説明

流出土砂計測枡、及び流出土砂計測装置

【課題】屋外の圃場などから流出する流水に含まれる土砂の量を容易且つ低コストで測定することが可能な流出土砂計測枡を提供する。
【解決手段】第1番目の分取計測室から第n番目の分取計測室及び第n+1番目の最終計測室が昇順に連接口を介して連接されて構成された計測枡において、各計測室の側面に、同形状且つ同じ高さに設けられた複数の窓部を形成するとともに、隣り合う計測室との連接口として上記窓部と同形状且つ同じ高さの連接口を形成することによって、該計測室に流入する土砂含有の流水を、一定の割合で隣り合う計測室に分取する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流水中に含まれる土砂量を測定するための計測枡、計測装置及び測定方法に関し、詳しくは、全流水から一定の割合で分取された分取水量及びこれに含まれる土砂量を計測することにより、全流水量に含まれる土砂量を簡易に算出することを可能とする流出土砂計測枡及び流出土砂計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場や開発工事現場等から流出する土砂が、河川や海域に流入して堆積することにより、生態系や自然環境、漁業、或いは観光産業等に影響を与えることが問題となっている。開発工事現場では、工事期間中の流出土砂の観測や対策工の実施等が進展している場合もあるが、特に通年に亘り問題となる圃場からの土砂流出問題は、未だ充分な解決策が見出されていないのが現状である。
【0003】
従って上記土砂流出問題の取り組みとして、まず、圃場等から流出する土砂量を把握することが求められている。現在、知られている流出土砂観測方法としては、例えば自記測定機等を用いた観測手段が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の流出土砂観測システムでは、河川に設けられた砂防ダムの袖部に水深別に複数の取水孔が設けられ、該取水口から自動的且つ連続的に取水し、土砂量や水量を測定し、データ処理装置により土砂濃度を検出可能とするシステムである。また別の流出土砂観測方法としては、降水量に見合う貯水槽を作成し、これに降雨時の流水を貯水し、貯水された流水及びこれに含まれる土砂量を、人力或いは機械的に実測する方法が考えられる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−286534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した自記測定機等を用いる流出土砂観測方法は、各農家或いは地元の農業共同組合にとってコストがかかりすぎ、導入が困難であるという問題点を有している。また後述した貯水槽に流水を貯水し実測する方法では、非常に大きい貯水槽が必要になるため該貯水槽を作成するためのスペースを確保することが困難な場合がある上、貯水された流水及びこれに含まれる土砂を人力により実測することは労力が大きすぎ、一方、実測するための機械を導入するにはコストがかかるという問題点を有している。
【0006】
従って、本発明は、上記問題点を解決し、従来の観測方法に比べてコスト及び労力を軽減することができ、簡易に流出土砂量を測定することが可能な流出土砂計測枡及び流出土砂計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流出土砂計測枡は、計測室の側面に、同形状且つ同じ高さに設けられた複数の窓部を形成するとともに、隣り合う計測室との連接口として上記窓部と同形状且つ同じ高さの連接口を形成することによって、該計測室に流入する土砂含有の流水を、一定の割合、即ち、連接口の数/(窓部の数+連接口の数)だけ隣り合う計測室に分取することを可能とするものである。
即ち、
(1)第1番目の分取計測室から第n(但し、nは2以上の整数である)番目の分取計測室及び第n+1番目の最終計測室が、昇順に、連接口を介して連接されて構成されており、上記第1番目の分取計測室から第n番目の分取計測室の其々の側面には複数の窓部を有し、また上記第1番目の分取計測室にはその上面に流入口を有し、上記窓部が、1つの分取計測室においては同形状且つ同じ高さで設けられているとともに、隣り合う分取計測室同士の関係では昇順毎に窓部底部の位置が低くなるよう形成されており、また、隣り合う分取計測室間あるいはn番目の分取計測室と第n+1番目の最終計測室との間において形成される上記連接口が、順序の小さい方の計測室の側面に設けられた窓部と同形状且つ同じ高さ位置で設けられていることを特徴とする流出土砂計測枡、
(2)上記(1)に記載の流出土砂計測枡を用いる流出土砂計測装置であって、測定対象領域から集水された流水を流すための送水路と、上記送水路内を送水される流水を一定の割合で分取することが可能な分取路と、上記(1)に記載の流出土砂計測枡と、を少なくとも備えており、上記分取路によって分取された分取水の全量が、上記流出土砂計測枡における第1番目の分取計測室に導かれることを特徴とする流出土砂計測装置、
(3)上記分取路の少なくとも上流側端部が上記送水路の下流領域に設けられており、且つ、上記分取路の上流側の端部の手前に、側面が網目状であって中空の回転可能なゴミ除去用筒体が該ゴミ除去用筒体の側面が起立する姿勢で設置されていることを特徴とする上記(2)に記載の流出土砂計測装置、及び
(4)上記送水路に流れる流水から上記分取路によってその一部が一定の割合で分取された後の排流水と当接する位置に水車羽が設けられ、一方、上記ゴミ除去用筒体内部には該筒体の一部と少なくとも連結し、上記ゴミ除去用筒体に回転運動用の動力を伝達する駆動芯が設けられ、且つ、上記水車羽の回転動力を伝達可能なトルク伝達部材により、上記水車羽と上記駆動芯とが連結されていることを特徴とする上記(3)に記載の流出土砂計測装置、
を要旨とするものである。
【0008】
尚、本発明あるいは本明細書の記載において、「上流側」とは、流水の流れる方向において、より上流の方向、即ち測定対象領域側を意味し、また 「上流領域」とは、上記上流側の領域を意味し、一方「下流側」とは、上記上流側とは反対の方向、即ち流水の流れる方向において、より下流の方向を意味し、「下流領域」とは、上記下流側の領域を意味する。
【0009】
また本明細書あるいは本明細書の記載において、単に「計測室」という場合には、分取計測室および/または最終計測室を、意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流出土砂計測枡を測定地に設置し、これに測定対象領域から流出する流水を集水して第1番目の分取計測室に流入せしめることにより、所望の割合で、順次、流水を分取することを容易に行うことができる。
