説明

流体継手

【課題】流路内で抵抗を発生する構成部材の抵抗発生区間を短くし、より一層の低圧損化を達成する流体継手を提供する。
【解決手段】本発明の流体継手は、プラグ1とソケット2の内部に、バルブ41と、バルブ41を弁座4,10に圧接するように付勢するスプリング71と、スプリング71を位置決めし保持するスプリングホルダ61とを収容してなり、プラグ1をソケット2に挿入したときに、バルブ41が互いに当接して後退し、プラグ1とソケット2の間の流路を接続するように構成され、バルブ41はプラグ1またはソケット2の内周面に当接して軸方向の位置決めを行う最大径部42と、最大径部42から軸の両方向に向かって円錐状に縮径する傾斜面43とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソケットとプラグからなる流体継手に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、特許文献1に記載されているような従来の流体継手のプラグ1とソケット2を組み合わせた状態、図14はプラグ1とソケット2を分離した状態を示す。
【0003】
図13に示すように、プラグ1およびソケット2は、内面に流路が形成された筒状の形状を有する。プラグ1の一端の内面に設けられた雌ねじ3が形成され、ここに一方の配管がねじ結合により接続される。プラグ1の外周の中央には鋼球係止外周溝6が形成されている。
【0004】
ソケット2は図13において右側の本体部7と、左側のプラグ挿入部8とで構成されている。本体部7にはプラグ1と対称的に、一端の内面に雄ねじ9が設けられ、ここに他方の配管がねじ結合により接続される。
【0005】
ソケット2のプラグ挿入部8の開口端(図13において左端)近傍には、外面にストッパー8aが形成されるとともに、複数の孔12に鋼球13が収容されている。プラグ挿入部8の内面の中央に形成された内周溝14にはOリング15が装着されている。プラグ挿入部8の外周面にはスリーブ16が嵌挿され、スプリング17により開放端(図13において左端)に向かって付勢されている。
【0006】
図14に示すように、前記プラグ1内部に収容されたバルブ19は、プラグ1の弁座4に当接する弁本体部22と、該弁本体部22からプラグ1の開口端の外方に突出する突部23と、前記弁本体部22からプラグ1の内方に突出するバルブガイド24とからなっている。
【0007】
バルブホルダ20の一部を構成する筒部28は、その内側にバルブ19のバルブガイド24が挿入されて、バルブ19を軸方向に摺動可能に支持している。
【0008】
スプリング21は、バルブ19の弁本体部22が弁座4に当接するように付勢している。
【0009】
前記構成を備えた従来の流体継手を結合するには、まず、図14に示すように、ソケット2のスリーブ16を矢印A方向に移動させる。この状態で、プラグ1をソケット2のプラグ挿入部8に差し込むと、ソケット2の鋼球13がスリーブ16の内周溝18に後退するので、プラグ1はソケット2のプラグ挿入部8に挿入することができる。プラグ1をソケット2のプラグ挿入部8の奥まで挿入すると、プラグ1のバルブ19の突部23がソケット2のバルブ19の突部23を押圧する。これにより、図13に示すように、プラグ1のバルブ19とソケット2のバルブ19が違いに押し合って後退し、流体の移動が可能となる。スリーブ16を矢印A方向と反対側に戻すと、鋼球13がスリーブ16の内周溝18から離脱し、スリーブ16の内周面に押圧されて孔12からソケット2の内面に突出し、プラグ1の外周面に係合してロックされる。これにより、プラグ1はソケット2のプラグ挿入部8から離脱するのが阻止される。
【0010】
プラグ1とソケット2の結合を解除するには、図13に示す状態から、スリーブ16を矢印A方向に移動させ、プラグ1を引き離す方向に引っ張ると、鋼球13がスリーブ16の内周溝に後退し、プラグ1を引き抜くことができる。プラグ1がソケット2から離れると、プラグ1側とソケット2側のバルブ19がそれぞれスプリング21に付勢されて前進し、弁座4,10に圧接して、開口端が液密に閉塞されるとともに、プラグ1とソケット2の間のOリング15によるシールも開放され。この結果、プラグ1はソケット2から液漏れなく、取り外すことができる。
【0011】
【特許文献1】特開2002−295770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
配管系の流体継手では、流路径が変化せず、同一断面積を有し、流れ方向が一定であることが、圧力損失を発生させずに流量を確保する上で理想的である。しかし、前記従来の流体継手では、図15に示すように、プラグ1の流入路aから流入した流体は、プラグ1のバルブホルダ20(流路b)、スプリング21(流路c)、バルブ19の外径部(流路d)、バルブ19の狭小部(流路e)、プラグ1とソケット2の境界部(流路f)を経て、ソケット2のバルブ19の狭小部(流路g)、バルブ19の外径部(流路h)、スプリング21(流路i)、バルブホルダ20(流路j)を通って、流出路kから流出する。このような複雑な経路を有するため、断面積及び流れ方向が変化し、圧力損失が発生している。
