部材128の上部を通って天井チャネル138に流れ込む。入口マニホルド116の最も高くなった箇所として、天井チャネルは、バブルを捕捉することができる。しかし、バブルはそれでもフィルタ入口158に流れ込み得る。この場合、フィルタアセンブリ自体にバブル耐性がある。
【0096】
フィルタ部材130の上流側のバブルは、流量に影響し得る。即ち、それらバブルは、フィルタ膜130の汚れ側の濡れ表面積を事実上減少させる。フィルタ膜は長い矩形を有し、従って、例えかなりの数のバブルがフィルタの汚れ側に引き込まれたとしても、必要流量のインクを濾過するのに十分大きな濡れ表面積が残る。これは、本発明によって提供される高速作動にとって極めて重要である。
【0097】
上流フィルタ室132内のバブルはフィルタ膜130を通り抜けることができないが、ガス放出によるバブルが、下流フィルタ室134内にバブルを発生させ得る。フィルタ出口156が、下流フィルタ室134の底部で上流室132の入口158とは対角線上反対側に配置され、それにより、それぞれの室内のバブルの流量への影響を最低限に抑える。
【0098】
各色のフィルタ130が、直立して近接して並んで重ねられている。隔壁162は、一方の側の上流フィルタ室132を部分的に画定し、他方の側の隣接する色の下流室134を部分的に画定する。フィルタ室はとても薄い(コンパクト設計のため)ので、フィルタ膜130は、下流フィルタ室134の反対側の壁に押し付けられ得る。これにより、フィルタ膜130の表面積が実効的に減少させられる。従って、それは最大流量に対して有害である。これを防止するために、下流室134の反対側の壁は、一連のスペーサリブ160を有し、それにより、膜130を壁から離しておく。
【0099】
又、フィルタ入口と出口を対角線上で反対の隅に配置すると、システムを最初にプライミングする際にシステムから空気を追い出すのを補助する。
【0100】
プリントヘッドが粒子で汚染される危険性を低下させるために、フィルタ膜130を第1の隔壁の下流側に溶接した後に、次の隔壁162を第1の隔壁に溶接する。このようにすると、溶接工程中に欠損するフィルタ膜130の細片があっても、フィルタ130の「汚れ」側に残る。
【0101】
LCPモールディング/可撓PCB/プリントヘッドIC
LCPモールディング64、可撓PCB108、及びプリントヘッドIC68のアセンブリが、図17〜33に示されている。図17は、可撓PCB及びプリントヘッドIC68が取り付けられたLCPモールディング64の下側の透視図である。LCPモールディング64は、皿穴166及び168を介してカートリッジシャシ100に固定されている。穴168は、熱膨張係数(CTE)のいかなるミスマッチもLCPを湾曲させることなく許容する長穴である。プリントヘッドIC68は、LCPモールディング64の長手方向全長に亘る直線の端から端まで配置されている。可撓PCB108は、一方の縁部でプリントヘッドIC68にワイヤボンドされている。可撓PCB108は又、プリントヘッドIC縁部並びにカートリッジ接点104縁部でLCPモールディングに固定されている。可撓PCBを両縁部で固定することによって、可撓PCBが湾曲支持面170(図19参照)に強固に保持される。これにより、可撓PCBが、規定の最小値よりきつい半径まで曲げられないことを保証し、それによって、可撓PCBを通る導電路が破損する危険性を低下させる。
【0102】
図18は、図17に示される部分Aの拡大図である。この図は、可撓PCB108の側端に沿ったワイヤボンディング接点164の列、及びプリントヘッドIC68の列を示す。
【0103】
図19は、LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの、各構成要素の下側を示す組立分解透視図である。図20は、別の分解組立透視図であり、今度は諸構成要素の上側を示す。LCPモールディング64は、その下面に密着するLCPチャネルモールディング176を有する。プリントヘッドIC68はチャネルモールディング176の下面に粘着IC取付フィルム174によって装着される。LCPチャネルモールディング176の上面にはLCP主チャネル184が来る。これらチャネルは、LCPモールディング64にあるインク入口122及びインク出口124に開放されている。LCP主チャネル184の底部には、プリントヘッドIC68に通じる一連のインク供給通路182がある。粘着IC取付フィルム174は、一連のレーザ穿孔供給孔186を有し、それにより、各プリントヘッドIC68の取付面は、インク供給通路182と流体連通状態になる。粘着IC取付フィルムの特徴が、図31〜33を参照して以下に詳細に説明される。
【0104】
LCPモールディング64は、可撓PCB108の駆動回路中の電子構成要素180を受け入れる陥凹178を有する。最適な電気効率及び作動のために、PCB108のカートリッジ接点104は、プリントヘッドIC68に近接するべきである。しかし、プリントヘッドに隣接する紙の経路を、湾曲させたり或る角度で曲げたりせずに真直ぐにするためには、カートリッジ接点104はカートリッジ96の側面に置く必要がある。可撓PCBの導電路はトレースとして知られている。可撓PCBは角部を周って湾曲しなければならないので、トレースが割れ、接続を損ない得る。これに対処するために、湾曲部に先立ってトレースを二叉に分岐させ、次いで湾曲部を過ぎて再結合してもよい。二叉部分の一方の分枝部分が割れた場合、他方の分枝が接続を維持する。不都合なことには、トレースを2つに分け、次いでそれを再び一体に結合すると、回路中にノイズを発生させる電磁干渉問題を起こさせ得る。
【0105】
トレースをより幅広くするのは、幅の広いトレースの方が有意に亀裂耐性が高い訳ではないので、効果的な解法ではない。一旦トレース中に亀裂が始まると、その亀裂は比較的速く簡単に幅全体に亘って伝播する。湾曲半径を注意深く制御することが、可撓PCBの湾曲部を横切るトレースの数を最小限に抑えることと同様に、トレースの亀裂を最小限に抑えるのにより効果的である。
【0106】
ページ幅プリントヘッドは、比較的短時間に発射しなければならない大規模なノズル配列のために、更に複雑になる。多数のノズルを一斉に発射すると、システムに大きな電流負荷が掛かる。これが、回路に高レベルのインダクタンスを発生させ得、それにより、作動に有害な一時的電圧降下が生じ得る。これを避けるために、可撓PCBは、ノズルの発射シーケンスに際して放電して回路の他の部分の電流負荷を軽減する一連のコンデンサを有する。プリントヘッドICを通過する真直ぐな紙の経路を確保する必要性から、コンデンサは、従来、可撓PCBのカートリッジ側で接点の近くに取り付けられている。不都合なことに、それらコンデンサは、可撓PCBの湾曲部分で亀裂を発生する危険を冒す追加のトレースを生じる。
【0107】
これは、コンデンサ180(図20参照)をプリントヘッドIC68の近くに隣接して取り付けてトレース損傷の可能性を減らすことによって対処される。紙の経路は、コンデンサ及び他の構成要素をLCPモールディング64中に引っ込ませることによって真直ぐのままになる。プリントヘッドIC68の下流のPCB108の比較的平坦な表面、及びカートリッジ96の「最前部」(給紙方向に対して)に装着されているペーパシールド172が、紙詰まりの危険性を最小限に抑える。
【0108】
接点を可撓PCBのその他の構成要素から離すことによって、湾曲部分を通って延在するトレースの数を最小限に抑えることができる。これにより、亀裂発生の可能性が減るので、より高い信頼性がもたらされる。回路構成要素をプリントヘッドICに隣接して配置することは、カートリッジを少し幅広くする必要があることを意味し、これはコンパクトな設計に有害である。しかし、この構成によってもたらされる利点が、少し幅広のカートリッジのいかなる欠点にも勝る。第1に、諸構成要素からの、接点の間及び周りを通るトレースが無いので、接点を大きくすることができる。大きな接点では、接続は、より信頼性が高くなり、カートリッジの接点とプリンタ側の接点との間の製造精度不足により良く対処することができる。これは、この場合に特に重要である。というのは、接点の対合が、利用者が正確にカートリッジを挿入することに懸かっているからである。
【0109】
第2に、プリントヘッドICの側部にワイヤボンドされている可撓PCBの縁部が、残留応力を受けず、湾曲半径から剥離しようとしなくなる。可撓PCBは、コンデンサ及び他の構成要素位置で支持構造体に固定することができ、その結果、プリントヘッドICへのワイヤボンディングが、製造中により容易に形成され、そのワイヤボンディングが可撓PCBを繋止するのに使用されることもないので、より亀裂を発生しにくくなる。
【0110】
第3に、コンデンサがプリントヘッドICのノズルに大幅に近付き、それにより、コンデンサを放電することによって発生する電磁干渉が最小限に抑えられる。
【0111】
図21は、可撓PCB108及びプリントヘッドIC68を示すプリントヘッドカートリッジ96の下面の拡大図である。可撓PCB108のワイヤボンディング接点164が、粘着IC取付フィルム174の下面上のプリントヘッドIC68の接点パッドに平行に並んでいる。図22は、供給孔186を見せるためにプリントヘッドIC68及び可撓PCBを取り除いた状態の図21を示す。それら孔は長手方向に4列に配置されている。各列は、1つの特定の色のインクを吐出し、各列は、各プリントヘッドICの背面のチャネルの1つだけと整列している。
【0112】
図23は、粘着IC取付フィルム174を取り外した状態のLCPチャネルモールディング176の下面を示す。これは、チャネルモールディング176の他方の面に形成されているLCP主チャネル184(図20参照)に接続されているインク供給通路182を露出している。粘着IC取付フィルム174が所定位置に貼着されると、供給通路182を部分的に画定することが理解されよう。取付フィルムは、個々の供給通路182が、フィルム174を貫通してレーザ穿孔された供給孔186と整列しなければならないので、精度良く配置されなければならないことも又理解されよう。
【0113】
図24は、LCPチャネルモールディングを取り外した状態で、LCPモールディングの下面を示す。これは、盲空洞200の配列を露出しており、盲空洞200には、圧力パルスを減衰するために、カートリッジがインクでプライミングされるとき空気が入る。このことを、より詳細に以下に説明する。
【0114】
プリントヘッドIC取付フィルム
図31〜33を簡単に参照して、粘着IC取付フィルムをより詳細に説明する。フィルム174は、レーザ穿孔され、プリントヘッドカートリッジ96に組み込むのに便利なように、リール198に巻き込まれている。取扱い及び貯蔵のために、フィルム174は2枚の防護ライナを両側に有する。一方は、レーザ穿孔以前にフィルムに取り付けられている存続ライナ188である。他方は、穿孔作業の後に追加された交換ライナ192である。図32に示されるフィルム174の切片は、供給孔186を露出するために存続ライナ188の一部が取り除かれている。フィルムの他方の面上の交換ライナ192は、供給孔186がレーザ穿孔された後に追加される。
【0115】
図33は、フィルム174の積層構造を示す。中央の織布190は積層に強度を与える。両側に粘着層194がある。粘着層194はライナで覆われている。レーザ穿孔により、フィルム174の第1の面から延出し、第2の面のライナ188内の或る位置で終端する孔186が形成される。第1の面の有孔ライナは取り外され、交換ライナ192と交換される。細長いフィルムは、次いで、取付けに先立ち、貯蔵及び取扱いのために、リール198に巻き込まれる(図31参照)。プリントヘッドカートリッジを組み立てるとき、適切な長さをリール198から引き出し、ライナを取り外し、孔186が正しいインク供給通路182と位置が合うように(図25参照)LCPモールディング64の下面にフィルムを貼着する。
【0116】
プリントヘッドIC端部へのインク供給の増強
図25は、粘着IC取付フィルム174を貫通するインク供給孔186上に重ね合わされたプリントヘッドIC68を示し、インク供給孔186は、LCPチャネルモールディング176の下面のインク供給通路182上に重ね合わされている。隣接するプリントヘッドIC68同士は、LCPチャネルモールディング176の底面上に取付フィルム174を介して端と端とを接して配置されている。隣接するプリントヘッドIC68間の連結部では、一方のIC68が、他のノズル配列220中の対応する列から横方向に変位した列中のノズルからなる「下がり3角形」206部分を有する。これにより、一方のプリントヘッドICによって印刷される端部を、隣接するプリントヘッドICによる印刷と連続的にすることができる。ノズルの下がり3角形206を変位させることによって、隣接するノズルの間隔(媒体供給に対して垂直な方向の)は、両ノズルが同じIC上にあるか、連結部の両側で異なるIC上にあるかに拘わらず、変化することがなくなる。これには、隣接するプリントヘッドIC68の正確な相対配置を必要とし、これを達成するために基準マーク204が用いられる。その工程は時間が掛かり得るが、印刷画像のアーティファクトが回避される。
【0117】
不都合なことには、プリントヘッドIC68の両端のノズルのあるものは、配列220の他の大部分のノズルに比較してインクが不足することがある。例えば、ノズル222は、2つのインク供給孔からインクを供給することができる。インク供給孔224が最も近い。しかし、障害又は孔224の左方のノズルから特に大量の需要がある場合、供給孔226がやはり222位置のノズルに近接しており、従って、これらのノズルがインク不足からプライミング解除される可能性は殆どない。
【0118】
対照的に、プリントヘッドIC68の端部に位置するノズル214は、隣接するIC68間の連結部に配置された「追加の」インク供給孔210が無かったら、インク供給孔216とのみ流体連通する。追加のインク供給孔210を有することは、インク枯渇の危険を冒すほどインク供給孔から遠いノズルが無くなることを意味する。
