流量測定装置及び流量測定方法
【課題】脈動を含む流体の流量を、脈動を温度変動に変換して測定する。
【解決手段】配管10の加熱点Aに加熱部12を配置し、下流の測定点Bに温度検出部13を配置して流体の吸光度を測定する。温度検出部13は発光部13aと受光部13bとを備え、光強度検出部16、脈動流周波数測定部17に接続されている。ポンプ11による脈動を含む水溶液中には、流速の早い時間帯の部分と遅い時間帯の部分が存在し、加熱点Aにおいて加熱用レーザー光を照射すると、水溶液には流速に応じて周期性を有する温度変動による温度マーカー部が生ずる。この温度変動の温度マーカー部を測定点Bにおいて温度検出部13により吸光度の時間的変動として測定して、光強度検出部16、脈動流周波数測定部17により脈動流周波数を求め、水溶液の流量に換算する。
【解決手段】配管10の加熱点Aに加熱部12を配置し、下流の測定点Bに温度検出部13を配置して流体の吸光度を測定する。温度検出部13は発光部13aと受光部13bとを備え、光強度検出部16、脈動流周波数測定部17に接続されている。ポンプ11による脈動を含む水溶液中には、流速の早い時間帯の部分と遅い時間帯の部分が存在し、加熱点Aにおいて加熱用レーザー光を照射すると、水溶液には流速に応じて周期性を有する温度変動による温度マーカー部が生ずる。この温度変動の温度マーカー部を測定点Bにおいて温度検出部13により吸光度の時間的変動として測定して、光強度検出部16、脈動流周波数測定部17により脈動流周波数を求め、水溶液の流量に換算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を流れる流体に対する流量測定装置及び流量測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配管内を流れる水溶液の流量を測定する装置として、水溶液中にセンサを挿入して温度上昇等を測定する熱式流量計が知られている。しかし、この測定装置ではセンサを水溶液に接触させるために水溶液が汚染される虞れがある。
【0003】
また、非接触で流量を測定する装置として、超音波を利用する流量計があるが、この超音波流量計では半導体製造工程等で使用するような微量な流量への適用が困難なことがある。
【0004】
これらの問題に対して、近年では非接触かつ高精度で水溶液の流量を測定する装置として、特許文献1、2のような近赤外光を用いる装置が開示されている。
【0005】
特許文献1、2では、図11に示すように配管1中を流れる測定すべき流体を上流側の加熱点Aにおいて、近赤外レーザー光の周期的な出力を有する加熱部2によって、水溶液中に周期性の熱マーカーを生成し、この熱マーカーを下流側の2個所の測定点B、Cに配置した温度検出部3、4において検知する。
【0006】
即ち、加熱された水溶液の熱マーカーが下流側の2個所の測定点B、Cを通過する際の時間差を計測し、この時間差と測定点B、C間の距離とに基づいて流速を求め、配管1の断面積との関係から水溶液の流量を算出する。熱マーカーの2個所の測定点B、Cへの到達は、近赤外レーザー光を水溶液中に照射して温度による水溶液の光の吸収度の変化を検出して判別する。
【0007】
この測定法では、上流の加熱点Aにおいて、流体をパルス加熱や正弦波加熱のような周期的な加熱方法により熱マーカーを生成し、発生した周期的な温度変化を下流において検出する。即ち、熱マーカーが測定点B、Cに到達する時刻を測定して、液体の測定点B、C問の通過時間差Δtを計測する。
【0008】
特許文献1、2では、このような熱式流量計の原理に基づいて流量が測定され、水溶液の加熱及びその下流での温度変化の検出に近赤外域のレーザー光を用いている。加熱には波長1050nm付近のレーザー光を用い、熱マーカーの検出には、水の吸収に対し感度の高い波長1490nm付近のレーザー光を用いて、水溶液の温度上昇により光の吸収度が変化することを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−251766号公報
【特許文献2】特開2004−271523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、このような水溶液を配管内に流す場合には、ポンプにより水溶液を供給している。しかし、ポンプの構造から通常では、吐出に伴い流体中に圧力変動や流速変動による脈動が加わることは避けられず、前述の従来の測定手段において、この脈動と熱マーカーの混在が流量の測定を困難にしている。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、配管内を流れる流体が脈動を有する場合においても、その脈動を利用し、精度良く流量を測定し得る流量測定装置及び流量測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る流量測定装置は、ポンプにより吐出され脈動流として配管内を流れる流体の流量を測定する流量測定装置であって、前記配管内の流体を外部から加熱することにより脈動に応じた温度変動を流体に与える加熱部と、該加熱部の下流に配置され、前記流体の温度変動を検出する温度変動検出部と、検出された前記温度変動に基づいて前記流体の流量を算出する制御演算部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る流量測定方法は、ポンプにより吐出され脈動流として配管内を流れる流体の流量を測定する流量測定方法であって、前記配管内の流体を外部から加熱することにより脈動に応じた温度変動を流体中に生成し、下流において前記流体の温度変動を検出し、検出された前記温度変動に基づいて前記流体の流量を算出することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明に係る流量測定装置は、配管内の流体を外部から加熱し脈動に応じた温度変動を流体中に生成する加熱部と、該加熱部の下流に配置し前記流体の前記温度変動を検出する温度変動検出部とを備え、ポンプによる吐出された脈動流として前記配管内を流れる前記流体の流量を測定する流量測定装置において、前記温度変動検出部において検出された前記温度変動に基づいて脈動流周波数を検出し、該脈動流周波数を基に第1の校正曲線を用いて流量を算出する第1の測定手段と、前記温度変動検出部を前記配管に所定距離を隔てた2個所にそれぞれ配置し、検出された前記温度変動に基づいて前記流体が2つの前記温度変動検出部にそれぞれ到達した時間差を検出し、検出された時間差を基に第2の校正曲線を用いて流量を算出する第2の測定手段とを有し、前記第1の測定手段により前記流量を測定中に前記第1の測定手段による測定に不都合が生じた場合に、前記第2の測定手段に切換えて前記流量を前記第2の測定手段により測定するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る流量測定装置及び流量測定方法によれば、脈動を伴う流体にその脈動に応じた温度変動を生成し、この温度変動を基に流量測定を行うので、流体中に脈動が存在しても問題なく測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の構成図である。
【図2】実施例1の動作フローチャート図である。
