流量計
【課題】計測手段をシンプルにすると共に、広範囲の流量を計測すること。
【解決手段】弁体7の駆動部9、駆動部9の制御部11および弁体7に対向して配置された弁座8とを備えると共に、弁体7と弁座8間の流速を計測する流速計測部24、弁体7と弁座8間の間隔を計測する距離計測部30および流速計測部24からの信号と距離計測部30からの信号より弁体7と弁座8間の通過流量を算出する演算部33とを備えている。流体の流量や必要とする測定精度に応じて弁体7と弁座8間の距離を変化させる。これによって流量計測をコンパクトな構成で広範囲に行うことができる。
【解決手段】弁体7の駆動部9、駆動部9の制御部11および弁体7に対向して配置された弁座8とを備えると共に、弁体7と弁座8間の流速を計測する流速計測部24、弁体7と弁座8間の間隔を計測する距離計測部30および流速計測部24からの信号と距離計測部30からの信号より弁体7と弁座8間の通過流量を算出する演算部33とを備えている。流体の流量や必要とする測定精度に応じて弁体7と弁座8間の距離を変化させる。これによって流量計測をコンパクトな構成で広範囲に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉弁の開閉動作と連携して、開口部を通過する流速値を測定し、流量を計測する流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流量計としては特許文献1に記載されている。以下、その構成について図12により説明する。図12において、1は流入口、2は流出口である。3aは第1の開閉手段、4aは第1の計測手段である。3bは第2の開閉手段、4bは第2の計測手段である。この様な構成において、例えば流量が少ないときには第2の開閉手段3bを閉じ、第1の開閉手段3aのみを開放し、第1の計測手段4aで流量を計測する。流量が多いときには第1、第2の両開閉手段3a,3bを開放し、第1と第2の計測手段4a,4bで流量を計測する。全体の流量はこれらの流量の和で計算される。
【特許文献1】特開平10−320545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のものでは、流量に応じて複数の流路を用いて計測する必要があるため、複数の計測手段と複数の開閉手段とが必要とされていた。また、大きな流量に対応するためには流路は大きく(多く)とりたいが、一方、測定精度が低下するという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために本発明は、弁体と弁座間を流れる流体の流速を計測する流速計測部と、弁体と弁座間の間隔を計測する距離計測部とを備え、流速と距離から流量を算出し、流量に応じて弁体と弁座間の距離を所定の距離に変化させるものである。そして、ひとつの弁部のみで流量を計測する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の流量計によれば、流量に応じて弁体と弁座間との距離を変えることにより、ひとつの計測部のみで広範囲の流量を計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、弁体と、前記弁体の駆動部と、前記駆動部の制御部と、前記弁体に対向して配置された弁座と、前記弁体と前記弁座間を流れる流体の流速を計測する流速計測部と、前記弁体と前記弁座間の間隔を計測する距離計測部と、前記流速計測部からの信号と前記距離計測部からの信号より前記弁体と前記弁座間を流れる前記流体の流量を算出する演算部とを備えた流量計において、前記流体の流量に応じて前記弁体と前記弁座間の距離を所定の距離に変化させる流量計であり、ひとつの弁部のみで広い流量範囲の計測が行え、流量計測を行うに際して、切換えの段数を少なくすることができる。
【0007】
また本発明は、流量が大きいときの前記所定の距離が、流量が小さいときの前記所定の距離よりも大きいものであり、流量が大きいときには前記弁体と前記弁座間の距離を大きくして流量を確保するとともに、流量が小さいときは前記弁体と前記弁座間の距離を小さくして、測定精度を高めることができる。
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0009】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における流量計の外装を含む外観図、図2は流量計の外装を含む断面図、図3は流量計における計測系の構成を示す図、図4は図3のA−B線断面図、図5は同流量計の動作図、図6は流量計測動作のフローチャート、図7は流量計測範囲を示すグラフである。
【0010】
