説明

流速センサー

【課題】特に複数の感圧素子の一方が他方の圧力変化に影響されることがない流速センサーを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の流速センサー10は、筐体の収容空間の第1の開口部を封止する第1のダイアフラム20aと、収容空間の第2の開口部を封止する第2のダイアフラム20bと、感圧部と一対の基部を有して一対の基部を結ぶ方向を検出軸とする感圧素子40と、を有し、感圧素子40は、一対の基部を前記ダイアフラムの支持部に接続し、検出軸はダイアフラムの受圧面に平行であり、第1のダイアフラム20aは、流体の流れる方向に向けた動圧導入口から導入された圧力を受圧し、第2のダイアフラム20bは、流体の流れる方向とほぼ直交した方向に向けた静圧導入口から導入された圧力を受圧し、第1及び第2のダイアフラム20a,20bの受圧面側に断熱部60が設けられたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に圧電振動素子を感圧素子として用いる流速センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水圧計、気圧計、差圧計などに圧電振動子を感圧素子として用いた圧力センサーが知られている。圧電振動素子は、例えば、板状の圧電基板上に励振電極や引き出し電極等の電極パターンが形成されて固有の共振周波数で振動する振動部と、振動部の両端に設けられ、ダイアフラムに固定された一対の基部を有し、一対の基部を互いに結ぶ線の方向を力の検出軸とするものである。そして、検出軸の方向に直行する方向から被測定圧力をダイアフラムの受圧部で受圧すると受圧部が撓む。これにより圧電振動子に力が加わると、圧電振動子には検出軸の方向に引張応力が生じるため共振周波数が変化する。共振周波数の変化から被測定圧力の圧力値を検出することができる。
【0003】
このような圧力センサーの一例として特許文献1の圧力センサーが知られている。特許文献1に開示の圧力センサーは、両端に開口部を有すると共に当該開口部同士が連通する第1のケース部と、該第1のケース部の両端の開口部を密閉して、内部に密閉空間を形成すると共に、外側から中心部に第1接合部と薄肉部と第1保持部と第1中央板部とする第1及び第2のダイアフラム部と、第1及び第2のダイアフラム部の夫々の第1及び第2保持部に搭載された第1及び第2双音叉振動片とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−243276号公報
【特許文献2】特開平6−66656号公報
【特許文献3】特開平8−86799号公報
【特許文献4】特開平8−146027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような圧力センサーを用いて河川、堰、ダム、水路等の流体の流速を測定する場合、特許文献2乃至4に開示されているように、流体中に曝される筐体の中に前記圧力センサーを収容し、前記2つのダイアフラムの受圧面に、それぞれ、動圧Paを導入する動圧導入口を供えた第1のキャップと、静圧Pbを導入する静圧導入口を供えた第2のキャップと、を取り付ける構成となる。前述の通りこの圧力センサーは、2つのダイアフラムで夫々受圧した動圧Paと静圧Pbを検出している。
【0006】
しかし、流体の流速を測定するために流速センサーを水中へ配置するとき、流速センサーの流速検出精度に関して、水中における水温の温度変化に応じて、感圧素子が収容された容器内部の雰囲気の温度が変化する追従性には限界がある。このため、流体の温度と容器内雰囲気の温度との差が生じて、圧力変化に伴う感圧素子の発振周波数を正確に測定することができないという問題があった。流速センサーを水中に配置した後、ハウジング内の温度が安定するまでの所定の間、流速を測定することができなかった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に着目し、測定環境の温度変化による測定誤差を回避できる流速センサーを提供することを目的としている。