説明

流量表示装置

【課題】装置構成を小型軽量にする。ストレーナのスクリーンの交換を容易にする。水平設置を必要条件としないようにする。アセチレンガス,酸素ガスの流量を正確,具体的に表示して目視によって容易に確認できるようにする。
【解決手段】アセチレンガス,酸素ガスの流量をそれぞれ計測する質量式の流量計5と、流量計5に接続され不純物を捕捉するストレーナ4と、流量計5が計測した流量をそれぞれ数字で発光表示する表示器8とを備え、アセチレンガス,酸素ガスの流通配管2,3がケーシング1の内部で作業空間Sを介して相対され、ストレーナ4のスクリーンの交換作業方向が作業空間S側に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧接に使用されるアセチレンガス,酸素ガスの流量を表示する流量表示装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ガス圧接では、アセチレンガス,酸素ガスの流量を目視で確認するために、アセチレンガスボンベ,酸素ガスボンベと加熱用トーチとの間に流量表示装置が設置される。流量表示装置としては、フロート式の流量計を利用したものが汎用されている。
【0003】
フロート式の流量計を利用した流量表示装置は、アセチレンガス,酸素ガスを圧力調整器を介して透明なチューブの内部に導入し、チューブの内部を昇降浮動するフロートとチューブに表示された目盛とから、加熱用トーチに供給されるアセチレンガス,酸素ガスの流量を表示する。従って、圧力調整器の接続によって装置構成が大型重量化するとともに、フロートをチューブを介して透視するために目視によるアセチレンガス,酸素ガスの流量の表示の確認が困難になることがあるという不具合がある。また、水平設置しないとフロートのスムースな動作(即ち、精密な表示)が期待できないという不具合がある。
【0004】
このため、装置構成が小型で目視によるアセチレンガス,酸素ガスの流量の表示の確認が容易な流量表示装置の開発が要望されている。
【0005】
従来、装置構成の小型化を指向するものではないが、目視によるアセチレンガスの流量の表示の確認を容易にすることを指向した技術としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開2002−96179号公報
【0006】
特許文献1には、アセチレンガスの流量を検出する流量センサにパイロットランプからなる表示用パネルを接続した流量表示装置が記載されている。
【0007】
特許文献1に係る流量表示装置は、流量センサが検出したアセチレンガスの流量の不足状態,過剰状態を表示用パネルのパイロットランプの点滅で表示するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る流量表示装置では、アセチレンガス,酸素ガスの流量の表示がパイロットランプからなる表示用パネルで見やすい発光表示とされているものの、アセチレンガス,酸素ガスの流量の表示が正確,具体的でなくなってしまうという問題点がある。
【0009】
この問題点を解消するためには、アセチレンガス,酸素ガスの流量を圧力調整器が不要な質量式の流量計で検出して、液晶等の表示器でアセチレンガス,酸素ガスの流量を数字で発光表示することが想到される。ただし、質量式の流量計には、不純物の流入を阻止するストレーナの接続が必要とされる。このため、前述の装置構成の小型化の要望に対応して流量計,表示器をコンパクトに集合させると、ストレーナのスクリーン(フィルタ)の交換が困難になるという新たな問題点が生じてしまうことになる。
【0010】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、装置構成が小型軽量でストレーナのスクリーンの交換が容易で、水平設置が必要とされず、しかもアセチレンガス,酸素ガスの流量を正確,具体的に表示して目視によって容易に確認することのできる流量表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明に係る流量表示装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0012】
即ち、本発明は、アセチレンガス,酸素ガスの流量をそれぞれ計測する質量式の流量計と、流量計に接続され不純物を捕捉するストレーナと、流量計が計測した流量をそれぞれ数字で発光表示する表示器とを備え、アセチレンガス,酸素ガスの流通配管がケーシングの内部で作業空間を介して相対して配置され、ストレーナのスクリーンの交換作業方向が作業空間側に設定されている。
【0013】