即ち、第1番目の分取計測室における貯留水の量が該計測室に設けられた窓部の底面を越えると、自動的に、流水は窓部からあふれ出ると同時に、一部は連接口から第2の計測室へと流入する。第1の分取計測室の最大貯留容量を越えて流れ込んだ流水に対する、第2の計測室へ移行した流水の量の割合(即ち、第2の計測室に分取される割合)は、流水の流れ込んだ分取計測室の連接口の数/(流水の流れ込んだ分取計測室の窓部数+連接口の数)である。したがって、上記流水が第1の分取計測室から第2の分取計測室へと分取された割合を把握することができる。このようにして、最終計測室へと分取された流水の貯留水量が、最終計測室の貯留容量を越える前の適当な時期に、全分取計測室および最終計測室に貯留された流水量及びこれに含まれる土砂量を測定し、各計測室における分取の割合を乗じた値を合計すれば、本発明の計測枡に流れ込んだ全流水量及び、これに含まれていた土砂量を算出することができる。
したがって、流出土砂の計測者は、本発明品を所定の場所に設置し、一定期間経過した後(あるいは降雨のあった後)、各計測室に貯留された土砂量を計測し、これに分取された割合を乗ずる計算を行うだけで、上記一定期間中(或いは降雨中)に、測定対象領域から流出した土砂量を容易に知ることができる。
【0011】
しかも本発明の流出土砂計測枡は、持ち運び可能な程度の大きさに形成された連続する計測室により構成することができるため取り扱いが容易であり、小さなスペースに設置可能である。
【0012】
また本発明の流出土砂計測用装置は、測定対象領域から流出する流水を集水して、該流水を一定の割合で分取し、この分取水を第1番目の分取計測室に流入せしめることができる。したがって、測定対象領域から流出する流水の量が多い場合などであっても、一度、該流水を分取しているので、流出土砂計測室に流入する流量を小さく抑えることができる。したがって、流出土砂計測室における最終計測室の容量が一杯になるまでの期間を長くすることができるので、流水量の多い地域で計測を実施する場合であっても計測枡を大型化する必要がない。例えば、1haの圃場を観測の対象とした場合には、後述する実施例において形成する実施例1の流出土砂観測装置程度の大きさの装置により、雨量230mmに対応できる。更に多くの雨量が見込まれる場合には、オーバーフローする水を貯留する小型のタンク(ポリエチレン容器など)を接続することにより対応が可能である。
【0013】
本発明の流出土砂計測枡及び装置は単純な構造であって、安いコストで簡易に建設することができる上、計測期間中のランニングコストやメンテナンスもほとんど必要なく、且つ、測定方法も簡易であり、専門の知識を有しない者や費用の乏しい者であっても、容易に流出土砂を測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の流出土砂計測枡(以下、単に「計測枡」という場合がある)およびこれを用いた流出土砂計測装置(以下、単に「計測装置」という場合がある)の最良の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0015】
(流出土砂計測枡について)
図1は、本発明の一実施形態を示す流出土砂計測枡1(以下、単に「計測枡1」ともいう)の斜視図である。計測枡1は、第1分取計測室2(以下、単に「計測室2」ともいう)、第2分取計測室3(以下、単に「計測室3」ともいう)、第3分取計測室4(以下、単に「計測室4」ともいう)、最終計測室5(以下、単に「計測室5」ともいう)がこの順で連続して連接されて形成されている。そして計測室2の側面には窓部6が、計測室3の側面には窓部7が、計測室4の側面には窓部8が、それぞれ複数設けられている。また計測室2および計測室3と連接する連接壁9には、窓部6と同形状の連接口10が、窓部6と同じ高さで設けられている。
【0016】
計測室3乃至計測室5には、その上面に天板16乃至天板18が其々設けられている。上記天板は、本発明において必須の構成要件ではないが、天板を備えることにより、各分取計測室に雨水などが貯留することを防止することができるので好ましい。
【0017】
上記計測枡1をさらに詳しく説明するために、図1における計測枡1の上部切欠斜視図である図2を示す。
【0018】
窓部について:
図2によれば、計測室2の3つの側面には10ヶの長方体形状の窓部6が設けられており、計測室3の2つの側面には10ヶのスリット状の窓部7が設けられており、計測室4の側面には10ヶのスリット状の窓部8が設けられていることがわかる。これらの各窓部は、計測室に貯留される流水の量が、窓部の底面を越えたときに、該流水を溢れ出させるためのものである。したがって、各計測室の側面に設けられる窓部の形状及び数は任意であり、以下に説明する測定実施期間、測定対象領域における測定期間中の降雨量、及び該領域の面積等を勘案して適宜設計することができ、また各計測室の窓部の数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
但し、後述する流水の分取の割合を把握するために、一つの計測室に設けられる複数の窓部は、同形状、且つ同じ高さに形成される必要がある。また第1番目の計測室から第n番目の計測室へと分取される流水の逆流を防ぐために、計測室における窓部の高さは、第1番目から第n番目の計測室まで、昇順で数の大きい計測室の窓部ほど底面の位置を低く設ける必要がある。尚、最終計測室5における窓部の形成は任意である。最終計測室5に窓部が形成されている場合には、該計測室5に流れ込んだ流水の量が窓部の底面以上になるとそれ以上に流水の流入があった場合には窓部よりあふれ出ることになり、計測枡1に流入する流水の全量が把握できなくなるため、この点に留意し、計測室5の窓部より流水があふれ出る前に測定期間を終了するか、あるいはあふれ出た流水を一時貯留するためのさらなる枡を別途設置することが望ましい。
以下の明細書の記載においては、各分取計測室における下面から窓部の底面までの容量、あるいは最終計測室における連接口の底面までの容量を、流水を実質的に貯留できる容量として、計測室の「最大貯留容量」という場合がある。
【0020】
連接壁及び連接口について:
計測室2と計測室3との境界には、2つの部屋を連接している連接壁9が形成されており、また連接壁9には、窓部6と同形状であって同じ高さ位置に形成された連接口10が形成されている。同様に、計測室3と計測室4との間には連接壁11が形成され、この連接壁11には窓部7と同形状であって同じ高さ位置に連接口12が形成されており、また、計測室4と計測室5との間には連接壁13が形成され、この連接壁13には窓部8と同形状であって同じ高さ位置に連接口14が形成されている(図2参照)。そして上記連接壁9、11及び13は、いずれも2つの計測室を仕切る境界として一枚の板状の壁から構成されている。
