説明

流動層装置

【課題】気体脈動波を使用する流動層装置において、振動を抑制すると共にエネルギー効率を向上させること。
【解決手段】流動層装置は、流動層容器1と、複数の給気室2(2b,2c)と、給気経路3と、給気経路3に介装された1個の脈動波発生装置4と、ブロアー6とを備える。給気経路3は、脈動波発生装置4より上流側の上流側給気経路3aと、脈動波発生装置4と給気室2bとを接続する第1給気経路3bと、脈動波発生装置4と給気室2cとを接続する第2給気経路3cとで構成される。脈動波発生装置4は、上流側給気経路3aが、第1給気経路3bと第2給気経路3cのうち一方にのみ連通する状態と、他方にのみ連通する状態とに、両方に連通する状態を経由して、漸次に切り換わるように作動する。これによって、第1給気経路3bに第1気体脈動波を発生すると共に、第2給気経路3cに第2気体脈動波を発生する。ブロアー6と脈動波発生装置4の作動により、各給気室2b,2cを介して第1及び第2気体脈動波が流動層容器1に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、農薬、食品等の細粒、顆粒等を製造する際に用いられる流動層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流動層装置は、一般に、流動層容器の底部から導入した熱風等の流動化気体によって、流動層容器内で粉粒体粒子を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、スプレーノズルからスプレー液(膜剤液、結合剤液等)を噴霧して造粒又はコーティング処理を行うものである。
【0003】
また、上記の流動層装置において、性状が均一で且つ比容積が小さい造粒物を容易且つ効率よく製造するために、流動層容器の底部から導入する流動化気体として空気脈動波を用いた造粒方法が提案されている(下記の特許文献1〜3)。例えば特許文献3では、流動層装置では、底部の通気部が中央領域と周辺領域の2つに区画され、各領域に対して流動化気体を給気する給気経路の一方または双方に、流動化気体を気体脈動波にする脈動波発生手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−329136号公報
【特許文献2】特開平7−19728号公報
【特許文献3】特開2008−229603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、流動層装置に空気脈動波を使用した場合、脈動波に起因して流動層装置に振動が発生する。また、空気脈動波を発生する機構において、脈動波を発生する際に、上流の配管からの気流の一部を排出するため、流動層装置のエネルギー効率が良好でない。
【0006】
また、従来の装置構成で流動層装置に空気脈動波を使用した場合、広い面積の通気部(いわゆる目皿板、通気板)に対して間欠的に速い風速の空気流を流すため、構造的に通気風速の偏流(偏り)を起こしやすいという問題がある。また、同じ理由で粉体層(流動層)も吹き抜けを起こしやすいという問題がある。この観点からも、流動層装置のエネルギー効率が良好でない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、気体脈動波を使用する流動層装置において、振動を抑制すると共にエネルギー効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の流動層装置は、底部に通気部を有する流動層容器と、該流動層容器の下部に設けられた複数の給気室と、これらの給気室に接続された給気経路と、該給気経路に介装された1個の脈動波発生手段と、前記流動層容器に接続された気体吸引手段とを備え、前記給気経路は、前記脈動波発生手段より上流側の上流側給気経路と、前記脈動波発生手段と給気室の一部とを接続する第1給気経路と、前記脈動波発生手段と給気室の残りとを接続する第2給気経路とで構成され、前記脈動波発生手段は、前記上流側給気経路が、前記第1給気経路と前記第2給気経路のうちの一方にのみ連通する状態と、他方にのみ連通する状態とに、切り換わるように作動することによって、前記第1給気経路に第1気体脈動波を発生すると共に、前記第2給気経路に第2気体脈動波を発生し、前記気体吸引手段と前記脈動波発生手段の作動により、各給気室を介して前記第1及び第2気体脈動波が前記流動層容器に供給されることを特徴とする。
【0009】
