説明

流量測定装置およびその精度確認方法

【課題】処理が迅速であり、耐久性が高く、測定精度の高い流量測定装置を提供する。
【解決手段】電空レギュレータ21から供給される圧縮空気によって、ダイヤフラム33は均一かつ微小に変形し、ダイヤフラム33の変形に応じた流量の試験流体が測定通路へ供給される。これにより、流体供給装置30から測定通路へ供給される試験流体は精密に流量が調整される。したがって、流量精度確認装置20の精度が向上し、流量測定装置による燃料噴射弁の漏れ測定精度が向上する。燃料噴射弁の漏れを測定するとき、ダイヤフラム33は電空レギュレータ21から供給された圧縮空気から受ける力と自身の弾性変形力とが釣り合う位置で停止する。そのため、ダイヤフラム33の移動にともなう測定通路の容積の変化は生じない。これにより、燃料噴射弁1の漏れの測定時に、測定通路から流量精度確認装置20を切り離す必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物から流出する流体量を検出する流量測定装置に関し、特に流量測定装置の精度を確認するための機構を備える流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物から流出する流体量を検出する流量測定装置として、例えば特許文献1、2、3に開示されている装置が公知である。特に、近年では、被測定物から流出する流体量の測定精度の向上が求められている。そこで、特許文献3では、被測定物から漏れた流体によって測定通路に充填された気泡を含む液体を移動させ、気泡の移動を検出することにより被測定物から流出する微量の流体量の検出を図っている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−240729号公報
【特許文献2】特開平8−43242号公報
【特許文献3】特開2005−172735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、流量測定装置の測定精度の向上を図るほど、測定精度の基準となるマスターの精度も高める必要がある。従来は、例えばマイクロシリンジや微細なガラス管を用いて一定量の流体を流量測定装置に供給することにより、測定精度の基準を設定している。しかし、マイクロシリンジやガラス管を用いる場合、マイクロシリンジおよびガラス管自身の容積やこれらからの流体の漏れなどにより、測定精度の誤差要因となる。そのため、被測定物からの流体の漏れを測定する場合、マイクロシリンジやガラス管を流量測定装置の測定回路から切り離す必要がある。その結果、精度の確認を行った後、被測定物の測定を開始するまで長時間を必要とし、測定処理の迅速性に欠けるという問題がある。
【0005】
また、マイクロシリンジは、シリンダとピストンとの間に摺動部を有する。そのため、摺動部の劣化によって、基準となる流体の流量が経時的に変化する。その結果、測定精度の長期的な安定性が低いという問題がある。
さらに、マイクロシリンジやガラス管は、使用とともに汚損が生じるため、基準となる流量が変化する。そのため、特許文献1に開示されているように洗浄のためのガスを供給する機構などを必要とし、構造の複雑化を招くという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献2には、ダイヤフラムを用いて一定量の流体を供給する技術が開示されている。しかし、ダイヤフラムの変形速度を把握することは困難であるため、流量を正確に設定することができない。その結果、微量の流体量の検出への適用は困難である。また、特許文献2に開示されている発明の場合、ダイヤフラムの変形量は制御されないため、供給される流体の流量を微小に変化させることは困難である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、処理が迅速であり、耐久性が高く、測定精度の高い流量測定装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、耐久性が高く、測定精度の高い流量測定装置の精度確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明では、試験流体を供給する流体供給手段のダイヤフラムは、検出手段によって変形量が検出される。検出されたダイヤフラムの変形量は、算出手段によって試験流体の流量として算出される。すなわち、算出手段は、ダイヤフラムの変形量から試験流体の流量を直接算出する。そのため、流体供給手段から測定通路に供給される試験流体の流量は、検出手段でダイヤフラムの変形量を検出することにより、高精度に設定される。したがって、測定精度を高めることができる。
