説明

流量センサ

【課題】構造が簡単で量産性が高い流量センサを提供する。
【解決手段】流量センサは、水が内部を軸方向に流れる筒状の本体1と、本体1内に固定的に設けられた整流子2と、本体1内において上記軸方向に移動可能に配置され、水が本体1の内部を通過する流量に応じて静止位置から上記流体が流れる下流方向に移動する可動子3と、一端が整流子2に取り付けられ、かつ、他端が可動子3に取り付けられて、可動子3を静止位置に付勢するコイルバネ4と、可動子3が静止位置から上記軸方向に移動した距離を測定するレーザフォーカス方式変位センサ5とを備えている。この変位センサ5による距離の測定は非接触で行われるので、可動子3と変位センサ5の物理的な接続構造を設けなくてもよく、流量センサの構造を簡単できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洗濯機、食器洗浄機、浄水器、温水システム等に使用される流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、特開平6−201421号公報(特許文献1)に記載された従来の流量センサの概略断面図である。
【0003】
上記流量センサは、入口111,出口112を有する直線筒状の導管101と、この導管101内に設けられ、入口111側つまり上流側の端部が支持部材109を介して導管101に固定された軸102と、この軸102に対して摺動可能に設けられ、上流側に先細りとなる形状を有するプラグ103と、このプラグ103を上流側に付勢するコイルバネ104と、このコイルバネ104の下流側に設けられた環状の圧力板105と、導管101外に設けられた感知システム106とを備えている。
【0004】
上記導管101内では、圧力板105と支持部材109の間に位置するように、開口部1113を有するオリフィス板107が設けられている。また、上記導管101の感知システム106の取付箇所には貫通孔114が設けられている。この貫通孔114は径方向において圧力板105に対向している。
【0005】
上記コイルバネ104は、軸102の周囲に巻回されていて、上流側の端部がプラグ103に接続されている一方、下流側の端部が圧力板105に接続されている。
【0006】
上記圧力板105は、プラグ103にかかる流体圧をコイルバネ104を介して受ける。また、上記圧力板105は、可撓性を有する支持部162に支持されており、上記流体圧に応じて軸102方向に揺動可能になっている。このため、上記圧力板105が下流側に過度に揺動して、支持部162が損傷しないように、圧力板105の揺動を規制するストッパ108を軸102の下流側の端部に設けている。
【0007】
上記感知システム106は、ハウジング161、支持部162、ストレンゲージ163,164、ベローズ165および回路166を有している。上記支持部162は、圧力板105から径方向の外側に延び、貫通孔114を通って、ハウジング161内に入っている。上記ハウジング161内にある支持部162の端部には2つのストレンゲージ163,164を取り付けている。このハウジング161内の空間は、ベローズ165によって導管101内の空間と連通しないようにしている。また、上記ベローズ165と支持部162の間で殆ど抵抗を生じることなく支持部162が撓めるようにもしている。なお、上記ハウジング161内にある支持部162の端部は、ハウジング161に片持ち支持されている。
【0008】
上記従来の流量センサによれば、流体が入口111から出口112へ流れていない時には、プラグ103はコイルバネ104の付勢力によってオリフィス板107に押し付けられ、プラグ103の外周面が開口部113の内周縁に接触している。このような状態において、入口111から出口112へ向けて流体を流すと、プラグ103が、流体圧を受け、コイルバネ104の付勢力に逆らって、軸102方向の下流側に摺動する。これにより、上記プラグ103の外周面と開口部113の内周縁との間に隙間が生じ、流体が上記隙間を通って出口112に向かって流れる。このとき、上記プラグ103にかかる流体圧がコイルバネ104を介して圧力板105に作用するため、圧力板105が軸102方向の下流側に揺動し、支持部162が撓む。その結果、上記支持部162に歪みが生じるので、ストレンゲージ163,164が、支持部162の歪み量を検出し、この歪み量を示す歪み信号を回路166へ出力する。その結果、上記回路166が、上記歪み信号を、導管101内の流量を示す流量信号に変換するので、導管101内の流量を検出できる。
【0009】
