説明

流動体吐出ポンプ

【課題】 一旦ノズルヘッドに流出した流動体が外気と触れることにより、ノズルヘッド内に残留する流動体の量を可能な限り少量とする流動体吐出ポンプを提供することを目的とする。
【解決手段】 流動体吐出ポンプ1は、伸縮部材10と、伸縮部材10の下端に連結される流入弁機構14と、伸縮部材10の上端に連結される流出弁機構15とを備える。流出弁機構15は、底部に開口部が形成された第1弁座部151aおよび第1弁座部151aの上部に位置する略筒形状の内壁を有する第2弁座部151bからなる弁座部材151と、第1弁座部151aにおける開口部を閉止可能な第1弁部材152と、第2弁座部151bにおける内壁に当接可能な第2弁部材153とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流動体貯留部の上方に配設されたノズルヘッドを押圧することにより、前記流動体貯留部内に貯留された流動体を前記ノズルヘッドから吐出させるための流動体吐出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
このような流動体吐出ポンプとしては、例えば特許文献1に記載されるものが公知である。この特許文献1に記載の流動体吐出ポンプは、流動体貯留部の上部に配設されたシリンダと、シリンダ内を往復移動可能なピストンと、ノズルヘッドとピストンとを連結することにより、ノズルヘッドに付与された押圧力をピストンに伝達してピストンを下降させるための中空状の連結筒と、連結筒を介してピストンを上昇させる方向に付勢するための、連結筒の外周部に配設されたコイルバネと、流動体貯留部に貯留された流動体をピストンの上昇動作に伴ってシリンダ内に流入させるための流入弁機構と、シリンダ内に流入した流動体を、ピストンの下降動作に伴って、連結筒の内部を介してノズルヘッドに流出させるための流出弁機構とを備える。
【0003】
この特許文献1に記載の流動体吐出ポンプによれば、流動体とピストンを上昇させるためのコイルバネとの接触を防止することができることから、大きな付勢力を有するコイルバネを使用した場合においても、コイルバネの腐食や金属成分の溶出を有効に防止することが可能となる。また、流動体吐出ポンプの廃棄時にも、金属製のコイルバネを容易に除去することが可能となる。
【特許文献1】特開2002−66401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の流動体吐出ポンプは、一旦ノズルヘッドに流出した流動体は、再びシリンダ内に引き戻される構成を採用していない。このため、一旦ノズルヘッドに流出した流動体は、次にシリンダ内からノズルヘッドに流出される流動体によってノズルヘッドにおける吐出口方向へ押圧されるまでの間、ノズルヘッド内に停留することとなる。したがって、次にシリンダ内の流動体がノズルヘッドに流出されるまでの期間が長くなれば、一旦ノズルヘッドに流出した流動体が外気と触れる期間が長くなり、かかる流動体の性質が変化するという問題が生じる。また、ノズルヘッドの向きによっては、ノズルヘッド内に残留した流動体が外部に流出する可能性もある。
【0005】
この発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ノズルヘッド内に残留する流動体の量を可能な限り少量とする流動体吐出ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、流動体貯留部の上方に配設されたノズルヘッドを押圧することにより、前記流動体貯留部内に貯留された流動体を前記ノズルヘッドから吐出させるための流動体吐出ポンプにおいて、前記流動体貯留部の上部に配設され、その内部に比較的大量の流動体を収納する拡張姿勢と、その内部に比較的少量の流動体を収納する縮小姿勢との間で変形可能な伸縮部材と、前記伸縮部材の下端に連結され、前記流動体貯留部内に貯留された流動体を前記伸縮部材内部に流入させるための流入弁機構と、前記伸縮部材の上端に連結され、前記伸縮部材内部に流入した流動体を前記ノズルヘッドに流出させるための流出弁機構と、を備え、前記流出弁機構は、その底部に開口部が形成された第1弁座部と、前記第1弁座部における開口部を閉止する閉止位置と前記開口部を開放する開放位置との間で移動可能な第1弁体と、前記第1弁体から立設された支持部とを有する第1弁部材と、前記第1弁座部の上部に配設され、略筒形状の内壁を有する第2弁座部と、前記第2弁座部における内壁に当接する当接位置と内壁から離隔する離隔位置との間で移動可能な第2弁体と、前記第1弁部材における支持部と連結される連結部とを有する第2弁部材と、から構成され、前記伸縮部材内部の圧力が外部の圧力よりも上昇した場合には、前記第1弁体および前記第2弁体がともに上昇することにより、前記第1弁体が開放位置に移動するとともに前記第2弁体が離隔位置に移動