説明

流体送出装置

【課題】シリンダを分解しなくてもその内部の渣滓がたまりやすい箇所を洗浄することができる。
【解決手段】流体送出装置20は、シリンダ50と、ピストン52とを備える。ピストン52が、ピストン本体と、シール材と、流路弁とを有する。ピストン本体は連通流路を有する。連通流路は、駆動流体室60と送出流体室62とを連通させる。シール材は、ピストン本体の外周に設けられる。シール材は、シリンダ50の内面とピストン本体との間をシールする。流路弁は、連通流路内に設けられる。流路弁は、駆動流体の圧力と送出流体の圧力との差が閾値を超えると駆動流体が連通流路を通過できるよう開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体送出装置に関し、特に、シリンダを分解しなくてもその内部の渣滓がたまりやすい箇所を洗浄することができる、流体送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、超臨界水を収容した反応器に原料液を導入して超臨界水反応により処理する超臨界水反応装置を開示する。この超臨界水反応装置は、複数台のシリンダポンプが並列に配列されている。これらのシリンダポンプは、反応器に原料液を送入するポンプである。これらのシリンダポンプは、シリンダと、シリンダ内で移動自在なピストンとを有する。ピストンとシリンダの一端とにより区切られる原料液室に原料液を収容する。ピストンとシリンダの他端とにより区切られる駆動流体室に駆動流体を収容する。駆動流体室に収容した駆動流体の圧力によりピストンを移動させて原料液室の原料液をシリンダの一端側の流出口から押し出す。複数台のうちの少なくとも一台のシリンダポンプにより原料液を押し出し、その間に少なくとも一台のシリンダポンプに原料液を導入する切換え運転によって、原料液を連続的に反応器に送入するようにしている。
【0003】
特許文献1に開示された超臨界水反応装置によれば、メンテナンスを容易にし、経済性を向上させることができる。
【0004】
特許文献2は、加圧供給装置を開示する。この加圧供給装置は、シリンダポンプと、切替弁とを備える。シリンダポンプは、仕切壁と、一対のシリンダと、一対のピストンと、液供給管と、液排出管とを有する。シリンダは、仕切壁の両側に形成される。ピストンは、両シリンダ内に設けられ、ロッドにより連結される。ロッドは仕切壁を貫通する。液供給管は、両シリンダの仕切壁に近接した位置に接続される。液供給管は、導入側逆止弁を介して両シリンダに接続される。液排出管は、両シリンダのうち仕切壁からピストンの幅寸法分以上離れた位置に接続される。液排出管は、排出側逆止弁を介して両シリンダに接続される。切替弁は、加圧水を、両シリンダの加圧室に切替えて供給する。
【0005】
特許文献2に開示された加圧供給装置によれば、原料液を加圧しながら原料液に任意の割合で水を混合することができ、かつ、それと同時に排出側逆止弁の洗浄が行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−271468号公報
【特許文献2】特開2001−123961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された超臨界水反応装置と特許文献2に開示された加圧供給装置とには、シリンダ内のうち原料液が出入りする部分に渣滓がたまりやすいという問題点がある。特許文献1に開示された超臨界水反応装置における「原料液が出入りする部分」とは、原料液室のことである。特許文献2に開示された加圧供給装置における「原料液が出入りする部分」とは、シリンダのうちピストンと仕切壁との間の部分のことである。これらの部分には、原料液の流れが滞る箇所がしばしば生じる。そういった箇所に渣滓がたまる。いったん渣滓がたまると、これを洗浄するためにシリンダポンプを分解して洗浄する必要が生じる。このシリンダポンプを分解して洗浄するという作業は煩雑な作業である。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シリンダを分解しなくてもその内部の渣滓がたまりやすい箇所を洗浄することができる、流体送出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図面を参照して本発明の流体送出装置を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、流体送出装置20,320は、シリンダ50,350と、ピストン52,352とを備える。シリンダ50,350は、駆動流体と送出流体とを収容する。ピストン52,352は、駆動流体が出入りする駆動流体室60と送出流体が出入りする送出流体室62とにシリンダ50,350内を区切る。ピストン52,352は、駆動流体と送出流体とから力を受けることによってシリンダ50,350内でシリンダ50,350の内面に沿って移動する。ピストン52,352が、ピストン本体130,230,430と、シール材134と、流路弁132とを有する。ピストン本体130,230,430は連通流路140,290,440を有する。連通流路140,290,440は、駆動流体室60と送出流体室62とを連通させる。シール材134は、ピストン本体130,230,430の外周に設けられる。シール材134は、シリンダ50の内面とピストン本体130,230,430との間をシールする。流路弁132は、連通流路140,290,440内に設けられる。流路弁132は、駆動流体の圧力と送出流体の圧力との差が閾値を超えると駆動流体が連通流路140,290,440を通過できるよう開く。
【0011】
これによると、ピストン52の動きが止められることによって駆動流体の圧力が上昇し続けると、いずれ、駆動流体の圧力と送出流体の圧力との差が閾値を超える。駆動流体の圧力と送出流体の圧力との差が閾値を超えると流路弁132が開く。流路弁132が開くと駆動流体が連通流路140,290,440を通過できるようになる。そうなると、駆動流体が連通流路140,290,440を通過して送出流体室62に流出する。駆動流体が送出流体室62に流出するので、その駆動流体によってシリンダ50,350のうち送出流体室62が洗浄されることとなる。その結果、シリンダを分解しなくてもその内部の渣滓がたまりやすい箇所を洗浄することができる。
【0012】
また、上述した連通流路140,290が、根元部分150,260,280と、枝部分152,282とを有することが望ましい。根元部分150,260,280には、流路弁132が収容される。根元部分150,260,280は、駆動流体室60に対向する開口160を有する。枝部分152,282は、根元部分150,260,280から放射状に枝分かれしている。
【0013】
もしくは、枝部分152,282が、シリンダ50の内面に対向する開口192を有することが望ましい。
【0014】
