説明

流量調整体の取付装置

【課題】流量調整体保持体を容易に取り外すことが出来ず、吐液管を交換する必要のない流量調整体の取付装置であり、かつ、蛇口支持部の耐久性に影響を与えない流量調整体の取付装置を安価に提供する。
【解決手段】流量調整体176は基部取付体102及び吐液管取付体104からなる流量調整体取付体内に配置され、吐液管取付体104は基部取付体102に回転自在かつスライド不能に取り付けられる。基部取付体102と吐液管取付体104には特殊工具係止部が形成され、基部取付体102は基部配管34に対し特殊工具を特殊工具係止部に係止することで強固に螺合される。吐液管10は、吐液管取付体104が基部取付体102に回転することにより回転可能であるが、スライド不能であるので取り外しできない。吐液管取付体104及び基部取付体102とは特殊工具を使用せねば取り外しできないので流量調整体176は容易に取り外すことができない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の流路に配置される流量調整体の取付装置に関する。
詳しくは、水道管路に配置される流量調整体が容易に取り外されないようにした流量調整体の取付装置に関する。
更に詳しくは、水道管路の末端部に配置される流量調整体が容易に取り外されないと共に回転可能な吐液管の耐久性を高めることができる流量調整体の取付装置に関する。
なお、本明細書で使用する「液体」は、水、海水、ジュース、又は醤油等の調味料若しくは油等の総称である。
また、「特殊工具」とは、市販されている工具以外の工具をいう。換言すれば、特別に決められた仕様に基づいて作られた工具をいう。
したがって、「特殊工具係止部」とは、市販工具は係止できず、特別に決められた仕様に基づいて作られた工具のみが係止できる工具係止部をいう。よって、特殊工具係止部を有する場合、市販されている工具を使用して部材を着脱することができない、例えば、ナットの場合、特別仕様で設定された特殊スパナでなければ回転させることができない。
さらに、「固定状態に設けられた基部配管」とは、基部配管が完全に固定状態の他、基部配管が可撓性を有していても取付部に対し軸線周りに回転できない場合を含むものである。
【背景技術】
【0002】
第1の従来技術として、基部配管に摩擦接触体たる樹脂リングを介して回転自在に取り付けられた蛇口先端の外ねじ部に、一方と他方の端面を有するとともに前記蛇口先端の外ねじ部に螺合可能な内筒と、当該内筒内に配した流量調整体と、当該内筒を囲み、当該内筒に対して回転自在な外筒と、当該外筒から当該内筒が抜けるのを当該外筒の回転を妨げずに防止するための抜け止め構造と、を含めて構成してあり、当該外筒が、少なくとも当該内筒外周面に対する回転力を付加不能、かつ、当該内筒の一方及び/又は他方の端面の少なくとも一部を露出可能な形状に形成してあり、当該一方及び/又は他方の端面の露出させた部分には、凹部又は凸部を形成してあり、当該内筒が、当該凹部又は凸部に嵌合可能な凸部又は凹部を備える工具によって当該開放端から回転方向の外力を付加可能に構成してあることを特徴とする流量調節体の取付装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
第2の従来技術として図10に示す流量調整体の取付装置が知られている。
概説すれば、吐出管10としての管状の蛇口12は、その基端外周にシール体(Uリング)14を嵌められて筒状の流量調整体保持体16の一端の取付孔18に挿入され、蛇口12が貫通する貫通孔22を有する保持ナット24を流量調整体保持体16の外周面のねじ部26にねじ込むことにより、蛇口12の外周面に保持させた摩擦接触体28たる樹脂リング32を流量調整体保持体16に押圧することにより、流量調整体保持体16に対し回転自在に取り付けられている。
流量調整体保持体16内の流路には流量調整体(図示せず)が配置されている。Uリング14及び蛇口12の基部11も摩擦接触体28として機能する。
流量調整体保持体16の他端部の小径部30を、固定配置された基部配管34の流出孔36に挿入し、端部の雌ねじ(内ねじ部)38を基部配管34の雄ねじ部(外ねじ部)42にねじ込むことにより、基部配管34に流量調整体保持体16及び蛇口12を取り付けてある。
小径部30にはUリング44を外嵌めして漏水を防止している。
流量調整体保持体16の外周面には、特殊工具が係止可能な係止部46を形成し、当該特殊工具のみによって基部配管34に対して流量調整体保持体16を締め付け及び緩め可能にして、流量調整体の盗難を防止している。
流量調整体としては、例えば特公昭51-023059号に開示される定流弁が用いられる。
これにより、蛇口12が基部配管34に対し回転自在に、かつ流量調整体保持体16が容易に取り外されないよう装着される (例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3125287号(図1〜図14、段落番号0016〜0026)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】[online]、平成22年3月1日、株式会社カクダイ、[平成22年5月15日検索]、インターネット(URL://www.kakudai.ne.jp/try/kitchen/004_0_pipe.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の従来技術において、流量調整体保持体は回転(360度以内の回転も含む)可能に設けられた吐液管たる蛇口の先端に取り付けられている。
蛇口の基部は、前述のように摩擦接触体たる樹脂リングを用いた摩擦接触支持構造を採用している。
一方、蛇口は200〜300ミリの長さを有し、更に先端に取り付けられる流量調整体保持体は容易に取外し又は破壊されないよう、及び腐食しないようステンレス等の金属により製造され、所定の重量を有する。
このため、蛇口基部の支持部材たる摩擦接触体は、通常使用以上の圧力が加わった状態で基部配管と摺接するため、摩耗しやすく、耐久性(寿命)が低下するおそれがある。
また、蛇口先端外周面に流量調整体保持体をとりつけるためのねじ部を有しない蛇口が使用されている場合、当該ねじ部を有する蛇口に交換せねばならないという問題がある。
【0007】
第2の従来技術は、流量調整体を保持した流量調整体保持体16を基部配管34に取り付け、蛇口12の基部11を摩擦接触体28を介して当該流量調整体保持体16に回転可能に取り付けるため、第1の従来技術のように、摩擦接触体28の耐久性の問題及び蛇口12交換の問題は解消される。
しかし、通常使用における蛇口12の度重なる回転により、当該流量調整体保持体16が容易に取り外し可能になる問題がある。
この問題を詳述すると、第2の従来技術において、蛇口12が回転された場合、摩擦接触体28としての樹脂リング32、 Uリング14及び蛇口12の基部11を介して流量調整体保持体16に回転トルクが伝達される。当然、流量調整体保持体16が基部配管34に対し緩められる方向の回転トルクも作用する。
日常における蛇口12の回転により、緩める方向の回転トルクが何千回も作用した場合、流量調整体保持体16が緩め方向に徐々に微小に回転され、基部配管34の外ねじ部42と流量調整体保持体16の内ねじ部38との間の締結力が徐々に減少し、流量調整体保持体16がついには手回しで容易に回転できるようになる。