【図3】水の吸収スペクトルのグラフ図である。
【図4】ピ−ク部を拡大して示す吸収スペクトルのグラフ図である。
【図5】温度に対する吸収スペクトルのグラフ図である。
【図6】脈動流周波数の測定原理の説明図である。
【図7】校正曲線のグラフ図である。
【図8】実施例2の構成図である。
【図9】実施例2の動作フローチャート図である。
【図10】実施例3の動作フローチャート図である。
【図11】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を図1〜図10に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1に示す実施例1の流量測定装置は、レーザー光を透過する例えばテフロン(登録商標)などの合成樹脂から成る配管10内を流れる水溶液の流量を測定する。なお、ここでは流体を水溶液として説明するが、測定対象は水以外の液体であっても或いは気体であってもよい。
【0019】
ここで、流量を生成するポンプ11により供給される水溶液の流れには、ポンプ11の作動に起因する脈動が含まれている。この脈動流周波数は流量と1対1の関係を有するので、予めその関係を求めておけば、脈動流周波数から水溶液の流量を推測することができる。なお、脈動流とは配管10内を時間的に速度の変動を伴いながら一定方向に移動してゆく流れをいう。また、脈動流周波数とは配管10内を流れる水溶液の流れの周期性を示し、脈動の時間的な変化を示す数値である。
【0020】
図1に示すように実施例1の流量測定装置は、加熱部12と、温度検出部13と、流量測定部14とを備えている。
【0021】
配管10の上流にはポンプ11が設けられており、ポンプ11は配管10内の水溶液を循環させている。加熱部12は加熱用レーザー光源を有し、ポンプ11の下流の加熱点Aの配管10の外部に配置されている。加熱部12は配管10内の水溶液を配管10の外部から加熱することで、水溶液の脈動に応じた温度変動を水溶液に対して与える。
【0022】
温度検出部13は下流側の測定点Bの配管10の周囲に設けられている。温度検出部13はレーザー光の投受光部を有しており、水溶液の温度変動を検出する。
【0023】
本実施例における配管10の内径は、例えば3mm、加熱点Aと測定点Bの距離は1.5mmである。水溶液の流量は例えば1〜10mL/minであり、脈動流周波数は約0.2〜2.2Hzである。
【0024】
流量測定部14は加熱部12及び温度検出部13に接続されており、温度検出部13により検出された温度変動に基づいて流量を測定する。図1に示すように、流量測定部14には、制御演算部15、光強度検出部16、脈動流周波数測定部17、相対情報記憶部18が設けられている。
【0025】
制御演算部15は実施例1の流量測定装置全体を制御し、例えばCPUやパーソナルコンピュータなどから構成され、制御演算部15の出力は加熱部12に接続されている。
【0026】
光強度検出部16は脈動流周波数測定部17及び温度検出部13に接続されており、温度検出部13の受光部13bが受光する光束の吸光度を基に、配管10内を流れる水溶液の温度変動を検出する。なお、本発明の温度変動検出部は、発光部13a、受光部13b及び光強度検出部16により構成されている。
【0027】
脈動流周波数測定部17は光強度検出部16において検出される水溶液の温度変動に基づいて、流体の脈動流周波数を検出する。相対情報記憶部18には後述するように、水溶液の流量と脈動流周波数との相対情報である校正曲線が記憶されている。
【0028】
ここで、加熱部12により出力される近赤外レーザー光による光束は配管10を流れる水溶液に対して、図示しない光学系を介して照射するように構成されている。また、温度検出部13は発光部13aと受光部13bを備えており、発光部13a及び受光部13bは互いに対向して設けられ、発光部13aと受光部13bの間には配管10が配置されている。そして、受光部13bの出力は光強度検出部16に接続されている。
【0029】
図2は実施例1の動作フローチャート図である。加熱点Aにおいて加熱部12の半導体レーザー光源から例えば波長1050nm、出力2Wを持つ加熱用の近赤外レーザー光を、配管10中の水溶液に照射し加熱する(ステップS1)。
【0030】
ポンプ11の吐出により、水溶液の流れには脈動、つまり流速の早い時間帯と遅い時間帯が周期的に生成されている。この水溶液に強度が一定の加熱用レーザー光を照射すると、流速の遅い時間帯に加熱された部分の温度は流速の早い時間帯に加熱された部分の温度よりも上昇し、この結果、周期的な温度変動が生じ、加熱点Aにおいて検出対象となる温度マーカー部が生成される。ここでは、温度変動が与えられた水溶液中で相対的に高温となる部分、即ち流速の遅い時間帯に加熱された部分を温度マーカー部とする。 この温度変動を生じた水溶液に、下流の測定点Bにおいて発光部13aから図示しない光学系を介して、例えば1400〜1490nmの検出用の近赤外レーザー光を照射し、配管10、水溶液を通過した透過光をフォトダイオードなどから成る受光部13bにより受光する(ステップS2)。
【0031】
水の吸光度スペクトルは水特有の温度依存性を有している。即ち、図3に示すように、水は近赤外光域1300〜2000nmまでの透過光に対して、特定の波長1450nm及び1900nm付近においてピークを持つような吸光度スペクトルK1を有している。しかも、このピ−ク部分の吸光度スペクトルK1は、水の分子結合状態に依存し、水の温度が上昇すると短波長側に顕著にシフトする。図3の場合に、吸光度スペクトルK1は水の温度が25℃〜45℃程度の範囲で変化すれば、これに応じてピ−ク部が移動している。図4は1450nm付近のピ−ク部の拡大図であるが、温度の上昇に応じてピ−ク部にシフトが生じていることが分かる。
【0032】
そこで、複数の温度についての吸光度スペクトルK1に基づいて、そのうちの1つを例えば20℃を基準温度として、この基準温度の吸光度スペクトルと他の温度の吸光度スペクトルとの差分を演算する。これにより、図5に示すように、20℃を基準温度として他の温度25℃〜45℃の吸光度差を測定し易い大きな変化として示した吸光度差スペクトルK2が得られる。
【0033】
この吸光度差スペクトルK2によって、発光部13aからの照射光を例えば波長を1490nmに特定したときの各温度の値は、各温度と基準温度との間の吸光度の差分を表す値として明確に区別できる。この関係を利用して、温度が未知の水溶液を透過した透過光について、特定の波長の光強度を時間の経過に従って順次に検出してゆくことにより、検出される吸光度と基準温度時の吸光度との吸光度差を知れば、水溶液の温度変化を検出できることになる。
【0034】
光強度検出部16において温度変動が与えられた水溶液中の高温部分である温度マーカー部を検出し(ステップS3)、脈動流周波数測定部17において、この温度変動が与えられた水溶液中の温度マーカー部が単位時間当りに測定点Bを通過する数を、脈動流周波数として求めることができる(ステップS4)。
【0035】
図6は脈動流周波数の測定原理の説明図である。図6において、縦軸は受光部13bで受光すべき温度マーカー部の光強度EDを模擬的に表し、横軸は時間(time)を表している。ここで、受光部13bが受光する光強度EDの変動周期と、温度変動の周期とは一致する。