し、前記伸縮部材内部の圧力が外部の圧力よりも低下した場合には、前記第1弁体および前記第2弁体がともに下降し、前記第2弁体が当接位置に移動した後、前記第1弁体が閉止位置に移動することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流動体吐出ポンプにおいて、前記第1弁部材における支持部の先端部に第1係止部が形成されるとともに、その下端部には第2係止部が形成され、前記第2弁部材における連結部には、前記第1係止部と係合する第1係合部が形成されるとともに、前記第2係止部と係合する第2係合部が形成され、前記第1弁部材および前記第2弁部材は、前記第1係止部と前記第1係合部とが係合する第1係合位置と、前記第2係止部と前記第2係合部とが係合する第2係合位置との間を互いに摺動可能に連結される。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の流動体吐出ポンプにおいて、前記第2弁体が前記第2弁座部における内壁と当接しながら移動する当接移動距離は、前記第1弁部材と前記第2弁部材との摺動距離よりも短い。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流動体吐出ポンプにおいて、前記伸縮部材は、シリンダと、前記シリンダ内を往復移動可能なピストンと、前記ノズルヘッドと前記ピストンとを連結することにより、前記ノズルヘッドに付与された押圧力を前記ピストンに伝達して下降させるための、中空状の流動体流通路が形成された連結筒と、前記連結筒を介して前記ピストンを上昇させる方向に付勢させるための、前記連結筒の外周部に配設された弾性部材と、から構成される。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流動体吐出ポンプにおいて、前記伸縮部材は、樹脂製の蛇腹部材から構成される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、流出弁機構は、伸縮部材内部の圧力が外部の圧力よりも上昇した場合には、第1弁体および第2弁体がともに上昇することにより、第1弁体が開放位置に移動するとともに第2弁体が離隔位置に移動し、伸縮部材内部の圧力が外部の圧力よりも低下した場合には、第1弁体および第2弁体がともに下降し、第2弁体が当接位置に移動した後、第1弁体が閉止位置に移動することから、ノズルヘッド内に残留する流動体の量を可能な限り少量とすることができる。このため、一旦ノズルヘッドに流出した流動体が外気と触れることにより、流動体の性質が変化することを防止することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、第1弁部材および第2弁部材は、第1係止部と第1係合部とが係合する第1係合位置と、第2係止部と第2係合部とが係合する第2係合位置との間を互いに摺動可能に連結されることから、ノズルヘッド内に残留する流動体の量を可能な限り少量とすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、第2弁体が第2弁座部における内壁と当接しながら移動する当接移動距離は、第1弁部材と第2弁部材との摺動距離よりも短いことから、第2弁体が当接位置に移動した後、第1弁体が閉止位置に移動することを確実にすることを可能とする。このため、ノズルヘッド内に残留する流動体の量を可能な限り少量とすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、伸縮部材は、シリンダと、シリンダ内を往復移動可能なピストンと、中空状の流動体流通路が形成された連結筒と、連結筒の外周部に配設された弾性部材とから構成されることから、弾性部材の腐食や金属成分の溶出を有効に防止することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、伸縮部材は、樹脂製の蛇腹部材から構成されることから、簡易な構成でありながら、弾性部材の腐食や金属成分の溶出を有効に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る流動体吐出ポンプ1を適用した流動体容器の縦断面図である。
【0017】
この流動体容器は、美容の分野で使用されるヘアージェルやクレンジングジェル等の一般にジェルと呼称されるゲル(gel)、または、栄養クリームやマッサージクリーム等のクリーム状物、あるいは、化粧水等の液体などを貯留するための化粧品用の容器として使用されるものである。なお、この流動体容器を、一般の薬品や溶剤あるいは食品等の容器として使用してもよい。この明細書においては、高粘度の液体や半流動体あるいはゾルあジェリー状に固化したゲルやクリーム状物等と通常の液体とを含めて流動体と呼称する。
【0018】
