説明

流体管継手装置

【課題】1箇所の止水で、流体管の管端部部分を移動可能に接続することができる、流体管継手装置を提供する。
【解決手段】流体管継手装置2は、流体管1の管端部部分1aが挿入される受口3aを有する継手本体3と、抜け出防止体4と、止水リング5とを備える。抜け出防止体4は、管端部部分後部1bの外周に、管端側に移動不能に嵌められる。止水リング5は、受口3aに設けられて、管端部部分前部1cに密接する。受口3aには、抜け出防止体4付きの管端部部分1aである接続端部1xが、受口3aから抜け出ないように、抜け出規制部3bが設けられ、継手本体3には、接続端部1xが受口3aよりも奥方へ進入しないように、進入規制部3cが設けられる。管端部部分前部1cが止水リング5に接する範囲内で、接続端部1xが、受口3aの軸心方向Wに移動可能となるように、抜け出規制部3bと進入規制部3cとが軸心方向Wの隔たった位置に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体管の管端部部分がその長手方向に移動可能となる流体管継手装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体管の管端部部分がその長手方向に移動可能となるように接続される伸縮管継手があった(例えば、特許文献1参照)。図11に示すように、この継手11は、本体12内にスライド可能に挿入されたスライド用短管13を有していた。そして、このスライド用短管13の、本体12から突き出た一端側が、流体管10が止水状態で接続される管接続部13aとなり、本体12の奥側に位置する他端側が、本体12の内周面に対して止水状態で滑るスライド部13bとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の継手11は、本体12と流体管10とがスライド用短管13を介して接続されていた。このため、継手11は、漏水を避けるために、本体12とスライド用短管13のスライド部13bとの間の止水と、スライド用短管13の管接続部13aと流体管10との間の止水との、2箇所の止水が必要であった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、1箇所の止水で、流体管の管端部部分を移動可能に接続することができる、流体管継手装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る流体管継手装置は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る流体管継手装置は、継手本体と、抜け出防止体と、止水リングとを備える。ここにおいて、継手本体は、流体管の管端部部分が挿入される筒状の受口を有する。抜け出防止体は、前記管端部部分が前記受口から抜け出るのを防止すべく、その管端部部分における管端から離れた管端部部分後部の外周に、少なくとも管端側に移動不能に嵌められる。止水リングは、前記受口に設けられて、前記管端部部分における前記管端部部分後部よりも管端側の管端部部分前部に密接してその管端部部分前部と前記受口との間を止水する。また、前記受口には、前記抜け出防止体付きの前記管端部部分である接続端部が、前記受口から抜け出ないように、前記抜け出防止体と対向して前記接続端部の抜け出方向の移動を止める、抜け出規制部が設けられる。そして、前記継手本体には、前記接続端部が前記受口よりも奥方へ進入しないように、前記接続端部と対向してその接続端部の進入方向の移動を止める、進入規制部が設けられる。そこで、前記管端部部分前部が前記止水リングに接する範囲内で、前記接続端部が、前記受口内において相反する方向の前記抜け出方向と前記進入方向とを含めた前記受口の軸心方向に移動可能となるように、前記受口が前記軸心方向に長く形成されるとともに、前記抜け出規制部と前記進入規制部とが前記軸心方向の隔たった位置に設けられる。
【0007】