【0021】
上記連接壁は、本発明における互いに隣接する計測室を連接させるための態様を限定するものではない。本発明における計測室は、いずれも独立し、隣接する計測室同士が、連接口によって連接されており、その結果、一の計測室に設けられた連接口から分取される流水の全量が隣り合う次の計測室に流れ込むことが可能であればよい。したがって、例えば、独立した第1の計測室の壁に設けられた連接口から伸びる流水路を、隣り合う第2の計測室の壁に通じせしめ、これによって第1の計測室から分取された流水を第2の計測室へと流し込む態様等を採用することができる。かかる態様の場合には、上記第2の計測室の壁に設けられる分取された流水を受け入れる受け入れ口を設ける必要がある。上記受け入れ口は、流水の受け入れを阻害しない程度の形状及び大きさであればよいが、その高さ位置は、分取された流水が第1の計測室から第2の計測室へと流れ込むことを阻害しないよう上記第1の計測室に設けられた連接口と同じ高さ以下に設ける必要があり、また、第2計測室の最大貯留容量を実質的に小さくしないために第2計測室における窓部の底面の高さよりも高い位置に設けられる必要がある。
【0022】
本発明における連接口は、隣り合う分取計測室間あるいはn番目の分取計測室と第n+1番目の最終計測室との間において、順序の小さい方の計測室の側面に設けられた窓部と同形状且つ同じ高さ位置で設けられている。したがって、第1番目の分取計測室と最終計測室との間に設けられる分取計測室では、隣り合う順序の小さい方の計測室との間に形成される連接口(以下、「流入連接口」ともいう)と、隣り合う順序の大きい方の計測室との間に形成される連接口(以下、「流出連接口」ともいう)の2種の連接口を有することとなる。このとき、上記流入連接口は、隣り合う順序の小さい計測室に設けられた窓部と同形状且つ同じ高さ位置に設けられたものであり、一方、上記流出連接口は、当該分取計測室に設けられる窓部と同形状且つ同じ高さ位置に設けられたものである。ここで本発明における窓部は、隣り合う分取計測室同士の関係では昇順毎に窓部底部の位置が低くなるよう形成されるため、結果として、上記流入連接口と流出連接口との関係では、流出連接口の底部の高さ位置の方が低く形成されることとなる。したがって、流水は、第1分取計測室から最終計測室に向けて、昇順に流れながら分取される結果となり、逆流が防止されている。
【0023】
そして、分取計測室に流れ込んだ流水が該分取計測室における最大貯留容量を超えたときに、流水が当該分取計測室における窓部から溢れ出すと同時に、その一部を連接口(流出連接口)を介して隣り合う順序の大きい分取計測室に一定の割合で流し込ませることができる。換言すると、窓部から溢れ出す量に対し、一定の割合で隣り合う分取計測室に流水を分取することができるのである。一の計測室において、当該計測室の最大貯留量を超えて流れ込む流水の量に対し、隣り合う計測室に分取される流水の割合X(%)は、一の計測室における流出連接口の数をA、窓部の数をBとしたときに、下記式(1)により算出される。したがって連接口の数及び窓部の数を調整することにより分取比率を決定することができる。
(式1) X=A/(A+B)×100 (1)
【0024】
第1分取計測室2について:
第1分取計測室2は、図1に示されるとおり、その上面が全面開口して形成されており、この開口部分によって流入口15が構成されている。第1分取計測室2は、本発明の第1番目の分取計測室に相当し、本発明の計測枡に流れ込む流水を受け入れ、かかる流水を一定の割合で隣り合う第2分取計測室3に分取する役割を果たすものである。第1分取計測室2に流れ込む流水は、測定対象領域より集水された土砂含有の流水をそのまま流し込むこともできるし、事前に上記流水を一定の割合で分取したものを流し込んでもよい。
【0025】
第1番目の分取計測室に設けられる流入口は、図1に示すとおり、計測室の上面を略全面開口してこれを流入口としてもよいし、あるいは、第1番目の分取計測室に天板を設け、この一部を開口させて、流入口としてもよい。
【0026】
第2分取計測室3および第3分取計測室4について:
図1に示される本発明の流出土砂計測枡1は、計測室の順番を表す係数nが2の場合における一実施態様である。したがって、分取計測室は第3番目まで形成されている。第2番目以降の分取計測室は、第1番目の分取計測室より分取された流水をさらに一定の割合で分取するために設けられるものであるので、対象となる流水量が多いことが予想される場合、あるいは、測定期間を長期間に設定したい場合には、第2番目以降の分取計測室を多く形成することが望ましい。
【0027】
最終計測室5について:
最終計測室5は、n=4の本発明における態様において、n+1番目の計測室に相当し、本発明の計測枡の最後に設けられる計測室である。最終計測室5には、特に窓部は設けられておらず、連接口14を経て、第3分取計測室4から分取された流水を貯留するに留まる。
【0028】
排出口について:
図1に示す計測枡のX−X断面図を図3に示す。計測室2〜5の底面にはそれぞれ排出口19a〜19dが形成されている。これら排出口は、測定期間終了の後、各計測室に沈殿し貯留した土砂を測定するために各計測室から該土砂を取り出すために設けられたものである。したがって、かかる趣旨を逸脱しない限りにおいて、排出口の形状、大きさあるいは設ける位置などについては適宜変更することができる。
【0029】
界面活性剤の使用について:
上述したとおり本発明の計測枡は、計測室に流入する流水を窓部より溢れ出させると同時に隣接する計測室に一定の割合で流水を移行させて分取する機構が採用されている。従って、第1分取計測室に流入した流水が、連接口を介して最終計測室へと流れる流れ、及び各窓部からのオーバーフローがスムーズであるほど、より正確な流出土砂量を得ることができる。上記流水のスムーズな流れを補助するための例として、流水に界面活性剤を添加する方法が挙げられる。流水へ界面活性剤を添加する方法は特に限定するものではないが、例えば、固形の界面活性剤を予め各計測室に設置しておき、貯留した流水によって除々に界面活性剤を溶出させ、これによって貯留した流水に界面活性剤を懸濁させることができる。また第1分取計測室に隣接して、界面活性剤滴下装置を設置してもよい。
上記界面活性剤の添加によれば、計測室への流入量が少ない場合(即ち、窓部からのオーバーフローする量及び隣り合う計測室へ移行する流水量が少ない場合)であっても、各窓部及び連接口を形成するために計測室の側面あるいは連接壁を切削した切削面の微妙な違い等によるメニスカス(液面の凹凸)に起因する流動の不均一を良好に緩和することができ好ましい。