この流動体容器は、この発明の第1実施形態に係る流動体吐出ポンプ1と、ノズルヘッド2と、蓋部材3と、その内部に流動体を貯留する流動体貯留部4とから構成される。蓋部材3は、ネジ部材16を介して流動体貯留部4の上端に形成されたネジ部と係合されている。
【0019】
なお、この明細書においては、図1における上下方向を流動体容器における上下方向と規定する。すなわち、この発明に係る流動体貯留容器においては、図1に示すノズルヘッド2側を上方向とし、ピストン部材42側を下方向とする。
【0020】
流動体貯留部4は、円筒状のシリンダ部材41と、このシリンダ部材41内を上下方向に移動するピストン部材42と、複数の通気孔43aが形成される内蓋43と、複数の通気孔44aが形成される外蓋44とを有する。この流動体貯留部4におけるシリンダ部41と流動体吐出ポンプ1とは、液密な状態で接続される。
【0021】
外蓋44は、シリンダ部材41の下部に内蓋43を挟んだ状態で嵌着される。内蓋43には、流動体貯留容器内のピストン部材42の最下位を位置決めするための底上部43bが形成される。この底上部43bの高さを変化させることにより、流動体貯留容器内に貯留可能な流動体量を変化させることができる。
【0022】
外蓋44に形成される通気孔44aと内蓋43に形成される通気孔43aとにより、流動体貯留容器における外蓋44の外部と内蓋43の内部との間で空気が流通可能となっている。
【0023】
この流動体貯留容器においては、ノズルヘッド2における押圧部22を押圧して上下方向に往復移動させることにより、後程詳細に説明する流動体吐出ポンプ1の作用で流動体貯留部4内に貯留された流動体がノズルヘッド2における吐出口21から吐出される。そして、流動体貯留部4内の流動体の減少に伴って、ピストン部材42はシリンダ部材41内をノズルヘッド2方向へ移動する。
【0024】
次に、この発明の第1実施形態に係る流動体吐出ポンプ1の構成について説明する。図2乃至図6は、流動体吐出ポンプ1をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【0025】
なお、これらの図のうち、図2は、流動体吐出ポンプ1に応力を付与することなく放置した状態を示している。図3は、ノズルヘッド2における押圧部22が押圧されることにより、連結筒13がピストン12とともに下降しつつある状態を示している。また、図4はノズルヘッド2の押圧部22への押圧が解除されることにより、連結筒13がピストン12とともに上昇しつつ吐出口21に残留する流動体を流出弁機構15内および流動体吐出ポンプ1内へ引き込んでいる状態を示している。図5は、連結筒13がピストン12とともに上昇しつつ流出弁機構15内に残留する流動体を流動体吐出ポンプ1内へ引き込んでいる状態を示している。図6は、流入弁機構14および流出弁機構15が完全に閉止した状態を示している。
【0026】
これらの図2乃至図6に示すように、流動体吐出ポンプは、伸縮部材10と、伸縮部材10の下端に連結され、流動体貯留部4内に貯留された流動体を伸縮部材10に流入させるための流入弁機構14と、伸縮部材10の上端に連結され、伸縮部材10内部に流入した流動体をノズルヘッド2に流出させるための流出弁機構15とを備える。
【0027】
ここで、伸縮部材10は、その内部に比較的大量の流動体を収納する拡張姿勢と、その内部に比較的少量の流動体を収納する縮小姿勢との間で変形可能な構成となっている。この伸縮部材10は、流動体貯留部4の上部に配設されたシリンダ11と、シリンダ11内を往復移動可能なピストン12と、ノズルヘッド2とピストン12とを連結することにより、ノズルヘッド2に付与された押圧力をピストン12に伝達してピストン12を下降させるための中空状の流動体流通路131が形成された連結筒13と、連結筒13を介してピストン12を上昇させる方向に付勢するための、連結筒13の外周部に配設された弾性部材としてのコイルバネ17とから構成される。
【0028】
なお、ピストン12は、例えば、シリコンゴム等の樹脂を原材料とし、その外周部が、シリンダ11の内壁面と密接するように形成されている。
【0029】
コイルバネ17は、強力な付勢力を得るために、金属製のものが使用されている。ただし、このコイルバネ17は、連結筒の外周部に配設されていることから、連結筒13の内部を通過する流動体と接触することはない。
【0030】
流入弁機構14は、弁部材141とシリンダ11に形成される開口部111とから構成される。
【0031】
弁部材141は、流動体貯留部4内に貯留された流動体をシリンダ11内へ流入させるためのシリンダ11の下端部に形成された開口部111と対応する形状を有する弁体141aと、シリンダ11内に固定される支持部141bと、弁体141aと支持部141bとを連結する4個の連結部141cとを備える。この4個の連結部141cは、おのおの、一対の屈曲部141dを有する。これにより、この弁部材141は、より好適な可撓性を有する。