また本発明は、測定環境の温度変化の影響を受けずにハウジング内部の温度を設定温度に維持することができる流速センサーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]流体の中に曝される筐体と、当該筐体に設けられた第1の収容空間及び第2の収容空間と、前記筐体の先端部に設けられた動圧導入口と、前記筐体の側面部に設けられた静圧導入口と、を備え、前記動圧導入口を前記流体の流れる方向に向け、前記静圧導入口を前記流体の流れる方向とほぼ直交した方向に向けてなる流速センサーであって、前記第1の収容空間の第1の開口部を封止する第1のダイアフラムと、前記第2の収容空間の第2の開口部を封止する第2のダイアフラムと、前記第1の収容空間に収容され、第1の感圧部と、当該第1の感圧部の両端に接続される一対の第1の基部と、を有し、前記一対の第1の基部を結ぶ方向を第1の検出軸とする第1の感圧素子と、前記第2の収容空間に収容され、第2の感圧部と、当該第2の感圧部の両端に接続される一対の第2の基部と、を有し、前記一対の第2の基部を結ぶ方向を第2の検出軸とする第2の感圧素子と、を有し、前記第1の感圧素子は、前記第1の基部を前記第1のダイアフラムの支持部に接続し、前記第1の検出軸は前記第1のダイアフラムの受圧面に平行であり、前記第2の感圧素子は、前記第2の基部を前記第2のダイアフラムの支持部に接続し、前記第2の検出軸は前記第2のダイアフラムの受圧面に平行であり、前記第1のダイアフラムは、前記動圧導入口から導入された圧力を受圧し、前記第2のダイアフラムは、前記静圧導入口から導入された圧力を受圧し、前記第1及び第2のダイアフラムの受圧面側に断熱部が設けられたことを特徴とする流速センサー。
上記構成により、動圧導入口又は静圧導入口から導入された圧力が加わるダイアフラムの受圧面に対して断熱部で熱伝導を遮断して、収容空間の雰囲気の温度が水温の温度変化の影響を受け難くすることができる。感圧素子が水温の温度変化の影響を受けることなく、圧力変化に伴う発振周波数の変化を正確に測定することができる。
【0009】
[適用例2]前記筐体の側壁に断熱層を設けたことを特徴とする適用例1に記載の流速センサー。
上記構成により、筐体に形成した断熱層で熱伝導を遮断して、側面からの流体の温度変化の影響を回避することができる。従って、温度変化の影響を受けることなく圧力変化に伴う発振周波数の変化を正確に測定することができる。
【0010】
[適用例3]前記第1の感圧素子は、前記一対の第1の基部の少なくとも何れか一方の基部に一体化された第1の温度検出用感圧素子を有し、前記第2の感圧素子は、前記一対の第2の基部の少なくとも何れか一方の基部に一体化された第2の温度検出用感圧素子を有し、前記第1及び第2の温度検出用感圧素子の検出値に基づいて前記第1及び第2の感圧素子の温度特性を補正する温度補償回路を備えたことを特徴とする適用例1又は適用例2に記載の流速センサー。
これにより、温度変化による誤差を補正して、動圧導入口又は静圧導入口から導入された圧力の圧力検出精度を上げて圧力感度を改善することができる。
【0011】
[適用例4]前記第1及び第2の収容空間に設置したヒータ抵抗と、前記第1及び第2の温度検出用感圧素子の検出値に基づいて前記第1及び第2の収容空間の室内温度を制御する温度制御回路と、を備えたことを特徴とする適用例3に記載の流速センサー。
上記構成により、第1及び又は第2の収容空間の内部空間を所定の設定温度に維持することができる。従って、温度変化の影響を受けることがなく、圧力変化に伴う発振周波数の変化を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す部分分解斜視図である。
【図3】本発明の流速センサーを用いた測定方法の説明図である。
【図4】第1実施形態の流速センサーを流体中に設置した一例図である。
【図5】第2実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す断面図である。
【図6】第3実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す断面図である。
【図7】第3実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す部分分解斜視図である。
【図8】第4実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の流速センサーの実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。図1は第1実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す断面図である。図2は第1実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す部分断面斜視図である。第1実施形態に係る流速センサー10は、ハウジング12と、ダイアフラム20と、隔壁13と、感圧素子40と、発振回路50と、キャップ52と、を主な基本構成としている。
【0014】
