説明

浄水汚泥処理装置及び浄水汚泥処理方法

【課題】汚泥と水とを分離しやすくすると共に、分離した水の水質を良好に保つことができる浄水汚泥処理装置及び浄水汚泥処理方法を提供する。
【解決手段】上水用の原水を沈降槽1で沈降させ、この沈降汚泥を濃縮槽4で濃縮処理し、濃縮汚泥の搬送途中において、加圧手段5によりこの搬送中の汚泥を大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧し、加熱器7で100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱し、温度保持部8で温度を5分以上保持した後、脱水処理に適する温度まで冷却し、この冷却された汚泥を圧力調整部12で大気圧に戻し、脱水器13で脱水処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場での水処理等で発生する汚泥を脱水処理する浄水汚泥処理装置及び浄水汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、浄水場では、河川などの取水源から取水した上水用の原水に対して、添加剤を加えて沈降処理したり、この結果生じる沈降汚泥を濃縮処理したりして、上澄み水を得、これに消毒を行ったりして上水を得ている。このような水処理過程において、上述のように汚泥が発生する。
【0003】
水処理過程で発生した汚泥は、最終的には脱水処理され、各種用途に用いられるが、原汚泥の水分含有率が高いため、なかなか脱水が充分に行われない傾向であった。そこで、原汚泥を加熱処理することにより、良好な脱水性を得ることが考えられた。例えば、木材加工業などから排出される有機系廃棄物に対する廃棄物処理方法(例えば、特許文献1参照)や生活廃水などによる下水汚泥を処理する汚泥処理方法(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
前者は、廃棄物に対し過酸化水素などの酸化剤を共存させて加熱加圧し、廃棄物を可溶化/ガス化するものである。すなわち、廃棄物(汚泥)を酸化剤とともに容器に密封して行うバッチ形式である。過酸化水素を共存させるのは対象廃棄物が木質系バイオマスでリグニンを含むため分解が難しく、過酸化水素を添加しないと可溶化しないためである。また、後者では、130℃を越える温度で加熱処理することにより汚泥の沈降性を改善するものである。
【特許文献1】特開2000−84520号公報
【特許文献2】特開平10−337596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、木材加工業などから排出される有機系廃棄物や下水汚泥を加熱処理して脱水性を向上させることは従来から行われていた。
【0006】
しかし、本発明が対象とする上水では、汚泥と水とを分離しやすくすることと共に、分離した水の水質が良好であることが要求される。上述した従来方法は、汚泥と水とを分離しやすくする機能はあるものの、分離後の水質に問題が生じる。すなわち、前者では過酸化水素を添加するため処理水の有機物濃度が著しく増加してしまい、上水水質としては好ましくない。また、後者では、熱処理温度が130℃を越えると、特に150℃以上になると、汚泥の沈降性はよくなるが処理水質が著しく悪化してしまうため、上水としては適さない。
【0007】
本発明の目的は、汚泥と水とを分離しやすくすると共に、分離した水の水質を良好に保つことができる浄水汚泥処理装置及び浄水汚泥処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる浄水汚泥処理装置は、上水用の原水に添加剤を加えて固形成分を沈降させる沈降槽と、この沈降槽で沈降された固形成分を濃縮して濃縮汚泥を生じさせる濃縮槽と、この濃縮槽で生じた濃縮汚泥を搬送する配管に設けられ、この配管内を搬送中の汚泥を所定圧力に加圧する加圧手段と、この加圧手段で加圧された搬送中の汚泥を所定の熱処理温度に加熱する加熱器と、この加熱器で所定の熱処理に加熱された搬送中の汚泥の温度を所定時間保持する温度保持部と、この温度保持部により所定時間温度保持された搬送中の汚泥を脱水に適する温度まで冷却する冷却器と、この冷却器により冷却された汚泥を大気圧に戻す圧力調整部と、この圧力調整部で大気圧に戻された汚泥を脱水処理する脱水器とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の浄水汚泥処理装置は、所定時間温度保持された搬送中の汚泥を冷却器により濃縮処理に適する温度まで冷却し、この冷却器により冷却された汚泥を圧力調整部で大気圧に戻し、この圧力調整部で大気圧に戻された汚泥を第2の濃縮槽で濃縮処理し、この第2の濃縮槽で生じた汚泥を脱水器で脱水処理するように構成してもよい。
