説明

流動体混合装置

【課題】 小型でコンパクトな本体であっても長い流路を形成することができ、迅速かつ確実に攪拌して混合することができる流動体混合装置を提供すること。
【解決手段】 受け筒部材2の外側筒材21の内周面とロッド1の筒部13の外側面との間に第一混合流路Wを形成する一方、其処から折り返して、受け筒部材2の内側筒材22の外周面とロッド1の筒部13の内周面との間に第二混合流路Wを形成して、更に折り返しに、受け筒部材2の内側筒材22の内周面とロッド1の軸部との間に第三混合流路Wを形成して、開口部21aから注入された複数の流動体Rが、これらの混合流路W〜Wを通過するときに、ロッド1を回転することによって、攪拌突起13aおよびミキサー凸部11によって同時に攪拌混合して、排出口20aから排出可能に構成するという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体等の流動体の混合装置の改良、更に詳しくは、小型でコンパクトな本体であっても長い流路を形成することができ、迅速かつ確実に攪拌して混合することができる流動体混合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、複数の原料(主に液体などの流動体)を配合して塗料や接着剤などを製造する場合には、原料が分離してしまったり、化学反応によって直ちに硬化が始まる物質もあるので、混合作業を迅速に行う必要があり、これらの複数の流動体を強制的に混合する装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、かかる従来の混合装置にあっては、これら複数の原料を十分かつ確実に攪拌して混合するための所定長さの流路を確保するために、装置の本体が長くなって大型化してしまうという問題があった。
【0004】
また、このような混合装置にあっては、複数の原料同士を混合する際に、化学反応によって生じる発熱を冷却したり、硬化を防止するために加熱または保温するなどして、装置内の温度を調整する必要もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−313042号公報(第5−9頁、図1)
【特許文献2】特開2002−253941号公報(第3−6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の混合装置に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、小型でコンパクトな本体であっても長い流路を形成することができ、迅速かつ確実に攪拌して混合することができる流動体混合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0008】
即ち、本発明は、複数種類の流動体Rを混合するための装置であって、
駆動機構により回転可能なロッド1の軸部の先端近傍にはミキサー凸部11を形成して、かつ、このロッド1の胴部には円板状のフランジ板12を固定して、このフランジ板12の縁部から当該ロッド1の先端方向にかけて円筒状の筒部13を突成して、この筒部13の壁表面には攪拌突起13aを形成する一方、
受け筒部材2は、円筒状の外側筒材21と内側筒材22とがフランジ板20から同心円状に突設された二重筒構造に構成して、かつ、前記外側筒材21の外周面には、前記流動体Rを注入するための開口部21aを形成するとともに、フランジ板20の略中央には、混合された流動体Rの排出口20aを形成し、
前記受け筒部材2の外側筒材21と内側筒材22との間には、前記ロッド1の筒部13が所定間隔を設けて挿入されており、かつ、内側筒材22の内側には当該ロッド1の先端部が所定間隔を設けて挿入された状態で支持して、
前記受け筒部材2の外側筒材21の内周面とロッド1の筒部13の外側面との間に第一混合流路Wを形成する一方、其処から折り返して、受け筒部材2の内側筒材22の外周面とロッド1の筒部13の内周面との間に第二混合流路Wを形成して、更に折り返しに、受け筒部材2の内側筒材22の内周面とロッド1の軸部との間に第三混合流路Wを形成して、
前記開口部21aから注入された複数の流動体Rが、これらの混合流路W〜Wを通過するときに、ロッド1を回転することによって、攪拌突起13aおよびミキサー凸部11によって同時に攪拌混合して、排出口20aから排出可能に構成するという技術的手段を採用したことによって、流動体混合装置を完成させた。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ロッド1の筒部13の壁面を貫通する部材を固定して、内外両面に攪拌突起13aを形成するという技術的手段を採用した。
【0010】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、受け筒部2の外側筒材21の内部に流動体Rの温度調節用の媒液を導通可能な通孔21bを形成するという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、受け筒部2のフランジ板20と外側筒材21とを分解可能に構成するという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ロッド1の軸部先端のミキサー凸部11を、当該軸部にブロック片11aを固定して形成するという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、複数種類の流動体を混合するための装置であって、駆動機構により回転可能なロッドの軸部の先端近傍にはミキサー凸部を形成して、かつ、このロッドの胴部には円板状のフランジ板を固定して、このフランジ板の縁部から当該ロッドの先端方向にかけて円筒状の筒部を突成して、この筒部の壁表面には攪拌突起を形成する一方、