【0013】
流体継手はこのような複雑な流路を有するため、ある程度の圧力損失は是認する必要があるが、市場では、各部の流路抵抗が小さくてより大きな流量を確保することができる低圧損型の流体継手が要望されている。
【0014】
そこで、図16に示す流体継手が提案されている。この流体継手では、バルブ33とバルブホルダ31の間に、プラグ1のバルブ33とソケット2のバルブ33が互いに当接してスプリング32が圧縮されたときに、バルブ33の外径部とバルブホルダ31の外径部とを結ぶ線に沿った円錐状の外径を有する円錐コイルバネ32を設けている。
【0015】
前記構成により、従来のような流路の段差による流れの縮小や拡大が無くなり、流体の衝突、渦の発生が無く、圧力損失を低減することができる。また、有効開口面積が大きくプラグおよびソケットの流路抵抗が大幅に減少し、同一流量を流した場合に発生する圧損抵抗を低減することができる。
【0016】
本発明では、より一層の低圧損化を達成しつつ、構造を簡単化することができる流体継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、
互いに液密に接合されるプラグとソケットのそれぞれの内部に、
バルブと、
前記バルブを前記プラグまたはソケットの内周面に形成された弁座に圧接するように付勢するスプリングと、
前記スプリングを位置決めし保持するスプリングホルダと、
をそれぞれ収容してなり、
前記プラグを前記ソケットに挿入したときに、前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブが互いに当接して前記スプリングの付勢力に抗して後退し、前記プラグと前記ソケットの間の流路を接続するように構成され、
前記バルブは前記プラグまたはソケットの内周面に当接して軸方向の位置決めを行う最大径部と、該最大径部から軸の両方向に向かって円錐状に縮径する傾斜面とからなるものである。
【0018】
上記構成により従来のようなバルブガイドを設けないので、バルブの全長を短くしソケットのスプリングホルダとプラグのスプリングホルダとの間の距離、すなわち抵抗発生区間を短くして、流路内に発生する抵抗を低減することができる。また、プラグおよびソケットの全長を短縮できるので、流体継手の設置場所を省スペース化すると共に、流体継手を構成する材料を削減し省資源化することができる。
【0019】
前記スプリングは、一端が前記スプリングホルダに支持され、他端が前記バルブに設けられたスプリング装着穴に収容されることが好ましい。
これにより、スプリングはバルブを弁座に向かって付勢することができる。
【0020】
前記バルブと前記スプリングホルダの間に設けられたスプリングは、前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブが互いに当接して前記スプリングが圧縮されたときに、前記バルブの内部に収容されることが好ましい。
【0021】
上記構成により、従来のようにスプリングで発生していた抵抗を削除することができる。また、プラグをソケットに装着した状態で、プラグのスプリングホルダとソケットのスプリングホルダとの間で2つのバルブが隙間のない連続した流路を形成することで流路の抵抗を低減すると共に、バルブを軸方向に安定して位置決めすることができる。
【0022】
前記スプリングは、前記スプリング装着穴に内接する外径を有することが好ましい。
これにより、スプリングが伸縮してもバルブを中心軸に保持することができる。
【0023】
前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブとが対向するそれぞれの端部のうち、いずれか一方の端部に凹部が、他方の端部に凸部が形成されることが好ましい。
従って、ソケットにプラグが装着される際に、プラグのバルブとソケットのバルブとが確実に噛合し、バルブに中心ズレが生じることによる流体通過時の不必要な抵抗増大を防止することができる。
【0024】
前記凹部は前記プラグのバルブ端部に形成されることが好ましい。
これにより、プラグとソケットを分離した状態では通常、ソケットは配管に装着されたままの場合が多いが、プラグはホースなどに接続されるのでバルブの先端に位置するプラグ側当接部は他の部材と衝突する場合があり、特にバルブ先端が突起形状であれば傷が付き易い。バルブ先端に傷が付けば、プラグをソケットに装着した際に、バルブ間の嵌合が不安定になり、段差や隙間などが発生し流体の流れにとって抵抗となる。よって、プラグ側当接部を凹部に形成することで、他の部材と衝突して傷が付くことを防ぎ、バルブ間の嵌合を確実にして流体流れの抵抗になるのを防止することができる。