【0010】
さらに、本発明の浄水汚泥処理装置は、上水用の原水を沈降槽で沈降させることにより生じた沈降汚泥を加圧、加熱し、所定時間温度保持するようにしてもよい。
【0011】
これらの本発明にかかる浄水汚泥処理装置では、加圧手段は配管内において搬送中の汚泥を大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧し、加熱器は搬送中の汚泥を100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱し、温度保持部は搬送中の汚泥の温度を5分以上保持するとよい。
【0012】
また、本発明にかかる浄水汚泥処理装置では、温度保持部は、汚泥が流通する配管に対し、熱源部の長さを可変とすることにより温度保持時間を調整可能とする。
【0013】
また、本発明にかかる浄水汚泥処理装置では、温度保持部は、汚泥が流通する配管の長さを、熱源部の長さに対して可変とすることにより温度保持時間を調整可能としてもよい。
【0014】
さらに、本発明にかかる浄水汚泥処理装置では、配管内を搬送される汚泥の流量を調整し、汚泥に対する温度保持時間を調整する保持時間調整手段を有する構成としてもよい。
【0015】
本発明にかかる浄水汚泥処理方法は、上水用の原水に添加剤を加えて固形成分を沈降させ、この沈降汚泥を濃縮処理し、上澄み水と分離された濃縮汚泥を搬送する際、この搬送途中において汚泥を大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧し、この加圧された搬送中の汚泥を100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱し、この加熱された搬送中の汚泥の温度を5分以上保持した後、この搬送中の汚泥を脱水に適する温度まで冷却し、この冷却された汚泥を大気圧に戻して脱水することを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる浄水汚泥処理方法は、大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧され、100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱され、5分以上温度保持された汚泥を濃縮処理に適する温度まで冷却し、この冷却された汚泥を大気圧に戻してさらに濃縮処理し、この後、脱水処理するようにしてもよい。
【0017】
さらに、本発明にかかる浄水汚泥処理方法は、上水用の原水を沈降処理して生じた沈降汚泥の搬送途中において、この搬送中の汚泥を大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧し、この加圧された搬送中の汚泥を100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱し、この加熱された搬送中の汚泥の温度を5分以上保持してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定の圧力下、所定温度に加熱し、かつ所定時間温度保持することにより、汚泥を熱処理による改質し、ろ過性能を向上させ、脱水に要する時間を短縮すると共に分離された水の水質を良好に保つことができる。さらに、熱処理による改質により向上する沈降性能に着目し、脱水の前にさらに沈降濃縮により汚泥を減容させ、脱水工程に送る汚泥の量を低下することにより、脱水に要する時間を短縮する。これらの処理は連続処理であり、バッチ式でないため処理効率が向上する。また、酸化剤も使用していないので、この点からも分離された水の水質を良好に保つことができる。