また、摩擦接触体32を用いない場合であっても、Uリング14、蛇口12の基部11及び流量調整体保持体16の内面との摩擦接触により、緩め方向の回転トルクが何万回も作用した場合、同様に緩み、流量調整体保持体16が手回しで容易に回転できるようになる。
これにより、設置後において、流量調整体が持ち去られるおそれがある。
特に、公園の飲料栓や市民プールにおけるシャワー等の公共施設の水道施設に流量調整体保持体16が取り付けられている場合、流量調整体保持体16が流量調整体ごと無断で持ち去られるおそれが極めて高くなるという問題がある。
【0008】
本発明の第1の目的は、通常使用により緩まず、かつ、流量調整体保持体を容易に取り外すことが出来ない流量調整体の取付装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、異なる吐液管が装着されている場合であっても、吐液管を交換する必要のない流量調整体の取付装置を提供することである。
本発明の第3の目的は、流量調整体保持体を容易に取り外すことが出来ず、かつ、吐液管支持部の耐久性に影響を与えない流量調整体の取付装置を安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明は以下のように構成されている。
固定状態に設けられた基部配管の端部のねじ部に螺合して流量調整体保持体を取り付け、当該流量調整体保持体に対して吐液管を回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体を配置した流量調整体の取付装置において、前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体及び吐液管取付体を含み、前記吐液管取付体は前記基部取付体に対し回転対偶であって、かつ、軸線方向に移動不能に前記流量調整体保持体内に配置された回転対偶取付部を介して取り付けられ、前記基部取付体は一端部に前記基部配管のねじ部にねじ込み可能なねじ部、外周面に特殊工具を係止するための特殊工具係止部を有し、前記吐液管取付体は、外周面に前記特殊工具を係止するための特殊工具係止部、及び前記吐液管の保持のためのねじ部が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置である。
【0010】
請求項2の発明は、固定状態に設けられた基部配管の端部のねじ部に螺合して流量調整体保持体を取り付け、当該流量調整体保持体に対して吐液管を回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体を配置した流量調整体の取付装置において、前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体及び吐液管取付体を含み、前記基部取付体は一端部に前記基部配管のねじ部にねじ込み可能なねじ部、外周面に特殊工具を係止するための特殊工具係止部、及び他端部に前記吐液管取付体を回転自在、かつ、軸線方向に移動不能に保持する第1取付部を有し、前記吐液管取付体は、一端部に前記吐液管の基部を回転自在に保持するための取付孔、外周面に特殊工具を係止するための特殊工具係止部、及び前記吐液管の保持のためのねじ部、並びに他端部に前記第1取付部に回転自在かつ軸線方向に移動不能に取り付けられる第2取付部を有すると共に、前記流量調整体のための保持部が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置である。
【0011】
請求項3の発明は、固定状態に設けられた基部配管の端部外周面のねじ部に螺合して流量調整体保持体を取り付け、当該流量調整体保持体に対して摩擦接触体を介在させて吐液管を保持ナットにより回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体を配置した流量調整体の取付装置において、前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体及び吐液管取付体を含み、前記基部取付体は一端部の内周面に前記基部配管の外周面のねじ部にねじ込み可能な内ねじ部、外周面に特殊工具を係止するための特殊工具係止部、及び他端部に前記吐液管取付体の一端部の取付部を受け入れる軸受孔を有し、前記吐液管取付体は、一端部に吐液管の基部を回転自在に保持するための取付孔、外周面に前記吐液管の保持ナットをねじ込むための外ねじ部、及び、他端部に前記軸受孔に回転自在かつ軸線方向に移動不能に取り付けられる軸部を有すると共に、前記流量調整体のための保持部が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置である。
【0012】
請求項4の発明は、固定状態に設けられた基部配管の端部内周面のねじ部に螺合して流量調整体保持体を取り付け、当該流量調整体保持体に対して吐液管を回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体を配置した流量調整体の取付装置において、前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体及び吐液管取付体を含み、前記基部取付体は一端部外周面に前記基部配管の内周面のねじ部にねじ込み可能な外ねじ部、外周面に特殊工具を係止するための特殊工具係止部、及び他端部に前記吐液管取付体の一端部の軸部を受け入れる軸受孔を有し、前記吐液管取付体は、一端部に吐液管の基部を保持するための取付孔、内周面に吐液管を保持するための保持体をねじ込むための内ねじ部、及び、他端部に前記軸受孔に回転自在かつ軸線方向に移動不能に取り付けられる軸部を有すると共に、前記流量調整体のための保持部が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜3の発明において吐液管が蛇口であることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項4の発明において吐液管がシャワーヘッドであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、基部配管に対し流量調整体保持体を介して吐液管が回転自在に取り付けられる。
流量調整体保持体は基部取付体及び吐液管取付体よりなり、前記流量調整体保持体内に配置された回転対偶取付部によって回転可能かつ軸線方向に移動不能の関係に基部取付体及び吐液管取付体が組み合わされる。
基部取付体及び吐液管取付体は、その端部のねじ部が基部配管の端部のねじ部にねじ込まれ、その外周面の特殊工具係止部に係止された特殊工具によって、基部配管に強固(実質的回転不能)に固定される。
換言すれば、基部取付体は特殊工具を使用しなければ、基部配管に対して緩めることができず、結果として基部配管から取り外すことができない。
吐液管取付体と基部取付体とは、回転対偶取付部によって相対回転可能であるが、その軸線方向には移動不能に取り付けられている。
そして、吐液管は吐液管取付体の外周面に形成された特殊工具係止部に特殊工具を係止して吐液管の保持体を吐液管保持体に螺合することにより吐液管取付体に強固に取り付けられている。
