説明

流量調整器

【課題】流体の流量の調節を確実に行うことができる流量調整器を提供することにある。
【解決手段】流量調節器61は、筒状体62と、流路制御部材64と、筒状の作動部材67と、支持体69とを有している。筒状体62は、変形可能部を備え、流路制御材64は、制御溝65を備え、筒状の作動部材67は、押圧部66を備えている。筒状の作動部材67は、筒状体62を囲み、押圧部66で変形可能部を押圧しながら移動する。これにより、制御溝65で流量の調節を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬液や血液、流動食等の液体(流体)の流量を調節するために使用する流量調整器、およびこれを用いた輸液、輸血セット、栄養セット等の医療用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸液セット、輸血セット、栄養セット等の医療用器具においては、チューブ内を流れる薬液や血液、流動食等の液体(流体)の流量調節を行う必要がある。そして、そのためにそれらのチューブの途中に流量調整器が取り付けられていることは、よく知られている。この流量調整器の代表的なものとしては、ローラー型のクレンメ(ローラークレンメ)がある(特許文献1)。
【0003】
このローラークレンメは、クレンメ本体と、このクレンメ本体に移動可能に装着されたローラーによって構成されており、ローラーの外周面と適度の傾斜の付いたクレンメ本体底面との間にチュ−ブを挟み、ローラーを移動させることによって、チューブにおける挟まれた部位の内径を変化させて、チューブ内を流れる液体の流量調節を行なうようになっている。
【0004】
このローラークレンメによると、医療従事者は、例えば輸液セットの場合、点滴筒内で滴下される薬液の滴下速度を目視で確認しながらローラークレンメを操作して目標の流量に調節する。しかしながら、点滴筒内で滴下される薬液の滴下速度を目視で確認する以外に調節の目安となるものがないため、大きな手間を必要とした。
【0005】
また、このローラークレンメは、チューブ断面積をチューブ内腔の全周を使って非常に小さい断面積の流路に規制する機構のため、所定の流量に調節した後もつぶれた軟質のチューブの変形によって長時間経つとチューブ断面積が変化してしまう事があり、流体の調節された所定の流量が経時的に変化してしまうという可能性がある。特に100ml/時間前後以下の流量調節には、頻繁に流量確認する手間が必要である。
【0006】
目標の流量に調節した所定の流量と、実際の流量が異なる場合は、患者を治療するうえで好ましくなく、特に医薬品が麻酔薬や抗生剤、強心薬、昇圧薬、インスリン等時間あたりの流入量が規定されている薬液については、目標の流量に調節した所定の流量を維持できることが望まれていた。さらに、ローラークレンメによると、ローラーの位置が確認し難いため、流量が変化した原因が初期の設定ミスなのか、患者が触った為なのか原因を特定できない場合もある。
【0007】
また、流量調節後に輸液等を一時的に急速かつ大量に流す(フラッシュさせる)場合があるが、ローラークレンメによると一旦ローラーをクレンメ本体の端部付近まで移動させて一時的に大流量を実現させ、その後、再度所定の流量に調節するためローラーを反対方向へ移動させて元の位置に復帰させる必要がある。しかしながら、1mm前後のローラーの移動でさえ流量が大きく変わるため、もとの位置に戻したつもりでも再度点滴筒で流量を目測しながらローラーを微調節する手間が必要であり、一時的なフラッシュ操作の後の再調節が複雑であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭58−22224号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、容易に目標の流量調整ができ、調整後の所定の流量からの経時的変化を抑え、一時的なフラッシュ後の再調整が容易な、医療従事者にとって安心感のある流量調整器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題は以下により解決することができる。
【0011】
(1)押圧部と支持部とを有する筒状の作動部材と、前記押圧部と前記支持部に挟持され流体の流入口と流出口とを有する筒状体と、前記流体の流路を形成する前記筒状体の内腔の支持部側に密着し一部が密着固定された硬質材料からなる流路制御部材とから構成された流量調整器であって、前記作動部材は、前記筒状体の外周を軸方向に移動可能に係止され、前記押圧部は前記筒状体の流路側外周部を押圧可能に前記作動部材に設置され、前記筒状体または前記流路制御部材は軸方向に延びる制御溝を有し、前記筒状体と前記流路制御部材との境界近傍における前記流路制御部材の両側端部の断面形状は連続した緩やかな丸みを有することを特徴とする流量調整器。
【0012】
(2)前記制御溝は前記流路制御部材の流路面に設けられ、前記制御溝の断面積は連続して増加または減少し、前記流路制御部材は流路面側の筒状体の軸方向に対して垂直の断面形状が凹形状を有し、前記押圧部は前記凹形状内に挿入可能な大きさの凸形状である断面形状を有し、前記流路制御部材の両側端部の断面形状の連続した緩やかな丸みの半径Rと前記筒状体の厚みDとの関係は、R≧D/10であることを特徴とする(1)記載の流量調整器。
【0013】
(3)前記筒状体は押圧時に押圧された部位が変形する変形部を有し、変形した前記変形部と前記流路制御部材とが前記制御溝を除き密着し、前記変形部は前記筒状体の軸方向に対して垂直の断面内面に常に抗張力が働き、さらに前記変形部は非押圧時に前記筒状体の軸方向に対して垂直の断面形状が直線形状であって、前記筒状体の内腔と前記流路制御部材との密着固定部と密接する部位は固定されずに密着されていることを特徴とする(1)または(2)記載の流量調整器。