このように、上記従来の流量センサでは、支持部162の歪み量に基づいて検出して、導管101内の流量を検出するので、プラグ103と支持部162を物理的に接続しなければならない。そして、上記プラグ103と支持部162の物理的な接続を得るには、導管101に貫通孔114を設け、貫通孔114に支持部162を挿通し、支持部162の一方の端部を導管101内に入れて圧力板105に連結しなければならない。したがって、上記従来の流量センサは、構造が複雑であるため、量産性が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−201421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の課題は、構造が簡単で量産性が高い流量センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の流量センサは、
流体が内部を軸方向に流れる筒状の本体と、
上記本体内に固定的に設けられた支持部材と、
上記本体内において上記軸方向に移動可能に配置され、上記流体が上記本体の内部を通過する流量に応じて静止位置から上記流体が流れる下流方向に移動する可動子と、
一端が上記支持部材に取り付けられ、かつ、他端が上記可動子に取り付けられて、上記可動子を上記静止位置に付勢するバネ部材と、
上記可動子が上記静止位置から軸方向に移動した距離を非接触で測定する距離センサと
を備えていることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、上記本体の内部に流体を流すと、本体の内部における流体の流量に応じて、可動子が静止位置から流体の下流方向に移動する。このとき、上記可動子が静止位置から本体の軸方向に移動した距離は、距離センサによって非接触で測定される。したがって、上記可動子が静止位置から本体の軸方向に移動した距離に基づいて、流体の流量を検出できる。
【0014】
このように、上記距離センサは、可動子が静止位置から本体の軸方向に移動した距離を非接触で測定するので、可動子と物理的に接続しなくてもよい。つまり、上記距離センサと可動子の物理的な接続は不要である。したがって、上記流量センサにおいて、距離センサと可動子の物理的な接続構造を無くして、構造を簡単にできるので、量産性を向上させることができる。
【0015】
一実施形態の流量センサでは、
上記距離センサは上記本体外に配置されている。
【0016】
上記実施形態によれば、上記距離センサは本体外に配置されているので、本体内に配置される場合に比べてメンテナンス性が良好である。
【0017】
また、上記距離センサを本体外に配置しても、距離センサは距離の測定を非接触で行うので、本体に貫通孔を設けて、距離センサの一部を上記貫通孔に挿通して可動子に物理的に接続しなくてもよいので、構造が複雑になるのを防ぐことができる。
【0018】
また、上記本体に貫通孔を設けなくてもよいので、その貫通孔のシール処理も不要である。したがって、本実施形態の流量センサの量産性も良好である。
【0019】
これに対して、図8の従来の流量センサでは、導管101内の流体が貫通孔114を介して感知システム106のハウジング161内に入るのを防ぐため、この貫通孔114をシール処理しなければならない。その結果、上記従来の流量センサの量産性は悪い。
【0020】
一実施形態の流量センサでは、
上記本体は略L字状の屈曲部を有し、
上記距離センサは、上記本体の略L字状の上記屈曲部に、上記可動子の移動方向に対向するように取り付けられている。
【0021】
上記実施形態によれば、上記距離センサは、本体の略L字状の屈曲部に、可動子の移動方向に対向するように取り付けられているので、可動子が静止位置から軸方向に移動した距離を正確かつ容易に測定できる。
【0022】
一実施形態の流量センサでは、
上記支持部材は、上記可動子の上流側に位置して上記流体の流れを軸方向に整流する整流子である。
【0023】
上記実施形態によれば、上記支持部材は、可動子の上流側に位置して流体の流れを軸方向に整流する整流子であるので、支持部材から可動子へ向かう流体が乱流状態になるのを防ぐことができる。したがって、上記可動子が静止位置から移動した距離と、本体内を流れる流体の流量との対応関係が崩れないようにして、その距離に基づいて流体の流量を正確に検出できる。
【0024】
これに対して、上記従来の流量センサでは、プラグ103の上流側に支持部材109を設けているが、この支持部材109は流体の流れを軸方向に整流するものではない。したがって、上記プラグ103を通過する流体が乱流状態となるので、支持部162の歪み量と、導管101内を流れる流体の流量との対応関係が崩れてしまう。その結果、上記支持部162の歪み量に基づいて検出して流量は検出しても、不正確な流量しか得られない。
