説明

浮体、あるいは浮体構造を持つ振り子式波力発電装置

【課題】 海洋の波に関して現時点では、他のエネルギー源、例えば、石油、天然ガス、原子力、水力などと比べて有望なエネルギー源に成り得ていない。発電コストがその最大の課題だからである。特願2010−110093のその技術には、そのエネルギー取得にバネが主要な役を担っているが、そのバネ使用により、新たな課題が浮かび上がり、その解決が望まれていた。
【解決手段】 その特願2010−110093における、バネ使用の代替として、複数のエネルギー取得装置と、波の強さを読み取るセンサーなどを設ける。また、そのバネ使用を減らす、あるいは、全く、そのバネ使用をしない手段として、そこで使われる、ラチェットの向きを変えることによってそれを得ようとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、海洋の波、その持つエネルギーを有効に発電等のエネルギー化しようとする中でも、振り子式の発電技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化対策として、自然エネルギーから得ようとの試みが多数、試みられている。海洋の波からの発電もまた、有力な二酸化炭素削減の一つの方法である。その取り組みは、わが国の特許資料を見ても多数なされている。その波の持つエネルギーとして、進み来る波、すなわち、進行波からのエネルギー取得をなそうとする考案もまた多数ある。それは上下波のそれに対して、高出力発電が可能な技術分野であり、今後もそれに対しての開発が期待されるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特公開2001−271735
【特許文献2】 特公開2002−142498
【特許文献3】 特願2010−110093(特許出願中)(ただし、この特許文献3は本出願人自身のもので、未公開である)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願者は先行技術として二つの例を選んだ。それは、振り子式の発電装置として、注目に値すると思う故である。その文献1、2は、その波エネルギー受け板をもって受け、その得たエネルギーを油圧シリンダーポンプ、あるいは、油圧ロータリーポンプなどで捉え、その経路を経て高速回転に、更に、発電へと導こうとする。この例においては、その受け板は波のその周期に合わせてのものでその初期より、低速駆動部分があり、発電に必要なその高速回転へと導くには、その動力伝達手段等に課題がある。それは、発電コストを上げる要因になっている。また、特許文献3のそれは、その受け板は波のその周期に合わせてもの、それは前者のそれと同じであるが、その特長とするところは、受け板と芯を同じくする円盤の固定である。その円盤に歯車の歯を施したならば、立派な大歯車であり、それと対になるような小歯車を設けて、その小歯車にはラチェットが具され、これにより、その初期より、回転の一方向と高速回転化を実現している。しかし、その装置を詳細に見るならば、それにも課題が見える。それは、その波の持つエネルギーを、一旦、バネエネルギーに蓄えて、その蓄え得られたエネルギーを、その波が通り過ぎた後、それを放出しようとするもので、その波が大きい場合、その波のエネルギーを蓄えるようとすると、そのバネ自体も大きく、強く、また、多数のバネを必要とする。それは結果として発電コストを上げる要因にもなり、また、そのバネの使用には、破損等の問題もある。しかし一方で、そのバネ使用によってもたらせるものは、ある大きさの波エネルギーを、そのバネで受け、そして、次のエネルギー取得装置を動かし、発電へと導こうとする。そのエネルギー取得装置を動かすには、ある一定エネルギーとその力を必要とする。バネはその役目を担っている。しかし、他方から見ると、ある大きさの力とエネルギーを確保しようとすると、それ相応のバネの強さを必要とする。この場合、上下波であって、その進み来る波が速度を持たない場合、そのバネが強ければ、その振り板を動かすことができない。通常、波は常に、ある速度を持って岸に向かって進み来るとは限らない。そのような進み来る波が速度を持たない場合においても、可能の限りそのエネルギー取得を目指す。本発明は、そのバネの使用によってもたらされる、特許文献3でのその課題を捉え、解決をしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その課題を解決する手段として、先ず、本出願は複数のエネルギー取得装置を用意し、それによってその解決を図ろうとする。その文献3においては、そのバネエネルギーをもって発電へと導くに、そのバネエネルギーを、ラチェット付き小歯車の軸に伝え、その軸を通して、一つのエネルギー取得装置へと導いている。この場合、例えば、その装置を同軸上に、それぞれ独立して動く、二つの動力取得装置を設置した場合、その動力取得装置の一つは、必要としない。その放出されたエネルギーを取得するには、その二つの内の一つで十分であるからである。このことから、新たなエネルギー取得装置の増設は、別の目的での使用となる。