説明

流動床炉及びそれを備える流動床ボイラ

【課題】 流動化用ガスの気泡を小さくすることによって、流動媒体が伝熱管の外面に衝突するときの衝突速度を小さくして、流動媒体が伝熱管に衝突することにより生じる伝熱管の損耗減肉を低減すること。
【解決手段】 加熱された流動媒体12が炉本体13内に収容され、この流動媒体12を流動化用ガス14によって流動させて、流動媒体12中に配置された伝熱管15を加熱する流動床炉11において、ガス流入口20を形成する分散板17を備え、この分散板17上に第2粒状物22で構成された固定層19が配置され、この固定層19上に第1粒状物25で構成された流動媒体12が配置され、第2粒状物22どうしの隙間で形成されたガス流出口24の数が、ガス流入口20の数よりも多く形成されている構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばごみ、固形燃料、バイオマス燃料等の可燃物を含む燃料を流動媒体中で燃焼させて、その燃焼によって発生する熱を伝熱管を介して回収することができる流動床炉及びそれを備える流動床ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
流動床炉の熱回収装置の一例として、図には示さないが、燃焼セルと、過熱セルとを備え、各セルには流動媒体が収容され、そして、この燃焼セルと過熱セルとが、層内仕切部材によって仕切られているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この燃焼セルでは、流動媒体が流動化用ガスによって流動され、燃料の燃焼によって流動媒体が加熱される。この加熱された流動媒体は、過熱セルに移送され、この過熱セル内に配置されている伝熱管内の蒸気を過熱することができる。そして、熱が伝熱管によって回収された流動媒体は、過熱セルの下部から排出されて燃焼セルに戻される。
【0004】
このように、過熱セル内では、流動化用ガスが供給されないので、流動媒体が伝熱管に衝突する衝突速度が小さく、その結果、流動媒体が伝熱管に衝突することによって生じる伝熱管の磨耗を低減することができる。
【0005】
そして、流動層炉を用いた表面処理装置の一例として、図には示さないが、ガス分散板の上方に配置された流動層粉末を加熱すると共に、流動化用ガスによって流動させて、その流動層粉末内に配置された被処理材の表面に表面処理層を形成することができるものがある(例えば、特許文献2参照。)。そして、流動層とガス分散板との間に、粗粒層が配置されている。
【0006】
この粗粒層は、流動化用ガスによって流動しない程度の重量の粉末によって構成されている。この粗粒層によると、分散板を通り抜けてくる流動化用ガスを、流動層の全体に行き渡らすことができ、流動層粉末の局部的な停滞による固化を防止することができる。これによって、被処理材の表面に表面処理層を効率的に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2902625号公報
【特許文献2】特開平6−73525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記流動床炉の熱回収装置では、過熱セル内に流動化用ガスが供給されていないので、流動媒体の流動性が低く、過熱セル内における流動媒体と伝熱管との間での伝熱係数が小さくなる。そのために、伝熱管による収熱量を、流動化用ガスによって流動媒体を良好に流動させる場合と同程度に維持するためには、伝熱管の表面積を大きくする必要があり、その分のコストが嵩む。
【0009】
そして、上記流動層炉を用いた表面処理装置では、粗粒層によって、流動層粉末の局部的な停滞を防止して、被処理材の表面に表面処理層を効率的に形成することができるが、流動媒体が伝熱管の外面に衝突するときの衝突速度を小さくすることができず、従って、流動媒体が伝熱管に衝突することにより生じる伝熱管の損耗減肉を低減することができない。