【0019】
このように、本発明は浄水場での水処理で発生する上水汚泥を熱処理してこの汚泥の脱水に要する時間を短縮すると共に分離された水の水質を良好に保つものである。すなわち、加熱することにより改質し、ろ過性および沈降性能が向上するという上水汚泥の性質を利用したもので、汚泥の減容に関しては、目標とする減容率を達成するための温度と保持時間を規定している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明にかかる浄水汚泥処理装置及び浄水汚泥処理方法の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1はこの実施の形態による浄水汚泥処理装置を示している。図1において、1は沈降槽で、上水用の原水中の固形成分を沈降させて沈降汚泥を生じさせる。すなわち、この沈降槽1は、河川などから引き入れた原水に添加剤等を加えて固形成分を沈降させ、上澄み水と分離させる。上澄み水は図示しない浄水工程に送られ浄水処理される。また、沈降した汚泥は、ポンプ2により配管3に引き抜かれ、次工程に移送される。
【0022】
4は濃縮槽で、上記沈降槽1で生じた沈降汚泥を沈降濃縮させて濃縮汚泥を生じさせる。すなわち、濃縮槽4は沈降槽1で沈降され、ポンプ2により配管3内を移送された沈降汚泥を受け入れ、これをさらに沈降濃縮させる。なお、濃縮槽4内に生じる上澄み水は、やはり図示しない浄水工程に送られ、浄水処理される。
【0023】
この濃縮槽4で生じた濃縮汚泥は、ポンプ5により濃縮槽4から配管6に引き抜かれ、次工程に移送される。この配管の下流部分には管路を絞る形の圧力調整部12が設けられており、この圧力調整部12までの配管内を流れる汚泥は上記ポンプ5により加圧される。すなわち、ポンプ5は、汚泥を配管6内に移送させるとともに、この配管6内において搬送中の汚泥を所定圧力に加圧する加圧手段としても機能する。なお、汚泥を加圧するのは、後述する加熱および温度保持中、汚泥が沸騰しないように所定の圧力まで圧力を上げるためである。
【0024】
7は加熱器、8は温度保持部で、それぞれ配管6の外周部に設けられ、加圧手段(ポンプ)5で加圧された搬送中の汚泥を所定の熱処理温度に加熱すると共に、所定の熱処理温度に加熱された搬送中の汚泥の温度を所定時間保持する。加熱器7および温度保持部8の熱源には何を用いてもよいが、この例では、ガスタービン9で生じた蒸気を蒸気配管10で導入し、この蒸気を加熱用の熱源として用いている。
【0025】
11は冷却器で、同じく配管6の外周に設けられ、温度保持部8により所定時間温度保持され、配管6内を搬送中の汚泥を脱水に適する温度まで冷却する。すなわち、冷却器11は、所定の時間、熱処理温度を保持した後に汚泥を冷却する。
【0026】
前記圧力調整部12は、この冷却器11の下流側に設けられており、冷却器11により冷却された汚泥を大気圧に戻す機能を有する。すなわち、圧力調整部12は前記ポンプ5と共に、自己より上流側の配管6内を搬送中の汚泥を昇圧するものであるが、この圧力調整部12を通過することにより、その下流側における汚泥は大気圧となるので、結果的に汚泥を大気圧に戻す機能を有することとなる。
【0027】
13は脱水器で、この圧力調整部12で大気圧に戻された汚泥を脱水処理する。この脱水工程で生じる水も図示しない浄水工程に送られ、浄水処理される。また、脱水汚泥は、脱水器13から取り出された後、図示しない所定の処理工程に送られる。
【0028】
上記構成において、河川などから浄水場へ引き入れられた水は、沈降槽1へ導かれ、沈降剤などを添加され、固形分が沈降される。沈降した固形分(汚泥)はポンプ2および配管3を用いて濃縮槽4へ送られ、さらに沈降濃縮される。
【0029】
沈降濃縮された上水汚泥は、ポンプ5および配管6を用いて加熱器7に送られる。このとき、ポンプ5の吐出圧を利用し、圧力調整部12を用いて、配管6内を熱処理温度の飽和圧力以上に調整する。すなわち、飽和圧力であると汚泥中の溶存ガスが気泡となり熱処理に悪影響を与える可能性があるため、飽和圧力より若干高い圧力に昇圧する。具体的には大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧する。この実施の形態では0.5MPaとした。