この流体管継手装置によると、継手本体の受口に流体管の管端部部分が挿入されると、受口に設けられた止水リングにより、管端部部分前部と受口との間が止水される。そして、流体管の管端部部分後部の外周には、抜止防止体が嵌められており、この抜け出防止体付きの管端部部分である接続端部は、受口において、抜け出防止体と対向する抜け出規制部により受口から抜け出すことが規制され、また、接続端部と対向する進入規制部により受口よりも奥方へ進入することが規制される。そこで、受口がその軸心方向に長く形成されるとともに、抜け出規制部と進入規制部とが軸心方向の隔たった位置に設けられることで、接続端部は、受口内において軸心方向に移動可能となり、この移動の範囲では、管端部部分前部は、止水リングに接している。こうして、この止水リングによる受口と管端部部分前部との止水という1箇所の止水で、受口と流体管との間の止水が維持され、接続端部、つまりは流体管の管端部部分は、受口に移動可能に接続される。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項1に記載の流体管継手装置において、前記抜け出防止体は、前記管端部部分後部の外周に、管端側に移動不能、かつ、反管端側に移動可能に嵌められ、前記進入規制部は、前記管端部部分の端面、または、その管端部部分に挿入されるコア部材の先端面に当接する、当接部からなってもよい。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項1に記載の流体管継手装置において、前記抜け出防止体は、前記管端部部分後部の外周に、管端側に移動不能、かつ、反管端側に移動不能に嵌められてもよい。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の流体管継手装置において、前記受口は、前記進入規制部によって前記進入方向の移動を止められた前記接続端部における前記抜け出防止体の後面に当接して前記接続端部の前記抜け出方向の移動を止める固定部材が、着脱可能に取り付けられる、固定部材取付部を有してもよい。これにより、受口の固定部材取付部へ固定部材を取り付けるか否かにより、接続端部、つまりは流体管の管端部部分を、受口に、軸心方向に移動しないように固定した状態で接続したり、軸心方向に移動可能な状態で接続したりすることができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項3に記載の流体管継手装置において、前記受口は、前記抜け出規制部によって前記抜け出方向の移動を止められた前記接続端部における前記抜け出防止体の前面に当接して前記接続端部の前記進入方向の移動を止める固定部材が、着脱可能に取り付けられる、固定部材取付部を有してもよい。これにより、受口の固定部材取付部へ固定部材を取り付けるか否かにより、接続端部、つまりは流体管の管端部部分を、受口に、軸心方向に移動しないように固定した状態で接続したり、軸心方向に移動可能な状態で接続したりすることができる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項3に記載の流体管継手装置において、前記受口は、前記軸心方向の移動の途中に位置する前記接続端部における前記抜け出防止体の後面に当接して前記接続端部の前記抜け出方向の移動を止める第1固定部材が、着脱可能に取り付けられる、第1固定部材取付部を有し、かつ、前記第1固定部材によって前記抜け出方向の移動を止められた前記接続端部における前記抜け出防止体の前面に当接して前記接続端部の前記進入方向の移動を止める第2固定部材が、着脱可能に取り付けられる、第2固定部材取付部を有してもよい。これにより、受口の固定部材取付部へ固定部材を取り付けるか否かにより、接続端部、つまりは流体管の管端部部分を、受口に、軸心方向に移動しないように固定した状態で接続したり、軸心方向に移動可能な状態で接続したりすることができる。
【0013】
また、請求項7に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の流体管継手装置において、前記管端部部分は、その管端部部分に前記抜け出防止体が付設された前記接続端部の状態で、前記受口に挿入されてもよい。
【0014】
また、請求項8に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項2に記載の流体管継手装置において、前記管端部部分は、前記抜け出防止体が装着された前記受口に対して挿入されてもよい。
【0015】
また、請求項9に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の流体管継手装置において、前記抜け出防止体は、前記受口内で、前記管端部部分とともに回動可能となってもよい。こうして、受口に対して、流体管の管端部部分が回動可能となることで、その管端部部分の、軸心方向の移動に伴って、流体管が捩れる場合であっても、その捩れを管端部部分の回動によって吸収することができる。
【0016】