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、流動化用ガスの気泡を小さくすることによって、流動媒体が伝熱管の外面に衝突するときの衝突速度を小さくして、流動媒体が伝熱管に衝突することにより生じる伝熱管の損耗減肉を低減することができる流動床炉及びそれを備える流動床ボイラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る流動床炉は、加熱された流動媒体が炉本体内に収容され、この流動媒体を流動化用ガスによって流動させて、前記流動媒体中に配置された伝熱管を加熱する流動床炉において、前記流動媒体を保持するように設けられ、流動化用ガスをガス流入口から流入させて、前記ガス流入口の数よりも多数のガス流出口から流出できるようにして、流動化用ガスを前記流動媒体中に供給することができる気泡小径化部を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係る流動床炉によると、加熱された流動媒体中に流動化用ガスを供給することによって流動媒体を流動させることができ、この流動する加熱された流動媒体が伝熱管と接触することによって、流動媒体が有する熱を、伝熱管を介して回収することができる。そして、流動化用ガスは、気泡小径化部のガス流入口から流入してガス流出口から流出し、そして、流動媒体中に供給されて流動媒体を流動させることができる。そして、ガス流出口の数が、ガス流入口の数よりも多く形成されていることによって、流動化用ガスを分散させてそれぞれのガス流出口から流出させることができ、これによって、各ガス流出口から流出する流動化用ガスの気泡を小さくすることができる。このように、流動化用ガスの気泡を小さくすると、その気泡が伝熱管の外面と接触してその伝熱管の外面から離れる際の、流動媒体が伝熱管の外面に衝突する衝突速度を小さくすることができる。
【0013】
この発明に係る流動床炉において、前記気泡小径化部は、前記ガス流入口を形成する分散板と、この分散板上に載置され、前記ガス流入口の数よりも多数のガス流出口を形成する固定層とを有するものとすることができる。
【0014】
このようにすると、流動化用ガスは、分散板により形成されたガス流入口から流入して固定層を通り、この固定層により形成されているガス流出口から流出して流動媒体内に供給される。この固定層は、分散板により形成されたガス流入口から流入する流動化用ガスを、気泡を小さくして流動媒体内に供給することができる。
【0015】
この発明に係る流動床炉において、前記流動媒体は、第1粒状物で形成され、前記第1粒状物は、流動化用ガスの流速が第1流動化開始速度のときに流動を開始し、前記固定層は、第2粒状物で形成され、前記第2粒状物は、流動化用ガスの流速が第2流動化開始速度のときに流動を開始し、前記第2流動化開始速度が、前記第1流動化開始速度よりも大きくなるように前記第1及び第2粒状物が形成されているものとすることができる。
【0016】
このようにすると、炉本体内の流動化用ガスの流速(例えば空塔速度)を第1流動化開始速度以上であって、第2流動化開始速度未満に設定することによって、流動媒体を構成する第1粒状物を流動させることができ、加熱されて温度の高い第1粒状物を効率的に伝熱管に接触させることができる。このとき、固定層を構成する第2粒状物は、流動しないので、小さい気泡を効率的に流動媒体中に供給することができる。そして、炉本体内の流動化用ガスの流速(例えば空塔速度)を第2流動化開始速度以上に設定することによって、流動媒体を構成する第1粒状物、及び固定層を構成する第2粒状物の両方を流動させることができ、この流動によって、例えばこれら第1及び第2粒状物を炉本体外に排出することができる。
【0017】
この発明に係る流動床炉において、前記第1粒状物又は第2粒状物を、所定の密度、所定の大きさ、又は所定の形状とすることによって、前記第2流動化開始速度が、前記第1流動化開始速度よりも大きくなるようにしたものとすることができる。
【0018】
このように、例えば密度を、第1粒状物よりも第2粒状物の方を大きくすることによって、流動性を、第1粒状物よりも第2粒状物の方を低くすることができる。また、第1又は第2粒状物を所定の大きさ、又は所定の形状とすることによって、第2粒状物の空気抵抗を第1粒状物よりも小さくすることができる。このようにして、第2粒状物を流動させるためのガスの第2流動化開始速度を、第1粒状物を流動させるためのガスの第1流動化開始速度よりも大きくすることができる。
【0019】
この発明に係る流動床炉において、前記炉本体内の流動化用ガスの流速を前記第2流動化開始速度以上にして、前記固定層及び前記流動媒体を流動させて前記炉本体の外側に排出し、これら排出された前記流動媒体を構成する第1粒状物と、前記固定層を構成する第2粒状物とを分別して回収することができる分別回収機構を備えるものとすることができる。
【0020】
この分別回収機構によると、流動化用ガスの流速を第2流動化開始速度以上にして、固定層及び流動媒体を流動させて炉本体の外側に排出することができる。そして、分別回収機構は、これら排出された流動媒体を構成する第1粒状物と、固定層を構成する第2粒状物とを分別して回収することができる。これによって、炉本体や、第1及び第2粒状物の保守、点検、入替え等を行うことができるし、不燃物の除去をし易くすることができる。