受け筒部材は、円筒状の外側筒材と内側筒材とをフランジ板から同心円状に突設された二重筒構造に構成して、かつ、前記外側筒材の外周面には、前記流動体を注入するための開口部を形成するとともに、フランジ板の略中央には、混合された流動体の排出口を形成して、前記受け筒部材の外側筒材と内側筒材との間には、前記ロッドの筒部を所定間隔を設けて挿入して、かつ、内側筒材の内側には当該ロッドの先端部を所定間隔を設けて挿入した状態で支持して、前記受け筒部材の外側筒材の内周面とロッドの筒部の外側面との間に第一混合流路を形成する一方、其処から折り返して、受け筒部材の内側筒材の外周面とロッドの筒部の内周面との間に第二混合流路を形成して、更に折り返しに、受け筒部材の内側筒材の内周面とロッドの軸部との間に第三混合流路を形成したことによって、
前記開口部から注入された複数の流動体が、これらの混合流路を通過するときに、ロッドが回転することによって、攪拌突起およびミキサー凸部によって同時に攪拌混合して、排出口から排出することができる。
【0014】
したがって、本発明の混合装置によれば、小型でコンパクトな本体であっても長い流路を形成することができ、迅速かつ確実に攪拌して混合することができる。
【0015】
また、本発明の装置は、連続した工程の一部に組み込むこともでき、例えば、2種類以上の流動体を混合して、そのまま塗布機構に連結して使用すれば、混合させると短時間で硬化するような接着剤などの塗布作業に効果的である。本発明の混合装置は、非常にコンパクトなサイズであるので、塗布装置などに複合的に導入し易い。
【0016】
また、必要に応じて、混合した流動体に対する冷却や加温機能を付与することができるので、混合した流動体を化学的および物理的に安定した状態で攪拌することができることから、実用的利用価値は頗る高いものがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の混合装置を表わす説明側面断面図である。
【図2】本発明の実施形態のロッドを表わす説明側面断面図である。
【図3】本発明の実施形態のロッドを表わす斜視図である。
【図4】本発明の実施形態のロッドの軸部を表わす斜視図である。
【図5】本発明の実施形態の受け筒部材を表わす説明側面断面図である。
【図6】本発明の実施形態の受け筒部材を表わす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0019】
本発明の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものはロッドであり、このロッド1は、電動モータなどの駆動機構により回転可能な棒状部材である。また、符号2で指示するものは受け筒部材である。
【0020】
しかして、本発明の混合装置は、所定比率に調製された複数種類の流動体R(R・R・R…)を混合するための装置であって、構成するにあっては、まず、前記ロッド1の軸部の先端近傍にはミキサー凸部11を形成する。
【0021】
本実施形態では、このロッド1の軸部先端のミキサー凸部11を、当該軸部にブロック片11aを固定して形成する(図2および図3参照)。このブロック片11aは、回転時に流動体内を横切って攪拌可能な形状であり、本実施形態では、直方体状に形成したものを4つ固定する。
【0022】
そして、このロッド1の胴部には円板状のフランジ板12を固定し、このフランジ板12の縁部から、当該ロッド1の先端方向にかけて円筒状の筒部13を突成する。更に、この筒部13の壁表面に攪拌突起13aを形成する(図4参照)。本実施形態では、フランジ板12と筒部13とを溶接して接合一体化する。
【0023】
本実施形態では、ロッド1の筒部13の壁面を貫通する部材を固定して、内外両面に攪拌突起13aを形成する。具体的には、筒部13の壁面にネジ孔を開設するとともに、このネジ孔にボルト部材を螺入し、このボルト頭と先端側をそれぞれ突出させることによって、攪拌突起13aをそれぞれの面に形成することができる。
【0024】
一方、前記受け筒部材2は、円筒状の外側筒材21と内側筒材22とをフランジ板20から同心円状に突設して二重筒構造に構成する。この際、この外側筒材21の外周面には、前記流動体Rを注入するための開口部21aを形成するとともに、フランジ板20の略中央には、混合された流動体Rの排出口20aを形成する(図5および図6参照)。
【0025】
そして、前記受け筒部材2の外側筒材21と内側筒材22との間には、前記ロッド1の筒部13が所定間隔を設けて挿入して、かつ、内側筒材22の内側には当該ロッド1の先端部が所定間隔を設けて挿入した状態で支持する。この際、ロッド1は回転軸受けに支持するとともに、駆動モータに連結する。また、本実施形態では、流動体の流動抵抗になったり、流動体が過剰に剪断されない程度の間隔に調整することができる。
【0026】
このような状態に両部材を合わせて支持することによって、前記受け筒部材2の外側筒材21の内周面とロッド1の筒部13の外側面との間に第一混合流路Wを形成する一方、其処から折り返して、受け筒部材2の内側筒材22の外周面とロッド1の筒部13の内周面との間に第二混合流路Wを形成し、更に折り返しに、受け筒部材2の内側筒材22の内周面とロッド1の軸部との間に第三混合流路Wを形成することができる。したがって、小型でコンパクトな本体の内部において、攪拌に十分な長い流路を通常の約3分の1の全長で形成することができるのである。