【0119】
インク供給孔208及び210は、共に共通のインク供給通路212から供給される。インク供給通路212は、供給孔208がその左方にしかノズルを有さず、供給孔210がその右方にしかノズルを有さないので、両方の孔に供給する容量を有する。それ故、供給通路212を通る総流量は、1つの孔だけに供給する供給通路とほぼ等しい。
【0120】
図25は、又、インク供給部のチャネル(色)の数、4チャネルと、プリントヘッドIC68の5つのチャネル218との不一致を目立たせている。プリントヘッドIC68の背面の第3及び第4のチャネル218は、同じインク供給孔186から供給される。これら供給孔は、2つのチャネル218に跨るように幾分拡張されている。
【0121】
この理由は、プリントヘッドIC68が、広範囲のプリンタ及びプリントヘッド構成に使用されるように製造されているからである。これらは、5色チャネル、CMYK及びIR(赤外)を有することもあるが、他のプリンタは、この設計のように4チャネルのみのプリンタであり得、又、他のプリンタは、更に3チャネル(CC、MM、及びY)のみであり得る。この点から、唯1つの色チャネルが、プリントヘッドICチャネルの2つに供給されることがある。プリントエンジン制御部(PEC)マイクロプロセッサは、このことをプリントヘッドICに送られる印刷データに容易に含めることができる。更に、ICの2つのノズル列に同じ色を供給することによって、不作動ノズルの補償のために用いることのできる或る程度のノズル冗長性がもたらされる。
【0122】
圧力パルス
プリントヘッドへ流れているインクが突然停止すると、インクの圧力に鋭いスパイクが生じる。これは、印刷作業又は紙面の終了時に起こり得る。本譲受人の高速ページ幅プリントヘッドは、作動中大流量のインク供給を必要とする。従って、ノズルへのインクライン中のインクの質量は比較的大きく、かなりの速度で移動している。
【0123】
印刷作業を急に終了すると、又は単に印刷紙面の終端では、比較的急速に流れているこの比較的大量のインクを即時に停止させる必要が生じる。しかし、インクの運動量を突然拘束すると、インクライン中に衝撃波を引き起こす。LCPモールディング64(図19参照)は特に剛性が高く、ライン中のインク柱が停止させられても殆ど撓まない。インクラインが追従しないことによって、衝撃波がラプラス圧力(ノズル開口でのインクの表面張力によって形成され、インクをノズルチャンバ内に保持する圧力)を超え、プリントヘッドIC68の前面を溢れさせ得る。ノズルが溢れた場合、インクが吐出せず、印刷にアーティファクトが現れることがある。
【0124】
ノズルの発射率がインクラインの共振周波数に一致すると、インク中に共振パルスが発生する。この場合も、インクラインを形成する構造の剛性が高いので、同時に発射しているある色のノズルの大部分が、インクライン中に定常波又は共振パルスを生じ得る。これにより、ラプラス圧力を超えると、ノズルの溢出し、又は逆に、スパイク後の圧力の急降下によるノズルのプライミング解除が生じ得る。
【0125】
これに対処するために、LCPモールディング64には、インクラインから圧力スパイクを取り除くパルスダンパが組み入れられている。ダンパは、インクによって圧縮することができる気体を封入した空間でよい。或いは、ダンパは、弾力的に撓み、圧力パルスを吸収することができる、インクラインの追従部分でもよい。
【0126】
設計の複雑さを最小限に抑え、コンパクトな形態を維持するために、本発明は圧縮性気体空間を使用して圧力パルスを減衰する。気体の圧縮を利用する圧力パルスの減衰は、少量の気体によって達成することができる。これにより、インク圧力の過渡スパイクによるノズルの溢出しを回避しながらコンパクトな設計が維持される。
【0127】
図24及び図26に示されるように、パルスダンパは、インクのパルスによって圧縮される単一の気体空間ではない。逆に、ダンパは、LCPモールディング64の全長に亘って設けられている空洞200の配列である。ページ幅プリントヘッドのように延伸プリントヘッドを通って移動する圧力パルスを、インク流ラインのいずれの箇所でも減衰することができる。しかし、パルスは、その後ダンパで消散させられるにせよ、プリントヘッド集積回路のノズルを通過するとノズルの溢出しを生じる。ノズル配列の直ぐ近くのインク供給導路に多数のパルスダンパを組み入れることによって、そうしなければ圧力パルスが有害な溢出しを生じる箇所でもあらゆる圧力パルスが減衰される。
【0128】
図26では、空気ダンパ空洞200が4列に配置されているところが見られる。空洞の各列は、LCPチャネルモールディング176のLCP主チャネル184の真上に位置している。主チャネル184のインクの圧力パルスは、空洞200中の空気に直接に作用し、直ぐに消散する。
【0129】
プリントヘッドのプライミング
次いで、カートリッジのプライミングを、図27に示されるLCPチャネルモールディング176を特に参照して説明する。LCPチャネルモールディング176は、流体システム(図6参照)のポンプによって主チャネル出口232に掛けられる吸引力によって、インクでプライミングされる。主チャネル184がインクで充填され、次いで、インク供給通路182及びプリントヘッドIC68が、毛管作用によって自己プライミングされる。
【0130】
主チャネル184は、比較的長く細い。更に、空気空洞200は、インクの圧力パルスを減衰しようとするなら、プライミングされないままでなければならない。これは、毛管作用によって空洞200を容易に充填することが起こり得、又は主チャネル184が捕捉空気のために完全にプライミングされないことが起こり得るプライミング工程にとって難しい問題である。LCPチャネルモールディング176を確実に完全にプライミングするために、主チャネル184は、下流端で出口232の前に堰228を有する。LCPモールディング64の空気空洞200が決してプライミングされないようにするために、空洞200は、インクのメニスカスに空洞の壁を昇らせないように導くような形状の上流側縁部をもつ開口を有する。
【0131】
カートリッジのこれらの態様が、図28A、28B、及び29A〜29Cを参照して最も良く説明される。これらの図は、プライミング工程を概略的に示す。図28A及び28Bは、主チャネルに堰がない場合に生じ得る問題を示し、図29A〜29Cは堰228の機能を示す。
【0132】
図28A及び28Bは、LCPチャネルモールディング176の主チャネル184の1つ、及びチャネルの天井にある空気空洞200の列を貫通する概略断面図である。インク238が、入口230を通って引き込まれ、主チャネル184の床に沿って流れる。前進するメニスカスが、チャネル184の床に対して急勾配の接触角度を有することに留意することが重要である。これが、インク流238の前縁部分に僅かに膨らんだ形状を与える。インクがチャネル184の端部に達すると、インクのレベルが上昇し、膨らんだ前面は、インク流の他の部分より先にチャネルの上部に接触する。図28Bに示されるように、チャネル184は、完全なプライミングが果たされておらず、このとき既に、空気が捕捉されている。この空気溜りは残留し、プリントヘッドの作動を妨害する。インク減衰特性が変化し、又、空気がインクを閉塞し得る。
【0133】
図29A〜29Cでは、チャネル184は、下流端に堰228を有する。図29Aに示されるように、インク流238は、堰228の背後で溜り、チャネルの上に向かって上昇する。堰228は、上端に、メニスカス繋止点として作用する鋭い縁240を有する。前進するメニスカスは、この繋止機構240に留められ、その結果、インクは、インクレベルが上端縁より上になっても直ちに簡単に堰228を越えて流れることはない。
【0134】
図29Bに示されるように、膨れるメニスカスは、インクがチャネル184を上部まで充填するまで、インクを上昇させる。インクが空洞200を個々の空気溜りとして密封した状態で、堰228で膨らむインクメニスカスは鋭い上端縁240から離脱し、チャネル184の端部及びインク出口232を充填する(図29C参照)。鋭い上端縁240は、インクがチャネル184の上部を充填するまでインクメニスカスが膨れるが、インクが端の空気空洞242の一部分に接触するほどにはインクを膨れさせないように、精密に配置される。メニスカスが端の空気空洞242の内部に触れそこに留められると、空洞242はインクでプライミングされ得る。従って、堰の高さ及び空洞の下のその位置は、綿密に制御される。堰228の湾曲した下流表面は、インクメニスカスに空洞242までの空隙に架橋させ得る別の繋止点を決して生じさせない。
【0135】
LCPが、空洞200をプライミングされないままに保つのに用いる別の機構は、空洞開口の上流側及び下流側の縁部の形状である。図28A、28B及び29A〜29Cに示されるように、全ての上流側縁部は湾曲した移行面234を有し、下流側縁部236は角張っている。チャネル184の天井に沿って進行するインクメニスカスは、角張った上流側縁部には留まり、次いで毛管作用によって空洞内へ上昇し得る。上流側縁部の移行面、特に湾曲した移行面234は、角張った縁部が形成する強い繋止点を排除する。
【0136】
同様に、本出願人の研究により、角張った下流側縁部236は、空洞200が幾分かのインクで不注意に充填された場合に、プライミング解除を促進することが分かった。プリンタがぶつけられ、揺すられ、若しくは傾けられ、又は、流体システムが何らかの理由で逆流せざるを得なかった場合、空洞200は完全に又は部分的にプライミングされることがある。インクがその正常な方向に再び流れると、角張った下流側縁部236は、メニスカスを本来の繋止点(即ち、角張った角部)に引き戻すのを助ける。このように、LCPチャネルモールディング176を通るインクメニスカスの移動を管理することが、カートリッジを正しくプライミングする仕組みである。
【0137】
本発明は、ここでは、単なる例として説明されてきた。当業者は、広い本発明の思想の主旨及び範囲から逸脱することのない多数の変形形態及び修正形態を思い付くであろう。従って、ここに記載され添付図面に示された実施形態は、完全に例示的であり、決して本発明を限定するものではないと考えられるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関し、特にインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、従来の往復式プリントヘッド設計ではなくてページ幅のプリントヘッドを採用した広範囲のプリンタを開発してきた。ページ幅設計では、プリントヘッドが、画像の一行分を付着させるのに紙面を横切って行き来することがないので、印刷速度が速くなる。ページ幅プリントヘッドは、単純に、媒体が高速で通過しているときにその上にインクを付着させる。そのようなプリントヘッドは、フルカラー1600dpiの印刷を約60ページ毎分の速度で行うことを可能にし、その速度は、以前に従来のインクジェットプリンタでは達成できなかった。
【0003】
これらの速度で印刷するとインクを急速に消費し、その結果、プリントヘッドに十分なインクを供給することに問題を生じる。流量が多くなるばかりでなく、ページ幅プリントヘッドの長さ全体に亘ってインクを分配することが、比較的小さな往復式プリントヘッドへのインク供給よりも複雑になる。
【0004】
速い印刷速度は、比較的大きなインク供給流量を必要とする。この多量のインクが、比較的急速に供給ラインを通って移動する。印刷作業を急に終了すると、又は単に印刷紙面の終端では、比較的急速に流れているこの比較的大量のインクが、やはり、即時に停止しなければならないことになる。しかし、インクの運動量を突然拘束すると、インクライン中に衝撃波を引き起こす。プリントヘッドを構成する構成要素は、通常、剛性が高く、ライン中のインク柱が停止させられても殆ど撓むことがない。インクラインが追従しないことによって、衝撃波がラプラス圧力(ノズル開口でのインクの表面張力によって形成され、ノズルチャンバ内のインクを保持する圧力)を超え、プリントヘッドノズルの前面を溢れさせ得る。ノズルが溢れた場合、インクが吐出されず、印刷にアーティファクトが現れることがある。
【0005】
ノズルの発射率がインクラインの共振周波数に一致すると、インク中に共振パルスが発生する。この場合も、インクラインを形成する構造の剛性が高いので、同時に発射している或る色のノズルの大部分が、インクライン中に定常波又は共振パルスを生じ得る。これにより、ラプラス圧力を超えると、ノズルの溢出し、又は逆に、スパイク後の圧力の急降下によるノズルのプライミング解除が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開公報2005/0157040
【発明の概要】
【0007】
従って、第1の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリントヘッドICを支持する支持構造体であり、ノズル配列にインクを供給するインク導路を有する支持構造体と、
インク導路内のインク中の圧力パルスによって圧縮されることにより圧力パルスを消散させる気体を入れた流体ダンパと
を備えるプリントヘッドを提供する。
【0008】
気体の圧縮を利用する圧力パルスの減衰は、少量の気体によって達成することができる。これにより、インク圧力の過渡スパイクによるノズルの溢出しを回避しながらコンパクトな設計が維持される。
【0009】
任意選択的に、流体ダンパは気体を保持する空洞配列を有し、各空洞が気体の別々の溜まり場になる。任意選択的に、支持構造体のインク導路がインクでプライミングされたとき、空洞のそれぞれが、インクメニスカスによって部分的に画定される。
【0010】
任意選択的に、空洞のそれぞれは、1つ又は複数のインク導路に面している開口を有する盲陥凹である。任意選択的に、それぞれの盲陥凹の開口は、インク導路の1つだけに面している。任意選択的に、それぞれの盲陥凹の開口は、インクが毛管作用によって陥凹を満たすのを阻止するように構成されている。
