説明

流動層ガス化ガス精製方法及び精製装置

【課題】 固体燃料のガス化ガス中に含まれるタールやH2SをCaCO3、MgCO3等を含む天然鉱物を用いて容易且つ安価に除去でき、ガス化ガスを十分に精製可能な流動層ガス化ガス精製方法及び精製装置を提供する。
【解決手段】 ガス化炉(10)に並設したチャー燃焼炉(20)においてCaCO3、MgCO3を含む天然鉱物ガス精製剤を焼成により活性化し、ガス化炉(10)において該活性化したガス精製剤、例えばCaO、MgOを用いて流動層ガス化ガスを精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料ガス化ガスの精製方法及び精製装置に係り、詳しくは外部循環型の流動層を有したシステムにおけるガス化ガスの精製技術に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭、バイオマス等の固体燃料のガス化においては、化学的な組成及び形成温度に応じ、主として700℃以下の温度で形成される低温タールとそれ以上の温度で形成される高温タールの2種類のタールが生成される。
しかしながら、このように生成されるタールの存在は装置や環境等に種々の悪影響を与え、ガスの利用対象にもよるが、例えばガスタービン等に使用するガスにおいては、最後のガス中に含まれるタールの量を数十(例えば、10〜20)mg/m3程度まで抑えることが要求されている。
【0003】
そこで、固体燃料のガス化ガスを精製してタールを除去する手法が種々開発されている。
大きく分けると、タールの除去方法としては、スクラバを用いた冷浄化法、ガス化後のガスを直接処理するHot-gas浄化法及びIn-bed浄化法の三通りの手法がある。
冷浄化法は、確実にタールを除去できるとともにH2Sをも除去可能である一方、エネルギーの損失と廃水の後処理の欠点を避けられない。
【0004】
Hot-gas浄化法は、主として触媒除去と熱分解の二つの手法からなる。
触媒を用いる場合には、タールの熱分解と改質等の反応とが同時に行われる。触媒としては、例えばNi-Base触媒の他、焙焼したドロマイト、マグネサイト、石灰石、ゼオライト、酸化アルミニウム(Al23)、二酸化珪素(SiO2)、酸化鉄(FexOy)があり、一般には低コストのドロマイトや石灰石が使用されている。そして、Hot-gas浄化法の適用例として、単独のガス精製反応器を用いるものの他、ガス化炉の流動層の上部空間に充填剤を有する第二段または多段の反応層を設置するものが知られている(特許文献1)。
【0005】
熱分解の適用例としては、熱分解のためにガス化の過程を二段階に分け、最初の600〜800℃の第一段階にて燃料をガス化し、このガス化したガス(ガス化ガス)をさらに温度の高い第二段階の空間に通してタールを除去するものが知られている(特許文献2)。また、空気供給により第二段階の空間の温度を800〜1100℃の高温に保持するもの(特許文献3)、単独の高温ガス溶融により溶融炉の温度を1300℃以上とするもの(特許文献4)が知られている。
【0006】
In-bed浄化法は、ガス化に伴いタールの生成を予め抑える方法であり、この方法として、例えばガス化条件を最適化するとともに金属酸化物をガス化炉の流動化基材として利用し、タール等の異物を当該流動化基材に吸着させる方法が知られている(特許文献5)。なお、通常において基材はタールを改質反応させる触媒機能も有している。
具体的に、当該In-bed浄化法では、ガス中のタール含有量を2g/ m3程度にすることを目的としており、その後、改質触媒層においてさらにタール含有量を20mg/ m3以下にまで低下させる。
【0007】
しかしながら、このように改質触媒層においてタール含有量を20mg/ m3以下にまで低下させようとすると、高タールの状況下ではタール中のH2Sの影響も相俟って改質触媒の活性が早期に低下してしまうことになる。
そこで、ガス化炉と改質触媒層との間にGuard-bedと呼ばれる固定層反応器を介装し、ガス化炉からのガスを予備処理することが考えられている。このGuard-bedを用いた方法は、プロセスが多少複雑になるものの、ガスの浄化方法としては有効なものである。具体的には、Guard-bedに金属酸化物、例えば焙焼した上記ドロマイト、マグネサイト、石灰石、ゼオライト、酸化アルミニウム(Al23)、二酸化珪素(SiO2)、酸化鉄(FexOy)を充填する。これによりタールの低減も図られる。
【0008】