枝部分152,282の開口192がシリンダ50の内面に対向すると、枝部分152,282を通過した駆動流体は、ピストン本体130,230とシリンダ50の内面との隙間を経て送出流体室62に流出することとなる。これにより、ピストン本体130,230とシリンダ50の内面との隙間という、渣滓がたまりやすい部分に駆動流体が流れることとなる。渣滓がたまりやすい部分に駆動流体が流れるので、渣滓がたまりやすい部分がよく洗浄されることとなる。渣滓がたまりやすい部分がよく洗浄されるので、他の部分がよく洗浄される場合と比べ、渣滓がたまりやすい箇所を効果的に洗浄することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シリンダを分解しなくてもその内部の渣滓がたまりやすい箇所を洗浄することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる投入ユニットのフロー図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる流体送出装置の断面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる送出流体側ユニット部分の拡大図である。
【図5】図4のB−B矢視図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかるピストンの断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかるピストン本体の一部破断図である。
【図8】精製水の流路を示す概念図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる回収ユニットのフロー図である。
【図10】本発明の第3実施形態にかかる流体送出装置の断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態にかかるピストンの一部破断図である。
【図12】本発明の第1変形例にかかるピストン本体の断面図である。
【図13】図12のC−C断面図である。
【図14】本発明の第2変形例にかかるピストン本体の斜視図である。
【図15】本発明の第2変形例にかかるピストン本体を用いて試験洗浄を行った後の送出流体出入口部材の内部を示す写真である。
【図16】比較用のピストン本体を用いて試験洗浄を行った後の送出流体出入口部材の内部を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面に基づき詳細に説明する。まず、本実施形態にかかる投入ユニットについて説明する。図1は、本実施形態にかかる投入ユニットのフロー図である。本実施形態にかかる投入ユニットは、水熱合成に用いることができる。
【0019】
本実施形態にかかる投入ユニットは、第1流体送出装置20と、第2流体送出装置22と、原料タンク24と、四方弁26と、精製水タンク28と、圧送ポンプ30と、切替弁32と、第1排出弁34と、第2排出弁36と、排水タンク38と、溶液供給ライン40と、第3排出弁43と、第4排出弁45とを備える。
【0020】
第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とは、所定の高圧(本実施形態においては30MPaとする)で図示しない水熱合成装置に原料溶液(この原料溶液が本実施形態における送出流体である)を供給するポンプである。本実施形態の場合、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とは同一構造である。第1流体送出装置20と第2流体送出装置22との具体的な構造は後に説明する。
【0021】
原料タンク24は、原料溶液を蓄えるタンクである。原料タンク24から第1流体送出装置20および第2流体送出装置22へ、図示しないポンプによって原料溶液が供給される。原料溶液の具体的組成は特に限定されるものではない。原料溶液の例には、金属塩水溶液がある。
【0022】
四方弁26は、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22との間で、原料タンク24からの原料溶液の流路を切換える。また、四方弁26は、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22との間で、図示しない水熱合成装置への原料溶液の流路流路を切換える弁でもある。ある時、四方弁26は、原料タンク24から流出した原料溶液を第1流体送出装置20へ導く。これと同時に、四方弁26は、第2流体送出装置22から排出された原料溶液を水熱合成装置へ導く。別の時、四方弁26は、原料タンク24から流出した原料溶液を第2流体送出装置22へ導く。これと同時に、四方弁26は、第1流体送出装置20から排出された原料溶液を水熱合成装置へ導く。
【0023】
精製水タンク28は、精製水(この精製水が本実施形態における駆動流体である)を蓄えるタンクである。圧送ポンプ30は、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とに、上述した所定の高圧(すなわち、本実施形態においては30MPa)の精製水を供給する。この精製水は、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とが原料溶液を排出するための駆動源となる。
【0024】
切替弁32は、精製水タンク28から第1流体送出装置20または第2流体送出装置22までの流路を切換える。ある時、切替弁32は、圧送ポンプ30が精製水タンク28から吸引した精製水を第1流体送出装置20へ導く。別の時、切替弁32は、圧送ポンプ30が精製水タンク28から吸引した精製水を第2流体送出装置22へ導く。
【0025】
第1排出弁34は、第1流体送出装置20から排水タンク38へ至る流路を閉じたり開いたりする。第2排出弁36は、第2流体送出装置22から排水タンク38へ至る流路を閉じたり開いたりする。排水タンク38は、第1流体送出装置20および第2流体送出装置22から排出された精製水を蓄える。溶液供給ライン40は、図示しない水熱合成装置に原料溶液を供給する管である。第3排出弁43は溶液供給ライン40の途中に設けられる。第4排出弁45は溶液供給ライン40から分岐した管(この管の端は図示しない廃液タンクに達する。)の途中に設けられる。第3排出弁43は、溶液供給ライン40を開いたり閉じたりする。第4排出弁45は、溶液供給ライン40から分岐した管によって形成される流路を開いたり閉じたりする。
【0026】
次に、本実施形態にかかる第1流体送出装置20について説明する。上述したように、本実施形態の場合、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とが同一構造なので、第2流体送出装置22についての説明は省略する。図2は、本実施形態にかかる第1流体送出装置20の断面図である。
【0027】
第1流体送出装置20は、シリンダ50と、ピストン52とを備える。シリンダ50は、原料溶液と精製水とを収容する。ピストン52は、シリンダ50の中を駆動流体室60と送出流体室62とに区切る。駆動流体室60は精製水が出入りする空間である。送出流体室62は原料溶液が出入りする空間である。ピストン52は、シリンダ50内をその内面に沿って滑りながら移動することができる。
【0028】