また、請求項10に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の流体管継手装置において、前記抜け出防止体は、筒状の外殻と、その外殻の内側に設けられて前記流体管を係止する抜止めリングとを備え、その抜止めリングが、前記外殻内で、前記管端部部分とともに回動可能となってもよい。こうして、受口に対して、流体管の管端部部分が回動可能となることで、その管端部部分の、軸心方向の移動に伴って、流体管が捩れる場合であっても、その捩れを管端部部分の回動によって吸収することができる。
【0017】
また、請求項11に記載の発明に係る流体管継手装置のように、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の流体管継手装置において、前記抜け出防止体は、前記受口の内側に設けられて前記流体管を係止する抜止めリングを備え、その抜止めリングが、前記受口内で、前記管端部部分とともに回動可能となってもよい。こうして、受口に対して、流体管の管端部部分が回動可能となることで、その管端部部分の、軸心方向の移動に伴って、流体管が捩れる場合であっても、その捩れを管端部部分の回動によって吸収することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る流体管継手装置によれば、継手本体の受口に設けられた止水リングを直接流体管の管端部部分前部に密接させるとともに、抜け出規制部と進入規制部とを受口の隔たった位置に設けることで、受口と管端部部分前部との止水という1箇所の止水で、流体管の管端部部分を受口に移動可能に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第一の実施の形態の、断面図である。
【図2】同じく、分解斜視図である。
【図3】同じく、継手本体の断面図である。
【図4】同じく、流体管の接続端部を示す断面図である。
【図5】同じく、抜け出防止体が装着された継手本体を示す断面図である。
【図6】同じく、固定部材の取付状態を示す断面図である。
【図7】この発明の第二の実施の形態の、断面図である。
【図8】同じく、流体管の接続端部を示す断面図である。
【図9】この発明の他の実施の形態の、図1相当図である。
【図10】同じく、図6相当図である。
【図11】従来の継手を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係る流体管継手装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図6は、本発明の第一の実施の形態を示す。図中符号1は、流体管、特に配管材としての流体管であって、例えば、架橋ポリエチレンとかポリブテン等の合成樹脂管からなる。2は、前記流体管1が接続される流体管継手装置である。
【0022】
この流体管継手装置2は、流体管1の管端部部分1aが挿入される筒状の受口3aを有する継手本体3と、抜け出防止体4と、止水リング5とを備える。ここで、抜け出防止体4は、前記管端部部分1aが前記受口3aから抜け出るのを防止すべく、その管端部部分1aにおける管端から離れた管端部部分後部1bの外周に、少なくとも管端側に移動不能に嵌められる(図示実施の形態においては、管端側に移動不能、かつ、反管端側に移動可能に嵌められる)。そして、抜け出防止体4は、受口3a内で、管端部部分1aとともに回動可能となる。止水リング5は、受口3aに設けられて、管端部部分1aにおける前記管端部部分後部1bよりも管端側の管端部部分前部1cに密接してその管端部部分前部1cと受口3aとの間を止水するものである。
【0023】
また、受口3aには、抜け出防止体4付きの管端部部分1aである接続端部1xが、受口3aから抜け出ないように、抜け出防止体4(詳細には、抜け出防止体4の後面)と対向して接続端部1xの抜け出方向W1の移動を止める、抜け出規制部3bが設けられる。そして、継手本体3には、接続端部1xが受口3aよりも奥方へ進入しないように、接続端部1xと対向してその接続端部1xの進入方向W2の移動を止める、進入規制部3cが設けられる。図示実施の形態においては、この進入規制部3cは、管端部部分1aに挿入されるコア部材6の先端面に当接する、当接部からなる。
【0024】
そこで、管端部部分前部1cが止水リング5に接する範囲内で、接続端部1xが、受口3a内において相反する方向の前記抜け出方向W1と前記進入方向W2とを含めた受口3aの軸心方向Wに移動可能となるように、受口3aが前記軸心方向Wに長く形成されるとともに、抜け出規制部3bと進入規制部3cとが前記軸心方向Wの隔たった位置に設けられる。すなわち、この流体管継手装置2にあっては、施工の際とか、施工後の気温の変化や流体管1内を流れる流体の温度の変化等により、接続端部1xにその長手方向の負荷がかかった場合であっても、接続端部1xがその長手方向でもある受口3aの軸心方向Wに移動することで、その負荷が軽減される。