【0014】
(4)前記筒状体は輸液チューブ、輸血チューブ、栄養チューブの何れかからなることを特徴とする(1)から(3)記載の流量調整器。
【0015】
(5)前記作動部材は移動させるための操作部を有し、前記操作部は前記押圧部が押圧する力の方向上と異なる方向に位置し、前記筒状体は前記変形部の押圧される面に低摩擦処理を施したことを特徴とする(1)から(4)記載の流量調整器。
【0016】
(6)前記押圧部の移動量に対応して、流量を示す目盛りを有することを特徴とする(1)から(5)記載の流量調整器。
【0017】
(7)前記筒状体の内周長は前記制御溝を除く前記流路制御部材断面の周囲長より短いことを特徴とする(1)から(6)記載の流量調整器。
【0018】
(8)前記筒状体の内周長をL、前記流路制御部材断面の周囲長をMとしたとき、0.6<L/M<1の関係を満たすことを特徴とする(7)記載の流量調整器。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制御溝における軟質部材に覆われた部位の体積を変化させて流体の流量を所定の流量に調節しているため、一定の流量に調節された流量が経時的に変化することを抑制でき、流体の流量制御を安定して行うことができる。
【0020】
特に流路制御部材の両側端部の断面形状が、緩やかな丸みのある形状を有するため,筒状体が作動部材の押圧部に押圧されたとき、筒状体と流路制御部材の密着面及び密着固定面の断面形状が一致して、調節流路で設定した流路以外に隙間を生じることがない。従って、調節流路で設定した流量より過量となることもない。
【0021】
また、筒状体の内周長が制御溝を除く流路制御部材断面の周囲長より短く設定されることにより、筒状体が作動部材の押圧部に押圧されたときに変形可能部に抗張力が働き、より筒状体と流路制御部材の密着面及び密着固定面の断面形状が一致して、調節流路で設定した流路以外に隙間を生じることがなくなり、調節流路で設定した流量より過量となることもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる流量調整器の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係わる接続部材を一体にそなえた流路制御部材の斜視図である。
【図3】図1におけるA−A線の断面図である。
【図4】図1におけるB−B線の断面図である。
【図5】図1におけるC−C線の断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係わる流量調整器の流量をゼロに設定したときの断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係わる流量調整器の流量を最大に設定したときの断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係わる流量調整器の斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係わる流量調整器の断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係わる流量調整器の断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係わる流量調整器の断面図である。
【図12】従来の流量調整器の断面図である。
【図13】本発明に用いられる流路制御部材の断面図である。
【図14】本発明の第6実施形態に係わる流路制御部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき説明するが、本発明は、これらの図面に限定されない。 本発明の実施の形態は、輸液セットや輸血セット、栄養セット、圧力モニタリングライン、人工肺回路、人口透析回路など、流体の流量の調節を必要とする医療用具に組み込まれて使うことができる。
【0024】
ここで、便宜的に軸方向とは、流体が流れる方向を指し,軸方向に対して垂直とは、軸方向と直交する方向を指す。 図1は、本発明の実施に係わる流量調整器の斜視図、図2は、接続部材を一体に備えた流路制御部材の斜視図、図3は、図1におけるA−A線の断面図、図4は、図3における作動部材を除去したときの図(図1におけるB−B線の断面図)である。
【0025】
本発明は、支持体9と摺動可能に係合された作動部材7と、支持体9と作動部材7との間に位置し、支持体9に外周の一部が支持され、流体の流入口と流出口とを有する筒状体2と、流体の流路を形成する筒状体2の内腔の支持体側に密着し、一部が密着固定された硬質材料からなる流路制御部材4とから構成された流量調整器1である。この流量調整器1の作動部材4は、筒状体2の流路側外周部を押圧する押圧部6を有し、筒状体2または流路制御部材4は、筒状体2の軸方向17に延びる制御溝15を有している。筒状体2と流路制御部材4との境界近傍20における流路制御部材4の両側端部の断面形状は、連続した緩やかな丸みを有することを特徴としている。
【0026】
流量調整器1は、流路を形成する軟質材料からなる筒状体2をそなえており、この筒状体2は、伸縮自在となっている。筒状体2の下流端3は、輸液セットや輸血セット、栄養セットの患者に接続される下流ライン(図示省略)に液密に接続されている。さらに流量調整器1は、押圧部6を有する作動部材7と支持体9を備えている。
【0027】