シリンダ50は、チューブ54と、駆動流体側ユニット55と、送出流体側ユニット56とを有する。駆動流体側ユニット55は、チューブ54の一端に取付けられる。精製水は、駆動流体側ユニット55を経てシリンダ50の外から中に入る。精製水は、駆動流体側ユニット55を経てシリンダ50の中から外に出る。送出流体側ユニット56は、チューブ54の他端に取付けられる。原料溶液は、送出流体側ユニット56を経てシリンダ50の外から中に入る。原料溶液は、送出流体側ユニット56を経てシリンダ50の中から外に出る。
【0029】
図3は、図2のA−A矢視図である。図2と図3とを参照しつつ、駆動流体側ユニット55について説明する。駆動流体側ユニット55は、駆動流体出入口部材70と、プラグ72と、ロックナット74とを有する。
【0030】
駆動流体出入口部材70は、チューブ54の一端に直接取付けられる部材である。駆動流体出入口部材70の中を貫通孔80が貫通している。この貫通孔80はチューブ54の内部に通じている。本実施形態の場合、チューブ54の内部のうちピストン52より駆動流体出入口部材70側の部分と、これに通じている貫通孔80とが、駆動流体室60である。駆動流体出入口部材70には駆動流体入口82と駆動流体出口84と近接スイッチ取付孔86とが設けられている。この近接スイッチ取付孔86には、近接スイッチが取付けられる。本実施形態において、この近接スイッチを駆動流体側近接スイッチ88と称する。駆動流体入口82と駆動流体出口84とは上述した貫通孔80に通じている。そのため、圧送ポンプ30が第1流体送出装置20へ供給した精製水は、駆動流体入口82を経て送出流体室62の中に入る。精製水は、駆動流体出口84を経て送出流体室62の中から外に排出される。
【0031】
プラグ72は、貫通孔80の端を塞ぐ。プラグ72は孔を有する。この孔は図示しない部材によって塞がれている。ロックナット74は、プラグ72を覆うように駆動流体出入口部材70に取付けられる。
【0032】
図4は、図2における送出流体側ユニット56部分の拡大図である。図5は、図4のB−B矢視図である。図4と図5とを参照しつつ、送出流体側ユニット56について説明する。送出流体側ユニット56は、送出流体出入口部材90と、撹拌翼92と、シリンダ中子94と、軸96と、スラストベアリング98と、ドレンプラグ100と、ベアリング受け102と、ロックナット104とを有する。
【0033】
送出流体出入口部材90は、チューブ54の一端に直接取付けられる部材である。送出流体出入口部材90の中を貫通孔110が貫通している。この貫通孔110はチューブ54の内部に通じている。本実施形態の場合、チューブ54の内部のうちピストン52より送出流体出入口部材90側の部分と、これに通じている貫通孔110とが、送出流体室62である。送出流体出入口部材90には送出流体入口112と送出流体出口114と近接スイッチ取付孔116とが設けられている。送出流体入口112と送出流体出口114とは送出流体出入口部材90の貫通孔110に通じている。そのため、原料タンク24から流出して第1流体送出装置20へ導かれた原料溶液は、送出流体入口112を経て送出流体室62の外から中に入る。原料溶液は、送出流体出口114を経て送出流体室62の中から外へ出る。近接スイッチ取付孔116には、近接スイッチが取付けられる。本実施形態において、この近接スイッチを送出流体側近接スイッチ89と称する。
【0034】
送出流体出入口部材90のうち、貫通孔110の内面であって撹拌翼92を取り巻く部分には、ストッパ118が設けられている。このストッパ118は、チューブ54内でのピストン52の移動範囲を制限するという役割を果たす。このストッパ118が設けられていることにより、ピストン52と撹拌翼92とが衝突することは防止される。
【0035】
撹拌翼92は、上述した送出流体出入口部材90の貫通孔110の中に配置される。上述したように、送出流体出入口部材90の貫通孔110がチューブ54の内部に通じているので、撹拌翼92が回転すると、送出流体室62内の原料溶液が撹拌されることとなる。
【0036】
シリンダ中子94は、送出流体室62から見て撹拌翼92よりも遠い位置に配置される。シリンダ中子94は、軸96を支える。
【0037】
軸96は、シリンダ中子94を貫通している。軸96は、シリンダ中子94内で回転可能である。軸96は、撹拌翼92にトルクを与える。軸96の中心を孔120が貫通している。この孔120から原料溶液の残りを排出できる。ドレンプラグ100は、その孔120の一端に挿入される。ドレンプラグ100は、その孔120から原料溶液を排出する必要がない間、その孔120を塞ぐ。孔120を塞ぐため、ドレンプラグ100は孔120を貫通する長い軸を有している。図4においては、その軸の先端が送出流体室62に達している。
【0038】
ベアリング受け102の先端は、シリンダ中子94の中に挿入される。ベアリング受け102は、軸96とスラストベアリング98とを支える。
【0039】
ロックナット104は、シリンダ中子94を覆うように送出流体出入口部材90に取付けられる。ロックナット104は、シリンダ中子94が送出流体出入口部材90の貫通孔110から抜けないよう、シリンダ中子94を押さえる。
【0040】
図6は、ピストン52の断面図である。図6を参照しつつ、ピストン52の構造を説明する。本実施形態にかかるピストン52は、ピストン本体130と、流路弁132と、Oリング134と、流路プラグ136とを有する。
【0041】
ピストン本体130は、チューブ54の内部を駆動流体室60と送出流体室62とに区切る部材である。流路弁132は、精製水の圧力と原料溶液の圧力との差が閾値を超えると開く。後述するように、流路弁132は、連通流路140の根元部分150に収容されている。これにより、流路弁132が開くと精製水は連通流路140を通過可能になる。Oリング134は、本実施形態においてピストン本体130の外周に設けられるシール材である。Oリング134はピストン本体130の外周面とチューブ54の内周面とを塞ぐ。流路プラグ136は後に説明する。
【0042】
図7は、ピストン本体130の一部破断図である。図7を参照しつつ、ピストン本体130の構成について説明する。ピストン本体130は、連通流路140と、流路溝142とを有する。連通流路140は、駆動流体室60と送出流体室62とを連通させる、駆動流体用の流路である。流路溝142は、ピストン本体130の外周面のうち、ストッパ118に接触する面に設けられる。流路溝142は、シリンダ50の内周面とピストン本体130の外周面との間を通過した精製水が送出流体室62へ流出するための流路となる。
【0043】
連通流路140は、根元部分150と枝部分152と幹部分154とを有する。根元部分150には、流路弁132が収容される。
【0044】
根元部分150は、駆動流体側開口160と、開口側雌ねじ部162と、テーパ部164と、筒部166と、枝付け根部168とを有する。駆動流体側開口160は、駆動流体室60に対向する。これにより、駆動流体室60内の精製水は根元部分150に流入できる。開口側雌ねじ部162は、駆動流体室60から見て駆動流体側開口160の奥に設けられる。開口側雌ねじ部162には雌ねじが形成されている。テーパ部164は、駆動流体室60から見て開口側雌ねじ部162の奥に設けられる。テーパ部164の内径は、開口側雌ねじ部162から離れるにつれ、小さくなっている。筒部166は、駆動流体室60から見てテーパ部164の奥に設けられる。筒部166の内径は一定である。筒部166の内周面は平滑である。枝付け根部168は、駆動流体室60から見て筒部166の奥に設けられる。枝付け根部168には雌ねじが形成されている。