【0025】
ここにおいて、抜け出防止体4が、管端部部分後部1bの外周に、管端側に移動不能、かつ、反管端側に移動可能に嵌められている場合に、流体管1の接続端部1xが、受口3a内において、進入方向W2に移動する際、抜け出防止体4が留まったまま管端部部分1aのみが移動するのではなく、抜け出防止体4が管端部部分1aと一体となって(つまり、接続端部1xの状態で)移動する。すなわち、抜け出防止体4と受口3aの内周面とは、抜け出防止体4の移動に対してあまり抵抗がないように形成される。
【0026】
また、受口3aは、固定部材取付部3dを有している。この固定部材取付部3dには、進入規制部3cによって前記進入方向W2の移動を止められた接続端部1xにおける抜け出防止体4の後面に当接して接続端部1xの前記抜け出方向W1の移動を止める固定部材7が、着脱可能に取り付けられる。つまり、接続端部1xを進入規制部3cに当接する受口3aの奥端まで移動させた位置で、固定部材7を固定部材取付部3dに取り付けると、その固定部材7により、接続端部1xは、前記抜け出方向W1の移動が止められる。すなわち、接続端部1xを受口3aの奥端まで移動させた位置で固定部材7を取り付けると、接続端部1xは、受口3aに対し、軸心方向Wに移動しないように固定される。
【0027】
具体的には、継手本体3は、流体が通るように筒状に形成されて、その継手本体3の一端側が、前記受口3aとなっている。この継手本体3の内側は、受口3a部分が、流体管1の管端部部分1aおよび抜け出防止体4(つまり、接続端部1x)が収容される収容孔3eとなっており、その収容孔3eの奥端に、例えば内周面から突出する突起部からなる、前記進入規制部3cが設けられている。そして、収容孔3eの奥側は、流体管1の前記管端部部分前部1cが嵌まる径小孔3fとなり、収容孔3eの口元側は、抜け出防止体4が嵌まる径大孔3gとなっている。そして、径小孔3fの周面には、前記止水リング5が嵌まる溝3hが形成されている。
【0028】
また、受口3aには、前記抜け出規制部3bとしての抜け出規制部材301が挿入される規制部材挿入孔3iが設けらけれている。この規制部材挿入孔3iは、受口3aの外周に開口(詳細には、その外周の四方箇所に突設された凸部3jに開口)するとともに、収容孔3e(詳細には、径大孔3g)を横切るようにあけられている。そして、この受口3aには、抜け出規制部材301を掛け止める規制部材掛止部3kが設けられる。この規制部材掛止部3kは、受口3aの外周から突設されており、その先端側が、抜け出規制部材301と掛かり合うように張り出している。なお、図示実施の形態においては、抜け出規制部3bとしての抜け出規制部材301は、規制部材挿入孔3iと規制部材掛止部3kとによって構成される規制部材取付部3rに着脱可能に取り付けられるが、取外し不能に取り付けられても構わない。
【0029】
さらに、受口3aには、前記固定部材7が挿入される固定部材挿入孔3nが設けられている。この固定部材挿入孔3nは、規制部材挿入孔3iよりも受口3aの先端から離れた位置にあるが、その形態は同様であって、受口3aの外周に開口(詳細には、その外周の四方箇所に突設された凸部3pに開口)するとともに、収容孔3e(詳細には、径大孔3g)を横切るようにあけられている。そして、この受口3aには、固定部材7を掛け止める固定部材掛止部3qが設けられる。この固定部材掛止部3qは、規制部材掛止部3kと同様に、受口3aの外周から突設されており、その先端側が、固定部材7と掛かり合うように張り出している。そこで、これら固定部材挿入孔3nと固定部材掛止部3qとが、前記固定部材取付部3dとなる。
【0030】
抜け出防止体4は、筒状の外殻4aと、その外殻4aの内側に設けられて流体管1を係止する抜止めリング4bとを備える。ここで、抜止めリング4bは、内側に向けて延出されて流体管1を係止する係止爪4cを複数有している。詳細には、抜止めリング4bは、例えば、ステンレス鋼板等の、金属製の板材からなり、前記係止爪4cは、弾性変形可能であって、前記進入方向W2に傾斜するようにして内側に向けて延出される。そこで、この係止爪4cの傾斜の向きにより、前述したように、抜け出防止体4は、管端部部分後部1bの外周に、管端側に移動不能、かつ、反管端側に移動可能に嵌められることとなる。抜け出防止体4は、この抜止めリング4bを複数(図示実施の形態においては、3枚)備え、さらに、外殻4aの内側に設けられて、外殻4aの各端に位置する端部リング4dおよび中間に位置する中間リング4fを備えている。そこで、端部リング4dと中間リング4fとの間、そして、各中間リング4f、4f間に、抜止めリング4bが挟み込まれる。