【0009】
また、請求項1記載の発明では、流体供給手段はダイヤフラムを有しているため、摺動部分などがなく、流体供給手段における流体の漏れは生じない。そして、ダイヤフラムの変形量から試験流体の流量を直接算出するため、ダイヤフラムの微小な移動によって試験流体の流量が高精度に調整される。これにより、ダイヤフラムを有する流体供給手段は小型化される。そのため、測定通路から流体供給手段までに存在する試験流体は、微量となり、測定精度への影響が低減される。その結果、被測定物の測定時に流体供給手段を切り離す必要はない。したがって、精度の確認と被測定物の測定とを短時間に切り換えることができ、処理を迅速に行うことができる。また、流量供給手段に摺動部がないため、経時的な精度の安定性が高く、耐久性を向上することができる。
【0010】
請求項2記載の発明では、検出手段はダイヤフラムと非接触である。これにより、検出手段がダイヤフラムの移動を制限することはない。したがって、ダイヤフラムの微小な変形が確保され、流量の設定精度を高めることができる。
請求項3記載の発明では、検出手段は金属製のダイヤフラムの静電容量を検出する静電センサである。そのため、静電センサは、ダイヤフラムと接触することなく、ダイヤフラムの微小な変形量を検出する。したがって、ダイヤフラムの変形が妨げられず、流量の設定精度を高めることができる。
【0011】
請求項4記載の発明では、ダイヤフラムを変形させる駆動手段は電空レギュレータである。これにより、ダイヤフラムは、電空レギュレータから供給される圧縮空気によって駆動される。電空レギュレータは、電気指令によってダイヤフラムに供給する空気すなわちダイヤフラムに加える力が制御される。したがって、ダイヤフラムの変形量を高精度に設定することができる。また、空気によってダイヤフラムを変形させることにより、ダイヤフラムは全体が均一に変形する。したがって、ダイヤフラムの変形によって測定通路に供給される流体の流量を高精度に制御することができる。
【0012】
請求項5記載の発明では、測定通路に試験流体を供給するダイヤフラムの変形量と、測定通路を移動する試験流体の移動量とから、測定装置の精度が確認される。ダイヤフラムの変形量からは試験流体の流量が算出される。これにより、ダイヤフラムの変形量と、測定通路に供給される試験流体の流量との関係が確認される。そのため、これらを比較することにより、測定装置の精度が所定の範囲にあるか否かが確認される。したがって、測定装置の精度を確認する際の精度を高めることができる。
【0013】
また、請求項5記載の発明では、ダイヤフラムにより試験流体を供給するため、摺動部分などがなく、試験流体の漏れは生じない。そして、ダイヤフラムの変形量から試験流体の流量を算出するため、ダイヤフラムの微小な移動によって試験流体の流量が高精度に調整される。したがって、経時的な精度の安定性が高く、耐久性を向上することができる。
【0014】
請求項6記載の発明では、ダイヤフラムの変形量はダイヤフラムと非接触で検出される。これにより、ダイヤフラムの変形を検出する際に、ダイヤフラムの移動が制限されることはない。したがって、ダイヤフラムの微小な変形が確保され、流量の設定精度を高めることができる。
請求項7記載の発明では、金属製のダイヤフラムの静電容量を検出している。そのため、ダイヤフラムの微小な変形量は、ダイヤフラムと非接触で検出される。したがって、ダイヤフラムの変形が妨げられず、流量の設定精度を高めることができる。
請求項8記載の発明では、流体供給工程においてダイヤフラムは空気の圧力によって変形する。これにより、ダイヤフラムは、全体が均一に変形する。したがって、ダイヤフラムの変形によって測定通路に供給される流体の流量を高精度に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態による流量測定装置を図2に示す。
被測定物としての燃料噴射弁1は、例えばガソリンエンジンに用いられる。流量測定装置10は、閉弁時における燃料噴射弁1のシート部からの流体の漏れ量すなわち燃料の漏れ量を測定する。