【0011】
任意選択的に、支持構造体は、インク導路をインク供給部に接続する入口と、インク導路を廃棄インク出口に接続する出口とを有する。任意選択的に、各それぞれの空洞への開口が、上流側縁部と、下流側縁部とを有し、上流側縁部が、インク導路の、インク供給部からの最初のプライミングに際し、下流側縁部より先にインクに接触し、上流側縁部は、導路と空洞の内部との間に移行面を有し、その移行面が、インク導路の最初のプライミングに際しインクが毛管作用によって空洞を満たし気体を追い出すのを阻止するように構成されている。
【0012】
任意選択的に、プリントヘッドがページ幅プリントヘッドであり、支持構造体が一方の端部に入口、他方の端部に出口を有して延伸し、インク導路が、支持構造体に沿って入口と出口との間に長手方向に延在するチャネルを有し、チャネルのそれぞれが、それに沿って離間配置された一連のインク供給通路を有し、それによってチャネルとプリントヘッドICとの流体連通を形成する。任意選択的に、インク供給通路は、空洞への開口を備える壁に対向するチャネルの壁に並んでチャネルに接続する。
【0013】
任意選択的に、支持構造体は液晶ポリマー(LCP)である。任意選択的に、支持構造体は、2分割LCPモールディングであり、チャネル及び供給通路が一方の部分に形成され、空洞が他方の部分に形成されている。
【0014】
任意選択的に、支持構造体は、一方の側面に沿って端と端とを接して装着された複数のプリントヘッドICを有する。任意選択的に、プリントヘッドICは、インク供給通路とプリントヘッドICとを流体連通させる孔を有する粘着フィルムを挿入することによって側面に装着される。
【0015】
従って、第2の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリンタ内にプリントヘッドICを装着するための支持構造体であり、ノズル配列にインクを供給するインク導路を有し、インク導路が、インクを部分的に塞ぐ堰構造を有する、支持構造体と
を備え、
プリントヘッドをプライミングするとき、堰構造が、インク導路の上流部分を優先的にプライミングさせるプリントヘッドを提供する。
【0016】
十分にプライミングされない傾向のある領域の下流に堰を使用することによって、それらの領域をより素早く、又は下流部分に優先してプライミングさせることができる。下流部分が、堰によってたとえ遅くなっても、確実にプライミングされるものである限り、上流部分を優先的にプライミングすることに不都合はない。
【0017】
任意選択的に、堰構造は、前進するインク流のメニスカスの繋止点を形成するように構成された上端外形を有する。任意選択的に、上流部分は、その最上面に、プリントヘッドがプライミングされた後、空気溜りを保持するようになされた空洞を有する。任意選択的に、空洞は、上流部分の最上面に画成された開口を有し、各開口の上流側縁部は湾曲し、下流側縁部は比較的角張っており、その結果、上流方向から流れて来るインクは、毛管作用によって空洞に引き込まれない。任意選択的に、堰は、前進するインク流のメニスカスを一時的に繋止し、空洞の1つに関して開口の比較的角張った縁部に接触しないようにインク流の方向を変えるべく配置される。任意選択的に、プリントヘッドは、利用者が取り外し交換するように構成されたカートリッジである。任意選択的に、カートリッジは、装着時にはプライミングされておらず、その後、プリンタ内のポンプによってプライミングされる。
【0018】
従って、第3の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出する延伸ノズル配列と、
ノズル配列にインクを供給する複数のインク導路であり、その延伸配列に隣接して延在するインク導路と、
それぞれが、インク導路中の圧力パルスによって圧縮される或る量の気体を入れ、それぞれが、個々にインク導路と流体連通している複数のパルスダンパと
を備え、
パルスダンパを延伸配列の全長に亘って分布させたプリントヘッドを提供する。
【0019】
ページ幅プリントヘッドのような延伸プリントヘッドを通って移動する圧力パルスを、インク流ラインのいずれの箇所でも減衰することができる。しかし、パルスは、その後ダンパで消散させられるにせよ、プリントヘッド集積回路のノズルを通過するとノズルの溢出しを生じさせる。ノズル配列の直ぐ近くのインク供給導路に多数のパルスダンパを組み入れることによって、そうしなければ圧力スパイクが有害な溢出しを生じる箇所でもあらゆる圧力スパイクが減衰される。
【0020】
任意選択的に、複数のパルスダンパは、一方の面でインク導路に開口している一連の空洞である。任意選択的に、各空洞は1つだけのインク導路に開口を有し、インク導路のそれぞれは対応するインク供給部に接続され、開口は、インク導路が対応するインク供給部からプライミングされたとき、空洞がインクでプライミングされないように構成されている。
【0021】
任意選択的に、空洞のそれぞれは、開口が盲端部の面積に実質的に等しい面積を画成するような盲陥凹である。任意選択的に、開口は、それぞれインク導路の1つだけに面している。任意選択的に、開口は、インクが毛管作用によって陥凹を満たすのを阻止するように構成されている。
【0022】
任意選択的に、各それぞれの空洞への開口が、上流側縁部と、下流側縁部とを有し、上流側縁部が、インク導路の、インク供給部からの最初のプライミングに際し、下流側縁部より先にインクに接触し、上流側縁部が、導路と空洞の内部との間に移行面を有し、その移行面が、インク導路の最初のプライミングに際しインクが毛管作用によって空洞を満たし気体を追い出すのを阻止するように構成されている。
【0023】
任意選択的に、ノズル配列は、インク導路が形成されている支持構造体に装着された少なくとも1つのプリントヘッドICに形成される。任意選択的に、プリントヘッドがページ幅プリントヘッドであり、支持構造体が一方の端部に入口、他方の端部に出口を有して延伸し、インク導路が、支持構造体に沿って入口と出口との間に長手方向に延在するチャネルを有し、チャネルのそれぞれが、それに沿って離間配置された一連のインク供給通路を有し、それによってチャネルとプリントヘッドICとの流体連通を形成する。任意選択的に、インク供給通路は、空洞への開口を備える壁に対向するチャネルの壁に並んでチャネルに接続する。
【0024】
任意選択的に、支持構造体は液晶ポリマー(LCP)である。任意選択的に、支持構造体は、2分割LCPモールディングであり、チャネル及び供給通路が一方の部分に形成され、空洞が他方の部分に形成されている。
【0025】
任意選択的に、支持構造体は、一方の側面に沿って端と端とを接して装着された複数のプリントヘッドICを有する。任意選択的に、プリントヘッドICは、インク供給通路とプリントヘッドICとを流体連通させる孔を有する粘着フィルムを挿入することによって側面に装着される。
【0026】
従って、第4の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
延伸し、インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリントヘッドICを支持する支持構造体であり、ノズル配列にインクを供給するインク出口を有する支持構造体と
を備え、
インク出口が、その間隔がプリントヘッドICの端部で狭くなるようにプリントヘッドICに沿って離間配置されているプリントヘッドを提供する。
【0027】
端部領域近くでインク出口の数を増加させることによって、インクの供給が、端部のノズルのプライミングが相対的に遅いのを補償するように増強される。これは、ノズル配列全体をより一様にプライミングして、早目にプライミングしたノズル(或いは未プライミングの端部ノズル)からの溢出し及びインクの空費を回避する。
【0028】
任意選択的に、支持構造体は、端と端とが接する関係に構成された複数のプリントヘッドICを支持し、支持構造体は、インクをインク出口に供給する複数のインク供給通路を有し、2つのプリントヘッドICの端部間の連結部の近傍のインク供給通路の少なくとも幾つかは、2つのインク出口にインクを供給し、その2つのインク出口は連結部の両側にある。任意選択的に、支持構造体は、インク供給通路が形成されているモールド式インクマニホルドと、インク出口が形成されているポリマーフィルムを有し、ポリマーフィルムがモールド式インクマニホルドに装着され、プリントヘッドICがポリマーフィルムの他方の面に装着される。任意選択的に、プリントヘッドICは、ウェーハ基板の一方の面上のインク入口チャネルと、ウェーハ基板の他方の面に形成されたノズル配列とを有し、インク入口チャネルのそれぞれは、少なくとも1つのインク出口に接続する。
【0029】
任意選択的に、支持構造体は、プリントヘッドICに供給されるインク中の圧力パルスを減衰させる流体ダンパを有する。任意選択的に、流体ダンパは或る量の気体を保持する空洞配列を有し、各空洞が気体の別々の溜まり場になる。任意選択的に、空洞のそれぞれは、支持構造体のインク導路がインクでプライミングされたとき形成されるインクメニスカスによって部分的に画定される。
【0030】
任意選択的に、インクマニホルドは、プリントヘッドICと平行に延在する一連の主チャネルを有し、主チャネルは、インク供給通路にインクを供給し、空洞のそれぞれは、1つ又は複数の主チャネルに面する開口を有する盲陥凹である。任意選択的に、それぞれの盲陥凹の開口は、主チャネルの1つだけに面している。任意選択的に、それぞれの盲陥凹の開口は、インクが毛管作用によって陥凹を満たすのを阻止するように構成されている。
【0031】
任意選択的に、支持構造体は、インク導路をインク供給部に接続する入口と、インク導路を廃棄インク出口に接続する出口とを有する。任意選択的に、各それぞれの空洞への開口が、上流側縁部と、下流側縁部とを有し、上流側縁部が、主チャネルの、インク供給部からの最初のプライミングに際し、下流側縁部より先にインクに接触し、上流側縁部が、導路と空洞の内部との間に移行面を有し、その移行面が、インク導路の最初のプライミングに際しインクが毛管作用によって空洞を満たし気体を追い出すのを阻止するように構成されている。
【0032】
任意選択的に、プリントヘッドがページ幅プリントヘッドであり、支持構造体が一方の端部に入口、他方の端部に出口を有して延伸し、主チャネルが、支持構造体に沿って入口と出口との間に長手方向に延在し、インク供給通路が、空洞への開口を備える壁に対向する主チャネルの壁に並んで主チャネルの1つに接続する。
【0033】
任意選択的に、支持構造体は液晶ポリマー(LCP)である。任意選択的に、支持構造体は、2分割LCPモールディングであり、チャネル及び供給通路が一方の部分に形成され、空洞が他方の部分に形成されている。
【0034】
従って、第5の態様において、本発明は、インクジェットプリントヘッドとインク供給部との間にシールされた流体連通を確立する取外し可能な流体カップリングであって、
弁座を形成する固定バルブ部材と、
弁座に封止係合するシールカラーと、
固定バルブ部材に対して固定された一方の環状端部、及びシールカラーに係合して、シールカラーを弁座に封止係合させるように付勢する他方の環状端部を有する弾性スリーブと、
シールカラーに係合してシールカラーを弁座からシール解除させるように、固定バルブ部材に対して移動可能な導路開口と
を備え、
シールカラーを弁座からシール解除するにはスリーブの中間部分が両環状端部に対して外側に変位するように弾性スリーブを圧縮する、取外し可能な流体カップリングを提供する。
【0035】
座屈又は外に向かって褶曲する弾性スリーブでは、カップリングの直径は、残留張力を残してバルブが閉じるように付勢する環状弾性要素を使用する従来のカップリングより小さい。より小さな外径によって、様々なインク色全てのカップリングを、より小さくよりコンパクトなインターフェース内に配置することができる。
【0036】
任意選択的に、弾性スリーブの中間部分は、スリーブが軸方向に圧縮されると外向きに広がる環状の折目である。任意選択的に、弾性スリーブは、導路開口が引き抜かれると、復元力をシールカラーに加え、軸長が増加すると復元力が増加し、それにより、シールカラーが弁座に当たってシールするとき、最大復元力がシールカラーに掛かる。任意選択的に、弾性スリーブは、シールカラーの内径に連結する。任意選択的に、弾性スリーブの両方の環状端部は、実質的に同じ大きさである。
【0037】
任意選択的に、シールカラーは、導路開口がシールカラーに係合する場所に弾性材を有し、その結果、その係合に際し流体密封シールが形成される。任意選択的に、導路開口とシールカラーとの間の流体密封シールは、シールカラーが弁座からシール解除される前に形成される。
【0038】
任意選択的に、固定バルブ部材は、カップリングが開放されたとき、カップリングを通る流体流路の一部分を形成する中空断面を有する。任意選択的に、固定バルブ部材及び弾性スリーブは、カップリングの下流側にあり、導路開口は上流側にある。任意選択的に、下流側は、交換可能なプリントヘッドを有するカートリッジの一部分であり、上流側は、カートリッジを装着することができるプリンタの一部分である。
【0039】
従って、第6の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のフィルタであって、
フィルタ膜によって上流部分と下流部分に分割された部屋と、
インク供給部と上流部分との流体連通を確立する入口導路と、
下流部分とプリントヘッドとの流体連通を確立する出口導路と
を備え、使用中、
入口導路の少なくとも一部分が、フィルタ膜に対して高くなっているフィルタを提供する。
【0040】
入口導路をフィルタ膜に対して高くすることによって、入口導路が、そうしなければフィルタを詰まらせるであろうバブルを滞留させるバブルトラップとして作用する。これにより、よりコンパクトな全体設計のためにフィルタの大きさを縮小することができる。