また、CaO、CaO・MgO、MgO等の活性酸化物を充填することでガス中のH2Sを低減する方法が知られている(特許文献6)。
【特許文献1】特開平9−53082号公報
【特許文献2】特開平6−256775号公報
【特許文献3】特開平9−166309号公報
【特許文献4】特開平10−236801号公報
【特許文献5】特開2004−51855号公報
【特許文献6】特開平9−202888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献6に示す方法によれば、石炭、バイオマス等の固体燃料のガス化とガス化後残留チャーの燃焼を略同じ反応空間で行い、ガス化ガスの精製には焼成したCaO、MgO等を使用するようにしている。
しかしながら、この場合、焼成後のCaO、MgO等については別工程において準備する必要があり、コスト高となる現実がある。
【0010】
そこで、循環流動層において安価なCaCO3、MgCO3等を含む天然鉱物を用いてCaOやMgOを焼成することが考えられる。
ところが、上記特許文献6に開示の装置では、燃焼とガス化が殆ど共存しているため、生成ガス中のCO2濃度が高く、またガス化が吸熱反応であることから、流動層の温度があまり上がらず、故にCaCO3、MgCO3等を含む天然鉱物の熱分解が起こり難く、CaOやMgOが十分に生成されないという問題がある。
【0011】
また、ここではタールの除去に上記Hot-gas浄化法が適用されることになるが、流動層の温度が十分に上がらないため、ガス化ガス中のタールをも十分に低減することができないという問題もある。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、固体燃料のガス化ガス中に含まれるタールやH2SをCaCO3、MgCO3等を含む天然鉱物を用いて容易且つ安価に除去でき、ガス化ガスを十分に精製可能な流動層ガス化ガス精製方法及び精製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、請求項1の流動層ガス化ガス精製方法では、ガス化炉内の流動層に供給した固体燃料を前記ガス化炉内に循環される加熱された流動熱媒体の熱と流動層に吹き込むガス化剤によってガス化し、該ガス化により生成したガス化ガスをガス精製剤を用いて精製する流動層ガス化ガス精製方法であって、前記ガス化炉内の流動層に前記加熱された流動熱媒体とともに活性化したガス精製剤を供給し、前記固体燃料から生成したガス化ガスを該活性化したガス精製剤によって精製する第一工程と、前記ガス化炉に並設される燃焼炉内の流動層に前記ガス化炉から前記固体燃料のガス化により生成されたチャー、低温化した前記流動熱媒体、反応したガス精製剤及び新添加の未活性化ガス精製剤を供給し、該燃焼炉内の流動層で酸化剤を供給しながら前記チャーを燃焼させ、該チャーの燃焼熱で前記流動熱媒体を加熱するとともに前記反応したガス精製剤及び前記新添加の未活性化ガス精製剤を焼成により活性化し、該加熱された流動熱媒体及び該活性化したガス精製剤を前記ガス化炉に循環させる第二工程と、前記ガス化炉から前記燃焼炉におけるチャーの燃焼により生成した燃焼灰とともにガス精製に使用されて精製機能の低下した低活性ガス精製剤を排出する第三工程とを備えたことを特徴とする。
【0013】
即ち、ガス化炉において固体燃料から生成されるガス化ガス中に活性化したガス精製剤(例えば、CaO、MgO)を供給すると、ガス化ガスに含まれるタールがその活性化したガス精製剤の触媒作用によって改質されるとともに煤塵がガス精製剤に付着し、H2Sが当該活性化したガス精製剤と反応して硫化物を生成してガス化ガスの精製が行われる(第一工程)。
【0014】
また、ガス化は吸熱反応であるために炉内温度が低く、またCO2濃度が高いため、ガス化炉内ではガス精製剤を活性化することができないのであるが、ガス化炉とは別体に併設した流動熱媒体を加熱するための燃焼炉では、ガス化して残ったチャーを燃焼させるだけで炉内雰囲気が高温にして良好に低CO2濃度ともなり、故にガス化炉からの反応したガス精製剤及び新添加の未活性化ガス精製剤を焼成し活性化させることが可能とされ、当該活性化したガス精製剤が燃焼炉からガス化炉に好適に循環される(第二工程)。
【0015】
そして、活性化したガス精製剤が精製に使用されると、精製機能が低下することになるが、このように精製機能の低下した低活性ガス精製剤は、燃焼炉におけるチャーの燃焼により生成した燃焼灰とともに排出される(第三工程)。