【0030】
(計測枡1に流れ込む流水の動きについて)
以下に、上記構成を有する本発明の計測枡1に流水が流れ込んできた際の流水の動きを説明する。まず、測定対象領域から集水された土砂含有の流水が、流入口15を介して第1分取計測室2に流れ込み、該計測室2に上記流水が貯留され始める。連続して、あるいは断続的に計測室2に流れ込み貯留される流水の水嵩が、窓部6の底面を越えて、計測室2の最大貯留容量を超えると、11ヶの窓部6の其々から流水のオーバーフローが始まる。それと同時に、連接口10からも流水のオーバーフローが始まる。上記連接口10からオーバーフローした流水は、第2分取計測室3に流れ込む。第2分取計測室3に流れ込んだ流水は、第2分取計測室3に貯留され、その水嵩が窓部7の底面を越えて計測室3の最大貯留容量を超えると、窓部7から流水のオーバーフローが始まる。それと同時に、連接口12からも流水のオーバーフローが始まる。このオーバーフローした流水は、第3分取計測室4に流れ込む。続いて第3分取計測室4から最終計測室5に流水が流れ込む作用も上述と同様である。
【0031】
このように本発明の計測枡1では、各計測室に流れ込んだ流水の量が、計測室の最大貯留容量を超えると窓部及び連接口から流水のオーバーフローが始まり、特に連接口からオーバーフローする流水が隣り合う次の計測室へと流れる仕組みとなっている。ことのき、1つの計測室において、窓部と連接口とが、同形状且つ同一に形成されることによって、オーバーフローする流水のうち一定比率の流水が隣り合う計測室へと流出したことを確認することができる。従って、窓部及び連接口は、計測室毎に形状及び形成される高さが等しく揃えられていることが重要である。また、その形状自体は、特にスリット型に限定されるものではなく、例えば、円形や、正方形等の他の形状に形成されていてもよい。
【0032】
次に、本発明の計測枡1において各計測室に流れ込む流水量に対して、隣接する計測室に移行することによって分取される流水の割合について、さらに詳しく説明する。
まず、計測室2の最大貯留容量を越えて流れ込んだ流水に対する、計測室3へ移行した流水の量の割合X(即ち、計測室3に分取される割合)は、上記式(1)により、1/(10+1)×100=約9.1%である。従って、流入口15から計測室2に流入する流水のうち、第1分取計測室2の最大貯留容量を越えて流入する流水の約9.1%が常に計測室3に流入することになる。同様にして、計測室3からオーバーフローする流水のうち計測室4へと分取される流水の比率は、約9.1%である。従って、連接口10から計測室3に流入する流水のうち、計測室3の最大貯留容量を越えて流入する流水の約9.1%が常に計測室4に流入することになる。計測室4から計測室5にも、上述と同様に流水が分取される。
【0033】
一方、計測室5は、計測枡1における最終の計測室なので、窓部は設けられていない。従って、一旦、計測室5に分取され貯留された流水が、連接口14から計測室4に逆流しないためにも、最終計測室5に貯留される流水は、計測室5の最大貯留容量以下であることが望ましい。換言すると、流水の測定実施期間は、流入量が最終計測室5の最大貯留容量を越える前に終了するよう設定されることが望ましい。
【0034】
(流出土砂量の測定方法について)
以下に、本発明における流水の分取の過程を一般的な概念でさらに説明するとともに、あわせて、分取された流水量及び該流水に含まれる流出土砂量から、計測装置に流入した全流水量及び全流水量に含まれる全流出土砂量を算出する方法を説明する。
【0035】
以下の説明には、4つの連続する分取計測室及びこれに続く最終計測室を有する計測枡Rを想定し、第1番目の分取計測室(以下、第1計測室という)の最大貯留容量をAリットル、第2番目の分取計測室(以下、第2計測室という)の最大貯留容量をBリットル、第3番目の分取計測室(以下、第3計測室という)の最大貯留容量をCリットル、第4番目の分取計測室(以下、第4計測室という)の最大貯留容量をDリットル、上記第4計測室に続く最終計測室の最大貯留容量をEリットルであるものとし、流水の分取は、最終計測室に分取された流水の貯留量がちょうど最大貯留容量になるまで行うものとする。
また上記式(1)より得られる各計測室間における分取の割合として、第1計測室から第2計測室へと分取され流水の割合Xをa%、第2計測室から第3計測室へと分取され流水の割合Xをb%、第3計測室から第4計測室へと分取され流水の割合Xをc%、第4計測室から最終計測室へと分取され流水の割合Xをd%とする。尚、第1計測室は、測定対象領域から集水された流水が直接流入するものとし、分取比率は1(即ち分取される割合100%)とした。
尚、各計測室の底面にはそれぞれ、貯留された流水を排出させるための排出口を備えるものとする。
【0036】
上記計測枡Rでは、第1計測室に流入した流水量がAリットルを越えると、第1計測室に設けられた窓部からオーバーフローが始まるとともに、流入する流水のa%が第1計測室及び第2計測室間に設けられた連接口を介して、第2計測室に流入する。次いで、第2計測室に流入した流水量がBリットルを越えると、第2計測室に設けられた窓部からオーバーフローが始まるとともに、流入する流水のb%が第2計測室及び第3計測室間に設けられた連接口を介して、第3計測室に流入する。同様に、第3計測室に流入する流水がCリットルを越えると流入する流水のうちc%が第4計測室に流入し、第4計測室に流入する流水がDリットルを越えると流入する流水のうちd%が第五計測室に流入する。第五計測室に流入する流水がEリットルになった時点で、測定の実施を終了する。
尚、以上の計測枡Rにおける種々の設定及び、後述する計算結果を、表1に示す。
【0037】
次に、各計測室に分取した流水を計測室の底面に設けられている排出口から排出させ、貯留された流水量及びこれに含まれる土砂量を各計測室毎に計測する。ここで、第1計測室乃至第4計測室、及び最終計測室に貯留された流水量は、順にAリットル、Bリットル、Cリットル、Dリットル、Eリットル(即ち各計測室の最大貯留容量)であり、これに含まれる土砂の量を計測したところ、表1に示すとおり、第1計測室から順に、M1グラム、M2グラム、M3グラム、M4グラム、M5グラムであったものとする。
続いて上記数値に、全流水量に対する分取の比率を乗じると、各計測室に流れ込んだ全流水量及び上記全流水量に含まれていた全土砂量を算出することができる。具体的には、各計測室に流れ込んだ全流水量は、下記のとおり算出される。
第1計測室:A×1=A(リットル)
第2計測室:B×100/a=G(リットル)
第3計測室:C×100/a×100/b=H(リットル)