【0036】
なお、脈動流周波数の算出に際しては、受光部13bで受光した温度マーカー部の時間間隔の平均値を用いる。例えば、時刻T0とT1の間の時間間隔がΔT0、時刻T1とT2の間の時間間隔がΔT1の場合に、脈動流周波数測定部17はΔT0とΔT1の平均値の逆数を脈動流周波数として求める。
【0037】
相対情報記憶部18には、水溶液の流量と脈動流周波数との相対情報である図7に示すような校正曲線が記憶されている。この校正曲線は予め実験等により取得され、制御演算部15は校正曲線を用いて、脈動流周波数測定部17で測定された脈動流周波数に基づいて水溶液の流量を換算して算出する(ステップS5)。
【0038】
このように、実施例1の測定手段によれば、従来、流量測定の精度に影響を与えてきた脈動を温度変動に変換し、吸光度の変化を脈動流周波数として捉えることによって、水溶液の流量を測定することができる。
【0039】
このように、実施例1に係る測定方法では、脈動を伴う流体にその脈動に応じた温度変動を生成し、この温度変動を基に流量測定を行うので、従来問題であった脈動が存在しても良好な測定が可能となる。
【0040】
なお上述の説明では、脈動流周波数の検出を測定点Bで行うとしているが、加熱点Aよりも下流側の測定点B以外の測定点においても検出を行い、得られた2つの脈動流周波数の平均を求めるようにすれば、更に測定精度は向上する。また、そのときの測定用レーザー光は異なる波長のものを使用することもできる。
【実施例2】
【0041】
図8は実施例2の構成図である。実施例1では水溶液の脈動流周波数を求めて流量を測定するのに対し、本実施例2では脈動による温度変動が生じた水溶液中の温度マーカー部が所定距離Lを隔てた2個所の測定点B、C間を通過する時間を検出して、流量を測定する。
【0042】
実施例2においては、加熱点Aに実施例1と同様の加熱部12が設けられ、その下流の配管10に沿った少なくとも2個所の測定点B、Cにそれぞれ温度検出部21、22が配置されている。2個所の測定点B、Cのうち、第1の測定点Bの温度検出部21は、第1の発光部21aと第1の受光部21bで構成され、第2の測定点Cの温度検出部22は第2の発光部22aと第2の受光部22bにより構成されている。
【0043】
また、流量測定部23には制御演算部24、光強度検出部25、時間差測定部26、相対情報記憶部27が備えられている。加熱部12には制御演算部24の出力が接続され、受光部21b、22bの出力は光強度検出部25を介して時間差測定部26に接続されている。
【0044】
制御演算部24は実施例1の制御演算部15に対応し、光強度検出部25は光強度検出部16に対応している。時間差測定部26は光強度検出部25により検出される温度変動に基づいて、水溶液の温度マーカー部が2つの温度検出部21、22にそれぞれ到達した時間差Δtを検出する。
【0045】
相対情報記憶部27には、時間差測定部26により検出される時間差Δtに対する流量の校正曲線が予め記憶されている。制御演算部24は相対情報記憶部27に予め記憶されている時間差Δtに対する流量を予め取得された校正曲線を用いて時間差Δtを基に流量を演算する。
【0046】
配管10の径、加熱点Aと測定点Bとの距離は実施例1と同様であるが、測定点B、C間の距離Lは例えば6.3mmとされている。
【0047】
図9は実施例2の動作フローチャート図である。加熱部12による水溶液の加熱は、実施例1と同様手段により行う(ステップS11)。
【0048】
温度検出部21、22の発光部21a、22aは、加熱された水溶液に対してそれぞれ光学系を介して近赤外レーザー光を照射する。発光部21a、22aから照射された近赤外レーザー光は、配管10、水溶液を通過した後に温度検出部21、22の受光部21b、22bで受光される。受光部21b、22bが受光した近赤外光の光強度は、光強度検出部25によって検出される。
【0049】
この場合における光強度検出部25でなされる温度変動の検出方法は、実施例1と同様に水の温度に依存した吸光度の変化から求めている。つまり、第1の測定点Bの温度検出部21で発光部21aから発せられたレーザー光を受光部21bで受光する(ステップS12)。検出された光の透過度は光強度検出部25に送られ、吸光度のピーク値が得られたときに水溶液中の温度マーカー部が測定点Bに到達したことを判別し、同時に時間差測定部26はこの温度マーカー部の到達時刻t1を検出する(ステップS13)。
【0050】
同様にして、第2の測定点Cの温度検出部22において、発光部22aから発せられたレーザー光を受光部22bで受光する(ステップS14)。第1の測定点Bを捉えた温度マーカー部を判別し、到達時刻t2を検出する(ステップS15)。そして、時間差Δt(=t2−t1)を時間差測定部26で算出する(ステップS16)。
【0051】
時間差Δtは流量と強く関係している。制御演算部24は時間差Δtに対する流量の相対情報記憶部27で記憶している校正曲線を用いて、時間差Δtから流量を演算する(ステップS17)。
【0052】
なお、発光部21a、22aから発せられる近赤外レーザー光の波長は、吸収スペクトルにより温度変化を検出できれば、同じであっても異なっていてもよい。
【0053】
また、実施例2において、測定点B又はCの温度検出部21又は温度検出部22の一方を用いて、実施例1の測定手段に併用することも可能である。この場合には、時間差測定と脈動流周波数による測定とによる2つの測定値が得られることになる。
【0054】
なお、測定点B、C以外にも測定点を設けて、得られた複数の時間差を用いて流量を算出し、平均を求めれば更に精度の良い流速測定が可能となる。
【実施例3】
【0055】
上述したように本発明においては、加熱部12により配管10内の水溶液を加熱することで流体の脈動に応じた温度変動を生成した後に、実施例1の測定手段、実施例2の測定手段の何れかの手段により、流体の流量測定を行うことができる。本実施例3においては、常時は例えば実施例1の手段で流量を測定し、実施例1の測定で不都合が生じた場合には、実施例1による脈動流周波数を用いた校正曲線が適用できなくなるので、実施例2の測定手段に切換えるようにしている。
【0056】
ここで、実施例1の測定で不都合が生じた場合としては、例えばポンプ11や配管10の不具合が挙げられる。即ち、配管10が詰まったり、ポンプ11に故障が発生した結果、脈動流周波数の算出結果にばらつきが生じ、脈動流周波数及び流量の関係が異常になった場合である。本実施例3では、後述のように脈動流周波数及び流量の関係が異常になったか否かを、受光部13により受光したレーザー光の光強度の検出値によって判断する。
【0057】
実施例3では、加熱点A、測定点B、Cを備え、実施例1の手段で測定する場合には、図1に示すように加熱点A、測定点Bを使用し、実施例2の手段で測定する場合には、図8に示すように加熱点A、測定点B、Cを使用する。そして、実施例1、2で説明した共用の要素については共用して使用し、切換え可能な回路要素は切換えて使用する。
【0058】
図10は実施例3の動作フローチャート図である。ステップS21〜S23は実施例1の図2のステップS1〜S3と同様である。
【0059】