【0032】
このような流入弁機構14は、シリンダ11の下端部に形成され、流動体貯留部4とシリンダ11とを連通する開口部111を閉止および開放するためのものである。この流入弁機構14は、伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力と同等またはそれよりも上昇した場合には、弁部材141における弁体141aが開口部111と当接する当接位置に配置され、開口部111を閉止する。一方、伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力よりも低下した場合には、弁部材141における連結部141cの作用により、弁体141aが開口部111から離隔した離隔位置に配置され、開口部111を開放する。
【0033】
流出弁機構15は、底部に開口部が形成された第1弁座部151aおよび第1弁座部151aの上部に位置する略筒形状の内壁を有する第2弁座部151bからなる弁座部材151と、第1弁座部151aにおける開口部を閉止可能な第1弁部材152と、第2弁座部151bにおける内壁に当接可能な第2弁部材153とから構成される。
【0034】
図7は、流出弁機構15を構成する弁座部材151を示す説明図である。このうち、図7(a)は弁座部材151の平面図、図7(b)は弁座部材151の側面図、図7(c)は弁座部材151の側断面図、図7(d)は弁座部材151の裏面図である。
【0035】
弁座部材151は、その底部に開口部が形成された第1弁座部151aと、第1弁座部151aの上部に位置し、略筒形状の内壁を有する第2弁座部151bと、第1弁座部151aの下部に位置し、連結筒13と係合する係合部151cと、第1弁座部151aと係合部151cとの間に位置し、流動体を流通させるための流通路151dと、ノズルヘッド2と結合するための結合部151eとを備える。
【0036】
また、図8は、流出弁機構15を構成する第1弁部材152を示す説明図である。このうち、図8(a)は第1弁部材152の平面図、図8(b)は第1弁部材152の側面図、図8(c)は第1弁部材152の側断面図である。
【0037】
第1弁部材152は、第1弁座部151aにおける開口部を閉止する閉止位置と、当該開口部を開放する開放位置との間で移動可能な第1弁体152aと、第1弁体152aから立設された支持部152bとを有する。なお、この第1弁部材152における支持部152の先端には、後程詳細に説明する第2弁部材153の移動の上限を制限する第1係止部152cが形成されるとともに、支持部152bの下端には、第2弁部材153の移動の下限を制限する第2係止部152dが形成される。
【0038】
また、図9は、流出弁機構15を構成する第2弁部材153を示す説明図である。このうち、図9(a)は第2弁部材153の平面図、図9(b)は第2弁部材153の側面図、図9(c)は第2弁部材153の側断面図である。
【0039】
第2弁部材153は、第2弁座部151bにおける内壁に当接する当接位置と、当該内壁から離隔する離隔位置との間で移動可能な第2弁体153aと、第1弁体152における支持部152bと連結される連結部153bとを有する。なお、第2弁部材153における連結部153bには、第1弁部材152における第1係止部152cと係合する第1係合部153cが形成されるとともに、第1弁部材における第2系支部152dと係合する第2係合部153dが形成される。
【0040】
これらの第1弁部材152および第2弁部材153は、第1係止部152cと第1係合部153cとが係合する第1係合位置と、第2係止部152dと第2係合部153dとが係合する第2係合位置との間を互いに摺動可能に連結される。
【0041】
この弁座部材151と第1弁部材152と第2弁部材153とからなる流出弁機構15は、伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力よりも上昇した場合には、第1弁体152aおよび第2弁体153aがともに上昇することにより、第1弁体aが開放位置に移動するとともに、第2弁体153aが離隔位置に移動するように構成される。一方、流出弁機構15は、伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力よりも低下した場合には、第1弁体152aおよび第2弁体153aがともに下降し、第2弁体153aが当接位置に移動した後、第1弁体152aが閉止位置に移動するように構成される。
【0042】
さらに、図10は、ノズルヘッド2を示す説明図である。このうち、図10(a)はノズルヘッド2の平面図、図10(b)はノズルヘッド2の側断面図、図10(c)はノズルヘッド2の裏面図である。
【0043】