この構成であれば、第1気体脈動波と第2気体脈動波は、上流側給気経路からの気流を脈動波発生装置により分配することによって発生したものである。従って、第1気体脈動波と第2気体脈動波は、流動層容器内で合流すると、略一定の風速の気流となる。従って、流動層容器以降の下流配管での脈動波に起因する振動を抑制することができる。また、これによって、流動層容器以降の下流配管での脈動波による負荷が低減することになるので、耐久性向上につながる。
【0010】
また、上流側給気経路から脈動波発生装置に入った気流の全てを脈動波として流動層容器に供給する。従って、上流側給気経路の内部を流れる気流のエネルギーのほとんどを、粉粒体原料を流動層容器内で浮遊流動させることに利用することができる。すなわち、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0011】
さらに、脈動派を供給する通気部の面積を小さくすることが出来るため、通気風速の偏流を抑制し、また流動層の吹き抜けを抑制することで、乾燥能力を向上させ、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0012】
上記構成において、前記流動層容器内で前記第1気体脈動波と前記第2気体脈動波とを相互に仕切る仕切り板を、前記流動層容器の底部側に設けたものとすることができる。
【0013】
流動層容器内にこのような仕切り板が設けられていない場合、各給気室から流動層容器内に導入された脈動波は、流動層容器内で相互に接触しやすい。給気室の一方から導入される脈動波と、給気室の他方から導入される脈動波は、元々上流側給気経路内の気流が分配されることによって発生しているため、接触すると相互に打ち消しあう。このため、各給気室から流動層容器内に導入された脈動波が、粉粒体原料を浮遊流動することに十分に利用されるとはいえない。
【0014】
これに対して、流動層容器内に上記のような仕切り板が設けられていれば、各給気室から流動層容器内に導入された脈動波は、流動層容器内で、接触し難くなる。従って、各給気室から流動層容器内に導入された脈動波が、粉粒体原料を浮遊流動することに有効に利用される。
【0015】
また、上記何れかの構成において、前記第1給気経路に接続する給気室と、前記第2給気経路に接続する給気室とを相互に連通する連通路を設けたものとすることができる。
【0016】
連通路が設けられていない場合には、脈動波発生手段によって第1給気経路と第2給気経路の一方が、上流側給気経路と非連通となる時に、この一方の給気経路に接続した給気室では、気流が停止する。このため、気流が停止した給気室では、通気部を介して、微小な粉粒体粒子が浸入する可能性がある。
【0017】
これに対して、連通路が設けられていれば、一方の給気室で気流が停止する時でも、他方の給気室の気流が連通路を介して、一方の給気室に導入される。この導入された気流により、微小な粉粒体粒子が、一方の給気室に浸入することを抑制できる。
【0018】
また、上記何れかの構成において、少なくとも1つの給気室から前記流動層容器に供給される気体脈動波が、前記通気部に垂直な方向に対して斜め方向に噴出するように構成することができる。
【0019】
気体脈動波が通気部に垂直な方向に対して斜め方向に噴出することにより、粉粒体原料がこの噴出方向へ移動することや分散することが促進される。従って、気体脈動波によって効率的に粉粒体原料を浮遊流動させることが可能である。すなわち、給気室から流動層容器内に導入された気体脈動波が、粉粒体原料を浮遊流動させることに有効に利用されることになり、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0020】
更に、本構成において、相互に隣接する給気室から前記流動層容器に供給されるそれぞれの気体脈動波が、前記通気部に垂直な方向に対して斜め方向に噴出し、かつ、噴出方向が相互に異なるように構成することができる。
【0021】
この構成であれば、粉粒体原料が様々な方向へ移動することや分散することが期待され得る。従って、気体脈動波によって更に効率的に粉粒体原料を浮遊流動させ、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることが期待され得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、気体脈動波を使用する流動層装置において、振動を抑制すると共にエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係る流動層装置の一構成例を模式的に示す図である。
【図2】脈動波発生装置の周辺部を示す図である。
【図3】(a)が第2の実施形態に係る流動層装置の一構成例の要部を模式的に示す図、(b)が第3の実施形態に係る流動層装置の一構成例の要部を模式的に示す図である。