図1において、5はケーシング、5aは流入部、5bは流出部である。図2において、6aは計測構成部、6bは駆動構成部である。図3において、7は外形が軸対称に形成された弁体、8は外形が軸対称に形成された弁座である。9は弁体7を駆動するための駆動部、10は弁体7と駆動部9を接続する駆動軸である。11は制御部であり、駆動部9に対して信号線12を介して駆動信号が送られる。
【0011】
また、13は弁体7と弁座8の間隙にて円環状に形成された流れの入口部であり、14は円形状の出口部である。15は 弁体7に設けられた平坦部であり、16は平坦部15に続く傾斜部である。また、17は 弁座8に設けられた平坦部であり、18は平坦部17に続く傾斜部である。19は弁体7の傾斜部16に設けられた第1の窪み部であり、20は第1の窪み部19に配置された第1の超音波振動子である。21は弁座8の傾斜部18に設けられた第2の窪み部であり、22は第2の窪み部21に配置された第2の超音波振動子である。23は流速検知部である。第1の超音波振動子20、第2の超音波振動子22、および流速検知部23により流速計測部24が形成されている。
【0012】
また、25は信号処理部であり、信号線26を介して第1の超音波振動子20からの信号が入力され、信号線27を介して第2の超音波振動子22からの信号が入力される。28は第3の超音波振動子であり、弁体7の傾斜面29と共に距離計測部30を形成している。傾斜面29は傾斜部16の一部である。
【0013】
31は信号処理部であり信号線32を介して第3の超音波振動子28の信号が入力される。33は演算部であり、34は処理部25と演算部33とを接続する信号線、35は処理部31と演算部33とを接続する信号線である。
【0014】
また、36は演算部33と制御部11とを接続する信号線である。図4は図3のA−B線断面を示しており、第1の超音波振動子20、および第3の超音波振動子28はこの実施の形態では中心に対して対向した位置に配置されている。図6において、37は開始命令、38は距離計測命令、39は流速計測命令、40は流量算出命令である。41は計測流量域かどうかの判断命令である。流量算出命令における算出流量が計測流量域内であればYESの側に分岐され、計測流量域外であればNoの側に分岐される。また、42は弁体移動命令、43はインターバル設定命令である。
【0015】
次に動作、作用について説明する。図1において、流入部5aより流入した流れは、流出部5bより流出する。内部構造は図2に示されており、流入部5aより流入した流れは計測構成部6aを通過して、流出部5bより流出する。図3には、計測構成部6aについての詳細が示されており、入口部13より流入した流れは流速検知部23を通過して出口部14より流出する。
【0016】
弁体7と弁座8の間を流れる流体の流速計測は、第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子22間の双方向における伝搬伝達時間差を利用した公知の方法で行われる。第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子22に対する送受信指示は処理部25と、これら振動子間において、信号線26、および信号線27を介して行われる。
【0017】
弁体7と弁座8の距離計測は、第3の超音波振動子28から発した超音波が弁体7の傾
斜面29にて反射して帰ってくるまでの時間計測により行われる。超音波振動子28に対する送受信指示は処理部31との間で信号線32を介して行われる。処理部25にて得られた流速に関する処理結果は信号線34を介して、また、処理部31にて得られた距離に関する処理結果は信号線35を介して、演算部33に送られる。演算部33ではこれらの信号を基に、下記の演算式に基づき流量を算出する。
【0018】
Q=(2πr)×(d)×(v)
ここで、Qは流量、rは図3に示してあるように、弁体7の中心軸mと流速検知部23の中央軸との距離、dは弁体7と弁座8との距離、vは流速検知部23における流速である。
【0019】
次に図6により演算部33の内容を説明する。いま、弁体7が所定位置のときに、流体が入口部13より流入したとすると、演算部33では図6のフローチャートに従って、プログラムが始動する。図6において開始命令37によりプログラムが開始する。まず、距離計測命令38に基づいて、弁体7と弁座8間の距離dが計測される。次に流速計測命令39に基づいて、流速検知部23での流速vが計測される。これらの値を基にして、式(1)に基づき、流量算出命令40により流量(Q)が算出される。
【0020】
距離計測命令38の実施により、弁体7と弁座8間の距離が特定されるが、これにより現在設定されている弁体7の位置が図7における抵抗曲線(a)もしくは(b)(設定が2種類の場合)のいずれであるかが判定される。いま、設定が(a)(d=d1)にされているとする。また、これらの抵抗曲線(a)における計測流領域をQ>qa、抵抗曲線(b)における計測流領域をQ<qbとする。計測流量域判断命令41では、この流量が、その抵抗曲線における計測流量域内かどうかが判定される。