第4計測室:D×100/a×100/b×100/c=I(リットル)
最終計測室:E×100/a×100/b×100/c×100/d=J(リットル)
また同様に、各計測室に流れ込んだ全流水量に含まれる全土砂量は、下記のとおり算出される。
第1計測室:M1×1=K(グラム)
第2計測室:M2×100/a=L(グラム)
第3計測室:M3×100/a×100/b=N(グラム)
第4計測室:M4×100/a×100/b×100/c=O(グラム)
最終計測室:M5×100/a×100/b×100/c×100/d=P(グラム)
【0038】
そして最後に、計測装置に流入した全流水量S(リットル)及び全流水量Sに含まれる全土砂量T(グラム)を、以下の式にて算出することができる。
全流水量S=A+G+H+I+J
全土砂量T=K+L+N+O+P
【0039】
上述のとおり、本発明の計測枡を用いれば、測定対象領域から集水される流水をそのまま、あるいは、事前に一定の割合で分取した後、第1計測室に流し込むだけで、連続する計測室に一定の割合で分取することができる。そして各計測室に分取されて貯留された流水を排出せしめ、計測室毎にその貯留された流水の量及びこれに含まれる土砂量を測定し、測定量に分取された比率を乗じて得られた数値の総和を求めることにより、計測枡に流れ込んだ流水の全量及びこれに含まれる土砂量を求めることができる。
【0040】
尚、本発明の計測枡において測定される流水量の限界(以下、「測定限界量」ともいう)は、上述した全流水量Sに相当する。即ち、各計測室の最大貯留容量に全流水量に対する分取比率を乗じ、これを加算した量である。
【0041】
本発明の計測枡を用い、上述する算出方法によれば、一定期間内に降った雨の影響により圃場から流出する土砂量を測定することができる。この場合、計測枡の基本的構造(及び寸法)は、計測対象領域の降雨規模等を解析し、これを基に任意に決定することができる。例えば、一ヶ月に一度、計測枡に貯留された流水量及びこれに含まれる土砂量を計測し目的の圃場より流出した土砂量を算出する場合には、まず計測の対象とする圃場の面積を求め、該面積に一ヶ月間の平均月雨量を乗じ、さらにこれに流出率を乗じることにより、計測対象となる圃場から一ヶ月間に流出する流水量の総量の予想量(降雨規模)を計算する。そして計測枡の測定限界量が、上記一ヶ月間に流出する流水量の総量を上回るように、計測室の数、窓数、各計測室の最大貯留容量などを適宜決定して、用いる計測枡を作成する必要がある。あるいは、既に形成された計測枡の測定限界量及び上記降雨規模を勘案し、計測期間を決定してもよい。
但し、持ち運びを容易にし、また設置スペースについて広い面積を確保しなくてもよいという観点からは、本発明の計測枡の寸法は、例えば矩形状の横断面の一辺が40cm〜200cm、他辺が20cm〜180cm、高さが30cm〜100m程度であることが好ましい。
【0042】
上述によれば、目的の圃場より流出した流水を集水し第1計測室に流れ込むよう本発明を設置し、所定の期間放置し、該期間経過後に各計測室に貯留された流水及びこれに含まれる土砂量を計測し、上述の説明に従って全流水量及び全土砂量を算出するだけで、目的の圃場より所定の期間中に流出した土砂量を得ることができる。尚、本発明において流出率とは、降雨量に対し地盤に染み込まず地盤表面を流出する水量の比を意味する。
【0043】
(流出土砂計測装置について)
次に、本発明の流出土砂計測装置(以下、単に「計測装置」という場合がある)について図4を用いて説明する。本発明の流出土砂計測装置101は、測定対象領域から流れる流水を送水するための送水路であるU字溝103と、U字溝103に流れる流水の一部を一定の割合で分取するための分取路であるスリット板104と、スリット板104により分取された分取水を導く流水導入路105と、流水導入路105から流れる分取水106を受ける流出土砂計測枡1とから構成されている。尚、U字溝103に流れる水は、測定対象領域から集水パイプ102を経て流れてきたものである。またU字溝103は、これを支えるために組まれた支持台111の上に積置されている。
【0044】
本計測装置101の構成によれば、測定対象領域から流れ出る流水が計測枡1に流れ込む前に、スリット板104により一定の割合で分取されている。このように第1番目の 分取計測室の手前で、一定の割合で分取することができるため、測定対象領域から流れ出る全流水量に対し第一計測室に流れ込む流水の量を少なくさせることができる。従って、計測枡の寸法をコンパクトにすることを可能とし、あるいは測定期間を長期に設定でき好ましい。尚、U字溝103を流れる流水のうち、スリット板104に分取されなかった流水は排流水107として、U字溝の下流方向端部より下方に落水させている。排流水107は、そのまま地盤に放水してもよいし、或いは排水用の水路を別に設け河川や、貯水池などに導いてもよい。
【0045】
U字溝103とスリット板104についてより詳しく説明するために図5を示す。U字溝103は、略平面状の底面と、略垂直に起立する側面とからなる断面がU字状の溝構造をしている。したがって、U字溝103に流れる流水の水量は、U字状の断面で観察したときに、上記側面間に亘って略等しい水位であることが理解される。一方、スリット板104は、2枚の側面板とその上部を繋ぐ天板とより構成されており、断面が略均一な長方形となるように形成されている。図6において、スリット板104の斜視図及び該斜視図におけるY−Y断面図を示す。そして、スリット板104の上流側端部が、U字溝103の下流領域に設置されており、U字溝103に流れる流水の一部がスリット板104内を通って流水導入路105へと流れるよう構成されている。
【0046】
上記U字溝103とスリット板104との構成によれば、スリット板104を構成する側面の内側間を計った内径幅寸法と、U字溝103の側面の内側間を計った内径幅寸法とにより、U字溝103を流れる流水に対する分取の割合が決定される。
【0047】
例えば、U字溝103の内径幅寸法に対し、スリット板104の内径幅寸法が10分の1であれば、U字溝103に流れる流水のうち、その約10%がスリット板104を通り、分取水として計測枡1に流れ込むことになる。したがってスリット板104に測定対象領域から流れ出る流水を予め分取した後、その分取水を計測枡1に流し込む本発明の計測装置1で、流出土砂量を算出するためには、第1の分取計測室1に貯留する流水量及びこれに含まれる土砂量の実測値に、上記U字溝103の内径幅に対するスリット板104の幅の割合を乗じる必要がある。次いで第2の分取計測室3に貯留された流水量及びこれに含まれる土砂量の実測値には、U字溝103の内径幅に対するスリット板104の幅の割合及び第1の分取計測室2から第2の分取計測室3へと分取される割合を乗じる必要がある。第3の分取計測室4及び最終計測室5についても同様の考え方により算出される。