【0041】
任意選択的に、部屋は、フィルタ膜の寸法に対応する内部高さ及び幅、並びに、高さ及び幅寸法よりかなり小さな厚さを有する。
【0042】
部屋をこのように構成することによって、全体容積が最小限に保たれ、フィルタ膜がほぼ垂直面内に配置される。部屋内のあらゆるバブルの浮力が、それらバブルを部屋の上端に近寄らせ、場合によっては入口導路に戻らせる。これにより、バブルがフィルタ膜の上流面に留まり難くなる。
【0043】
任意選択的に、出口導路は、下流部分にその中で使用中高さが最低の箇所で接続する。もしバブルがフィルタを詰まらせ始めても、バブルが部屋の最下領域を詰まらせるのは最後である。任意選択的に、フィルタ膜は矩形であり、入口は、上流部分に一方の隅で接続し、出口導路は、対角線上反対側の隅に接続する。
【0044】
任意選択的に、下流部分は、フィルタ膜が下流部分の対向する壁からの間隔を維持できるように、フィルタ膜が押し付けられる支持構造を有する。任意選択的に、その対向する壁は又、同様なフィルタ部材を格納する同様な部屋の上流部分を部分的に画成する壁であり、それにより、複数のフィルタが並んで構成されている。
【0045】
任意選択的に、フィルタは、定期的に交換するようになされたインクジェットプリンタの構成要素に装着される。
【0046】
任意選択的に、フィルタは、ページ幅プリントヘッドを有するカートリッジに装着される。任意選択的に、カートリッジは、インク供給部に接続する取外し可能なインクカップリングをフィルタの上流に有する。
【0047】
従って、第7の態様において、本発明は、交換可能なカートリッジをプリンタ内に取り付ける際にインクジェットプリンタとカートリッジとの間に流体連通を確立するインクカップリングであって、
カップリングのカートリッジ側のカートリッジバルブと、
カップリングのプリンタ側のプリンタ導路であり、カートリッジバルブとプリンタ導路とが、係合したときカップリングシールを形成するように構成された相補的構造を有する、プリンタ導路と
を備え、
カートリッジバルブが、閉じるように付勢され、プリンタ導路に係合させられると開くように構成され、
係合解除に際し、カップリングシールが、カートリッジバルブが閉じた後に解除され、インクメニスカスが、相補的構造が分離するときそれらから形成されて後退し、カートリッジバルブが、メニスカスがカートリッジバルブからきれいに離れプリンタ導路面のみに留まるように構成された表面を有する、インクカップリングを提供する。
【0048】
本発明では、インクメニスカスの既知の後退接触角を考慮して外面を注意深く設計することによって、カートリッジバルブの外側にインクが残留しないように保つ。カップリングシールが解除され、メニスカスが形成されると、インクの特性及びそれぞれのバルブ材質の親水性が、どこでメニスカスが移動を止め、その結果留まるかを決定する。インクの特性を知れば、係合の方向、バルブの材質、及び外側のデザインによって、メニスカスをプリンタ導路のみに留めることができる。
【0049】
任意選択的に、カートリッジバルブの外面の少なくとも1つは、プリンタ導路の外面の少なくとも1つより親水性が低い。任意選択的に、カートリッジは、垂直方向下方へ移動することによってプリンタに係合し、垂直方向上方へ移動することによって係合解除される。任意選択的に、係合に際し、カップリングシールが形成された後に、カートリッジバルブ及びプリンタバルブが開く。任意選択的に、カートリッジバルブは、弁座を形成する固定バルブ部材、及び弁座に封止係合するシールカラーと、固定バルブ部材に対して固定された一方の環状端部、及びシールカラーに係合して、シールカラーを弁座に封止係合させるように付勢する他方の環状端部を有する弾性スリーブとを有し、
プリンタ導路は導路開口を有し、
導路開口の軸方向端部、及びシールカラーは、プリンタ導路、及びカートリッジバルブそれぞれに相補的構造を形成する。
【0050】
任意選択的に、導路開口は、シールカラーに当たってシールした後に、カートリッジバルブを開く。任意選択的に、弾性スリーブとシールカラーは一体に形成されている。任意選択的に、弾性スリーブ及びシールカラーはシリコーンである。任意選択的に、固定バルブ部材は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)から形成される。任意選択的に、導路開口は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)から形成される。
【0051】
任意選択的に、カートリッジは、ページ幅プリントヘッドを有し、プリンタは、カップリングを介してプリントヘッドに供給するインク貯槽を有する。
【0052】
従って、第8の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリントヘッドICをプリンタ内に装着するための支持構造体であり、支持構造体がノズル配列にインクを供給するインク導路を有し、インク導路が、インク流を部分的に塞ぐ堰構造を有する、支持構造体と
を備え、
プリントヘッドをプライミングするとき、堰構造が、インク導路の上流部分を優先的にプライミングさせる、プリントヘッドを提供する。
【0053】
十分にプライミングされない傾向のある領域の下流に堰を使用することによって、それらの領域をより素早く、又は下流部分に優先してプライミングさせることができる。下流部分が、堰によってたとえ遅くなっても、確実にプライミングされるものである限り、上流部分を優先的にプライミングすることに不都合はない。
【0054】
任意選択的に、堰構造は、前進するインク流のメニスカスの繋止点を形成するように構成された上端外形を有する。任意選択的に、上流部分は、その最上面に、プリントヘッドがプライミングされた後、空気溜りを保持するようになされた空洞を有する。任意選択的に、空洞は、上流部分の最上面に画成された開口を有し、各開口の上流側縁部は湾曲し、下流側縁部は比較的角張っており、その結果、上流方向から流れて来るインクは、毛管作用によって空洞に引き込まれない。任意選択的に、堰は、前進するインク流のメニスカスを一時的に繋止し、空洞の1つに関して開口の比較的角張った縁部に接触しないようにインク流の方向を変えるべく配置される。任意選択的に、プリントヘッドは、利用者が取り外し交換するように構成されたカートリッジである。任意選択的に、カートリッジは、装着時にはプライミングされておらず、その後、プリンタ内のポンプによってプライミングされる。
【0055】
従って、第9の態様において、本発明は、インクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路(IC)と、
プリンタ内にプリントヘッドICを装着するための支持構造体であり、ノズル配列にインクを供給するインク導路を有し、インク導路が、インクの前進するメニスカスの一部分を留めて、そうしなければ取るであろう経路から前進するメニスカスを逸れさせるメニスカス繋止機構を有する、支持構造体と
を備えるプリントヘッドを提供する。
【0056】
プリントヘッドが、1つ又は複数の箇所にメニスカスが留まるために必ず正しくプライミングされ損なう場合、前進するメニスカスがこれら致命的な箇所に接触しないように前進するメニスカスを導くことができる。問題領域の直ぐ上流でインク導路に不連続機構を意図的に組み込むことによって、メニスカスを一時的に留め、それを斜めにして導路の片側に向け、望ましくない繋留点から逸れさせることができる。流れが側枝又は望ましくない繋留点の下流に入り始めたら、繋止機構がそれ以上インクメニスカスを保持する必要はなくなり、プライミングを続けることができる。
【0057】
任意選択的に、メニスカス繋止機構は、インク導路内への急な突出部である。任意選択的に、メニスカス繋止機構はインク流を部分的に塞ぐ堰構造であり、プリントヘッドをプライミングするとき、堰構造が、インク導路の上流部分を優先的にプライミングさせる。
【0058】
任意選択的に、上流部分は、その最上面に、プリントヘッドがプライミングされた後、空気溜りを保持するようになされた空洞を有する。任意選択的に、空洞は、上流部分の最上面に画成された開口を有し、各開口の上流側縁部は湾曲し、下流側縁部は比較的角張っており、その結果、上流方向から流れて来るインクは、毛管作用によって空洞に引き込まれない。任意選択的に、堰は、前進するインク流のメニスカスを一時的に繋止し、空洞の1つに関して開口の比較的角張った縁部に接触しないようにインク流の方向を変えるべく配置される。任意選択的に、プリントヘッドは、利用者が取り外し交換するように構成されたカートリッジである。任意選択的に、カートリッジは、装着時にはプライミングされておらず、その後、プリンタ内のポンプによってプライミングされる。
【0059】
従って、第10の態様において、本発明は、印刷データを受け取りそれをプリントヘッドへ送り出すためのプリントエンジン制御部を有するインクジェットプリンタ用のプリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッドICと、
プリンタ内で紙の経路に隣接してプリントヘッドICを装着するための支持構造体であり、プリントヘッドICが、使用時に紙の経路に面する支持構造体の面に装着された支持構造体と、
プリントヘッドIC上のノズル配列を作動させる駆動回路を有する可撓プリント回路基板(可撓PCB)であり、駆動回路が、可撓PCB中のトレースによって接続される回路構成要素を有し、可撓PCBが又、プリントエンジン制御部から印刷データを受け取る接点を有し、接点位置での可撓PCBが、紙の経路に面していない面上で支持構造体に装着され、その結果、可撓PCBが、プリントヘッドICと接点との間の湾曲部分を通って延在する、可撓プリント回路基板(可撓PCB)と
を備え、
プリントヘッドICと回路構成要素とは互いに隣接し、それらが、可撓PCBの湾曲部分によって接点から離されている、プリントヘッドを提供する。
【0060】
任意選択的に、支持構造体は、可撓PCBの湾曲部分を支持する湾曲面を有する。湾曲面は、可撓PCBに湾曲部分で不規則な曲面をたどらせることによってトレース上に局部的高応力点を生じさせる危険を冒すことなく、定められた半径で可撓PCBを保持することによって、トレースが割れる可能性を低減させる。
【0061】
任意選択的に、可撓PCBは、回路構成要素位置で支持構造体に繋止されている。任意選択的に、回路構成要素は、プリントヘッドIC上のノズルの発射シーケンス中に放電するコンデンサを備える。任意選択的に、支持構造体は液晶ポリマー(LCP)モールディングである。LCPは、その熱膨張係数(CTE)が、プリントヘッドICのシリコーン基板の熱膨張係数とほぼ同じになるようにモールドすることができる。
【0062】
任意選択的に、LCPモールディングは、インクをプリントヘッドICに供給するインク導路を有する。任意選択的に、インク導路は、LCPモールディングの、プリントヘッドICが装着されている面にある出口に通じる。
【0063】
任意選択的に、プリントヘッドはページ幅プリントヘッドである。任意選択的に、支持構造体が、接点とは反対側に配置されたカートリッジ担持部分を有し、力伝達部材が接点からカートリッジ担持部分まで延在し、それにより、プリンタ内に装着されたとき、プリンタの相補的接点からの圧力が、力伝達部材を介してカートリッジ担持部分に直接伝達される。任意選択的に、担持部分は、プリンタの相補的構造に係合する位置決め構造を備える。任意選択的に、位置決め構造は、丸い先端を有する隆起機構であり、隆起機構がプリンタに係合すれば、カートリッジは回転して所定位置に納まることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明によるプリンタの実施形態の前面及び側面透視図である。
【図2】前面が開いた状態の図1のプリンタの図である。
【図3】プリントヘッドカートリッジが取り外された図2のプリンタを示す図である。
【図4】外側ハウジングが取り外された図3のプリンタを示す図である。
【図5】外側ハウジングが取り外され、プリントヘッドカートリッジが装着された図3のプリンタを示す図である。
【図6】プリンタの流体システムの概略図である。
【図7】プリントヘッドカートリッジの上面及び前面透視図である。
【図8】保護カバーに入ったプリントヘッドカートリッジの上面及び前面透視図である。
【図9】保護カバーから取り外されたプリントヘッドカートリッジの上面及び前面透視図である。
【図10】プリントヘッドカートリッジの下面及び前面透視図である。
【図11】プリントヘッドカートリッジの下面及び背面透視図である。
【図12】プリントヘッドカートリッジの全ての面の図である。
【図13】プリントヘッドカートリッジの分解組立透視図である。
【図14】プリントヘッドカートリッジのインク入口カップリングを通る横断面図である。
【図15】インク入口及びフィルタアセンブリの分解組立透視図である。
【図16】プリンタバルブに係合したカートリッジバルブの断面図である。
【図17】LCPモールディング及び可撓PCBの透視図である。
【図18】図17に示される部分Aの拡大図である。
【図19】LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの分解組立下面透視図である。
【図20】LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの分解組立上面透視図である。
【図21】LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの下面の拡大図である。
【図22】プリントヘッドIC及び可撓PCBを取り外した状態での図21の拡大図である。
【図23】プリントヘッドIC取付フィルムを取り外した状態での図22の拡大図である。
【図24】LCPチャネルモールディングを取り外した状態での図23の拡大図である。