ノズルヘッド2は、流動体を吐出するための吐出口21と、流動体の吐出時に押圧される押圧部22と後に詳細に説明する流出弁機構15における第2弁部材153の移動を案内するためのリブ部23とを有する。このため、第2弁部材153を安定した状態で移動させることが可能となる。
【0044】
連結筒13は、弁座部材151における係合部151cと係合するための挿嵌部133と、ピストン12を摺動可能に結合する結合部134とを備える。また、連結筒13の内部には、流動体流通路131が形成される。そして、連結筒13の内部にはさらに、ピストン12が連結筒13に対して相対的に上方に摺動した場合に、流動体流通路131とシリンダ11内部とを連通する流入口132が形成される。
【0045】
このような構成を有する流動体吐出ポンプ1の流動体吐出動作について、再度図2乃至図6を用いて説明する。
【0046】
図2に示すように、流動体吐出ポンプ1に応力を付与することなく放置した場合において、弁部材141における弁体141aが開口部111と当接する当接位置に配置され、第1弁体152aが第1弁座部151aにおける開口部を閉止する閉止位置に配置され、第2弁体153aが第2弁座部151bにおける内壁に当接する当接位置に配置されている。なお、第1弁部材152および第2弁部材153は、第2係合位置に配置されている。
【0047】
このような流動体吐出ポンプ1に対して、図3に示すように、ノズルヘッド2における押圧部22が押圧されると、伸縮部材10がその内部に比較的少量の流動体を収納する縮小姿勢に変形される。このため、伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力よりも上昇する。このとき、ピストン12は連結筒13に対して相対的に上方に摺動し、流入口132が流動体流通路131とシリンダ11内部とを連通する。
【0048】
このように伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力よりも上昇すると、伸縮部材10内部の流動体からの押圧力を受けて、第1弁体152aが上昇する。第1弁体152aの上昇により、第2係合部153dが第2係止部152dから上方への押圧力を受けて、第2弁体153aが上昇する。この第1弁体152aおよび第2弁体153aの上昇により、第1弁体152aが開放位置に移動するとともに第2弁153aが離隔位置に移動し、伸縮部材10内部に収納される流動体はノズルヘッド2から吐出する。
【0049】
図4に示すように、ノズルヘッド2における押圧部22への押圧が解除されると、コイルバネ17の付勢力により、伸縮部材10がその内部に比較的大量の流動体を収納する拡張姿勢に変形される。このため、伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力よりも低下する。このとき、ピストン12は連結筒13に対して相対的に下方に摺動し、流入口132がピストン12により閉鎖される。
【0050】
このように伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力よりも低下すると、伸縮部材10内部からの吸引力を受けて、第1弁体152aが下降する。第1弁体152aの下降に伴い、第1係止部152cが第1係合部153cに係合する。すなわち、第1弁部材152および第2弁部材153は、第1係合位置に配置される。このとき、伸縮部材10内部の吸引力により、ノズルヘッド2における吐出口21付近に残留する流動体が第2弁体153aを通過して伸縮部材10内部に引き込まれる。このため、一旦ノズルヘッド2の吐出口22に流出した流動体が吐出口21付近に残留することを防止することができる。これにより、吐出口21に残留する流動体が外気と触れることにより、流動体の性質が変化するという問題が生じることを防止することができる。
【0051】
また、流入弁機構14においては、弁部材141における連結部141cの作用により、弁体141aが開口部111から離隔した離隔位置に配置され、開口部111を開放する。このとき、伸縮部材10内部の吸引力により、流動体貯留部4に貯留される流動体が流入弁機構14を通過して伸縮部材10内部に流入する。
【0052】
このような状態で、図5に示すように、第2弁体153aが当接位置に配置される。このとき、伸縮部材10内部の吸引力により、第1弁体152aと第2弁体153aとの間に引き込まれた流動体がさらに第1弁体152aを通過して伸縮部材10内部に引き込まれる。そして、第1弁体152aと第2弁体153aとの間に引き込まれた流動体が減少すると、第1弁部材152および第2弁部材153が第2係合位置に配置される。
【0053】
そして、伸縮部材10内部の圧力が外部の圧力と同等になると、図6に示すように、第1弁体152aが閉止位置に配置される。また、流入弁機構14においては、弁部材141における連結部141cの作用により、弁体141aが開口部111に当接する当接位置に配置され、開口部111を閉止する。
