説明

浄水場又は下水処理場からの発生土の処理方法

【課題】 浄水場発生土及び下水処理場発生土の色合い改善
【解決手段】 浄水場又は下水処理場の発生土をそのまま造粒するか、ゲル化剤又は増粘剤を配合して造粒する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場や下水処理場にて処理される河川水又は下水に浮遊物を、凝集沈殿することで発生する汚泥(これを発生土と呼ぶ)を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場又は下水処理場で処理される河川水や下水は、多彩な有機物と無機物を含有するのが通例であって、これらの有機物や無機物が凝集沈殿した浄水場発生土及び下水処理場発生土は、これに必要に応じて肥料成分や土壌改良剤などを混合し、植物栽培用の土として利用されて来ている(特許文献1参照)
【0003】
元来日本では、森林に由来する黒土(黒褐色)や火山活動に由来する赤土(茶褐色)が、園芸用の土としてもてはやされて来た関係で、黒褐色ないしは茶褐色を呈する土が、園芸用の良質土として広く認識されている。然るに、上記のような発生土は、その固形分の大部分がシルトであるため、これを大気中に放置すると、灰青色ないしは灰緑色を呈する不都合がある。つまり、発生土に肥料成分や土壌改良剤を混合し、質的にも量的にも天然の黒土や赤土に匹敵する作り土を調製しても、その外観から良質土として認識されない場合が多い。
【特許文献1】特許第3264938号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、大気中で放置すると灰青色ないしは灰緑色を呈する発生土の外観を、黒褐色ないしは茶褐色に呈色させる方法を提供する。一般に、発生土を積み上げて大気中に放置すると、大気に接して自然乾燥した発生土は、その色相がR〜B(マンセル表記)の範囲にあり、明度は3〜5(マンセル表記)の範囲になるのが通例である。本発明の処理方法によれば、3〜5(マンセル表記)の範囲にある発生土の当初の明度を、2(マンセル表記)以上低下させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が提案する発生土の処理方法のひとつは、浄水場又は下水処理場から得られる発生土を、如何なる助剤の共存しない条件下に、粒径5mm±3mmの範囲に造粒することを特徴とする。
本発明に係る発生土処理方法の他のひとつは、発生土の造粒に先立ち、増粘剤又はゲル化剤を発生土の含水重量に対して0.5〜2.0重量%添加し、得られた混合物を粒径5mm±3mmの範囲に造粒することを特徴とする。
この際、造粒土の表面水が1000mPa.s以上となるようにゲル化剤または増粘剤を添加することが望ましく、代表的なゲル化剤CMC製剤の1%溶液粘度表を下に記載する。
【0006】
【表1】

【0007】
浄水場又は下水処理場から得られる発生土は、40〜75重量%の水分を含有し、残りの25〜60重量%は雑多な有機物及び粘土鉱物からなり、有機物は固形分の15〜60重量%(VOC換算)を占める。そして、発生土中には鉄やマンガンなどの金属成分がイオンとして溶解しているほか、金属塩の形で有機物や粘土鉱物に含まれている。ちなみに、発生土を強制乾燥して得た固体を、王水で抽出し、抽出液の炎色反応から原子吸光法で鉄及びマンガンの含有量を測定すると、発生土は押し並べて、鉄又はマンガンのいずれか一方を0.1重量%以上含有する。
【0008】
本発明者等が得た知見によれば、適度に湿潤した発生土を、転動造粒又は振動造粒などの手段で粒径5mm±3mm程度の球形粒子に造粒して大気中に放置すると、その粒子群は、全体として黒味を帯びた外観を呈することが分かった。造粒された粒子が黒味を帯びて見えるのは、粒子内部から水分が表面に浸出して粒子表面に液膜が形成され、その液膜に溶存している鉄イオンやマンガンイオンが、空気中の酸素で酸化されるためと考えられる。この推測の真否は別にして、造粒前の発生土は、その明度が3〜5の範囲にあるが、造粒によってその明度を2以下に低下させ得ることを本発明者等は見出した。
【発明の効果】
【0009】
浄水場又は下水処理場からの発生土は、大気中において灰青色ないしは灰緑色を呈するのが通常であるが、これを本発明の方法で処理することにより、その外見を茶褐色ないしは黒褐色に変化させることができる。ちなみに、東京都朝霞浄水場からの発生土は、色相R〜B(マンセル表記)、明度3〜5(マンセル表記)の範囲にあるが、この発生土を本発明の方法で処理することで、その色相はR〜B及びN(マンセル表記)に、明度は2(マンセル表記)以下に低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発生土の造粒には、転動造粒、振動造粒、押し出し造粒などのいずれかを採用することができ、造粒後の粒子の粒径は、5mm±3mm程度とすることが好ましい。転動造粒、振動造粒を採用した場合には、ほぼ球形の粒子が得られるのとは対照的に、押し出し造粒を採用した場合は円柱状の粒子が得られるが、この円柱状粒子の大きさは、円柱直径も円柱高さも共に5mm±3mm程度であることが好ましい。
【0011】
本発明では、造粒に先立って発生土に増粘剤又はゲル化剤を配合することができる。増粘剤には、ポリアクリルアマイド製剤やグアーガムなどが使用でき、ゲル化剤には、CMC製剤などの非加熱で作用するものが使用できる。増粘剤及びゲル化剤の使用量は、造粒に供する発生土の含水量100重量部当たりそれぞれ0.5〜2.0%重量部の範囲で選択される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水場又は下水処理場に送られる原水中の浮遊物が凝集沈殿することで発生する発生土を、如何なる助剤も添加せずに、粒径5mm±3mmの範囲に造粒することを特徴とする発生土の処理方法。
【請求項2】
発生土の造粒に先立ち、増粘剤又はゲル化剤を発生土の含水重量に対して0.5〜2.0%添加して造粒することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
発生土の造粒に先立ち、鉄又はマンガンのいずれか一方を0.1重量%以上含有するよう場内プロセス中のろ過砂剥離酸化鉄・酸化マンガンを添加して造粒することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の方法に従って処理した発生土に、堆肥を混合した植物栽培土壌。

【公開番号】特開2007−244970(P2007−244970A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70260(P2006−70260)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(598118031)西武造園株式会社 (2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(503306113)王子木材緑化株式会社 (9)
【出願人】(503443407)株式会社三宝緑化 (3)
【Fターム(参考)】