【0030】
加熱器7に送られた上水汚泥は、所定の熱処理温度(100℃〜130℃)に加熱される。所定の熱処理温度に加熱された汚泥は、温度保持部8で所定の時間(5分以上)、この熱処理温度を保持される。
【0031】
ここで、熱処理温度を100℃〜130℃としたのは次の理由による。図2に温度を変化させた場合の沈降特性の変化を示し、図3に同じく温度を変化させた場合の処理水質の変化を示す。沈降特性は図2のように、温度の上昇とともに向上するが、処理水質は図3で示すように、130℃を越えると、特に150℃以上になると、急激に悪化する。そのため、処理水を上水として用いる場合は、熱処理温度は130℃以下とする必要がある。また、100℃未満では、沈降特性の著しい改善がみられない。これらのことから、熱処理温度は100℃〜130℃に特定した。
【0032】
温度保持時間を5分以上としたのは次の理由による。図4に熱処理温度を120℃で一定にした場合の、汚泥の沈降特性を示す。温度保持時間が5分以上になると、沈降特性に変化がみとめられる。そのため、時間を5分以上に特定した。
【0033】
所定の熱処理温度を所定の時間保持した汚泥は、冷却器11により脱水可能な温度まで冷却される。脱水可能な温度は、脱水器13の種類によって異なるため、特に限定しないが、仮に40℃とする。また、冷却器11に使用する冷媒もなんでもよい。このようにして脱水可能な温度まで冷却された汚泥は、圧力調整部12を通過することにより大気圧となり、脱水器13に導かれる。
【0034】
脱水器13に導かれた上水汚泥は、ろ過性能が向上しており、ろ過比抵抗が1桁以上向上する。その結果、脱水に要する時間が短縮される。バッチ試験により測定した脱水時間の短縮率を表1に示す。
【表1】

【0035】
表1から、脱水時間の短縮率は、浄水場および季節によって異なるが、2.2倍から5.4倍早くなっており、最低でも半分以下の時間で脱水できる。表1は熱処理温度120℃、保持時間60分、圧力0.5MPaのバッチ試験の結果であるが、その後の連続処理試験の結果より、熱処理温度110℃、保持時間10分、圧力0.5MPaでもほぼ同様の結果が得られている。
【0036】
次に、図5で示す実施の形態を説明する。この実施の形態は、原汚泥を3/5以下に減容することを目標とし、熱処理温度120℃、保持時間5分としており、図1の構成に対し、新たに第2の濃縮槽14を設けている。
【0037】
すなわち、沈降槽1、濃縮槽4、加圧手段5、加熱器7、温度保持部8、冷却器11及び圧力調整部12を設けた構成は図1と同じであるが、圧力調整部12の吐出側に、この圧力調整部12で大気圧に戻された汚泥を沈降処理する第2の濃縮槽14を新たに設け、この第2の濃縮槽14で生じた汚泥をポンプ15により脱水器13に送るように構成した点が異なる。なお、第2の濃縮槽14を設けたことにより、上流側に設けられた濃縮槽4は第1の濃縮槽と呼ぶ。また、第2の濃縮槽14を設けたため、冷却器11は、温度保持部8により所定時間温度保持された搬送中の汚泥を、濃縮処理に適する温度まで冷却するものとする。
【0038】
上記構成において、河川などから浄水場へ引き入れられた水は、沈降槽1で固形分が沈降される。この沈降した固形分(汚泥)はポンプ2および配管3を用いて第1の濃縮槽4へ送られ、さらに沈降濃縮される。
【0039】
沈降濃縮された上水汚泥は、ポンプ5および配管6により加熱器7に送られる。このとき、ポンプ5の吐出圧により、圧力調整部12を用いて、配管6内を熱処理温度の飽和圧力以上に加圧する。加熱器7に送られた汚泥は、所定の熱処理温度(100℃〜130℃)に加熱され、温度保持部8で所定の時間(5分以上)、上記熱処理温度に保持される。
【0040】
上記熱処理温度で所定時間保持された汚泥は、冷却器11で濃縮処理に適した100℃未満まで冷却される。冷却器11により100℃未満まで冷却された汚泥は、圧力調整部12を通過することにより大気圧となり、第2濃縮槽14に導かれる。第2濃縮槽14では、熱処理済みの汚泥を4時間以上放置する。放置された汚泥は、放置前の約3/5に減容されている。この汚泥をポンプ15により脱水器13に送り脱水する。