また、請求項2の流動層ガス化ガス精製方法では、前記第二工程において、前記反応したガス精製剤のうち再生可能な部分を前記ガス化炉から前記燃焼炉内の流動層に供給し、前記チャーの燃焼熱で焼成により活性化して該反応したガス精製剤の精製機能を再生させることを特徴とする。
【0016】
これにより、ガス化炉で反応したガス精製剤の一部が燃焼炉において焼成し活性化して再生され、ガス化炉に好適に循環される。
また、請求項3の流動層ガス化ガス精製方法では、前記第二工程において、新添加の未活性化ガス精製剤を前記燃焼炉内の流動層に供給し、前記チャーの燃焼熱で焼成により活性化して該新添加の未活性化ガス精製剤に精製機能を生起させることを特徴とする。
【0017】
これより、精製機能の低下した低活性ガス精製剤が廃棄される一方で燃焼炉に新添加の未活性化ガス精製剤が補充され、当該新添加の未活性化ガス精製剤が焼成し活性化されてガス化炉に好適に循環される。
また、請求項4の流動層ガス化ガス精製方法では、前記新添加の未活性化ガス精製剤はCaCO3やMgCO3等を含む天然鉱物であり、前記第二工程では該天然鉱物を焼成により活性化して該鉱物中に在る金属の酸化物を生成することを特徴とする。
【0018】
即ち、天然鉱物である石灰石やドロマイト等から活性化したガス精製剤CaO、MgO、CaO・MgO等の金属酸化物が容易に焼成され、当該金属酸化物によって良好にガス化ガスの精製が行われる。
請求項5の流動層ガス化ガス精製装置では、ガス化炉内の流動層に供給した固体燃料を前記ガス化炉内に循環される加熱された流動熱媒体の熱及び流動層に吹き込むガス化剤によってガス化し、該ガス化により生成したガス化ガスをガス精製剤を用いて精製する流動層ガス化ガス精製装置であって、前記ガス化炉に併設され、前記固体燃料のガス化により生成され前記ガス化炉から供給されるチャーを酸化剤を供給しながら流動層で燃焼させ、該チャーの燃焼熱で前記ガス化炉から該チャーとともに供給される低温化した前記流動熱媒体を該流動層で加熱するとともに前記ガス化炉から供給される反応したガス精製剤及び新添加の未活性化ガス精製剤を該流動層で焼成により活性化し、該加熱された流動熱媒体及び該活性化したガス精製剤を前記ガス化炉に循環させる燃焼炉と、前記燃焼炉内の流動層に前記新添加の未活性化ガス精製剤を供給するガス精製剤供給手段と、前記ガス化炉から前記燃焼炉におけるチャーの燃焼により生成した燃焼灰とともにガス精製に使用されて精製機能の低下した低活性ガス精製剤を排出する排出手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
即ち、ガス化炉において固体燃料から生成されるガス化ガス中に活性化したガス精製剤(例えば、CaO、MgO)を供給すると、ガス化ガスに含まれるタールがその活性化したガス精製剤の触媒作用によって改質されるとともに煤塵がガス精製剤に付着し、H2Sが当該活性化したガス精製剤と反応して硫化物を生成してガス化ガスの精製が行われることになるが、上述したように、ガス化炉とは別体に併設した流動熱媒体を加熱するための燃焼炉では、ガス化炉からのチャーだけの燃焼により炉内雰囲気が高温にして良好に低CO2濃度となり、故にガス化炉から反応したガス精製剤を供給しガス精製剤供給手段により新添加の未活性化ガス精製剤を供給することで当該反応したガス精製剤及び未活性化ガス精製剤を良好に焼成し活性化させることが可能とされ、当該燃焼炉から活性化したガス精製剤がガス化炉に好適に循環される。
【0020】
そして、活性化したガス精製剤が精製に使用されると、精製機能が低下することになるが、このように精製機能の低下した低活性ガス精製剤は、排出手段により燃焼炉におけるチャーの燃焼により生成した燃焼灰とともに排出される。
また、請求項6の流動層ガス化ガス精製装置では、前記ガス化炉は多段流動層からなり、前記加熱された流動熱媒体及び前記活性化したガス精製剤を該多段流動層のうちの上段側の流動層から順に通させ、下段側の流動層に前記固体燃料を供給することを特徴とする。
【0021】
即ち、ガス化炉が多段流動層から構成されていると、加熱された流動熱媒体と活性化したガス精製剤とが最初に供給される上段側の流動層では高温雰囲気にして活性化したガス精製剤の活性が十分に発揮され、下段側の流動層において固体燃料から生成され上段側の流動層に移動するガス化ガスが十分に精製される。
また、請求項7の流動層ガス化ガス精製装置では、前記上段側の流動層は前記下段側の流動層よりも水平断面積が大きいことを特徴とする。
【0022】