【0025】
前記スプリングホルダは、前記プラグおよびソケットの内周面に設けられた段部に係止する基部と、該基部の両縁から立ち上がる立壁と、該立壁から前記ソケットおよびプラグの中心軸と同心円上に前記バルブに向かって突出し、前記スプリングを支持する突起とからなることが好ましい。
【0026】
上記構成により、スプリングホルダの軸方向長さを短縮するので、一層、ソケットのスプリングホルダとプラグのスプリングホルダとの間の抵抗発生区間を短くして、流路内に発生する抵抗を低減すると共にプラグおよびソケットの全長を短くすることができる。また、バルブとスプリングホルダの構成を簡単化することで流体継手の製造コストを削減することができる。
【0027】
前記スプリングホルダの基部に開口を設けることが好ましい。
これにより、スプリングホルダの流路方向の表面積が小さくなり、スプリングホルダ61による圧力損失が低減され、流路内の流量を増加することができる。
【0028】
前記スプリングホルダの立壁の端部が前記プラグとソケットの内周面と当接することが好ましい。
これにより、スプリングホルダをプラグとソケットの内周面に位置決めし、スプリングホルダとプラグおよびソケットの中心がずれることを防止することができる。
【0029】
前記スプリングホルダの縁部が、前記ソケットおよびプラグの内周面に当接するように湾曲していることが好ましい。
従って、更にスプリングホルダとプラグおよびソケットの中心がずれることを防止することができる。
【0030】
前記プラグ内部の流路上流側に設置された前記スプリングホルダの立壁は、前記基部から下流方向に向かって立ち上がることが好ましい。
これにより、立壁を上流に向かって立ち上がる場合と比べて、圧力損失が大きい流路入り口側でのスプリングホルダによる抵抗を低減し、流路内の圧力抵抗を一定化して抵抗バランスを確保することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明において、バルブが最大径部を有し、この最大径部から軸の両方向に向かって縮径する傾斜面からなるので従来のようなバルブガイドを必要としない。従って、バルブの全長を短くしソケットのスプリングホルダとプラグのスプリングホルダとの間の抵抗発生区間を短くして、流路内に発生する抵抗を低減することができる。また、プラグおよびソケットの全長を短縮できるので、流体継手の設置場所を省スペース化すると共に、流体継手を構成する材料を削減し省資源化することができる。
【0032】
スプリングホルダは、プラグおよびソケットの内周面に設けられた段部に係止する基部と、基部の両縁から立ち上がる立壁と、立壁からソケットおよびプラグの中心軸と同心円上に前記バルブに向かって突出し、スプリングを支持する突起とからなる。従って、スプリングホルダの軸方向長さを短縮するので一層、ソケットのスプリングホルダとプラグのスプリングホルダとの間の抵抗発生区間を短縮して、流路内に発生する抵抗を低減すると共に、プラグおよびソケットの全長を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態による流体継手の分離時の側面図。
【図2】図1の本発明の実施形態による流体継手の分離時の断面図。
【図3】図2の本発明の実施形態による流体継手を結合する途中の断面図。
【図4】図2の本発明の実施形態による流体継手の結合時の断面図。
【図5】図4の流体継手を異なる角度から見た断面図。
【図6】バルブがプラグの弁座と当接する状態を示す部分拡大断面図。
【図7】図2の流体継手に設けられたスプリングホルダを示すV−V線断面図。
【図8】図7のスプリングホルダの平面図、正面図および側面図。
【図9】図7のスプリングホルダの部分拡大平面図。
【図10】図2の流体継手のソケットを組み立てる初期段階の断面図。
【図11】図2の流体継手のソケットを組み立てる最終段階の断面図。
【図12】本発明と従来の流体継手における流量とこれにより生じる圧力損失との関係を示すグラフ。
【図13】従来の流体継手の結合時の断面図。
【図14】図13の従来の流体継手の分離時の断面図
【図15】図13の従来の流体継手の流路を示す断面図。
【図16】他の従来の流体継手の結合時の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態であるプラグ1とソケット2の側面図、図2は流体継手のプラグ1とソケット2を分離した状態、図3はプラグ1とソケット2を組み合わせる途中の状態、図4はプラグ1とソケット2を組み合わせた状態の断面図を示す。
【0036】