流量測定装置10は、通路部材11、通路部材12、通路部材13、通路部材14、通路部材15、カメラ16、流量精度確認装置20および算出装置17を備えている。
【0016】
通路部材11、通路部材12、通路部材13、通路部材14、通路部材15は、測定通路50を形成している。測定通路50は、通路部材11に形成される測定通路51と、通路部材12および通路部材13により気泡60の燃料噴射弁1側に形成される測定通路52と、通路部材15により気泡60の燃料噴射弁1と反対側に形成される測定通路53とを有している。光透過性の材質で形成されている通路部材14は、測定通路52と測定通路53とを接続する測定通路54を形成している。測定通路50には、燃料噴射弁1から漏れる流体量を測定するための試験流体が充填されている。試験流体としては、例えば水や油などの液体を適用することができる。なお、気泡60による検出を行わない場合、試験流体には例えば空気などの気体を適用することもできる。測定通路50の一方の端部を形成する通路部材11には、図示しないクランプなどによって燃料噴射弁1が取り付けられる。燃料噴射弁1を取り付けた状態で試験流体が漏れないように、各部材の接続個所はシールされている。
【0017】
通路部材14は、例えばガラスあるいはアクリルなどの光透過性の材質で形成されている。通路部材14が形成する測定通路54には、充填された試験流体中に空気で形成された気泡60が注入されている。測定通路54の断面形状は円形状である。測定通路54の通路径は、測定通路54で気泡60が上方に浮遊しない大きさ、例えば1mm以下に設定することが望ましい。測定通路54の通路径の最小値は、気泡60が測定通路54を移動可能な通路径の最小値で決定される。加工が可能であれば、数μm程度の通路径であっても気泡は測定通路54を移動可能である。
【0018】
通路部材14の外周側にはカメラ16が設置されている。カメラ16は、通路部材14が形成する測定通路54における気泡60の動きを撮影する。通路部材14は、光透過性の材質で形成されている。そのため、カメラ16は、通路部材14を通して通路部材14が形成する測定通路54の気泡60を撮影する。カメラ16は、算出装置17に接続されている。カメラ16が撮影した画像は、電子データとして算出装置17に出力される。
【0019】
燃料噴射弁1のシート部に漏れが生じる場合、図示しない流体供給装置から燃料噴射弁1に流体を供給すると、燃料噴射弁1から生じた漏れによって測定通路50に充填されている試験流体が移動する。これにより、試験流体に注入されている気泡60は、測定通路54を移動する。この気泡60の移動量を測定することにより、燃料噴射弁1のシート部からの微量の流体の漏れが測定される。
【0020】
通路部材12は、測定通路52とともに、測定通路52から分岐する供給通路70を形成している。供給通路70は、測定通路50から分岐し、流量精度確認装置20へ連通している。流量精度確認装置20は、基準となる流量の試験流体を測定通路50へ供給する。
流量精度確認装置20は、図1に示すように駆動手段としての電空レギュレータ21および流体供給手段としての流体供給装置30とを備えている。電空レギュレータ21は、供給源22から流体供給装置30へ供給する圧縮空気の圧力を調整する。電空レギュレータ21は、算出装置17に接続している。算出装置17は、所定のソフトウェアにしたがって作動する例えばパーソナルコンピュータである。算出装置17は、電空レギュレータ21へ電気信号を出力する。電空レギュレータ21は、算出装置17から出力された電気信号にしたがって、供給源22から流体供給装置30へ供給する圧縮空気の圧力を制御する。供給源22は、例えば空気を圧縮するコンプレッサなどを有している。
【0021】
流体供給装置30は、本体容器31、32およびダイヤフラム33を有している。ダイヤフラム33は、本体容器31、32が形成する空間の内部に収容されている。ダイヤフラム33は、金属によって板状に形成されている。これにより、ダイヤフラム33は、本体容器31、32が形成する容器の内部で弾性変形可能である。
【0022】
本体容器31、32が形成する空間は、ダイヤフラム33によって電空レギュレータ21側の空間34と、測定通路50側の空間35とに仕切られている。電空レギュレータ21側の空間34は、電空レギュレータ21と流体供給装置30とを接続する接続通路23を経由して電空レギュレータ21に連通している。これにより、電空レギュレータ21で圧力が調整された圧縮空気は、流体供給装置30の空間34に供給される。