【0045】
枝部分152は、図7に示す通り、根元部分150の枝付け根部168から四方へ放射状に枝分かれしている。枝部分152は、送出流体側開口192を有する。送出流体側開口192は、チューブ54の内周面に対向する。送出流体側開口192の位置は、駆動流体室60から見てOリング134よりも送出流体室62側である。また、図7から明らかな通り、本実施形態の場合、ピストン本体130の中心から見た枝部分152が延びる方向は、ピストン本体130の中心から見た流路溝142が延びる方向と異なっている。本実施形態において、ピストン本体130の中心から見た枝部分152が延びる方向とピストン本体130の中心から見た流路溝142が延びる方向とがなす角度は、π/4ラジアンである。
【0046】
幹部分154は、根元部分150に連なる。幹部分154の内径は、根元部分150の枝付け根部168の内径よりわずかに大きい。本実施形態の場合、幹部分154には、上述した流路プラグ136がねじ込まれている。流路プラグ136はプラグ孔180を有する。このプラグ孔180が、枝部分152と同様の、精製水が流れる流路となる。
【0047】
再び図6を参照しつつ、流路弁132の構成を説明する。流路弁132は、弁体170と、弁座172と、固定部材174と、スプリング176と、反力部材178とを有する。弁体170は、筒部166内に収容される。上述したように、筒部166の内周面は平滑である。これにより、弁体170は筒部166の中で筒部166の中心軸方向に移動可能である。弁座172は、固定部材174によって、テーパ部164に押し付けられる。これにより、弁座172は根元部分150内に固定されることとなる。固定部材174は雄ねじを有する。この雄ねじは開口側雌ねじ部162の雌ねじとかみ合う。これにより、固定部材174も根元部分150内に固定されることとなる。スプリング176は、根元部分150のうち筒部166から枝付け根部168までの区間に収容されている。スプリング176はその区間に収容されているだけで、その区間の内周面に固定されている訳ではない。反力部材178は雄ねじを有する。その雄ねじは枝付け根部168の雌ねじとかみ合う。これにより、反力部材178は根元部分150内に固定されることとなる。
【0048】
弁体170と弁座172とは、互いに密着したり離れたりすることで精製水を堰き止めたり通過させたりする部材である。スプリング176は、弁体170を弁座172に押付ける。反力部材178は、弁体170からスプリング176が受ける反力を支える。
【0049】
次に、図1を参照しつつ、上記のように構成した投入ユニットを用いて原料溶液を水熱合成装置へ供給する方法について説明する。なお、上記のように構成した投入ユニットを用いて原料溶液を水熱合成装置へ供給するにあたり様々な制御を必要とするが、それらの制御は、手動によるものであってもシーケンサなどによる自動制御であってもよい。以下の説明では、一例として、図示しないシーケンサが投入ユニットを制御する場合について説明する。
【0050】
予め、第2流体送出装置22の送出流体室62に原料溶液が満杯または満杯近くに充填されていることとする。第2排出弁36は閉じていることとする。
【0051】
まず、シーケンサは、原料タンク24から第1流体送出装置20までが通じるよう、四方弁26を制御する。また、シーケンサは、第1排出弁34をこれが開くよう制御する。また、シーケンサは、第3排出弁43が開き第4排出弁45が閉じるようこれらを制御する。原料タンク24から第1流体送出装置20までが通じると、原料タンク24から流出した原料溶液が図示しないポンプによって第1流体送出装置20へ供給される。原料溶液は、第1流体送出装置20の送出流体室62へ流入する。このとき、シーケンサは、第1流体送出装置20の軸96を駆動して撹拌翼92を回転させる。撹拌翼92が回転すると送出流体室62の中の原料溶液は攪拌される。これにより、原料溶液中の微粒子は均一に分散される。第1流体送出装置20の送出流体室62へ原料溶液が流入すると、ピストン52がその原料溶液に押される。ピストン52が原料溶液に押されると、駆動流体室60から精製水が排出される。第1排出弁34が開いているので、駆動流体室60から排出された精製水は排水タンク38へ排出される。
【0052】
第1流体送出装置20へ原料溶液が流入している間、圧送ポンプ30は、第2流体送出装置22の駆動流体室60に所定の高圧の精製水を供給している。その駆動流体室60に精製水が供給されるので、その精製水の圧力がピストン52に作用する。その精製水の圧力がピストン52に作用するので、ピストン52が送出流体側ユニット56の方へ動く。ピストン52が送出流体側ユニット56の方へ動くので、送出流体室62から原料溶液が排出される。本実施形態の場合、四方弁26が設けられており、第3排出弁43が開いており、かつ、第4排出弁45が閉じているので、原料タンク24から第1流体送出装置20までが通じているとき、第2流体送出装置22から水熱合成装置までが通じている。原料溶液はピストン52に押されて第2流体送出装置22から排出されたので、その原料溶液の圧力は精製水の圧力に近い、高い圧力となっている。そのため、高圧の水熱合成装置の中へ原料溶液を供給することが可能となっている。
【0053】
その後、第1流体送出装置20のピストン52が駆動流体出入口部材70に取付けられた駆動流体側近接スイッチ88に近付くと、その駆動流体側近接スイッチ88がピストン52を検出する。その駆動流体側近接スイッチ88はピストン52を検出したことを示す信号をシーケンサに送信する。一方、第2流体送出装置22のピストン52が送出流体出入口部材90の送出流体側近接スイッチ89に近付くので、その送出流体側近接スイッチ89がピストン52を検出する。その送出流体側近接スイッチ89はピストン52を検出したことを示す信号をシーケンサに送信する。これらの信号を受信したシーケンサは、四方弁26を制御する。これにより、原料タンク24から第2流体送出装置22までが通じ、かつ、第1流体送出装置20から水熱合成装置までが通じる。四方弁26が制御される際、シーケンサは、第1排出弁34をこれが閉じるよう制御し、かつ、第2排出弁36をこれが開くよう制御する。原料タンク24からは原料溶液が引き続き供給される。圧送ポンプ30は引き続き所定の高圧で精製水を供給する。これにより、第1流体送出装置20から水熱合成装置へ原料溶液が供給され、原料タンク24から第2流体送出装置22へ原料溶液が供給されることとなる。以下、上述した動作が繰り返される。その結果、水熱合成装置へは原料溶液が供給され続けることとなる。
【0054】
次に、本実施形態にかかる第1流体送出装置20と第2流体送出装置22との内部を洗浄する方法について説明する。
【0055】
ピストン52が送出流体側近接スイッチ89に近付き、送出流体側近接スイッチ89がそのことを検出したとする。チューブ54の内部を洗浄しない場合には、この時、上述した通り、四方弁26が制御される。これに対し、チューブ54の内部を洗浄する場合には、この時、四方弁26が制御されない。さらに、チューブ54の内部を洗浄する場合には、この時、シーケンサは、第3排出弁43が閉じ第4排出弁45が開くようこれらを制御する。