【図25】背面チャネル及びノズルを有するプリントヘッドICをインク供給通路上に重ね合わせて示す図である。
【図26】LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの拡大横断面透視図である。
【図27】LCPチャネルモールディングの平面図である。
【図28A】堰が無い状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図28B】堰が無い状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図29A】堰を有する状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図29B】堰を有する状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図29C】堰を有する状態でのLCPチャネルモールディングのプライミングの概略断面図である。
【図30】接点力及び反力の位置を伴う、LCPモールディングの拡大横断面透視図である。
【図31】IC取付フィルムのリールの図である。
【図32】ライナ間のIC取付フィルムの断面図である。
【図33】取付フィルムの積層構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の実施形態が、添付図面を参照して、単に例として以下に説明される。
【0066】
概要
図1は本発明を実施したプリンタ2を示す。プリンタの本体4は、背面に媒体供給トレイ14と、前面に枢動面6とを支持する。図1は、表示スクリーン8がその直立可視位置に来るように枢動面6が閉じている。作業者がスクリーンを見ながら入力するのに好都合なように、制御ボタン10がスクリーン8の側端から延出している。印刷に際し、供給トレイ14中の媒体の束12からシート1枚だけが引き出され、プリントヘッド(プリンタ内に隠れている)を通して送り込まれる。印刷済シート16は、印刷済媒体出口スロット18を通って排出される。
【0067】
図2は、枢動前面6を開いて、プリンタ2の内部を見せたところを示す。プリンタの前面を開くと、内部に装着されたプリントヘッドカートリッジ96が露出される。プリントヘッドカートリッジ96は、プリントヘッドカートリッジ96を押し下げて、インクカップリング(後述)が十分に係合され、プリントヘッドIC(後述)が用紙供給経路に隣接して正確に配置されることを保証するカートリッジ係合カム20によって、定位置に固定される。カム20は、解放レバー24によって手動で操作される。解放レバー24が押し下げられてカムに十分に係合するまで、前面6は閉じることなく、従ってプリンタは作動しない。枢動面6を閉じると、プリンタ接点22がカートリッジ接点104と係合する。
【0068】
図3は、枢動面6が開かれ、プリントヘッドカートリッジ96が取り外されたプリンタ2を示す。枢動面6が前方に倒された状態で、利用者が、カートリッジ解放レバー24を引き上げて、カム20を係合解除する。これにより、カートリッジ96のハンドル26を把持し引き上げることができる。上流インクカップリング112A及び下流インクカップリング112Bがプリンタ導路142から係合解除される。このことを、より詳細に以下に説明する。新しいカートリッジを装着するには、手順が逆になる。新品のカートリッジは、未プライミング状態で出荷、販売される。従って、プリンタに印刷の準備をさせるために、能動的流体システム(下記)が、カートリッジ及びプリントヘッドをインクでプライミングするために下流のポンプを使用する。
【0069】
図4では、プリンタ2の外側ケーシングが、内部を見せるために取り外されている。大きなインクタンク60が、4つの異なるインク全てに対して別々の貯槽を有する。インクタンク60はそれ自体が、シャットオフバルブ66(図6参照)の上流でプリンタに結合する交換可能なカートリッジである。又、カートリッジ96からポンプ62によって引き抜かれたインクのための廃液槽92がある。プリンタ流体システムが、図6を参照して詳細に説明される。簡単には、タンク60からのインクが、上流インクライン84を通ってシャットオフバルブ66へ、そしてプリンタ導路142に向かって流れる。図5に示すように、カートリッジ96が装着されると、ポンプ62(モータ196によって駆動される)が、インクをLCPモールディング64(図6及び17〜20参照)に引き込み、それにより、プリントヘッドIC68(やはり、図6及び17〜20参照)を毛管作用によってプライミングすることができる。ポンプ62によって吸引された余分なインクは、インクタンク60と共に収納されている廃液槽92へ送り込まれる。
【0070】
カートリッジ接点104とプリンタ接点22との間の総コネクタ力は、用いられる接点の数のために比較的大きい。図示の実施形態では、総接点力は45ニュートンである。この荷重は、カートリッジを撓ませ変形させるのに十分である。図30に簡単に触れると、シャシモールディング100の内部構造が示されている。図3に示される担持面28が、図30に概略的に示されている。カートリッジ接点104へのプリンタ接点の圧縮荷重が、矢印で表されている。担持面28での反力が、同様に矢印で表されている。カートリッジ96の構造的健全性を維持するために、シャシモールディング100は、コネクタ力の面内に延在する構造部材30を有する。コネクタ力の面内に作用する反力を維持するために、シャシは、又、担持面28に押し付けられる接触リブ32を有する。これにより構造部材30への荷重が完全に圧縮に保たれることによって、カートリッジの剛性が最大になり、撓みが最小限に抑えられる。
【0071】
プリントエンジンパイプライン
プリントエンジンパイプラインは、外部供給源から受け取り、印刷するためにプリントヘッドに出力する印刷データをプリンタが処理する機構を意味する。プリントエンジンパイプラインは、前述した特許文献1に詳細に記載されており、同文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0072】
流体システム
従来、プリンタは、流体上の問題を回避するのに、プリントヘッド、カートリッジ、及びインクライン内部の構造及び構成要素に依存してきた。幾つかの共通の流体上の問題は、プライミング解除又は枯渇ノズル、気体放出バブルアーティファクト、及び相互汚染による色の混交である。これらの問題を回避するためにプリンタ構成要素の設計を最適化することは、流体を制御する受動的手法である。通常、これらの問題を修正するために用いられる唯一の能動的構成要素は、ノズルアクチュエータ自体である。しかし、これでは不十分なことが多く、及び/又は問題を修正しようとするのに大量のインクを消耗する。ページ幅プリントヘッドでは、プリントヘッドICに供給するインク導路が長く複雑なために、問題が悪化する。
【0073】
本出願人は、プリンタ用の能動的流体システムを開発することによってこれに対処した。幾つかのそのようなシステムが、米国特許出願第11/677049号(出願人整理番号SBF006US)明細書に詳細に記載されており、同明細書の内容は、参照によって本明細書に組み込まれるものとする。図6は、本明細書に記載されたプリントヘッドと共に用いるのに適した能動的流体システムの単一ポンプ実装形態の1つを示す。
【0074】
図6に示される流体機構は、単色のみのための単一インクラインである。カラープリンタは、各インク色に対して、独立したライン(及び当然独立したインクタンク60)を有する。図6に示されるように、この機構は、LCPモールディング64の下流に単一のポンプ62と、LCPモールディングの上流にシャットオフバルブ66とを有する。LCPモールディングは、粘着IC取付フィルム174(図26参照)を介してプリントヘッドIC68を支持している。シャットオフバルブ66は、プリンタの電源が切断されるとすぐに、インクタンク60内のインクをプリントヘッドIC68から遮断する。これにより、プリントヘッドIC68での色の混交が、非作動時間中にインクタンク60に到達するのが防止される。これらの事項が、相互参照明細書米国特許出願第11/677049号(出願人整理番号SBF006US)により詳細に説明されている。
【0075】
インクタンク60は、ノズルでのインクに比較的一定の負の静水圧を維持するために、通気バブル点圧力レギュレータ72を有する。インク貯槽内のバブル点圧力レギュレータは、同時係属の米国特許出願第11/640355号(出願人整理番号RMC007US)明細書に包括的に記載されており、同明細書は参照により本明細書に組み込まれる。しかしながらこの説明のために、レギュレータ72が、タンク60内のインク中に沈められ、空気入口78まで延在する気密導路76を介して大気に通気するバブル出口74として示されている。プリントヘッドIC68がインクを消費するにつれて、バブル出口74での差圧がタンクに空気を吸い込むまで、タンク60内の圧力が下がる。この空気が、インク中に、タンクの上部空間へ上昇するバブルを形成する。この差圧がバブル点圧力であり、バブル出口74の直径(又は最小寸法)と、空気の進入に抵抗する、出口のインクメニスカスのラプラス圧力とに依存する。
【0076】
バブル点レギュレータは、沈められたバブル出口74にバブルを発生させるのに必要なバブル点圧力を使用して、出口での静水圧を実質的に一定に保持する(膨らむ空気のメニスカスがバブルを形成し、インクタンクの上部空間へ上昇するとき僅かな変動がある)。出口での静水圧がバブル点であれば、タンクからどれだけの量のインクが消費されたかに拘わらず、インクタンク内の静水圧プロフィールも知ることができる。インクタンク内のインクの表面の圧力は、インクのレベルが出口に向かって降下するにつれて、バブル点圧力に向かって低下する。当然、出口74が露出した後は、上部空間は大気に通気し、負圧は消失する。インクレベルがバブル出口74に達する前に、インクタンクを再充填し、又は交換(インクタンクがカートリッジである場合)しなければならない。
【0077】
インクタンク60は、再充填することができる固定式貯槽、交換可能なカートリッジ、又は(参照によって組み込まれるRRC001US明細書に開示されるように)再充填可能なカートリッジであり得る。粒子の詰まりを防止するために、インクタンク60の出口80は粗いフィルタ82を有する。システムは、又、プリントヘッドカートリッジへのカップリング位置に細かいフィルタも使用している。フィルタは寿命が有限なので、インクカートリッジ又はプリントヘッドカートリッジを単に交換することによって古いフィルタが交換されると、利用者にとって特に好都合である。フィルタが独立した消耗品である場合は、定期交換は利用者の注意に頼ることになる。
【0078】
バブル出口74がバブル点圧力であり、シャットオフバルブ66が開いているとき、ノズルでの静水圧も又一定で大気圧より低い。しかし、シャットオフバルブ66が、或る時間閉じていた場合、ノズルでの圧力を変化させる気体放出バルブがLCPモールディング64又はプリントヘッドIC68内に生じ得る。同様に、昼夜の温度変化によるバブルの膨張及び収縮が、シャットオフバルブ66の下流のインクライン84内の圧力を変化させ得る。同様に、インクタンク内の圧力が、非稼動時間中、溶解ガスが溶液から出てくるので変化し得る。
【0079】
LCP64からポンプ62へ向かう下流インクライン86は、ポンプ用の電子制御部90に接続されたインクセンサ88を備え得る。センサ88は、下流インクライン86内のインクの有無を感知する。或いは、システムはセンサ88を省くことができ、ポンプが、様々な作動状態のそれぞれに対して適切な時間だけ働くように、ポンプ62を構成することができる。これは、インクの消耗が増加するので、運用コストに不利に影響する。
【0080】
ポンプ62は、廃液槽92中に吐出する(前方方向に給送した場合)。廃液槽92は、プリントヘッドIC68よりも低くなるように、プリンタ内に物理的に配置されている。これにより、下流インクライン86内のインク柱を待機時間中LCP64から「吊下」させることが可能になり、それによって、プリントヘッドIC68位置で負の静水圧を生成する。ノズル位置での負圧が、インクのメニスカスを内側に引き込み、色の混交を阻止する。当然、LCP64と廃液槽92内のインク出口との間に流体連通をもたらすために、蠕動ポンプ62を開状態で停止させる必要がある。
【0081】
非稼動時間中に、異なる色のインクライン間に差圧が生じ得る。更に、ノズルプレート上の紙埃や他の粒子が、或るノズルから別のノズルへインクを渡し得る。各インクライン間の僅かな圧力の差によって付勢されて、プリンタの非稼動中に色の混交が生じ得る。シャットオフバルブ66が、インクタンク60をプリントヘッドIC68のノズルから遮断して、色の混交がインクタンク60まで至るのを防止する。インクタンク内のインクが異なる色で汚染されると、そのインクは元に戻らず、交換する必要がある。
【0082】
キャッパ94は、待機時間中ノズルをシールしてプリントヘッドIC68の乾燥を回避すると共に、ノズルプレートを紙埃や他の粒子から保護するプリントヘッド保全器である。キャッパ94は、又、ノズルプレートを払拭して、乾いたインクや他の汚れを取り除くように構成されている。プリントヘッドIC68の乾燥は、通常は水であるインク溶剤が蒸発し、インクの粘度を増加させると生じる。インクの粘度が高過ぎると、インク吐出アクチュエータがインク液滴の吐出に失敗する。キャッパのシールに不備があると、電源切断又は待機時間後にプリンタを再起動したとき、乾燥したノズルが問題になり得る。
【0083】
上記に概説した問題は、プリンタの運用寿命を通して珍しいことではなく、図6に示された比較的簡単な流体機構によって効果的に修正することができる。その機構は、利用者が、最初にプリンタをプライミングし、プリンタを移動する前にプリンタのプライミング解除を行い、又は、簡単なトラブルシューティングプロトコルを用いてプリンタを既知の印刷待機状態に回復することを可能にする。これらの状況の幾つかの例が、上記の米国特許出願第11/677049号(出願人整理番号SBF006US)明細書に詳細に記載されている。