【0021】
いま、算出された流量が計測流量域内(この場合にはQ>qa)であれば、計測流量域判断命令41はYesの側に分岐され、インターバル設定命令43により指定された経過時間の後、再度距離計測命令38以下のフローを継続する。算出された流量が計測流量域外(この場合にはQ<qa)であれば、計測流量域判断命令41はNoの側に分岐され、弁体移動命令42により、予め設定された量だけ、弁体7を下方に移動する。
【0022】
図5はこの様にして弁体7が図3の状態から移動し、弁体7と弁座8間の距離dが小さくなった(d=d2<d1)状態を示している。この場合、図7における抵抗曲線は(b)の側に移行する。その後、図6に示したフローに基づき、上に示したのと同様の流量計測動作が実施される。このとき計測流量域かどうかはQ=qbを基準にして判定され、Q>qbのとき計測流量域外、Q<qbのとき計測流量域内と判定される。
【0023】
次に、流量計測範囲と計測精度について説明する。いま、弁体7と弁座8間の距離が比較的小さい値で一定(例えばd=d2)であるとする。流量計に対して圧力損失が例えばPmaxにて規制されているとき、最大計測流量はQ2である。しかしながら、弁体7と弁座8間の距離を変化(例えばd=d1)することにより、最大計測流量はQ1(Q2<Q1)に拡大することができる。
【0024】
また、弁体7と弁座8間の距離が比較的大きい値で一定(例えばd=d1)であるとすると、流量が小さくなった場合に計測部の流速が小さいため、流速計測の精度が悪くなる。しかしながら、弁体7と弁座8間の距離を変化(例えばd=d2)することにより、計測部の流速を大きくして計測精度を向上させることができる。なお、上記実施の形態において、流速計測部24と距離計測部30との配置関係は上記に限るものではなく、相互の影響が少ないような位置関係であれば、任意の位置に配置可能である。
【0025】
また、第3の超音波振動子を弁座8の傾斜部18に配置したが、この位置はこれに限るものではない。流量を算出するにあたり必要な弁体7と弁座8間の距離(d)が求められる位置であれば良い。例えば、弁座8のフラット部17に配置したり、弁体7の側に配置することも可能である。この様に、流速計測部24と弁体7、弁座8と一体構成とすることにより、コンパクトで流量範囲の広い流量計を構成することができる。
【0026】
(実施の形態2)
図8は本発明の実施の形態2における流量計の構成図である。44は弁座8にとりつけられたフローセンサ、45は流速検知部であり、全体として流速計測部46を形成している。47は処理部であり、48,49、50は信号線である。本実施の形態2において、上記以外の構成は実施の形態1と同様であるため、番号は実施の形態1と同じものを用い、説明は省略する。
【0027】
次に動作、作用を説明する。流速計測部46における計測はフローセンサ44を用いて行われる。フローセンサ44にて計測された信号は信号線48を介して処理部47に送られる。また、処理部47にて処理された内容は信号線50を介して演算部35に送られる。
【0028】
流量計測動作は実施の形態1の図6におけるフローチャートで示したものと同様のプロセスにて実施される。本実施の形態ではフローセンサ44を弁座8に取りつけた例を示したが、弁体7に取りつけても、弁体7もしくは弁座8の平坦部にとりつけても上記と同様の動作は可能である。
【0029】
また、流速計測部45と距離計測部30との配置関係は上記に限るものではない。相互に影響を与えないような位置関係であれば、任意の位置に配置可能である。以上に示したように、流速計測部45にフローセンサを用いる構成としたため、1つのセンサで流量計測が可能となり、よりシンプルな流量計を構成することができる。
【0030】
(実施の形態3)
図9は本発明の実施の形態3における流量計の構成図である。図9において51は距離計測部であり、52はレーザ送信部、53はレーザ受信部、54はレーザ反射部である。55、56は信号線、57は処理部である。本実施の形態3において、上記以外の構成は実施の形態1と同様であるため、番号は実施の形態1と同じものを用い、説明は省略する。
【0031】
次に動作、作用を説明する。この場合、弁体7と弁座8間の距離計測は、レーザ送信部52から発したレーザが弁体7のレーザ反射部54にて反射し、レーザ受信部53で受信する方式を用いて行われる。レーザ送信部52、レーザ受信部53に対する送受信指示は処理部57との間で信号線55、56を介して行われる。以上に示したように、弁体7と弁座8間の計測をレーザで行う構成としたため、精度の良い距離計測が可能となる。
【0032】
(実施の形態4)