次に、そのバネ使用を減らす手段(あるいは、全く、そのバネ使用をしない方法も可、それについては後述する)であるが、その歯車の回転比、ラチェット機構、バネ等の機械的な要素部品を変えずそれを実現しようとする。それを得る方法として、そこに示されるその円盤と対になる小歯車、あるいは鎖歯車に具えられた、そのラチェットの向きを逆向きに使うことにより、それが実現される。すなわち、進み来るその波がその振り板を動かす時、そのラチェットが働き、その波が通り過ぎた後、その振り板が元の位置に戻る時には、そのラチェットが働かない。そのような使い方である。そして今回の、そのバネの使用については、唯一、その振り板を元の位置に戻すに留める。これによって、その波エネルギーからバネエネルギーに変換する過程を無くすことができる。最初、その打ち寄せる波によってその板は支点を中心に岸側に傾くが、その波が通り過ぎた後は、海水のその振り板を押す力より、そのバネ力の方が勝り、いつでも、その板は元の位置に戻ることが確保される。そのバネもまた、強力なものを必要としないで済む。
【0006】
上述のことは、そのバネ使用を減らす手段についてのことであるが、この場合、そのバネを使用する目的は、その振り板を元の位置に戻す為のものである。これは何も、そのバネが唯一の物ではなく、図6で示されるような、その振り板とある角度をもったアームをその振り板に固定し、そのアームの先にある大きさの錘を取り付け、その錘によって、その傾いた振り板を元に戻すことも可能である。これによるならば、同装置での、バネ使用は更に減らせることになる。また、その錘も、その板を元の位置に戻す為のもので、特別、重い物を必要としない。
【この装置で得ようとするもの】
【0007】
次に、そのエネルギー取得装置の増設についてであるが、仮に、その複数のエネルギー取得装置が、それぞれ、先のバネ使用のエネルギー取得装置と同じ容量とする。この場合、最初、その波が小さい場合、その動力取得装置の複数ある内の一つでさえ、回るか、回らないかである。しかし、ある大きさ以上の波になると、図4のAで示される同装置、そしてその後方の岸近くに位置する、幾つかの同装置のその振り板も動かすことになる。その稼動状態をセンサーが読み取り、そのセンサーの働きから、そのAに位置する、同装置内のその複数の動力取得装置を、また、それに続く、A−1、A−2、・・・等の各装置内のその複数の動力取得装置をも稼動せしめる。そのセンサーとしての検知は同装置の後方の岸近くに位置するその振り板の動きから読み取る、あるいはまた、集計されるその取得電力からも得ることができる。更に、大きく、強い波であるならば、同センサーの働きから、同装置内にある三つ、四つのエネルギー取得装置も動かすこともできる。これにより、先の出願で用いた多数のバネを使用することなく、そのエネルギーを取得することができる。また、この装置においても、その装置内を波が通過するまでの間については、その先の出願での孔の明いた柄杓とも言える容器孔、それと、ラチェット、押しバネ(ここでも、ある重みを持って物体での代替え可能)、をもって構成されるなど、それらは、先の出願と同じで、図2はそれを示す。この図2の装置によって、その波がその装置内を通過するまで、海面と平行、あるいは、平行近くまで傾いたその受け板をそのまま、保ち維持させることができる。そしてその波が通過した後、その孔の明いた容器の海水の減少により、そのラチェットの爪が外れ、上で述べたそのバネ力(あるいは、その代替え物体)により、その振り板は元の位置に戻ることになる。また、その新たに設け動力取得装置は、既にあるそれとは別に独立して動く、また、場合によっては、連結も可能とするのも当然である。
【発明の効果】
【0008】
それは、その特願2010−110093(特許出願中)との比較より、鮮明にされる。その先行技術の特長とするところは、波の持つ、その遅い周期よりの回転、その低速部分を高速化する点である。しかし、折角のその高速化も、その発電に至る過程で、そのエネルギーを一旦、バネエネルギーに変換しての発電化では、大きくその価値を下げてしまう。その先行技術によって、大規模発電を成そうとすると、強く、また、多数のバネを必要とし、結果としてそれが発電コストを上げる要因になる。また、バネ使用によって生じる必然的に伴う、そのバネの破損、メンテナンス等の問題もある。このことからして、そのバネ使用を必須としない本出願は、先行技術のそれら課題を克服し、また、本出願は、弱い波から強い波へと広範囲にそのエネルギー取得をするもので、波エネルギーの更なる拾い上げをし、波の持つ全エネルギーに対するエネルギー取得率を上げる。更に、その複数のエネルギー取得装置の増設は、一基当たりの取得発電容量を上げる。それは僅か、その特許文献3での発明を構成している一要素、そのラチェットの使い勝手の違いと、その動力取得装置の増設によってもたらされるものであるが、その特許文献3の持つ最大の弱点を克服し、その着想の持つ本来的な長所を生すなど、その普及に大きく貢献する。また、その普及は、地球的規模での二酸化炭素の削減に多大に貢献し、それは全人類的なもので、その効果は計り知れない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本考案装置を真横から見た概略図である。図中での記号説明を加えるならば、図のoaは扇型円盤の波が入る前のその円盤の位置、そして、oa’b’は波によって傾く、その予想される円盤位置を表す。Vは波のその進入方向を表す。