即ち、上段側の流動層の水平断面積が下段側の流動層よりも大きいと、ガス化ガスが上段側の流動層内に滞留する時間が長くなり、ガス化ガスがさらに十分に精製される。
また、請求項8の流動層ガス化ガス精製装置では、前記上段側の流動層から前記下段側の流動層に前記流動熱媒体及び前記活性化したガス精製剤を通すための粒子通路を有し、該粒子通路は前記ガス化炉の内部または外部に配置されていることを特徴とする。
【0023】
即ち、上段側の流動層から下段側の流動層の粒子通路をガス化炉の内部または外部に配置することにより、流動熱媒体及び活性化したガス精製剤の循環の安定化が図られ、ガス化ガスの精製が十分に維持される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の流動層ガス化ガス精製方法によれば、燃焼炉において、高温且つ低CO2濃度の下、反応したガス精製剤及び未活性化ガス精製剤を焼成し活性化させ、当該活性化したガス精製剤をガス化炉に好適に循環させることができ、ガス化炉において、固体燃料から生成されるガス化ガスを、精製機能を有する物質を別工程で準備することなく当該活性化したガス精製剤を用いて良好に精製することができ、ガス化ガス中のタールやH2Sを安価にして確実に除去することができる。
【0025】
また、請求項2の流動層ガス化ガス精製方法によれば、燃焼炉において、反応したガス精製剤を焼成し活性化させるようにでき、ガス化炉において、ガス化ガスを効率良く精製することができ、ガス化ガス中のタールやH2Sを安価に除去することができる。
また、請求項3の流動層ガス化ガス精製方法によれば、精製機能の低下したガス精製剤が廃棄される一方で燃焼炉に新添加の未活性化ガス精製剤を良好に補充できる。
【0026】
また、請求項4の流動層ガス化ガス精製方法によれば、天然鉱物、例えば石灰石やドロマイト等を用いて活性化したガス精製剤である金属酸化物、例えばCaO、CaO・MgO、MgOを容易にして安価に同一装置で焼成でき、当該金属酸化物によって良好にガス化ガスの精製を行うことができる。
また、請求項5の流動層ガス化ガス精製装置によれば、燃焼炉において、高温且つチャー燃焼だけによる低CO2濃度の下、供給した反応したガス精製剤(ガス化炉から)及び未活性化ガス精製剤(新添加)を焼成し活性化させ、当該活性化したガス精製剤をガス化炉に好適に循環させることができ、ガス化炉において、固体燃料から生成されるガス化ガスを、精製機能を有する物質を別工程で準備することなく当該活性化したガス精製剤を用いて良好に精製することができ、ガス化ガス中のタールやH2Sを安価にして確実に除去することができる。
【0027】
また、請求項6の流動層ガス化ガス精製装置によれば、ガス化炉を多段流動層から構成するので、活性化したガス精製剤の供給される上段側の流動層では高温雰囲気にして活性化したガス精製剤の活性を十分に発揮でき、下段側の流動層において生成され上段側の流動層に移動するガス化ガスを十分に精製でき、ガス化ガスの精製効果を高めることができる。
【0028】
また、請求項7の流動層ガス化ガス精製装置によれば、上段側の流動層の水平断面積を下段側の流動層よりも大きくすることにより、ガス化ガスの上段側の流動層内での滞留時間を長くでき、ガス化ガスの精製効果をさらに高めることができる。
また、請求項8の流動層ガス化ガス精製装置によれば、上段側の流動層から下段側の流動層の粒子通路をガス化炉の内部または外部に配置することにより、流動熱媒体及び活性化したガス精製剤の循環の安定化を図り、ガス化ガスの精製効果をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
先ず、第1実施例について説明する。
図1を参照すると、本発明の第1実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図が示されており、以下図1に基づき説明する。
本発明に係る流動層ガス化ガス精製装置は、外部循環型の流動層を有したシステムとして構成され、図1に示すように、ガス化炉10と燃焼炉20とが別体に併設され、流動熱媒体(砂等のベッド材)とともに固形成分がガス化炉10及び燃焼炉20内を循環するように構成されている。
【0030】
ガス化炉10は、流動層12に固体燃料(石炭、バイオマス等)を供給するとともにガス化剤(スチーマ、CO2等)を供給して後述の如く加熱され高温化された流動熱媒体の熱により固体燃料のガス化を行う装置であり、当該ガス化炉10の上部はサイクロン30に連通している。サイクロン30は固形成分とガス成分とを分離する遠心分離装置であり、ガス化炉10でガス化された合成ガス(ガス化ガス)を、例えば燃料としてガスタービンへ供給する一方、その合成ガス流中に含まれる固体成分を再びガス化炉10へ戻す機能を有している。