図10は本発明の実施の形態4における流量計の構成図である。図10において5
8は流速兼距離計測部である。59,60は信号線である。61は処理部であり、62は信号線である。本実施の形態3において、上記以外の構成は実施の形態1と同様であるため、番号は実施の形態1と同じものを用い、説明は省略する。
【0033】
次に動作、作用を説明する。流速計測は、実施の形態1と同様に第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子22間の双方向における伝達時間差を利用した公知の方法で行われる。第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子22に対する送受信指示は処理部6
1とこれら振動子間において、信号線59、および信号線60を介して行われる。
【0034】
また、距離計測も実施の形態1と同様に、例えば第1の超音波振動子20より発した超音波が、第2の超音波振動子22にて反射して帰ってくるまでの時間計測により行われる。第1の超音波振動子20に対する送受信指示も処理部61との間で信号線59を介して行われる。この場合、第1の窪み部19、第2の窪み部21の無効距離は処理部61で差引かれ、有効距離dが算出される様になっている。
【0035】
流量計測動作は実施の形態1で示したものと同様のプロセスにて実施される。この実施の形態において、距離計測用に第1の超音波振動子20を用いたが、第2の超音波振動子22を用いてもよい。以上に示したように、流速と距離を流速兼距離計測部58で行う構成としたため、一対の超音波センサのみで流量計測が可能となり、シンプルな流量計を構成することができる。また、距離計測を超音波で行う構成としたため、流量計測の超音波計測回路との共用化が可能となる。
【0036】
(実施の形態5)
図11は本発明の実施の形態5における流量計の構成図である。図11において63は制御部である。制御部63は移動信号発生部64と制御信号発生部65とにより構成されている。66,67は信号線である。本実施の形態5において、上記以外の構成は実施の形態1と同様であるため、番号は実施の形態1と同じものを用い、説明は省略する。
【0037】
次に動作、作用を説明する。駆動部9の移動は移動信号発生部64からの指示により、制御信号発生部65を介して送られることにより行われる。この場合、弁体7と弁座8の間の距離計測は駆動部9に対する移動信号発生部64にて行われることになる。例えば駆動部9がモータであるとすると、弁体7の移動は間接的に移動信号により読み取れるため、移動信号発生部64からの信号が距離信号に相当する。すなわち、移動信号発生部64は距離計測部に相当する。この距離信号は信号線67を介して、演算部33に送られる。
【0038】
以上に示したように、距離計測信号を駆動部9の移動信号を用いることにより、弁体8に距離計測部を設ける必要がなく、コンパクトな構成が可能となる。上記実施の形態において、駆動部9としてモータを用いた場合には、回転位置に対応したエンコーダを用いることにより、距離検知を行うことが出来る。また、駆動部9としてステッピングモータを使用した場合には、送りのパルスをカウントすることにより、距離検知を行うことが出来る。また、駆動部9として、多段駆動型ソレノイド弁を用いた場合には、位置設定精度が向上するため、正確な距離検知を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における流量計の外装を含む外観斜視図
【図2】同流量計の外装を含む断面図
【図3】同流量計の計測系を示す構成図
【図4】図3におけるA−B線断面図
【図5】同流量計の動作を説明する断面図
【図6】同流量の計測演算部のフローチャート
【図7】流量計の圧力と流量の関係を示す特性図
【図8】本発明の実施の形態2における流量計の構成図
【図9】本発明の実施の形態3における流量計の構成図
【図10】本発明の実施の形態4における流量計の構成図
【図11】本発明の実施の形態5における流量計の構成図
【図12】従来の流量計を示す構成図
【符号の説明】
【0040】
7 弁体
8 弁座
9 駆動部
11 制御部
24 流速計測部
30 距離計測部
33 演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉弁の開閉動作と連携して、開口部を通過する流速値を測定し、流量を計測する流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流量計としては特許文献1に記載されている。以下、その構成について図12により説明する。図12において、1は流入口、2は流出口である。3aは第1の開閉手段、4aは第1の計測手段である。3bは第2の開閉手段、4bは第2の計測手段である。この様な構成において、例えば流量が少ないときには第2の開閉手段3bを閉じ、第1の開閉手段3aのみを開放し、第1の計測手段4aで流量を計測する。流量が多いときには第1、第2の両開閉手段3a,3bを開放し、第1と第2の計測手段4a,4bで流量を計測する。全体の流量はこれらの流量の和で計算される。