【0027】
そして、前記開口部21aから注入された複数の流動体Rが、これらの混合流路W〜Wを通過するときに、ロッド1が回転することによって、攪拌突起13aおよびミキサー凸部11によって同時に攪拌混合して、排出口20aから排出することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、受け筒部2の外側筒材21の内部に流動体Rの温度調節用の媒液を導通可能な通孔21bを形成することができ、強制混合中に生じる化学反応等による自己発熱の抑制や、混合中の液体を一定温度以上又は以下に保つための冷却水などの冷却用熱媒や、温水または蒸気などの過熱用熱媒を導通させることができる。
【0029】
また、本実施形態では、受け筒部2のフランジ板20と外側筒材21とを分解可能に構成することができ、内部の洗浄を容易にすることもできる。具体的には、フランジ板20と外側筒材21とをボルトによって止着して組み立てることにより、洗浄時に簡単に分解することができる。また、ロッド1の軸部とフランジ板12とを分離することができる。なお、各部材間の液漏れを防止するために、適宜オーリングを介装する。
【0030】
本発明は概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、ロッド1のミキサー凸部11の形状は直方体形状に限らず、三角形状やプロペラ状のものを採用することもできる。
【0031】
また、本実施形態の混合流路は3重構造になっているが、各筒材の数を増加して5重構造以上に拡張することもできるし、更にまた、上記実施形態とは逆に、流動体Rを排出口20aから注入して、各混合流路内を流動させて開口部21aから排出するようにしても、同様に混合することができ、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0032】
1 ロッド
11 ミキサー凸部
11a ブロック片
12 フランジ板
13 筒部
13a 攪拌突起
2 受け筒部材
20 フランジ板
20a 排出口
21 外側筒材
21a 開口部
21b 通孔
22 内側筒材
R(R・R・R) 流動体
第一混合流路
第二混合流路
第三混合流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の流動体Rを混合するための装置であって、
駆動機構により回転可能なロッド1の軸部の先端近傍にはミキサー凸部11が形成されており、かつ、このロッド1の胴部には円板状のフランジ板12が固定され、このフランジ板12の縁部から当該ロッド1の先端方向にかけて円筒状の筒部13が突成されており、この筒部13の壁表面には攪拌突起13aが形成されている一方、
受け筒部材2は、円筒状の外側筒材21と内側筒材22とがフランジ板20から同心円状に突設された二重筒構造に構成され、かつ、前記外側筒材21の外周面には、前記流動体Rを注入するための開口部21aが形成されているとともに、フランジ板20の略中央には、混合された流動体Rの排出口20aが形成されており、
前記受け筒部材2の外側筒材21と内側筒材22との間には、前記ロッド1の筒部13が所定間隔を設けて挿入されており、かつ、内側筒材22の内側には当該ロッド1の先端部が所定間隔を設けて挿入された状態で支持されており、
前記受け筒部材2の外側筒材21の内周面とロッド1の筒部13の外側面との間に第一混合流路Wが形成される一方、其処から折り返して、受け筒部材2の内側筒材22の外周面とロッド1の筒部13の内周面との間に第二混合流路Wが形成され、更に折り返しに、受け筒部材2の内側筒材22の内周面とロッド1の軸部との間に第三混合流路Wが形成されており、
前記開口部21aから注入された複数の流動体Rが、これらの混合流路W〜Wを通過するときに、ロッド1が回転することによって、攪拌突起13aおよびミキサー凸部11によって同時に攪拌混合して、排出口20aから排出可能に構成したことを特徴とする流動体混合装置。
【請求項2】
ロッド1の筒部13の壁面を貫通する部材が固定されて、内外両面に攪拌突起13aが形成されていることを特徴とする請求項1記載の流動体混合装置。
【請求項3】
受け筒部2の外側筒材21の内部に流動体Rの温度調節用の媒液を導通可能な通孔21bが形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の流動体混合装置。
【請求項4】
受け筒部2のフランジ板20と外側筒材21とが分解可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の流動体混合装置。
【請求項5】
ロッド1の軸部先端のミキサー凸部11は、当該軸部にブロック片11aを固定して形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の流動体混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−523(P2011−523A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144380(P2009−144380)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(391026531)轟産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】