【0023】
測定通路50側の空間35は、供給通路70を経由して測定通路50に連通している。電空レギュレータ21から空間34へ圧縮空気が供給されると、圧縮空気の圧力によってダイヤフラム33が変形する。このとき、圧縮空気は、ダイヤフラム33を空間35側へ押し付ける。そのため、ダイヤフラム33は、空間35側へ変形する。ダイヤフラム33が変形すると、空間35の容積は低減する。空間35は測定通路50に連通しているため、空間35は試験流体によって満たされている。その結果、空間34へ供給された圧縮空気によってダイヤフラム33が変形すると、空間35の容積の変化量に対応する量の試験流体が供給通路70を経由して測定通路50へ供給される。
【0024】
流量精度確認装置20は、ダイヤフラム33の変形量を検出する検出手段としての静電センサ40を備えている。静電センサ40は、ダイヤフラム33の静電容量の変化を検出する。静電センサ40がダイヤフラム33の静電容量の変化を検出することにより、静電センサ40はダイヤフラム33と接触することなくダイヤフラム33までの距離、すなわちダイヤフラム33の変形量を検出する。これにより、静電センサ40とダイヤフラム33との接触によって、ダイヤフラム33の変形が妨げられることはない。
【0025】
静電センサ40は、算出手段としての算出装置17に接続している。静電センサ40は、ダイヤフラム33の変形にともなう静電容量の変化を検出し、検出した静電容量の変化を電子データとして算出装置17へ出力する。算出装置17は、あらかじめダイヤフラム33の変形量すなわち静電容量の変化と、測定通路50へ供給される試験流体の流量との関係を例えばマップとして記録している。これにより、算出装置17は、静電センサ40が検出したダイヤフラム33の静電容量の変化から、測定通路50へ供給された試験流体の流量を算出する。そして、算出された流量とカメラ16で撮影した気泡60の移動量とから、流量測定装置10における気泡60の移動量と、流体供給装置30から測定通路50へ供給された試験流体の流量との関係が所定の範囲内にあるか否かを判断する。
【0026】
次に、上記の構成による流量測定装置10の精度確認の手順について説明する。
(1)算出装置17は、あらかじめ設定された信号を電空レギュレータ21へ出力する。このとき、算出装置17から電空レギュレータ21へ出力される信号は、電空レギュレータ21から流体供給装置30へ供給される圧縮空気の圧力を指示するものである。
【0027】
(2)電空レギュレータ21は、算出装置17から出力された信号に基づいて流体供給装置30へ圧縮空気を供給する。このとき、電空レギュレータ21は、供給源22から供給された一定圧力の圧縮空気の圧力を調整し、算出装置17からの指示に応じた圧力の空気を流体供給装置30へ供給する。
(3)電空レギュレータ21から流体供給装置30へ圧縮空気が供給されると、空間34の圧力は上昇し、空間34に供給された空気はダイヤフラム33を空間35側へ押し付ける。これにより、ダイヤフラム33は、図1の破線に示すように空間35側へ変形する。このとき、ダイヤフラム33の電空レギュレータ21側の空間34には、電空レギュレータ21から所定の圧力の空気が充満する。そのため、ダイヤフラム33には、空間34の空気から均一に力が加わる。その結果、ダイヤフラム33は、偏りなく均一に変形する。
【0028】
(4)ダイヤフラム33が変形すると、空間35に充填されている試験流体はダイヤフラム33によって供給通路70を経由して測定通路50へ押し出される。このとき、静電センサ40は、ダイヤフラム33の変形量に対応する静電容量を検出し、検出した静電容量を算出装置17へ電子データとして出力する。
(5)ダイヤフラム33によって空間35から供給通路70へ押し出された試験流体は、測定通路50へ供給される。試験流体が測定通路50へ供給されると、測定通路50の流体には流れが生じる。これにより、通路部材14が形成する測定通路54にある気泡60は、試験流体の流れによって測定通路54の内部を移動する。
【0029】
(6)カメラ16は、測定通路50における気泡60の移動を撮影し、電子データとして算出装置17へ出力する。算出装置17は、静電センサ40から出力されたダイヤフラム33の静電容量の変化から、ダイヤフラム33の変形量を算出するとともに、カメラ16で撮影された気泡60の移動量から試験流体の流量を算出する。