【図4】流動層装置における給気室の構成例の横断面図である。
【図5】流動層装置における給気室の構成例の横断面図である。
【図6】流動層装置の構成の変形例を模式的に示す図である。
【図7】脈動波の流動層容器への噴出方向を説明するための図で、(a)が通気部周辺の縦断面図、(b)が通気部の平面図である。
【図8】脈動波の流動層容器への噴出方向を説明するための通気部の平面図である。
【図9】脈動波の流動層容器への噴出方向を説明するための通気部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0025】
図1は、第1の実施形態に係る流動層装置の一構成例を模式的に示している。
【0026】
この実施形態の流動層装置は、底部に通気部1aを有する流動層容器1と、流動層容器1の下部に設けられた2個の給気室2と、2個の給気室2に接続された給気経路3と、給気経路3に介装された脈動波発生手段としての1個の脈動波発生装置4と、流動層容器1の上部に接続された排気経路5と、排気経路5に接続された気体吸引手段としてのブロアー6とを備えている。
【0027】
流動層容器1の底部の通気部1aは、例えばパンチングメタル等の多孔板とメッシュからなる気体分散板で構成されており、本実施形態では円板形状である。また、流動層容器1の上部空間にフィルターシステム8が設置されると共に、フィルターシステム8より下部の空間にスプレー液、例えば結合剤液を噴霧するスプレーノズル9が設置されている。
【0028】
2個の給気室2は、区画板2aを介して相互に隣接し、それぞれを第1給気室2bと第2給気室2cと以下称する。
【0029】
給気経路3は、脈動波発生装置4より上流側の上流側給気経路3aと、下流側の第2と第2給気経路3b,3cとで構成される。上流側給気経路3aには、気体、例えば空気の温度を調整する空調機7と、空気の速度を測定する風速計10、給気ダンパ11が介装されている。また、上流側給気経路3aの一端は、脈動波発生装置4の流入口4a(図2参照)に接続され、他端は図示されていないフィルターを介して大気に通じている。
【0030】
第1給気経路3bの一端は、脈動波発生装置4の第1吐出口4b(図2参照)に接続され、他端は第1給気室2bに接続されている。第2給気経路3cの一端は、脈動波発生装置4の第2吐出口4c(図2参照)に接続され、他端は第2給気室2cに接続されている。
【0031】
排気経路5は、流動層容器1のフィルターシステム8より上部の空間(排気室)に接続され、排気ダンパ12と集塵機13を介してブロアー6に接続されている。
【0032】
図2に拡大して示すように、脈動波発生装置4は、周壁に流入口4a、第1吐出口4b、及び第2吐出口4cを有する断面円形のケーシング4dと、ケーシング4dの周壁内面に摺接して回転するロータリー弁4eとを備えている。上述のように、流入口4aに上流側給気経路3aが接続され、第1吐出口4bに第1給気経路3bが接続され、第2吐出口4cに第2給気経路3cが接続される。ロータリー弁4eは、図示されていない駆動手段により回転駆動される。
【0033】
ロータリー弁4eの回転により、上流側給気経路3aが第1給気経路3bにのみ連通した状態{図2(a)の状態}と、上流側給気経路3aが第2給気経路3cにのみ連通した状態{図2(b)の状態}とに、上流側給気経路3aが第1及び第2給気経路3b,3cに連通した状態に連通する状態を経由して、漸次に連続的に切り換わる。図2(a)の状態から図2(b)の状態に漸次に変化する間、上流側給気経路3aからの気体の流れは、第1給気経路3bから第2給気経路3cに漸次に分配されてゆく。すなわち、図2(a)の状態では、上流側給気経路3aからの気体の流れの全量が第1給気経路3bに流れるが、この状態から、ロータリー弁4eの回転により、上流側給気経路3aからの気体の流れの一部が漸次に増量しながら第2給気経路3cに分配されてゆき、ロータリー弁4eが図2(b)の位置に達した状態では、上流側給気経路3aからの気体の流れの全量が第2給気経路3cに流れる。また、図2(b)の状態から図2(a)の状態に漸次に変化する間、上流側給気経路3aからの気体の流れは、第2給気経路3cから第1給気経路3bに漸次に分配されてゆく。すなわち、図2(b)の状態では、上流側給気経路3aからの気体の流れの全量が第2給気経路3cに流れるが、この状態から、ロータリー弁4eの回転により、上流側給気経路3aからの気体の流れの一部が漸次に増量しながら第1給気経路3bに分配されてゆき、ロータリー弁4eが図2(a)の位置に達した状態では、上流側給気経路3aからの気体の流れの全量が第1給気経路3bに流れる。
【0034】