吐液管が回転された場合、吐液管取付体に回転トルクが伝達され、基部取付体に対し吐液管取付体は回転する。
吐液管取付体は基部取付体に対し回転(転がり)対偶の関係にあるので、高摩擦接触の関係にはない。
前記回転によって、吐液管取付体から基部取付体に対し回転トルクがそれらの間の摩擦力に応じて伝達される。
しかし、回転対偶によって伝達される回転トルクは、基部取付体と基部配管との間のねじ込みによる締結トルクよりも極めて小さいため、基部取付体が基部配管に対し緩むことはない。
また、吐液管の保持体と吐液管取付体との間のねじ込みによる締結トルクに対しても同様に小さいので同様に緩むことはない。
さらに、回転対偶取付部は流量調整体保持体内に配置され、外部からはアクセスできない。
換言すれば、流量調整体を持ち去られることがない利点を有する。
また、流量調整体保持体は基部配管に取り付けることから、その重量によって吐液管に対し悪影響を与えることもない。
さらに、基部取付体と吐液管取付体とにより流量調整体保持体を構成したので、安価に製造できる利点がある。
【0016】
請求項2の発明によれば、基部配管に対し流量調整体保持体を介して吐液管が回転自在に取り付けられる。
流量調整体保持体は基部取付体及び吐液管取付体よりなり、基部取付体は、その外周面の特殊工具係止部に係止された特殊工具によって、その端部のねじ部が基部配管の端部のねじ部にねじ込まれ、基部配管に強固に固定される。
換言すれば、基部取付体は特殊工具を使用しなければ、基部配管から取り外すことができない。
吐液管取付体の第2取付部は基部取付体の第1取付部によって、回転可能であるが、軸線方向には移動不能に取り付けられている。
そして、吐液管は吐液管取付体の外周面に形成された特殊工具係止部に特殊工具を係止して吐液管の保持体を吐液管保持体に螺合することにより吐液管取付体に強固に取り付けられている。
吐液管が回転された場合、吐液管取付体に回転トルクが伝達され、基部取付体に対し吐液管取付体は回転する。
吐液管取付体の第2取付部は基部取付体の第1取付部に対し転がり対偶の関係にあるが高摩擦接触の関係にはない。
したがって、吐液管取付体から基部取付体に対し回転トルクがそれらの間の摩擦力に応じて伝達される。
しかし、伝達される回転トルクは、基部取付体と基部配管との間のねじ込みによる締結トルクよりも極めて小さいため、基部取付体が基部配管に対し緩むことはない。
同様に吐液管取付体と吐液管の保持体との間ねじ込みによる締結トルクよりも極めて小さいため、保持体が吐液管取付体に対し緩むことはない
換言すれば、流量調整体を持ち去られることがない利点を有する。
また、流量調整体保持体は基部配管に取り付けることから、その重量によって吐液管に対し悪影響を与えることもない。
さらに、基部取付体と吐液管取付体とにより流量調整体保持体を構成したので、安価に製造できる利点がある。
【0017】
請求項3の発明によれば、流量調整体保持体は基部取付体及び吐液管取付体よりなり、基部取付体は、特殊工具係止部に係止された特殊工具によって、その端部の内ねじ部が基部配管の端部の外ねじ部にねじ込まれ、基部配管に強固に螺合される。
換言すれば、基部取付体は特殊工具を使用しなければ、基部配管から取り外すことができない。
吐液管取付体はその軸部が基部取付体の軸受孔に挿入され、回転可能であるが、軸線方向にはスライド不能に取り付けられている。
そして、吐液管は吐液管取付体の外ねじ部に保持ナットの内ねじ部をねじ込まれ、吐液管取付体の外周面の特殊工具係止部に特殊工具が係止された状態において、保持ナットが締め付けられ、強固にねじ込まれるる。
換言すれば、吐液管は吐液管取付体の特殊工具係止部に特殊工具を係止しなければ吐液管取付体から取り外すことができない。
吐液管が回転された場合、摩擦接触体を介して吐液管取付体に回転トルクが伝達され、基部取付体の軸受孔に対し吐液管取付体の軸部は回転する。
吐液管取付体は基部取付体に対し転がり対偶の関係にあるので摩擦力は小さい。
したがって、吐液管取付体から基部取付体に対し回転トルクがそれらの間の摩擦力に応じて伝達される。
しかし、伝達される回転トルクは、基部取付体と基部配管との間のねじ込みによる締結トルクよりも極めて小さいため、基部取付体が基部配管に対し緩むことはない。また、吐液管取付体と吐液管の保持体との間のねじ込みによる締結トルクよりも極めて小さいため、吐液管の保持ナットが吐液管取付体に対し緩むことはない。
換言すれば、流量調整体を持ち去られることがない利点を有する。
【0018】
請求項4の発明によれば、流量調整体保持体は基部取付体及び吐液管取付体よりなり、基部取付体は、特殊工具係止部に係止された特殊工具によって、その端部の外ねじ部が基部配管の端部の内ねじ部にねじ込まれ、基部配管に強固に螺合される。
換言すれば、基部取付体は特殊工具を使用しなければ、基部配管から取り外すことができない。
吐液管取付体は基部取付体に対しその軸部が軸受孔に対し回転可能であるが、軸線方向には移動不能に取り付けられている。
そして、吐液管は吐液管取付体の内ねじ部に外ねじ部をねじ込まれ、吐液管取付体の外周面の特殊工具係止部に特殊工具が係止されて、吐液管の外ねじ部が締め付けられ、強固に螺合される。
また、基部取付体の外ねじ部は基部配管の内ねじ部にねじ込まれ、基部取付体の外周面の特殊工具係止部に特殊工具が係止されて、基部取付体の外ねじ部が基部配管の内ねじ部に強固に螺合される。
換言すれば、基部取付体はその外周面の特殊工具係止部に特殊工具を係止しなければ基部配管から取り外すことができない。
さらに、吐液管は、吐液管取付体の特殊工具係止部に特殊工具を係止しなければ吐液管取付体から取り外すことができない。
吐液管が回転された場合、吐液管取付体に回転トルクが伝達され、基部取付体に対し吐液管取付体は回転する。
吐液管取付体は基部取付体に対し転がり対偶の関係にあるが摩擦力は極めて小さい。
したがって、吐液管取付体から基部取付体に対し回転トルクがそれらの間の摩擦力に応じて伝達される。
しかし、伝達される回転トルクは、基部取付体と基部配管との間、及び吐液管の保持体と吐液管取付体との間の締結トルクよりも極めて小さいため、基部取付体が基部配管に対し緩むことはない。
換言すれば、流量調整体を持ち去られることがない利点を有する。
【0019】
請求項5の発明によれば、吐液管が水道の蛇口であるので、例えば、常時管理できない公園等の給水栓に流量調整体を取付けた場合であっても、当該流量調整体を持ち去られることがない利点を有する。
【0020】
請求項6の発明によれば、吐液管がシャワーヘッドであるので、例えば、公共施設に設置されたシャワー室におけるシャワーヘッドに流量調整体を取り付けた場合であっても、当該流量調整体を持ち去られることがない利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明にかかる流量調整体の取付装置の実施例1の正面図である。
【図2】図2は、図1におけるA―A線断面図である。
【図3】図3は、本発明にかかる流量調整体の取付装置の実施例1の基部取付体の正面図である。
【図4】図4は、図3におけるB―B線断面図において特殊工具を係止した状態図である。