筒状体2内には、硬質材料からなる流路制御部材4が配置されており、筒状体2の内腔面の一部と、流路制御部材4の外面の一部は、流体が通過できぬよう密着固定されている。流路制御部材4の流路形成面8には、流体の流量を制御するために、軸方向17に沿って断面積が徐々に変化する制御溝15が形成された、調節流路5が備えられている。図示しないが、制御溝は、筒状体の流路面に設けられていてもよい。
【0028】
前述の流路を形成する流路形成面8は、制御溝15の部位を除き、緩やかな曲線で構成された弧状の凹部となっている。さらに、流路形成面8の両側端部(押圧部6が作用していないときの流路制御部材4と筒状体2との境界近傍20)も緩やかな丸みの曲線の面10で構成されている。ここで、緩やかな丸みの曲線とは、曲率半径が、0.05mm以上である曲線をいう。流路形成面8は、その両側端部(押圧部6が作用していないときの流路制御部材4と筒状体2との境界近傍20)が、緩やかな丸みの曲線であれば、一部は、直線で構成されていても差し支えなく、さらにこの直線によって、調節流路も含むような構成であってもよい(図示省略)。また、直線に替えて、波線上に連続する緩やかな丸みの曲線であってもよい。
【0029】
流路制御部材4は、流路面側の筒状体の軸方向に対して垂直の断面形状が、凹形状を有し、押圧部6は、前記凹形状内に挿入可能な大きさの凸形状である断面形状を有する。流路制御部材4の両側端部における断面形状の半径Rと、筒状体2の厚みDとの関係は、R≧D/10を満たしていると、緩やかな丸みの形状とすることができる。半径Rと厚みDがR<D/10という関係であると、押圧部6が筒状体2を押圧したとき、筒状体2の両側端部は、流路制御部材4の両側端部の形状に密着することができず、流路制御部材4と筒状体2との間に隙間が生じてしまう。
【0030】
さらに、筒状体2の内腔に流路制御部材4を組み込んだとき、筒状体2の内周長は、制御溝15を除く流路制御部材4の断面周囲長100(図13参照)より短いことが好ましい。こうすることで詳細は後述するが、押圧部6が筒状体2を押圧したとき、流路制御部材4と筒状体2との間に隙間を生じさせない。
【0031】
また、筒状体2の内周長をL、制御溝15を除く流路制御部材4の断面周囲長100をMとしたとき、0.6<L/M<1の関係であるとより好ましい。これは、L/Mが1以上であると筒状体2が弛み、押圧部6が筒状体2を押圧したとき、流路制御部材4と筒状体2との間に隙間が生じやすく、L/Mが0.6以下であると、押圧部6が筒状体2を押圧したとき、摩擦抵抗が増加して操作性が悪くなり、流路制御部材と筒状体に大きな負荷がかかり変形し易くなり流量が不安定になり易い、という不具合が生じる。
【0032】
さらに、筒状体2の内周長Lと制御溝15を除く流路制御部材4の断面周囲長100をMとしたときの関係が、0.9<L/M<1の範囲であるとなお好ましい。このようにすることで、押圧部6を移動させたとき、摩擦抵抗がさらに減少して操作性が向上し、さらに筒状体2の復元力を長期にわたり維持することができる。
【0033】
前述のように、筒状体2の内周長よりも、制御溝15を除く流路制御部材4の断面周囲長100を長く設定することが好ましい。これにより、変形可能部12(変形部)は、押圧部6によって押圧されたとき、緩やかな丸みの曲線の面10付近に対応する部位との間の隙間をさらに発生させなくなる。さらに、変形可能部12(変形部)は、断面内面に周囲長を短くする方向の抗張力がかかっていることが好ましく、これは、滅菌等で加熱されても張力を維持し易く、経時的な応力緩和が生じにくい素材を筒状体2に選択することで可能となる。
【0034】
また、比較的に応力緩和が生じやすい素材を筒状体2に選択する場合は、変形可能部12(変形部)が実質的に直線になるようにすることができる。これらによってさらに安定に、押圧時、及び非押圧時とも流路13以外に筒状体2と流路制御部材4との間に隙間を生じさせる事がなく、その結果、液体の滞留部を無くすことができ、またプライミング時にエアーを残さずに抜くことができる。
【0035】
流路制御部材4の上流端40には、流路制御部材4と同様に硬質材料からなる接続部材42が一体成形されており、接続部材42は、流体の流路13および調節流路5に連通する連絡通路41を有している。接続部材42の上流端は、輸液、輸血、栄養等のラインの上流ライン(図示省略)に液密に接続される。なお、図示しないが、上流ラインは、例えば、輸液バッグや血液バッグ、栄養バッグ、インフューザーポンプ等と上流チューブとからなっている。また、点滴筒を含んでいてもよい。
【0036】
ここで、流体の流路13および調節流路5の下流端3は、筒状体2を介して、例えば、輸液バッグや血液バッグ、栄養バッグ、インフューザーポンプ等の下流ラインに連通していて、下流チューブを介して患者側に流体が、送液される。添付の図面においては、筒状体2と下流チューブを輸液セット、輸血セット、栄養セット等のチューブと一体成形することにより、部品点数を省き、低コストとしているが、必要に応じて、新たに接続部材を用い、筒状体と下流チューブを別部材としてもよい(図示せず)。
【0037】
流路制御部材4の流路形成面8には、流路制御部材4の軸方向へ延びた調節流路5となる制御溝15が形成されており、制御溝15の横断面積は、前記軸方向に沿って下流側に向かって0から徐々に大きくなるように構成されている。本実施形態では、制御溝15の深さを徐々に大きく変化させているが、制御溝15の幅、あるいは制御溝15の幅と深さの両者を変化させてもよい。また、逆に、制御溝15の横断面積が上流側に向かって徐々に大きくなるようにしてもよい。
【0038】