【図2】図2はその波の力により傾いた円盤をその波が通り過ぎるまで、その位置を保つべく設けたそのラチェットと孔の明いた柄杓とその押しバネを表した図で、その拡大図はその容器内の海水の減少によって、そのラチェットの爪も同時に動く連結構造を示した図である。
【図3】図3は本発明装置の立体斜視図である。aは扇型円盤の外周上に巻かれ固定されたチェーンを示す。bはその扇型円盤と対になる鎖歯車である。cはその波形を持った波が通り過ぎた後、その振り板を元の位置に戻す為のバネ、dは、ラチェットの爪の働きで得た、波エネルギーのエネルギー取得装置を表す。また、eはその装置全体を浮かすための浮体である。
【図4】図4は同装置を数基、沖に向かって並べ置いた図である。上の装置は、海洋からの大波に備えた同装置で、必要に応じ、A、A、…、とその装置から下ろそうとするもので、その沖に向かう程、同装置は大型化になっている。また、A、A−1、A−2,・・・等の表示は、強い波がそれら装置を通過した時、その最後に位置する装置のそのセンサーが働き、それより前位置にある、A、A−1、・・等の装置内にある複数のそのエネルギー取得装置を作動させ示めそうとしたものである。
【図5】図5は浮体構造を持つ同装置で、その沖に向かう先には、遠浅海岸を模した、斜面形体の構造物Bとそれを支える浮体B、そして、その構造物の流出を抑えるための索、あるいは鎖Bとその重石Bなど表す。その浮体Bの体内に海面の高さは測るセンサーBである。そのセンサーの働きをもって、その装置全体を上げ下げして、その装置として、最適な高さを保ち得ようとする。Bは同装置を上げ下げする駆動用モーターで、Bはその働きをさす為の電源である。
【図6】図6は図3での同発電装置において、傾いた振り板を元に戻すに必要なそのバネの代わりに、その振り板に対し、ある傾きを持ったアームを固定し、その先にある大きさの錘(W)を取り付け、その錘によって、バネの代替えをしようとする図である。
【図7】図7は図6を真横から見た概略図である。その錘(W)はその上がった位置より、振り板を元の位置に戻そうと作用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図7はそれらを示したものである。具体的な実施例は図6などがそれである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋の波を受けるに、二つの支柱をもってなす開口部があり、そこに支点があって、その支点を中心にして動く振り板、その板と芯を同じくする扇型円盤板、あるいは円盤板がその振り板に固定され、その振り板をもって波を受ける手段とする一方、その円盤板の円周上を歯車の歯を施す、あるいは、チェーンをもって固定されるもの、その円盤板と対になる小歯車、あるいは鎖歯車とをもって、その得られたエネルギーの伝達手段とし、その両支柱間の上部同士を固定されたる板、あるいはそれに類する物と、その振り板の外端を含め、両円盤外周部付近に当該振り板の外端と平行に設けた板、あるいはそれに類する物との間に直バネを取り付け、その直バネをもって、波によって傾いたその振り板を元の位置に戻す手段として用い、前記記載の円盤板と対になる小歯車、あるいは鎖歯車にはラチェットが具され、そのラチェットの働きを得て当該歯車の軸に伝え、それらをもって一つ物とし、更に、複数のエネルギー取得装置とを加え、それによって、発電等のエネルギーの取得を行うことを特長とした浮体、あるいは浮体構造を持つ振り子式波力発電装置
【請求項2】
前記請求項1の振り子式波力発電装置において、その波によって傾いた振り板を元の位置に戻す手段として用いる、その直バネの代わりに、錘等の地球の重力を用い、それによって、発電等のエネルギーの取得を行うことを特長とした浮体、あるいは浮体構造を持つ振り子式波力発電装置振り子式波力発電装置
【請求項3】
前記請求項1、2の何れか1項に記載の振り子式波力発電装置のそのエネルギー取得装置について、その海面上を沖に向かって並べたる波力発電装置の、岸近くに位置する同発電装置内にその振り板の動きを検知するセンサーを設ける、あるいは、センサーとして集電された取得発電量から読み取るなどして、そのセンサーの働きによって、その複数のエネルギー取得装置を稼動、あるいは、停止せしめる、それによって、発電等のエネルギーの取得を行うことを特長とした振り子式波力発電装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11267(P2013−11267A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178608(P2011−178608)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【特許番号】特許第5093736号(P5093736)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【出願人】(595054556)
【Fターム(参考)】