説明

流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法及び装置

【課題】 本発明は、流体力学において流力振動と呼ばれる自然現象を利用して、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する圧電セラミックにより発電を行う流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法及び装置を提供するものである。
【解決手段】 本発明の流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法は、水流3中に振動柱1を片持ち梁状に設置し、前記振動柱1両側の水流3下流側にカルマン渦列5を発生させ、この下流側のカルマン渦列5に引き寄せられて前記振動柱1に揚力方向の応力を周期的に発生させ、この周期的な応力により前記振動柱1の振動が継続的に励起され、その振動が圧電振動板2に伝達され、前記圧電振動板2が振動して継続的に発電を行うことができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力、特に渦流を利用して機械エネルギーを電気エネルギーに変換する圧電セラミックにより発電を行う発電方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的簡単な構造で、小型、軽量で変換効率が良い圧電セラミックを用いた圧電水力発電装置が知られている(特許文献1を参照)。
この公知技術では、流路内に設置された発電部が、水流を受けた際に振動板を振動させるような水の振動を発生させる振動発生手段及び振動板に固定された圧電素子から構成され、水流を受けた際に水流の方向を振動発生手段の内面に沿って変え、それにより振動発生手段近傍に渦流を発生させ、振動板は長さ方向に沿って屈曲運動を始め、振動板に固定された圧電素子が振動を電力に変換する圧電水力発電装置である。
しかし、前記圧電水力発電装置は、振動板が屈曲振動を発生しやすい金属などの材料により構成することが望ましいし、圧電素子と振動発生手段はシリコーン樹脂に覆われた防水構造とし、漏電や感電の恐れがないようにしなければならなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−275370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、流体力学において流力振動と呼ばれる自然現象を利用して、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する圧電セラミックにより発電を行う流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法及び装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法は、水流中に振動柱を片持ち梁状に設置し、前記振動柱両側の水流下流側にカルマン渦列を発生させ、この下流側のカルマン渦列に引き寄せられて前記振動柱に揚力方向の応力を周期的に発生させ、この周期的な応力により前記振動柱の振動が継続的に励起され、その振動が圧電振動板に伝達され、前記圧電振動板が振動して継続的に発電を行うことができるものである。
本発明の流力振動を利用した圧電セラミックによる発電装置は、所定川幅を有する小河川や農業・工業用水路、上下水道等の流路中央に垂直に位置するように設置した振動柱と、該振動柱の上端に水流と平行な直径方向に設けた直線溝を形成し、該直線溝に嵌め込み固着した圧電振動板と、前記振動柱が常に水中に位置するように支持され、前記圧電振動板により前記振動柱を片持ち梁状に垂直に支持する支持装置とからなるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法及び装置によれば、小河川や農業・工業用水路、上下水道等に設置し、水力エネルギーを利用して発電を行うものであるから、クリーンな自然エネルギーのため環境汚染を防止できる効果がある。
又、本発明の流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法及び装置によれば、従来の水力発電は、小型のダムで内部に水車を設置して発電を行っており、その為2m程度の段差が必要となり設置場所には大きな制約があるが、本発明が必要とするのは水流のみであるから設置場所の制限は大幅に緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明すると、
図1の正面図及び図2の側面図に示すように、所定川幅を有する小河川や農業・工業用水路、上下水道等の流路中央に垂直に位置するように振動柱1を設置する。
前記振動柱1は、中実円筒体からなり、該中実円筒体の上端に水流3と平行な直径方向に設けた直線溝を形成し、該直線溝に圧電振動板2を嵌め込み接着剤等で固着する。
前記圧電振動板2は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する効率の良い矩形板状の材料を使用することが望ましく、例えばチタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛の圧電セラミックが利用される。
なお、前記圧電振動板2は適宜の支持装置により前記振動柱1が常に水中に位置するように支持され、前記圧電振動板2は実質的に前記振動柱1を片持ち梁状に垂直に支持する。
【0008】
次に、本発明の流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法を図面に基づいて説明する。
圧電セラミックは、変位(伸縮)に応じて起電力が発生するため、圧電セラミックに振動を与え続けることにより継続的に発電が行える。
この継続的に振動を与える方法として、流体力学において流力振動と呼ばれる自然現象を利用した。
図3の平面図に示すように、水流3中に振動柱1を設置すると、前記振動柱1両側の水流3下流側にカルマン渦列5が発生する。
この下流側のカルマン渦列5に引き寄せられて前記振動柱1に図1に示すような揚力方向(流れに対して垂直な方向)4の応力が周期的に発生する。
この周期的な応力により前記振動柱1の振動が継続的に励起される。
【0009】
前記振動柱1は、実質的に前記圧電振動板2により片持ち状に支持されているので、その振動が圧電振動板2に伝達され、前記圧電振動板2が振動して継続的に発電を行うことができる。
流力振動は、流体力学における渦理論と構造力学における片持ち梁の振動解析から理論的に現象を解析することができるし、特にストローハル数と振動柱1の固有振動数から発電に最適な振動柱1の材質と構造を求めることができる。
なお、1つの振動柱1による発電量はわずかであるため、実用化には多数の振動柱1から構成された発電システムが必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の発電方法を説明する正面図である。
【図2】本発明の発電方法を説明する側面図である。
【図3】本発明の発電方法を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 振動柱
2 圧電振動板
3 水流
4 揚力方向
5 カルマン渦列



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流中に振動柱を片持ち梁状に設置し、前記振動柱両側の水流下流側にカルマン渦列を発生させ、この下流側のカルマン渦列に引き寄せられて前記振動柱に揚力方向の応力を周期的に発生させ、この周期的な応力により前記振動柱の振動が継続的に励起され、その振動が圧電振動板に伝達され、前記圧電振動板が振動して継続的に発電を行うことができることを特徴とする流力振動を利用した圧電セラミックによる発電方法。
【請求項2】
所定川幅を有する小河川や農業・工業用水路、上下水道等の流路中央に垂直に位置するように設置した振動柱と、該振動柱の上端に水流と平行な直径方向に設けた直線溝を形成し、該直線溝に嵌め込み固着した圧電振動板と、前記振動柱が常に水中に位置するように支持され、前記圧電振動板により前記振動柱を片持ち梁状に垂直に支持する支持装置とからなることを特徴とする流力振動を利用した圧電セラミックによる発電装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−132397(P2006−132397A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320966(P2004−320966)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】