【特許文献1】特開平10−320545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のものでは、流量に応じて複数の流路を用いて計測する必要があるため、複数の計測手段と複数の開閉手段とが必要とされていた。また、大きな流量に対応するためには流路は大きく(多く)とりたいが、一方、測定精度が低下するという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために本発明は、弁体と弁座間を流れる流体の流速を計測する流速計測部と、弁体と弁座間の間隔を計測する距離計測部とを備え、流速と距離から流量を算出し、流量に応じて弁体と弁座間の距離を所定の距離に変化させるものである。そして、ひとつの弁部のみで流量を計測する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の流量計によれば、流量に応じて弁体と弁座間との距離を変えることにより、ひとつの計測部のみで広範囲の流量を計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、弁体と、前記弁体の駆動部と、前記駆動部の制御部と、前記弁体に対向して配置された弁座と、前記弁体と前記弁座間を流れる流体の流速を計測する流速計測部と、前記弁体と前記弁座間の間隔を計測する距離計測部と、前記流速計測部からの信号と前記距離計測部からの信号より前記弁体と前記弁座間を流れる前記流体の流量を算出する演算部とを備えた流量計において、前記流体の流量に応じて前記弁体と前記弁座間の距離を所定の距離に変化させる流量計であり、ひとつの弁部のみで広い流量範囲の計測が行え、流量計測を行うに際して、切換えの段数を少なくすることができる。
【0007】
また本発明は、流量が大きいときの前記所定の距離が、流量が小さいときの前記所定の距離よりも大きいものであり、流量が大きいときには前記弁体と前記弁座間の距離を大きくして流量を確保するとともに、流量が小さいときは前記弁体と前記弁座間の距離を小さくして、測定精度を高めることができる。
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0009】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における流量計の外装を含む外観図、図2は流量計の外装を含む断面図、図3は流量計における計測系の構成を示す図、図4は図3のA−B線断面図、図5は同流量計の動作図、図6は流量計測動作のフローチャート、図7は流量計測範囲を示すグラフである。
【0010】
図1において、5はケーシング、5aは流入部、5bは流出部である。図2において、6aは計測構成部、6bは駆動構成部である。図3において、7は外形が軸対称に形成された弁体、8は外形が軸対称に形成された弁座である。9は弁体7を駆動するための駆動部、10は弁体7と駆動部9を接続する駆動軸である。11は制御部であり、駆動部9に対して信号線12を介して駆動信号が送られる。
【0011】
また、13は弁体7と弁座8の間隙にて円環状に形成された流れの入口部であり、14は円形状の出口部である。15は 弁体7に設けられた平坦部であり、16は平坦部15に続く傾斜部である。また、17は 弁座8に設けられた平坦部であり、18は平坦部17に続く傾斜部である。19は弁体7の傾斜部16に設けられた第1の窪み部であり、20は第1の窪み部19に配置された第1の超音波振動子である。21は弁座8の傾斜部18に設けられた第2の窪み部であり、22は第2の窪み部21に配置された第2の超音波振動子である。23は流速検知部である。第1の超音波振動子20、第2の超音波振動子22、および流速検知部23により流速計測部24が形成されている。
【0012】
また、25は信号処理部であり、信号線26を介して第1の超音波振動子20からの信号が入力され、信号線27を介して第2の超音波振動子22からの信号が入力される。28は第3の超音波振動子であり、弁体7の傾斜面29と共に距離計測部30を形成している。傾斜面29は傾斜部16の一部である。
【0013】
31は信号処理部であり信号線32を介して第3の超音波振動子28の信号が入力される。33は演算部であり、34は処理部25と演算部33とを接続する信号線、35は処理部31と演算部33とを接続する信号線である。
【0014】