【0030】
(7)算出装置17は、算出されたダイヤフラム33の変形量と、カメラ16で撮影した画像データに基づいて算出した試験流体の流量とを比較し、その相対的な数値があらかじめ設定された所定の範囲内にあるか否かを判断する。判断の結果、数値が所定内の範囲にあれば流量測定装置10の精度は十分であり、数値が所定の範囲を超えていれば流量測定装置10の精度は不十分である。このとき、流量測定装置10の精度が十分であれば、被測定物である燃料噴射弁1の測定に移行する。一方、流量測定装置10の精度が不十分であれば、算出装置17は算出されたダイヤフラム33の変形量と試験流体の流量とから補正値を作成し、補正値を用いて燃料噴射弁1の測定を行ってもよい。
【0031】
(8)燃料噴射弁1の測定に移行すると、燃料噴射弁1には、図示しない流体供給装置から試験流体が供給される。燃料噴射弁1のシート部に漏れがあると、測定通路50に充填されている試験流体は移動し、試験流体の移動にともなって気泡60が移動する。カメラ16は、測定通路54における気泡60の移動を撮影し、電子データとして算出装置17へ出力する。算出装置17は、気泡60の移動量から燃料噴射弁1の漏れ量を算出する。
【0032】
このとき、電空レギュレータ21は、流体供給装置30へ供給する圧縮空気の圧力を一定に維持している。電空レギュレータ21から流体供給装置30へ供給される圧縮空気の圧力が供給通路70の圧力に比較して十分に大きいとき、ダイヤフラム33は自らの弾性変形力と接続通路23における圧縮空気から受ける力とが釣り合う位置で停止する。一方、ダイヤフラム33の弾性変形力が供給通路70における試験流体の圧力から受ける力よりも十分に大きいとき、すなわちダイヤフラム33が硬いとき、電空レギュレータ21から流体供給装置30へ圧縮空気を供給しなくても、ダイヤフラム33は自身の弾性変形力によって中立位置に戻り、中立位置で停止する。
【0033】
このように、本発明の一実施形態では、燃料噴射弁1の漏れを測定するとき、ダイヤフラム33は停止する。そのため、燃料噴射弁1の漏れの測定時にダイヤフラム33の移動にともなう測定通路50の容積の変化は生じない。また、流体供給装置30は本体容器31、32でダイヤフラム33を挟み込む構成のため、供給通路70および空間35に充填されている試験流体に漏れが生じることはない。これにより、燃料噴射弁1の漏れの測定時に、測定通路50から流量精度確認装置20を切り離す必要はない。したがって、流量測定装置10の精度の確認と、燃料噴射弁1の漏れの測定とを継続して実施することができ、測定処理を迅速に行うことができる。
【0034】
また、本発明の一実施形態では、流体供給装置30のダイヤフラム33は電空レギュレータ21から供給される圧縮空気によって均一に変形し、このダイヤフラム33の変形に応じた流量の試験流体が測定通路50へ供給される。ダイヤフラム33の変形量は、静電センサ40によってダイヤフラム33と接触することなく検出される。これにより、測定通路50へ供給される試験流体の流量は、ダイヤフラム33の変形に基づいて直接算出される。電空レギュレータ21によってダイヤフラム33を変形させることにより、ダイヤフラム33の微小な変形が可能となり、測定通路50へ供給される試験流体の微小な調整が可能となる。その結果、測定通路50には微量の試験流体が高精度に制御されつつ供給され、その試験流体の流量は高精度に検出される。したがって、流量精度確認装置20の精度が向上し、流量測定装置10による燃料噴射弁1の漏れ測定精度を向上することができる。
【0035】
さらに、本発明の一実施形態では、試験流体はダイヤフラム33の変形によって測定通路50へ供給される。そのため、流量精度確認装置20には、摺動する部分がなく、流量精度確認装置20から測定通路50へ供給される試験流体の流量が経時的に変化することはない。したがって、流量測定装置10の耐久性を高めることができる。
【0036】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明の一実施形態では、ダイヤフラム33を駆動する駆動手段として電空レギュレータ21を適用する例について説明した。しかし、駆動手段は、電空レギュレータ21に限らず、例えばダイヤフラム33を部材によって直接押し、機械的にダイヤフラム33を変形させる機構であってもよい。また、カメラ16で気泡60の位置を検出する代わりに、レーザ変位計および目視によって気泡60の位置を検出してもよい。