【図5】図5は、本発明にかかる流量調整体の取付装置の実施例1の吐液管取付体の正面図である。
【図6】図6は、図5におけるC―C線断面図である。
【図7】図7は、本発明にかかる流量調整体の取付装置の実施例1の係止リングの正面図である。
【図8】図8は、本発明にかかる流量調整体の取付装置の実施例2の軸線に沿った断面図である。
【図9】図9は、図8におけるD-D線断面図である。
【図10】図10は、第2の従来技術説明用の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の最良の実施の形態は、固定状態に設けられた基部配管の端部外周面のねじ部に螺合して流量調整体保持体を取り付け、当該流量調整体保持体に対して摩擦接触体を介在させて蛇口を保持ナットにより回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体を配置した流量調整体の取付装置において、前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体及び蛇口取付体を含み、前記基部取付体は一端部の内周面に前記基部配管の外周面のねじ部にねじ込み可能な内ねじ部、外周面に特殊工具を係止するための特殊工具係止部、及び他端部に前記蛇口取付体の一端部の軸部を回転自在かつ軸線方向に移動不能に受け入れる軸受孔を有し、前記蛇口取付体は、一端部に蛇口の基部を回転自在に保持するための取付孔、外周面に前記の保持ナットをねじ込むための外ねじ部、及び、他端部に前記軸受孔に回転自在かつ軸線方向に移動不能に取り付けられる軸部を有すると共に、前記流量調整体のための保持部が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置である。
【実施例1】
【0023】
実施例1は、吐液管10としての水栓の蛇口12に流量調整体保持体100を取り付ける取付装置に本願発明を適用した例である。
従来装置と同一部には同一符号を付し、異なる構成を説明する。
流量調整体保持体100は、基部配管34に対し吐液管10を回転自在かつ軸線方向に移動不能に保持すると共に流量調整体を容易に取り外しできないように保持する機能を有する。
本発明に係る流量調整体保持体100は、図1に示すように基部取付体102及び吐液管取付体104を含んでいる。
【0024】
まず基部取付体102を図2〜図4を参照して説明する。
基部取付体102は、流量調整体保持体100を基部配管34に固く固定すると共に、吐液管取付体104、換言すれば吐液管10を回動自在かつスライド不能に保持する機能を有する。
基部取付体102は軸線SL1を中心とする大凡円筒状であって所定の長さL1を有し、所定直径の外周面106、所定直径の貫通孔108及び外周面106の一部に第1特殊工具係止部112、貫通孔108の一端部にねじ部114である内ねじ部116、他端部には吐液管取付体104の回転対偶取付部118を構成する第1取付部119たる軸受孔120が形成されている。
【0025】
まず、第1特殊工具係止部112を説明する。
第1特殊工具係止部112は、特殊工具124を係止することにより、基部取付体102を回転させることができる機能を有する。「回転」には、相対回転、及び1回転以内の回動を含む概念である。
第1特殊工具係止部112は、一般的に販売されている工具は係止できない工具係止部である。
本実施例1において、円筒状の基部取付体102の外周面106の対向する部分を所定の第1幅W1にて切削し、平行な一対の第1特殊工具係止面122A及び第2特殊工具係止面122Bにより第1特殊工具係止部112が構成されている。
具体的には、第1特殊工具係止面122A及び第2特殊工具係止面122Bの第1間隔D1は、特殊寸法であり、通常のスパナでは密に係合することができない。
また、第1特殊工具係止面122A及び第2特殊工具係止面122Bの第1幅W1は、通常のモンキーレンチの幅でははみ出してしまい、係合できない幅に形成されている。
換言すれば、第1特殊工具係止部112には所定形態の特殊工具124のみが係止できる仕様に設定されている。
実施例1において、第1特殊工具係止部112は、基部取付体102の外周面106の大径部に形成されているが、後述の段部142を形成する小径部に形成することもできる
【0026】
次に特殊工具124を図4を参照して説明する。
特殊工具124は、Y形であって、平行に配置された第1係止部124A及び第2係止部124Bの内法の間隔は、第1間隔D1よりも僅かに大きく、第1特殊工具係止部112に密に径合することができる。
したがって、握り部124Cを持って所定の方向に回すことにより、基部取付体102を所定の方向に相対的に回すことができる。
なお、第1特殊工具係止部112は、上記実施例のスパナを係止するための平行に形成された二面に限らず、特殊形状の係止穴、例えば三角形の係止穴を形成し、当該係止穴にのみ係合可能なスパナのみによって回転できるようにしてもよい。以下の特殊工具係止部において同様である。
【0027】
次に貫通孔108を説明する。
貫通孔108は、基部取付体102を基部配管34に固定し、及び回転対偶取付部118を構成する機能を有する。
貫通孔108は、軸線SL1に沿って基部取付体102を貫通するよう形成された円形の孔であって、一端部側が他端部側に比して大径の大径孔部126に、他端部側が小径孔部128に形成されている。
換言すれば、貫通孔108は基部配管34側が大径孔部126であり、吐液管10側が小径孔部128である段付き孔130である。
大径孔部126にはねじ部114が形成されている。
小径孔部128には後述の吐液管取付体104の一端部が回転自在に密に挿入される。
換言すれば、小径孔部128は吐液管取付体104を回転自在に支持する第1取付部119A、すなわち軸受孔120であり、回転対偶取付部118の一部を構成する。
【0028】
次にねじ部114を説明する。
ねじ部114は流量調整体保持体100を基部配管34の外ねじ部42にねじ込んで固定する機能を有する。
ねじ部114は、本実施例1では所定の山数を有する内ねじ部116である。
【0029】
次に内ねじ部116を説明する。
内ねじ部116は、基部配管34の外ねじ部42にねじ込まれ、基部取付体102を基部配管34に強固に固定する機能を有する。換言すれば、流量調整体保持体100は、内ねじ部116を基部配管34の外ねじ部42に螺合し、特殊工具124を第1特殊工具係止部112に係止して締め付けることにより、固く固定される。
流量調整体保持体100を基部配管34に固定する場合、第1特殊工具係止部112に特殊工具124を係止して基部取付体102を基部配管34に対して大きな力で相対回転させる。したがって、特殊工具124を使用しなければ、基部取付体102は取り外すことができない。
【0030】
次に回転対偶取付部118を説明する。
回転対偶取付部118は、基部取付体102と吐液管取付体104とを回転自在かつ、軸線方向に移動(スライド)不能の関係に保つ機能、換言すれば、吐液管10を回転させた場合、吐液管取付体104の回転トルクを基部取付体102に実質的に伝達しない機能を有する。
回転対偶取付部118は、基部取付体102に形成された第1取付部119Aと、吐液管取付部104に形成された第2取付部119Bとにより構成される。