また、36は演算部33と制御部11とを接続する信号線である。図4は図3のA−B線断面を示しており、第1の超音波振動子20、および第3の超音波振動子28はこの実施の形態では中心に対して対向した位置に配置されている。図6において、37は開始命令、38は距離計測命令、39は流速計測命令、40は流量算出命令である。41は計測流量域かどうかの判断命令である。流量算出命令における算出流量が計測流量域内であればYESの側に分岐され、計測流量域外であればNoの側に分岐される。また、42は弁体移動命令、43はインターバル設定命令である。
【0015】
次に動作、作用について説明する。図1において、流入部5aより流入した流れは、流出部5bより流出する。内部構造は図2に示されており、流入部5aより流入した流れは計測構成部6aを通過して、流出部5bより流出する。図3には、計測構成部6aについての詳細が示されており、入口部13より流入した流れは流速検知部23を通過して出口部14より流出する。
【0016】
弁体7と弁座8の間を流れる流体の流速計測は、第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子22間の双方向における伝搬伝達時間差を利用した公知の方法で行われる。第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子22に対する送受信指示は処理部25と、これら振動子間において、信号線26、および信号線27を介して行われる。
【0017】
弁体7と弁座8の距離計測は、第3の超音波振動子28から発した超音波が弁体7の傾
斜面29にて反射して帰ってくるまでの時間計測により行われる。超音波振動子28に対する送受信指示は処理部31との間で信号線32を介して行われる。処理部25にて得られた流速に関する処理結果は信号線34を介して、また、処理部31にて得られた距離に関する処理結果は信号線35を介して、演算部33に送られる。演算部33ではこれらの信号を基に、下記の演算式に基づき流量を算出する。
【0018】
Q=(2πr)×(d)×(v)
ここで、Qは流量、rは図3に示してあるように、弁体7の中心軸mと流速検知部23の中央軸との距離、dは弁体7と弁座8との距離、vは流速検知部23における流速である。
【0019】
次に図6により演算部33の内容を説明する。いま、弁体7が所定位置のときに、流体が入口部13より流入したとすると、演算部33では図6のフローチャートに従って、プログラムが始動する。図6において開始命令37によりプログラムが開始する。まず、距離計測命令38に基づいて、弁体7と弁座8間の距離dが計測される。次に流速計測命令39に基づいて、流速検知部23での流速vが計測される。これらの値を基にして、式(1)に基づき、流量算出命令40により流量(Q)が算出される。
【0020】
距離計測命令38の実施により、弁体7と弁座8間の距離が特定されるが、これにより現在設定されている弁体7の位置が図7における抵抗曲線(a)もしくは(b)(設定が2種類の場合)のいずれであるかが判定される。いま、設定が(a)(d=d1)にされているとする。また、これらの抵抗曲線(a)における計測流領域をQ>qa、抵抗曲線(b)における計測流領域をQ<qbとする。計測流量域判断命令41では、この流量が、その抵抗曲線における計測流量域内かどうかが判定される。
【0021】
いま、算出された流量が計測流量域内(この場合にはQ>qa)であれば、計測流量域判断命令41はYesの側に分岐され、インターバル設定命令43により指定された経過時間の後、再度距離計測命令38以下のフローを継続する。算出された流量が計測流量域外(この場合にはQ<qa)であれば、計測流量域判断命令41はNoの側に分岐され、弁体移動命令42により、予め設定された量だけ、弁体7を下方に移動する。
【0022】
図5はこの様にして弁体7が図3の状態から移動し、弁体7と弁座8間の距離dが小さくなった(d=d2<d1)状態を示している。この場合、図7における抵抗曲線は(b)の側に移行する。その後、図6に示したフローに基づき、上に示したのと同様の流量計測動作が実施される。このとき計測流量域かどうかはQ=qbを基準にして判定され、Q>qbのとき計測流量域外、Q<qbのとき計測流量域内と判定される。
【0023】
次に、流量計測範囲と計測精度について説明する。いま、弁体7と弁座8間の距離が比較的小さい値で一定(例えばd=d2)であるとする。流量計に対して圧力損失が例えばPmaxにて規制されているとき、最大計測流量はQ2である。しかしながら、弁体7と弁座8間の距離を変化(例えばd=d1)することにより、最大計測流量はQ1(Q2<Q1)に拡大することができる。
【0024】