この手段では、圧力調整器が不要な質量式の流量計と見やすい数字の発光表示の表示器とを備えることで、装置構成の大型化を避けるとともにアセチレンガス,酸素ガスの流量の表示が正確,具体的でなくなるのを避け、ケーシングの内部でのアセチレンガス,酸素ガスの相対した流通配管の間にストレーナのスクリーンの交換作業方向が設定される作業空間を確保することで、ストレーナのスクリーンの交換が困難になるのを避けている。
【0014】
また、本発明においては、ケーシングは底板,前板,後板で囲まれる本体部と側板,天板で囲まれる蓋部とからなり、アセチレンガス,酸素ガスの流通配管はケーシングの本体部に配設されていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、作業空間がケーシングの本体部の内部に確保されケーシングの蓋部を取外すことによって側方,上方に開放される。
【0016】
また、本発明においては、ケーシングの蓋部は本体部の前板,後板よりも外方へ突出した庇形であることを特徴とする。
【0017】
この手段では、ケーシングの庇形の蓋部が日除け,雨除けの機能を果たす。
【0018】
また、本発明においては、ケーシングの蓋部は天板の上に折畳み開放が可能な前カバー,後カバーが設けられていることを特徴とする。
【0019】
この手段では、前カバー,後カバーがケーシングの本体部の前板,後板の防護板としての機能を果たす。
【0020】
また、本発明においては、流量表示装置において、表示器はケーシングの本体部の前板に配置され、酸素ガスの流通配管は流量調整器,圧力計が接続されてケーシングの本体部の前板に沿って配設され、流量調整器は操作部がケーシングの本体部の前板を貫通して外部に突出され、圧力計はケーシングの本体部の前板から目視可能であることを特徴とする。
【0021】
この手段では、表示器,圧力計を見ながら流量調整器を操作して、酸素ガスの流通量を調整することができる。
【0022】
また、本発明においては、表示器はケーシングの内部に収容されたバッテリで駆動され少なくとも発光表示の内容を記憶するメモリを有していることを特徴とする。
【0023】
この手段によると、ケーブル等による外部電源との接続を解除した後にも、表示器の発光表示の内容を保存することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る流量表示装置は、圧力調整器が不要な質量式の流量計と見やすい数字の発光表示の表示器とを備えることで、装置構成の大型化を避けるとともにアセチレンガス,酸素ガスの流量の表示が正確,具体的でなくなったり表示を確認することが困難になったりするのを避け、ケーシングの内部でのアセチレンガス,酸素ガスの相対した流通配管の間にストレーナのスクリーンの交換作業方向が設定される作業空間を確保することで、ストレーナのスクリーンの交換が困難になるのを避けているため、装置構成が小型軽量でストレーナのスクリーンの交換が容易で、水平設置が必要条件とされず、しかもアセチレンガス,酸素ガスの流量を正確,具体的に表示して目視によって容易に確認することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る流量表示装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
この形態では、鉄道用レールRのガス圧接等のように屋外での使用に好適なものを示してある。
【0027】
この形態は、ボックス形のケーシング1にコンパクトに収容された装置構成を備えている。
【0028】
ケーシング1は、本体部11,蓋部12からなる。
【0029】
ケーシング1の本体部11は、底板11a,前板11b,後板11cで方形の空間を囲む断面コ字形(U字形)に形成されている。
【0030】
ケーシング1の蓋部12は、側板12a,天板12b,前カバー12c,後カバー12dで方形の空間を囲む断面コ字形(U字形)に形成され、止具(図示せず)で本体部11に対して着脱可能になっている。側板12a,天板12bは、本体部11の前板11b,後板11cよりも外方へ突出した大きさで庇形になっている。天板12bの中央部には、持上げ運搬用の取手12eが取付けられている。天板12の縁辺には、ヒンジ12fで前カバー12c,後カバー12dが開閉可能に取付けられている。前カバー12cは、取手12eを避ける窓12gが設けられて天板12b上に折畳み開放が可能であるとともに、下端に90度屈曲した支片12hが設けられて本体部11の前板11bへの衝突が防止されるようになっている。後カバー12dは、取手12eを避ける窓12gが設けられて天板12b上に折畳み開放が可能であるとともに、閉鎖状態で電気コード,ホース等を通過させる配線用窓12iが設けられている。