実施例1の測定手段で不都合が生じたか否か、つまり脈動流周波数及び流量の関係が異常になったか否かは、上述のように受光部13bの受光強度の検出値により確認することができ、測定点Bにおいて受光強度が所定範囲内にあるかを制御演算部15が判断する(ステップS24)。ここでは、受光強度が所定範囲内にあるか否かの閾値を、正常値の±5%以内とする。即ち、受光強度が正常値に対して5%以上ずれた場合に、実施例1の測定手段による測定で不都合が生じたと判断する。受光強度が所定範囲内であると制御演算部15が判断すれば、実施例1の測定手段による測定を継続し、ステップS25に進む。ステップS4、ステップS5と同様にして温度マーカー部を基に脈動流周波数を測定し(ステップS25)、制御演算部15はこの脈動流周波数を基に校正曲線から流量を算出する。
【0060】
一方、ステップS24で受光強度が所定範囲外であると制御演算部15が判断すると、制御演算部15は実施例1の測定手段による測定を中止して、実施例2の測定手段による測定に切換えてステップS27に進む。受光強度が所定範囲内にあるか否かは、実施例1の測定手段による流量の測定中に、測定点Bにおける水溶液の光強度を光強度検出部16でモニタすることによって検知できる。そして、流量測定の切換は、光強度検出部16による検知結果に基づいて手動又は自動で行うことができるが、自動切換は制御演算部によって行われる。
【0061】
実施例2の測定手段では、脈動流周波数及び流量の関係が異常になり、実施例1の測定で不都合が生じた場合でも、水溶液中の温度マーカー部が測定点B、C間を移動する時間差をリアルタイムで実測しているので、流量測定に支障をきたすことは少ない。
【0062】
ステップS27〜S31は実施例2の図9のステップS13〜S17と同様である。光強度検出部25が測定点Bにおける到達時刻t1を検出し(ステップS27)、測定点Cにおける透過光を受光部22bで受光し(ステップS28)、強度到達時刻t2を検出し(ステップS29)、続いて時間差測定部26により時間差Δtを求め(ステップS30)、制御演算部24が時間差Δtを基に実施例2の校正曲線を用いて流量を算出する(ステップS31)。
【0063】
なお上述の実施例では、水溶液の加熱に近赤外レーザー光を用いたが、別の波長を有する電磁波を利用することもできる。或いは、配管10の周囲にニクロム線などのヒータを設けて一様に加熱してもよい。
【0064】
更に、液体の吸光度変化の検出においても、近赤外レーザー光とは限らず、吸収スペクトルの変化が温度依存性を有するような波長光を使用すればよい。
【符号の説明】
【0065】
10 配管
11 ポンプ
12 加熱部
13、21、22 温度検出部
13a、21a、22a 発光部
13b、21b、22b 受光部
14、23 流量測定部
15、24 制御演算部
16、25 光強度検出部
17 脈動流周波数測定部
18、27 相対情報記憶部
26 時間差測定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を流れる流体に対する流量測定装置及び流量測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配管内を流れる水溶液の流量を測定する装置として、水溶液中にセンサを挿入して温度上昇等を測定する熱式流量計が知られている。しかし、この測定装置ではセンサを水溶液に接触させるために水溶液が汚染される虞れがある。
【0003】
また、非接触で流量を測定する装置として、超音波を利用する流量計があるが、この超音波流量計では半導体製造工程等で使用するような微量な流量への適用が困難なことがある。
【0004】
これらの問題に対して、近年では非接触かつ高精度で水溶液の流量を測定する装置として、特許文献1、2のような近赤外光を用いる装置が開示されている。
【0005】
特許文献1、2では、図11に示すように配管1中を流れる測定すべき流体を上流側の加熱点Aにおいて、近赤外レーザー光の周期的な出力を有する加熱部2によって、水溶液中に周期性の熱マーカーを生成し、この熱マーカーを下流側の2個所の測定点B、Cに配置した温度検出部3、4において検知する。
【0006】
即ち、加熱された水溶液の熱マーカーが下流側の2個所の測定点B、Cを通過する際の時間差を計測し、この時間差と測定点B、C間の距離とに基づいて流速を求め、配管1の断面積との関係から水溶液の流量を算出する。熱マーカーの2個所の測定点B、Cへの到達は、近赤外レーザー光を水溶液中に照射して温度による水溶液の光の吸収度の変化を検出して判別する。
【0007】
この測定法では、上流の加熱点Aにおいて、流体をパルス加熱や正弦波加熱のような周期的な加熱方法により熱マーカーを生成し、発生した周期的な温度変化を下流において検出する。即ち、熱マーカーが測定点B、Cに到達する時刻を測定して、液体の測定点B、C問の通過時間差Δtを計測する。
【0008】
特許文献1、2では、このような熱式流量計の原理に基づいて流量が測定され、水溶液の加熱及びその下流での温度変化の検出に近赤外域のレーザー光を用いている。加熱には波長1050nm付近のレーザー光を用い、熱マーカーの検出には、水の吸収に対し感度の高い波長1490nm付近のレーザー光を用いて、水溶液の温度上昇により光の吸収度が変化することを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−251766号公報
【特許文献2】特開2004−271523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、このような水溶液を配管内に流す場合には、ポンプにより水溶液を供給している。しかし、ポンプの構造から通常では、吐出に伴い流体中に圧力変動や流速変動による脈動が加わることは避けられず、前述の従来の測定手段において、この脈動と熱マーカーの混在が流量の測定を困難にしている。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、配管内を流れる流体が脈動を有する場合においても、その脈動を利用し、精度良く流量を測定し得る流量測定装置及び流量測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る流量測定装置は、ポンプにより吐出され脈動流として配管内を流れる流体の流量を測定する流量測定装置であって、前記配管内の流体を外部から加熱することにより脈動に応じた温度変動を流体に与える加熱部と、該加熱部の下流に配置され、前記流体の温度変動を検出する温度変動検出部と、検出された前記温度変動に基づいて前記流体の流量を算出する制御演算部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る流量測定方法は、ポンプにより吐出され脈動流として配管内を流れる流体の流量を測定する流量測定方法であって、前記配管内の流体を外部から加熱することにより脈動に応じた温度変動を流体中に生成し、下流において前記流体の温度変動を検出し、検出された前記温度変動に基づいて前記流体の流量を算出することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明に係る流量測定装置は、配管内の流体を外部から加熱し脈動に