上記のような脈動波発生装置4の作動により、上流側給気経路3aからの気体の流れは、周期的な風量変化を伴った第1気体脈動波となって第1給気経路3bに流れる。すなわち、脈動波発生装置4を介して第1給気経路3bに流れる気体の風速は、図2(a)の状態で最も大きく(最大通過風速)、図2(b)の状態で最も小さくなり(最小通過風速)、この最大通過流風速と最小通過風速はロータリー弁4eの回転に応じて所定周期で連続的に現れる。
【0035】
また、第1給気経路3bに流れる気体の流量は上記の最大通過風速と最小通過風速との間で漸次に変化し、この第1気体脈動波の風速変化に応じて、上流側給気経路3aからの気体の流れの一部又は全部が脈動波発生装置4を介して第2給気経路3cに流れる。換言すれば、脈動波発生装置4の作動により、上流側給気経路3aからの気体の流れは、周期的な風量変化を伴った第2気体脈動波となって第2給気経路3cに流れる。すなわち、脈動波発生装置4を介して第2給気経路3cに流れる気体の風速は、図2(b)の状態で最も大きく(最大通過風速)、図2(a)の状態で最も小さくなり(最小通過風速)、この最大通過流風速と最小通過風速はロータリー弁4eの回転に応じて所定周期で連続的に現れる。
【0036】
以上の構成において、ブロアー6及び脈動波発生装置4が作動すると、ブロアー6による気体吸引力が、排気経路5、流動層容器1の内部、第1給気室2b、第1給気経路3b及び脈動波発生装置4という経路を介して、また、排気経路5、流動層容器1の内部、第2給気室2c、第2給気経路3c及び脈動波発生装置4という経路を介して、上流側給気経路3aに作用する。そして、上記の脈動波発生装置4の機能により、上流側給気経路3a、脈動波発生装置4、及び第1給気経路3bと第2給気経路3cを介して、第1給気室2bと第2給気室2cのそれぞれに、第1気体脈動波と第2気体脈動波が供給される。この第1及び第2給気室2b,2cに供給される第1及び第2気体脈動波のそれぞれは、空調機7によって例えば25〜200°Cの温度に調整され、給気ダンパ11と排気ダンパ12によって0.25〜1.5m/secの平均通過風速に調整され、脈動波発生装置4によって0.5〜5Hzの周波数に調整される。
【0037】
第1及び第2給気室2b,2cに供給された第1及び第2気体脈動波は、通気部1aを介して流動層容器1の内部に噴出し、これらの気体脈動波の噴出によって粉粒体原料が流動層容器1内で浮遊流動して流動層が形成される。そして、この粉粒体原料の流動層に対してスプレーノズル9から結合剤液が噴霧される。結合剤液の噴霧を受けた粉粒体原料は粒子同士の結合によって粒子径が成長すると共に、第1及び第2気体脈動波による乾燥を受けて所定の粒子径をもった造粒製品になる。
【0038】
第1給気経路3bと第2給気経路3cのそれぞれに導入される第1気体脈動波と第2気体脈動波は、上流側給気経路3aからの気流を脈動波発生装置4で分配することによって発生したものである。従って、流動層容器1内に導入される第1気体脈動波と第2気体脈動波は、流動層容器1内で合流すると、略一定の風速の気流となる。従って、流動層容器1以降の下流配管での脈動波に起因する振動を抑制することができる。また、これによって、流動層容器1以降の下流配管での脈動波による負荷が低減することになるので、耐久性向上につながる。
【0039】
また、第1給気経路3bと第2給気経路3cのうち、一方の内部を流れる気体脈動波の風速変化に応じて、上流側給気経路3aからの気体の流れの一部又は全部が脈動波発生装置4を介して、他方の内部を脈動波として流れる。これによって、常に、流動層容器1内に気体脈動波が導入される。従って、ブロアー6の気体吸引力に起因して流動層容器1の内部に過大な負圧が作用する現象を防止することができる。これによっても、流動層容器1に生じる振動を抑制することができる。また、流動層容器1の負荷を低減することができ、耐久性を向上させることができる。
【0040】
また、上流側給気経路3aから脈動波発生装置4に入った気流の全てを脈動波として利用し、流動層容器1に導入している。従って、上流側給気経路3a内を流れる気流のエネルギーのほとんどを、粉粒体原料を流動層容器1内で浮遊流動させることに利用することができる。すなわち、流動層全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0041】
図3(a)は、第2の実施形態に係る流動層装置の一構成例の要部を模式的に示す。この実施形態では、第1の実施形態と異なるのは、流動層容器1の底部の通気部1aより上側に仕切り板1bが配設されている点である。
【0042】