【0025】
一実施形態の流量センサは、
上記距離センサが測定した上記距離に基づいて、上記流体の流量を導出する流量導出部を備えている。
【0026】
上記実施形態によれば、上記流量センサを他の機器に搭載する場合、上記流量センサは、距離センサが測定した距離に基づいて、流体の流量を導出する流量導出部を備えているので、上記流量導出部に相当するものを上記機器に設ける必要がない。したがって、上記流量センサの汎用性を高めることができる。
【0027】
一実施形態の流量センサでは、
上記可動子は、上記流体が内部を通過する構造を有する。
【0028】
上記実施形態によれば、上記本体の内部に流体を流すと、この流体は可動子の内部を通過するので、流体の流れが可動子で阻害されるのを防ぐことができる。
【0029】
一実施形態の流量センサでは、
上記可動子は上記本体の内面に対して隙間を有する。
【0030】
上記実施形態によれば、上記可動子は本体内で軸方向に移動するが、本体の内面と可動子との間には隙間があるので、本体および可動子が摩耗するのを防ぐことできて、本体および可動子の寿命を延ばすことができる。したがって、上記流量センサの耐久性を高くすることができる。
【0031】
これに対して、上記従来の流量センサでは、プラグ103が軸102に対して摺動することによって、プラグ103および軸102が摩耗するので、プラグ103および軸102の寿命は短くなる。したがって、上記従来の流量センサの耐久性は低いものである。
【0032】
一実施形態の流量センサでは、
上記距離センサは光学的に上記距離を測定する。
【0033】
上記実施形態によれば、上記距離センサは上記距離を光学的に測定するので、高精度な測定を行うことができる。
【0034】
一実施形態の流量センサでは、
上記距離センサは半導体レーザ素子を用い、
上記本体は、上記半導体レーザ素子が出射するレーザ光を透過し、
上記可動子は上記レーザ光を反射可能な端面を有する。
【0035】
上記実施形態によれば、上記可動子はレーザ光を反射可能な端面を有するので、この端面で反射されたレーザ光に基づいて、可動子が静止位置から軸方向に移動した距離を非接触で確実に測定することができる。
【0036】
一実施形態の流量センサでは、
上記距離センサは磁気的に上記距離を測定する。
【0037】
上記実施形態によれば、上記本体が不透明な部材からなって、距離センサが本体外に配置されている場合でも、上記距離センサは磁気的に上記距離を測定するので、距離を確実に測定できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の流量センサによれば、流体が内部を軸方向に流れる筒状の本体と、本体内において軸方向に移動可能に配置され、流体が本体の内部を通過する流量に応じて静止位置から流体が流れる下流方向に移動する可動子と、この可動子が静止位置から軸方向に移動した距離を非接触で測定する距離センサとを備えることによって、距離センサと可動子の物理的な接続構造を無くして、構造を簡単にできるので、量産性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の流量センサの斜視図である。
【図2】図2は上記第1実施形態の流量センサの模式断面図である。
【図3】図3は上記第1実施形態の可動子の概略正面図である。
【図4】図4は上記第1実施形態の可動子の概略側面図である。
【図5】図5は上記第1実施形態の可動子の概略斜視図である。
【図6】図6は図3のVI−VI線矢視の概略断面図である。
【図7】図7は本発明の第2実施形態の流量センサの模式断面図である。
【図8】図8は従来の流量センサの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の流量センサを図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0041】
〔第1実施形態〕
図1に、本発明の第1実施形態の流量センサの斜視図を示す。
【0042】
上記流量センサは、流体の一例としての水が内部を軸方向に流れる円筒状の本体1と、この本体1内に固定的に設けられた支持部材の一例としての整流子2と、上記本体1内に上記軸方向に移動可能に配置された可動子3と、この可動子3を静止位置に付勢するバネ部材の一例としてのコイルバネ4と、可動子3が上記静止位置から軸方向に移動した距離を非接触で測定する距離センサの一例としてのレーザフォーカス方式変位センサ5とを備えている。ここで、上記コイルバネ4には、例えばSUS304WPB(高強度ばね用ステンレス鋼線)のような耐食性のある素材が用いられる。また、上記静止位置は、水が本体1内を流れていない時の可動子3の位置に相当する。