【0021】
この発明に係る流動床炉において、前記気泡小径化部は、前記ガス流入口及び前記ガス流出口を有する一体物又は一体として形成されているものとすることができる。
【0022】
このようにすると、炉本体内の流動化用ガスの流速を大きくしても、気泡小径化部は流動しないので、伝熱管を加熱するための効率の良い流動速度で流動媒体を流動させることができる。
【0023】
本発明に係る流動床ボイラは、前記発明に係る流動床炉を備えることを特徴とするものである。
【0024】
このようにすると、前記流動床炉の作用を奏する流動床ボイラを提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る流動床炉及び流動床ボイラによると、気泡小径化部によって、流動媒体中に供給される流動化用ガスの気泡を小さくすることができる構成としたので、流動媒体が伝熱管の外面に衝突するときの衝突速度を小さくすることができる。これによって、流動媒体が伝熱管に衝突することにより生じる伝熱管の損耗減肉を低減することができる。その結果、伝熱管のメンテナンス費用や交換費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の第1実施形態に係る流動床炉を示す縦断面図である。
【図2】同発明の第2実施形態に係る流動床炉を示す縦断面図である。
【図3】同第1及び第2実施形態に係る流動床炉が備えるガスノズル及び他のガスノズルの例を示し、(a)はノズルカバーが設けられていないものの拡大縦断面図、(b)はノズルカバーがノズル本体の略中央に設けられているものの拡大縦断面図、(c)はノズルカバーがノズル本体の上端部に設けられているものの拡大縦断面図である。
【図4】同第1実施形態に係る流動床炉及び従来の流動床炉による流動化用ガスの気泡径、及び模擬伝熱管の減肉量を比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る流動床炉及びそれを備える流動床ボイラの第1実施形態を、図1を参照して説明する。図1は、流動床ボイラに設けられている流動床炉11を示している。この流動床炉11は、図1に示すように、加熱された流動媒体12が炉本体13内に収容され、この流動媒体12を流動化用ガス14によって流動させて、流動媒体12中に配置された伝熱管15群を加熱することができるものであり、炉本体13と、分別回収機構16とを備えている。
【0028】
炉本体13は、図1に示すように、側壁部13aと、底壁部を形成する平板状の分散板17と、この分散板17の下側に設けられたガス導入部18(風箱)とを有している。そして、側壁部13aと分散板17とによって形成された空間に固定層19及び流動媒体12が収容されている。また、流動媒体12中には、伝熱管15群が配置されている。
【0029】
分散板17は、ガス導入部18から導入される空気等の流動化用ガス(以下、単に「ガス」と言うこともある。)14を分散させて、そのガス14を固定層19に通して流動媒体12中に供給するためのものである。この分散板17は、略水平又は傾斜して配置され、多数のガス流入口20が形成されており、それぞれのガス流入口20には、ガスノズル21が取り付けられている。これらそれぞれのガスノズル21は、上端部が閉塞され、下端部が開口する略円筒形状に形成されたものであり、下端部が分散板17に取り付けられている。そして、ガスノズル21の上端部の周囲には、多数の噴出し口21aが形成されている。
【0030】
ガス導入部18は、箱状に形成され、外部から供給されてくるガス14を、それぞれのガスノズル21に通して炉本体13内に供給することができるものである。つまり、ガス14は、それぞれのガスノズル21の噴出し口21aから噴き出される。
【0031】
固定層19は、それぞれのガスノズル21の噴出し口21aから噴き出されるガス14を更に分散させて、ガス14のそれぞれの気泡を小さくして流動媒体12中に供給することができるものである。この固定層19は、多数の第2粒状物22で形成され、それぞれのガスノズル21の噴出し口21aを覆うように、所定の層厚で分散板17上に敷き詰められて配置されている。この第2粒状物22は、例えば鋼球や石で形成され、直径が約10mm程度の大きさまでのものであり、熱的に安定なものである。
【0032】