【0048】
上述するU字溝103及び上述するスリット板104は、それぞれ本発明における計測装置における送水路及び分取路の例示であって、これに限定することを意図するものではない。本発明の計測装置における送水路とは、測定対象領域から流れ出た土砂含有の流水を流すための水路であって、また分取路は、この送水路を流れる流水を一定の割合で分取するための水路であって、上記送水路を流れる流水のうち上記分取路で、一定の割合の流水を分取できる関係にあればよい。
【0049】
(ゴミ除去用筒体について)
ところで、計測対象領域から集水された流水には、土砂だけでなく、落ち葉等の種々のゴミが含まれていることがある。流水量及びこれに含まれる土砂量を測定する場合に、これらのゴミが計測装置に入り込むことは測定値の誤差を生じる原因となるため好ましくない。また上述のようにスリット板104を用いた場合には、スリット板104に上記ゴミが入り込むことによってスリットが目詰まりし、U字溝103に流れる流水から一定の割合で流水を分取することが出来なくなる虞がある。
【0050】
従って、上述のような流水中のゴミの問題を回避するための手段として、図7に示すようにU字溝103内であって、スリット板104の上流側手前に、ゴミ除去用筒体121を設置することができる。ゴミ除去用筒体121は、上面方向から観察した際に時計周りあるいは反時計回りに回転可能な筒体であって、側面が網目状の中空体である。
【0051】
U字溝に流水が流れているときに、ゴミ除去用筒体121を回転させた状態を図8に示す。U字溝の上流側からは上述のとおり流水とともに落ち葉などのゴミ131が流れている。これらのゴミ131のうち、特にU字溝103の中央領域を流れるものは、ゴミ除去用筒体121の側面に接し、流水の力を受けて該側面に一時付着する。そしてゴミ除去用筒体131の回転にあわせてその位置が移動し、U字溝103の側面に近い位置にきたときに、今度は、流水の力によりゴミ除去用筒体121の側面から剥離される。剥離されたゴミ131は、U字溝側面寄りの領域において流水と流されて移動し、U字溝103の下流方向端部より、排流水とともに落下する。即ち、U字溝103の中央領域であって、スリット板104の手前に流れていたゴミ131は、ゴミ除去用筒体121の側面に付着してU字体側面方向に寄せられるので、結果として、スリット板104の手前に流れてくるゴミを除去することができるのである。かかる作用を得るためには、ゴミ除去用筒体121の回転速度は、緩やかなものでよく、水流を大きく変化させるほどのスピードで回転させることを好まない。
【0052】
図7及び図8に示すゴミ除去用筒体121は、断面が円形の円筒形状の筒体を用いた態様を示したが、本発明におけるゴミ除去用筒体の形状としては、これに限定されるものではない。筒体の断面形状は、上流方向から流れてきて筒体の側面に接したゴミを該側面に付着させた状態で回転し該ゴミの位置を移動させ、次いで、スリット板の手前にくる前に、流水の力によって該ゴミを剥離させ、U字溝の側面に沿って流すことによって、ゴミがスリット板に流れ込むことを防止することができる形状であれば、いずれの形状を採用してもよい。例えば、断面が三角形、あるいは四角形以上の多角形である筒体であってよい。
【0053】
上記ゴミ除去用筒体121の側面は網目状の中空体で形成する理由は、U字溝103における流水の流れを大きく変化させないためである。即ち、流水の流れの中に何等かの障害物を置くと、障害物を境に流水の流れる方向が左右に分割され、さらにその外側であってまっすぐに流れてくる流水とぶつかり渦を形成する。すると、障害物を設置した付近におけるU字溝の縦断面において水の流れを観察したときに、U字溝の側面間を亘って水の流れが均一ではなくなり、その結果、スリット板で分取される流水は、U字溝の内径幅寸法に対するスリット板の内径幅寸法より得られる割合で正確に分取することができなくなってしまうのである。
これに対し、本発明におけるゴミ除去用筒体は側面が網目状であって、且つ、中空体のため、流水の大半は、ゴミ除去用筒体の網目を通過し、筒体内部を通って流れることができるため、その流れる方向を、該ゴミ除去用筒体の存在により大きく変えることがない。
【0054】
ゴミ除去用筒体の側面を網目状に形成するための具体的な部材としては、金網、メッシュシート、パンチングメタルシート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。ゴミ除去用筒体に当接する水流を大きく変えることなく、流水中のゴミを付着させて回転し、再度、該ゴミを剥離させて、ゴミの流れる方向を変えるという趣旨を逸脱しない限り、公知の部材を適宜選択して使用してよい。網目の目の寸法は、1mm以上10mm以下が好ましく、3mm以上8mm以下がより好ましく、4mm以上6mm以下であることがさらに好ましい。網目の目の寸法が1mm未満であると、水の抵抗を受け易くなり、流水がスムーズに網目をとおって流れ難くなる虞がある。一方、網目の目の寸法が10mmを超えると、スリット板の目詰まりの原因となるサイズのゴミが網目を通過してゴミ除去用筒体121を通り過ぎ、スリット板に流れ込む虞がある。
【0055】
ゴミ除去用筒体を回転させる手段は、特に制限されるものではなく、従来公知の手段を選択して適宜設計し実施することができる。特に、本発明の計測装置は、屋外で実施されるため、電池などを用いてモーターにより回転させてもよい。
本発明の一実施形態として示す図7の装置101におけるゴミ除去用筒体121は、長さ方向の中心に駆動芯124を備えており、駆動芯124とゴミ除去用筒体121の側面とは天板122を介して連結している。またゴミ除去用筒体121は、駆動芯124と略垂直な向きに伸長し、少なくともU字溝103の側面間以上の長さを備える支持具123を備えている。支持具123の中央付近において駆動芯124が回転可能に軸通されており、支持具123の両端をU字溝103の側面上面に掛け渡すことによって、ゴミ除去用筒体121を吊り下げる状態で支持することができる。このため、ゴミ除去用筒体121をスムーズに回転させることができる。
一方、U字溝103の下流方向端部より、分取後の排流水107を下方向に落水させており、この排流水107に当接する位置に水車羽126が設けられている。水車羽126は、トルク伝達部材125により駆動芯124と連結されている。
【0056】