【0041】
脱水器13に導かれた汚泥は、ろ過性能が向上している上に減容されているため、さらに脱水に要する時間が短縮される。図6に熱処理温度120℃、保持時間5分、圧力0.5MPaで連続処理した汚泥と原汚泥の固形分濃度変化の比較、および各時点での原汚泥を1とした時の処理済汚泥の固形分濃度を示す。この時の原汚泥を1とした時の処理済汚泥の固形分濃度は1.72であり、これは、3/5以下に減容されたことを示している。
【0042】
このように、第2の沈降槽を追加することにより、より一層、脱水特性が向上する。
【0043】
次に、図7で示す実施の形態を説明する。この実施の形態は、図5で示した構成から濃縮槽4を省略し、沈降槽1で生じた沈降汚泥を加圧して熱処理する。すなわち、沈降槽1で生じた沈降汚泥を、ポンプ2及び配管3により加熱部7及び温度保持部8に送り、所定の熱処理温度(100℃〜130℃)に加熱すると共に所定時間(5分以上)、この熱処理温度を保持する。このとき、ポンプ2及び圧力調整部12により、配管3内を熱処理温度の飽和圧力以上に加圧されている。したがって、この実施の形態では、ポンプ2が加圧手段として機能する。
【0044】
上記熱処理温度で所定時間保持された汚泥は、冷却器11で濃縮処理に適した100℃未満まで冷却される。冷却器11により100℃未満まで冷却された汚泥は、圧力調整部12を通過することにより大気圧となり、濃縮槽14に導かれる。濃縮槽14では、熱処理済みの汚泥を4時間以上放置する。放置された汚泥は、放置前の約3/5に減容されている。この汚泥をポンプ5により脱水器13に送り脱水する。
【0045】
この実施の形態は、基本的に図5で示した実施の形態と同種であるが、汚泥の熱処理を濃縮槽4から移送される汚泥に対して行うのではなく、沈降槽1で生じた沈降汚泥に対して行うものである。この方法により、図5の実施の形態に比べ、濃縮槽を1つ少なくでき、それに伴って濃縮に必要な時間(4時間)も短縮できるので、装置の簡略化及び処理時間の短縮化が図れる。
【0046】
次に、上記各実施の形態で用いられる温度保持部8について、その保持時間調整機能部分の具体的構成例を説明する。
【0047】
図8で示す温度保持部8は、汚泥が流通する配管6に対し、熱源部8a乃至8eの長さを可変とすることにより温度保持時間を調整可能としている。すなわち、温度保持部8の熱源部を複数(8a乃至8e)に分割し、それぞれ個別に熱媒体(ここでは、ガスタービン9の排ガス)を供給できるように配管およびバルブを設ける。そして、配管6内を流れる汚泥の線速度から必要とされる温度保持部8の長さを求め、それに見合う長さ分だけ熱媒体(ガスタービン9からの排ガス)を供給する方法である。
【0048】
このようにすれば、熱源部8a乃至8eの長さが可変となり、温度保持時間を任意の長さに調整することができる。
【0049】
なお、熱媒体は、上述したガスタービン9からの排ガスに限らず、他の熱媒体で行ってもよい。例えば、電気ヒータを用いる場合、温度保持部8の熱源となる電気ヒータを複数に分割し、それぞれに制御可能なスイッチを取り付け、必要な長さ分のヒータのみに電気を送ってもよい。
【0050】
また、図9で示す温度保持部8は、汚泥が流通する配管6の長さを、温度保持部8の熱源長さに対して可変とすることにより温度保持時間を調整可能としている。すなわち、温度保持部8は固定長のひとつの加熱器で熱処理温度に保つ。これに対し配管6には、一定間隔ごとに温度保持部8をバイパスする配管およびバルブ16を設ける。そして、配管6内を流れる汚泥の線速度から必要とされる温度保持部8の長さを求め、それに見合う位置の保持部バイパスバルブ16を用いて、汚泥を温度保持部8に対してバイパスさせる。
【0051】
この方法も、熱媒体としてガスタービン9の排ガス以外を用いることが可能であり、電気ヒータを用いる場合でも、温度保持部8全体を熱処理温度に保てるヒータを取り付けるだけで同様の効果が得られる。
【0052】