【0043】
上記本体1は、一端に入口11を有する一方、他端に出口12を有する。この本体1は、後述する半導体レーザ素子51が出射する光を透過する材料(例えばポリカボネート等の樹脂材料)から成っている。また、上記本体1は、入口11と出口12との間に略L字状の屈曲部13を有している。この屈曲部13があることにより、本体1内の水流路も略L字状に屈曲している。
【0044】
図2に、上記水が流れる方向に平行な平面で流量センサを切った断面を模式的に示す。なお、図2では、上記可動子3のみ、上記平面とは異なる面で切った断面を示すようにしている。具体的には、図2の可動子3の模式断面は、可動子3の概略正面図である図3のII−II線矢視から見た模式断面に相当する。
【0045】
上記整流子2は、本体1の入口11近傍の内面に固定されていて、本体1の内面と間に隙間を有していない。また、上記整流子2は、水が内部を通過するようになっており、水の流れを軸方向に整流する。また、上記整流子2内の流路断面積は上流側から下流側まで略一定になっている。
【0046】
上記可動子3は、水が内部を通過すると共に、本体1の内面に対して隙間を有して、水が本体1の内部を通過する流量に応じて上記静止位置から水の下流方向に移動する。より詳しくは、上記本体1の屈曲部13近傍の内径は可動子3の外径よりも0.5mm大きく設定されており、本体1の屈曲部13近傍の内周面と可動子3の外周面との間には全周にわたって略均等な隙間が形成されている。この可動子3は、後述する半導体レーザ素子51が出射するレーザ光を反射可能な材料(例えばポリカボネート等の樹脂材料)から成っている。また、上記可動子3の下流側の端部内の流路断面積は、可動子3の上流側の端部内の流路断面積に比べて小さくなっている。
【0047】
上記コイルバネ4の上流端は整流子2の下流側の端面に接続されている。一方、上記コイルバネ4の下流端は可動子3の上流側の端面に接続されている。ここで、上記コイルバネ4と可動子3と整流子2との間の接続の耐久性が必要となるので、例えば可動子3及び整流子2にコイルバネ4の一部をインサート成型することによって接続される。
【0048】
上記変位センサ5は本体1外に配置されている。より詳しくは、上記変位センサ5は、本体1の略L字状の屈曲部13の外面に、可動子3の移動方向に対向するように取り付けられている。また、上記変位センサ5は、半導体レーザ素子51、受光素子52、ハーフミラー53、コリメートレンズ54、対物レンズ55、音叉56対物レンズ位置検出部57および変位検出部58などを有する周知の変位センサである。この周知の変位センサとしては、例えば株式会社キーエンス製のLT−9000シリーズの変位センサがある。
【0049】
上記半導体レーザ素子51から出射されたレーザ光は、ハーフミラー53およびコリメートレンズ54を順次通過した後、音叉56により高速振動する対物レンズ55を通過して、可動子3の拡径部33(図3,図6参照)の下流側の端面に照射される。この端面で反射されたレーザ光は、対物レンズ55およびコリメートレンズ54を通過した後、ハーフミラー53で進む方向を変えて、受光素子52に入射する。上記対物レンズ位置検出部57によって検出される、この入射時の対物レンズ55の位置に基づいて、可動子3が上記静止位置から軸方向に移動した距離(以下、「可動子3の変位量」と言う。)が変位検出部58によって検出される。これにより、上記可動子3の変位量を示す信号が変位センサ5から流量導出部6に出力される。
【0050】
また、上記流量センサは、ソフトウェアからなる流量導出部6を備えている。この流量導出部6は、上記変位センサ5からの上記信号に基づいて、本体1内における水の流量を導出する。このとき、上記流量の導出は下記の変換テーブルを用いて行われる。

【0051】
なお、上記変換テーブルは、予め、実験やシミュレーションなどで得たデータから作成し、流量導出部6に持たせている。
【0052】
図3は上記可動子3の概略正面図であり、また、図4は上記可動子3の概略側面図であり、また、図5は上記可動子3の概略斜視図であり、図6は図3のVI−VI線矢視の概略断面図である。
【0053】