ハウジング12は、円筒形状の容器であり、両端面に後述する一対のダイアフラム20の周縁部20eを支持する第1及び第2の開口部17a,17bが設けられている。ハウジング12は、流体の中に曝される筐体としての役割をなしている。また、ハウジング12は、内部の中央に端面と平行な隔壁13を形成している。これにより、ハウジング12の断面は、図示のように略H型形状に形成されている。ハウジング12は、隔壁13によって容器内が二分割されて、第1及び第2の収容空間14,15が形成される。なおハウジング12は、ステンレス等の金属で形成することが好ましい。隔壁13は、ハウジング12と同一の金属で形成することが好ましく、溶接等によりハウジング12に形成することができる。
【0015】
ダイアフラム20は、ハウジング12の第1及び第2の開口部17a,17bを封止している。ダイアフラム20は、ハウジング12の外部に面した一方の主面が受圧面22となっており、前記受圧面22が被測定圧力環境(例えば液体)の圧力を受けて撓み変形する薄肉部20cを有し、当該薄肉部20cがハウジング12内部側又は外部側に撓み変形することにより感圧素子40に引張力を伝達するものである。ダイアフラム20は、第1及び第2のダイアフラム20a,20bから構成されている。
【0016】
第1及び第2のダイアフラム20a,20bは、それぞれ、外部からの圧力によって撓み変形する薄肉部20cと、前記薄肉部20cの外周に前記薄肉部20cよりも厚肉であって、ハウジング12に形成された開口の内壁に接合し、外部からの圧力により撓み変形しない周縁部20eと、を有している。また薄肉部20cには、薄肉部20cよりも厚肉となる一対の支持部20dが形成されている。一対の支持部20dは、ダイアフラム20の重心に対して対称となる位置に形成されている。
【0017】
ダイアフラム20の材質は、ステンレスのような金属やセラミックなどの耐腐食性に優れたものがよい。例えば金属で形成する場合は、金属母材をプレス加工して形成すればよい。なお、ダイアフラム20は、液体やガス等により腐食しないように、外部に露出する表面をコーティングしてもよい。例えば、金属製のダイアフラム20であれば、ニッケルの化合物をコーティングしてもよい。また、周縁部20eとハウジング12は、溶接等により接続することができる。
【0018】
感圧素子40は、感圧部となる振動腕40eとその両端に形成された第1の基部40cと第2の基部40dを有し、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料により形成されている。感圧素子40は第1及び第2の感圧素子40a,40bから構成されている。第1及び第2の感圧素子40a,40bは、それぞれ第1及び第2のダイアフラム20a,20bの一対の支持部20dに接続させている。感圧素子40は、その長手方向、すなわち第1の基部40cと第2の基部40dを並ぶ検出軸がダイアフラム20の受圧面と平行になるように配置されている。このように感圧素子40は一対の支持部20dにより固定されているため、感圧素子40はダイアフラム20の変位による力を受けても、検出軸方向以外の方向に曲がることが無いので、検出軸方向の変位がそのまま感圧素子に作用して、感圧素子40の検出軸方向の感度の低下を抑制することができる。
【0019】
そして、感圧素子40の振動腕40eには励振電極(不図示)が形成され、励振電極(不図示)と電気的に接続する電極部(不図示)を有する。感圧素子40は、後述する発振回路(IC)50から供給される交流電圧により、固有の共振周波数で振動する。そして感圧素子40は、その長手方向から引張応力を受けることにより共振周波数が変動する。本実施形態においては感圧部となる振動腕40eとして双音叉型振動子を適用することができる。双音叉型振動子は、振動腕40eである前記2つの振動ビームに引張応力が印加されると、その共振周波数が印加される応力にほぼ比例して変化するという特性がある。そして双音叉型圧電振動片は、厚みすべり振動子などに比べて、引張応力に対する共振周波数の変化が極めて大きく共振周波数の可変幅が大きいので、わずかな圧力差を検出するような分解能力に優れる圧力センサーにおいては好適である。双音叉型圧電振動子は、引張応力を受けると振動腕の振幅幅が小さくなるので共振周波数が高くなる。
【0020】
また本実施形態においては2つの振動ビームを有する感圧部のみならず、一本の振動ビーム(シングルビーム)からなる感圧部を適用することができる。感圧部(振動腕40e)をシングルビーム型の振動子として構成すると、長手方向(検出軸方向)から同一の応力を受けた場合、その変位が2倍になるため、双音叉の場合よりさらに高感度な圧力センサーとすることができる。なお、上述の圧電材料のうち、双音叉型またはシングルビーム型の圧電振動子の圧電基板用としては温度特性に優れた水晶が望ましい。