このように、図1に示す分散板17及び固定層19は、ガス導入部18から導入されてくるガス14を、比較的小さい気泡に形成してこの小さい多数の気泡を流動媒体12中に供給することができるものであり、気泡小径化部23を形成している。この気泡小径化部23のガス流入口は、分散板17に形成されているガス流入口20である。そして、気泡小径化部23のガス流出口24は、固定層19を構成する多数の第2粒状物22どうしの間に形成されている多数の隙間で形成されている。
【0033】
そして、固定層19を構成する多数の第2粒状物22どうしの間に形成されている多数の隙間(ガス流出口24)の数が、分散板17に形成されているガス流入口20の数よりも多くなるように、多数の第2粒状物22及びガス流入口20が形成されている。
【0034】
流動媒体12は、例えばこの炉本体13内に供給される燃料の燃焼によって加熱されるものであり、この燃料としては、ごみ、固形燃料、バイオマス燃料等の可燃物を含むものである。そして、この流動媒体12は、図1に示すように、固定層19の上面から噴き出されるガス14の多数の小さな気泡によって流動し、燃料の燃焼によって発生する熱が、炉本体13に収容されている流動媒体12の全部に満遍なく行き渡るようにすることができるものである。
【0035】
この流動媒体12は、多数の第1粒状物25で形成され、所定の層厚となるように固定層19の上に配置されている。この第1粒状物25は、例えばけい砂や石灰石で形成され、直径が約1mm程度のものであり、熱的に安定なものである。
【0036】
伝熱管15は、図1に示すように、流動媒体12中に配置され、燃料の燃焼によって加熱された流動媒体12の熱を回収するためのものである。この伝熱管15は、内部に水(ボイラー水)が収容されている金属管であり、加熱された水を循環させて、熱を回収できるようになっている。
【0037】
なお、例えば図1に示す固定層19の上面と、伝熱管15群の下面までの距離Kは、50mm〜600mm程度とすることが望ましい。つまり、固定層19の上面を伝熱管15群の下面に近づけるほど、固定層19の上面から噴き出される小さい気泡が大きくならず、小さいままで伝熱管15に接触させることができ、これによって、伝熱管15の損耗減肉を防止できる。しかし、固定層19の上面を伝熱管15群の下面に近づけ過ぎると、伝熱管15群の近くの流動媒体12の流動が、固定層19によって妨げられることがあり、熱回収効率を低下させる要因となることがある。
【0038】
次に、図1に示す流動媒体12を構成する多数の第1粒状物25、及び固定層19を構成する多数の第2粒状物22の流動性を説明する。
【0039】
まず、多数の第1粒状物25(流動媒体12)は、図1に示す炉本体13内のガス14の流速(空塔速度)が第1流動化開始速度のときに流動を開始するように形成されている。そして、多数の第2粒状物22(固定層19)は、図1に示す炉本体13内のガス14の流速(空塔速度)が第2流動化開始速度のときに流動を開始するように形成されている。そして、第2流動化開始速度が、第1流動化開始速度よりも大きくなるように、第1及び第2粒状物25、22が形成されている。
【0040】
この空塔速度とは、炉本体13内の断面積当たりの通気流量である。そして、図には示さないが、ガス導入部18には、ガス流量調整機構(例えばダンパーを備えるもの。)が設けられている。このガス流量調整機構によって、炉本体13内のガス14の空塔速度を所定の範囲内で調整できるようになっている。
【0041】
このように、第1粒状物25及び第2粒状物22の流動性を規定すると、通常(定格)運転時において、炉本体13内の流動化用ガス14の流速(例えば空塔速度)を第1流動化開始速度以上であって、第2流動化開始速度未満に設定することによって、多数の第1粒状物25(流動媒体12)を流動させることができ、加熱されて温度の高い第1粒状物25を効率的に伝熱管15に接触させることができる。このとき、多数の第2粒状物22(固定層19)は、流動しないので、小さい気泡を効率的に流動媒体12中に供給することができる。
【0042】
そして、例えばこの流動床炉11の清掃時において、炉本体13内の流動化用ガス14の流速(例えば空塔速度)を第2流動化開始速度以上に設定することによって、第1粒状物25(流動媒体12)、及び第2粒状物22(固定層19)の両方を流動させることができ、この流動によって、これら第1及び第2粒状物25、22を炉本体13外に排出することができる。
【0043】
なお、例えば図1に示す流動床炉11の通常(定格)運転時における流動化用ガス14の空塔速度Vは、第1流動化開始速度R1の2倍〜10倍程度である。そして、第2流動化開始速度R2は、通常(定格)運転時における流動化用ガス14の空塔速度Vの2倍〜3倍程度である。よって、第2流動化開始速度R2は、第1流動化開始速度R1の4倍〜30倍程度である。