【0054】
なお、この第1実施形態に係る流動体吐出ポンプ1においては、第2弁体153aが第2弁座部151bにおける内壁と当接しながら移動する当接移動距離が、第1係合位置と第2係合位置との間の距離(第1弁部材152と第2弁部材153との摺動距離)よりも短くなるように設定されている。このため、第2弁体153aが当接位置に移動した後、第1弁体152aが閉止位置に移動することを確実にすることが可能となる。
【0055】
次に、この発明の他の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部材については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0056】
図11および図12は、この発明の第2実施形態に係る流動体吐出ポンプ5を適用した流動体容器における、流動体吐出ポンプ5をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。なお、これらの図のうち、図11は流動体吐出ポンプ5に応力を付与することなく放置した状態を、図12はノズルヘッド2における押圧部22が押圧されることにより、連結筒13がピストン12とともに下降しつつある状態を示している。
【0057】
この第2実施形態に係る流動体吐出ポンプ5は、第1実施形態に係る流動体吐出ポンプ1における第1弁部材152に代えて、第1弁部材154を利用している。
【0058】
図13は、第1弁部材154を示す説明図である。このうち、図13(a)は第1弁部材154の平面図、図13(b)は第1弁部材154の側面図、図13(c)は第1弁部材154の側断面図、図13(d)は第1弁部材154の裏面図である。
【0059】
第1弁部材154は、第1弁座部151aにおける開口部を閉止する閉止位置と、当該開口部を開放する開放位置との間で移動可能な第1弁体154aと、第1弁体154aから立設された支持部154bと、弁座部材151における流通路151dに摺動可能に挿嵌されるリブ154eとを有する。なお、この第1弁部材154における支持部154の先端には、第2弁部材153の移動の上限を制限する第1係止部154cが形成されるとともに、支持部154bの下端には、第2弁部材153の移動の下限を制限する第2係止部154dが形成される。
【0060】
この第1弁部材154は、リブ154eを有するため、第1弁体154aの移動を安定させることが可能となる。なお、このリブ154eは、第1弁体154aの移動をより安定させることを確実にするために、4個であって等間隔に配置することが好ましい。
【0061】
図14は、この発明の第3実施形態に係る流動体吐出ポンプ6をを適用した流動体容器における、流動体吐出ポンプ6をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【0062】
この第3実施形態に係る流動体吐出ポンプ6は、連結筒13の下部に漏洩防止機構18を備える。
【0063】
漏洩防止機構18は、シリンダ11の内側に形成される壁面182と、壁面182と当接する略皿状の漏洩防止弁181とから構成される。
【0064】
この漏洩防止機構18において、ノズルヘッド2における押圧部22に応力が付与されていない場合には、漏洩防止部弁181は、壁面182と当接した状態となっている。これにより、シリンダ11内に流入した流動体が連結筒13の流動体流通路131に流入することを禁止することが可能となる。一方、ノズルヘッド2における押圧部22が押圧された場合には、漏洩防止弁181が下降して、壁面182から離隔する。
【0065】
図15は、この発明の第4実施形態に係る流動体吐出ポンプ7を適用した流動体容器を示す縦断面図である。
【0066】
この第4実施形態に係る流動体吐出ポンプ7は、シリンダ11の開口部111に接続される吸引管90を備える。この吸引管90は、流動体貯留部4内に挿入される構造となっている。このため、第1実施形態における流動体貯留部4のように、ピストン部材42を備える必要がなく、製作コストを低減することが可能となる。
【0067】
図16は、この発明の第5実施形態に係る流動体吐出ポンプ8を適用した流動体容器における、流動体吐出ポンプ8をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【0068】
この第5実施形態に係る流動体吐出ポンプ8は、第1実施形態に係る流動体吐出ポンプ1における伸縮部材10に代えて、伸縮部材19を利用し、第1実施形態に係る流動体吐出ポンプ1おける流入弁機構14に代えて、流入弁機構50を利用している。また、流動体と出ポンプ8は、連結筒13の下部に配設される漏洩防止機構51を備える。
【0069】