上記可動子3は、図3に示すように、円筒部31と、この円筒部31の中心軸を通るように設けられたボス部32とを有している。このボス部32の下流側の端部は、図3,図6に示すように、下流側に向かって徐々に拡径する円錐状の拡径部33を形成している。また、上記ボス部32は第1仕切壁34、第2仕切壁35および第3仕切壁36を介して円筒部31と一体化している。また、図3,図5に示すように、上記円筒部31内の空間は、第1仕切壁34、第2仕切壁35および第3仕切壁36で3つに分割されており、この3つの空間のそれぞれを水が通過するようになっている。また、図4〜図6に示すように、上記可動子3の上流側の端面は、径方向の中心が上流側に向かって突出するような形状に形成されている。より詳しくは、上記円筒部31、ボス部32および第1仕切壁34、第2仕切壁35および第3仕切壁36のそれぞれの上流側の端面は、径方向外側が径方向内側よりも下流側に位置するように、円筒部31の中心軸に対して傾斜している。また、上記円筒部31の上流側の端面と第1仕切壁34、第2仕切壁35および第3仕切壁36の上流側の端面とが、互いに滑らかに接続されており、かつ、第1仕切壁34、第2仕切壁35および第3仕切壁36の上流側の端面とボス部32の上流側の端面とが、互いに滑らかに接続されている。この構造により、乱流が発生しにくくなり、流量測定の誤差が少なくなる。
【0054】
上記構成の流量センサによれば、上記本体1の入口11に水を供給すると、この水は、整流子2および可動子3を順次通過した後、出口12から本体1外に流出する。このとき、上記整流子2を通過した水は、可動子3の円筒部31内の3つの空間を通過すると共に、可動子3の円筒部31の外周面と本体1の内周面との間の隙間を通過する。これにより、上記可動子3は、水の動圧によって、コイルバネ4の付勢力に抗して静止位置から変位センサ5側へ移動する。この可動子3の変位量は変位センサ5によって非接触で検出される。そして、上記変位センサ5が、可動子3の変位量を示す信号を流量導出部6へ出力する。その結果、上記流量導出部6が、変位センサ5からの上記信号に基づいて、本体1内における水の流量を導出する。
【0055】
このように、上記変位センサ5が可動子3の変位量を非接触で検出し、可動子3と変位センサ5は物理的に分離されている。したがって、上記可動子3と変位センサ5の物理的な接続構造を設けなくてもよいので、構造を簡単できる。その結果、上記流量センサの量産性を高めることができる。
【0056】
また、上記可動子3が整流子2と変位センサ5との間で移動を繰り返したとしても、可動子3の円筒部31の外周面と本体1の内周面との間に隙間があるので、可動子3の円筒部31の外周面や、本体1の内周面において、摩耗が生じるのを防ぐことができる。したがって、上記流量センサの機械寿命を延ばすことができる。
【0057】
また、上記変位センサ5は本体1外に設けているので、本体1内に設けるよりも、良好なメンテナンス性が得られる。
【0058】
また、上記変位センサ5を本体1外に設けているが、変位センサ5による可動子3の変位量の検出は非接触で行われるので、図8の貫通孔114のような貫通孔を本体1に設けなくてもよい。また、上記変位センサ5の一部を上記貫通孔を介して可動子3に物理的に接続しなくてもよい。したがって、上記流量センサの構造が複雑になるのを防ぐことができる。
【0059】
また、上記貫通孔を本体1に設けなくてもよいので、その貫通孔のシール処理も不要である。したがって、上記流量センサの量産性の低下を回避できる。
【0060】
また、上記変位センサ5は、本体1の略L字状の屈曲部13に、可動子3の移動方向に対向するように取り付けられているので、可動子3の移動方向の変位量を正確かつ容易に検出できる。
【0061】
また、上記可動子3の上流側に整流子2を設けているので、整流子2と可動子3との間で乱流が発生するのを防ぐことができる。したがって、上記可動子3の変位量と水の流量との対応関係が崩れないようにして、その変位量に基づいて水の流量を正確に検出できる。
【0062】
また、上記整流子2がコイルバネ4を介して可動子3を支持するので、可動子3を支持するための部材を整流子2以外に本体1内に設けなくてもよい。したがって、上記流量センサの構造の複雑化を抑制できる。
【0063】
また、上記流量センサを他の機器に搭載する場合、上記流量センサは、水の流量を導出する流量導出部6を備えているので、上記流量導出部6に相当するものを上記機器に設ける必要がない。したがって、上記流量センサの汎用性を高めることができる。
【0064】
また。上記変位センサ5は距離の測定を光学的に行うので、その測定を高精度にすることができる。
【0065】