トルク伝達部材125としては、水車羽126の回転を駆動芯124に伝達し、該駆動芯124を回転させることができるものであれば、従来公知のいずれの部材を用いてもよい。例えば、代表的な例としてはフレキシブルシャフトを挙げることができる。他にも、かさ歯車や自在継手を複数、直列的に連結して、全体にフレキシブルなトルク伝達部材を構成することもできる。
【0057】
上記態様によれば、排流水107が水車羽126の羽部分に当接することにより、図面中矢印方向に水車羽126が回転する。この回転力は、トルク伝達手段によって駆動芯124に伝達され、この結果、駆動芯124が回転し、該駆動芯124と天板122を介して連結するゴミ除去用筒体121も回転する。したがって、電力などのエネルギーを何ら利用することなくゴミ除去用筒体121を回転させることができる。しかも、ゴミ除去用筒体121は、測定実施期間中、降雨などにより測定対象領域より流水が流れ出て、U字溝103に流水が流れているときだけ回転すればよいところ、電力などのエネルギーを用いて上記回転をさせるためには、その都度、スイッチを入れるなどの人的な管理と作業とが必要とされるが、上述のとおり、排流水107が水車羽126に当接すると自動的にゴミ除去用筒体121が回転する本態様であれば、回転の必要なときにだけ何等の管理も必要とせずにゴミ除去用筒体121を回転させることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明にかかる実施例について説明するが、本発明は以下に示す実施例により何ら制限されるものではなく、計測装置の基本的構造、例えば各計測室の数、寸法、窓部等の形状及び数は、計測対象領域の面積や計測期間、月間降雨量等により適宜決定してよい。また上記実施例と併せて、界面活性剤の添加効果、スリット板の分取比率の確認実験及び、ゴミ除去装置のゴミ除去効果についても説明する。尚、界面活性剤の添加、スリット板及びゴミ除去装置は、必ずしも用いる必要はないが、いずれか1つ或いは2種の組み合わせ、或いは全部を本発明の計測装置に採用することにより、上述した効果が得られるものである。
【0059】
実施例1
厚み1.5mmのステンレス板で構成される横断面が長方形で上面全面が開口する箱体であって、高さ44cm、該長方形の長辺が70cm、短辺が30cmの横長の箱体を用い、長さ方向における一方の側面から25cmの位置、35cmの位置、60cmの位置にそれぞれ側面と略平行の仕切り板を設けて該側面から第1分取計測室、第2分取計測室、第3分取計測室、最終計測室を構成した。そして、第1計測室に面する箱体の側面において、高さ10cm、幅1.5cmの細長状の窓部1を上記箱体の側面を切削して、計29ヶ形成した。同様に、第2分取計測室の側面には、高さが12cm、幅1cmの細長状の窓部2を計10ヶ形成し、第3分取計測室の側面には、高さが13cm、幅1cmの細長状の窓部3を計4ヶ形成し、最終計測室の側面には、高さが14cm、幅1cmの細長状の窓部4を計1ヶ逆流防止のため形成した。また窓部1乃至窓部4は、その上面の高さ位置を揃えて形成し、窓部1の底面が、箱体の底面から30cmの位置、窓部2の底面が、箱体の底面から28cm、窓部3の底面が箱体の底面から27cmの位置、窓部4の底面が箱体の底面から26cmの位置にくるよう設計した。
【0060】
次に、各分取計測室をしきる仕切り板に、それぞれ連接口を形成した。第1分取計測室と第2分取計測室との間における仕切り板には、窓部1と同じ形状であって同じ高さ位置の連接口1を仕切り板の幅方向略中央部に1ヶ形成した。同様に、第2分取計測室と第3分取計測室との間における仕切り板には、窓部2と同じ形状であって同じ高さ位置の連接口2を1ヶ形成し、第3分取計測室と第4分取計測室との間における仕切り板には、窓部3と同じ形状であって同じ高さ位置の連接口3を1ヶ形成し、最終計測室の流出口として側面に、窓部3と同じ形状であって連接口3より高さ位置を1cm下げた窓部4を1ヶ形成した。最後に、第2分取計測室乃至第3分取計測室及び最終計測室の上面を覆って板を設置し、各計測室の天板として、本発明の流出土砂計測枡を形成した。
【0061】
次に、上記流出土砂計測枡を用いて、本発明の流出土砂計測装置を以下のとおり形成して実施例1とした。実施例1の概略図を図9に示す。尚、図9において上記流出土砂計測枡は、203の符号を付して示す。
実施例1を形成するために測定対象領域としての農地5.2haを指定し、該領域から流れ出す全流水を集水するための排水路を設けた。そして該排水路に連結して、水路幅80cm、深さ80cmのU字溝201を送水路として設置した。そして上記U字溝201の下流側領域にスリット幅1cmのスリット板202を、U字溝201の幅方向略中央に設置し、U字溝201に流れる流水の略80分の1がスリット板202に分取されるよう設計した。尚、スリット板202は、縦60cm、横60cm、高さ60cmのステンレス製の板状部材を、面と面との距離が1cmとなるよう向かい合わせた状態で固定して形成した。
【0062】
最後に、上記スリット板202により分取された流水が上記第1分取計測室に注ぎ込まれる位置に上記流出土砂計測枡203を設置して流出土砂計測装置204を形成し、実施例1とした。
【0063】
尚、実施例1で分取され測定され、その測定量をもとに算出された上記測定対象領域からの流水に含有される全土砂量と、実測値とを比較するために、U字溝201を流れる流水のうちスリット板202に分取されなかった排流水205及び流出土砂計測枡203から排出された排流水206を受け取り、こられ排流水の中に含有されていた比較的粒径の大きい土砂を沈殿させるための沈砂枡207を設置するとともに、沈砂枡207が備える排水路210から流れ出る流水の流量及び濁度を測定するために、排水路210の下流領域に流量計208及び濁度計209を設置した。
【0064】
そして、流出土砂計測枡203及び沈砂枡207に沈殿した土砂量の実測値と、濁度計209により測定された土砂量とを足し合わせることにより、流出土砂量の実測値を計測した。
【0065】
上記実施例1および流出土砂量を実測する装置を用いて、測定対象領域より流出する土砂量を測定し。測定は、8月27日〜10月5日(40日間)を測定期間1、10月6日〜11月2日(28日間)を測定期間2、11月3日〜12月3日(31日間)を測定期間3、12月4日〜1月7日(35日間)を測定期間4、1月8日〜2月5日(29日間)を測定期間5として、それぞれ計測した。実施例1の装置に隣接して降雨計211を設置し、測定期間中の雨量を同時に測定した。
期間中の雨量及び降雨係数、流出率流出率、実施例1における全流出土砂量算定値[1]、全流出土砂量実測値[2]及び算定値[1]と実測値[2]との比率を、表2に示す。また算定値[1]と実測値[2]との比率を縦軸とし、各測定期間における降雨係数を横軸にとったグラフを図10として示す。