【0031】
ガス化炉10の側面中央部分は粒子分級装置(排出手段)40を介して燃焼炉20の下部に連通している。粒子分級装置40は固体燃料の灰とガス化により生成されたチャー及び低温化した流動熱媒体とを分離するものであり、固体燃料の灰、即ち燃焼炉20におけるチャーの燃焼により生成した燃焼灰を排出して廃棄するとともに、チャー及び流動熱媒体を燃焼炉20の下部に供給する機能を有している。
【0032】
燃焼炉20は、流動層22に下方から酸化剤(空気またはO2)を供給することでガス化炉10から供給されたチャーを燃焼させ且つ流動熱媒体を加熱して高温化する装置であり、当該燃焼炉20の上部はサイクロン50に連通している。サイクロン50は上記サイクロン30と同様に固形成分とガス成分とを分離する装置であり、燃焼炉20で生成された排ガスを大気中に排出する一方、高温化した流動熱媒体や排ガス中の固体成分を再びガス化炉10へ返戻する機能を有している。
【0033】
そして、本発明に係る流動層ガス化ガス精製装置では、上記燃焼炉20は、さらに天然鉱物であるドロマイト(CaCO3・MgCO3)、石灰石(CaCO3)等をガス精製剤として流動層22に供給可能に構成されており、燃焼炉20にはこれらドロマイトや石灰石を供給するガス精製剤供給管(ガス精製剤供給手段)20aが設けられている。
以下、このように構成された本発明に係る流動層ガス化ガス精製装置の作用、及び流動層ガス化ガス精製方法について説明する。
【0034】
図2を参照すると、本発明に係る流動層ガス化ガス精製装置の作用図が概略的に示されており、以下同図をも参照しながら説明する。
上述したように、燃焼炉20にはガス化炉10から供給されたチャーとともに酸化剤が供給され、チャーの燃焼が行われる。このとき、燃焼炉20内の流動層22にはさらに天然鉱物のドロマイト(CaCO3・MgCO3)や石灰石(CaCO3)等がガス精製剤として供給され、CaCO3・MgCO3やCaCO3等が流動熱媒体とともにチャーの燃焼熱によって加熱される。詳しくは、チャーの燃焼ではガス化炉10での固体燃料のガス化のような吸熱反応がないため、チャーの燃焼により燃焼炉20内の温度は900℃以上にまで良好に加熱される。また、チャーの燃焼は固体燃料のガス化と別にしているため、生成ガス中のCO2含有量が通常の燃焼とガス化共存のガス化炉より低く、故に燃焼炉20内のCO2の濃度は、一般のガス化炉では20mol%以上であるのに対し、例えば10〜15mol%程度の低い値に抑えられる。
【0035】
これより、燃焼炉20では、高温且つ低CO2の下、MgCO3やCaCO3等が下記化学反応式のように熱分解され、MgO、CaO、CaO・MgO等の活性精製剤(活性化したガス精製剤)が良好に焼成される(第二工程)。
MgCO3→MgO+CO2 、CaCO3→CaO+CO2
図3、図4を参照すると、CO2濃度と温度とを変えた場合のドロマイト及び石灰石のTG焼成における重量変化(TG重量変化)が図示されており、これらの図より、CO2濃度が低く(例えば、10mol%)、温度が高い(例えば、1151K)ほどドロマイトや石灰石の焼成が起こり易く、上記化学反応式の如くMgOやCaO等の活性精製剤が良好に焼成されることが分かる。ここに、10mol%CO2、1155Kの温度の反応条件は、まさに燃焼炉20中の雰囲気である。一方、これら図3、4からは、通常のガス化炉の22mol%CO2、1043K以下の雰囲気条件においてはドロマイトと石灰石の焼成が起こり難いことも分かる。
【0036】
このように焼成されたMgOやCaO等の活性精製剤は高温化した流動熱媒体とともにサイクロン50を経てガス化炉10に循環される。ガス化炉10内の流動層12では、高温化した流動熱媒体の熱によって固体燃料がガス化され、合成ガスの生成が行われるが、当該合成ガスが上記MgOやCaO等の活性精製剤によって精製される。詳しくは、合成ガス中にはタール、煤塵やH2Sが含まれているところ、MgOやCaOは、タールや煤塵に対してはガス化炉10に供給される際には高温であることから触媒機能を発揮し(タールの改質)、或いは付着機能を発揮して(タールと煤塵の付着)これらを浄化可能であり、H2Sに対しては酸化剤として酸化機能を発揮して酸化可能であるため、合成ガス中のタール、煤塵やH2SがこれらMgOやCaOによって十分に除去され、合成ガスが良好に精製される(第一工程)。