【0021】
発振回路50は、感圧素子40を発振させる回路である。発振回路50は第1及び第2の発振回路50a,50bから構成されており、それぞれ隔壁13の一方及び他方の主面13a,13bに取り付けている。第1及び第2の発振回路50a,50bは、それぞれボンディングワイヤ(不図示)等を介して、第1及び第2の感圧素子40a,40bと電気的に接続し、感圧素子40を発振させることができる。
【0022】
キャップ52は、ハウジング12と略同一径となるように形成した皿状の容器である。キャップ52は、第1及び第2のキャップ52a,52bから構成されており、第1及び第2のダイアフラム20a,20bの受圧面22を覆うようにハウジング12に取り付けられている。なお、第1及び第2のキャップ52a,52bの取り付け方法は、接続箇所に雄ねじ部と雌ねじ部を形成して螺合する構造や、溶接手段、接着手段等を適用することができる。
【0023】
第1のキャップ52aは、動圧が導入される動圧導入口54が形成されている。本実施形態の動圧導入口54は、第1のダイアフラム20aの受圧面22と対向する壁面に1つ形成している。なお、動圧導入口54は、流体の上流側に向く方向であれば第1のキャップ52aのいずれかの場所でよい。第2のキャップ52bは、静圧が導入される静圧導入口56が形成されている。本実施形態の静圧導入口56は、第2のダイアフラム20bの受圧面22と垂直となる壁面に2つ形成している。なお、静圧導入口56は、動圧が導入されなければ第2のキャップ52bのいずれかの場所でよい。
【0024】
また、第1及び第2のダイアフラム20a,20bの受圧面には、断熱部60となるシリコンオイルを塗布している。断熱部60の形成方法は動圧導入口54又は静圧導入口56から充填して形成することができる。またはハウジング12に第1及び第2のキャップ52a,52bを接続させる前段で、ダイアフラム20の受圧面に断熱部60を形成し、その後、第1及び第2のキャップ52a,52bをハウジング12に取り付けるようにしてもよい。
【0025】
なお断熱部60は、シリコンオイルの他にも、熱伝達係数が低く、水と混ざり合うことがなく、ダイアフラム20の受圧面を覆うことができる物質であれば、これに限らず、シリコン樹脂等を適用しても良い。
【0026】
上記構成による第1実施形態の流速センサー10は、ハウジング12の開口を一対のダイアフラム20で閉塞し、中央部を隔壁13で分割している。このため、第1の収容空間14の内部には、第1のダイアフラム20aと第1の感圧素子40aが配置され、第2の収容空間15の内部には、第2のダイアフラム20bと第2の感圧素子40bが配置され、第1及び第2の収容空間14,15が互いに分離した密閉空間となる。なお、第1及び第2の収容空間14,15の内部は減圧させることにより、感圧素子の測定精度を向上させることができる。
【0027】
上記構成による第1実施形態の流速センサー10の作用について以下説明する。図3は本発明の流速センサーを用いた測定方法の説明図である。第1実施形態の流速センサー10の動圧導入口54が河川等の水(流体)の流れる方向に向くように安定した状態で設置する。このとき静圧導入口56は流体の流れる方向とほぼ直交した方向に向いた位置に設置される。流速センサー10の動圧導入口54は、開口から第1のキャップ52a内に水が導入されて、室内に生じた圧力が第1のダイアフラム20aに加わる。この圧力により、第1の感圧素子40aには、引張力が作用し、内部に生じた引張応力で素子の発振周波数が変化する。この変化量を検出することにより圧力を検出することができる。
【0028】
一方、流速センサー10の静圧導入口56は、直線上に2つの開口が形成され、開口から第2のキャップ52b内に水が流入する。第2のキャップ52b内では、室内に生じた圧力が第2のダイアフラム20bに加わる。これにより、第2の感圧素子40bには、引張力が作用し、この力により内部に生じた引張応力によって素子の発振周波数が変化する。この変化量を検出することにより圧力を検出することができる。
【0029】
得られた圧力の差分を求めることにより、動圧が求まり、以下に示すベルヌーイの定理により流体の流速を求めることができる。
流体に大気圧が付加されている場合の流速は、
Pa:動圧導入口から導入され、第1のダイアフラムで受圧する圧力
Pb:静圧導入口から導入され、第2のダイアフラムで受圧する圧力
P0:大気圧
P1:静圧
P2:動圧
V:流体の速度
g:重力加速度
w:流体の単位重量
とすると、
【数1】