ここで、制御溝15の横断面積は、例えば、一般的な重力落下方式で輸液バッグから静脈に例えば、乳酸リンゲル液、生理食塩液等の輸液(薬液)を点滴する場合、0〜0.5mm2程度であることが好ましい。ただし、制御溝15の横断面積の大きさは、制御溝15の断面形状、流体の粘度等の性質,流量、流体に圧力を付与する手段(落差による方法、バルーン等の加圧手段による方法)等によってその好適な範囲が異なるので、制御溝15の横断面積の範囲は上記に限定されないのは言うまでもない。
【0039】
また、制御溝15の断面形状は、図示の例では矩形(長方形)であるが、その他、例えば、U字形状あるいは半円形状であってもよく、凹形状となっているのが好ましい。さらに、制御溝15は、流路制御部材4の軸方向へ直線状に延びているが、波線状に伸びていてもよい。なお、制御溝15の本数は、単数でも複数でもよいが、単数にすることにより、エアーブロックによる流量変化を抑制できるという利点がある。
【0040】
筒状体2の外周部には、支持体9と、押圧部6を有する作動部材7が設けられており、この作動部材7は、流路制御部材4の軸方向に沿って移動可能となっている。作動部材7は、流路制御部材4の軸方向に沿って移動可能に操作するための操作部16と、筒状体2を押圧する押圧部6を有している。さらに、作動部材7は、流路制御部材4と協働して、筒状体2を挟み込むように支持する支持部9を有している。
【0041】
このような構成であれば、その機構は制限されず、作動部材7の押圧部6は、筒状体2を押圧しながらスライドするスライダとしてもよく、また、筒状体2を押圧しながら回転するローラーとしてもよい。
【0042】
図1では、作動部材7は、別部材で形成された支持部9を有しており、この支持体9を筒状体2の軸方向17に沿って移動することにより、流量の調節を可能としているが、作動部材は、支持部体と一体成形されていてもよく、このとき、筒状体2を挟みこむように支持し、かつ、筒状体2の軸方向に沿って移動可能とする構成でもよい。
【0043】
ここで、押圧部6の押圧面14は、流路制御部材4の流路面8に対応した形状、即ち、緩やかな曲線からなる凸状の形状であることが好ましい。また、押圧面14の軸方向の長さが、制御溝より短ければその機能を発揮することができる。
【0044】
筒状体2の内腔面は、押圧部6により押圧され変形可能な変形可能部12(変形部)と、前述のように流路制御部材4の外面の一部と、流体が通過できぬよう密着固定されている固定部11を有している。
【0045】
また、押圧部6が作用していないときの流路制御部材4と筒状体2との境界近傍20は、流路13を形成しない筒状体2と流路制御部材4とが、固定はされていないが、密着している密着部21を有していてもよい。このとき、固定部11と密着部21は密接している。この密着部21を設けることにより、筒状体2が押圧部6により押圧されたとき、歪が緩衝されるとともに、流路を形成する面の段差が無くなる。従って、境界近傍20は、筒状体2と流路制御部材4との間に、隙間が生じることがなくなる。このため、さらに容易に流路13を実質的に閉塞させることができる。
【0046】
変形可能部12(変形部)は、押圧部6によって押圧されたとき、調節流路5をそなえた流路制御部材4の流路を形成する緩やかな曲線で構成された凹状の流路形成面8と、この両側端部の緩やかな丸みの曲線の面10の断面形状に一致する形状となっている。前述のように、押圧部6の断面形状も同様の形状であるのが好ましい。
【0047】
これにより、変形可能部12(変形部)は、押圧部6によって押圧されたとき、緩やかな丸みの曲線の面10付近に対応する部位との間に隙間を発生させることがない。このとき、流体の流路13は、調節流路5(制御溝15)を除き完全に閉鎖されている。こうして、流体の流路は、調節流路5(制御溝15)のみとなり、調節流路5(制御溝15)で調節設定した流量と一致させることができる。
【0048】
なお、本発明の筒状体2は、押圧部6によって押圧されたとき、調節流路5(制御溝15)を備えた流路制御部材4の流路を形成する緩やかな曲線で構成された凹状の流路形成面8と、この両側端部の緩やかな丸みの曲線の面10の断面形状に一致する形状を有することができれば、筒状の態様に限定されるものではなく、軟質部材で構成されていればよい。例えば、筒状体に替えて、軟質部材である膜状部と、硬質材料からなる流路形成制御部とによって、液密に流路が形成されるようにしてもよい。液密に流路が形成されていれば、膜状部を支持する部位は、流路形成制御部に設けてもよく支持体に設けてもよい。
【0049】
さらに、軟質材料からなる筒状体2に替えて、硬質材料からなる流路形成制御部と、軟質材料からなる膜状部で構成された筒状部材とする構成であってもよい。この筒状部材は、硬質材料からなる流路形成制御部と、軟質材料からなる膜状部とを超音波溶着により簡単に製造可能である。また、同じ機能を有する限りこれらに限定されるものではない(図示せず)。
【0050】
このように膜状部と流路制御部材とで液密に流路が構成された場合、膜状部の変形可能部断面の長さは、押圧部に押圧されたときに変形可能部(変形部)は伸長して、制御溝を除く流路制御部材断面の流路面に密着できる長さであるのが好ましい。このように変形可能部断面の長さを制御溝を除く流路制御部材断面の流路面の長さより短くすることで、前述の筒状体2と同様に隙間を発生させない。さらに変形可能部(変形部)の断面内面に0以上の抗張力がかかることが好ましく、また、押圧部の非押圧時には、変形可能部(変形部)は直線であることがより好ましい。
【0051】