また、上記可動子3の拡径部33の下流側の端面は、半導体レーザ素子51が出射するレーザ光を反射可能であるから、この端面で反射されたレーザ光に基づいて、可動子3が静止位置から軸方向に移動した距離を非接触で確実に測定することができる。
【0066】
上記第1実施形態では、流量センサで水の流量を検出していたが、流量センサで検出するのは水の流量に限定されない。例えば、上記流量センサによって、ガソリン等の液体の流量を検出してもよいし、あるいは、空気等の気体の流量を検出してもよい。
【0067】
上記第1実施形態の円筒状の本体1に換えて、例えば四角筒状の本体1を用いてもよい。この四角筒状の本体1を用いる場合、円筒部31を四角筒部に変更してもよい。
【0068】
上記第1実施形態では、本体1内の水流路が略L字状に屈曲していたが、略へ字状または略レ字状に屈曲するようにしてもよい。あるいは、上記本体1内の水流路が湾曲部を有するようにしてもよいし、本体1内の水流路が直線状になるようにしてもよい。
【0069】
上記第1実施形態では、コイルバネ4で可動子3を静止位置に付勢していたが、コイルバネ以外のバネ部材で可動子3を静止位置に付勢してもよい。
【0070】
上記第1実施形態では、本体1外に変位センサ5を設けていたが、本体1内に変位センサ5と同様の変位センサを設けてもよい。
【0071】
上記第1実施形態の整流子2に換えて、例えば棒状の支持部材を用いてもよい。この支持部材を用いる場合、コイルバネ4の上流端を上記支持部材に接続すればよい。
【0072】
上記第1実施形態では、整流子2によって可動子3をコイルバネ4を介して支持していたが、整流子2と可動子3との間に設けた支持部材によって可動子3をコイルバネ4を介して支持するようにしてもよい。
【0073】
上記第1実施形態では、変位センサ5外に流量導出部6を設けていたが、変位センサ5内に流量導出部6と同様の流量導出部を設けてもよい。
【0074】
上記第1実施形態では、上記流量センサが流量導出部6を備えていたが、流体センサを搭載する他の機器が流量導出部6と同様の流量導出部を備えてもよい。
【0075】
上記第1実施形態では、本体1の屈曲部13近傍の内径と可動子3の外径との差を0.5mmとしていたが、この差は0.5mmに限定されないことは言うまでもない。
【0076】
上記第1実施形態では、可動子3は、本体1の内面に対して隙間を有していたが、本体1の内面に対して隙間を有さないで、本体1の内面に対して摺動するようにしてもよい。このようにする場合、上記可動子3に、水が内部を通過する構造を設ける。
【0077】
上記第1実施形態では、可動子3は、水が内部を通過する構造を有していたが、水が内部を通過する構造を有さないようにしてもよい。このようにする場合、上記可動子3は、本体1の内面に対して隙間を有するようにする。
【0078】
〔第2実施形態〕
図7に、本発明の第2実施形態の流量センサの模式断面図を示す。この模式断面図は、水が流れる方向に平行な平面で流量センサを切った断面を模式的に示すものである。
【0079】
上記流量センサは、上記第1実施形態と異なる方式で可動子3の変位量を検出する点、つまり、レーザフォーカス方式変位センサ5を備えずに、磁気式変位センサ205を備えている点と、可動子3の拡径部33の下流側の端面に磁石214を取り付けている点とだけが上記第1実施形態の流量センサと異なっている。したがって、図7において、図2に示した第1実施形態の流量センサの構成部と同一構成部は、図2における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0080】
上記変位センサ205は本体1外に配置されている。より詳しくは、上記変位センサ205は、本体1の略L字状の屈曲部13の外面に、可動子3の移動方向に対向するように取り付けられている。また、上記変位センサ205は、磁石214の磁界やその変化に基づいて、可動子3が静止位置から軸方向に移動した距離(以下、「可動子3の変位量」と言う。)を検出する周知の変位センサ205である。また、上記変位センサ205は、可動子3の変位量を示す信号を流量導出部6へ出力する。
【0081】
上記構成の本実施形態の流量センサによれば、変位センサ205によって可動子3の変位量を検出するので、レーザ光を透過しない材料で本体1を形成しても、可動子3の変位量を確実に検出できる。
【0082】
また、上記レーザ光を透過しない材料で本体1を形成することができるので、流量センサの設計の自由度を広げることができる。
【0083】
また、本実施形態の流量センサも、上記第1実施形態の流量センサと同様の作用効果を奏する。