この仕切り板1bは、第1給気室2bと第2給気室2cの間の区画板2aと同平面状となるように配設されている。換言すれば、仕切り板1bによって区画された流動層容器1内における空間のそれぞれの下部は、第1給気室2bと第2給気室2cのそれぞれの上部に合致する。
【0043】
第1の実施形態では、流動層容器1内はこのように区画されていない。このため、第1給気室2bと第2給気室2cのそれぞれから通気部1aを介して流動層容器1内に導入された第1脈動波と第2脈動波は、流動層容器1内で相互に接触し易い。第1給気室2bから導入される第1脈動波と、第2給気室2cから導入される第2脈動波は、元々上流側給気経路3a内の気流が分配されることによって発生しているため、接触すると打ち消しあう。このため、第1給気室2bと第2給気室2cから流動層容器1内に導入された脈動波が、粉粒体原料を浮遊流動することに十分に利用されるとはいえない。
【0044】
これに対して、この第2実施形態では、流動層容器1内には仕切り板1bが設けられているので、第1給気室2bと第2給気室2cのそれぞれから通気部1aを介して流動層容器1内に導入された第1脈動波と第2脈動波は、仕切り板1bによって仕切られる。すなわち、第1脈動波と第2脈動波は、流動層容器1内で、相互に接触し難い。従って、流動層容器1内に導入された第1脈動波と第2脈動波が、粉粒体原料を浮遊流動することに有効に利用される。その他の構成は、第1実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図3(b)は、第3の実施形態に係る流動層装置の一構成例の要部を模式的に示す。この実施形態が、第1の実施形態と異なるのは、第1給気室2bと第2給気室2cの間の区画板2aに、第1給気室2bと第2給気室2cとを相互に連通する連通路としての連通孔2dが設けられている点である。
【0046】
第1の実施形態のように、第1給気室2bと第2給気室2cとを相互に連通する連通路が設けられていない場合には、脈動波発生装置4により、第1及び第2給気経路3b,3cのうちの一方が第1の給気経路3cと非連通となる時に、この一方の給気経路に接続した給気室では、気流が停止する。このため、気流が停止した給気室では、通気部1aを介して、微小な粉粒体粒子が浸入する可能性がある。
【0047】
これに対して、この第3の実施形態では、区画板2aに、連通孔2dが設けられているため、一方の給気室で気流が停止する時でも、他方の給気室の気流が連通孔2dを介して、一方の給気室に導入される。この導入された気流により、微小な粉粒体粒子が、気流が停止した側の給気室に浸入することが抑制される。その他の構成は、第1の実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
上記第1〜第3の実施形態では、給気室2は、1個の第1給気室2bと1個の第2給気室2cの2個として説明したが、本発明は、これに限定されない。例えばn個の第1給気室2bとn個の第2給気室2cとの2n(偶数)個の給気室2を設けてもよい。ここで、nは整数であり、例えば1〜4で、1〜2が好適である。
【0049】
n個の第1給気室2bとn個の第2給気室2cは、例えば図4(a)〜(c)に示すように、横断面で放射線状になるように、区画板2aを複数配設することによって形成してもよい(同図(a)ではn=2、同図(b)ではn=3、同図(c)ではn=4)。このように区画板2aが放射線状に配置されている場合、空気脈動波の効果を周方向で均等にするために、第1給気室2bと第2給気室2cの横断面積を同一とし、第1給気室2bと第2給気室2cとを周方向に交互になるように形成することが好ましい。しかし、これに限定されず、第1給気室2bと第2給気室2cの横断面積を異ならせてもよい。また、第1給気室2bと第2給気室2cとを周方向に交互にしなくともよい。
【0050】
また、n個の第1給気室2bとn個の第2給気室2cは、例えば図5(a)〜(c)に示すように、横断面で同心円状になるように、区画板2aを複数配設することによって形成してもよい(同図(a)ではn=1、同図(b)ではn=2、同図(c)ではn=3)。このように区画板2aが同心円状に配置されている場合、空気脈動波の効果を向上させるために、第1給気室2bと第2給気室2cを半径方向に交互になるように形成することが好ましい。勿論、これに限定されず、第1給気室2bと第2給気室2cとを半径方向に交互にしなくともよい。
【0051】
n個の第1給気室2bとn個の第2給気室2cを設ける場合の配管は、図6に模式的に示すように、第1給気経路3bと第2給気経路3cのそれぞれをn個(図示例ではn=3)に分岐するとよい。
【0052】