【0031】
ケーシング1の本体部11の内部には、図1に示すように、アセチレンガスの流通配管2と酸素ガスの流通配管3とが配設されている。
【0032】
アセチレンガスの流通配管2は、主にケーシング1の本体部11の後板11cに沿って配設されたパイプ等の配管部21と、ケーシング1の本体部11の後板11cに固定されアセチレンガスのボンベBaに接続されたホースが接続されるニップル等のインレット側接続具22と、ケーシング1の本体部11の前板11bに固定され鉄道用レールRを囲む異形の加熱用トーチTに接続されたホースが接続されるカプラ等のアウトレット用接続具23とからなる。
【0033】
アセチレンガスの流通配管2の配管部21の中途部には、アセチレンガスの流通の上流側からストレーナ4と質量式の流量計5とが接続されている。
【0034】
ストレーナ4は、筒形のステンレスメッシュのスクリーン41が内蔵されY形からなるもので、キャップ42を回転して取外すことによってスクリーン41を交換することができるようになっている。キャップ42は、図4に示すように、ケーシング1の本体部11の前板11bの方向である斜め下方へ向いている。
【0035】
質量式の流量計5は、アセチレンガスが分流される毛細管に上流側コイル,下流側コイルを取付けて、上流側コイル,下流側コイルの抵抗値の変化を電気信号として出力する熱方式のものからなる。
【0036】
酸素ガスの流通配管3は、主にケーシング1の本体部11の前板11bに沿って配設されたパイプ等の配管部31と、ケーシング1の本体部11の後板11cに固定され酸素ガスのボンベBbに接続されたホースが接続されるニップル等のインレット側接続具32と、ケーシング1の本体部11の前板11bに固定され鉄道用レールRを囲む異形の加熱用トーチTに接続されたホースが接続されるカプラ等のアウトレット用接続具33とからなる。
【0037】
酸素ガスの流通配管3の配管部31の中途部には、酸素ガスの流通の上流側からストレーナ4と質量式の流量計5と流量調整器6と圧力計7とが接続されている。
【0038】
これ等のストレーナ4と質量式の流量計5とは、基本的にアセチレンガスの流通配管2の配管部21に接続されたものと同一構造のものが選択される。なお、ストレーナ4のキャップ42は、アセチレンガスの流通配管2の配管部21に接続されたものと対称的に逆方向を向いている。
【0039】
流量調整器6は、酸素ガスの流量を調整する流量調整弁構造の本体61にダイヤル形の操作部62が連結されている。操作部62は、ケーシング1の本体部11の前板11bを貫通して外部に突出されている。
【0040】
圧力計7は、流量調整器6で調整された酸素ガスの流通圧力を表示するもので、ケーシング1の本体部11の前板11bに設けられた窓等によって外部から目視が可能になっている。
【0041】
ケーシング1の本体部11の前板11bには、アセチレンガス,酸素ガスの流量を数字でそれぞれ発光表示する表示器8が並列して取付けられている。この表示器8は、例えば、質量式の流量計5から出力された電気信号をデジタル変換して液晶画面に表示するものである。表示器8は、ケーシング1の内部に収容されたバッテリ9で駆動され発光表示の内容を記憶するメモリを有している。
【0042】
バッテリ9は、ケーシング1の本体部11の後板11cとアセチレンガスの流通配管2との間に収容され、外部電源(交流電源)に接続される受電回路と充電回路とが接続され、外部電源に接続されなくても表示器8のメモリ以外の各部をも駆動することができるようになっている。なお、 ケーシング1の本体部11の前板11bには、バッテリ9の使用状態を表示するためのLED等のランプ10と、外部電源の使用状態を示すLED等のランプ20とが設けられている。
【0043】
この形態によると、圧力調整器が不要な質量式の流量計5を採用しているため、装置構成を小型化することができる。また、見やすい数字の発光表示の表示器8を採用しているため、アセチレンガス,酸素ガスの流量を正確,具体的に表示して目視によって容易に確認することができる。また、水平設置が必要条件とされないため、設置場所に自由度が得られる。また、ケーシング1の本体部11の前板11bに配置されている圧力計7,表示器8を見ながら、流量調整器6の操作部62を操作して酸素ガスの流量を調整することができるため、酸素ガスの流量を微調整することができるようになる。
【0044】