【0044】
次に、図1を参照して分別回収機構16を説明する。この分別回収機構16は、炉本体13内のガス14の空塔速度を第2流動化開始速度以上にして、固定層19及び流動媒体12を流動させて炉本体13の外側に排出し、これら排出された流動媒体12を構成する多数の第1粒状物25と、固定層19を構成する多数の第2粒状物22とを分別することができるものである。
【0045】
この分別回収機構16は、排出機26と、分別機27とを備えている。排出機26は、例えば電動スクリュー式のものであり、図1に示すように、この排出機26の入口26aが、分散板17に形成された排出口28に排出管29で接続されている。
【0046】
分別機27は、図1に示すように、例えば電動フルイ式のものであり、この分別機27の入口27aが、排出機26に形成された出口26bに接続されている。そして、分別機27には、第1出口27bと第2出口27cとが形成されている。この第1出口27bは、直径の小さい第1粒状物25(流動媒体12)を排出するためのものである。そして、第2出口27cは、直径の大きい第2粒状物22を排出するためのものである。
【0047】
そして、図1に示すように、第1出口27bから排出される炉本体13内の全ての第1粒状物25(流動媒体12)は、第1貯留槽30で貯留することができ、第2出口27cから排出される炉本体13内の全ての第2粒状物22(固定層19)は、第2貯留槽31で貯留することができるように構成されている。
【0048】
また、第1及び第2貯留槽30、31のそれぞれに貯留されている第1及び第2粒状物25、22は、循環装置32(例えばバケットコンベア)によって炉本体13内に戻すことができるように構成されている。
【0049】
この分別回収機構16によると、ガス14の空塔速度を第2流動化開始速度以上にして、固定層19及び流動媒体12を流動させて炉本体13の外側に排出することができる。そして、これら排出された流動媒体12を構成する多数の第1粒状物25と、固定層19を構成する多数の第2粒状物22とを分別して、第1及び第2貯留槽30、31内に回収することができる。これによって、炉本体13や、第1及び第2粒状物25、22の保守、点検、入替え等を行うことができるし、不燃物の除去をし易くすることができる。
【0050】
次に、上記のように構成された流動床ボイラに設けられている流動床炉11の作用を、図1を参照して説明する。まず、通常運転時において、炉本体13内の流動化用ガス14の空塔速度を第1流動化開始速度以上であって、第2流動化開始速度未満に設定する。これによって、固定層19を静止させた状態で、多数の第1粒状物25(流動媒体12)を流動させることができる。そして、流動媒体12に燃料を供給して、この燃料の燃焼によって加熱された流動媒体12が伝熱管15と接触することによって、流動媒体12が保有する熱を、伝熱管15及び水を介して回収することができる。
【0051】
また、流動化用ガス14は、分散板17に形成されたガス流入口20から流入して多数のガスノズル21及び固定層19を通り、この固定層19を構成する多数の第2粒状物22どうしの多数の隙間(ガス流出口24)から流出して流動媒体12内に供給される。
【0052】
ここで、固定層19を構成する多数の第2粒状物22どうしの多数の隙間(ガス流出口24)の数が、分散板17に形成されたガス流入口20の数よりも多く形成されていることによって、流動化用ガス14を十分に分散させてそれぞれのガス流出口24から流出させることができる。これによって、各ガス流出口24から流出する流動化用ガス14の気泡を小さくすることができる。このように、流動化用ガス14の気泡を小さくすると、その気泡が伝熱管15の外面と接触してその伝熱管15の外面から離れる際の、流動媒体12が伝熱管15の外面に衝突する衝突速度を小さくすることができる。その結果、流動媒体12が伝熱管15に衝突することにより生じる伝熱管15の損耗減肉を低減することができる。更に、伝熱管15のメンテナンス費用や交換費用を低減することができる。
【0053】
次に、本発明に係る流動床炉の第2実施形態を、図2を参照して説明する。図2に示す第2実施形態の流動床炉34と、図1に示す第1実施形態の流動床炉11とが相違するところは、図1に示す第1実施形態では、炉本体13内の空間が仕切り壁によって仕切られておらず、流動媒体12が炉本体13内の1つの空間内で流動するのに対して、図2に示す第2実施形態では、炉本体13内の空間が仕切り壁35によって仕切られて燃焼セル36と収熱セル37が形成され、流動媒体12がこの2つの燃焼セル36及び収熱セル37を流動すると共に循環するところである。ただし、第1実施形態の流動床炉11と同等部分は、同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