【0056】
四方弁26が制御されないと、ピストン52の動きはストッパ118によって止められる。ピストン52の動きがストッパ118によって止められたまま圧送ポンプ30が精製水の供給を続けると、ピストン52の弁体170に対して精製水が与える圧力は次第に高くなる。圧力が高まった結果、スプリング176と原料溶液とが弁体170を弁座172に押付ける力よりも精製水から弁体170にかかる力の方が大きくなると、弁体170は弁座172から離れる。弁体170が弁座172から離れると、根元部分150の中を精製水が通過する。
【0057】
根元部分150の中を通過した精製水の一部は枝部分152へ流出する。枝部分152を流れた精製水は、ピストン52のピストン本体130の外周に噴出する。ピストン52のピストン本体130の外周面はチューブ54の内面および貫通孔110の内面に取り囲まれている。その結果、枝部分152を流れた精製水はチューブ54の内面および貫通孔110の内面とピストン本体130の外周面との隙間を送出流体出口114の方へ向かって流れる。これにより、その隙間が洗浄されることとなる。その精製水は、流路溝142を通って送出流体出口114へ流出する。送出流体室62へ流出した精製水は、原料溶液と混合された上で、送出流体出口114から送出流体出入口部材90の外へ排出される。
【0058】
根元部分150の中を通過し枝部分152へ流出しなかった精製水は流路プラグ136内のプラグ孔180を通過する。そのプラグ孔180の開口は送出流体室62へ対向している。これにより、プラグ孔180を通過した精製水は送出流体室62へ流出する。この精製水も、送出流体出口114から送出流体出入口部材90の外へ排出される。図8は、この時の精製水の流路を示す図である。図8に示されている白抜き矢印が、精製水の流路を示す。送出流体出入口部材90の外へ排出された精製水は、溶液供給ライン40と第4排出弁45とを経て図示しない排液タンクへ排出される。
【0059】
<効果の説明>
以上のようにして、本実施形態にかかる第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とは、ピストン52の外周面から流出した精製水によって送出流体室62内を洗浄できる。送出流体室62内を洗浄できるのは、次に述べる要件を満たすためである。その第1の要件は、連通流路140がピストン本体130内に設けられているという要件である。第2の要件は、精製水がその連通流路140を通過できるよう流路弁132が開くという要件である。
【0060】
また、本実施形態にかかる第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とは、チューブ54の内周面および貫通孔110の内周面とピストン52との外周面との隙間を洗浄できる。そのような隙間が精製水によって洗浄できるのは、上述した要件に加え、次の要件を満たすためである。その第1の要件は、精製水が連通流路140のうち枝部分152を通過してチューブ54の内周面および貫通孔110の内周面とピストン52の外周面との隙間に流出することである。第2の要件は、チューブ54の内周面および貫通孔110の内周面とピストン52との外周面との隙間を通過した精製水が、送出流体室62へ流出することである。
【0061】
また、本実施形態の場合、ピストン本体130の中心から見た枝部分152が延びる方向は、ピストン本体130の中心から見た流路溝142が延びる方向と異なっている。これにより、枝部分152と流路溝142とが同じ方向に延びている場合に比べ、送出流体側開口192から流路溝142までの距離を長くすることができる。その距離を長くした分、本実施形態にかかる第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とは、精製水による洗浄効果を高めることができる。
【0062】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について図面に基づき詳細に説明する。まず、本実施形態にかかる回収ユニットについて説明する。
【0063】
図9は、本実施形態にかかる回収ユニットのフロー図である。本実施形態にかかる回収ユニットは、図示しない水熱合成装置によって生産された製品の回収に用いることができる。本実施形態にかかる回収ユニットは、第1実施形態で説明した第1流体送出装置20と、第1実施形態で説明した第2流体送出装置22とを備える。
【0064】
第1流体送出装置20の送出流体入口112および第2流体送出装置22の送出流体入口112と、図示しない水熱合成装置とは、反応生成物供給ライン200で接続される。第1流体送出装置20の送出流体出口114および第2流体送出装置22の送出流体出口114と、製品タンク206とは、反応生成物回収ライン204で接続される。なお、反応生成物回収ライン204の途中には第1開閉弁225が設けられている。反応生成物回収ライン204から分岐した管(この管の端は図示しない廃液タンクに達する。)の途中には第2開閉弁227が設けられている。第1開閉弁225は、反応生成物回収ライン204を開いたり閉じたりする。第2開閉弁227は、反応生成物回収ライン204から分岐した管によって形成される流路を開いたり閉じたりする。
【0065】
本実施形態にかかる回収ユニットは、四方弁26を備える。四方弁26は、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22との間で水熱合成装置から供給される反応生成物(製品)の流路を切換える。また、四方弁26は、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22との間で製品タンク206への反応生成物の流路を切換える弁でもある。ある時、四方弁26は、水熱合成装置から排出された製品を第1流体送出装置20へ導く。これと同時に、四方弁26は、第2流体送出装置22から排出された製品を製品タンク206へ導く。別の時、四方弁26は、水熱合成装置から排出された製品を第2流体送出装置22へ導く。これと同時に、四方弁26は、第1流体送出装置20から排出された製品を製品タンク206へ導く。
【0066】
第1流体送出装置20の駆動流体室60の駆動流体入口82および第2流体送出装置22の駆動流体室60の駆動流体入口82と、充填水タンク208とは、それぞれ、低圧水供給路210および高圧水供給路212に接続される。低圧水供給路210には駆動流体室60へ低圧水を供給する低圧用ポンプ214を設けている。低圧水供給路210の途中にはバルブ216が設けられている。高圧水供給路212には駆動流体室60へ高圧水を供給する高圧用ポンプ218を設けている。高圧水供給路212の途中にはバルブ220が設けられている。
【0067】
次に、上記のように構成した回収ユニットを用いて水熱合成装置側から反応生成物を回収する方法について説明する。なお、第1実施形態の場合と同様に、回収ユニットを用いて反応生成物を回収するにあたり様々な制御を必要とするが、それらの制御は、手動操作によるものであってもシーケンサなどによる自動制御であってもよい。以下の説明では、一例として、作業者が回収ユニットを操作する場合について説明する。
【0068】
