説明

流量計

【課題】破損しにくい流量計を提供する。
【解決手段】流路が設けられた筐体と、流路を流れる流体の流量又は流速を検出するための流れセンサ8と、を備える流量計であって、流れセンサ8が、凹部66が設けられた基板60と、流路と平行に凹部66を橋状に跨ぐ膜165と、流路に沿って膜165に設けられた、第1の測温素子62、発熱素子61、及び第2の測温素子63と、を備える、流量計。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測技術に関し、特に流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
工業炉、ボイラ、及び空調熱源機器等においては、適切な流量の流体が供給されることが求められている。そのため、流量を正確に計測するための流量計が種々開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−239129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流量計の計測対象となる流体は、パイプ等の流路を流れてくる。流体は清浄であることが好ましいが、ごみ、ちり、ほこり等のダストが、流体に運ばれてくることもあり得る。ダストが流量計に付着すると、流量計の破損の原因となり得る。そこで、本発明は、破損しにくい流量計を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、(a)流路が設けられた筐体と、(b)流路を流れる流体の流量又は流速を検出するための流れセンサと、を備える流量計であって、流れセンサは、(c)凹部が設けられた基板と、(d)流路と平行に凹部を橋状に跨ぐ膜と、(e)流路に沿って膜に設けられた、第1の測温素子、発熱素子、及び第2の測温素子と、を備える、流量計が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、破損しにくい流量計を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る流量計の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る流れセンサの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る図2に示した流れセンサのIII−III方向から見た断面図である。
【図4】本発明の比較例に係る流れセンサの斜視図である。
【図5】本発明の比較例に係る図4に示した流れセンサのV−V方向から見た断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る流れセンサの上面図である。
【図7】本発明の比較例に係る流れセンサの上面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る流れセンサの斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る図8に示した流れセンサのVX−VX方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1に示す第1の実施の形態に係る流量計は、パイプ状の流路1が設けられた筐体2と、流路1を流れる流体の流量又は流速を検出するための流れセンサ8と、を備える。流体は、気体であっても、液体であってもよい。また、流量計の構成を耐腐食性にすることにより、流体は腐食性であってもよい。流れセンサ8は、流量センサ、あるは流速センサであり、斜視図である図2、及びIII−III方向から見た断面図である図3に示すように、凹部66が設けられた基板60と、流路1と平行に凹部66を橋状に跨ぐ膜165と、を備える。凹部66を橋状に跨ぐ膜165は、基板60の表面を覆う膜65と連続している。膜165及び膜65は、例えば絶縁膜である。さらに、流れセンサ8は、流路1に沿って膜165に設けられた、第1の測温素子62、発熱素子61、及び第2の測温素子63と、を備える。具体的には、第1の測温素子62は、発熱素子61に対して、流路1の上流側に配置されている。また、第2の測温素子63は、発熱素子61に対して、流路1の下流側に配置されている。
【0010】
なお、流れセンサ8が、図1に示すように、流量計の流路1の天井面に設けられた場合、図3に示す流れセンサ8の上下は反対になる。
【0011】
図2及び図3に示す基板60の厚みは、例えば0.5mmである。また、基板60の縦横の寸法は、例えばそれぞれ1.5mm程度である。基板60の材料としては、シリコン(Si)あるいは石英ガラス(SiO2)等が使用可能である。凹部66は、異方性エッチングあるいはサンドブラスト等により形成される。凹部66の深さ方向に対して垂直な断面の形状は、例えば正方形等の四辺形である。凹部36は、例えば、四辺形の断面の対角線の一つが、流路1を流れる流体の進行方向と平行になるように、基板60に設けられている。凹部66を橋状に跨ぐ膜165は、断熱性のダイアフラムをなしている。例えば、膜165は、凹部36の四辺形の断面の対角線の一つの上に配置されており、膜165の両側の縁は、流路1を流れる流体の進行方向と平行である。膜165が凹部66を橋状に跨ぐことにより、凹部66の内部が膜165の両側から露出し、凹部66内のガスの置換が速くなる。膜165及び膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)あるいは窒化ケイ素(SiNX)等の絶縁膜が使用可能である。
【0012】
発熱素子61は、凹部66を橋状に跨ぐ膜165の中心に配置されている。発熱素子61は、例えば抵抗器であり、電力を与えられて発熱し、流路1に流れる流体を、流体の温度よりも一定温度、例えば10℃高くなるよう、加熱する。第1の測温素子62及び第2の測温素子63は、例えば抵抗器等の受動素子等の電子素子であり、雰囲気ガスのガス温度に依存した電気信号を出力する。第1の測温素子62は発熱素子61より流路1の上流側の温度を検出するために用いられ、第2の測温素子63は発熱素子61より流路1の下流側の温度を検出するために用いられる。発熱素子61、第1の測温素子62、及び第2の測温素子63のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