【数2】

【0030】
ここで、流体が水であれば、水の密度は1であるから、
w=1
より、
【数3】

【数4】

従って
【数5】

【0031】
ここで、動圧孔の形状による補正係数をkとすると、
流速Vは、
【数6】

により求めることができる。
【0032】
また、流体に大気圧が付加されていない場合の流速は、
【数7】

【数8】

【0033】
ここで、流体が水であれば、水の密度は1であるから、
w=1
より、
【数9】

【数10】

従って
【数11】

【0034】
ここで、動圧孔の形状による補正係数をkとすると、
流速Vは、
【数12】

により求めることができる。
【0035】
上記構成による第1実施形態の流速センサー10によれば、センサー本体を水流の中に設置して水温の温度変化が生じた場合、流体と直に接触するダイアフラム20の受圧面22から伝わる温度変化が断熱部60によって遮断されハウジング12内の収容空間18へ熱伝導が起こらない。よって動圧と静圧を測定するときに水温の温度変化が生じても断熱部60を介して熱を遮断することができる。これにより水温の温度変化の影響を感圧素子40が受けることがなく、圧力変化に伴う発振周波数の変化を正確に測定することができる。
【0036】
図4は第1実施形態の流速センサーを流体中に設置した一例図である。
図示のように、流速センサー10は筐体110の内部に設けられている。筐体110は、全体形状を流線型とし、後端部に尾翼112が設けられている。筐体110の先端部には、流体の流れる方向に向けて動圧導入口114が設けられている。また筐体110の側面部には、流体の流れる方向とほぼ直行した方向に向けて静圧導入口116が設けられている。一方、流体センサーの第1及び第2のキャップ52c,52dは、第1又は第2ダイアフラム20a,20bの受圧面と対向する壁面に一つの開口を設けている。動圧導入口114には、流速センサー10の第1のキャップ52cに接続している配管118が設けられている。静圧導入口116には、流速センサー10の第2のキャップ52dと接続している配管119が設けられている。このような構成による流速センサー10は、筐体110を流体中に曝すと、先端部が上流側を向いて、尾翼112側が下流側を向くように配置される。このとき動圧導入口114は、流体中の流れに向けて配置され、静圧導入口116は、流体の流れに対してほぼ直行した方向に向けて配置され易くなる。従って動圧導入口又は静圧導入口から導入された圧力を第1又は第2ダイアフラム20a,20bで検出することができる。
【0037】
図5は第2実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す断面図である。
第2実施形態に係る流速センサー100は、ハウジング120の側壁に断熱層70を形成している。その他の構成は第1実施形態に係る流速センサー10と同一の構成であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
第2実施形態の流速センサー100は、ハウジング120の側面に断熱層70となる円筒状の密閉空間を形成し、この密閉空間内を真空に保持している。このため、ハウジング120の内側と外側の間で、真空の密閉空間が断熱材の役割を担って熱伝導が生じない。従って、流速センサー100の測定環境の温度変化で感圧素子40の発振周波数の変化が起こることがなく、正確な圧力測定を行うことができる。
【0039】
上記構成による第2実施形態の流速センサー100によれば、センサー本体を水流の中に設置して水温の温度変化が生じた場合、流体と直に接触するダイアフラム20の受圧面22からの温度変化が断熱部60によって遮断され、また、ハウジング120の側面からの温度変化が断熱層70によって遮断されて、熱伝導が起こらない。従って動圧と静圧を測定するときに、水温の温度変化が生じてもハウジング12の断熱部60、断熱層70を介して熱を遮断することができる。これにより感圧素子40が測定環境の温度変化の影響を受けることがなく、圧力変化に伴う発振周波数の変化を正確に測定することができる。
【0040】
図6は第3実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す断面図である。図7は第3実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す部分分解斜視図である。第3実施形態に係る流速センサー200は、第1及び第2の収容空間14,15内に温度センサーを取り付けている。その他の構成は、第2実施形態の流速センサー100の構成と同一であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