【0084】
上記第2実施形態の可動子3に換えて、磁性材料からなる可動子を用いてもよい。この場合、上記可動子に磁石を取り付けなくても、変位センサ205は可動子の変位量を検出できる。
【0085】
本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記第1,第2実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1実施形態の変形例のように、上記第2実施形態を変形してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…本体
2…整流子
3…可動子
4…コイルバネ
5…レーザフォーカス方式変位センサ
6…流量導出部
11…入口
12…出口
13…屈曲部
31…円筒部
32…ボス部
33…拡径部
34…第1仕切壁
35…第2仕切壁
36…第3仕切壁
51…半導体レーザ素子
52…受光素子
53…ハーフミラー
54…コリメートレンズ
55…対物レンズ
56…音叉
205…磁気式変位センサ
214…磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が内部を軸方向に流れる筒状の本体と、
上記本体内に固定的に設けられた支持部材と、
上記本体内において上記軸方向に移動可能に配置され、上記流体が上記本体の内部を通過する流量に応じて静止位置から上記流体が流れる下流方向に移動する可動子と、
一端が上記支持部材に取り付けられ、かつ、他端が上記可動子に取り付けられて、上記可動子を上記静止位置に付勢するバネ部材と、
上記可動子が上記静止位置から軸方向に移動した距離を非接触で測定する距離センサと
を備えていることを特徴とする流量センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の流量センサにおいて、
上記距離センサは上記本体外に配置されていることを特徴とする流量センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の流量センサにおいて、
上記本体は略L字状の屈曲部を有し、
上記距離センサは、上記本体の略L字状の上記屈曲部に、上記可動子の移動方向に対向するように取り付けられていることを特徴とする流量センサ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の流量センサにおいて、
上記支持部材は、上記可動子の上流側に位置して上記流体の流れを軸方向に整流する整流子であることを特徴とする流量センサ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の流量センサにおいて、
上記距離センサが測定した上記距離に基づいて、上記流体の流量を導出する流量導出部を備えていることを特徴とする流量センサ。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の流量センサにおいて、
上記可動子は、上記流体が内部を通過する構造を有することを特徴とする流量センサ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の流量センサにおいて、
上記可動子は上記本体の内面に対して隙間を有することを特徴とする流量センサ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の流量センサにおいて、
上記距離センサは光学的に上記距離を測定することを特徴とする流量センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の流量センサにおいて、
上記距離センサは半導体レーザ素子を用い、
上記本体は、上記半導体レーザ素子が出射するレーザ光を透過し、
上記可動子は上記レーザ光を反射可能な端面を有することを特徴とする流量センサ。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の流量センサにおいて、
上記距離センサは磁気的に上記距離を測定することを特徴とする流量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229943(P2012−229943A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97188(P2011−97188)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】