【0013】
図1に示す流路1中の流体が静止している場合、図2及び図3に示す発熱素子61から流体に加えられた熱は、上流方向と下流方向へ対称的に拡散する。したがって、第1の測温素子62及び第2の測温素子63の温度は等しくなり、白金等からなる第1の測温素子62及び第2の測温素子63の電気抵抗は等しくなる。これに対し、図1に示す流路1中の流体が上流から下流に流れている場合、図2及び図3に示す発熱素子61から流体に加えられた熱は、下流方向に運ばれる。したがって、上流側の第1の測温素子62の温度よりも、下流側の第2の測温素子63の温度が高くなる。そのため、第1の測温素子62の電気抵抗と、第2の測温素子63の電気抵抗と、に差が生じる。第2の測温素子63の電気抵抗と、第1の測温素子62の電気抵抗と、の差は、図1に示す流路1中の流体の速度と相関する。そのため、第2の測温素子63の電気抵抗と、第1の測温素子62の電気抵抗と、の差から、流路1を流れる流体の流量あるいは流速が求められる。
【0014】
ここで、図4に示すように、流れセンサ108の膜265が、流路1を流れる流体の進行方向に対して垂直に凹部66を跨ぐ場合、図5に示すように、凹部66を橋状に跨ぐ膜265の縁に、流体に運ばれてきたダスト90がひっかかって付着し得る。膜265にダスト90が付着すると、ダスト90の重みやダスト90により増加する空気抵抗のため、膜265に応力が加わり、膜265に破損が生じ得る。これに対し、第1の実施の形態に係る流量計の流れセンサ8においては、図2及び図3に示すように、流路1と平行に膜165が凹部66を跨ぐため、膜165の縁にダストが付着しにくい。そのため、膜165に破損が生じにくい。よって、第1の実施の形態に係る流量計は、長い寿命を実現することが可能である。
【0015】
また、短冊状の発熱素子61の長手方向が、流路1を流れる流体の進行方向に対して垂直である場合、図6に示す流路1と平行に凹部66を跨ぐ膜165に設けられた発熱素子61と、基板60と、の距離aは、図7に示す流路1に対して垂直に凹部66を跨ぐ膜265に設けられた発熱素子61と、基板60と、の距離bよりも長くなる。そのため、膜165を介した基板60への熱伝導を抑制することも可能となる。結果として、発熱素子61の消費電力を抑制することが可能となる。また、流体が発熱素子61で効率良く加熱されるため、第1の測温素子62及び第2の測温素子63による温度変化の検出時間が短縮される。
【0016】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る流量計の図8及び図9に示す流れセンサ8は、凹部66を橋状に跨ぐ膜165に、スリット71、72が設けられている。スリット71は、第1の測温素子62の上流側に設けられている。また、スリット72は、第2の測温素子63の下流側に設けられている。スリット71、72を設けることにより、発熱素子61で生じた熱が、基板60に伝わりにくくなる。第2の実施の形態に係る流量計のその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0017】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、第1の実施の形態では、図2及び図3に示す凹部66の深さ方向に対して垂直な断面の形状が、四辺形である例を説明した。これに対し、凹部の深さ方向に対して垂直な断面の形状は、六角形であってもよい。この場合、凹部は、例えば、六角形の断面の対角線の一つが、流路1を流れる流体の進行方向と平行になるように、基板60に設けられている。また、膜165は、凹部の六角形の断面の対角線の一つの上に配置される。あるいは凹部の深さ方向に対して垂直な断面の形状は、他の多角形であってもよいし、円形であってもよい。したがって、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0018】
1 流路
2 筐体
8、108 流れセンサ
60 基板
61 発熱素子
62 第1の測温素子
63 第2の測温素子
65、165、265 膜
66 凹部
71、72 スリット
90 ダスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が設けられた筐体と、
前記流路を流れる流体の流量又は流速を検出するための流れセンサと、
を備える流量計であって、
前記流れセンサは、
凹部が設けられた基板と、
前記流路と平行に前記凹部を橋状に跨ぐ膜と、
前記流路に沿って前記膜に設けられた、第1の測温素子、発熱素子、及び第2の測温素子と、
を備える、
流量計。
【請求項2】
前記膜の両側の縁が、前記流路と平行である、請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記凹部の深さ方向に対して垂直な断面の形状が四辺形であり、
前記四辺形の対角線の一つが前記流路と平行であり、
前記膜が前記対角線上に配置されている、
請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項4】
前記凹部の深さ方向に対して垂直な断面の形状が六角形であり、
前記六角形の対角線の一つが前記流路と平行であり、
前記膜が前記対角線上に配置されている、
請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項5】
前記凹部の深さ方向に対して垂直な断面の形状が円形である、請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項6】
前記膜にスリットが設けられた、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流量計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−64634(P2013−64634A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203205(P2011−203205)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】