まず、稼動する当初において、低圧用ポンプ214を駆動することにより、充填水タンク208から第1流体送出装置20の駆動流体室60内へ低圧水を供給する。精製水が駆動流体室60内に充満したころ、作業者がバルブ216を閉じると共に低圧用ポンプ214を停止させる。また、作業者は、第1開閉弁225を開き第2開閉弁227を閉じておく。
【0069】
次いで、作業者が四方弁26を操作することで、反応生成物供給ライン200が第1流体送出装置20の送出流体室62に通じる。反応生成物供給ライン200が送出流体室62に通じると、水熱合成装置から、反応生成物が、第1流体送出装置20の送出流体室62へ供給される。反応生成物供給ライン200内の圧力は駆動流体室60内の圧力に比べると大幅に高い。これにより送出流体室62内に反応生成物が充填され、ピストン52が移動する。駆動流体室60内の精製水は、リリーフ弁222を経て排水タンク224に排出される。リリーフ弁222を経るので、精製水が排水タンク224内に排出されても、水熱合成装置内の圧力が急激に低下することはない。送出流体室62内が満杯または満杯近くになると、作業者は、四方弁26を操作し(これにより第1流体送出装置20から製品タンク206までが通じる)、高圧水供給路212のバルブ220のうち第1流体送出装置20へ通じる方のバルブ220を開き、高圧用ポンプ218を起動させる。これにより、充填水タンク208から第1流体送出装置20の駆動流体室60へ高圧水が供給される。駆動流体室60へ高圧水が供給されると、その高圧水の圧力がピストン52に働いてピストン52が送出流体室62の方へ動く。ピストン52が送出流体室62の方へ動くので、送出流体出口114から製品タンク206へ向けて反応生成物が押出し供給される。送出流体出口114から製品タンク206へ反応生成物が供給される間、送出流体室62の中の反応生成物は、撹拌翼92によって攪拌される。これにより、送出流体室62の中で反応生成物が沈殿することは回避される。
【0070】
送出流体室62から反応生成物を押出し終えると、作業者は、四方弁26を操作し(これにより第2流体送出装置22から製品タンク206までが通じる)、高圧水供給路212のバルブ220のうち第1流体送出装置20へ通じる方のバルブ220を閉じ、バルブ220のうち第2流体送出装置22へ通じる方のバルブ220を開く。これにより、高圧用ポンプ218が供給する高圧水は第2流体送出装置22の駆動流体室60に供給され始める。水熱合成装置から第1流体送出装置20の送出流体室62へ反応生成物が圧送供給され始める。第2流体送出装置22の送出流体出口114から反応生成物が製品タンク206へ向けて押出し供給される。その押出し供給の間、第2流体送出装置22の送出流体室62中の反応生成物は、撹拌翼92によって攪拌される。これにより、第2流体送出装置22の送出流体室62中で反応生成物が沈殿することは回避される。
【0071】
次に、上記のように構成した回収ユニットにおいて第1流体送出装置20と第2流体送出装置22との内部を洗浄する方法について説明する。
【0072】
ピストン52がストッパ118に近付いたとする(ピストン52がストッパ118に近付いたことを検知する方法は特に限定されず、例えば、高圧用ポンプ218の騒音が大きくなったことを作業者が聞いて検知するというものであってもよい)。送出流体室62の内部を洗浄する場合には、この時、作業者は、四方弁26を操作しない。一方、作業者は、この時、第1開閉弁225を閉じ第2開閉弁227を開く。
【0073】
四方弁26が操作されないと、ピストン52の動きはストッパ118によって止められたままとなる。ピストン52の動きがストッパ118によって止められたまま高圧用ポンプ218が精製水の供給を続けると、ピストン52の弁体170に対して精製水が与える圧力は次第に高くなる。圧力が高まった結果、スプリング176と原料溶液とが弁体170を弁座172に押付ける力よりも精製水から弁体170にかかる力の方が大きくなると、弁体170は弁座172から離れる。弁体170が弁座172から離れると、根元部分150の中を精製水が通過する。その後の動作は第1実施形態と同様である。そして、第1開閉弁225が閉じており第2開閉弁227が開いているので、反応生成物回収ライン204を通過中の精製水は図示しない廃液タンクへ流れる。
【0074】
<効果の説明>
以上のようにして、第1流体送出装置20の送出流体室62へ反応生成物を供給し、駆動流体室60へ高圧水を交互に供給することで、インラインフィルターを用いることなく、水熱合成装置から製品タンク206へ反応生成物を回収することができる。また、第1実施形態と同様に、本実施形態にかかる第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とは、ピストン52の外周面から流出した精製水によって送出流体室62内を洗浄できる。また、本実施形態にかかる第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とは、チューブ54の内周面および貫通孔110の内周面とピストン52との外周面との隙間を洗浄できる。
【0075】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について図面に基づき詳細に説明する。本実施形態にかかる投入ユニットは、第1実施形態の説明の際にあわせて説明した第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とに代え、2本の流体送出装置320を備える。本実施形態にかかる投入ユニットのその他の点は、第1実施形態にかかる投入ユニットと同様である。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
【0076】
図10は本実施形態にかかる流体送出装置の断面図である。図10を参照しつつ、本実施形態にかかる流体送出装置320について説明する。流体送出装置320は、シリンダ350と、ピストン352とを備える。シリンダ350は、原料溶液と精製水とを収容する。ピストン352は、シリンダ350の中を駆動流体室60と送出流体室62とに区切る。ピストン352は、シリンダ350内をその内面に沿って滑りながら移動することができる。
【0077】
シリンダ350は、チューブ354と、駆動流体側ユニット55と、送出流体側ユニット356とを有する。駆動流体側ユニット55と送出流体側ユニット356とは、チューブ354の両端にそれぞれ取付けられる。原料溶液は、送出流体側ユニット356を経てシリンダ350の外から中に入る。原料溶液は、送出流体側ユニット356を経てシリンダ350の中から外に出る。
【0078】
本実施形態に係る送出流体側ユニット356は、プラグ72と、ロックナット74とを有する。プラグ72の先端は、チューブ354の両端のうち、駆動流体側ユニット55とは反対側の端に挿入されている。ロックナット74は、プラグ72がチューブ354から抜け落ちないよう、チューブ354に取付けられている。
【0079】
送出流体側ユニット356のプラグ72には、これを貫通する孔が設けられている。この孔はチューブ354の内部に通じている。プラグ72の一端に三方弁42が接続されている。この三方弁42は、プラグ72を貫通する孔に通じている。三方弁42を切り替えることにより、送出流体室62に送出流体を流入させたり送出流体室62から送出流体を流出させたりできる。精製水に押されて移動しているピストン352は、このプラグ72にあたって止まる。