第3実施形態に係る流速センサー200は、圧力検出用の第1及び第2の感圧素子40a,40bに温度検出用感圧素子80を一体化させている。第1の感圧素子40aは、一対の基部40c、40dの少なくとも何れか一方の基部(本実施形態では基部40d)と一体的に形成され、第1の収容空間14の温度変化により共振周波数が変化する第1の温度検出用感圧素子80aを備えている。また第2の感圧素子40bは、一対の基部40c、40dの少なくとも何れか一方の基部(本実施形態では基部40d)と一体的に形成され、第2の収容空間15の温度変化により共振周波数が変化する第2の温度検出用感圧素子80bを備えている。このような構成の第1及び第2の温度検出用感圧素子80a,80bには、ダイアフラム20の可撓部20dの撓みによる応力は加わらない構成としている。なお、第1及び第2の温度検出用感圧素子80a,80bには素子を発振させる発振回路(不図示)がそれぞれ取り付けられている。
【0042】
また、第1及び第2の収容空間14,15には、温度補償回路82が取り付けられている。温度補償回路82は、第1及び第2の温度補償回路82a,82bから構成されている。第1及び第2の温度補償回路82a,82bは、隔壁13の一方及び他方の主面13a,13bに取り付けられている。温度補償回路82は、第1及び第2の温度検出用感圧素子80a,80bの測定値に基づいて、圧力検出用の第1及び第2の感圧素子40a,40bの温度特性の補正を行っている。なお、温度補償回路82は、温度検出用感圧素子80を発振させるための発振回路とともに、発振回路50と一体に形成した構成としても良い。
【0043】
上記構成による第3実施形態の流速センサー200は、動圧導入口又は静圧導入口から導入された圧力を測定する際、第1及び第2の収容空間14,15内の温度を第1及び第2の温度検出用感圧素子80a,80bにより検出している。この温度測定値が温度補償回路82に入力されて、収容容器14,15の設定温度又は初期温度と測定温度の差分に基づいて、圧力検出用の第1及び第2の感圧素子40a,40bの周波数温度特性を補正している。
【0044】
このような第3実施形態の流速センサー200によれば、温度変化による誤差を補正して、動圧と静圧の圧力検出精度を上げて圧力感度を改善することができる。また、温度センサーの取り付けが容易となり、センサー全体を小型化することができる。
なお、第1実施形態の流速センサー10に本実施形態の温度検出用感圧素子80と温度補償回路82を適用する構成としても良い。
【0045】
図8は第4実施形態に係る流速センサーの構成概略を示す断面図である。
第4実施形態に係る流速センサー300は、第1及び第2の収容空間14,15内にヒータ抵抗90及び温度制御回路92を取り付けている。その他の構成は、第3実施形態の流速センサー200の構成と同一であり、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
第4実施形態の流速センサー300は、隔壁13の一方の主面13aに、第1のヒータ抵抗90aと第1の温度制御回路92aを取り付けている。また隔壁13の他方の主面13bに、第2のヒータ抵抗90bと第2の温度制御回路92bを取り付けている。ヒータ抵抗90は、一例としてセラミック抵抗素子を用いることができる。第1の温度制御回路92aは、第1のヒータ抵抗90aと、第1の温度検出用感圧素子80aと、第1の発振回路50aと電気的に接続させている。第2の温度制御回路92bは、第2のヒータ抵抗90bと、第2の温度検出用感圧素子80bと、第2の発振回路50bと電気的に接続させている。
【0047】
上記構成による第4実施形態の流速センサー300は、ヒータ抵抗90によって第1及び第2の収容空間14,15内部を加熱すると共に、温度検出用感圧素子80によって第1及び第2の収容空間14,15内部の温度を検出している。温度制御回路92では、測定温度が、予め定めた設定温度の範囲となるようにヒータ抵抗90のヒータ加熱を制御している。そして、温度補償回路82では、温度検出用感圧素子80の測定値に基づいて、前記設定温度の範囲における微小な温度誤差を検知して、感圧素子40の周波数温度特性を補正している。
これにより、断熱部60と、断熱層70によって外部と断熱された第1及び第2の収容空間14,15の内部を所定の温度に維持することができる。
【0048】