この伸縮部材19は、樹脂製の蛇腹部材から構成される。この伸縮部材19は、所定の弾性を有する樹脂を蛇腹状の形状に成型してなるものである。この伸縮部材19の下端は流入弁機構50と液蜜な状態で結合されるとともに、伸縮部材19の上端は流出弁機構15と液蜜な状態で結合される。
【0070】
流入弁機構50は、流入弁部材501と流入弁座部材502とから構成される。
【0071】
流入弁座部材502は、流動体貯留部4内に貯留された流動体を伸縮部材19内へ流入させるために形成された開口部502aと、流入弁部材501を固定するための固定部502bとを備える。
【0072】
流入弁部材501は、流入弁座部材502に形成された開口部502aと対応する形状を有する弁体501aと、流入弁座部材502における固定部502bと結合して固定される支持部501bと、弁体501aと支持部501bとを連結する4個の連結部501cと、支持部501bの内側に形成される壁面512とを備える。この4個の連結部501cは、おのおの一対の屈曲部501dを有する。これにより、この流入弁部材501は、より好適な可撓性を有する。
【0073】
この流入弁機構50において、伸縮部材19内部の圧力が外部の圧力よりも上昇した場合には、弁体501aが開口部502aと当接する位置に配置され、開口部502aを閉止する。一方、伸縮部材19内部の圧力が外部の圧力よりも低下した場合には、弁体501aが開口部502aから離隔する位置に配置され、開口部502aを開放する。
【0074】
漏洩防止機構51は、連結筒13の下部に結合される漏洩防止弁511と、支持部501bの内側に形成される壁面512とから構成される。この漏洩防止弁511は、壁面512と当接可能な可撓性のある略皿状の部材からなる。
【0075】
この漏洩防止機構51において、ノズルヘッド2における押圧部22に応力が付与されていない場合には、漏洩防止部弁181は、壁面182と当接した状態となっている。これにより、シリンダ11内に流入した流動体が連結筒13の流動体流通路131に流入することを禁止することが可能となる。一方、ノズルヘッド2における押圧部22が押圧された場合には、漏洩防止弁181が下降して、壁面182から離隔する。
【0076】
なお、上述したこの発明に係る第1実施形態乃至第5実施形態における流入弁機構14、50、および流出弁機構15は、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂、シリコンゴム等の合成ゴム、あるいはこれらの混合物等を使用した材料により構成されることが好ましい。
【0077】
また、流入弁機構の構成は、上述した流入弁機構14、50の構成に限定されるものではなく、伸縮部材10、19内部の圧力が外部の圧力よりも上昇した場合に、開口部を閉止し、伸縮部材10、19内部の圧力が外部の圧力よりも低下した場合に、開口部を開放することができる構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明の第1実施形態に係る流動体吐出ポンプ1を適用した流動体容器の縦断面図である。
【図2】流動体吐出ポンプ1をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【図3】流動体吐出ポンプ1をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【図4】流動体吐出ポンプ1をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【図5】流動体吐出ポンプ1をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【図6】流動体吐出ポンプ1をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【図7】流出弁機構15を構成する弁座部材151を示す説明図である。
【図8】流出弁機構15を構成する第1弁部材152を示す説明図である。
【図9】流出弁機構15を構成する第2弁部材153を示す説明図である。
【図10】ノズルヘッド2を示す説明図である。
【図11】流動体吐出ポンプ5をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【図12】流動体吐出ポンプ5をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【図13】第1弁部材154を示す説明図である。
【図14】流動体吐出ポンプ6をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【図15】この発明の第4実施形態に係る流動体吐出ポンプ7を適用した流動体容器を示す縦断面図である。
【図16】流動体吐出ポンプ8をノズルヘッド2とともに示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 流動体吐出ポンプ
2 ノズルヘッド