【0084】
プリントヘッドカートリッジ
プリントヘッドカートリッジ96が、図7〜16に示されている。図7は、カートリッジ96をその組立完成形態で示す。カートリッジの大部分は、カートリッジシャシ100及びシャシ蓋102内に納められている。シャシ100の窓が、プリンタのプリントエンジン制御部からデータを受け取るカートリッジ接点104を露出する。
【0085】
図8及び9は、カートリッジ96をそのスナップ式防護カバー98と共に示す。防護カバー98は、電気接点104及びプリントヘッドIC68での接触損傷を防止する(図10参照)。利用者は、プリンタに装着する直前に、カートリッジ96の上端を保持し、防護カバー98を取り外すことができる。
【0086】
図10は、プリントヘッドカートリッジ96の下面及び「背面」(給紙方向に対して)を示す。プリントヘッド接点104は、可撓プリント回路基板108上の導電性パッドであり、その基板は、湾曲支持面(後にLCPモールディングに関する記述中で説明する)の周りに、プリントヘッドIC68の一方の側にあるワイヤボンド110の列まで巻かれている。プリントヘッドIC68の他方の側には、媒体素地に直接接触するのを防止するペーパシールド106がある。
【0087】
図11は、プリントヘッドカートリッジ96の下面及び「前面」を示す。カートリッジの前面は、両端に2つのインクカップリング112A及び112Bを有する。各インクカップリングは、4つのカートリッジバルブ114を有する。カートリッジがプリンタに装着されると、インクカップリング112A及び112Bは、相補的インク供給インターフェース(以下により詳細に説明する)に係合する。インク供給インターフェースは、カートリッジバルブ114に係合しそれらを開くプリンタ導路142を有する。インクカップリングの一方112Aは上流インクカップリングであり、他方は下流カップリング112Bである。上流カップリング112Aは、プリントヘッドIC68とインク供給部60(図6参照)との間の流体連通を確立し、下流カップリング112Bは、廃液槽92(やはり図6参照)に接続する。
【0088】
プリントヘッドカートリッジ96を様々な面から見た図が、図12に示されている。カートリッジ96の平面図は又、図14、26、28及び29に示される断面図の位置も示す。
【0089】
図13は、カートリッジ96の分解組立透視図である。LCPモールディング64は、カートリッジシャシ100の下側に取り付けられる。更に、可撓PCB108が、LCPモールディング64の下側に取り付けられ、一方の側面を巻いてプリントヘッド接点104を露出する。入口マニホルド及びフィルタ116及び出口マニホルド118が、シャシ100の上部に取り付けられる。入口マニホルド及びフィルタ116は、エラストマーコネクタ120を介してLCP入口122に接続されている。同様に、LCP出口124は、別の組のエラストマーコネクタ120を介して出口マニホルド118に接続されている。シャシ蓋102が、シャシ100内の入口及び出口マニホルドを上部から覆い、取外し可能な防護カバー98が、底部を覆ってスナップ止めされ、それにより、接点104及びプリントヘッドIC(図11参照)を防護する。
【0090】
入口及びフィルタマニホルド
図14は、図12の14−14に沿った拡大断面図である。この図は、上流カップリング112Aのカートリッジバルブ114の1つを通りLCPモールディング64へ向かう流路を示す。カートリッジバルブ114は、付勢されて固定バルブ部材128と封止係合するエラストマースリーブ126を有する。カートリッジバルブ114は、プリンタ導路142(図16参照)によって、エラストマースリーブ126をそれが固定バルブ部材128から離れるように圧縮することにより開かれ(図16参照)、インクが、入口及びフィルタマニホルド116の上部に沿う天井チャネル138まで流れ上るのを可能にする。天井チャネル138は、一方の壁をフィルタ膜130によって画定された上流フィルタ室132に通じる。インクは、フィルタ膜130を通過して下流フィルタ室134に入り、LCP入口122へ出て行く。そこから、濾過されたインクは、LCP主チャネル136に沿って流れ、プリントヘッドIC(図示せず)に送り込まれる。
【0091】
次いで、入口及びフィルタマニホルド116の詳細な特徴及び利点を、図15を参照して説明する。図15の分解組立透視図が、入口及びフィルタマニホルド116のコンパクトな設計を最も良く示す。そのコンパクトな形態に寄与する幾つかの設計上の態様がある。第1に、カートリッジバルブが互いに近接して離隔配置されている。これは、従来の自己シールインクバルブ構成を採用しないことによって達成される。以前の設計は、やはり、付勢されて固定部材に封止係合するエラストマー部材を使用していた。但し、エラストマー部材は、インクがその周りを流れる中実形状か、又はインクがそれを通って流れる場合にはダイヤフラムの形態かのいずれかであった。
【0092】
カートリッジカップリングでは、装着に際し、カートリッジバルブが自動的に開くと極めて好都合である。これは、一方のバルブが、他方のバルブの剛性部材によって係合されるエラストマー部材を有するカップリングによって、最も容易且つ安価に実現することができる。エラストマー部材が、ダイヤフラム形態である場合には、そのダイヤフラムは、通常は、伸張状態で中央の剛性部材に押し付けられて保持されている。これは、効果的なシールを実現するが、比較的小さな許容誤差を必要とする。一方で、それは又、大きな外周取付部を有するエラストマー要素を必要とする。エラストマーの大きさは、所望のカップリング力と、シールの健全性と、使用されるエラストマーの材料特性との間の兼ね合いである。
【0093】
図16に最も良く示されるように、本発明のカートリッジバルブ114は、残留圧縮の下に固定バルブ部材128に押し付けられてシールするエラストマースリーブ126を使用する。バルブ114は、カートリッジがプリンタに取り付けられ、プリンタバルブ142の導路端部148がスリーブ126を更に圧縮すると開く。カラー146は、固定バルブ部材128とのシールを解除され、それにより、上流インクカップリング112A及び下流インクカップリング112Bを介してLCP64をプリンタ流体システム(図6参照)に繋ぎ込む。スリーブの側壁は、内側に潰れると流れを妨害し得るので、外側に膨れるように構成されている。図16に示されるように、スリーブ126は、座屈の進行を促進し誘導する相対的に弱い線をその中間部分を廻って有する。これにより、カートリッジをプリンタに係合させるのに必要な力が低減され、スリーブが確実に外側に座屈するようになる。
【0094】
カップリングは、カートリッジをプリンタから「無滴下状態」で係合解除できるように構成されている。カートリッジがプリンタから引き上げられると、エラストマースリーブ126は、カラー146を固定バルブ部材128に押し付けてシールする。スリーブ126がバルブ部材128に押し付けられてシールを行った(それによってカップリングのカートリッジ側がシールされる)後は、シールカラー146はカートリッジと一体に持ち上がる。これにより、カラー146が導路端部148とのシールから解除される。シールが解かれると、カラーと導路端部148との間の空隙を渡って、インクメニスカスが形成される。固定バルブ部材128の端部の形状が、メニスカスを導いて、一点に固定せずに、固定バルブ部材の底面の中央に向かって移動させる。固定バルブ部材128の丸みを帯びた底面の中央で、メニスカスは、その時には殆ど水平になった底面から引き離される。最小可能エネルギー状態を実現するために、表面張力が、メニスカスを固定バルブ部材128から分離させる。メニスカス表面積の最小値への付勢力が強く、従って、分離は、インクをカートリッジバルブ114に殆ど残留させずに達成される。インクが残ったとしても、カートリッジを廃棄する前に滴下し汚れを作り得るに十分な液滴にはならない。
【0095】
新しいカートリッジがプリンタに装着されたとき、導路150内の空気は、インク流152に取り込まれカートリッジによって吸入される。この点で、入口マニホルド及びフィルタアセンブリは、高いバブル許容度を有する。図15に戻ると、インクは、固定バルブ部材128の上部を通って天井チャネル138に流れ込む。入口マニホルド116の最も高くなった箇所として、天井チャネルは、バブルを捕捉することができる。しかし、バブルはそれでもフィルタ入口158に流れ込み得る。この場合、フィルタアセンブリ自体にバブル耐性がある。
【0096】
フィルタ部材130の上流側のバブルは、流量に影響し得る。即ち、それらバブルは、フィルタ膜130の汚れ側の濡れ表面積を事実上減少させる。フィルタ膜は長い矩形を有し、従って、例えかなりの数のバブルがフィルタの汚れ側に引き込まれたとしても、必要流量のインクを濾過するのに十分大きな濡れ表面積が残る。これは、本発明によって提供される高速作動にとって極めて重要である。
【0097】
上流フィルタ室132内のバブルはフィルタ膜130を通り抜けることができないが、ガス放出によるバブルが、下流フィルタ室134内にバブルを発生させ得る。フィルタ出口156が、下流フィルタ室134の底部で上流室132の入口158とは対角線上反対側に配置され、それにより、それぞれの室内のバブルの流量への影響を最低限に抑える。
【0098】
各色のフィルタ130が、直立して近接して並んで重ねられている。隔壁162は、一方の側の上流フィルタ室132を部分的に画定し、他方の側の隣接する色の下流室134を部分的に画定する。フィルタ室はとても薄い(コンパクト設計のため)ので、フィルタ膜130は、下流フィルタ室134の反対側の壁に押し付けられ得る。これにより、フィルタ膜130の表面積が実効的に減少させられる。従って、それは最大流量に対して有害である。これを防止するために、下流室134の反対側の壁は、一連のスペーサリブ160を有し、それにより、膜130を壁から離しておく。
【0099】
又、フィルタ入口と出口を対角線上で反対の隅に配置すると、システムを最初にプライミングする際にシステムから空気を追い出すのを補助する。
【0100】
プリントヘッドが粒子で汚染される危険性を低下させるために、フィルタ膜130を第1の隔壁の下流側に溶接した後に、次の隔壁162を第1の隔壁に溶接する。このようにすると、溶接工程中に欠損するフィルタ膜130の細片があっても、フィルタ130の「汚れ」側に残る。
【0101】
LCPモールディング/可撓PCB/プリントヘッドIC
LCPモールディング64、可撓PCB108、及びプリントヘッドIC68のアセンブリが、図17〜33に示されている。図17は、可撓PCB及びプリントヘッドIC68が取り付けられたLCPモールディング64の下側の透視図である。LCPモールディング64は、皿穴166及び168を介してカートリッジシャシ100に固定されている。穴168は、熱膨張係数(CTE)のいかなるミスマッチもLCPを湾曲させることなく許容する長穴である。プリントヘッドIC68は、LCPモールディング64の長手方向全長に亘る直線の端から端まで配置されている。可撓PCB108は、一方の縁部でプリントヘッドIC68にワイヤボンドされている。可撓PCB108は又、プリントヘッドIC縁部並びにカートリッジ接点104縁部でLCPモールディングに固定されている。可撓PCBを両縁部で固定することによって、可撓PCBが湾曲支持面170(図19参照)に強固に保持される。これにより、可撓PCBが、規定の最小値よりきつい半径まで曲げられないことを保証し、それによって、可撓PCBを通る導電路が破損する危険性を低下させる。
【0102】
図18は、図17に示される部分Aの拡大図である。この図は、可撓PCB108の側端に沿ったワイヤボンディング接点164の列、及びプリントヘッドIC68の列を示す。
【0103】
図19は、LCP/可撓PCB/プリントヘッドICアセンブリの、各構成要素の下側を示す組立分解透視図である。図20は、別の分解組立透視図であり、今度は諸構成要素の上側を示す。LCPモールディング64は、その下面に密着するLCPチャネルモールディング176を有する。プリントヘッドIC68はチャネルモールディング176の下面に粘着IC取付フィルム174によって装着される。LCPチャネルモールディング176の上面にはLCP主チャネル184が来る。これらチャネルは、LCPモールディング64にあるインク入口122及びインク出口124に開放されている。LCP主チャネル184の底部には、プリントヘッドIC68に通じる一連のインク供給通路182がある。粘着IC取付フィルム174は、一連のレーザ穿孔供給孔186を有し、それにより、各プリントヘッドIC68の取付面は、インク供給通路182と流体連通状態になる。粘着IC取付フィルムの特徴が、図31〜33を参照して以下に詳細に説明される。
【0104】
LCPモールディング64は、可撓PCB108の駆動回路中の電子構成要素180を受け入れる陥凹178を有する。最適な電気効率及び作動のために、PCB108のカートリッジ接点104は、プリントヘッドIC68に近接するべきである。しかし、プリントヘッドに隣接する紙の経路を、湾曲させたり或る角度で曲げたりせずに真直ぐにするためには、カートリッジ接点104はカートリッジ96の側面に置く必要がある。可撓PCBの導電路はトレースとして知られている。可撓PCBは角部を周って湾曲しなければならないので、トレースが割れ、接続を損ない得る。これに対処するために、湾曲部に先立ってトレースを二叉に分岐させ、次いで湾曲部を過ぎて再結合してもよい。二叉部分の一方の分枝部分が割れた場合、他方の分枝が接続を維持する。不都合なことには、トレースを2つに分け、次いでそれを再び一体に結合すると、回路中にノイズを発生させる電磁干渉問題を起こさせ得る。
【0105】