応じた温度変動を流体中に生成する加熱部と、該加熱部の下流に配置し前記流体の前記温度変動を検出する温度変動検出部とを備え、ポンプによる吐出された脈動流として前記配管内を流れる前記流体の流量を測定する流量測定装置において、前記温度変動検出部において検出された前記温度変動に基づいて脈動流周波数を検出し、該脈動流周波数を基に第1の校正曲線を用いて流量を算出する第1の測定手段と、前記温度変動検出部を前記配管に所定距離を隔てた2個所にそれぞれ配置し、検出された前記温度変動に基づいて前記流体が2つの前記温度変動検出部にそれぞれ到達した時間差を検出し、検出された時間差を基に第2の校正曲線を用いて流量を算出する第2の測定手段とを有し、前記第1の測定手段により前記流量を測定中に前記第1の測定手段による測定に不都合が生じた場合に、前記第2の測定手段に切換えて前記流量を前記第2の測定手段により測定するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る流量測定装置及び流量測定方法によれば、脈動を伴う流体にその脈動に応じた温度変動を生成し、この温度変動を基に流量測定を行うので、流体中に脈動が存在しても問題なく測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の構成図である。
【図2】実施例1の動作フローチャート図である。
【図3】水の吸収スペクトルのグラフ図である。
【図4】ピ−ク部を拡大して示す吸収スペクトルのグラフ図である。
【図5】温度に対する吸収スペクトルのグラフ図である。
【図6】脈動流周波数の測定原理の説明図である。
【図7】校正曲線のグラフ図である。
【図8】実施例2の構成図である。
【図9】実施例2の動作フローチャート図である。
【図10】実施例3の動作フローチャート図である。
【図11】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を図1〜図10に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1に示す実施例1の流量測定装置は、レーザー光を透過する例えばテフロン(登録商標)などの合成樹脂から成る配管10内を流れる水溶液の流量を測定する。なお、ここでは流体を水溶液として説明するが、測定対象は水以外の液体であっても或いは気体であってもよい。
【0019】
ここで、流量を生成するポンプ11により供給される水溶液の流れには、ポンプ11の作動に起因する脈動が含まれている。この脈動流周波数は流量と1対1の関係を有するので、予めその関係を求めておけば、脈動流周波数から水溶液の流量を推測することができる。なお、脈動流とは配管10内を時間的に速度の変動を伴いながら一定方向に移動してゆく流れをいう。また、脈動流周波数とは配管10内を流れる水溶液の流れの周期性を示し、脈動の時間的な変化を示す数値である。
【0020】
図1に示すように実施例1の流量測定装置は、加熱部12と、温度検出部13と、流量測定部14とを備えている。
【0021】
配管10の上流にはポンプ11が設けられており、ポンプ11は配管10内の水溶液を循環させている。加熱部12は加熱用レーザー光源を有し、ポンプ11の下流の加熱点Aの配管10の外部に配置されている。加熱部12は配管10内の水溶液を配管10の外部から加熱することで、水溶液の脈動に応じた温度変動を水溶液に対して与える。
【0022】
温度検出部13は下流側の測定点Bの配管10の周囲に設けられている。温度検出部13はレーザー光の投受光部を有しており、水溶液の温度変動を検出する。
【0023】
本実施例における配管10の内径は、例えば3mm、加熱点Aと測定点Bの距離は1.5mmである。水溶液の流量は例えば1〜10mL/minであり、脈動流周波数は約0.2〜2.2Hzである。
【0024】
流量測定部14は加熱部12及び温度検出部13に接続されており、温度検出部13により検出された温度変動に基づいて流量を測定する。図1に示すように、流量測定部14には、制御演算部15、光強度検出部16、脈動流周波数測定部17、相対情報記憶部18が設けられている。
【0025】
制御演算部15は実施例1の流量測定装置全体を制御し、例えばCPUやパーソナルコンピュータなどから構成され、制御演算部15の出力は加熱部12に接続されている。
【0026】
光強度検出部16は脈動流周波数測定部17及び温度検出部13に接続されており、温度検出部13の受光部13bが受光する光束の吸光度を基に、配管10内を流れる水溶液の温度変動を検出する。なお、本発明の温度変動検出部は、発光部13a、受光部13b及び光強度検出部16により構成されている。
【0027】
脈動流周波数測定部17は光強度検出部16において検出される水溶液の温度変動に基づいて、流体の脈動流周波数を検出する。相対情報記憶部18には後述するように、水溶液の流量と脈動流周波数との相対情報である校正曲線が記憶されている。
【0028】
ここで、加熱部12により出力される近赤外レーザー光による光束は配管10を流れる水溶液に対して、図示しない光学系を介して照射するように構成されている。また、温度検出部13は発光部13aと受光部13bを備えており、発光部13a及び受光部13bは互いに対向して設けられ、発光部13aと受光部13bの間には配管10が配置されている。そして、受光部13bの出力は光強度検出部16に接続されている。
【0029】
図2は実施例1の動作フローチャート図である。加熱点Aにおいて加熱部12の半導体レーザー光源から例えば波長1050nm、出力2Wを持つ加熱用の近赤外レーザー光を、配管10中の水溶液に照射し加熱する(ステップS1)。
【0030】
ポンプ11の吐出により、水溶液の流れには脈動、つまり流速の早い時間帯と遅い時間帯が周期的に生成されている。この水溶液に強度が一定の加熱用レーザー光を照射すると、流速の遅い時間帯に加熱された部分の温度は流速の早い時間帯に加熱された部分の温度よりも上昇し、この結果、周期的な温度変動が生じ、加熱点Aにおいて検出対象となる温度マーカー部が生成される。ここでは、温度変動が与えられた水溶液中で相対的に高温となる部分、即ち流速の遅い時間帯に加熱された部分を温度マーカー部とする。 この温度変動を生じた水溶液に、下流の測定点Bにおいて発光部13aから図示しない光学系を介して、例えば1400〜1490nmの検出用の近赤外レーザー光を照射し、配管10、水溶液を通過した透過光をフォトダイオードなどから成る受光部13bにより受光する(ステップS2)。
【0031】
水の吸光度スペクトルは水特有の温度依存性を有している。即ち、図3に示すように、水は近赤外光域1300〜2000nmまでの透過光に対して、特定の波長1450nm及び1900nm付近においてピークを持つような吸光度スペクトルK1を有している。しかも、このピ−ク部分の吸光度スペクトルK1は、水の分子結合状態に依存し、水の温度が上昇すると短波長側に顕著にシフトする。図3の場合に、吸光度スペクトルK1は水の温度が25℃〜45℃程度の範囲で変化すれば、これに応じてピ−ク部が移動している。図4は1450nm付近のピ−ク部の拡大図であるが、温度の上昇に応じてピ−ク部にシフトが生じていることが分かる。
【0032】