【0037】
なお、合成ガスとともにガス化炉10を飛び出したMgOやCaO等のガス精製剤は、サイクロン30によって固気分離されてガス化炉10に戻される。
MgOやCaOが合成ガス中のタールの付着等に使用されると、MgOやCaOは精製機能が落ちると同時に合成ガス中のCO2を吸収することが可能である。これにより、活性精製剤であるMgOやCaOはMgCO3やCaCO3に戻り、精製機能がさらに低下するが、一方で合成ガスのH2、CO濃度を改善し、燃焼カロリーを高めることができる。そして、一部のMgCO3やCaCO3(反応したガス精製剤)は再生可能であるためチャー及び燃料ガス化反応によって低温化した流動熱媒体とともに再び燃焼炉20に送られ、上述のようにして再度活性化されてMgOやCaOに再生される。
【0038】
一方、MgOやCaOがH2Sの酸化に使用されると、MgSO4やCaSO4が生成されてやはり精製機能が低下し、これらMgSO4やCaSO4、ガス化炉10内で部分反応したような活性低下したガス精製剤(低活性ガス精製剤)、即ち低活性のMgOやCaOの一部は粒子分級装置40において分離され、灰とともに排出されて廃棄される(第三工程)。
そして、このようにMgSO4やCaSO4、部分反応した低活性のMgOやCaOが廃棄されると、MgOやCaOが不足することになるが、当該不足分に相当するMgCO3やCaCO3は石灰石やドロマイトによりガス精製剤供給管20aから燃焼炉20の流動層22に補充され(新添加の未活性化ガス精製剤)、ガス精製に必要なMgOやCaOが継続して良好に生成され続ける。
【0039】
このように、本発明に係る流動層ガス化ガス精製方法及び精製装置では、外部循環型の流動層を有したシステムにおいて燃焼炉20内の温度が高温且つCO2濃度が低くなることに着目し、燃焼炉20内の流動層22に天然鉱物のドロマイト(CaCO3・MgCO3)、石灰石(CaCO3)等をガス精製剤として供給することでMgO、CaO、CaO・MgO等の活性精製剤を生成させ、或いは循環させて再生させ、これらMgOやCaO等を用いてガス化炉10内で生成される合成ガスの精製、即ち合成ガス中のタール、煤塵やH2Sの除去を行うようにしている。
【0040】
従って、MgOやCaO等の活性精製剤を別工程において準備しなくても、外部循環型の流動層を用いた簡単な構成にして、ドロマイト(CaCO3・MgCO3)、石灰石(CaCO3)等の天然鉱物を直接燃焼炉20内の流動層22に供給して容易にMgOやCaO等を生成でき、或いは循環させて再生でき、安価にして確実にタール、煤塵やH2Sを除去して合成ガスの精製を十分に行うことができる。
【0041】
次に、第2実施例について説明する。
図5を参照すると、本発明の第2実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図が示されており、以下図5に基づき説明する。なお、ここでは、上記第1実施例との共通部分については説明を省略する。
当該第2実施例では、装置は、ガス化炉10が上段部10aと下段部10bとに分割されて上段流動層14と下段流動層16の二段流動層(多段流動層)からなり、焼成されたMgOやCaO等の活性精製剤と高温化した流動熱媒体とが上段流動層14から順に粒子輸送管(粒子通路)15を通して下段流動層16に通され、下段流動層16に固形燃料が供給されるよう構成されている。なお、この実施例では、粒子輸送管15はガス化炉10の内部に設置されている。
【0042】
このようにガス化炉10の流動層を上段流動層14と下段流動層16の二段で構成すると、上段流動層14は十分に高温に維持されるので、そこではMgOやCaOはCO2を吸収し難く、MgOやCaOの触媒精製機能が十分に発揮され(温度が高い程、発揮度は高い)、下段流動層16において生成された合成ガスが上段流動層14を通過する際に十分に精製される。
【0043】
これにより、合成ガス中のタール、煤塵やH2Sをさらに確実に除去することができ、合成ガスの精製効果の向上を図ることができる。
次に、第3実施例について説明する。
図6を参照すると、本発明の第3実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図が示されており、以下図6に基づき説明する。なお、ここでは、上記第2実施例と異なる部分についてのみ説明する。
【0044】
当該第3実施例では、装置は、ガス化炉10の上段部10aの水平断面積が下段部10bよりも大きくなるように構成されている。