トレースをより幅広くするのは、幅の広いトレースの方が有意に亀裂耐性が高い訳ではないので、効果的な解法ではない。一旦トレース中に亀裂が始まると、その亀裂は比較的速く簡単に幅全体に亘って伝播する。湾曲半径を注意深く制御することが、可撓PCBの湾曲部を横切るトレースの数を最小限に抑えることと同様に、トレースの亀裂を最小限に抑えるのにより効果的である。
【0106】
ページ幅プリントヘッドは、比較的短時間に発射しなければならない大規模なノズル配列のために、更に複雑になる。多数のノズルを一斉に発射すると、システムに大きな電流負荷が掛かる。これが、回路に高レベルのインダクタンスを発生させ得、それにより、作動に有害な一時的電圧降下が生じ得る。これを避けるために、可撓PCBは、ノズルの発射シーケンスに際して放電して回路の他の部分の電流負荷を軽減する一連のコンデンサを有する。プリントヘッドICを通過する真直ぐな紙の経路を確保する必要性から、コンデンサは、従来、可撓PCBのカートリッジ側で接点の近くに取り付けられている。不都合なことに、それらコンデンサは、可撓PCBの湾曲部分で亀裂を発生する危険を冒す追加のトレースを生じる。
【0107】
これは、コンデンサ180(図20参照)をプリントヘッドIC68の近くに隣接して取り付けてトレース損傷の可能性を減らすことによって対処される。紙の経路は、コンデンサ及び他の構成要素をLCPモールディング64中に引っ込ませることによって真直ぐのままになる。プリントヘッドIC68の下流のPCB108の比較的平坦な表面、及びカートリッジ96の「最前部」(給紙方向に対して)に装着されているペーパシールド172が、紙詰まりの危険性を最小限に抑える。
【0108】
接点を可撓PCBのその他の構成要素から離すことによって、湾曲部分を通って延在するトレースの数を最小限に抑えることができる。これにより、亀裂発生の可能性が減るので、より高い信頼性がもたらされる。回路構成要素をプリントヘッドICに隣接して配置することは、カートリッジを少し幅広くする必要があることを意味し、これはコンパクトな設計に有害である。しかし、この構成によってもたらされる利点が、少し幅広のカートリッジのいかなる欠点にも勝る。第1に、諸構成要素からの、接点の間及び周りを通るトレースが無いので、接点を大きくすることができる。大きな接点では、接続は、より信頼性が高くなり、カートリッジの接点とプリンタ側の接点との間の製造精度不足により良く対処することができる。これは、この場合に特に重要である。というのは、接点の対合が、利用者が正確にカートリッジを挿入することに懸かっているからである。
【0109】
第2に、プリントヘッドICの側部にワイヤボンドされている可撓PCBの縁部が、残留応力を受けず、湾曲半径から剥離しようとしなくなる。可撓PCBは、コンデンサ及び他の構成要素位置で支持構造体に固定することができ、その結果、プリントヘッドICへのワイヤボンディングが、製造中により容易に形成され、そのワイヤボンディングが可撓PCBを繋止するのに使用されることもないので、より亀裂を発生しにくくなる。
【0110】
第3に、コンデンサがプリントヘッドICのノズルに大幅に近付き、それにより、コンデンサを放電することによって発生する電磁干渉が最小限に抑えられる。
【0111】
図21は、可撓PCB108及びプリントヘッドIC68を示すプリントヘッドカートリッジ96の下面の拡大図である。可撓PCB108のワイヤボンディング接点164が、粘着IC取付フィルム174の下面上のプリントヘッドIC68の接点パッドに平行に並んでいる。図22は、供給孔186を見せるためにプリントヘッドIC68及び可撓PCBを取り除いた状態の図21を示す。それら孔は長手方向に4列に配置されている。各列は、1つの特定の色のインクを吐出し、各列は、各プリントヘッドICの背面のチャネルの1つだけと整列している。
【0112】
図23は、粘着IC取付フィルム174を取り外した状態のLCPチャネルモールディング176の下面を示す。これは、チャネルモールディング176の他方の面に形成されているLCP主チャネル184(図20参照)に接続されているインク供給通路182を露出している。粘着IC取付フィルム174が所定位置に貼着されると、供給通路182を部分的に画定することが理解されよう。取付フィルムは、個々の供給通路182が、フィルム174を貫通してレーザ穿孔された供給孔186と整列しなければならないので、精度良く配置されなければならないことも又理解されよう。
【0113】
図24は、LCPチャネルモールディングを取り外した状態で、LCPモールディングの下面を示す。これは、盲空洞200の配列を露出しており、盲空洞200には、圧力パルスを減衰するために、カートリッジがインクでプライミングされるとき空気が入る。このことを、より詳細に以下に説明する。
【0114】
プリントヘッドIC取付フィルム
図31〜33を簡単に参照して、粘着IC取付フィルムをより詳細に説明する。フィルム174は、レーザ穿孔され、プリントヘッドカートリッジ96に組み込むのに便利なように、リール198に巻き込まれている。取扱い及び貯蔵のために、フィルム174は2枚の防護ライナを両側に有する。一方は、レーザ穿孔以前にフィルムに取り付けられている存続ライナ188である。他方は、穿孔作業の後に追加された交換ライナ192である。図32に示されるフィルム174の切片は、供給孔186を露出するために存続ライナ188の一部が取り除かれている。フィルムの他方の面上の交換ライナ192は、供給孔186がレーザ穿孔された後に追加される。
【0115】
図33は、フィルム174の積層構造を示す。中央の織布190は積層に強度を与える。両側に粘着層194がある。粘着層194はライナで覆われている。レーザ穿孔により、フィルム174の第1の面から延出し、第2の面のライナ188内の或る位置で終端する孔186が形成される。第1の面の有孔ライナは取り外され、交換ライナ192と交換される。細長いフィルムは、次いで、取付けに先立ち、貯蔵及び取扱いのために、リール198に巻き込まれる(図31参照)。プリントヘッドカートリッジを組み立てるとき、適切な長さをリール198から引き出し、ライナを取り外し、孔186が正しいインク供給通路182と位置が合うように(図25参照)LCPモールディング64の下面にフィルムを貼着する。
【0116】
プリントヘッドIC端部へのインク供給の増強
図25は、粘着IC取付フィルム174を貫通するインク供給孔186上に重ね合わされたプリントヘッドIC68を示し、インク供給孔186は、LCPチャネルモールディング176の下面のインク供給通路182上に重ね合わされている。隣接するプリントヘッドIC68同士は、LCPチャネルモールディング176の底面上に取付フィルム174を介して端と端とを接して配置されている。隣接するプリントヘッドIC68間の連結部では、一方のIC68が、他のノズル配列220中の対応する列から横方向に変位した列中のノズルからなる「下がり3角形」206部分を有する。これにより、一方のプリントヘッドICによって印刷される端部を、隣接するプリントヘッドICによる印刷と連続的にすることができる。ノズルの下がり3角形206を変位させることによって、隣接するノズルの間隔(媒体供給に対して垂直な方向の)は、両ノズルが同じIC上にあるか、連結部の両側で異なるIC上にあるかに拘わらず、変化することがなくなる。これには、隣接するプリントヘッドIC68の正確な相対配置を必要とし、これを達成するために基準マーク204が用いられる。その工程は時間が掛かり得るが、印刷画像のアーティファクトが回避される。
【0117】
不都合なことには、プリントヘッドIC68の両端のノズルのあるものは、配列220の他の大部分のノズルに比較してインクが不足することがある。例えば、ノズル222は、2つのインク供給孔からインクを供給することができる。インク供給孔224が最も近い。しかし、障害又は孔224の左方のノズルから特に大量の需要がある場合、供給孔226がやはり222位置のノズルに近接しており、従って、これらのノズルがインク不足からプライミング解除される可能性は殆どない。
【0118】
対照的に、プリントヘッドIC68の端部に位置するノズル214は、隣接するIC68間の連結部に配置された「追加の」インク供給孔210が無かったら、インク供給孔216とのみ流体連通する。追加のインク供給孔210を有することは、インク枯渇の危険を冒すほどインク供給孔から遠いノズルが無くなることを意味する。
【0119】
インク供給孔208及び210は、共に共通のインク供給通路212から供給される。インク供給通路212は、供給孔208がその左方にしかノズルを有さず、供給孔210がその右方にしかノズルを有さないので、両方の孔に供給する容量を有する。それ故、供給通路212を通る総流量は、1つの孔だけに供給する供給通路とほぼ等しい。
【0120】
図25は、又、インク供給部のチャネル(色)の数、4チャネルと、プリントヘッドIC68の5つのチャネル218との不一致を目立たせている。プリントヘッドIC68の背面の第3及び第4のチャネル218は、同じインク供給孔186から供給される。これら供給孔は、2つのチャネル218に跨るように幾分拡張されている。
【0121】
この理由は、プリントヘッドIC68が、広範囲のプリンタ及びプリントヘッド構成に使用されるように製造されているからである。これらは、5色チャネル、CMYK及びIR(赤外)を有することもあるが、他のプリンタは、この設計のように4チャネルのみのプリンタであり得、又、他のプリンタは、更に3チャネル(CC、MM、及びY)のみであり得る。この点から、唯1つの色チャネルが、プリントヘッドICチャネルの2つに供給されることがある。プリントエンジン制御部(PEC)マイクロプロセッサは、このことをプリントヘッドICに送られる印刷データに容易に含めることができる。更に、ICの2つのノズル列に同じ色を供給することによって、不作動ノズルの補償のために用いることのできる或る程度のノズル冗長性がもたらされる。
【0122】
圧力パルス
プリントヘッドへ流れているインクが突然停止すると、インクの圧力に鋭いスパイクが生じる。これは、印刷作業又は紙面の終了時に起こり得る。本譲受人の高速ページ幅プリントヘッドは、作動中大流量のインク供給を必要とする。従って、ノズルへのインクライン中のインクの質量は比較的大きく、かなりの速度で移動している。
【0123】
印刷作業を急に終了すると、又は単に印刷紙面の終端では、比較的急速に流れているこの比較的大量のインクを即時に停止させる必要が生じる。しかし、インクの運動量を突然拘束すると、インクライン中に衝撃波を引き起こす。LCPモールディング64(図19参照)は特に剛性が高く、ライン中のインク柱が停止させられても殆ど撓まない。インクラインが追従しないことによって、衝撃波がラプラス圧力(ノズル開口でのインクの表面張力によって形成され、インクをノズルチャンバ内に保持する圧力)を超え、プリントヘッドIC68の前面を溢れさせ得る。ノズルが溢れた場合、インクが吐出せず、印刷にアーティファクトが現れることがある。
【0124】
ノズルの発射率がインクラインの共振周波数に一致すると、インク中に共振パルスが発生する。この場合も、インクラインを形成する構造の剛性が高いので、同時に発射しているある色のノズルの大部分が、インクライン中に定常波又は共振パルスを生じ得る。これにより、ラプラス圧力を超えると、ノズルの溢出し、又は逆に、スパイク後の圧力の急降下によるノズルのプライミング解除が生じ得る。
【0125】
これに対処するために、LCPモールディング64には、インクラインから圧力スパイクを取り除くパルスダンパが組み入れられている。ダンパは、インクによって圧縮することができる気体を封入した空間でよい。或いは、ダンパは、弾力的に撓み、圧力パルスを吸収することができる、インクラインの追従部分でもよい。
【0126】
設計の複雑さを最小限に抑え、コンパクトな形態を維持するために、本発明は圧縮性気体空間を使用して圧力パルスを減衰する。気体の圧縮を利用する圧力パルスの減衰は、少量の気体によって達成することができる。これにより、インク圧力の過渡スパイクによるノズルの溢出しを回避しながらコンパクトな設計が維持される。
【0127】
図24及び図26に示されるように、パルスダンパは、インクのパルスによって圧縮される単一の気体空間ではない。逆に、ダンパは、LCPモールディング64の全長に亘って設けられている空洞200の配列である。ページ幅プリントヘッドのように延伸プリントヘッドを通って移動する圧力パルスを、インク流ラインのいずれの箇所でも減衰することができる。しかし、パルスは、その後ダンパで消散させられるにせよ、プリントヘッド集積回路のノズルを通過するとノズルの溢出しを生じる。ノズル配列の直ぐ近くのインク供給導路に多数のパルスダンパを組み入れることによって、そうしなければ圧力パルスが有害な溢出しを生じる箇所でもあらゆる圧力パルスが減衰される。
【0128】
図26では、空気ダンパ空洞200が4列に配置されているところが見られる。空洞の各列は、LCPチャネルモールディング176のLCP主チャネル184の真上に位置している。主チャネル184のインクの圧力パルスは、空洞200中の空気に直接に作用し、直ぐに消散する。
【0129】
プリントヘッドのプライミング
次いで、カートリッジのプライミングを、図27に示されるLCPチャネルモールディング176を特に参照して説明する。LCPチャネルモールディング176は、流体システム(図6参照)のポンプによって主チャネル出口232に掛けられる吸引力によって、インクでプライミングされる。主チャネル184がインクで充填され、次いで、インク供給通路182及びプリントヘッドIC68が、毛管作用によって自己プライミングされる。
【0130】
主チャネル184は、比較的長く細い。更に、空気空洞200は、インクの圧力パルスを減衰しようとするなら、プライミングされないままでなければならない。これは、毛管作用によって空洞200を容易に充填することが起こり得、又は主チャネル184が捕捉空気のために完全にプライミングされないことが起こり得るプライミング工程にとって難しい問題である。LCPチャネルモールディング176を確実に完全にプライミングするために、主チャネル184は、下流端で出口232の前に堰228を有する。LCPモールディング64の空気空洞200が決してプライミングされないようにするために、空洞200は、インクのメニスカスに空洞の壁を昇らせないように導くような形状の上流側縁部をもつ開口を有する。