しがたって、第1取付部119Aは第2取付部119Bに対し回転可能であるが、軸線方向にはスライドできない。
本実施例1において、第1取付部119Aは軸受孔120であり、第2取付部119Bは後述の軸部162である。
【0031】
次に軸受孔120を説明する。
軸受孔120は、吐液管取付体104の軸部162を基部取付体102に対し回転可能に保持する機能を有する。
軸受孔120は、所定直径で所定長さに形成され、その周囲には所定厚みを有するリング形の係止部134が配置される。
換言すれば、基部取付体102の一端面には中央に円形の軸受孔120が形成された側壁136が形成される。
【0032】
基部取付体102の基部配管34側の端部外周面を小径にしてカバーリング138の内向きフランジ138Aを係止するため段部142を形成してある。
前述したように、この小径部に第1特殊工具係止部112を形成してもよい。
【0033】
次に吐液管取付体104を図2、図5及び図6を参照して説明する。
吐液管取付体104は、吐液管10を基部取付体102に対し回転自在、かつ、軸線方向に移動不能に支持する機能を有する。
換言すれば、吐液管取付体104は基部取付体102に対し回転自在、かつ、軸線方向にスライド不能に支持されている。
吐液管取付体104は、大凡円筒形であって、外形的には基部取付体102側から順に第2小径部142、第2大径部144及び中径部146が形成されている。
吐液管取付体104の内的形状は、基部取付体102に一体化された場合、軸線SL1に沿って、基部取付体102側から順に、流通孔148、流量調整体の保持部としての保持孔152及び吐液管取付孔154が形成されている。
また、大凡、中径部146に相対して吐液管取付孔154及びねじ部156、第2大径部144に相対して第2特殊工具係止部158及び保持孔152、第2小径部142に相対して流通孔148及び軸部162が形成されている。
【0034】
まず流通孔148を説明する。
流通孔148は、基部配管34から、供給される液体を吐液管10側に流通させる機能を有する。
流通孔148は、軸線SL1に沿って所定長さを有する所定直径の断面円形の孔である。
【0035】
次に軸部162を説明する。
軸部162は、軸受孔120に回転自在に挿入され、吐液管取付体104が基部取付体102に対し回転自在に支持される機能を有する。
軸部162は、第2取付部119Bであり、第1取付部119Aによって回転自在に支持される。
回転対偶取付部118は、本実施例1において軸部162を含んでいる。
軸部162は、所定直径の円筒形であり、周面に一端部側、換言すれば基部取付体102側から順に、係止リング溝164、シール溝166が全周に形成されている。
係止リング溝164には、例えば図7に示す、係止リング172が係止される。
係止リング172は、バネ性を有する金属によって、全体として円形リング状であって、一部にすり割168が形成され、拡径可能に形成されている。
係止リング172は、第2小径部142の端面側から大きな力で嵌め合わせることにより、係止リング172を拡径させて係止リング溝164の位置まで押し込む。係止リング172が係止リング溝164に相対すると、自己復元力により縮径し、係止リング溝164に嵌り込む。
したがって、第2小径部142の先端をテーパー165に形成することにより、係止リング172を嵌め込み易くすることが好ましい。
【0036】
シール溝166にはオーリング174が嵌め込まれる。
吐液管取付体104を基部取付体102に取付ける場合、シール溝166にオーリング174を嵌め込んだ状態で軸部162が軸受孔120に挿入される。
係止リング溝164が係止部134の側壁136の僅か外側に位置するので、軸部162の端面側から係止リング172を嵌め込んで係止リング溝164に係止する。
これにより、吐液管取付体104は基部取付体102に対し回転可能かつ軸線方向にスライド不能に一体化される。
すなわち、吐液管取付体104が吐液管10側にスライドして移動する場合、係止リング172が係止部134に係止されて移動できず、基部配管34側にスライドして移動する場合、第2大径部144の端面170が係止部134に係止されて移動できない。
したがって、係止リング172、及び第2大径部144は、吐液管取付体104と基部取付体102とを軸線方向にスライド不能に規制する機能を有する。
【0037】
係止リング172は、基部取付体102の貫通孔108内に位置している。
基部取付体102は、特殊工具124を使用しなければ基部配管34から取り外しできない。さらに、後述のように特殊工具124を使用しなければ吐液管取付体104から、吐液管10を取り外しできない。
したがって回転対偶取付部118、換言すれば、第1取付部119A及び第2取付部119Bは、流量調整体保持体100の内部に配置されるので、外部からアクセスすることはできない。したがって、回転対偶取付部118、換言すれば第1取付部119A及び第2取付部119Bは容易に分解することはできない。
シール溝166に位置するオーリング174は、軸部162と軸受孔120との隙間からの漏液を防止するよう機能する。
【0038】
次に保持孔152を説明する。
保持孔152は、流量調整体176を保持する機能を有する。したがって、保持孔152は流量調整体176の保持部である。
保持孔152は、吐液管取付体104の中間の第2大径部144に、大凡、相対して形成され、流通孔148よりも大径の円形孔である。
また、保持孔152は吐液管10の外径よりも僅かに大きい直径を有し、後述のように、吐液管10たる蛇口12の基部11が挿入される。
したがって、流通孔148との境界部には段部178が形成される。
流量調整体176は、後述のように段部178に一側面を押しつけられて取り付けられる。
【0039】
次に流量調整体176を説明する。
流量調整体176は、流通孔148から流入する液体の流量を規制する機能を有し、流量調整弁、節水弁とも称呼される。
流量調整体176は、外形的には第3大径部182と第3小径部184とを有する二段円筒状であり、コスト、性能等の観点から樹脂で成型される。
第3大径部182の外径は、保持孔152の直径と同一又は僅かに大きい直径を有する。
第3小径部184の外径は、吐液管10の内径よりも僅かに小さい直径を有する。
流量調整体176が保持孔152に装着される場合、第3大径部182を流通孔148側にして吐液管取付孔154から挿入され、その一端面が流通孔148と保持孔152との間の段部178に係止されるまで挿入される。
前述のように、第3大径部182の外径は、保持孔152の直径と同一又は僅かに大きい直径なので、流量調整体176は保持孔152に所定の接圧で密接し、摩擦力により脱落し難く構成される。
第3小径部184と保持孔152との間にはリング状の隙間186が形成される。
この隙間186に吐液管10の基部11の端部が挿入される。
【0040】
次に第2特殊工具係止部158を図6も参照して説明する。
第2特殊工具係止部158は、第1特殊工具係止部112と同様に、一般的に販売されている工具は係止できない工具係止部である。
本実施例1において、吐液管取付体104の第2大径部144の外周面160の対向する部分を所定の第2幅W2にて切削し、平行な一対の第3特殊工具係止面186A及び第4特殊工具係止面186Bにより第2特殊工具係止部158が構成されている。