このようにすることで、調節流路以外に変形可能部と流路制御部材との間に隙間を発生することがなく、液体の滞留部をなくすことができ、またプライミング時にエアーを残さずにすることができる。変形可能部12(変形部)の押圧部6と接触する面は、少なくとも流路制御部材4の軸方向の長さ分は、低摩擦処理を施すと、作動部材7の移動操作を容易にすることができる。低摩擦処理としては、粗面加工、シリコーン等のオイル塗布、PTFE等のフィルム被覆、多層成形等、摩擦を低減できれば、限定されない。
【0052】
次に、流路調整器1における各構成部材の材料について説明する。筒状体2の材料としては、一定範囲で弾性的に変形する弾性体が好ましく、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム,イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム等各種ゴム材料や、ポリブタジエン、EVA,軟質のポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、スチレン系エラストマー、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、等の各種熱可塑性樹脂、およびこれらを含む混合物が挙げられる。なお、筒状体内の視認性を確保し、気泡等を確認できるように、透明または半透明な材質であるのが好ましい。
【0053】
筒状体2に各種ゴム材料を用いたとき,ゴムチューブは、内周を拡大し挿入されるため、流路制御部材をかしめる力が働き、図4の押圧部で変形される変形可能部位12には、常に左右の方向の抗張力がはたらくことになる。この結果、長時間押圧しっぱなしでも、筒状体が不可逆変形して押圧時制御溝以外の部分に流体が流れるすきまができることのない安定な押圧状態をつくることができる。また、激しく制御部材をスライドさせたり、長時間一定の筒状体の部分を押圧しっぱなしで、通常クリープ変形し易い軟質素材では、永久変形の結果スライド制御部材のスライド時にがたつきがでたりするほどの使い方をしても、安定に流量制御ができるようになる。
【0054】
また、流路制御部材4の材料としては、調節流路5を安定して形成することができる適度な硬さをもつものが好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリアミド、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、アクリルニトリル・スチレン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、PEEK、フッ素樹脂等の高分子材料、チタン、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。なお、流路制御部材4に一体成形された接合部材も,同様の材料を用いることができる。
【0055】
特にポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、PEEK等は耐薬品性に優れ、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリアセタール等は費用、成形時の樹脂の流動性、耐熱性のバランスに優れている。
【0056】
作動部材7の材料としては、筒状体2を変形させることができる適度な硬さを有するものが好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリアミド、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、アクリルニトリル・スチレン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、PEEK、フッ素樹脂等の高分子材料、チタン、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。
【0057】
(実施例1)
次に、第1実施形態に係わる流量調整器の構成について説明する。筒状体2として内周長6.6mm、厚みD18は0.6mmのポリブタジエン(JSR社製)製軟質チューブを押出成型にて作製した。流路制御部材4は、ポリプロピレン(日本ポリケム社製)を用い、支持体9と同一部品として作製した。流路制御部材4の流路面8には、遮断領域31と流量制御区間33を有し、流量制御区間33には、制御溝15が設置されている。制御溝15は、流量制御区間33の端部から32mmの長さで、断面積が0.064mm2から上流に向かって0.016mm2に変化するように深さと巾で調整し、調節流路5となるよう作製した(図2、図3、図5)。
【0058】
このとき、図3で示される流路制御部材4の側端部における境界近傍20の連続する緩やかな丸みの半径R19は、0.5mmとなっている。制御溝15を除いた部分の流路制御部材4の凹部の半径は2mm、流路制御部材4の幅は3.5mm、長さ60mm、制御溝15を除く断面周囲長100は8.4mmとし、制御溝15を除いて、流路制御部材4の断面外周は、図4のようにエッジのないスムースな表面になるようにした。図1で示されるように支持体9の側面には、目盛りを付与した。
【0059】
そして、前述の軟質チューブ(筒状体2)の端部を流路制御部材4の下流端30の端部から挿入して組み立て、このときの筒状体2の内周長を計測したところ8.3mmとなり、筒状体2の内周長Lと流路制御部材4の断面周囲長100をMとしたときの比はL/M=0.99となった。ここで、流路制御部材4の下流端30の端部は、図2で示されるように下流に向かってテーパーとなっており、軟質チューブ(筒状体2)を挿入容易としている。このように筒状体2の内腔に流路制御部材4を挿入して組立てたとき、軟質チューブ(筒状体2)の内周長より制御溝15を除く流路制御部材4の断面周囲長100のほうが大きいため、流路面8における軟質チューブ(筒状体2)の変形可能部12(変形部)には、抗張力がかかり、図4で示されるように変形可能部12(変形部)は、直線状となっている。