このような第4実施形態の流速センサー300によれば、第1及び第2の収容空間14,15の内部空間を所定の設定温度に維持することができる。従って、測定環境の温度変化の影響を受けることがなく、動圧と静圧の圧力変化に伴う発振周波数の変化を正確に測定することができる。またハウジング120は、断熱部60及び断熱層70により外部からの温度の影響を受け難くなると共に、ヒータ抵抗90の熱の拡散を抑制することができる。従って、外部の温度変化の影響を受けることがなく、圧力変化に伴う発振周波数の変化を正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0049】
10,100,200,300,400………流速センサー、12,120………ハウジング、13………隔壁、13a………一方の主面、13b………他方の主面、14………第1の収容空間、15………第2の収容空間、20………ダイアフラム、20a………第1のダイアフラム、20b………第2のダイアフラム、20c………薄肉部、20d………支持部、20e………周縁部、22………受圧面、40………感圧素子、40a………第1の感圧素子、40b………第2の感圧素子、40c………第1の基部、40d………第2の基部、40e………振動腕、50………発振回路、52………キャップ、52a………第1のキャップ、52b………第2のキャップ、54………動圧導入口、56………静圧導入口、60………断熱部、70………断熱層、80………温度検出用感圧素子、80a………第1の温度検出用感圧素子、80b………第2の温度検出用感圧素子、82………温度補償回路、82a………第1の温度補償回路、82b………第2の温度補償回路、90………ヒータ抵抗、90a………第1のヒータ抵抗、90b………第2のヒータ抵抗、92………温度制御回路、92a………第1の温度制御回路、92b………第2の温度制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の中に曝される筐体と、
当該筐体に設けられた第1の収容空間及び第2の収容空間と、
前記筐体の先端部に設けられた動圧導入口と、
前記筐体の側面部に設けられた静圧導入口と、
を備え、
前記動圧導入口を前記流体の流れる方向に向け、
前記静圧導入口を前記流体の流れる方向とほぼ直交した方向に向けてなる流速センサーであって、
前記第1の収容空間の第1の開口部を封止する第1のダイアフラムと、
前記第2の収容空間の第2の開口部を封止する第2のダイアフラムと、
前記第1の収容空間に収容され、第1の感圧部と、当該第1の感圧部の両端に接続される一対の第1の基部と、を有し、前記一対の第1の基部を結ぶ方向を第1の検出軸とする第1の感圧素子と、
前記第2の収容空間に収容され、第2の感圧部と、当該第2の感圧部の両端に接続される一対の第2の基部と、を有し、前記一対の第2の基部を結ぶ方向を第2の検出軸とする第2の感圧素子と、
を有し、
前記第1の感圧素子は、前記第1の基部を前記第1のダイアフラムの支持部に接続し、前記第1の検出軸は前記第1のダイアフラムの受圧面に平行であり、
前記第2の感圧素子は、前記第2の基部を前記第2のダイアフラムの支持部に接続し、前記第2の検出軸は前記第2のダイアフラムの受圧面に平行であり、
前記第1のダイアフラムは、前記動圧導入口から導入された圧力を受圧し、
前記第2のダイアフラムは、前記静圧導入口から導入された圧力を受圧し、
前記第1及び第2のダイアフラムの受圧面側に断熱部が設けられたことを特徴とする流速センサー。
【請求項2】
前記筐体の側壁に断熱層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の流速センサー。
【請求項3】
前記第1の感圧素子は、前記一対の第1の基部の少なくとも何れか一方の基部に一体化された第1の温度検出用感圧素子を有し、
前記第2の感圧素子は、前記一対の第2の基部の少なくとも何れか一方の基部に一体化された第2の温度検出用感圧素子を有し、
前記第1及び第2の温度検出用感圧素子の検出値に基づいて前記第1及び第2の感圧素子の温度特性を補正する温度補償回路を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流速センサー。
【請求項4】
前記第1及び第2の収容空間に設置したヒータ抵抗と、
前記第1及び第2の温度検出用感圧素子の検出値に基づいて前記第1及び第2の収容空間の室内温度を制御する温度制御回路と、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の流速センサー。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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