ここでは、n個の第1給気室2bとn個の第2給気室2cとの2n(偶数)個の給気室2を設ける場合を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、第1給気室2bと第2給気室2cとは、合わせて奇数個であってもよい。すなわち、本発明では、第1給気室2bと第2給気室2cとが、合わせて複数個であればよい。
【0053】
また、第1及び第2給気室2b,2cから流動層容器1に供給される第1及び第2気体脈動波が、通気部1aを介して流動層容器1の内部に噴出する際に、通気部1aの板面に垂直な方向に噴出するように構成することができるが、本発明はこれに限定されない。例えば、少なくとも1つの給気室2b,2cから流動層容器1に供給される第1又は第2気体脈動波が、通気部1aの板面に垂直な方向に対して斜め方向に噴出するように構成してもよい。通常、通気部1aは水平となっており、その場合には、第1又は第2気体脈動波が、鉛直方向に対して斜め方向に噴出することになる。
【0054】
例えば図7に示すように、第1及び第2給気室2b,2cがそれぞれ1つで、区画板2aが通気部1aの直径に沿って配設されている場合について説明する。図7(a)の図示例では、通気部1aに形成された複数の穴1cのそれぞれは、流動層容器1側に移行するに従って、区画板2aの厚さ方向の中心を通る平面に漸次接近するように延在し、この平面を対称面として面対称形状となっている。これによって、給気室2b,2cから流動層容器1に供給される第1及び第2気体脈動波が、通気部1aに垂直な方向に対して斜め方向に噴出する。具体的には、図7(b)に矢印で示すように、第1給気室2bから流動層容器1に供給される第1気体脈動波は、平面視で、区画板2aに向かって噴出する。一方、第2給気室2cから流動層容器1に供給される第2気体脈動波も、平面視で、区画板2aに向かって噴出する。つまり、第1気体脈動波と第2気体脈動波は、平面視で、相互に逆向きに噴出する。
【0055】
この場合には、第1及び第2給気室2b,2cのそれぞれに対応する左右の領域の粉粒体原料が、相互に場所を入れ替わりつつ浮遊流動する。従って、第1及び第2気体脈動波が粉粒体原料を浮遊流動させることに有効に利用されることになり、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0056】
また、図8(a)に矢印で示すように、第1気体脈動波と第2気体脈動波が、平面視で、区画板2aに沿って、相互に逆向きに噴出するように構成してもよい。この場合には、第1気体脈動波と第2気体脈動波は、それぞれ、流動層容器1の周壁に衝突し、その後、周壁に沿って移動する。これによって、第1及び第2給気室2b,2cのそれぞれに対応する左右の領域の粉粒体原料が、旋回流を形成するように移動しながら相互に場所を入れ替わりつつ浮遊流動する。従って、上述と同様に、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0057】
第1及び第2給気室2b,2cが図4(a)に示す構成の場合には、図8(b)に矢印で示すように、第1気体脈動波と第2気体脈動波が、平面視で、通気部1aにおける周方向に沿って噴出するように構成することができる。この構成であれば、第1及び第2給気室2b,2cのそれぞれに対応する各領域の粉粒体原料が、旋回流を形成するように移動しながら相互に場所を入れ替わりつつ浮遊流動する。従って、上述と同様に、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。図4(b),(c)の構成においても、同様に構成すれば、同様の効果が享受できる。
【0058】
第1及び第2給気室2b,2cが図5(a)に示す構成の場合には、図9(a)に矢印で示すように、第2給気室2cから供給される第2気体脈動波が、平面視で、通気部1aにおける径方向内側に向かって噴出するように構成することができる。一方で、第1給気室2bから供給される第1気体脈動波は、この図示例では、通気部1aに垂直な方向に噴出するように構成している。これにより、流動層容器1の通気部1a周辺では径方向の外側から内側へ粉粒体原料が移動し、これに伴い、流動層容器1の通気部1aから離隔した部分では径方向の内側から外側へ粉粒体原料が移動し、全体として粉粒体原料が循環するように浮遊流動する。従って、上述と同様に、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0059】