そこで、複数の温度についての吸光度スペクトルK1に基づいて、そのうちの1つを例えば20℃を基準温度として、この基準温度の吸光度スペクトルと他の温度の吸光度スペクトルとの差分を演算する。これにより、図5に示すように、20℃を基準温度として他の温度25℃〜45℃の吸光度差を測定し易い大きな変化として示した吸光度差スペクトルK2が得られる。
【0033】
この吸光度差スペクトルK2によって、発光部13aからの照射光を例えば波長を1490nmに特定したときの各温度の値は、各温度と基準温度との間の吸光度の差分を表す値として明確に区別できる。この関係を利用して、温度が未知の水溶液を透過した透過光について、特定の波長の光強度を時間の経過に従って順次に検出してゆくことにより、検出される吸光度と基準温度時の吸光度との吸光度差を知れば、水溶液の温度変化を検出できることになる。
【0034】
光強度検出部16において温度変動が与えられた水溶液中の高温部分である温度マーカー部を検出し(ステップS3)、脈動流周波数測定部17において、この温度変動が与えられた水溶液中の温度マーカー部が単位時間当りに測定点Bを通過する数を、脈動流周波数として求めることができる(ステップS4)。
【0035】
図6は脈動流周波数の測定原理の説明図である。図6において、縦軸は受光部13bで受光すべき温度マーカー部の光強度EDを模擬的に表し、横軸は時間(time)を表している。ここで、受光部13bが受光する光強度EDの変動周期と、温度変動の周期とは一致する。
【0036】
なお、脈動流周波数の算出に際しては、受光部13bで受光した温度マーカー部の時間間隔の平均値を用いる。例えば、時刻T0とT1の間の時間間隔がΔT0、時刻T1とT2の間の時間間隔がΔT1の場合に、脈動流周波数測定部17はΔT0とΔT1の平均値の逆数を脈動流周波数として求める。
【0037】
相対情報記憶部18には、水溶液の流量と脈動流周波数との相対情報である図7に示すような校正曲線が記憶されている。この校正曲線は予め実験等により取得され、制御演算部15は校正曲線を用いて、脈動流周波数測定部17で測定された脈動流周波数に基づいて水溶液の流量を換算して算出する(ステップS5)。
【0038】
このように、実施例1の測定手段によれば、従来、流量測定の精度に影響を与えてきた脈動を温度変動に変換し、吸光度の変化を脈動流周波数として捉えることによって、水溶液の流量を測定することができる。
【0039】
このように、実施例1に係る測定方法では、脈動を伴う流体にその脈動に応じた温度変動を生成し、この温度変動を基に流量測定を行うので、従来問題であった脈動が存在しても良好な測定が可能となる。
【0040】
なお上述の説明では、脈動流周波数の検出を測定点Bで行うとしているが、加熱点Aよりも下流側の測定点B以外の測定点においても検出を行い、得られた2つの脈動流周波数の平均を求めるようにすれば、更に測定精度は向上する。また、そのときの測定用レーザー光は異なる波長のものを使用することもできる。
【実施例2】
【0041】
図8は実施例2の構成図である。実施例1では水溶液の脈動流周波数を求めて流量を測定するのに対し、本実施例2では脈動による温度変動が生じた水溶液中の温度マーカー部が所定距離Lを隔てた2個所の測定点B、C間を通過する時間を検出して、流量を測定する。
【0042】
実施例2においては、加熱点Aに実施例1と同様の加熱部12が設けられ、その下流の配管10に沿った少なくとも2個所の測定点B、Cにそれぞれ温度検出部21、22が配置されている。2個所の測定点B、Cのうち、第1の測定点Bの温度検出部21は、第1の発光部21aと第1の受光部21bで構成され、第2の測定点Cの温度検出部22は第2の発光部22aと第2の受光部22bにより構成されている。
【0043】
また、流量測定部23には制御演算部24、光強度検出部25、時間差測定部26、相対情報記憶部27が備えられている。加熱部12には制御演算部24の出力が接続され、受光部21b、22bの出力は光強度検出部25を介して時間差測定部26に接続されている。
【0044】
制御演算部24は実施例1の制御演算部15に対応し、光強度検出部25は光強度検出部16に対応している。時間差測定部26は光強度検出部25により検出される温度変動に基づいて、水溶液の温度マーカー部が2つの温度検出部21、22にそれぞれ到達した時間差Δtを検出する。
【0045】
相対情報記憶部27には、時間差測定部26により検出される時間差Δtに対する流量の校正曲線が予め記憶されている。制御演算部24は相対情報記憶部27に予め記憶されている時間差Δtに対する流量を予め取得された校正曲線を用いて時間差Δtを基に流量を演算する。
【0046】
配管10の径、加熱点Aと測定点Bとの距離は実施例1と同様であるが、測定点B、C間の距離Lは例えば6.3mmとされている。
【0047】
図9は実施例2の動作フローチャート図である。加熱部12による水溶液の加熱は、実施例1と同様手段により行う(ステップS11)。
【0048】
温度検出部21、22の発光部21a、22aは、加熱された水溶液に対してそれぞれ光学系を介して近赤外レーザー光を照射する。発光部21a、22aから照射された近赤外レーザー光は、配管10、水溶液を通過した後に温度検出部21、22の受光部21b、22bで受光される。受光部21b、22bが受光した近赤外光の光強度は、光強度検出部25によって検出される。
【0049】
この場合における光強度検出部25でなされる温度変動の検出方法は、実施例1と同様に水の温度に依存した吸光度の変化から求めている。つまり、第1の測定点Bの温度検出部21で発光部21aから発せられたレーザー光を受光部21bで受光する(ステップS12)。検出された光の透過度は光強度検出部25に送られ、吸光度のピーク値が得られたときに水溶液中の温度マーカー部が測定点Bに到達したことを判別し、同時に時間差測定部26はこの温度マーカー部の到達時刻t1を検出する(ステップS13)。
【0050】
同様にして、第2の測定点Cの温度検出部22において、発光部22aから発せられたレーザー光を受光部22bで受光する(ステップS14)。第1の測定点Bを捉えた温度マーカー部を判別し、到達時刻t2を検出する(ステップS15)。そして、時間差Δt(=t2−t1)を時間差測定部26で算出する(ステップS16)。
【0051】
時間差Δtは流量と強く関係している。制御演算部24は時間差Δtに対する流量の相対情報記憶部27で記憶している校正曲線を用いて、時間差Δtから流量を演算する(ステップS17)。
【0052】
なお、発光部21a、22aから発せられる近赤外レーザー光の波長は、吸収スペクトルにより温度変化を検出できれば、同じであっても異なっていてもよい。
【0053】
また、実施例2において、測定点B又はCの温度検出部21又は温度検出部22の一方を用いて、実施例1の測定手段に併用することも可能である。この場合には、時間差測定と脈動流周波数による測定とによる2つの測定値が得られることになる。
【0054】
なお、測定点B、C以外にも測定点を設けて、得られた複数の時間差を用いて流量を算出し、平均を求めれば更に精度の良い流速測定が可能となる。
【実施例3】
【0055】