【0054】
炉本体13は、図2に示すように、側壁部13aと、底壁部を形成する分散板17と、この分散板17の下側に設けられた第1及び第2ガス導入部18、38(風箱)とを有している。そして、側壁部13aと分散板17とによって形成された空間が縦方向に配置された仕切り壁35によって仕切られて、左側に燃焼セル36が形成され、右側に収熱セル37が形成されている。そして、仕切り壁35の上側と下側とで燃焼セル36と収熱セル37が互いに上下の各通路39、40を介して連通している。
【0055】
燃焼セル36は、流動媒体12のみが収容され、固定層19は収容されていないし、伝熱管15群も配置されていない。この燃焼セル36に燃料が供給され、この燃料の燃焼によって燃焼セル36内の流動媒体12が加熱される。
【0056】
収熱セル37は、図1に示す第1実施形態の流動床炉11と同様に、固定層19及び流動媒体12が収容され、流動媒体12中に伝熱管15群が配置されている。ただし、固定層19が燃焼セル36側に移動しないようにするために、保持壁41が分散板17に設けられている。
【0057】
収熱セル37には、燃焼セル36内の加熱された流動媒体12が移送され、この高温の流動媒体12が保有する熱が伝熱管15によって回収される。
【0058】
第1及び第2ガス導入部18、38は、それぞれが箱状に形成され、仕切り板42によって両者が仕切られている。この第1ガス導入部18は、第1実施形態と同様にして、収熱セル37内の流動媒体12を流動させるものであり、流動化用ガス14をガスノズル21及び固定層19に通して流動媒体12中に供給することができるものである。
【0059】
そして、第2ガス導入部38は、流動化用ガス14をガスノズル21に通して燃焼セル36内の流動媒体12内に供給し、この流動媒体12を上昇移動させることができるものである。この燃焼セル36内で上昇移動する流動媒体12は、仕切り壁35の上端部の上通路39を乗り越えて収熱セル37内に移送される。そして、収熱セル37内に移送された高温の流動媒体12は、収熱セル37内で下降移動して伝熱管15で収熱され、そして、仕切り壁35の下端部と分散板17との間の下通路40を通って燃焼セル36内に移送される。このようにして、流動媒体12は、この2つの燃焼セル36及び収熱セル37を循環すると共に流動することができる。
【0060】
また、図2に示すように、第1及び第2ガス導入部18、38の仕切り板42は、仕切り壁35の下側であって、燃焼セル36側に寄った位置に設けられている。また、仕切り壁35の下側にガスノズル21が配置されている。このガスノズル21によって、仕切り壁35の下端部と分散板17との間の下通路40に、流動媒体12が滞留することを防止することができる。
【0061】
また、図2に示す炉本体13内に配置されている流動媒体12及び固定層19を、炉本体13の外側に排出して回収するときは、燃焼セル36及び収熱セル37内の流動化用ガス14の空塔速度を、第2流動化開始速度以上にする。
【0062】
これによって、流動媒体12及び固定層19を、この2つの燃焼セル36及び収熱セル37を流動させながら循環させることができる。このように、流動媒体12及び固定層19を循環させることによって、流動媒体12及び固定層19を燃焼セル36に設けられている排出管29から排出することができる。
【0063】
そして、図1に示す第1実施形態と同様に、分別回収機構16は、これら排出された流動媒体12を構成する多数の第1粒状物25と、固定層19を構成する多数の第2粒状物22とを分別して、第1及び第2貯留槽30、31内に回収することができる。そして、図2に示すようにして、流動媒体12を燃焼セル36及び収熱セル37に戻すことができ、固定層19を収熱セル37に戻すことができる。
【0064】
ただし、上記第1及び第2実施形態では、図1及び図2に示すように、炉本体13の底壁部を形成する分散板17に、流動媒体12及び固定層19を排出することができる排出口28を設けたが、これに代えて、排出口28を側壁部13aに設けてもよい。
【0065】
そして、上記各実施形態では、図1等に示すように、分散板17に多数のガスノズル21を設けたが、これら多数のガスノズル21を省略してもよい。なお、ガスノズル21を省略した場合は、ガス導入部18によって導入されるガス14が、分散板17に設けられている多数のガス流入口20及び固定層19を通って流動媒体12中に供給されるときに、そのガス14が固定層19の上面の略全域から流動媒体12中に満遍なく供給されるように、例えば分散板17のガス流入口20を小さくし、かつ、その数を多くして、所定の圧力損失を確保できるようにするとよい。