このように上段部10aの水平断面積が下段部10bよりも大きくなるように構成すると、下段流動層16で生成された合成ガスが上段流動層14に滞留する時間が長くなり、合成ガスが上段流動層14を通過する際においてより一層十分に精製される。
【0045】
これにより、合成ガス中のタール、煤塵やH2Sを上記第2実施例の場合よりも一層確実に除去することができ、合成ガスの精製効果のさらなる向上を図ることができる。
次に、第4実施例について説明する。
図7を参照すると、本発明の第4実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図が示されており、以下図7に基づき説明する。なお、ここでは、やはり上記第2実施例と異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
当該第4実施例では、装置は、ガス化炉10の上段部10aと下段部10bとの間に外部通路として粒子輸送管(粒子通路)15’を備えて構成されている。
このように上段部10aと下段部10bとが外部通路である粒子輸送管15’で連通されていると、MgOやCaO等の活性精製剤と流動熱媒体とが上段流動層14から粒子輸送管15’を介して下段流動層16に供給される。このとき、これら活性精製剤や流動熱媒体とともに精製した合成ガスの一部が下段部10bに送られ、精製剤等の粒子の上段から下段への供給が強化される。
【0047】
これにより、上記第2実施例の場合より多段流動層間の精製剤等の粒子の移動を安定化でき、合成ガスの精製効果のさらなる向上を図ることができる。
次に、第5実施例について説明する。
図8を参照すると、本発明の第5実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図が示されており、以下図8に基づき説明する。なお、ここでは、やはり上記第1実施例との共通部分については説明を省略する。
【0048】
図8を見ると、図1に対してガス化炉10と燃焼炉20の位置が入れ替わっており、当該第5実施例では、装置は、チャー、低温化した流動熱媒体及び合成ガスの精製で生成されたCaCO3、MgCO3、MgSO4、CaSO4等が合成ガスとともにガス化炉10からサイクロン30に送られた後に粒子分級装置40を介して燃焼炉20に送られるよう構成されている。
【0049】
即ち、当該第5実施例では、ガス化炉10をライザにしたことによって、チャー、低温化した流動熱媒体及びガス精製に作用したガス精製剤を、サイクロン30に流入させた後、粒子分級装置40を通して灰と活性低下したガス精製剤とを排出してから燃焼炉20に送給し、当該燃焼炉20で加熱された流動熱媒体及び活性精製剤をサイクロンを介さず直接ガス化炉10に循環させるようにしている。
【0050】
これにより、上記第1実施例と同様のガス精製の効果を奏するとともに、多少異なるガス化及びチャー燃焼特性の出現を期待することができる。
以上で本発明に係る実施形態の説明を終えるが、実施形態は上記に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形可能である。
例えば、上記実施形態では、第2乃至第4実施例において、ガス化炉10を上段部10aと下段部10bとし、流動層を上段流動層14と下段流動層16の二段で構成したが、これに限られるものではなく、流動層を三段以上の多段流動層で構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る流動層ガス化ガス精製装置の作用原理図である。
【図3】CO2濃度と温度とを変えた場合のドロマイトのTG重量変化を示す図である。
【図4】CO2濃度と温度とを変えた場合の石灰石のTG重量変化を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図である。
【図7】本発明の第4実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図である。
【図8】本発明の第5実施例に係る流動層ガス化ガス精製装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
10 ガス化炉
10a 上段部
10b 下段部
12 流動層
14 上段流動層
15、15’ 粒子輸送管(粒子通路)
16 下段流動層
20 燃焼炉
20a ガス精製剤供給管(ガス精製剤供給手段)
22 流動層
30 サイクロン
40 粒子分級装置(排出手段)