【0060】
作動部材7は、高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製)を用いて作製し、軟質チューブを流路制御部材4に挿入後、断面が図3あるいは図4のように筒状体2を支持体9とともに挟み込むように罫止した。図1から理解されるように、作動部材7は、支持体9に付された目盛りの長さ分の移動が可能となっている。作動部材7の押圧部6は、丸みを有する凸状で、丸みの半径は1.56mmとなっており、流路制御部材4の凹部に挿入可能となっている。押圧面14には、潤滑のためシリコーンオイルを微量塗布した。シリコーンオイルの塗布によって、片手でより容易に作動部材7を移動させることができるようになった。
【0061】
次に本発明の流量調整器の使用方法について説明する。輸液セットに本発明の流量調整器1を組み込み、瓶針に輸液剤として生理食塩液が収容された輸液バッグを接続し、全長130cmとして、落差70cmで生理食塩液が流れるよう準備した。この状態で生理食塩液の流量を調節する場合には、図5に示すように作動部材7を流路制御部材4の軸方向へ移動して、作動部材7における押圧部6により筒状体2の所定部位を押圧し、筒状体2の変形可能部12(変形部)の所定部位が変形され、流路制御部材4の流路面8と密着する。
【0062】
このとき、流路制御部材4の軸方向に対して垂直の断面形状は、流路制御部材4の端部10の連続した緩やかな丸みのある形状により、筒状体2の押圧時に出現する復元力によって、隙間を生じるということがなく、流路制御部材4と筒状体2の密着面および密着固定面の断面形状が、制御溝15を除いて一致している。このため、流路13は調節流路5を除き、完全に閉塞されている。これにより、制御溝15における筒状体2に覆われた部位、即ち、調節流路5の横断面積を変化させて、調節流路5の管路抵抗を変え、輸液剤の流量を調節することができる。
【0063】
さらに、変形可能部12(変形部)は、断面内面に0以上の抗張力が常にかかっていることが好ましく、また、押圧部6の非押圧時には、図4で示されるように直線であることが好ましい。これにより、変形可能部12(変形部)は、押圧部6によって押圧されたとき、緩やかな丸みの曲線の面10付近に対応する部位との間の隙間をさらに発生させなくなる。
【0064】
ここで、制御溝15の断面積の変化量と流量調節時の作動部材7の移動量を非線型に設定することも可能である。また、低流量の調節は高流量の調節よりも精度を高めたり、反対に高流量の調節は、低流量の調節よりも精度を高めるという設定もできる。
【0065】
次に前述の状態で、輸液剤の流量をゼロにする場合には、図6に示すように、操作者が指等により作動部材7の操作部16を上流側へ移動させ、押圧部6により筒状体2の上流端付近32を押圧して、筒状体2の上流端付近32の遮断領域31に密着させる。これにより、流路13は閉塞状態となり、遮断領域31には、調節流路がないため、輸液剤の流量はゼロとなる。また、図7に示すように下流端へ作動部材7を移動させると、輸液剤の流量は最大となる。
【0066】
以上のように本発明は、輸液剤の流量を調節したとき、流路制御部材4と筒状体2との間に隙間が生じず、調節流路5を除き、閉塞されているために、制御溝15で調節された流量を維持することができる。さらに、流量をゼロに調節したとき、流路13が完全に閉塞されているため、輸液剤が流れることがない。
【0067】
また、流量の設定は、点滴筒の滴下数のカウントでもよいが、支持体9に所定の目盛りを付与することにより、輸液剤の流量を調節、設定して輸液を行うとき、一時的に最大流量(フラッシュ)にしても、同じ流量に復帰させることが、目盛りを目安にすれば容易にできる。
【0068】
このように第1実施形態によれば、目盛りをめやすに所望の流量を容易に設定することができ、フラッシュ後の再設定も容易であった。また、100ml/時間で6時間流したが、点滴筒でのカウント数では開始と終了時の流速に差は確認できなかった。また、目盛りにより、作動部材7の設定位置を容易に確認する事ができた。
【0069】
(実施例2)
図8は、第2実施形態に係わる流量調整器51の斜視図である。第1実施の形態と異なる点について説明する。支持体59は、ポリプロピレン(日本ポリケム社製)を用い、第1実施の形態と同様の流路制御部材を同一部品として作製した。作動部材57は高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製)を用いて作製し、軟質チューブを流路制御部材に挿入後、筒状体52を支持体59とともにはさみこむように係止した。押圧部56には、潤滑のためシリコーンオイルを微量塗布した。作動部材57は、操作部516に指で力を加えたときに押圧部56の摩擦抗力が増加しにくいように、操作部516が押圧部56の一方の端部から直交する位置になるように作製した。
【0070】
このように操作時の押圧部56と筒状体52との接触面積を低減することにより、操作性を軽くすることができ、流量も容易に設定できた。なお操作性を軽くする為には、押圧部56と、押圧部56の一方の端部から直交する位置であることに限定されず、操作部の位置が、押圧部の押圧する力の方向上と異なる方向に位置すれば良い(図示せず)。
【0071】
(実施例3)