図1から図4において、プラグ1及びソケット2は、流路の一部形状を除いて、図13、14に示す従来の流体継手のプラグ及びソケットと実質的に同一であり、対応する部分については同一符号を附して説明を省略し、以下プラグ1内部のバルブ41、スプリングホルダ61、スプリング71について説明するが、ソケット2内部のものもプラグ1側と同一形状で、対称に配置されるので、同一符号を附して説明を省略する。また、流体は図4中の矢印方向にプラグ1及びソケット2の内部を流れると仮定するが、逆の方向に流れてもよい。
【0037】
バルブ41は、中央にプラグ1またはソケット2の内周面に向かって拡径する最大径部42と、この最大径部42から軸の両方向に向かって縮径する円錐状の傾斜面43とを有する。図6に示すように最大径部42は、プラグ1またはソケット2の内周面に当接可能で、後述するスプリング71や内圧によってプラグ1またはソケット2から抜け出るのを防止している。また、傾斜面43の最大径部42近傍には外周溝48が設けられ、この外周溝48に弁パッキン49が装着されている。この弁パッキン49はプラグ1の弁座4と当接することで、プラグ1の内部をシールし液漏れを防止している。
【0038】
プラグ1に収容されたバルブ41の一方の端部、すなわち、ソケット2のバルブ41と当接するプラグ側当接部44には、中心軸35と同心円上に凹部46が形成されている。バルブ41の他方の端部には、スプリング装着穴47が中心軸35と同心円上に形成されている。
【0039】
ソケット2に収容されたバルブ41を構成する傾斜面43の一方の端部、すなわち、前記プラグ側当接部44と当接するソケット側当接部51には、中心軸35と同心円上にプラグ側当接部44の凹部46が係合可能な凸部52が形成されている。
【0040】
スプリングホルダ61は図7および図8に示すように、略長方形状の基部64と、この基部64の両縁から立ち上げて形成された一対の立壁66と、この立壁66から突出する突起63とを備えている。基部64には平面視で半径方向外方に延びる長穴形状の開口67が形成されている。基部64はプラグ1の段部56に流路と直交するように掛け渡されている。また立壁66は流路の下流方向に向かって、基部64の両縁から立ち上がっている(図5参照)。突起63はスプリング71の終端部72bの内周面に嵌挿され、スプリング71を中心軸35周りに保持している。
【0041】
図9を参照すると、プラグ1に装着されたスプリングホルダ61は、立壁66の端部68aと68bがプラグ1の内周面に当接している。また、基部64の縁部69が、プラグ1の内周面に当接するように湾曲している。
【0042】
スプリング71は公知の弾性部材であり、バルブ41とスプリングホルダ61の間に軸方向に配設されている。図2に示すように、一方の終端部72aがバルブ41のスプリング装着穴47に嵌挿され、他方の終端部72bがスプリングホルダ61に形成された突起63に外挿されている。
【0043】
バルブ41、スプリングホルダ61、およびスプリング71を取り外した状態から、プラグ1とソケット2内部に組み立てる手順は同じであるが、ここではソケット2について説明する。ソケット2を組み立てるにはまず、図10に示すように、ソケット2の図において右側の開口端からバルブ41を挿入し、ソケット2の弁座10にバルブ41の最大径部42を当接することでソケット2にバルブ41を装着する。このバルブ41のスプリング装着穴47にスプリング71を一方の終端部72aから嵌入する。次に、スプリングホルダ61を傾けた状態でスプリングホルダ61の突起63を前記スプリング71の他方に位置する終端部72bの内周面に嵌合させ、スプリングホルダ61をバルブ41に向かって押圧する。
【0044】
スプリングホルダ61の両端がソケット2の段部56を通過しスプリングホルダ61が段部56よりもバルブ41側に位置した状態で図11に示すように、一方の端部を段部56に係止し、続いて他方の端部をスプリング71の付勢力を利用して段部56に係止させる。このとき、立壁66の端部68がソケット2の内周面と当接するので、スプリングホルダ61をソケット2の内周面に位置決めしスプリングホルダ61とソケット2の中心がずれるのを防止することができる。また、基部62の縁部69がソケット2の内周面に沿って湾曲し当接しているので、更にスプリングホルダ61とソケット2の中心がずれるのを防止することができる。以上のように、ソケット2は簡単、かつ確実に組み立てることができる。
【0045】
前記のように組み立てたプラグ1とソケット2を接続するためプラグ挿入部8にプラグ1を挿入していくと、図3に示すように、プラグ側バルブ41のプラグ側当接部44に形成された凹部46とソケット側バルブ41のソケット側当接部51に形成された凸部52とが噛合する。これにより、バルブ41が中心軸に位置決めされるので、中心ズレが発生するのを防止し、中心ズレによる流体通過時の不必要な抵抗増大を防止することができる。
【0046】
更にプラグ1を挿入していくと、スプリング71はスプリング装着穴47の内周面に摺接しながら収縮する。よって、スプリング71が収縮してもバルブ41を中心軸35に保持することができる。