具体的には、第3特殊工具係止面186A及び第2特殊工具係止面186Bの第2間隔D2は、特殊寸法であり、通常のスパナでは密に径合することができない。
また、第3特殊工具係止面186A及び第4特殊工具係止面186Bの幅W2は、通常のモンキーレンチの幅でははみ出してしまい、係合できない幅に形成されている。
換言すれば、第3特殊工具係止面186A及び第4特殊工具係止面186Bの両側には大径の外周面160が存在するため第2特殊工具係止部158には所定形態の特殊工具のみが係止できる形状に設定されている。
第2特殊工具係止部158の第2間隔D2と第2幅W2は第1特殊工具係止部112と同一に形成することが好ましい。特殊工具124を共用できるからである。
しかし、より一層、盗難防止性を高めるため、異なる仕様に設定にすることもできる。
【0041】
次にねじ部156を説明する。
ねじ部156は、吐液管10を吐液管取付体104に固定するための保持ナット24がねじ込まれる機能を有する。
ねじ部156は、中径部146の外周面に形成された外ねじ部188である。
【0042】
次に吐液管取付孔154を説明する。
吐液管取付孔154は、吐液管10の基部11が挿入され、摩擦接触体28を介して吐液管10を回転可能に取付けられる機能を有する。
吐液管取付孔154は、保持孔152よりも大径の円形孔であって、吐液管取付体104の一端部に形成されている。
吐液管10の基部にUリング14が嵌め合わされた状態で吐液管取付孔154に当該基部11が挿入される。
吐液管10の基部11の肉部が隙間186に挿入された状態で保持ナット24の内ねじ部20をねじ部156の外ねじ部188にねじ込む。
これにより、保持ナット24のフランジ部24Fが樹脂リング32を介して吐液管10を奥部へ押し進め、基部11の先端は流量調整体176の第3大径部182を押し込み、流量調整体176の端面を段部178に押しつけて固定する。
保持ナット24のねじ込みは、第2特殊工具係止部158に特殊工具124を係止し、保持ナット24に市販されている工具を係止することにより締め付ける。
これにより、樹脂リング32はフランジ20Fと吐液管取付体104の端面との間で変形され、保持ナット24は特殊工具124なしでは取り外し出来なくなる。
Uリング14は、吐液管10と吐液管取付体104との間からの漏水を防止する。
【0043】
次にカバーリング138を説明する。
カバーリング138は、第1特殊工具係止部112及び第2特殊工具係止部158を外部から見えないようにカバーする機能を有する。
カバーリング138は、円筒形であって、その内径は基部取付体102及び第2大径部144の外径よりも僅かに大きい。
カバーリング138は、端部の内向きフランジ138Aが基部取付体102の段部142に係止される。
従って、カバーリング138は、基部取付体102及び吐液管取付体104の第2大径部144に外装されてそれらを覆い、かつそれらに沿って軸線SL1の伸長方向においてスライド可能である。
カバーリング138の周壁に特殊工具124を第1特殊工具係止部112に係止可能にするため、第1工具係止部112と同一又は僅かに大きい第1開口192A、第2開口192Bが相対する位置に形成されている。
基部配管34に流量調整体保持体100が装着された場合、カバーリング138は前述のようにスライド可能であるが取り外すことができない。
カバーリング138の内向きフランジ138Aが段部140に係止されている場合、第1特殊工具係止部112及び第2特殊工具係止部158はカバーリング138の連続する外周面によって覆われる。第1特殊工具係止部112及び第2特殊工具係止部158を見えないようにすることで、流量調整体保持体100に対する心理的な取り外し抑制効果が期待できるからである。
しかし、カバーリング138は必須の構成ではない。
【0044】
流量調整体保持体100は基部取付体102と吐液管取付体104とが組み合わされた状態で取引される。
すなわち、第1取付部119Aと第2取付部119Bとが回転自在、かつ軸線方向に移動不能に組み合わされた状態、換言すれば軸部162が軸受孔120に挿入され、係止リング172が係止リング溝164に係止され、吐液管取付体104と基部取付体102とが回転可能かつ軸線方向にスライド不能に組み合わされた状態である。
特殊工具124は、流量調整体保持体100と共に、又は個別に取引される。
流量調整体176も、流量調整体保持体100と共に、又は個別に取引される。
【0045】
次に流量調整体保持体100を基部配管34へ取り付ける際の取付け方を説明する。
カバーリング138を備える流量調整体保持体100を基部配管34に取り付ける場合、貫通孔108の大径部126に弾性を有するリング状のスぺーサ194を落とし込んで軸部162の先端に嵌合する。
なお、流量調整体176は、予め保持孔152に保持されている。
次いで、内ねじ部116を基部配管34の外ねじ部42にねじ込む。
ねじ込む際、カバーリング138をスライドさせて第1開口192A、第2開口192Bを第1特殊工具係止面112A、第2特殊工具係止面112Bに相対させた後、特殊工具124の第1係止部124A、第2係止部124Bをそれら係止面に係止して強固に締め付ける。
これにより、係止リング172、スぺーサ194及び基部配管34の端面が大きな接触圧力で接触し合い、特殊工具124を使用しなければ容易に取り外すことができなくなる。
【0046】
次に、吐液管10の基部11を吐液管取付体104の吐液管取付孔154に挿入し、カバーリング138をスライドさせて第2特殊工具係止部158を露出させて後、当該第2特殊工具係止部158に特殊工具124を係合すると共に保持ナット24の内ねじ部20を外ねじ部188にねじ込み、保持ナット24に市販工具を係止して強固に締め付ける。
これにより、保持ナット24、樹脂リング32、及び吐液管取付体104の一端部とが大きな接触圧力で接触し合い、特殊工具124を使用しなければ容易に取り外すことができなくなる。
これにより、流量調整体保持体100は基部配管34に特殊工具124を使用しなければ取り外し出来ない状態で取り付けられる。
【0047】
吐液管10が回動された場合、摩擦接触体28を介して吐液管取付体104に対し回転トルクが作用する。
しかし、軸部162と軸受孔120との間摩擦力は回転対偶の軸受け構造になっているので、吐液管10、摩擦接触体28及び吐液管取付体104との間の摩擦力に対して極めて小さく、実質的に無視できる大きさである。
よって、吐液管取付体104の軸部162が基部取付体102の軸受孔120に対し回転する。
この際、軸部162と軸受孔120との間の摩擦接触により基部取付体102に対し回転トルクが伝達されるが、基部取付体102と基部配管34との間のねじ締結による摩擦力による静止力に対し極めて小さいため、実質的に無視できる回転トルクである。
したがって、吐液管10の回転よって基部取付体102が基部配管34に対して、及び保持ナット24が吐液管取付体104に対して緩むことがない。
また、吐液管取付体104は係止リング172及び第2大径部144の端面170によって、換言すれば、基部取付対102の係止部134によって基部取付体102に対し軸線方向にスライドできない。