【0080】
なお、本実施形態の場合、チューブ354の内部のうちピストン352より駆動流体出入口部材70側の部分と、これに通じている貫通孔80とが、駆動流体室60である。チューブ354の内部のうちピストン352より送出流体側ユニット356側の部分が、送出流体室62である。
【0081】
チューブ354の駆動流体側ユニット55とは反対側の一端には雄ねじが設けられている。送出流体側ユニット356のロックナット74の内周には雌ねじが設けられている。このロックナット74の雌ねじをチューブ354の雄ねじにねじこむことで、送出流体側ユニット356のロックナット74はチューブ354に取付けられることとなる。
【0082】
図11は、ピストン352の一部破断図である。図11を参照しつつ、ピストン352の構造を説明する。本実施形態にかかるピストン352は、ピストン本体430と、ピストン本体430内に収容される流路弁132と、Oリング134とを有する。
【0083】
ピストン本体430は、チューブ354の内部を駆動流体室60と送出流体室62とに区切る部材である。ピストン本体430は、連通流路440と、流路溝442とを有する。連通流路440は、駆動流体室60と送出流体室62とを連通させる、駆動流体用の流路である。連通流路440には、流路弁132が収容される。流路溝442は、ピストン本体430の外周のうち送出流体室62に対向する面に設けられる。本実施形態にかかる流路溝442の本数は8本である。
【0084】
なお、本実施形態に係る連通流路440の構造は第1実施形態にかかる根元部分150と同様である。したがって、ここではその詳細な説明を繰り返さない。
【0085】
ちなみに、図10に示す通り、本実施形態の場合、駆動流体側ユニット55の駆動流体入口82に接続される管の途中に、圧力センサ360が取り付けられている。
【0086】
本実施形態にかかる投入ユニットの動作は、第1実施形態にかかる投入ユニットと同様である。ただし、送出流体側近接スイッチ89によってピストン52を検出する代わりに、圧力センサ230によって検出された精製水の圧力が閾値を越えたことによって、ピストン352がプラグ72にあたったことを検出する。本実施形態にかかる投入ユニットの動作は第1実施形態にかかる投入ユニットと同様なので、ここではその詳細な説明を繰り返さない。
【0087】
<効果の説明>
以上のようにして、本実施形態にかかる流体送出装置320は、ピストン352の外周面から流出した精製水によって送出流体室62内を洗浄できる。送出流体室62内を洗浄できるのは、次に述べる要件を満たすためである。その第1の要件は、連通流路440がピストン本体430内に設けられているという要件である。第2の要件は、精製水がその連通流路440を通過できるよう流路弁132が開くという要件である。
【0088】
<変形例の説明>
上述した第1流体送出装置20と第2流体送出装置22と流体送出装置320とは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述した第1流体送出装置20と第2流体送出装置22と流体送出装置320とは、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0089】
例えば、枝部分152の数は図7に示した数すなわち4本に限定されない。また、枝部分152同士がなす角は均一である必要はない。すなわち、ある方向に向く枝部分152が多く設けられてもよい。
【0090】
また、上述した投入ユニットは、2本の流体送出装置を備えている。これにより、一方の流体送出装置内の原料溶液が水熱合成装置へ供給されて残り少なくなると、引き続いて他方の流体送出装置から原料溶液を供給することができる。しかしながら、投入ユニットは、1つの流体送出装置のみを備えてもよい。また、回収ユニットが1本の流体送出装置を備えてもよい。
【0091】
また、流路プラグ136にプラグ孔180が設けられている場合、第1実施形態における軸96に代え、これより長い軸が用いられてもよい。そのような軸を用いることにより、プラグ孔180内部の空気も効率よく抜き取ることができる。
【0092】
また、流路溝142の長さは特に限定されない。すなわち、流路溝442は、ピストン本体130の中心付近に達する長さでなくともよい。
【0093】
また、流路プラグ136はプラグ孔180を有していなくともよい。この場合、幹部分154を通過した精製水はすべて枝部分152から流出することとなる。
【0094】
また、第2実施形態にかかる回収ユニットにおいて、第1流体送出装置20と第2流体送出装置22とに代え、第3実施形態にかかる流体送出装置320を用いてもよい。
【0095】
また、近接スイッチの取付形態は上述したものに限定されない。たとえば、駆動流体出入口部材70に近接スイッチ取付孔を設ける代わりに、第1流体送出装置20、第2流体送出装置22、あるいは流体送出装置320の外に一対の近接スイッチ(図示せず)を設置して、ピストン52,352の位置を検知してもよい。この場合、ピストン52,352の位置検知機構の一例は次のようなものである。まず、ピストン52,352に棒材(図示せず)が取付けられている。その棒材の先端には磁石(図示せず)が取付けられている。その棒材は駆動流体側ユニット55のプラグ72を貫通している(この場合、棒材を貫通させるため、プラグ72には図示したものよりも大きな孔が設けられており、その孔と棒材との隙間はシールされている)。したがって棒材先端の磁石はプラグ72の外にある。その棒材は、ピストン52,352の動きに伴って動くことができる。これにより、ピストン52,352の動きに伴って磁石も動く。上述した一対の近接スイッチの一方は、ピストン52,352が駆動流体側ユニット55に最も近付いたときに磁石がある辺りに配置される。他方は、ピストン52がストッパ118に接触したときに磁石がある辺り、または、ピストン352が送出流体側ユニット356のプラグ72に接触したときに磁石がある辺りに配置される。
【0096】
また、ピストン本体の具体的形態は図6に示したような形態に限定されない。図12は、ある変形例にかかるピストン本体230の断面図である。図13は図12のC−C断面図である。図12と図13とを参照しつつ、本変形例にかかるピストン本体230について説明する。
【0097】
ピストン本体230は、上述したピストン本体130と同様に、シリンダ50の内部を駆動流体室60と送出流体室62とに区切る部材である。本変形例にかかるピストン本体230は、駆動流体側部材240と、送出流体側部材242とを有する。
【0098】
駆動流体側部材240は、凸部250と、外周溝252とを有する。外周溝252にOリング134が嵌まる。凸部250の中心を、弁収容孔260が貫通している。弁収容孔260は、駆動流体側開口160と、開口側雌ねじ部162と、テーパ部164と、筒部166と、内奥側雌ねじ部268とを有する。内奥側雌ねじ部268は、駆動流体室60から見て筒部166の奥に設けられる、雌ねじが形成された部分である。
【0099】