【0047】
プラグ1とソケット2の接続が完了すると、図4に示すように、スプリング71はスプリング装着穴47の内部に収容される。これにより、従来のようにスプリング17で発生していた抵抗を減少することができる。また、プラグ1のスプリングホルダ61とソケット2のスプリングホルダ61との間で2つのバルブ41が隙間のない連続した流路を形成することで流路の抵抗を削減すると共に、バルブ41を軸方向に安定して位置決めすることができる。
【0048】
バルブ41はスプリング装着穴47の内周面がスプリング71の外周に接触して中心ズレが生じないので、従来のようなバルブガイド24を必要としない。よって、バルブ41の全長が短くなり、図4に示すように、プラグ1をソケット2に接続した状態でソケット2のスプリングホルダ61とプラグ1のスプリングホルダ61との間の抵抗発生区間L1が短くなるので、流路内に発生する抵抗を低減することができる。
【0049】
また、スプリングホルダ61が段部56に係止する基部64からなるので、スプリングホルダ61の中心軸35方向長さが短くなり、一層、前記抵抗発生区間L1を短くすることができる。ここでは例えば、図16に示す従来の流体継手の抵抗発生区間L11の寸法が74mmに対し、図4に示す本発明の抵抗発生区間L1は47mmまで短くなっている。
【0050】
抵抗発生区間L1を短くすることにより、プラグ1およびソケット2の接続後の全長L2をも短くすることができるので、流体継手の設置場所を省スペース化すると共に流体継手を構成する材料を削減し省資源化することができる。ここでは例えば、従来の流体継手の全長L12が105mmに対し、本発明の全長L2は83mmまで短くなっている。
【0051】
プラグ1とソケット2を分離した状態では通常、ソケット2は配管に装着されたままの場合が多いが、プラグ1はホースなどに接続される。このため、プラグ1のバルブ41の先端に位置するプラグ側当接部44は他の部材と衝突する場合があり、特にバルブ先端が突起形状であれば傷が付き易い。バルブ先端に傷が付けばプラグ1をソケット2に装着した際に、バルブ間の嵌合が不安定になり段差や隙間などが発生し流体の流れにとって抵抗となる。よって、本発明のように、プラグ側当接部44を凹部46に形成することで他の部材と衝突などして傷が付くことを防ぎ、バルブ間の嵌合を確実にして流体流れの抵抗になるのを防止することができる。
【0052】
また、バルブ41とスプリングホルダ61の構成が前述のように単純化されているので、流体継手の製造コストを低減することができる。
【0053】
スプリングホルダ61の基部62に開口67を設けたので、スプリングホルダ61の流路方向の表面積が小さく、スプリングホルダ61による圧力損失が低減され、流路内の流量を増加することができる。
【0054】
スプリングホルダ61の基部62は、プラグ1またはソケット2内部の流路と直交方向に配設される長方形状の基部64と基部64の縁から立ち上がる立壁66とからなるので、スプリングホルダ61の強度を向上することができる。
【0055】
プラグ1内部の上流側に設置された基部62の立壁66が基部64から下流方向に向かって立ち上がるので上流に向かって立ち上がる場合と比べて、圧力損失が大きい流路入り口側でのスプリングホルダ61による抵抗を低減することができる。従って、流路内の圧力抵抗を一定化し抵抗バランスを確保することができる。
【0056】
図12に、特許文献1に記載の従来の流体継手(a)、図16に示す従来の流体継手(b)、本発明による流体継手(c)のそれぞれの両端をパイプで接続し流路を構成した回路に流体を流し、流体継手の両端で計測した圧力値から演算した流体継手内で発生している圧力損失と、そのときに流れる流量値の関係を示す。
【0057】
同一流量で対比すると、前記回路に100L/minの流体を流した場合に発生する流体継手の圧力損失は、流体継手(a)で約0.24MPa、流体継手(b)で約0.064MPa、本発明による流体継手(c)で約0.017MPaである。従って、グラフ(a)の流体継手に比べて流体継手(b)の圧力損失は27%に、本発明による流体継手(c)では約7%になり、圧力ロスが低減され流体を圧送するために必要とするエネルギーの削減が可能であることが分かる。
【0058】
また、許容される圧力損失が0.1MPaとした場合、流体継手(a)に流せる流量は約62L/min、流体継手(b)に流せる流量は約130L/min、本発明による流体継手(c)で約205L/minの流量確保が可能になる。従って、流体継手(a)と比べ本発明による流体継手(c)で流せる流量は約330%になり、ポンプおよび配管の変更が困難な場合に流量の増加を望む際に非常に有用であり、不要な投資を抑制することにも繋がる。
【0059】
本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0060】