上述したように本発明においては、加熱部12により配管10内の水溶液を加熱することで流体の脈動に応じた温度変動を生成した後に、実施例1の測定手段、実施例2の測定手段の何れかの手段により、流体の流量測定を行うことができる。本実施例3においては、常時は例えば実施例1の手段で流量を測定し、実施例1の測定で不都合が生じた場合には、実施例1による脈動流周波数を用いた校正曲線が適用できなくなるので、実施例2の測定手段に切換えるようにしている。
【0056】
ここで、実施例1の測定で不都合が生じた場合としては、例えばポンプ11や配管10の不具合が挙げられる。即ち、配管10が詰まったり、ポンプ11に故障が発生した結果、脈動流周波数の算出結果にばらつきが生じ、脈動流周波数及び流量の関係が異常になった場合である。本実施例3では、後述のように脈動流周波数及び流量の関係が異常になったか否かを、受光部13により受光したレーザー光の光強度の検出値によって判断する。
【0057】
実施例3では、加熱点A、測定点B、Cを備え、実施例1の手段で測定する場合には、図1に示すように加熱点A、測定点Bを使用し、実施例2の手段で測定する場合には、図8に示すように加熱点A、測定点B、Cを使用する。そして、実施例1、2で説明した共用の要素については共用して使用し、切換え可能な回路要素は切換えて使用する。
【0058】
図10は実施例3の動作フローチャート図である。ステップS21〜S23は実施例1の図2のステップS1〜S3と同様である。
【0059】
実施例1の測定手段で不都合が生じたか否か、つまり脈動流周波数及び流量の関係が異常になったか否かは、上述のように受光部13bの受光強度の検出値により確認することができ、測定点Bにおいて受光強度が所定範囲内にあるかを制御演算部15が判断する(ステップS24)。ここでは、受光強度が所定範囲内にあるか否かの閾値を、正常値の±5%以内とする。即ち、受光強度が正常値に対して5%以上ずれた場合に、実施例1の測定手段による測定で不都合が生じたと判断する。受光強度が所定範囲内であると制御演算部15が判断すれば、実施例1の測定手段による測定を継続し、ステップS25に進む。ステップS4、ステップS5と同様にして温度マーカー部を基に脈動流周波数を測定し(ステップS25)、制御演算部15はこの脈動流周波数を基に校正曲線から流量を算出する。
【0060】
一方、ステップS24で受光強度が所定範囲外であると制御演算部15が判断すると、制御演算部15は実施例1の測定手段による測定を中止して、実施例2の測定手段による測定に切換えてステップS27に進む。受光強度が所定範囲内にあるか否かは、実施例1の測定手段による流量の測定中に、測定点Bにおける水溶液の光強度を光強度検出部16でモニタすることによって検知できる。そして、流量測定の切換は、光強度検出部16による検知結果に基づいて手動又は自動で行うことができるが、自動切換は制御演算部によって行われる。
【0061】
実施例2の測定手段では、脈動流周波数及び流量の関係が異常になり、実施例1の測定で不都合が生じた場合でも、水溶液中の温度マーカー部が測定点B、C間を移動する時間差をリアルタイムで実測しているので、流量測定に支障をきたすことは少ない。
【0062】
ステップS27〜S31は実施例2の図9のステップS13〜S17と同様である。光強度検出部25が測定点Bにおける到達時刻t1を検出し(ステップS27)、測定点Cにおける透過光を受光部22bで受光し(ステップS28)、強度到達時刻t2を検出し(ステップS29)、続いて時間差測定部26により時間差Δtを求め(ステップS30)、制御演算部24が時間差Δtを基に実施例2の校正曲線を用いて流量を算出する(ステップS31)。
【0063】
なお上述の実施例では、水溶液の加熱に近赤外レーザー光を用いたが、別の波長を有する電磁波を利用することもできる。或いは、配管10の周囲にニクロム線などのヒータを設けて一様に加熱してもよい。
【0064】
更に、液体の吸光度変化の検出においても、近赤外レーザー光とは限らず、吸収スペクトルの変化が温度依存性を有するような波長光を使用すればよい。
【符号の説明】
【0065】
10 配管
11 ポンプ
12 加熱部
13、21、22 温度検出部
13a、21a、22a 発光部
13b、21b、22b 受光部
14、23 流量測定部
15、24 制御演算部
16、25 光強度検出部
17 脈動流周波数測定部
18、27 相対情報記憶部
26 時間差測定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプにより吐出され脈動流として配管内を流れる流体の流量を測定する流量測定装置であって、前記配管内の流体を外部から加熱することにより脈動に応じた温度変動を流体に与える加熱部と、該加熱部の下流に配置され、前記流体の温度変動を検出する温度変動検出部と、検出された前記温度変動に基づいて前記流体の流量を算出する制御演算部とを備えたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項2】
前記加熱部は近赤外レーザー光により流体を加熱することを特徴とする請求項1に記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記温度変動検出部は前記流体に光束を照射する発光部と、前記流体を透過した光束を受光する受光部と、該受光部が受光する光束の吸光度を基に前記温度変動を検出する光強度検出部とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記温度変動検出部は流体の吸光度が温度依存性を有する波長の近赤外レーザー光を用いたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の流量測定装置。
【請求項5】
前記温度変動検出部において検出された前記温度変動に基づいて前記流体の脈動流周波数を検出する脈動流周波数検出部を備え、前記制御演算部は得られた脈動流周波数を校正曲線を用いて流量に換算することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の流量測定装置。
【請求項6】
前記温度変動検出部は前記配管に所定距離を隔てた2個所にそれぞれ配置し、前記温度変動検出部により検出された前記温度変動が2つの前記温度変動検出部にそれぞれ到達した時間差を検出する時間差測定部を備え、前記制御演算部は測定された時間差を基に校正曲線を用いて流量に換算することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の流量測定装置。
【請求項7】
ポンプにより吐出され脈動流として配管内を流れる流体の流量を測定する流量測定方法であって、前記配管内の流体を外部から加熱することにより脈動に応じた温度変動を流体中に生成し、下流において前記流体の温度変動を検出し、検出された前記温度変動に基づいて前記流体の流量を算出することを特徴とする流量測定方法。
【請求項8】
前記温度変動は前記流体に光束を照射し、前記流体を透過した光束の吸光度を基に検出することを特徴とする請求項7に記載の流量測定方法。
【請求項9】
前記温度変動の検出は流体の吸光度が温度依存性を有する波長の近赤外レーザー光を用いたことを特徴とする請求項7又は8に記載の流量測定方法。
【請求項10】