また、弁体7と弁座8間の距離が比較的大きい値で一定(例えばd=d1)であるとすると、流量が小さくなった場合に計測部の流速が小さいため、流速計測の精度が悪くなる。しかしながら、弁体7と弁座8間の距離を変化(例えばd=d2)することにより、計測部の流速を大きくして計測精度を向上させることができる。なお、上記実施の形態において、流速計測部24と距離計測部30との配置関係は上記に限るものではなく、相互の影響が少ないような位置関係であれば、任意の位置に配置可能である。
【0025】
また、第3の超音波振動子を弁座8の傾斜部18に配置したが、この位置はこれに限るものではない。流量を算出するにあたり必要な弁体7と弁座8間の距離(d)が求められる位置であれば良い。例えば、弁座8のフラット部17に配置したり、弁体7の側に配置することも可能である。この様に、流速計測部24と弁体7、弁座8と一体構成とすることにより、コンパクトで流量範囲の広い流量計を構成することができる。
【0026】
(実施の形態2)
図8は本発明の実施の形態2における流量計の構成図である。44は弁座8にとりつけられたフローセンサ、45は流速検知部であり、全体として流速計測部46を形成している。47は処理部であり、48,49、50は信号線である。本実施の形態2において、上記以外の構成は実施の形態1と同様であるため、番号は実施の形態1と同じものを用い、説明は省略する。
【0027】
次に動作、作用を説明する。流速計測部46における計測はフローセンサ44を用いて行われる。フローセンサ44にて計測された信号は信号線48を介して処理部47に送られる。また、処理部47にて処理された内容は信号線50を介して演算部35に送られる。
【0028】
流量計測動作は実施の形態1の図6におけるフローチャートで示したものと同様のプロセスにて実施される。本実施の形態ではフローセンサ44を弁座8に取りつけた例を示したが、弁体7に取りつけても、弁体7もしくは弁座8の平坦部にとりつけても上記と同様の動作は可能である。
【0029】
また、流速計測部45と距離計測部30との配置関係は上記に限るものではない。相互に影響を与えないような位置関係であれば、任意の位置に配置可能である。以上に示したように、流速計測部45にフローセンサを用いる構成としたため、1つのセンサで流量計測が可能となり、よりシンプルな流量計を構成することができる。
【0030】
(実施の形態3)
図9は本発明の実施の形態3における流量計の構成図である。図9において51は距離計測部であり、52はレーザ送信部、53はレーザ受信部、54はレーザ反射部である。55、56は信号線、57は処理部である。本実施の形態3において、上記以外の構成は実施の形態1と同様であるため、番号は実施の形態1と同じものを用い、説明は省略する。
【0031】
次に動作、作用を説明する。この場合、弁体7と弁座8間の距離計測は、レーザ送信部52から発したレーザが弁体7のレーザ反射部54にて反射し、レーザ受信部53で受信する方式を用いて行われる。レーザ送信部52、レーザ受信部53に対する送受信指示は処理部57との間で信号線55、56を介して行われる。以上に示したように、弁体7と弁座8間の計測をレーザで行う構成としたため、精度の良い距離計測が可能となる。
【0032】
(実施の形態4)
図10は本発明の実施の形態4における流量計の構成図である。図10において5
8は流速兼距離計測部である。59,60は信号線である。61は処理部であり、62は信号線である。本実施の形態3において、上記以外の構成は実施の形態1と同様であるため、番号は実施の形態1と同じものを用い、説明は省略する。
【0033】
次に動作、作用を説明する。流速計測は、実施の形態1と同様に第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子22間の双方向における伝達時間差を利用した公知の方法で行われる。第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子22に対する送受信指示は処理部6
1とこれら振動子間において、信号線59、および信号線60を介して行われる。
【0034】
また、距離計測も実施の形態1と同様に、例えば第1の超音波振動子20より発した超音波が、第2の超音波振動子22にて反射して帰ってくるまでの時間計測により行われる。第1の超音波振動子20に対する送受信指示も処理部61との間で信号線59を介して行われる。この場合、第1の窪み部19、第2の窪み部21の無効距離は処理部61で差引かれ、有効距離dが算出される様になっている。
【0035】
流量計測動作は実施の形態1で示したものと同様のプロセスにて実施される。この実施の形態において、距離計測用に第1の超音波振動子20を用いたが、第2の超音波振動子22を用いてもよい。以上に示したように、流速と距離を流速兼距離計測部58で行う構成としたため、一対の超音波センサのみで流量計測が可能となり、シンプルな流量計を構成することができる。また、距離計測を超音波で行う構成としたため、流量計測の超音波計測回路との共用化が可能となる。