バルブ41に関しては、本実施形態では最大径部42をバルブ41の中央に設けたが、バルブ41をプラグ1またはソケット2の弁座4、10と当接するように構成される限り、中央に限定されない。また、傾斜面43は本実施形態では側面視で直線からなるが、曲線から形成されても同様の効果を得ることができる。
【0061】
スプリングホルダ61に関しては、本実施形態では長方形状の基部64、立壁66および突起63とからなるが、バルブ41およびスプリング71を支持し位置決めする限り、形状は特に限定されない。
【符号の説明】
【0062】
1 プラグ
2 ソケット
41 バルブ
42 最大径部
43 傾斜面
44 プラグ側当接部
46 凹部
47 スプリング装着穴
51 ソケット側当接部
52 凸部
56 段部
61 スプリングホルダ
63 突起
64 基部
66 立壁
67 開口
68 端部
69 縁部
71 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに液密に接合されるプラグとソケットのそれぞれの内部に、
バルブと、
前記バルブを前記プラグまたはソケットの内周面に形成された弁座に圧接するように付勢するスプリングと、
前記スプリングを位置決めし保持するスプリングホルダと、
をそれぞれ収容してなり、
前記プラグを前記ソケットに挿入したときに、前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブが互いに当接して前記スプリングの付勢力に抗して後退し、前記プラグと前記ソケットの間の流路を接続するように構成され、
前記バルブは前記プラグまたはソケットの内周面に当接して軸方向の位置決めを行う最大径部と、該最大径部から軸の両方向に向かって円錐状に縮径する傾斜面とからなることを特徴とする流体継手。
【請求項2】
前記スプリングは、一端が前記スプリングホルダに支持され、他端が前記バルブに設けられたスプリング装着穴に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の流体継手。
【請求項3】
前記バルブと前記スプリングホルダの間に設けられたスプリングは、前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブが互いに当接して前記スプリングが圧縮されたときに、前記バルブの内部に完全に収容されることを特徴とする請求項1または2に記載の流体継手。
【請求項4】
前記スプリングは、前記スプリング装着穴に内接する外径を有することを特徴とする請求項2または3に記載の流体継手。
【請求項5】
前記プラグのバルブと前記ソケットのバルブとが対向するそれぞれの端部のうち、いずれか一方の端部に凹部が、他方の端部に凸部が形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流体継手。
【請求項6】
前記凹部は前記プラグのバルブ端部に形成されたことを特徴とする請求項5に記載の流体継手。
【請求項7】
前記スプリングホルダは、前記プラグおよびソケットの内周面に設けられた段部に係止する基部と、該基部の両縁から立ち上がる立壁と、該立壁から前記ソケットおよびプラグの中心軸と同心円上に前記バルブに向かって突出し、前記スプリングを支持する突起とからなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の流体継手。
【請求項8】
前記スプリングホルダの基部に開口を設けたことを特徴とする請求項7に記載の流体継手。
【請求項9】
前記スプリングホルダの立壁の端部が、前記プラグとソケットの内周面と当接することを特徴とする請求項7または8に記載の流体継手。
【請求項10】
前記スプリングホルダの基部の縁部が、前記ソケットおよびプラグの内周面に当接するように湾曲していることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の流体継手。
【請求項11】
前記プラグ内部の流路上流側に設置された前記スプリングホルダの立壁は、前記基部から下流方向に向かって立ち上がることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の流体継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−231883(P2011−231883A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103866(P2010−103866)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(308037797)長堀工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】