説明

流体通流加熱又は冷却装置

【課題】 流体を通流して加熱又は冷却するローラなどの加熱又は冷却体を備え、加熱又は冷却体内へ流入する流体の温度の検出に基づいて加熱又は冷却体の表面を所定の温度に維持してなる流体通流加熱又は冷却装置において、流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速に影響されずに配管内を通流する流体の温度を簡単かつ適正に検出ができるようにすること。
【解決手段】 熱交換器8、9と加熱又は冷却体3を連結する配管10内に、配管10内の内壁近くを流れる流体と中央部を流れる流体とをかき混ぜる攪拌器11を挿入し、配管10内の内壁近くを流れる流体と中央部を流れる流体とをかき混ぜた直後の流体の温度を検出器12で検出する。この攪拌器の挿入する簡単な構成により配管内の流体温度がほぼ均一化され、流体の温度の検出が正確となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラや板などの内部に流体を通流し、その流体の温度をローラや板などに伝達する流体通流加熱又は冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば樹脂フィルムなどの処理物をローラに掛け、ローラに当接して通過する間に処理物を所定の温度に加熱したり、高温の処理物を所定の温度にまで奪熱することが行われている。加熱処理する場合、ローラは加熱処理に必要な温度に高められ、奪熱処理する場合、処理物からの奪熱作用によってローラ自体の温度が上昇するので、処理物の冷却に適応する温度までローラを冷却する。いずれの場合も熱を移送する媒体を必要とし、その媒体として油などの流体が使用される場合がある。
【0003】
このように流体の通流によりローラを所定の温度に維持する流体通流加熱又は冷却装置は、一般的に流体が循環する循環路中に加熱又は冷却する熱交換器が配置され、その熱交換器で所定の温度に加熱又は冷却した流体をローラ内に供給し、この所定の温度に加熱又は冷却した流体の通流でローラに熱を加え、またはローラの熱を奪うように構成されている。そして、ローラの表面温度を所定の温度に維持するためにローラ内へ流入する流体の温度を検出し、その検出とローラの表面温度を所定の温度とするための予め設定した目標値と比較し、その偏差によりローラ内を通流する流体の温度を制御している。
【特許文献1】特開2004−195888号公報
【0004】
しかし、流体の熱量、物性値(粘度、密度等)を変更あるいは流体の流度を変更すると迅速にローラの表面温度を所定の温度とすることができない場合があるといった問題があった。この問題の発生原因は、図3に示すように配管10内を流れる流体2が配管外部からの加熱または冷却に影響され、配管10内で、中央部を流れる流体2bと異なる温度の流体が流れる温度境界層2aが発生し、配管10内の流体2の温度の検出が適正でない結果によるものと考えられる。しかし、この境界層は流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速により温度差も境界層の厚みも変化するもので、配管10内の流体2の温度を常に適正に検出することはきわめて困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、流体を通流して加熱又は冷却するローラなどの加熱又は冷却体を備え、加熱又は冷却体内へ流入する流体の温度の検出に基づいて加熱又は冷却体の表面を所定の温度に維持してなる流体通流加熱又は冷却装置において、流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速に影響されずに配管内を通流する流体の温度を簡単かつ適正に検出ができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体を加熱又は冷却する熱交換器と、前記熱交換器で加熱又は冷却された流体を通流して加熱又は冷却する加熱又は冷却体と、前記加熱又は冷却体と前記熱交換器とを連結し前記熱交換器で加熱又は冷却された流体を前記加熱又は冷却体へ送る配管と、前記配管内に流れる流体の温度を検出する検出器とを有し、前記検出器の検出温度に基づいて前記加熱又は冷却体の表面温度を制御してなる流体通流加熱又は冷却装置において、前記配管内に、前記配管内を通流する流体を攪拌する攪拌器を設け、前記攪拌器を介した後の配管内に流れる流体の温度を前記検出器で検出してなることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、配管内を流れる流体を攪拌器で配管の内壁に沿って流れる流体と配管の中央部を流れる流体とをかき混ぜるので配管内を流れる流体の温度が全体的に均一化され、温度検出器の配置位置や流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速の変化に左右されることなく、配管内を通流する流体の温度を適正に検出することができ、これにより流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速の変化に影響されずに加熱器の表面温度を迅速に所定の温度にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
流体を通流して加熱又は冷却するローラなどの加熱又は冷却体を備え、加熱又は冷却体内へ流入する流体の温度の検出に基づいて加熱又は冷却体の表面を所定の温度に維持してなる流体通流加熱又は冷却装置において、流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速に影響されずに配管内を通流する流体の温度を簡単かつ適正に検出ができるようにする目的を、熱交換器と加熱又は冷却体とを連結する配管内に、配管の内壁部および中央部を流れる流体をかき混ぜる攪拌器を設けることにより実現した。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明の実施例に係る流体通流加熱又は冷却装置の構成を示すもので、図1において、3は被処理物を熱処理する加熱又は冷却体(図示例はローラ本体を構成するロールシェルである。)、4は図示しないモータにより回転してロールシェル3を回転する回転駆動軸、5は中子、6はロータリジョイント、7はポンプ、8は冷却用熱交換器、9は加熱用熱交換器、10は配管、11は攪拌器、12は流体の温度検出器、13はローラ表面の温度検出器、14は回転トランス、15は温度調節器、16はサイリスタなどの加熱電力制御回路、17は冷却水調整電磁弁である。