【0031】
ところで、この抜け出防止体4は、流体管1(詳細には、管端部部分1a)とは、別体に形成されており、このため、流体管継手装置2における抜け出防止体4は、受口3aに装着された抜け出防止体であるか、それとも装着される前の抜け出防止体であるか、さらには、流体管1の管端部部分1aが挿入された抜け出防止体であるか、それとも挿入される前の抜け出防止体であるかは、問わない。また、継手本体3と抜け出防止体4とは、セットで販売されてもよいが、別々に販売されてもよい。
【0032】
抜け出規制部材301は、例えば、金属製の線材からなり、図2に示すように、略コ字状に形成されている。この抜け出規制部材301は、対向位置する対向片3x、3xが、流体管1を挟むように受口3aに設けられた規制部材挿入孔3i、3iに挿入されて、抜け出防止体4の後面と対向する(図1参照)。このとき、抜け出規制部材301における、対向片3x、3xを繋ぐ中間片3yが、受口3aに設けられた規制部材掛止部3kに掛かり、こうして、抜け出規制部材301は、受口3aに止められる。
【0033】
固定部材7は、図2に示すように、抜け出規制部材301と、同一材料同一形状、つまり共通の部材からなる。この固定部材7は、対向位置する対向片7x、7xが、流体管1を挟むように受口3aに設けられた固定部材挿入孔3n、3nに挿入されて、抜け出防止体4の後面に当接する(図6参照)。このとき、固定部材7における、対向片7x、7xを繋ぐ中間片7yが、受口3aに設けられた固定部材掛止部3qに掛かり、こうして、固定部材7は、受口3aに止められる。なお、抜け出規制部材301が規制部材取付部3rに着脱可能に取り付けられる場合にあっては、この固定部材7が、抜け出規制部材301と共通の部材からなることから、固定部材7を用いる際には、抜け出規制部材301を受口3aに残したまま、新たな固定部材7を固定部材挿入孔3nに挿入する以外に、抜け出規制部材301を規制部材挿入孔3iから抜いて、その抜け出規制部材301を固定部材7として用いて、固定部材挿入孔3nに挿入してもよい。
【0034】
次に、この第一の実施の形態における流体管継手装置2の作用効果について説明する。この流体管継手装置2では、流体管1の管端部部分1aは、その管端部部分1aに抜け出防止体4が付設された接続端部1xの状態で、つまり抜け出防止体4が嵌められた状態で、継手本体3の受口3aに挿入されてもよく(図2参照)、また、抜け出防止体4が挿着された受口3aに対して挿入されてもよい(図5参照)。前者の場合は、抜け出規制部材301が規制部材挿入孔3iから外された状態の受口3aに対し、接続端部1xが挿入され、その後に、抜け出規制部材301が、規制部材挿入孔3iに挿入される。後者の場合は、前もって、受口3aには、抜け出防止体4が装着され、抜け出規制部材301が規制部材挿入孔3iに挿入される。そして、この受口3aに対し、流体管1の管端部部分1aが挿入されると、受口3a内にて、管端部部分1aが抜け出防止体4を貫き、これにより、この抜け出防止体4は、管端部部分1aの外周に嵌められる。
【0035】
このように、継手本体3の受口3aに流体管1の管端部部分1aが挿入されると、受口3aに設けられた止水リング5により、管端部部分前部1cと受口3aとの間が止水される。そして、流体管1の管端部部分後部1bの外周には、抜止防止体4が嵌められており、この抜け出防止体4付きの管端部部分1aである接続端部1xは、受口3aにおいて、抜け出防止体4と対向する抜け出規制部材301(抜け出規制部3b)により受口3aから抜け出すことが規制され、また、接続端部1xと対向する進入規制部3cにより受口3aよりも奥方へ進入することが規制される。そこで、受口3aがその軸心方向Wに長く形成されるとともに、抜け出規制部材301(抜け出規制部3b)と進入規制部3cとが軸心方向Wの隔たった位置に設けられることで、接続端部1xは、受口3a内において軸心方向Wに移動可能となり、この移動の範囲では、管端部部分前部1cは、止水リング5に接している。つまり、管端部分前部1cは、接続端部1xが抜け出側に位置して抜け出防止体4が抜け出規制部材301(抜け出規制部3b)に当接する場合にも、止水リング5に接するだけの長さを有している。こうして、この止水リング5による受口3aと管端部部分前部1cとの止水という1箇所の止水で、受口3aと流体管1との間の止水が維持され、接続端部1x、つまりは流体管1の管端部部分1aは、受口3aに移動可能に接続される。