そして、係止リング172は基部取付体102の内部に位置しているので外部からアクセスできない。
換言すれば、吐液管取付体104は基部取付体102から容易に分離することができない。
以上より、流量調整体176を不正に取り外されない利点がある。
なお、本実施例1とは逆に、基部取付体102を吐液管10に、吐液管取付体104を基部配管34に取付けることもできる。
【実施例2】
【0048】
次に実施例2を図8及び図9を参照して説明する。
実施例2は、流量調整体保持体200を吐液管10たるシャワーヘッド230に取り付けた例である。
実施例1と同一部には同一符号を付して説明を省略すると共に異なる構造を説明する。
実施例2の流量調整体保持体200も、基部取付体202及び吐液管取付体204を含んでいる。
本実施例2の基部配管34は、可撓性を有しているが、軸線周りに回転することはできない。
【0049】
まず基部取付体202を説明する。
基部取付体202は、円筒形であって、中心部に第1取付部119Aとしての円形の軸受孔206が形成され、外周面208は基部配管34側から順に第2中径部210、第4小径部212及び第4大径部214が形成されている。
回転対偶取付部118は、本実施例2においては軸受孔206を含んでいる。
第2中径部210にはねじ部114を構成する外ねじ部216が形成されている。換言すれば基部取付体202の一端部に外ねじ部216が形成されている。
第4小径部212にはオーリング218が外ばめされる。
第4大径部214には、第3特殊工具取付部222の第5特殊工具係止面224A及び第6特殊工具係止面224Bが形成されている。
基部取付体202を基部配管34に取り付ける場合、基部配管34の端部に弾性リング226を嵌め込んだ後、基部配管34の孔内に第2中径部210を挿入し、外ねじ部216を基部配管34の内ねじ部228にねじ込む。
この際、第3特殊工具係止部222に特殊工具124を係止し、基部配管34の外面の工具係止部232に市販の工具を係止して強固に締め付ける。これにより、弾性リング226が変形して大きな力でなければ緩めることができなくなる。
【0050】
次に吐液管取付体204を説明する。
吐液管取付体204は、吐液管10、本実施例2ではシャワーヘッド230を基部取付体202に対し回転自在、かつ、軸方向にスライド不能、換言すれば、取り外し不能に支持する機能を有する。
吐液管取付体204は、円筒形であって、外形において第5小径部234、及び第5大径部236を有し、内部形状としては、基部取付体202側から順に第2小径孔238、第2中径孔242及び第2大径孔244が形成されている。
第5小径部234が吐液管取付体204の軸部240を構成する。
したがって、第5小径部234は第2取付部119Bである。
【0051】
第2大径部236の外周面の一部には、第4特殊工具係止部246が形成されている。第4特殊工具係止部246は、特殊工具214の係止部である第7特殊工具係止面246A、第8特殊工具係止面246Bを含んでいる。
第2小径孔238は大凡第5小径部234に対応して形成され、断面が円形であり、基部配管34から流出する液体が流通し得る。
第2中径孔242は第5大径部236に対応して形成され、断面円形の孔であり保持孔152を構成する。
第2中径孔242と第5小径孔234とは、段部248及びテーパー孔252を介して連通している。
第2中径孔242には、流量調整体176が配置される。詳細には、流量調整体176が段部248に押し当てられて位置決めされる。
第2大径孔244は、第2中径孔242との間に形成された僅かに大径の弾性リング孔254を介して連通している。
【0052】
弾性リング孔254にはリング形の弾性リング256が配置される。漏水防止及び吐液管10の不正な取り外し防止のためである。
第2大径孔244にはねじ部156としての内ねじ部258が形成されている。
内ねじ部258には、シャワーヘッド230の基部の保持体としての保持ナット260の外ねじ部262がねじ込まれる。
この際、第4特殊工具係止部246に特殊工具214を係止し、保持ナット260にも市販工具を係止して強固にねじ込む。これにより、保持ナット260の先端が弾性リング256を押して変形させるので、特殊工具214を使用しなければ緩めることができない。
第5小径部234は、基部取付体202の軸受孔206に回転自在に挿入され、周面に形成されたリング溝164に係止リング172が係止されて基部取付体202の軸線方向にスライド不能に取り付けられる。
すなわち、吐液管取付体204が基部配管34側に移動する場合、第5大径部236の端面261が第4大径部214の端面に係止され、シャワーヘッド230側へ移動される場合、係止リング172が基部取付体202の端面に係止されて移動できない。換言すれば、基部取付体202と吐液管取付体204とは軸線方向に実質的に相対移動できない。
第5小径部234の周面のオーリング溝266にオーリング268を嵌め込んで漏水を防止している。
【0053】
流量調整体保持体200は、基部取付体202と吐液管取付体204とが一体化されて取引される。
換言すれば、吐液管取付体204の第5小径部234が基部取付体202の軸受孔206に挿入され、リング溝164に係止リング172が係止された状態である。
当然オーリング268も装着される。多くの場合、特殊工具214及び流量調整体176も一緒に取引される。
本実施例2において、回転対偶取付部118は、第2取付部199Bたる軸部240と第1取付部199Aたる軸受孔206を含んでいる。
【0054】
次に実施例2においてシャワーヘッド230を基部配管34に取り付ける作業を説明する。
まずシャワーヘッド230の基部の外ねじ部262が吐液管取付体204の内ねじ部258にねじ込まれ、第4特殊工具係止部246に特殊工具214を係止し、かつシャワーヘッド230の保持ナット260に市販工具を係止して強固に締め付ける。
次いで基部配管34の内ねじ部228に基部取付体202の外ねじ部216をねじ込み、第3特殊工具係止部222に特殊工具124を係止し、かつ基部配管34の工具係止部232にも市販工具を係止して強固に締め付ける。これにより、基部配管34に対し基部取付体202は容易に取り外しできない。さらに、係止リング172によって、吐液管取付体204は基部取付体202に対しスライドできないと共に、係止リング172は、基部配管34内に配置されるので、容易にアクセスすることができない。
【0055】
シャワーヘッド230に回転トルクが付与された場合、吐液管取付体204は基部取付体202に対し回転する。この際、シャワーヘッド230と吐液管取付体204との内ねじ部258と外ねじ部262との間にも回転トルクが作用するが、軸部240と軸受孔206との間の摩擦抵抗は極めて小さいので、基部取付体202に対し吐液管取付体204が回転し、それらの間の螺合は緩むことはない。
同様に、基部配管34と基部取付体202との間の外ねじ部216と内ねじ部228との間にも回転トルクが作用するが、緩むことはない。