【0066】
尚、降雨係数とは、世界的に認知された土砂流出量を予測する経験式(USLE:Universal Soil Loss Equation)により定義された降雨による耕土の流亡量と相関する指数であり、次式で算出される。
(式2) 〔降雨係数〕=〔一連降雨の降雨エネルギーの累計(雨滴および表流水による土砂剥離に関する指標)×〔最大60分降雨強度〕÷100 (2)
また流出率とは、降雨量に対し地盤に染み込まず地盤表面を流出する水量の比を意味し、降雨量に対する、流量計208により測定された流量より算出される。
【0067】
表2に示すとおり、本測定の結果から、全測定期間中、測定対象領域から流出した土砂量の総量は3641kgであり、これに対し、実施例1により算定した全流出土砂量は、3440kgであった。したがって実測値に対し算定値は94%であり、即ち算定値は6%の誤差で示された。
本測定結果をより詳しく見みるために図10に測定期間毎の実測値に対する算定値の比率と、降雨係数をプロットしたグラフを示す。図10によれば、本発明の流出土砂計測装置では測定期間毎の降雨係数が30.0以上あれば、実測値に対する算定値の割合が約80%以上となり、算定による測定誤差が±20%以内の精度で測定対象領域から流出する流出土砂量を測定できることが示された。
一方、降雨係数30.0未満の測定期間においては、測定誤差が20%以上と大きくなることが示された。ただし土壌侵食が問題となる地域であっても、降雨係数が約30%未満と小さい係数が示される期間においては土砂流出量も少なく、そのような期間の土砂流出量は合計しても年間の流出土砂量の数%に過ぎない。したがって長期的に行う測定において、降雨量の少ない期間における数%の測定誤差は、全測定期間をとおしてみた場合には、観測精度への影響は僅かである。その結果、9月から1月という比較的降雨量が少ない時期に行った本測定試験においてさえ、全観測期間では約94%の正確さで測定できた。このことから、特に土壌侵食が問題となる降雨の多い環境下での長期観測において、本発明の流出土砂計測装置が非常に有効に機能することが示唆された。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の流出土砂計測枡の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す流出土砂計測装置の上部切欠斜視図である。
【図3】図1に示す流出土砂計測装置のX−X断面図である。
【図4】本発明の流出土砂計測装置の一実施形態を示す側面図である。
【図5】本発明の流出土砂計測装置における送水路及び分取路の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】スリット板の一例を示す斜視図及び該スリット板のY−Y断面図である。
【図7】本発明の流出土砂計測装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の流出土砂計測装置の一実施形態を示す上面図である。
【図9】本発明の実施例を示す概略図である。
【図10】実測値に対する実施例1を用いて測定される算定値の比率と、降雨係数の関係をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0071】
1 流出土砂計測枡
2 第1分取計測室
3 第2分取計測室
4 第3分取計測室
5 最終計測室
6、7、8 窓部
9、11、13 連接壁
10、12、14 連接口
15 流入口
16、17、18 天板
19a、19b、19c、19d 排出口
101 流出土砂計測装置
102 集水パイプ
103 U字溝
104 スリット板
105 流水導入路
106 分取水
107 排流水
111 支持台
121 ゴミ除去用筒体
122 天板
123 支持具
124 駆動芯
125 トルク伝達手段
126 水車羽
131 ゴミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1番目の分取計測室から第n(但し、nは2以上の整数である)番目の分取計測室及び第n+1番目の最終計測室が、昇順に、連接口を介して連接されて構成されており、
上記第1番目の分取計測室から第n番目の分取計測室の其々の側面には複数の窓部を有し、また上記第1番目の分取計測室にはその上面に流入口を有し、
上記窓部が、1つの分取計測室においては同形状且つ同じ高さで設けられているとともに、隣り合う分取計測室同士の関係では昇順毎に窓部底部の位置が低くなるよう形成されており、また、
隣り合う分取計測室間あるいはn番目の分取計測室と第n+1番目の最終計測室との間において形成される上記連接口が、順序の小さい方の計測室の側面に設けられた窓部と同形状且つ同じ高さ位置で設けられていることを特徴とする流出土砂計測枡。
【請求項2】
請求項1に記載の流出土砂計測枡を用いる流出土砂計測装置であって、
測定対象領域から集水された流水を流すための送水路と、
上記送水路内を送水される流水を一定の割合で分取することが可能な分取路と、
上記請求項1に記載の流出土砂計測枡と、
を少なくとも備えており、
上記分取路によって分取された分取水の全量が、上記流出土砂計測枡における第1番目の分取計測室に導かれることを特徴とする流出土砂計測装置。
【請求項3】
上記分取路の少なくとも上流側端部が上記送水路の下流領域に設けられており、且つ、
上記分取路の上流側の端部の手前に、側面が網目状であって中空の回転可能なゴミ除去用筒体が該ゴミ除去用筒体の側面が起立する姿勢で設置されていることを特徴とする請求項2に記載の流出土砂計測装置。
【請求項4】
上記送水路に流れる流水から上記分取路によってその一部が一定の割合で分取された後の排流水と当接する位置に水車羽が設けられ、
一方、上記ゴミ除去用筒体内部には該筒体の一部と少なくとも連結し、上記ゴミ除去用筒体に回転運動用の動力を伝達する駆動芯が設けられ、且つ、
上記水車羽の回転動力を伝達可能なトルク伝達部材により、上記水車羽と上記駆動芯とが連結されていることを特徴とする請求項3に記載の流出土砂計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−249376(P2008−249376A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88216(P2007−88216)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000230973)日本工営株式会社 (39)
【出願人】(502102268)内閣府沖縄総合事務局長 (2)
【Fターム(参考)】