3 蓋部材
4 流動体貯留部
5 流動体吐出ポンプ
6 流動体吐出ポンプ
7 流動体吐出ポンプ
8 流動体吐出ポンプ
10 伸縮部材
11 シリンダ
12 ピストン
13 連結筒
14 流入弁機構
15 流出弁機構
16 ネジ部材
17 コイルバネ
18 漏洩防止機構
19 伸縮部材
21 吐出口
22 押圧部
23 リブ部
41 シリンダ部材
42 ピストン部材
43 内蓋
44 外蓋
50 流入弁機構
51 漏洩防止機構
90 吸引管
111 開口部
131 流動体流通路
132 流入口
133 挿嵌部
134 結合部
141 弁部材
151 弁座部材
152 第1弁部材
153 第2弁部材
154 第1弁部材
181 漏洩防止弁
182 壁面
501 流入弁部材
502 流入弁座部材
511 漏洩防止弁
512 壁面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動体貯留部の上方に配設されたノズルヘッドを押圧することにより、前記流動体貯留部内に貯留された流動体を前記ノズルヘッドから吐出させるための流動体吐出ポンプにおいて、
前記流動体貯留部の上部に配設され、その内部に比較的大量の流動体を収納する拡張姿勢と、その内部に比較的少量の流動体を収納する縮小姿勢との間で変形可能な伸縮部材と、
前記伸縮部材の下端に連結され、前記流動体貯留部内に貯留された流動体を前記伸縮部材内部に流入させるための流入弁機構と、
前記伸縮部材の上端に連結され、前記伸縮部材内部に流入した流動体を前記ノズルヘッドに流出させるための流出弁機構と、を備え、
前記流出弁機構は、
その底部に開口部が形成された第1弁座部と、
前記第1弁座部における開口部を閉止する閉止位置と前記開口部を開放する開放位置との間で移動可能な第1弁体と、前記第1弁体から立設された支持部とを有する第1弁部材と、
前記第1弁座部の上部に配設され、略筒形状の内壁を有する第2弁座部と、
前記第2弁座部における内壁に当接する当接位置と内壁から離隔する離隔位置との間で移動可能な第2弁体と、前記第1弁部材における支持部と連結される連結部とを有する第2弁部材と、から構成され、
前記伸縮部材内部の圧力が外部の圧力よりも上昇した場合には、前記第1弁体および前記第2弁体がともに上昇することにより、前記第1弁体が開放位置に移動するとともに前記第2弁体が離隔位置に移動し、
前記伸縮部材内部の圧力が外部の圧力よりも低下した場合には、前記第1弁体および前記第2弁体がともに下降し、前記第2弁体が当接位置に移動した後、前記第1弁体が閉止位置に移動することを特徴とする流動体吐出ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の流動体吐出ポンプにおいて、
前記第1弁部材における支持部の先端部に第1係止部が形成されるとともに、その下端部には第2係止部が形成され、
前記第2弁部材における連結部には、前記第1係止部と係合する第1係合部が形成されるとともに、前記第2係止部と係合する第2係合部が形成され、
前記第1弁部材および前記第2弁部材は、前記第1係止部と前記第1係合部とが係合する第1係合位置と、前記第2係止部と前記第2係合部とが係合する第2係合位置との間を互いに摺動可能に連結される流動体吐出ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の流動体吐出ポンプにおいて、
前記第2弁体が前記第2弁座部における内壁と当接しながら移動する当接移動距離は、前記第1弁部材と前記第2弁部材との摺動距離よりも短い流動体吐出ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流動体吐出ポンプにおいて、
前記伸縮部材は、
シリンダと、
前記シリンダ内を往復移動可能なピストンと、
前記ノズルヘッドと前記ピストンとを連結することにより、前記ノズルヘッドに付与された押圧力を前記ピストンに伝達して下降させるための、中空状の流動体流通路が形成された連結筒と、
前記連結筒を介して前記ピストンを上昇させる方向に付勢させるための、前記連結筒の外周部に配設された弾性部材と、
から構成される流動体吐出ポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流動体吐出ポンプにおいて、
前記伸縮部材は、樹脂製の蛇腹部材から構成される流動体吐出ポンプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−27654(P2006−27654A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208299(P2004−208299)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(599047550)
【Fターム(参考)】