説明

浮上抑制マンホール。

【課題】新設マンホールは勿論のこと、既設マンホールに適用し易く、しかも施工性に優れた浮上抑制マンホールを提供する。
【解決手段】マンホール躯体10の外側の任意の位置にリング状の張り出し受部11を止ネジ19,19で仮止すると共に、接着剤20で固定する。前記張り出し受部11上に8枚の囲い枠板12を、張り出し受部11上に設けたアンカーボルト15にナット止めする。8枚の囲い枠板12で形成されたカゴ状部内にシート13を敷設した後、その中に中詰め材14を投入し、前記シート13の内外縁を緊締バンド24で閉じると共にマンホール躯体10に括り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上抑制マンホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、現在、一般に用いられている、日本下水道協会認定の組立マンホールの標準的構成を示すもので、1はマンホール蓋、2はマンホール蓋受枠、3は高さ調整リング、4は斜壁、5,6は直壁、7は基盤、8はインバートで、一般に接着材等により接合され一体化されている。
【0003】
周知のように、阪神・淡路や中越地震地において、地盤の液状化(流動化)により、数多くの前記組立マンホールが浮き上がり、道路交通の障害となり復旧・支援援助に大きな影響を与えると共に、ライフラインの機能を停止させ、住民生活に支障を果たすことになったことは記憶に新しいところである。
【0004】
そして、2005年1月号の下水道協会誌Vol.42No.507の68頁表−2によれば、新潟県中越地震におけるマンホールの浮上がり、沈下は1,365件であったと報告されており、現在、国土交通省下水道部を初めとして下水道の技術分野において、その解決策について種々検討がなされている。
【0005】
砂のような粒子の集合体である材料は、粒状体と呼ばれ、この粒状体には特有の性質としてダイレタンシーと称される性状、すなわち、せん断によって体積が変化する現象がある。例えば、稠密体はせん断力によって形状は変化するが、体積変化は起きない。ところが、粒状体は、ゆる詰めの状態のものにせん断力を加えると、蜜詰めの状態に変化して体積が収縮する。
【0006】
乾燥した砂では、このような体積変化は瞬時に起きるが、水で飽和した砂では、間隙水が外部へ排出するのに必要な分だけ時間がかかることになるため、地震のような強い振盪による急激なせん断変形が生じる場合には排水が間に合わず、体積収縮を起こそうとすることになり、それにつれて有効応力が減少するため、砂は強度を失って、最終的には液体のような様相を呈することになる。これが液状化のメカニズムである。
【0007】
そして、このようにして土壌が液状化した場合、多量の水分を含んだ土砂の比重は1.0以上2.0となる。
【0008】
一方、組立マンホール(地下構造物)は、内部が空洞で、コップ状になっているので、液状化した地盤より見かけ比重が小さい。そのため地震による地盤の泥水化により、組立マンホールが浮上し、下に浮遊している砂粒子が潜り込んだ結果、平常に戻ると組立マンホールは浮上したままとなる。
【0009】
この地盤の流動化による組立マンホールの浮上を防止する方法として、国土交通省が提案する埋め戻し材料を選定して圧密度を高くする、埋め戻しを固化改良土で行うなどの技術があった。
【0010】
しかしながら、これらの方法は、既設の組立マンホールには適用しにくいこと、埋め戻し材のコスト増、また、施工上のバラツキを管理することが困難なことから、実用的でない等の問題があった。
【0011】
大地震発生が間近であることが叫ばれている今日、新設のものは勿論のこと特に既設マンホールの浮上防止を、現実的且つ有用な手法、すなわち、施工を容易、且つ効率的、継続的に行うことが出来、しかも有効な効果が得られる浮上防止方法の出現が望まれている。
【特許文献1】実用新案登録第3120761号公報
【非特許文献1】2005年1月号下水道協会誌Vol.42No.507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、新設マンホールは勿論のこと、既設マンホールに適用し易く、しかも施工性に優れた浮上抑制マンホールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、マンホールの躯体の外面の任意の位置にリング状または、周方向に間欠的に形成された張り出し受部を設け、その上部に透孔を設けた囲い枠を取付けて、かご状部を形成し、その中に礫材、金属塊、金属球、透孔を有する金属板等の加重中詰め材をそのまま、または袋に入れて収納したことを特徴とする浮上抑制マンホールである。
【0014】
組立マンホールに適用する場合、張り出し受部の形成は、リング状のものとして、マンホール躯体の任意の場所に止めネジで仮止めした後、エポキシ系接着剤等の合成樹脂製接着剤で浮上力に耐えられる強固な固定方法を採ることにより、新設マンホールは勿論のこと、既設マンホールにも張り出し受部を手軽に形成させることができる。
【0015】
加重中詰め材を収納する袋は、網状の素材を用いることが好ましい。網状の素材のメッシュを選ぶことにより、囲い枠に設けた透孔を通過するような小粒の加重中詰め材であっても用いることができるようになる。加重中詰め材は、小袋に入れたものとしても良いが、施工上は適宜のメッシュのシート状のものを囲い枠の内面に敷設し、その中に加重中詰め材を投入してから、そのシートの内外縁を緊締バンドでマンホールの躯体に括り付ける工法が、施工性が良く、実用的である。
【0016】
本発明に係る浮上抑制マンホールは、土壌液状化時におけるマンホールと土壌との重量バランスを考慮すると共に、過剰な間隙水圧の上昇抑制機能(浮上抑制機能)を持つ加重ブロック体をマンホールの躯体に付加して土壌液状化時の浮上を抑制させようとするものであり、従って中詰め材間には水流を逸水させて間隙圧を吸収抑制させる間隙があることを必要とし、且つマンホールの見掛け比重が少なくとも1.0〜2.0以上になるような加重中詰め材を添加する必要があり、そして、施工管理が容易な加重中詰め材が求められる。