次に、温度保持時間の別の調整方法を図10により説明する。この例では、保持時間調整手段17,18を設けて、配管6内を搬送される汚泥の流量を調整し、汚泥に対する温度保持時間を調整している。すなわち、熱処理温度に加熱した汚泥を熱処理温度に保持する場合、配管6内を流れる汚泥の線速度を調整するにより、温度保持部8内を流れる時間を調整することができる。この場合、ポンプ5が流量を調整できる機能を備えていれば問題ないが、備えていない場合には、ポンプ5の出口側と入口側とをバイパスライン17でつなぎ、このバイパスライン17に流量調整バルブ18を設ける。
【0053】
上記構成において、配管6に流れる汚泥の流量を多くする場合には、バイパスライン17を流れる汚泥の量を減らすために流量調整バルブ18を閉める。配管6に流れる汚泥の流量を少なくする場合には、バイパスライン17を流れる汚泥の量を増やすために流量調整バルブ18を開ける。このようにして流量調整バルブ18の開度より配管6内を流れる汚泥の線速度を調整する。したがって、これらバイパスライン17及び流量調整バルブ18が保持時間調整手段として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による浄水汚泥処理装置の一実施の形態を示すシステム構成図である。
【図2】熱処理温度と沈降特性との関係を示す特性図である。
【図3】熱処理温度と処理水水質との関係を示す特性図である。
【図4】温度保持時間と沈降特性との関係を示す特性図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示すシステム構成図である。
【図6】上記他の実施の形態による効果を説明する特性図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態を示すシステム構成図である。
【図8】本発明の各実施の形態に適用可能な温度保持部の一例を示す構成図である。
【図9】本発明の各実施の形態に適用可能な温度保持部の他の例を示す構成図である。
【図10】本発明の各実施の形態に適用可能な温度保持時間調整手段の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0055】
1 沈降槽
2、5 加圧手段として機能するポンプ
3、6 配管
4、14 濃縮槽
7 加熱器
8 温度保持部
11 冷却器
12 圧力調整部
13 脱水器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水用の原水に添加剤を加えて固形成分を沈降させる沈降槽と、
この沈降槽で沈降された固形成分を濃縮して濃縮汚泥を生じさせる濃縮槽と、
この濃縮槽で生じた濃縮汚泥を搬送する配管に設けられ、この配管内を搬送中の汚泥を所定圧力に加圧する加圧手段と、
この加圧手段で加圧された搬送中の汚泥を所定の熱処理温度に加熱する加熱器と、
この加熱器で所定の熱処理に加熱された搬送中の汚泥の温度を所定時間保持する温度保持部と、
この温度保持部により所定時間温度保持された搬送中の汚泥を脱水に適する温度まで冷却する冷却器と、
この冷却器により冷却された汚泥を大気圧に戻す圧力調整部と、
この圧力調整部で大気圧に戻された汚泥を脱水処理する脱水器と
を備えたことを特徴とする浄水汚泥処理装置。
【請求項2】
上水用の原水に添加剤を加えて固形成分を沈降させる沈降槽と、
この沈降槽で沈降された固形成分を濃縮して濃縮汚泥を生じさせる第1の濃縮槽と、
この濃縮槽で生じた濃縮汚泥を搬送する配管に設けられ、この配管内を搬送中の汚泥を所定圧力に加圧する加圧手段と、
この加圧手段で加圧された搬送中の汚泥を所定の熱処理温度に加熱する加熱器と、
この加熱器で所定の熱処理に加熱された搬送中の汚泥の温度を所定時間保持する温度保持部と、
この温度保持部により所定時間温度保持された搬送中の汚泥を濃縮処理に適する温度まで冷却する冷却器と、
この冷却器により冷却された汚泥を大気圧に戻す圧力調整部と、
この圧力調整部で大気圧に戻された汚泥をさらに濃縮する第2の濃縮槽と、
この第2の濃縮槽で濃縮された汚泥を脱水処理する脱水器と
を備えたことを特徴とする浄水汚泥処理装置。
【請求項3】
上水用の原水に添加剤を加えて固形成分を沈降させる沈降槽と、
この沈降槽で沈降された沈降汚泥を搬送する配管に設けられ、この配管内を搬送中の汚泥を所定圧力に加圧する加圧手段と、