【0037】
また、ダイヤフラム33を検出する検出手段は、非接触の静電センサ40に限らず、ダイヤフラム33との接触によってダイヤフラム33の変形を検出するセンサであってもよい。また、測定通路50は、通路部材11、通路部材12、通路部材13、通路部材14および通路部材15により形成する例について説明した。しかし、測定通路50を形成する通路部材の構成は任意に変更することができる。
【0038】
このように本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態による流量測定装置の流体供給装置を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態による流量測定装置を示す概略図。
【符号の説明】
【0040】
1 燃料噴射弁(被測定物)、10 流量測定装置、11 通路部材、12 通路部材、13 通路部材、14 通路部材、15 通路部材、17 算出装置(算出手段)、21 電空レギュレータ(駆動手段)、30 流体供給装置(流体供給手段)、33 ダイヤフラム、40 静電センサ(検出手段)、50 測定通路、51 測定通路(流体通路)、52 測定通路、53 測定通路、54 測定通路、70 供給通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物から流出する流体量に応じて充填された液体が移動する測定通路を備える流量測定装置であって、
前記測定通路、および前記測定通路に接続する供給通路を形成している通路部材と、
弾性変形可能なダイヤフラムを有し、前記ダイヤフラムの変形にともなう容積変化によって前記供給通路を経由して前記測定通路に試験流体を供給する流体供給手段と、
前記ダイヤフラムの変形量を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した前記ダイヤフラムの変形量から、前記流体供給手段によって前記供給通路を経由して前記測定通路に供給した試験流体の流量を算出する算出手段と、
前記ダイヤフラムを駆動する駆動手段と、
を備える流量測定装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記ダイヤフラムと非接触により前記ダイヤフラムの変形量を検出する請求項1記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記ダイヤフラムは金属製であって、前記検出手段は静電容量を検出する静電センサである請求項2記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、電気指令によって前記ダイヤフラムに加える空気の圧力を可変する電空レギュレータである請求項1から3のいずれか一項記載の流量測定装置。
【請求項5】
測定通路に充填された試験流体の移動を測定することにより、被測定物から流出する流体の量を測定する流量測定装置の精度確認方法であって、
ダイヤフラムを変形させ、前記ダイヤフラムの変形量に応じた試験流体を前記測定通路に供給する流体供給工程と、
前記ダイヤフラムの変形量から前記測定通路に供給した試験流体の流量を算出する流量算出工程と、
前記流体供給工程における試験流体の供給によって、前記測定通路を移動する試験流体の移動量を検出する移動量検出工程と、
前記流量算出工程で算出された試験流体の流量と、前記移動量検出工程で検出された前記試験流体の移動量とから、測定装置の精度を確認する確認工程と、
を含む流量測定装置の精度確認方法。
【請求項6】
前記ダイヤフラムの変形量は、前記ダイヤフラムと非接触で検出する請求項5記載の精度確認方法。
【請求項7】
金属製の前記ダイヤフラムの静電容量を検出する請求項6記載の精度確認方法。
【請求項8】
前記流体供給工程において、前記ダイヤフラムは空気の圧力によって変形する請求項5から7のいずれか一項記載の精度確認方法。

【図1】
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【図2】
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