【0036】
すなわち、この流体管継手装置2にあっては、継手本体3の受口3aに設けられた止水リング5を直接流体管1の管端部部分前部1cに密接させるとともに、抜け出規制部材301(抜け出規制部3b)と進入規制部3cとを受口3aの隔たった位置に設けることで、受口と管端部部分前部との止水という1箇所の止水で、流体管1の管端部部分1aを受口3aに移動可能に接続することができる。
【0037】
また、受口3aは、固定部材取付部3dを有しており、この固定部材取付部3dへ固定部材7を取り付けるか否かにより、接続端部1x、つまりは流体管1の管端部部分1aを、受口3aに、軸心方向Wに移動しないように固定した状態で接続したり、軸心方向Wに移動可能な状態で接続したりすることができ、これらを状況に応じて使い分けることができる。
【0038】
また、抜け出防止体4は、受口3a内で、管端部部分1aとともに回動可能となっている。こうして、受口3aに対して、流体管1の管端部部分1a(詳細には、接続端部1x)が回動可能となることで、その管端部部分1a(接続端部1x)の、前記軸心方向Wの移動に伴って、流体管1が捩れる場合であっても、その捩れを管端部部分1a(接続端部1x)の回動によって吸収することができる。
【0039】
図7〜図8は、本発明の第二の実施の形態を示す。この実施の形態の流体管継手装置2は、第一の実施の形態とは、抜け出防止体4の構造が異なるが、他は同様であり、以下に、同様の部位には同一の符号を付して、異なる部分を主に説明する。
【0040】
この流体管継手装置2においては、抜け出防止体4は、流体管1の管端部部分後部1bの外周に、管端側に移動不能、かつ、反管端側に移動不能に嵌められる。そして、抜け出防止体4は、受口3a内で、管端部部分1aとともに回動可能となっている。
【0041】
具体的には、抜け出防止体4は、割リング4pと本体リング4qとから構成されている。割リング4pは、筒の周方向の一ヶ所が分断された断面C字状に形成されて、流体管1の外周に嵌められるものである。そして、この割リング4pの内周面には、流体管1に食い込むようにして係合する爪4rが設けられている。また、この割リング4pの外周面は、流体管1の先端方向側ほど径大となるように傾斜したテーパ面となっている。一方、本体リング4qは、割リング4pの外周に嵌められて、その割リング4pが流体管1を圧接するようにその割リング4pを縮径させるものである。この本体リング4qは、筒状であって、その内周面は、割リング4pの外周面と同様に、流体管1の先端方向側ほど径大となるように傾斜したテーパ面となっている。
【0042】
次に、この第二の実施の形態における流体管継手装置2の作用効果について説明する。この流体管継手装置2では、流体管1の管端部部分1aは、その管端部部分1aに抜け出防止体4が付設された接続端部1xの状態で、つまり抜け出防止体4が嵌められた状態で(図8参照)、継手本体3の受口3aに挿入される。すなわち、抜け出規制部材301が規制部材挿入孔3iから外された状態の受口3aに対し、接続端部1xが挿入され、その後に、抜け出規制部材301が、規制部材挿入孔3iに挿入される。その他の作用効果は、第一の実施と同様である。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、進入規制部3cは、流体管1の管端部部分1aに挿入されるコア部材6の先端面に当接する、当接部からなっているが、コア部材6の先端が管端部部分1aから突出しない場合とか、コア部材6が設けられない場合には、進入規制部3cは、管端部部分1aの端面に当接する、当接部からなる。また、第二の実施の形態においては、さらに、進入規制部3cは、抜け出防止体4の前面に当接する、当接部からなってもよい。
【0044】
また、抜け出規制部3bは、規制部材挿入孔3iに挿入される抜け出規制部材301からならなくとも、例えば、流体管1が通る孔を有するナット部材、例えば袋ナットからなっていてもよく、また、この袋ナットに、受口3a(詳細には、受口3aの内周面と流体管1の外周面との間)に挿入される内挿部を設けて、この内挿部の先端が抜け出防止体4と対向してもよい。
【0045】