また、アセチレンガスの流通配管2がケーシング1の本体部11の後板11c側に配設され、酸素ガスの流通配管3がケーシング1の本体部11の前板11b側に配設されて、両流通配管2,3の間に作業空間Sが確保されている。そして、ストレーナ4のキャップ42が作業空間Sに向けられている。従って、ストレーナ4のスクリーン41の交換を作業空間Sの内部で実行することができる。特に、ケーシング1の本体部11から蓋部12を取外すと、作業空間Sの側方,上方が開放されることになる。この結果、トレーナ4のスクリーン41の交換が容易となる。
【0045】
さらに、この形態では、ケーシング1の蓋部12に前カバー12c,後カバー12が設けられているため、搬送の際や屋外設置のガス圧接の作業前,作業後に前カバー12c,後カバー12を閉鎖することで、ケーシング1の本体部11の前板11b,後板11cやこれ等に設けられている各部の衝突等による損傷を防止することができる。
【0046】
また、ケーシング1の蓋部12が本体部1に対して庇形で日除け,雨除けの機能を果たすことができるため、屋外設置に好適である。特に、表示器8が液晶画面からなる場合には、日除けの機能は有効である。
【0047】
また、表示器8にバッテリ9で駆動され発光表示の内容を記憶するメモリが設けられているため、ケーブル等による外部電源との接続を解除した後にも、表示器8の発光表示の内容を保存することができ、電源に制約のある屋外での使用に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る流量表示装置を実施するための最良の形態の一部を取外した状態の平面図である。
【図2】図1の取外された一部を取付けようとする状態の斜視図であり、(A)に一部が動作された前方矢視が示され,(B)に他の一部が動作された後方矢視が示されている。
【図3】図1の取外された一部を取付けた状態での正面図である。
【図4】図1の一部を省略した側面断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ケーシング
11 本体部
11a 底板
11b 前板
11c 後板
12 蓋部
12a 側板
12b 天板
12c 前カバー
12d 後カバー
2 流通配管(アセチレンガスの)
3 流通配管(酸素ガスの)
4 ストレーナ
41 スクリーン
5 流量計(質量式の)
6 圧力調整器
62 操作部
7 圧力計
8 表示器
9 バッテリ
S 作業空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチレンガス,酸素ガスの流量をそれぞれ計測する質量式の流量計と、流量計に接続され不純物を捕捉するストレーナと、流量計が計測した流量をそれぞれ数字で発光表示する表示器とを備え、アセチレンガス,酸素ガスの流通配管がケーシングの内部で作業空間を介して相対して配置され、ストレーナのスクリーンの交換作業方向が作業空間側に設定されている流量表示装置。
【請求項2】
請求項1の流量表示装置において、ケーシングは底板,前板,後板で囲まれる本体部と側板,天板で囲まれる蓋部とからなり、アセチレンガス,酸素ガスの流通配管はケーシングの本体部に配設されていることを特徴とする流量表示装置。
【請求項3】
請求項2の流量表示装置において、ケーシングの蓋部は本体部の前板,後板よりも外方へ突出した庇形であることを特徴とする流量表示装置。
【請求項4】
請求項2または3の流量表示装置において、ケーシングの蓋部は天板の上に折畳み開放が可能な前カバー,後カバーが設けられていることを特徴とする流量表示装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかの流量表示装置において、表示器はケーシングの本体部の前板に配置され、酸素ガスの流通配管は流量調整器,圧力計が接続されてケーシングの本体部の前板に沿って配設され、流量調整器は操作部がケーシングの本体部の前板を貫通して外部に突出され、圧力計はケーシングの本体部の前板から目視可能であることを特徴とする流量表示装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかの流量表示装置において、表示器はケーシングの内部に収容されたバッテリで駆動され少なくとも発光表示の内容を記憶するメモリを有していることを特徴とする流量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−264861(P2009−264861A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113375(P2008−113375)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000153720)株式会社白山製作所 (36)
【Fターム(参考)】