この加圧手段で加圧された搬送中の汚泥を所定の熱処理温度に加熱する加熱器と、
この加熱器で所定の熱処理に加熱された搬送中の汚泥の温度を所定時間保持する温度保持部と、
この温度保持部により所定時間温度保持された搬送中の汚泥を濃縮処理に適する温度まで冷却する冷却器と、
この冷却器により冷却された汚泥を大気圧に戻す圧力調整部と、
この圧力調整部で大気圧に戻された汚泥を濃縮する濃縮槽と、
この濃縮槽で濃縮された汚泥を脱水処理する脱水器と
を備えたことを特徴とする浄水汚泥処理装置。
【請求項4】
加圧手段は配管内を搬送中の汚泥を大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧し、加熱器は搬送中の汚泥を100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱し、温度保持部は搬送中の汚泥の温度を5分以上保持することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の浄水汚泥処理装置。
【請求項5】
温度保持部は、汚泥が流通する配管に対し、熱源部の長さを可変とすることにより温度保持時間を調整可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の浄水汚泥処理装置。
【請求項6】
温度保持部は、汚泥が流通する配管の長さを、熱源部の長さに対して可変とすることにより温度保持時間を調整可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の浄水汚泥処理装置。
【請求項7】
配管内を搬送される汚泥の流量を調整し、汚泥に対する温度保持時間を調整する保持時間調整手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の浄水汚泥処理装置。
【請求項8】
上水用の原水に添加剤を加えて固形成分を沈降させ、この沈降汚泥を濃縮処理し、上澄み水と分離された濃縮汚泥を搬送する際、この搬送途中において汚泥を大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧し、この加圧された搬送中の汚泥を100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱し、この加熱された搬送中の汚泥の温度を5分以上保持した後、この搬送中の汚泥を脱水に適する温度まで冷却し、この冷却された汚泥を大気圧に戻して脱水することを特徴とする浄水汚泥処理方法。
【請求項9】
上水用の原水に添加剤を加えて固形成分を沈降させ、この沈降汚泥を濃縮処理し、上澄み水と分離された濃縮汚泥を搬送する際、この搬送途中において汚泥を大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧し、この加圧された搬送中の汚泥を100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱し、この加熱された搬送中の汚泥の温度を5分以上保持した後、この搬送中の汚泥を濃縮処理に適する温度まで冷却し、この冷却された汚泥を大気圧に戻してさらに濃縮処理し、この後、脱水処理することを特徴とする浄水汚泥処理方法。
【請求項10】
上水用の原水に添加剤を加えて固形成分を沈降させ、この沈降汚泥の搬送途中において、この搬送中の汚泥を大気圧以上1MPa以下の圧力に加圧し、この加圧された搬送中の汚泥を100℃以上130℃以下の熱処理温度に加熱し、この加熱された搬送中の汚泥の温度を5分以上保持した後、この搬送中の汚泥を濃縮処理に適する温度まで冷却し、この冷却された汚泥を大気圧に戻してさらに濃縮処理し、この後、脱水処理することを特徴とする浄水汚泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−144366(P2007−144366A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345990(P2005−345990)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】