【0066】
また、上記各実施形態では、固定層19を構成する第2粒状物22(例えば鋼球)を流動させるためのガス14の第2流動化開始速度を、流動媒体12を構成する第1粒状物25(例えばけい砂)を流動させるためのガス14の第1流動化開始速度よりも大きくするために、即ち、第2粒状物22が、第1粒状物25と比較して流動し難くするために、第2粒状物22の密度を大きくすると共に直径を大きくしたが、これ以外の方法によって第2粒状物22が、第1粒状物25と比較して流動し難くなるようにしてもよい。
【0067】
例えば、第1又は第2粒状物25、22を所定の大きさ、又は所定の形状(例えば多角形、楕円球等)とすることによって、第2粒状物22の空気抵抗を第1粒状物25よりも小さくして、第2粒状物22の第2流動化開始速度を、第1粒状物25の第1流動化開始速度よりも大きくすることができる。
【0068】
更に、上記各実施形態では、図1等に示すように、分別機27は電動フルイ式のものとしたが、これに代えて、電磁石を使用したものとすることができる。つまり、排出機26から排出される第1及び第2粒状物25、22の混ざり合ったものに対して電磁石を接触させて、この電磁石によって鋼球である第2粒状物22を吸着することができる。これによって、第2粒状物22を第1粒状物25から引き離すことができ、第1及び第2粒状物25、22を分別することができる。なお、第1粒状物25は、けい砂等であるので、電磁石には吸着されない。
【0069】
そして、上記各実施形態で使用されているガスノズル21は、図1及び図3(a)に示すように、上端部が閉塞し、下端部が開口する略円筒形状のものであって、上端部の周囲に複数の噴出し口21aが形成され、ノズルカバー43が設けられていないものとしたが、これに代えて、ガスノズルを図3(b)、(c)に示すように、ノズルカバー43が設けられているものとしてもよい。これら各図に示すノズルカバー43は、ノズル本体44に形成されている噴出し口21aがごみや灰で閉塞されることを防止するためのものである。
【0070】
図3(b)に示すガスノズル45は、ノズル本体44が図3(a)に示すガスノズル21と同等のものであり、このノズル本体44の略中央に傘状のノズルカバー43が設けられ、このノズルカバー43の内側に噴出し口21aが配置されるように形成されている。
【0071】
図3(c)に示すガスノズル46は、ノズル本体44が図3(a)に示すガスノズル21と同等のものであり、このノズル本体44の上端部に傘状のノズルカバー43が設けられ、このノズルカバー43の内側に噴出し口21aが配置されるように形成されている。
【0072】
また、上記各実施形態が備える気泡小径化部23は、図1に示すように、分散板17と、この分散板17上に配置された多数の第2粒状物22(固定層19)とを備えるものとしたが、これに代えて、例えばこの分散板17と多数の第2粒状物22を互いに結合させて一体に形成して、多数のガス流入口20と、多数のガス流出口24とを有するものとしてもよい。もちろん、これら多数のガス流入口20と、多数のガス流出口24とを有する一体物としてもよい。
【0073】
このようにすると、炉本体13内の流動化用ガス14の流速(空塔速度)を大きくしても、気泡小径化部は流動しないので、伝熱管15を加熱するための効率の良い空塔速度で流動媒体12を流動させることができる。
【0074】
そして、上記第2実施形態では、図2に示すように、本発明を、炉本体13内の空間が仕切り壁35によって仕切られて燃焼セル36と収熱セル37が形成され、流動媒体12がこれらの燃焼セル36及び収熱セル37を流動すると共に循環する内部循環流動床炉に適用したが、これに代えて、図には示さないが、本発明を外部循環流動床炉に適用することができる。
【0075】
この外部循環流動床炉は、例えば流動媒体12である第1粒状物25を収容する火炉と、この火炉から燃焼ガスと共に排出される第1粒状物25を導入し、この第1粒状物25を捕集して排出する捕集装置と、この捕集装置によって捕集、排出された第1粒状物25を、例えば図1又は図2に示す炉本体13内の伝熱管15を経由して火炉に循環させる循環系を備えるものである。この場合は、炉本体13内で燃焼が行なわれない。
【0076】