次に、第3実施形態に係わる流量調整器の作用について説明するが、第1実施の形態と相違する点についてのみ説明する。図9は、第3実施の形態に係わる流量調整器61の断面図である。この流量調整器61は、筒状体62と流路制御部材64と作動部材67とから構成されている。作動部材67は、高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製)を用いて押圧部66と操作部616および支持部69が筒状に一体成形されており、筒状体62の軸方向へ移動可能にそなえられている。
【0072】
流量調整器61の流路制御部材64に制御溝65が設置されている。この制御溝65内に流体の流れを遮断する遮断部63がそなえられている。この遮断部63を境に制御溝65は、上流側制御溝651と下流側制御溝652に分けられている。上流側制御溝651は、32mmの長さで、断面積が0.064mm2から上流に向かって0.016mm2に変化するように深さと巾で調整してある。また、下流側制御溝652は、上流側制御溝651の断面積よりも大きな0.64mm2の断面積となっており、大量の流体を送液可能としている。
【0073】
輸液セットに本発明の流量調整器61を組み込み、瓶針に生理食塩液が収容された輸液バッグを接続し、全長130cmとして、落差70cmで、生理食塩液が流れるよう準備した。この状態で生理食塩液を流したところ、上流側制御溝651の位置で、所望の流量に目盛りをめやすに容易に設定することができた。遮断部63の位置に操作部材67の押圧部66が移動したとき、流体の流量はゼロとなった。さらに操作部材67の押圧部66を下流側制御溝652の位置に移動したところ、大量の生理食塩液が流れた。
【0074】
このように遮断部63を設けたことにより、流量設定時に誤って過剰流量を流しにくい為、より安心感を持って流量を設定することができた。この遮断部63は、制御溝65内の任意の場所に設定することができるし、複数そなえられていてもよい。下流側制御溝652および上流側制御溝651の断面積を任意に設定することができるのは言うまでもない。
【0075】
(実施例4)
次に、第4実施形態に係わる流量調整器の作用について説明するが、第3実施の形態と相違する点についてのみ説明する。図10は、第5実施の形態に係わる流量調整器71の断面図である。遮断部73を境に制御溝75は、上流側制御溝751と下流側制御溝752に分けられているが、上流側制御溝751と下流側制御溝752の断面積が、第4実施の形態と相違する。上流側制御溝751は、16mmの長さで、断面積が0.043mm2から0.016mm2に変化するように深さと巾で調整してある。また、下流側制御溝752は、上流側制御溝751の断面積よりも大きな断面積となっており、16mmの長さで、断面積が0.074mm2から0.043mm2に変化するように深さと巾で調整してある。
【0076】
輸液セットに本発明の流量調整器71を組み込み、瓶針に生理食塩液が収容された輸液バッグを接続し、全長130cmとして、落差70cmで、生理食塩液が流れるよう準備した。この状態で生理食塩液を流したところ、上流側制御溝751の位置で所望の流量を目盛りをめやすに容易に設定できた。遮断部73の位置に操作部材67の押圧部66が移動したとき、流体の流量はゼロとなった。下流側制御溝752の位置では、上流側制御溝751の位置するときよりも大流量の制御を目盛りをめやすに容易に設定できた。
【0077】
このように遮断部73を設けて制御溝を分割する事により、微小流量を流す時と比較的大きな流量を流す時とを、分かり易く場合分けをして設定する事ができた。この遮断部73は、制御溝75内の任意の場所に設定することができるし、複数そなえられていてもよい。下流側制御溝752および上流側制御溝751の断面積を任意に設定することができるのは言うまでもない。また、図11に示すように遮断部83を基点として、流量が増加するように制御溝851、852を配置してもよい。
【0078】
(実施例5)
次に、第5実施の形態に係わる流量調整器について説明するが、第1実施の形態と相違する点についてのみ説明する。第1実施形態のポリブタジエン製チューブのかわりに、内周長6.3mm、厚さ0.62mmのイソプレン製ゴムチューブを用い、流路制御部材の挿入端部と反対側の端部にコネクターを介して輸液セット用チューブを接続した。押圧部は、丸みを有する凸状で、丸みの半径は1.56mmとなっており、流路制御部材の凹部に挿入可能となっている。筒状体と作動部材の間に12ミクロンのポリエチレンテレフタレート製フィルムを挟んで、本発明の調整器を作製した(図示せず)。実施例1と同様、容易に作動部材をスライドでき、目盛りをめやすに流量も容易に設定できた。
【0079】
(実施例6)
図14は第6実施形態に係わる流路制御部材の断面図である。第6実施形態は筒状体として、シリコーンゴム製チューブを用い内周長20.0mm、厚さ0.4mmに設定し作製した。図14で示される流路制御部材35の側端部における境界近傍320の連続する緩やかな丸みの半径は、0.5mmとなっている。制御溝315を除いた部分の流路制御部材35の凹部の半径は1.0mm、流路制御部材35の幅は4.2mm、長さ60mm、制御溝を除く断面周囲長300は30.4mmとし、制御溝315を除いて、流路制御部材35の断面外周は、図14のようにエッジのないスムースな表面になるように作製した。筒状体の内周長をL´、流路制御部材断面の周囲長をM´としときの比は、L´/M´=0.66となった。また図示しないが、作動部材の押圧部は、流路制御部材の凹部に対応する凸状に作製した。筒状体の表面摺動性を確保するため微量のシリコーンオイルを塗布した。この他は第1実施形態と同様に流量調整器を作製した。実施例1と同様、容易に作動部材をスライドでき、目盛りをめやすに流量も容易に設定できた。
【0080】