よって、軸部240は軸受孔206に対し回転自在であるので、シャワーヘッド230は回転することができる。また、シャワーヘッド230が基部配管34に対し軸線方向に引っ張られた場合、係止リング172が基部取付体202の端面に係止されて吐液管取付体204が基部取付体202から分離されることはない。さらに、逆方向に押された場合、吐液管取付体204の端面261が基部取付体202の第4大径部214の端面に係止されて同様に分離されることはない。そして、回転対偶部118及び係止リング172は基部配管34内に配置されている。換言すれば、特殊工具148が無ければ基部配管34に対し基部取付体202、及びシャワーヘッド230に対し吐液管取付体204を容易に取り外しできない。
よって、流量調整体176の盗難を防止できる利点がある
【符号の説明】
【0056】
10 吐液管
24、260 保持ナット
28 摩擦接触体
34 基部配管
42、114、156、228、258 ねじ部
100、200 流量調整体保持体
102、202 基部取付体
104、204 吐液管取付体
106、208 外周面
112、158、222、246 特殊工具係止部
116 内ねじ部
118 回転対偶取付部
119A 第1取付部
119B 第2取付部
120、206 軸受孔
124 特殊工具
152 保持孔
154、244 取付孔
162、240 軸部
176 流量調整体
188 外ねじ部
216 外ねじ部
228 内ねじ部
230 シャワーヘッド
258 内ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定状態に設けられた基部配管(34)の端部のねじ部(42)に螺合して流量調整体保持体(100、200)を取り付け、当該流量調整体保持体に対して吐液管(10)を回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体(176)を配置した流量調整体の取付装置において、
前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体(102、202)及び吐液管取付体(104、204)を含み、
前記吐液管取付体は前記基部取付体に対し回転対偶であって、かつ、軸線方向に軸線方向に移動不能に前記流量調整体保持体内に配置された回転対偶取付部(118)を介して取り付けられ、
前記基部取付体は一端部に前記基部配管(34)のねじ部(42、228)にねじ込み可能なねじ部(114)、外周面に特殊工具(124)を係止するための特殊工具係止部(112、214)を有し、
前記吐液管取付体は、外周面に前記特殊工具を係止するための特殊工具係止部(158、246)、及び前記吐液管の保持のためのねじ部(156)、が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置。
【請求項2】
固定状態に設けられた基部配管(34)の端部のねじ部(42、228)に螺合して流量調整体保持体(100、200)を取り付け、当該流量調整体保持体に対して吐液管(10)を回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体(176)を配置した流量調整体の取付装置において、
前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体(102)及び吐液管取付体(104)を含み、
前記基部取付体は一端部に前記基部配管のねじ部にねじ込み可能なねじ部(114)、外周面(106)に特殊工具(124)を係止するための特殊工具係止部(112)、及び他端部に前記吐液管取付体を回転自在、かつ軸線方向にスライド不能に保持する第1取付部(119A)を有し、
前記吐液管取付体は、一端部に前記吐液管の基部を回転自在に保持するための取付孔(154、244)、外周面に特殊工具を係止するための特殊工具係止部(158、246)、及び前記吐液管の保持のためのねじ部(156)、及び
他端部に前記第1取付部に対し回転自在かつ軸線方向に移動不能に取り付けられる第2取付部(119B)を有すると共に、前記流量調整体のための保持部(152)が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置。
【請求項3】
固定状態に設けられた基部配管(34)の端部外周面のねじ部(42)に螺合して流量調整体保持体(100)を取り付け、当該流量調整体保持体に対して摩擦接触体(28)を介在させて吐液管(10)を保持ナット(24)により回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体(176)を配置した流量調整体の取付装置において、
前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体(102)及び吐液管取付体(104)を含み、
前記基部取付体は一端部の内周面に前記基部配管の外周面のねじ部(42)にねじ込み可能な内ねじ部(116)、外周面(106)に特殊工具(124)を係止するための特殊工具係止部(112)、及び他端部に前記吐液管取付体の一端部の軸部(162)を受け入れる軸受孔(120)を有し、
前記吐液管取付体は、一端部に前記吐液管の基部を回転自在に保持するための取付孔(154)、外周面に前記吐液管の保持ナット(24)をねじ込むための外ねじ部(188)、及び
他端部に前記軸受孔に回転自在かつ軸線方向に移動不能に取り付けられる前記軸部を有すると共に、前記流量調整体のための保持部(152)が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置。
【請求項4】
固定状態に設けられた基部配管(34)の端部内周面のねじ部(228)に螺合して流量調整体保持体(200)を取り付け、当該流量調整体保持体に対して吐液管(230)を回転自在に取り付け、前記流量調整体保持体中に流量調整体(176)を配置した流量調整体の取付装置において、
前記流量調整体保持体は、筒状の基部取付体(202)及び吐液管取付体(204)を含み、
前記基部取付体は一端部外周面に前記基部配管の内周面のねじ部にねじ込み可能な外ねじ部(216)、外周面に特殊工具を係止するための特殊工具係止部(222)、及び他端部に前記吐液管取付体の一端部の軸部(240)を受け入れる軸受孔(206)を有し、
前記吐液管取付体は、一端部に吐液管の基部を保持するための取付孔(244)、内周面に前記吐液管を保持するための保持ナット(260)をねじ込むための内ねじ部(258)、及び
他端部に前記軸受孔に回転自在かつ軸線方向に移動不能に取り付けられる前記軸部を有すると共に、前記流量調整体のための保持部(152)が形成されていることを特徴とする流量調整体の取付装置。
【請求項5】
請求項1〜3の流量調整体の取付装置において、前記吐液管は水道の蛇口(12)であることを特徴とする。
【請求項6】
請求項4の流量調整体の取付装置において、前記吐液管はシャワーヘッド(230)であることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−247287(P2011−247287A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117863(P2010−117863)
【出願日】平成22年5月22日(2010.5.22)
【出願人】(506228250)株式会社アクアリンク (3)
【Fターム(参考)】