次に、図4を参照して、流動する流動媒体12との衝突によって生じる伝熱管15の減肉量の実験結果を説明する。この実験は、気泡分散構造Aと、気泡分散構造Bとを比較したものである。気泡分散構造Aは、図1に示す流動床炉11において、固定層19を省略したものと同等のものである。気泡分散構造Bは、図1に示す流動床炉11のものと同等のものである。ただし、伝熱管15は、アクリル製の模擬伝熱管を使用している。模擬伝熱管を使用することによって、減肉量を増大させることができ、減肉量の測定をし易くすることができる。
【0077】
図4に示すように、気泡分散構造Bによれば、気泡分散構造Aと比較して流動媒体12中の気泡径が約70%となり小さくなる。アクリル製の伝熱管の減肉量は、約20%低減できる。よって、金属製の伝熱管15の磨耗減肉を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明に係る流動床炉及びそれを備える流動床ボイラは、流動化用ガスの気泡を小さくすることによって、流動媒体が伝熱管の外面に衝突するときの衝突速度を小さくして、流動媒体が伝熱管に衝突することにより生じる伝熱管の損耗減肉を低減することができる優れた効果を有し、このような流動床炉及びそれを備える流動床ボイラに適用するのに適している。
【符号の説明】
【0079】
11、34 流動床炉
12 流動媒体
13 炉本体
13a 側壁部
14 流動化用ガス
15 伝熱管
16 分別回収機構
17 分散板
18 ガス導入部、第1ガス導入部
19 固定層
20 ガス流入口
21、45、46 ガスノズル
21a 噴出し口
22 第2粒状物
23 気泡小径化部
24 ガス流出口
25 第1粒状物
26 排出機
26a、27a 入口
26b 出口
27 分別機
27b 第1出口
27c 第2出口
28 排出口
29 排出管
30 第1貯留槽
31 第2貯留槽
32 循環装置
35 仕切り壁
36 燃焼セル
37 収熱セル
38 第2ガス導入部
39 上通路
40 下通路
41 保持壁
42 仕切り板
43 ノズルカバー
44 ノズル本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された流動媒体が炉本体内に収容され、この流動媒体を流動化用ガスによって流動させて、前記流動媒体中に配置された伝熱管を加熱する流動床炉において、
前記流動媒体を保持するように設けられ、流動化用ガスをガス流入口から流入させて、前記ガス流入口の数よりも多数のガス流出口から流出できるようにして、流動化用ガスを前記流動媒体中に供給することができる気泡小径化部を備えていることを特徴とする流動床炉。
【請求項2】
前記気泡小径化部は、前記ガス流入口を形成する分散板と、この分散板上に載置され、前記ガス流入口の数よりも多数のガス流出口を形成する固定層とを有することを特徴とする請求項1記載の流動床炉。
【請求項3】
前記流動媒体は、第1粒状物で形成され、前記第1粒状物は、流動化用ガスの流速が第1流動化開始速度のときに流動を開始し、
前記固定層は、第2粒状物で形成され、前記第2粒状物は、流動化用ガスの流速が第2流動化開始速度のときに流動を開始し、
前記第2流動化開始速度が、前記第1流動化開始速度よりも大きくなるように前記第1及び第2粒状物が形成されていることを特徴とする請求項2記載の流動床炉。
【請求項4】
前記第1粒状物又は第2粒状物を、所定の密度、所定の大きさ、又は所定の形状とすることによって、前記第2流動化開始速度が、前記第1流動化開始速度よりも大きくなるようにしたことを特徴とする請求項3記載の流動床炉。
【請求項5】
前記炉本体内の流動化用ガスの流速を前記第2流動化開始速度以上にして、前記固定層及び前記流動媒体を流動させて前記炉本体の外側に排出し、これら排出された前記流動媒体を構成する第1粒状物と、前記固定層を構成する第2粒状物とを分別して回収することができる分別回収機構を備えることを特徴とする請求項3又は4記載の流動床炉。
【請求項6】
前記気泡小径化部は、前記ガス流入口及び前記ガス流出口を有する一体物又は一体として形成されていることを特徴とする請求項1記載の流動床炉。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の流動床炉を備えることを特徴とする流動床ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203653(P2010−203653A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48314(P2009−48314)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】