(比較例)
図12に示す、従来の実施形態である流量調整器91の軸方向に対して垂直の断面図である。図12に示されるように、作動部材97の押圧部96は、軟質材料からなる筒状体92を押圧している。硬質材料からなる流路制御部材94の端部98の先端部99の断面形状は、非曲線で終焉している。このとき、押圧部96で押圧されている筒状体92は、弾性変形し、その復元力により、非曲線の流路制御部材94の端部98の先端部99の断面形状に追従することができず、隙間90を形成してしまう。このため、隙間90から流体が流出し、調節流路95で設定した流量より過量となる。
【0081】
以上、本発明について、図に基づき詳細に説明してきたが、本発明は、これに限定されず、流量調整器の各構成要素は、同様の機能を発揮し得る任意のものに置換することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 流量調整器
2 筒状体
3 下流端
4 流路制御部材
5 調節流路
6 押圧部
7 作動部材
8 流路形成面
9 支持体
10 緩やかな丸みの曲線面
11 固定部
12 変形可能部
13 流路
14 押圧面
15 制御溝
16 操作部
17 軸方向
18 厚みD
19 半径R
20 境界近傍
21 密着部
30 下流端
31 遮断領域
32 筒状体の上流端付近
33 流量制御区間
40 上流端
41 連絡通路
42 接続部材
51 流量調整器
516 操作部
52 筒状体
53 下流端
56 押圧部
57 作動部材
59 支持体
61 流量調整器
62 筒状体
63 遮断部
64 流路制御部材
65 制御溝
651 上流側制御溝
652 下流側制御溝
66 押圧部
67 作動部材
69 支持体
71 流量調整器
73 遮断部
75 制御溝
751 上流側制御溝
752 下流側制御溝
81 流量調整器
83 遮断部
85 制御溝
851 上流側制御溝
852 下流側制御溝
87 作動部材
90 隙間
91 流量調整器
92 筒状体
94 流路制御部材
95 調節流路
96 押圧部
97 作動部材
98 端部
99 先端部
100 断面周囲長
300 断面周囲長
315 制御溝
320 境界近傍
35 流路制御部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部と支持部とを有する筒状の作動部材と、前記押圧部と前記支持部に挟持され流体の流入口と流出口とを有する筒状体と、前記流体の流路を形成する前記筒状体の内腔の支持部側に密着し一部が密着固定された硬質材料からなる流路制御部材とから構成された流量調整器であって、前記作動部材は、前記筒状体の外周を軸方向に移動可能に係止され、前記押圧部は前記筒状体の流路側外周部を押圧可能に前記作動部材に設置され、前記筒状体または前記流路制御部材は軸方向に延びる制御溝を有し、前記筒状体と前記流路制御部材との境界近傍における前記流路制御部材の両側端部の断面形状は連続した緩やかな丸みを有することを特徴とする流量調整器。
【請求項2】
前記制御溝は前記流路制御部材の流路面に設けられ、前記制御溝の断面積は連続して増加または減少し、前記流路制御部材は流路面側の筒状体の軸方向に対して垂直の断面形状が凹形状を有し、前記押圧部は前記凹形状内に挿入可能な大きさの凸形状である断面形状を有し、前記流路制御部材の両側端部の断面形状の連続した緩やかな丸みの半径Rと前記筒状体の厚みDとの関係は、R≧D/10であることを特徴とする請求項1記載の流量調整器。
【請求項3】
前記筒状体は押圧時に押圧された部位が変形する変形部を有し、変形した前記変形部と前記流路制御部材とが前記制御溝を除き密着し、前記変形部は前記筒状体の軸方向に対して垂直の断面内面に常に抗張力が働き、さらに前記変形部は非押圧時に前記筒状体の軸方向に対して垂直の断面形状が直線形状であって、前記筒状体の内腔と前記流路制御部材との密着固定部と密接する部位は固定されずに密着されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の流量調整器。
【請求項4】
前記筒状体は輸液チューブ、輸血チューブ、栄養チューブの何れかからなることを特徴とする請求項1から請求項3記載の流量調整器。
【請求項5】
前記作動部材は移動させるための操作部を有し、前記操作部は前記押圧部が押圧する力の方向上と異なる方向に位置し、前記筒状体は前記変形部の押圧される面に低摩擦処理を施したことを特徴とする請求項1から請求項4記載の流量調整器。
【請求項6】
前記押圧部の移動量に対応して、流量を示す目盛りを有することを特徴とする請求項1から請求項5記載の流量調整器。
【請求項7】
前記筒状体の内周長は前記制御溝を除く前記流路制御部材断面の周囲長より短いことを特徴とする請求項1から6記載の流量調整器。
【請求項8】
前記筒状体の内周長をL、前記流路制御部材断面の周囲長をMとしたとき、0.6<L/M<1の関係を満たすことを特徴とする請求項7記載の流量調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−106681(P2011−106681A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39054(P2011−39054)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【分割の表示】特願2001−197409(P2001−197409)の分割
【原出願日】平成13年6月28日(2001.6.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】