【0017】
この要求にこたえる加重中詰め材としては、重量計算の容易な形状が略一定の金属球や、透孔又は凹凸のある鋳物製の中詰め材あるいは透孔のある金属板等が有用であり、これらの中詰め材は礫材に比し、バラツキのない浮上抑制効果が期待でき、しかも施工管理が容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、土壌液状化時におけるマンホールの見掛け比重を1.0〜2.0以上のものにし、且つ過剰な間隙水圧の上昇抑制機能を持つ加重ブロック体付加の施工を手順よく行うことができる浮上抑制マンホールを提供することができる。
【実施例1】
【0019】
図2は本発明の実施例の斜視図、図3は縦断面図、図4は張り出し受部をマンホール躯体に取付け、囲い枠取付け前の平面図で、10はマンホールの躯体、11はセメントコンクリート製のリング状の張り出し受部、12は透孔を設けた鋳物製の囲い枠板、13は中詰め材より小さいメッシュのシート、14は中詰め材である。なお、前記張り出し受部11は、セメントコンクリート製のみに限定されるものではなく、金属製や外側を金属枠とし、その中はコンクリートを入れたものとしてもよい。
【0020】
前記張り出し受部11は、上面に鋳物製の透孔を設けた囲い枠板12を固定するための適数のアンカーボルト15が植設され、下部には仮止用の止ネジを螺合するアンカー雌ネジ16,16が設けられていて、マンホール躯体10への取付けは、図5の(a)に示すように、前記アンカーボルト15,15に吊下げ用アイナット17,17を螺合し、その吊下げ用アイナット17,17にクレーンのワイヤー18,18に取付けられたフックを引っ掛けて、所定の位置まで吊下ろし、アンカー雌ネジ16,16に螺合した止ネジ19,19により張り出し受部11をマンホールの躯体10に仮止し、マンホール躯体10との間にエポキシ系の接着剤20を注入して張り出し受部11をマンホール躯体10に固定させる。
【0021】
次に前記吊下げ用アイナット17,17をアンカーボルト15,15より外してから、囲い枠板12(実施例では8枚)を図3、図4及び図5の(b)に示すように前記アンカーボルト15,15にナット止し、且つ、隣接囲い枠板12をヘ状の連結板21を介してボルト22とナット23で連結する。
【0022】
次にカゴ状になった囲い枠板12内に図3及び図5の(b)に示すように小粒の中詰め材14が、囲い枠板12の透孔からこぼれ落ちない大きさのメッシュのシート13を敷き、その中に図3、図4及び図5の(c)に示すように中詰め材14を投入し、この中詰め材14を包むようにシート13を閉じた後、内外縁を緊締バンド24でマンホール躯体10に固定する。
【0023】
以上、張り出し受部11の取付→囲い枠板12の取付→シート13の敷設→中詰め材14の投入→シート13の緊締バンド23による固定を順次行なうことにより無理なく、浮上抑制機能を合わせ持つ加重ブロック体を備えたマンホールを迅速に組立構成することができ、施工性に優れたものである。
【0024】
新設マンホールの場合、マンホール躯体にリング状または周方向に間欠的に備えた張り出し受部を一体に設けることもできるが、実施例に示すように、リング状張り出し受部11を外付けする構造の方が実用的で優れている。
【0025】
以上のように構成して見掛け比重を1.0〜2.0以上とした本発明にかかる浮上抑制マンホールは、張り出し受部とその上部に設けた囲い枠と荷重中詰め材からなる加重ブロック体が土壌液状化時に水流を逸水させて過剰な間隙水圧の上昇を抑制し、マンホールの浮上を防止するもので、良好な実験結果が得られている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】標準的組立マンホールの縦断面図。
【図2】本発明の実施例の斜視図。
【図3】本発明の実施例の縦断面図。
【図4】本発明の実施例における、張り出し受部をマンホール躯体に取付け、囲い枠取付け前の平面図。
【図5】本発明の組立手順を示す説明図。
【符号の説明】
【0027】
10 マンホール躯体
11 張り出し受部
12 囲い枠板
13 シート
14 中詰め材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの躯体外面の任意の位置ににリング状または、周方向に間欠的に形成された張り出し受部を設け、その上部に透孔を設けた囲い枠を取付けて、かご状部を形成し、その中に礫材、金属塊、金属球、透孔を有する金属板等の加重中詰め材をそのまま、または袋に入れて収納したことを特徴とする浮上抑制マンホール。
【請求項2】
リング状張り出し受部を外付けにしたことを特徴とする請求項1記載の浮上抑制マンホール。
【請求項3】
加重中詰め材を収納する袋に網状の素材を用いたことを特徴とする請求項1または2記載の浮上抑制マンホール。
【請求項4】
リング状に形成し、且つ上面に適数の囲い枠取付用アンカーボルトを植設すると共に、側方に仮止ネジを設けたことを特徴とする浮上抑制マンホール用張り出し受部。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−249915(P2009−249915A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99117(P2008−99117)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(593153532)財団法人下水道新技術推進機構 (10)
【出願人】(591116092)株式会社福原鋳物製作所 (23)
【Fターム(参考)】