【0036】
(実施の形態5)
図11は本発明の実施の形態5における流量計の構成図である。図11において63は制御部である。制御部63は移動信号発生部64と制御信号発生部65とにより構成されている。66,67は信号線である。本実施の形態5において、上記以外の構成は実施の形態1と同様であるため、番号は実施の形態1と同じものを用い、説明は省略する。
【0037】
次に動作、作用を説明する。駆動部9の移動は移動信号発生部64からの指示により、制御信号発生部65を介して送られることにより行われる。この場合、弁体7と弁座8の間の距離計測は駆動部9に対する移動信号発生部64にて行われることになる。例えば駆動部9がモータであるとすると、弁体7の移動は間接的に移動信号により読み取れるため、移動信号発生部64からの信号が距離信号に相当する。すなわち、移動信号発生部64は距離計測部に相当する。この距離信号は信号線67を介して、演算部33に送られる。
【0038】
以上に示したように、距離計測信号を駆動部9の移動信号を用いることにより、弁体8に距離計測部を設ける必要がなく、コンパクトな構成が可能となる。上記実施の形態において、駆動部9としてモータを用いた場合には、回転位置に対応したエンコーダを用いることにより、距離検知を行うことが出来る。また、駆動部9としてステッピングモータを使用した場合には、送りのパルスをカウントすることにより、距離検知を行うことが出来る。また、駆動部9として、多段駆動型ソレノイド弁を用いた場合には、位置設定精度が向上するため、正確な距離検知を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における流量計の外装を含む外観斜視図
【図2】同流量計の外装を含む断面図
【図3】同流量計の計測系を示す構成図
【図4】図3におけるA−B線断面図
【図5】同流量計の動作を説明する断面図
【図6】同流量の計測演算部のフローチャート
【図7】流量計の圧力と流量の関係を示す特性図
【図8】本発明の実施の形態2における流量計の構成図
【図9】本発明の実施の形態3における流量計の構成図
【図10】本発明の実施の形態4における流量計の構成図
【図11】本発明の実施の形態5における流量計の構成図
【図12】従来の流量計を示す構成図
【符号の説明】
【0040】
7 弁体
8 弁座
9 駆動部
11 制御部
24 流速計測部
30 距離計測部
33 演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、前記弁体の駆動部と、前記駆動部の制御部と、前記弁体に対向して配置された弁座と、前記弁体と前記弁座間を流れる流体の流速を計測する流速計測部と、前記弁体と前記弁座間の間隔を計測する距離計測部と、前記流速計測部からの信号と前記距離計測部からの信号より前記弁体と前記弁座間を流れる前記流体の流量を算出する演算部とを備えた流量計において、前記流体の流量に応じて前記弁体と前記弁座間の距離を所定の距離に変化させる流量計。
【請求項2】
流量が大きいときの前記所定の距離が、流量が小さいときの前記所定の距離よりも大きい請求項1記載の流量計。
【請求項1】
弁体と、前記弁体の駆動部と、前記駆動部の制御部と、前記弁体に対向して配置された弁座と、前記弁体と前記弁座間を流れる流体の流速を計測する流速計測部と、前記弁体と前記弁座間の間隔を計測する距離計測部と、前記流速計測部からの信号と前記距離計測部からの信号より前記弁体と前記弁座間を流れる前記流体の流量を算出する演算部とを備えた流量計において、前記流体の流量に応じて前記弁体と前記弁座間の距離を所定の距離に変化させる流量計。
【請求項2】
流量が大きいときの前記所定の距離が、流量が小さいときの前記所定の距離よりも大きい請求項1記載の流量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−151806(P2008−151806A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57464(P2008−57464)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【分割の表示】特願2002−296208(P2002−296208)の分割
【原出願日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【分割の表示】特願2002−296208(P2002−296208)の分割
【原出願日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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