さらに、抜け出規制部材301に替えて、図9および図10に示すように、抜け出規制部3bと固定部材7との両方を一体に備えた、兼用部材8を用いてもよい。この兼用部材8は、筒状に形成されて、その中間位置に鍔部8aを有する。そして、鍔部8aの一方の側から突出して、受口3a(詳細には、受口3aの内周面と流体管1の外周面との間)に挿入される第1内挿部8bが、前記抜け出規制部3bとなって、その先端が、抜け出防止体4(詳細には、抜け出防止体4の後面)と対向して接続端部1xの抜け出方向W1の移動を止める(図9参照)。一方、鍔部8aの他方の側から突出して、受口3a(詳細には、受口3aの内周面と流体管1の外周面との間)に挿入される第2内挿部8cが、前記固定部材7となって、その先端が、進入規制部3cによって進入方向W2の移動を止められた接続端部1xにおける抜け出防止体4の後面に当接して接続端部1xの抜け出方向W1の移動を止める(図10参照)。ここにおいて、第1内挿部8bと第2内挿部8cとの外周面には、雄ねじ8d、8eが形成されており、受口3aの内周面には、前記雄ねじ8d、8eが螺合する雌ねじ3zが形成されている。こうして、兼用部材8は、いずれかの側(つまり、第1内挿部8bまたは第2内挿部8c)が選択されて受口3aにねじ込まれることで、その受口3aに着脱可能に取り付けられる。すなわち、兼用部材8の第1内挿部8bよりも第2内挿部8cを長く形成して、この一つの兼用部材8の向きを変えることで、接続端部1x、つまりは流体管1の管端部部分1aを、軸心方向Wに移動可能な状態で接続したり、軸心方向Wに移動しないように固定した状態で接続することができ、これに際し、別途、固定部材7を用意する必要がない。
【0046】
また、受口3aには、受口3aの奥端まで移動した接続端部1xに対するように、固定部材取付部3dが設けられているが、第二の実施の形態においては、さらに、他の位置にある接続端部1xに対するように、固定部材取付部が設けられてもよい。すなわち、受口3aは、抜け出規制部3bによって抜け出方向W1の移動を止められた接続端部1xにおける抜け出防止体4の前面に当接して接続端部1xの進入方向W2の移動を止める固定部材が、着脱可能に取り付けられる、固定部材取付部を有してもよい。また、その他に、受口3aは、その受口3aの軸心方向Wの移動の途中に位置する接続端部1xにおける抜け出防止体4の後面に当接して接続端部1xの抜け出方向W1の移動を止める第1固定部材が、着脱可能に取り付けられる、第1固定部材取付部を有し、かつ、第1固定部材によって抜け出方向W1の移動を止められた接続端部1xにおける抜け出防止体4の前面に当接して接続端部1xの進入方向W2の移動を止める第2固定部材が、着脱可能に取り付けられる、第2固定部材取付部を有してもよい。
【0047】
また、これら、固定部材取付部3dとか、第1、第2固定部材取付部とかは、必要でなければ、設けられなくともよい。
【0048】
また、抜け出防止体4は、受口3a内で、管端部部分1aとともに回動可能となっているが、受口3a内で管端部部分1aを回動可能にする方法として、次のような構成であってもよい。すなわち、抜け出防止体は、筒状の外殻と、その外殻の内側に設けられて流体管1を係止する抜止めリングとを備え、その抜止めリングが、前記外殻内で、管端部部分1aとともに回動可能となってもよい。また、その他に、抜け出防止体は、受口3aの内側に設けられて流体管1を係止する抜止めリングを備え、その抜止めリングが、受口3a内で、管端部部分1aとともに回動可能となってもよい。
【0049】
また、受口3aと管端部部分1aとの止水には、1本の止水リング5が用いられているが、この止水リング5は、受口3aの軸心方向Wに並ぶようにして、2本以上用いられてもよい。そして、このように、止水リング5が複数本用いられる場合には、接続端部1xが抜け出側に位置して抜け出防止体4が抜け出規制部材301(抜け出規制部3b)に当接する場合、つまり、接続端部1xが、抜け出方向W1に最大に移動した場合に、管端部部分前部1cは、少なくとも受口3aの最も口元に近い側の止水リング5に接するだけの長さを有すればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 流体管
1a 管端部部分
1b 管端部部分後部
1c 管端部部分前部
1x 接続端部
2 流体管継手装置
3 継手本体
3a 受口
3b 抜け出規制部
3c 進入規制部
3d 固定部材取付部
4 抜け出防止体
5 止水リング
6 コア部材
7 固定部材
W1 抜け出方向
W2 進入方向
W 軸心方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管の管端部部分が挿入される筒状の受口を有する継手本体と、