50 サイクロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化炉内の流動層に供給した固体燃料を前記ガス化炉内に循環される加熱された流動熱媒体の熱と流動層に吹き込むガス化剤によってガス化し、該ガス化により生成したガス化ガスをガス精製剤を用いて精製する流動層ガス化ガス精製方法であって、
前記ガス化炉内の流動層に前記加熱された流動熱媒体とともに活性化したガス精製剤を供給し、前記固体燃料から生成したガス化ガスを該活性化したガス精製剤によって精製する第一工程と、
前記ガス化炉に並設される燃焼炉内の流動層に前記ガス化炉から前記固体燃料のガス化により生成されたチャー、低温化した前記流動熱媒体、反応したガス精製剤及び新添加の未活性化ガス精製剤を供給し、該燃焼炉内の流動層で酸化剤を供給しながら前記チャーを燃焼させ、該チャーの燃焼熱で前記流動熱媒体を加熱するとともに前記反応したガス精製剤及び前記新添加の未活性化ガス精製剤を焼成により活性化し、該加熱された流動熱媒体及び該活性化したガス精製剤を前記ガス化炉に循環させる第二工程と、
前記ガス化炉から前記燃焼炉におけるチャーの燃焼により生成した燃焼灰とともにガス精製に使用されて精製機能の低下した低活性ガス精製剤を排出する第三工程と、
を備えたことを特徴とする流動層ガス化ガス精製方法。
【請求項2】
前記第二工程では、前記反応したガス精製剤のうち再生可能な部分を前記ガス化炉から前記燃焼炉内の流動層に供給し、前記チャーの燃焼熱で焼成により活性化して該反応したガス精製剤の精製機能を再生させることを特徴とする、請求項1記載の流動層ガス化ガス精製方法。
【請求項3】
前記第二工程では、新添加の未活性化ガス精製剤を前記燃焼炉内の流動層に供給し、前記チャーの燃焼熱で焼成により活性化して該新添加の未活性化ガス精製剤に精製機能を生起させることを特徴とする、請求項1または2記載の流動層ガス化ガス精製方法。
【請求項4】
前記新添加の未活性化ガス精製剤は天然鉱物であり、
前記第二工程では該天然鉱物を焼成により活性化して該鉱物中に在る金属の酸化物を生成することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の流動層ガス化ガス精製方法。
【請求項5】
ガス化炉内の流動層に供給した固体燃料を前記ガス化炉内に循環される加熱された流動熱媒体の熱及び流動層に吹き込むガス化剤によってガス化し、該ガス化により生成したガス化ガスをガス精製剤を用いて精製する流動層ガス化ガス精製装置であって、
前記ガス化炉に併設され、前記固体燃料のガス化により生成され前記ガス化炉から供給されるチャーを酸化剤を供給しながら流動層で燃焼させ、該チャーの燃焼熱で前記ガス化炉から該チャーとともに供給される低温化した前記流動熱媒体を該流動層で加熱するとともに前記ガス化炉から供給される反応したガス精製剤及び新添加の未活性化ガス精製剤を該流動層で焼成により活性化し、該加熱された流動熱媒体及び該活性化したガス精製剤を前記ガス化炉に循環させる燃焼炉と、
前記燃焼炉内の流動層に前記新添加の未活性化ガス精製剤を供給するガス精製剤供給手段と、
前記ガス化炉から前記燃焼炉におけるチャーの燃焼により生成した燃焼灰とともにガス精製に使用されて精製機能の低下した低活性ガス精製剤を排出する排出手段と、
を備えたことを特徴とする流動層ガス化ガス精製装置。
【請求項6】
前記ガス化炉は多段流動層からなり、
前記加熱された流動熱媒体及び前記活性化したガス精製剤を該多段流動層のうちの上段側の流動層から順に通させ、下段側の流動層に前記固体燃料を供給することを特徴とする、請求項5記載の流動層ガス化ガス精製装置。
【請求項7】
前記上段側の流動層は前記下段側の流動層よりも水平断面積が大きいことを特徴とする、請求項6記載の流動層ガス化ガス精製装置。
【請求項8】
前記上段側の流動層から前記下段側の流動層に前記流動熱媒体及び前記活性化したガス精製剤を通すための粒子通路を有し、該粒子通路は前記ガス化炉の内部または外部に配置されていることを特徴とする、請求項6または7記載の流動層ガス化ガス精製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−213817(P2006−213817A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27864(P2005−27864)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】