検出された前記温度変動に基づいて前記流体の脈動流周波数を検出し、得られた脈動流周波数を校正曲線を用いて流量に換算することを特徴とする請求項7〜9の何れか1つの請求項に記載の流量測定方法。
【請求項11】
前記配管に所定距離を隔てた下流の2個所でそれぞれ検出された前記温度変動が2つの検出個所にそれぞれ到達した時間差を検出し、測定された時間差を基に校正曲線を用いて流量を算出することを特徴とする請求項7〜10の何れか1つの請求項に記載の流量測定方法。
【請求項12】
配管内の流体を外部から加熱し脈動に応じた温度変動を流体中に生成する加熱部と、該加熱部の下流に配置し前記流体の前記温度変動を検出する温度変動検出部とを備え、ポンプによる吐出された脈動流として前記配管内を流れる前記流体の流量を測定する流量測定装置において、前記温度変動検出部において検出された前記温度変動に基づいて脈動流周波数を検出し、該脈動流周波数を基に第1の校正曲線を用いて流量を算出する第1の測定手段と、前記温度変動検出部を前記配管に所定距離を隔てた2個所にそれぞれ配置し、検出された前記温度変動に基づいて前記流体が2つの前記温度変動検出部にそれぞれ到達した時間差を検出し、検出された時間差を基に第2の校正曲線を用いて流量を算出する第2の測定手段とを有し、前記第1の測定手段により前記流量を測定中に前記第1の測定手段による測定に不都合が生じた場合に、前記第2の測定手段に切換えて前記流量を前記第2の測定手段により測定するように構成されたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項13】
前記脈動流周波数の検出に際して前記温度変動の検出に用いる光束の受光強度に異常があると判別されると、前記第1の測定手段による測定に不都合があると判断する請求項12に記載の流量測定装置。
【請求項1】
ポンプにより吐出され脈動流として配管内を流れる流体の流量を測定する流量測定装置であって、前記配管内の流体を外部から加熱することにより脈動に応じた温度変動を流体に与える加熱部と、該加熱部の下流に配置され、前記流体の温度変動を検出する温度変動検出部と、検出された前記温度変動に基づいて前記流体の流量を算出する制御演算部とを備えたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項2】
前記加熱部は近赤外レーザー光により流体を加熱することを特徴とする請求項1に記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記温度変動検出部は前記流体に光束を照射する発光部と、前記流体を透過した光束を受光する受光部と、該受光部が受光する光束の吸光度を基に前記温度変動を検出する光強度検出部とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記温度変動検出部は流体の吸光度が温度依存性を有する波長の近赤外レーザー光を用いたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の流量測定装置。
【請求項5】
前記温度変動検出部において検出された前記温度変動に基づいて前記流体の脈動流周波数を検出する脈動流周波数検出部を備え、前記制御演算部は得られた脈動流周波数を校正曲線を用いて流量に換算することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の流量測定装置。
【請求項6】
前記温度変動検出部は前記配管に所定距離を隔てた2個所にそれぞれ配置し、前記温度変動検出部により検出された前記温度変動が2つの前記温度変動検出部にそれぞれ到達した時間差を検出する時間差測定部を備え、前記制御演算部は測定された時間差を基に校正曲線を用いて流量に換算することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の流量測定装置。
【請求項7】
ポンプにより吐出され脈動流として配管内を流れる流体の流量を測定する流量測定方法であって、前記配管内の流体を外部から加熱することにより脈動に応じた温度変動を流体中に生成し、下流において前記流体の温度変動を検出し、検出された前記温度変動に基づいて前記流体の流量を算出することを特徴とする流量測定方法。
【請求項8】
前記温度変動は前記流体に光束を照射し、前記流体を透過した光束の吸光度を基に検出することを特徴とする請求項7に記載の流量測定方法。
【請求項9】
前記温度変動の検出は流体の吸光度が温度依存性を有する波長の近赤外レーザー光を用いたことを特徴とする請求項7又は8に記載の流量測定方法。
【請求項10】
検出された前記温度変動に基づいて前記流体の脈動流周波数を検出し、得られた脈動流周波数を校正曲線を用いて流量に換算することを特徴とする請求項7〜9の何れか1つの請求項に記載の流量測定方法。
【請求項11】
前記配管に所定距離を隔てた下流の2個所でそれぞれ検出された前記温度変動が2つの検出個所にそれぞれ到達した時間差を検出し、測定された時間差を基に校正曲線を用いて流量を算出することを特徴とする請求項7〜10の何れか1つの請求項に記載の流量測定方法。
【請求項12】
配管内の流体を外部から加熱し脈動に応じた温度変動を流体中に生成する加熱部と、該加熱部の下流に配置し前記流体の前記温度変動を検出する温度変動検出部とを備え、ポンプによる吐出された脈動流として前記配管内を流れる前記流体の流量を測定する流量測定装置において、前記温度変動検出部において検出された前記温度変動に基づいて脈動流周波数を検出し、該脈動流周波数を基に第1の校正曲線を用いて流量を算出する第1の測定手段と、前記温度変動検出部を前記配管に所定距離を隔てた2個所にそれぞれ配置し、検出された前記温度変動に基づいて前記流体が2つの前記温度変動検出部にそれぞれ到達した時間差を検出し、検出された時間差を基に第2の校正曲線を用いて流量を算出する第2の測定手段とを有し、前記第1の測定手段により前記流量を測定中に前記第1の測定手段による測定に不都合が生じた場合に、前記第2の測定手段に切換えて前記流量を前記第2の測定手段により測定するように構成されたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項13】
前記脈動流周波数の検出に際して前記温度変動の検出に用いる光束の受光強度に異常があると判別されると、前記第1の測定手段による測定に不都合があると判断する請求項12に記載の流量測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−214908(P2011−214908A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81438(P2010−81438)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【出願人】(390026996)東京計装株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【出願人】(390026996)東京計装株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
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