【0131】
カートリッジのこれらの態様が、図28A、28B、及び29A〜29Cを参照して最も良く説明される。これらの図は、プライミング工程を概略的に示す。図28A及び28Bは、主チャネルに堰がない場合に生じ得る問題を示し、図29A〜29Cは堰228の機能を示す。
【0132】
図28A及び28Bは、LCPチャネルモールディング176の主チャネル184の1つ、及びチャネルの天井にある空気空洞200の列を貫通する概略断面図である。インク238が、入口230を通って引き込まれ、主チャネル184の床に沿って流れる。前進するメニスカスが、チャネル184の床に対して急勾配の接触角度を有することに留意することが重要である。これが、インク流238の前縁部分に僅かに膨らんだ形状を与える。インクがチャネル184の端部に達すると、インクのレベルが上昇し、膨らんだ前面は、インク流の他の部分より先にチャネルの上部に接触する。図28Bに示されるように、チャネル184は、完全なプライミングが果たされておらず、このとき既に、空気が捕捉されている。この空気溜りは残留し、プリントヘッドの作動を妨害する。インク減衰特性が変化し、又、空気がインクを閉塞し得る。
【0133】
図29A〜29Cでは、チャネル184は、下流端に堰228を有する。図29Aに示されるように、インク流238は、堰228の背後で溜り、チャネルの上に向かって上昇する。堰228は、上端に、メニスカス繋止点として作用する鋭い縁240を有する。前進するメニスカスは、この繋止機構240に留められ、その結果、インクは、インクレベルが上端縁より上になっても直ちに簡単に堰228を越えて流れることはない。
【0134】
図29Bに示されるように、膨れるメニスカスは、インクがチャネル184を上部まで充填するまで、インクを上昇させる。インクが空洞200を個々の空気溜りとして密封した状態で、堰228で膨らむインクメニスカスは鋭い上端縁240から離脱し、チャネル184の端部及びインク出口232を充填する(図29C参照)。鋭い上端縁240は、インクがチャネル184の上部を充填するまでインクメニスカスが膨れるが、インクが端の空気空洞242の一部分に接触するほどにはインクを膨れさせないように、精密に配置される。メニスカスが端の空気空洞242の内部に触れそこに留められると、空洞242はインクでプライミングされ得る。従って、堰の高さ及び空洞の下のその位置は、綿密に制御される。堰228の湾曲した下流表面は、インクメニスカスに空洞242までの空隙に架橋させ得る別の繋止点を決して生じさせない。
【0135】
LCPが、空洞200をプライミングされないままに保つのに用いる別の機構は、空洞開口の上流側及び下流側の縁部の形状である。図28A、28B及び29A〜29Cに示されるように、全ての上流側縁部は湾曲した移行面234を有し、下流側縁部236は角張っている。チャネル184の天井に沿って進行するインクメニスカスは、角張った上流側縁部には留まり、次いで毛管作用によって空洞内へ上昇し得る。上流側縁部の移行面、特に湾曲した移行面234は、角張った縁部が形成する強い繋止点を排除する。
【0136】
同様に、本出願人の研究により、角張った下流側縁部236は、空洞200が幾分かのインクで不注意に充填された場合に、プライミング解除を促進することが分かった。プリンタがぶつけられ、揺すられ、若しくは傾けられ、又は、流体システムが何らかの理由で逆流せざるを得なかった場合、空洞200は完全に又は部分的にプライミングされることがある。インクがその正常な方向に再び流れると、角張った下流側縁部236は、メニスカスを本来の繋止点(即ち、角張った角部)に引き戻すのを助ける。このように、LCPチャネルモールディング176を通るインクメニスカスの移動を管理することが、カートリッジを正しくプライミングする仕組みである。
【0137】
本発明は、ここでは、単なる例として説明されてきた。当業者は、広い本発明の思想の主旨及び範囲から逸脱することのない多数の変形形態及び修正形態を思い付くであろう。従って、ここに記載され添付図面に示された実施形態は、完全に例示的であり、決して本発明を限定するものではないと考えられるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタ用プリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路と、
前記プリントヘッド集積回路を支持する支持構造体であって、前記ノズル配列にインクを供給するインク導路、を有する当該支持構造体と、
前記インク導路内のインク中の圧力パルスによって圧縮される気体を入れた流体ダンパであって、前記気体が圧縮されることにより前記圧力パルスが放散する、当該流体ダンパと、
を備えるプリントヘッド。
【請求項2】
前記流体ダンパが前記気体を保持する空洞配列を有し、
各空洞が前記気体の別々の溜まり場である、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記支持構造体の前記インク導路がインクでプライミングされたとき、前記空洞のそれぞれが、インクメニスカスによって部分的に画定される、請求項2に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記空洞のそれぞれが、1つ又は複数の前記インク導路に面している開口を有する盲陥凹である、請求項3に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
それぞれの前記盲陥凹の前記開口が、前記インク導路の1つだけに面している、請求項4に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
それぞれの前記盲陥凹の前記開口が、インクが毛管作用によって前記盲陥凹を満たすのを阻止するように構成されている、請求項5に記載のプリントヘッド。
【請求項7】
前記支持構造体が、前記インク導路をインク供給部に接続する入口と、前記インク導路を廃棄インク出口に接続する出口と、を有する、請求項6に記載のプリントヘッド。
【請求項8】
各それぞれの空洞への前記開口が、上流側縁部と、下流側縁部とを有し、
前記上流側縁部が、前記インク導路の、前記インク供給部からの最初のプライミングに際し、前記下流側縁部より先にインクに接触し、
前記上流側縁部が、前記導路と前記空洞の内部との間に移行面を有し、
前記移行面が、
前記インク導路の最初のプライミングに際しインクが毛管作用によって前記空洞を満たし前記気体を追い出す
ことを阻止するように構成されている、
請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項9】
前記プリントヘッドがページ幅プリントヘッドであり、前記支持構造体が一方の端部に前記入口、他方の端部に前記出口を有して延伸し、前記インク導路が、前記支持構造体に沿って前記入口と前記出口との間に長手方向に延在するチャネルを有し、前記チャネルのそれぞれが、それに沿って離間配置された一連のインク供給通路を有し、それによって前記チャネルと前記プリントヘッド集積回路との流体連通を形成する、請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
前記インク供給通路が、前記空洞への前記開口を備える壁に対向する前記チャネルの壁に並んで前記チャネルに接続する、請求項9に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
前記支持構造体が液晶ポリマー(LCP)である、請求項10に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
前記支持構造体が、2分割LCPモールディングであり、前記チャネル及び前記供給通路が一方の部分に形成され、前記空洞が他方の部分に形成される、請求項11に記載のプリントヘッド。
【請求項13】
前記支持構造体が、一方の側面に沿って端と端とを接して装着された複数のプリントヘッド集積回路を有する、請求項12に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
前記プリントヘッド集積回路が、当該プリントヘッド集積回路と前記側面との間に挿入された粘着フィルムを介して前記側面に装着され、
前記粘着フィルムが、前記インク供給通路と前記プリントヘッド集積回路とを流体連通させる孔を有する、請求項13に記載のプリントヘッド。
【請求項1】
インクジェットプリンタ用プリントヘッドであって、
インクを吐出するノズル配列を有するプリントヘッド集積回路と、
前記プリントヘッド集積回路を支持する支持構造体であって、前記ノズル配列にインクを供給するインク導路、を有する当該支持構造体と、
前記インク導路内のインク中の圧力パルスによって圧縮される気体を入れた流体ダンパであって、前記気体が圧縮されることにより前記圧力パルスが放散する、当該流体ダンパと、
を備えるプリントヘッド。
【請求項2】
前記流体ダンパが前記気体を保持する空洞配列を有し、
各空洞が前記気体の別々の溜まり場である、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記支持構造体の前記インク導路がインクでプライミングされたとき、前記空洞のそれぞれが、インクメニスカスによって部分的に画定される、請求項2に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記空洞のそれぞれが、1つ又は複数の前記インク導路に面している開口を有する盲陥凹である、請求項3に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
それぞれの前記盲陥凹の前記開口が、前記インク導路の1つだけに面している、請求項4に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
それぞれの前記盲陥凹の前記開口が、インクが毛管作用によって前記盲陥凹を満たすのを阻止するように構成されている、請求項5に記載のプリントヘッド。
【請求項7】
前記支持構造体が、前記インク導路をインク供給部に接続する入口と、前記インク導路を廃棄インク出口に接続する出口と、を有する、請求項6に記載のプリントヘッド。
【請求項8】
各それぞれの空洞への前記開口が、上流側縁部と、下流側縁部とを有し、
前記上流側縁部が、前記インク導路の、前記インク供給部からの最初のプライミングに際し、前記下流側縁部より先にインクに接触し、
前記上流側縁部が、前記導路と前記空洞の内部との間に移行面を有し、
前記移行面が、
前記インク導路の最初のプライミングに際しインクが毛管作用によって前記空洞を満たし前記気体を追い出す
ことを阻止するように構成されている、
請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項9】
前記プリントヘッドがページ幅プリントヘッドであり、前記支持構造体が一方の端部に前記入口、他方の端部に前記出口を有して延伸し、前記インク導路が、前記支持構造体に沿って前記入口と前記出口との間に長手方向に延在するチャネルを有し、前記チャネルのそれぞれが、それに沿って離間配置された一連のインク供給通路を有し、それによって前記チャネルと前記プリントヘッド集積回路との流体連通を形成する、請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
前記インク供給通路が、前記空洞への前記開口を備える壁に対向する前記チャネルの壁に並んで前記チャネルに接続する、請求項9に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
前記支持構造体が液晶ポリマー(LCP)である、請求項10に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
前記支持構造体が、2分割LCPモールディングであり、前記チャネル及び前記供給通路が一方の部分に形成され、前記空洞が他方の部分に形成される、請求項11に記載のプリントヘッド。
【請求項13】
前記支持構造体が、一方の側面に沿って端と端とを接して装着された複数のプリントヘッド集積回路を有する、請求項12に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
前記プリントヘッド集積回路が、当該プリントヘッド集積回路と前記側面との間に挿入された粘着フィルムを介して前記側面に装着され、
前記粘着フィルムが、前記インク供給通路と前記プリントヘッド集積回路とを流体連通させる孔を有する、請求項13に記載のプリントヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2010−521343(P2010−521343A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553864(P2009−553864)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000341
【国際公開番号】WO2008/113094
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000341
【国際公開番号】WO2008/113094
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
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