第1及び第2給気室2b,2cが図5(b)に示す構成の場合には、図9(b)に矢印で示すように、第1気体脈動波と第2気体脈動波が噴出するように構成することができる。すなわち、第2給気室2cから供給される第2気体脈動波が、平面視で、通気部1aにおける径方向内側に向かって噴出する。通気部1aの中央側の第1給気室2bから供給される第1気体脈動波は、通気部1aに垂直な方向に噴出する。一方、2つの第2給気室2cの間に形成された第1給気室2bから供給される第1気体脈動波は、平面視で、通気部1aにおける径方向外側に向かって噴出する。これにより、流動層容器1の径方向外側と径方向内側の粉粒体原料が相互に場所を入れ替わりつつ浮遊流動する。従って、上述と同様に、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。図5(c)の構成においても、同様に構成すれば、同様の効果が享受できる。
【0060】
また、第1及び第2給気室2b,2cが図5(b)に示す構成の場合には、図9(c)に矢印で示すように、第1気体脈動波と第2気体脈動波が噴出するように構成することができる。図9(b)に示した構成と異なるのは、2つの第2給気室2cの間に形成された第1給気室2bから供給される第1気体脈動波が、通気部1aにおける径方向内側に向かって噴出する点である。この場合には、図9(a)に示した構成の場合と同様に、粉粒体原料が循環するように浮遊流動する。従って、上述と同様に、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。図5(c)の構成においても、同様に構成すれば、同様の効果が享受できる。
【0061】
なお、図7〜9に基づいて説明した各例において、第1及び第2給気室2b,2cの数を増加させれば、粉粒体原料の移動に伴う分散が促進される。従って、第1及び第2気体脈動波が粉粒体原料を浮遊流動させることに有効に利用されることになり、流動層装置全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【0062】
なお、本発明は以上の説明に限定されることなく、その技術的思想の範囲内であれば、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 流動層容器
1a 通気部
1b 仕切り板
2 給気室
2a 区画板
2b 第1給気室
2c 第2給気室
2d 連通孔
3 給気経路
3a 上流側給気経路
3b 第1給気経路
3c 第2給気経路
4 脈動波発生装置
5 排気経路
6 ブロアー(気体吸引手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に通気部を有する流動層容器と、該流動層容器の下部に設けられた複数の給気室と、これらの給気室に接続された給気経路と、該給気経路に介装された1個の脈動波発生手段と、前記流動層容器に接続された気体吸引手段とを備え、
前記給気経路は、前記脈動波発生手段より上流側の上流側給気経路と、前記脈動波発生手段と給気室の一部とを接続する第1給気経路と、前記脈動波発生手段と給気室の残りとを接続する第2給気経路とで構成され、
前記脈動波発生手段は、前記上流側給気経路が、前記第1給気経路と前記第2給気経路のうちの一方にのみ連通する状態と、他方にのみ連通する状態とに、切り換わるように作動することによって、前記第1給気経路に第1気体脈動波を発生すると共に、前記第2給気経路に第2気体脈動波を発生し、
前記気体吸引手段と前記脈動波発生手段の作動により、各給気室を介して前記第1及び第2気体脈動波が前記流動層容器に供給されることを特徴とする流動層装置。
【請求項2】
前記流動層容器内で前記第1気体脈動波と前記第2気体脈動波とを相互に仕切る仕切り板を、前記流動層容器の底部側に設けた請求項1に記載の流動層装置。
【請求項3】
前記第1給気経路に接続する給気室と、前記第2給気経路に接続する給気室とを相互に連通する連通路を設けた請求項1又は2に記載の流動層装置。
【請求項4】
少なくとも1つの給気室から前記流動層容器に供給される気体脈動波が、前記通気部に垂直な方向に対して斜め方向に噴出するように構成した請求項1〜3の何れか1項に記載の流動層装置。
【請求項5】
相互に隣接する給気室から前記流動層容器に供給されるそれぞれの気体脈動波が、前記通気部に垂直な方向に対して斜め方向に噴出し、かつ、噴出方向が相互に異なるように構成した請求項4に記載の流動層装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−81464(P2012−81464A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200711(P2011−200711)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】