送出流体側部材242は、凹部270と、流路溝142と、流路孔272とを有する。凹部270の中心には枝付け根部280が設けられている。枝付け根部280から、駆動流体路282が放射状に分岐している。図13に示すように、駆動流体路282は、8本設けられている。駆動流体路282の一端の開口は枝付け根部280の内周面に設けられる。駆動流体路282の他端の開口は送出流体側部材242の外周面に設けられる。
【0100】
ピストン本体230は、駆動流体側部材240の凸部250を送出流体側部材242の凹部270に挿入することで組み立てられる。駆動流体側部材240の凸部250を送出流体側部材242の凹部270に挿入すると、駆動流体側部材240の内奥側雌ねじ部268の開口が送出流体側部材242の凹部270内の枝付け根部280に対向することとなる。これにより、本変形例にかかる連通流路290が形成される。駆動流体側部材240の弁収容孔260と送出流体側部材242の枝付け根部280とが連通流路290の根元部分である。送出流体側部材242の駆動流体路282が連通流路290の枝部分である。この場合、流路孔272が連通流路290の幹部分である。
【0101】
ちなみに、このピストン本体230において、流路孔272は必ずしも必要ではない。流路孔272がないと、連通流路290の根元部分を通過した精製水はすべて枝部分からピストン本体230の外へ出ることとなる。精製水がすべて枝部分から出るので、精製水の洗浄力は向上することとなる。
【0102】
図14は、別の変形例にかかるピストン本体330の一部破断図である。図14を参照しつつ、ピストン本体330の構造を説明する。本変形例にかかるピストン本体330は、駆動流体側部材240と、送出流体側部材342とを有する。
【0103】
送出流体側部材342は、4本の流路溝142を有する。送出流体側部材342は、4本の駆動流体路282を有する。送出流体側部材342の外周のうち、駆動流体路282の出口にあたる部分には、分配溝284が設けられている。分配溝284が設けられているので、駆動流体路282から出た精製水は、分配溝284を通ってピストン本体330の外周全体に行き渡る。ピストン本体330の外周全体に精製水が行き渡るので、洗浄効果を高めることができる。
【0104】
[試験洗浄]
次に、試験洗浄の結果について説明する。試験洗浄は、約10分の原料溶液送出中に1度洗浄を行うという動作を2度行ったものである。未使用のピストン本体330にOリング134を取り付け、そのピストン本体330を未使用のシリンダ50に組み込んで上述の動作を行い、未使用の比較用のピストン本体を未使用のシリンダ50に組み込んで上述の動作をまた行った。その後、ピストン本体330と比較用のピストン本体とをシリンダ50からそれぞれ取り出し、それらの外観と送出流体出入口部材90内部とを比較した。なお、比較用のピストン本体とは、その内部には流路が一切設けられておらず、流路溝142が設けられておらず、かつ、分配溝284が設けられていない、外形がピストン本体330と同一の部材である。
【0105】
図15は、ピストン本体330を用いて上述した試験洗浄を行った後の、送出流体出入口部材90の内部を示す写真である。図16は、比較用のピストン本体を用いて上述した試験洗浄を行った後の、送出流体出入口部材90の内部を示す写真である。ピストン本体330が組み込まれた方の送出流体出入口部材90には渣滓が見あたらないのに対し、比較用のピストン本体が組み込まれた方の送出流体出入口部材90には泥状の渣滓が見られる。
【0106】
この試験洗浄結果から明らかな通り、ピストン本体330を用いると、送出流体室62の底部とシリンダ50とピストン本体330の隙間という残渣がたまりやすい箇所を、良く洗浄することができる。
【符号の説明】
【0107】
20 第1流体送出装置
22 第2流体送出装置
24 原料タンク
26 四方弁
28 精製水タンク
30 圧送ポンプ
32 切替弁
34 第1排出弁
36 第2排出弁
38 排水タンク
40 溶液供給ライン
42 三方弁
43 第3排出弁
45 第4排出弁
50,350 シリンダ
52,352 ピストン
54,354 チューブ
55 駆動流体側ユニット
56,356 送出流体側ユニット
60 駆動流体室
62 送出流体室
70 駆動流体出入口部材
72 プラグ
74,104 ロックナット
80,110 貫通孔
82 駆動流体入口
84 駆動流体出口
86,116 近接スイッチ取付孔
88 駆動流体側近接スイッチ
89 送出流体側近接スイッチ
90 送出流体出入口部材
92 撹拌翼
94 シリンダ中子
96 軸
98 スラストベアリング
100 ドレンプラグ
112 送出流体入口
114 送出流体出口
118 ストッパ
120 孔
130,230,330,430 ピストン本体
132 流路弁
134 Oリング
136 流路プラグ
140,290,440 連通流路
142,442 流路溝
150 根元部分
152 枝部分
154 幹部分
160 駆動流体側開口
162 開口側雌ねじ部
164 テーパ部
166 筒部
168,280 枝付け根部
170 弁体
172 弁座
174 固定部材
176 スプリング
178 反力部材
180 プラグ孔
192 送出流体側開口
200 反応生成物供給ライン
204 反応生成物回収ライン
206 製品タンク
208 充填水タンク
210 低圧水供給路
212 高圧水供給路
214 低圧用ポンプ
216,220 バルブ
218 高圧用ポンプ
222 リリーフ弁
224 排水タンク
225 第1開閉弁
227 第2開閉弁
230 圧力センサ
240 駆動流体側部材
242,342 送出流体側部材
250 凸部
252 外周溝
260 弁収容孔
268 内奥側雌ねじ部
270 凹部
272 流路孔
282 駆動流体路
284 分配溝
320 流体送出装置
360 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動流体と送出流体とを収容するシリンダと、
前記駆動流体が出入りする駆動流体室と前記送出流体が出入りする送出流体室とに前記シリンダ内を区切り、かつ、前記駆動流体と前記送出流体とから力を受けることによって前記シリンダ内で前記シリンダの内面に沿って移動するピストンとを備える流体送出装置であって、
前記ピストンが、
前記駆動流体室と前記送出流体室とを連通させる連通流路を有するピストン本体と、
前記ピストン本体の外周に設けられ、前記シリンダの内面と前記ピストン本体との間をシールするシール材と、
前記連通流路内に設けられ、前記駆動流体の圧力と前記送出流体の圧力との差が閾値を超えると前記駆動流体が前記連通流路を通過できるよう開く、流路弁とを有することを特徴とする、流体送出装置。
【請求項2】
前記連通流路が、
前記流路弁が収容され、かつ、前記駆動流体室に対向する開口を有する、根元部分と、
前記根元部分から放射状に枝分かれしている、枝部分とを有することを特徴とする、請求項1記載の流体送出装置。
【請求項3】
前記枝部分が、前記シリンダの内面に対向する開口を有することを特徴とする、請求項2記載の流体送出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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