前記管端部部分が前記受口から抜け出るのを防止すべく、その管端部部分における管端から離れた管端部部分後部の外周に、少なくとも管端側に移動不能に嵌められる、抜け出防止体と、
前記受口に設けられて、前記管端部部分における前記管端部部分後部よりも管端側の管端部部分前部に密接してその管端部部分前部と前記受口との間を止水する、止水リングとを、備え、
前記受口には、前記抜け出防止体付きの前記管端部部分である接続端部が、前記受口から抜け出ないように、前記抜け出防止体と対向して前記接続端部の抜け出方向の移動を止める、抜け出規制部が設けられるとともに、
前記継手本体には、前記接続端部が前記受口よりも奥方へ進入しないように、前記接続端部と対向してその接続端部の進入方向の移動を止める、進入規制部が設けられ、かつ、
前記管端部部分前部が前記止水リングに接する範囲内で、前記接続端部が、前記受口内において相反する方向の前記抜け出方向と前記進入方向とを含めた前記受口の軸心方向に移動可能となるように、前記受口が前記軸心方向に長く形成されるとともに、前記抜け出規制部と前記進入規制部とが前記軸心方向の隔たった位置に設けられることを特徴とする流体管継手装置。
【請求項2】
前記抜け出防止体は、前記管端部部分後部の外周に、管端側に移動不能、かつ、反管端側に移動可能に嵌められ、
前記進入規制部は、前記管端部部分の端面、または、その管端部部分に挿入されるコア部材の先端面に当接する、当接部からなることを特徴とする、請求項1に記載の流体管継手装置。
【請求項3】
前記抜け出防止体は、前記管端部部分後部の外周に、管端側に移動不能、かつ、反管端側に移動不能に嵌められることを特徴とする、請求項1に記載の流体管継手装置。
【請求項4】
前記受口は、前記進入規制部によって前記進入方向の移動を止められた前記接続端部における前記抜け出防止体の後面に当接して前記接続端部の前記抜け出方向の移動を止める固定部材が、着脱可能に取り付けられる、固定部材取付部を有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の流体管継手装置。
【請求項5】
前記受口は、前記抜け出規制部によって前記抜け出方向の移動を止められた前記接続端部における前記抜け出防止体の前面に当接して前記接続端部の前記進入方向の移動を止める固定部材が、着脱可能に取り付けられる、固定部材取付部を有することを特徴とする、請求項3に記載の流体管継手装置。
【請求項6】
前記受口は、前記軸心方向の移動の途中に位置する前記接続端部における前記抜け出防止体の後面に当接して前記接続端部の前記抜け出方向の移動を止める第1固定部材が、着脱可能に取り付けられる、第1固定部材取付部を有し、かつ、前記第1固定部材によって前記抜け出方向の移動を止められた前記接続端部における前記抜け出防止体の前面に当接して前記接続端部の前記進入方向の移動を止める第2固定部材が、着脱可能に取り付けられる、第2固定部材取付部を有することを特徴とする、請求項3に記載の流体管継手装置。
【請求項7】
前記管端部部分は、その管端部部分に前記抜け出防止体が付設された前記接続端部の状態で、前記受口に挿入されることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の流体管継手装置。
【請求項8】
前記管端部部分は、前記抜け出防止体が装着された前記受口に対して挿入されることを特徴とする、請求項2に記載の流体管継手装置。
【請求項9】
前記抜け出防止体は、前記受口内で、前記管端部部分とともに回動可能となっていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の流体管継手装置。
【請求項10】
前記抜け出防止体は、筒状の外殻と、その外殻の内側に設けられて前記流体管を係止する抜止めリングとを備え、その抜止めリングが、前記外殻内で、前記管端部部分とともに回動可能となっていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の流体管継手装置。
【請求項11】
前記抜け出防止体は、前記受口の内側に設けられて前記流体管を係止する抜止めリングを備え、その抜止めリングが、前記受口内で、前記管端部部分とともに回動可能となっていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の流体管継手装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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