【0010】
ロールシェル3は円筒状をなし、この例ではその肉厚内部に長手方向に沿う密閉室3aと温度検出器を挿入する挿入孔3bが形成され、挿入孔3bには、ロールシェル3の表面温度を検出する温度検出器13が配置され、密閉室3a内には、潜熱移動によってロールシェル3の表面の温度を均一化する水などの気液二相の熱媒体が封入されている。そして、ロールシェル3の中空内部に中子5が配置され、中子5の中央部を貫通して通流路5aが形成されている。通流路5aは回転駆動軸4内を経てロータリジョイント6の流入口に連結され、ロールシェル3の内周壁と中子5の外周壁との間で形成された通流路3cは回転駆動軸2内を経てロータリジョイント6の出口に連結されている。
【0011】
ロールシェル3内を通流する流体は、ポンプ7により配管10内を通流して冷却用熱交換器8、加熱用熱交換器9を順に経由して循環する。冷却用熱交換器8は冷却水を通流して配管10内を通流する流体を適宜冷却する。加熱用熱交換器9は電熱ヒータを有し、このヒータにより配管10内を通流する流体を所定の温度に加熱してロールシェル3内へ送る。流体加熱器9からロールシェル3内へ送る配管10には、温度検出器12が挿入配置され、この温度検出器12の温度検出信号と、ロールシェル3に配置された温度検出器13の温度検出信号が温度調節器15に入力され、予め設定した目標値と比較し、その偏差信号を加熱電力制御回路に送り、電熱ヒータに供給する電力、すなわち流体の温度を制御する。また、温度調節器15の出力信号は、冷却水調整電磁弁17を制御し温度変動に伴う流体の温度応答速度を高める。なお、実施例では冷却用熱交換器8と加熱用熱交換器9を備えているが、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器のいずれかのみであってもよい。
【0012】
本発明にしたがい流体加熱器9と温度検出器12との間の配管内には、図2(a)(b)(c)に示すような配管10の内壁部および中央部を流れる加熱流体をかき混ぜる攪拌器11が挿入されている。図2に示す攪拌器11は、配管10の内径と略同径のたとえばSUSからなる筒体11aと、SUSからなる直径5mm程度で筒体11aの略内径寸法の丸棒を十文字状に形成した柵体11b、11cとからなり、筒体11aの内部に柵体11bと11cを適宜間隔を隔て、一方の柵体11bと他方の柵体11cが流体の流れる方向に対して重ならないように固定して構成されている。
【0013】
この攪拌器11の配管10内への挿入する簡単な構成により、配管10の内壁近くを流れる流体と中央部を流れる流体層とが入り混じり、図3に示すように配管10の中央部を流れる流体2bの温度と異なる温度の内壁近くを流れる流体層2aの厚みが、流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速に関わらず薄くなり、この薄さを維持する時点で流体の温度を検出することにより、流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速に影響されず、配管内を通流する流体の温度を適正に検出することができる。この検出により流体の熱量、物性値(粘度、密度等)を変更したり、流体の流度を変更しても迅速にローラの表面温度を所定の温度とすることができる。
【0014】
なお、以上の実施例では、攪拌器11は丸棒を十文字状に形成した柵体で構成しているが、この構成に限らず配管の内壁近くを流れる流体と中央部を流れる流体とをかき混ぜ、配管内を流れる流体の温度の均一化を図ることができれば、他のたとえば乱流発生器などであっても良い。
【0015】
また、以上の実施例では、加熱又は冷却体がローラであるが、加熱又は冷却体はローラに限らずたとえば平板状の加熱板やロールであっても良い。この場合、平板状の加熱板やロールの肉厚内に、潜熱移動によって表面の温度を均一化する水などの気液二相の熱媒体を封入する密閉室を形成してもよい。
【0016】
さらに、以上の実施例は、流体の温度を検出して流体の温度を制御するものであるが、流体の温度を検出して流体の通流量を制御する場合にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る流体通流加熱又は冷却装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例に係る攪拌器の構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は断面図、(c)背面図である。
【図3】配管内を流れる流体の温度分布の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
2 流体
3 ロールシェル
4 回転駆動軸
5 中子
6 ロータリジョイント
7 ポンプ
8 冷却用熱交換器
9 加熱用熱交換器
10 配管
11 攪拌器
11a 筒体
11b、11c 柵体
12 流体の温度検出器
13 ローラ表面の温度検出器
14 回転トランス
15 温度調節器
16 加熱電力制御回路
17 冷却水調整電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加熱又は冷却する熱交換器と、前記熱交換器で加熱又は冷却された流体を通流して加熱又は冷却する加熱又は冷却体と、前記加熱又は冷却体と前記熱交換器とを連結し前記熱交換器で加熱又は冷却された流体を前記加熱又は冷却体へ送る配管と、前記配管内に流れる流体の温度を検出する検出器とを有し、前記検出器の検出温度に基づいて前記加熱又は冷却体の表面温度を制御してなる流体通流加熱又は冷却装置において、前記配管内に、前記配管内を通流する流体を攪拌する攪拌器を設け、前記攪拌器を介した後の配管内に流れる流体の温度を前記検出器で検出してなることを特徴とする流体通流加熱又は冷却装置。
【請求項2】
加熱又は冷却体が流体を通流するローラであることを特徴とする請求項1に記載の流体通流加熱又は冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−276412(P2007−276412A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109349(P2006−109349)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】