説明

浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備

【課題】 半載時のスロッシングによる損傷発生が防止され、且つ、液化天然ガス生産設備の設置スペースを狭めない、液化天然ガス貯蔵設備を備える浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備を提供する。
【解決手段】 浮体設備と、係留設備と、液化天然ガス生産設備と、液化天然ガス貯蔵設備と、液化天然ガス積出し設備とを備え、液化天然ガス貯蔵設備はメンブレンタンクと、液化天然ガスの液面に寄り添って面外変形可能な膜体と浮体とを有しメンブレンタンク内に収納されたスロッシング防止用浮蓋とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浮体設備と、係留設備と、液化天然ガス生産設備と、液化天然ガス貯蔵設備と、液化天然ガス積出し設備とを備える浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備が、特許文献1等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−501861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備においては、液化天然ガスが積出された後、液化天然ガス貯蔵設備が半載状態になる場合がある。半載時のスロッシングによる損傷発生を防止すべく、液化天然ガス貯蔵設備として、支持構造を介して浮体設備に固定された自立球形タンクを使用するのが従来一般的であった。自立球形タンクの使用には、タンク上部が浮体設備甲板上に突出し、液化天然ガス生産設備の設置スペースを狭めるという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、半載時のスロッシングによる液化天然ガス貯蔵設備の損傷発生が防止され、且つ、液化天然ガス貯蔵設備が液化天然ガス生産設備の設置スペースを狭めない、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、浮体設備と、係留設備と、液化天然ガス生産設備と、液化天然ガス貯蔵設備と、液化天然ガス積出し設備とを備え、液化天然ガス貯蔵設備はメンブレンタンクと、液化天然ガスの液面に寄り添って面外変形可能な膜体と浮体とを有しメンブレンタンク内に収納されたスロッシング防止用浮蓋とを備えることを特徴とする浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備を提供する。
メンブレンタンクは、浮体設備内部に防熱材を取付け、その表面を金属薄膜であるメンブレンで覆った構造を有するので、浮体設備の甲板上に突出しない。従って、メンブレンタンクを有する液化天然ガス貯蔵設備は、浮体設備甲板上に配設される液化天然ガス生産設備の設置スペースを狭めない。
メンブレンタンク内に配設したスロッシング防止用浮蓋の膜体が液化天然ガスの液面に寄り添って面外変形することにより、膜体に接する液面の波高の増加が抑制され、半載時のスロッシングの発生が防止され、液化天然ガス貯蔵設備の構成要素であるメンブレンタンクのスロッシングによる損傷発生が防止される。
スロッシング防止用浮蓋の主要部は面外変形可能な柔軟な膜体で形成されており、メンブレンタンクを構成する金属薄膜であるメンブレンに接触してもメンブレンを傷付けない。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、浮体は膜体の外周縁に取付けられた外周防撓材であり、膜体と少なくとも外周防撓材の表面とは、メンブレンタンクの素材金属よりも硬度の低い素材で形成されている。
外周防撓材は、膜体の平面形状を保持することにより膜体に皺が発生するのを防止し、皺の発生により膜体の上面視面積が減少し膜体に覆われない自由表面が増加するのを防止する。膜体と外周防撓材の少なくとも外表面とはメンブレンタンクの金属素材よりも硬度が低い素材で形成されているので、スロッシング防止用浮蓋はメンブレンタンクを傷付けない。
本発明の好ましい態様においては、膜体と外周防撓材とは、液化天然ガスよりも比重が小さな素材で形成されている。
外周防撓材を浮体足らしめる最も簡易な方法は、外周防撓材を液化天然ガスよりも比重が小さな素材で形成することである。膜体を液化天然ガスよりも比重が小さな素材で形成すれば、浮体である外周防撓材を小型化して膜体の面積を増加でき、スロッシング防止機能を高められる。
本発明の好ましい態様においては、膜体及び外周防撓材はそれぞれ複数の構成部分に分離可能であり、また前記複数の構成部分を連結してスロッシング防止用浮蓋を構成可能である。
膜体及び外周防撓材がそれぞれ複数の構成部分に分離可能であり、また前記複数の構成部分を連結してスロッシング防止用浮蓋を構成可能であれば、メンブレンタンクの上部ハッチを介して、構成部分をタンク内へ搬入し、タンク内でスロッシング防止用浮蓋を組み立てることが可能になる。またスロッシング防止用浮蓋を補修する際に、構成部分に分解し、上部ハッチを介してタンク外へ搬出することが可能になる。
本発明の好ましい態様においては、メンブレンタンクはトップサイドの傾斜壁を有さない方形タンクである。
スロッシングの発生が防止されるので、スロッシング対策としてのトップサイドの傾斜壁は不要になる。トップサイドの傾斜壁を無くすことにより、メンブレンタンクの積載容積が増加する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、半載時のスロッシングによる液化天然ガス貯蔵設備の損傷発生が防止され、且つ、液化天然ガス貯蔵設備が液化天然ガス生産設備の設置スペースを狭めない、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係る浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備の縦断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備が備える液化天然ガス貯蔵設備の構造図である。(a)は斜視図であり、(b)は横断面図であり、(c)はメンブレンタンク壁の拡大断面図であり、(d)、(e)はスロッシング防止用浮蓋の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例に係る浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備を説明する。
図1に示すように、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備1は、縦長船形の浮体設備2を備えている。浮体設備2は、船首部に固定されたタレット3aと一端がタレット3aに固定され他端が海底に固定された複数の係留索3bとを有する係留設備3によって、海洋上の定点に係留されている。
一端がタレット3aに固定されたライザー管4が海底まで延び、海底に設置された坑口装置にライザー管4の他端が接続されている。
浮体設備2の甲板上に、天然ガス液化装置、発電装置、液化装置のコントロールシステム等を有する天然ガス生産設備5が設置されている。天然ガス生産設備5はライザー管4の前記一端に接続されている。
浮体設備2の甲板下に、複数のメンブレンタンク6aと、天然ガス生産設備5とメンブレンタンク6aとを接続するパイプ、ポンプ等とを有する液化天然ガス貯蔵設備6が配設されている。
浮体設備2の甲板上に、ローディングアーム式の複数の液化天然ガス積出し設備7が配設されている。
浮体設備2には、前述の諸設備の他に、作業者の居住区8、余剰ガスを焼却する焼却塔9等が配設されている。
【0010】
図2に示すように、メンブレンタンク6aは、二重殻構造の浮体設備2の内殻2aに防熱材6aを取付け、防熱材6aの表面を金属薄膜であるメンブレン6aで覆った構造を有する方形タンクであり、浮体設備2の甲板下に配設されている。メンブレン6aには、熱変形吸収用のコルゲート6aが縦横に形成されている。
メンブレン6aよりも硬度が低い柔軟な素材、例えば天然繊維や合成樹脂繊維等からなる布やフィルム、で形成された上面視矩形の膜体10aと、少なくとも外表面がメンブレン6aよりも硬度が低い素材で形成され膜体10aの外周縁に取付けられた円形断面の浮体である外周防撓材10bとを有する上面視矩形のスロッシング防止用浮蓋10が、メンブレンタンク6a内に配設されている。
膜体10aと外周防撓材10bとは、液化天然ガスよりも比重が小さな素材で形成されており、スロッシング防止用浮蓋10は、メンブレンタンク6a内の液化天然ガスの液面Sの大部分を覆って、液化天然ガスに浮いている。
膜体10aと外周防撓材10bとは、液化天然ガスの極低温環境下でも熱収縮等による劣化を生じ難い素材で形成されることが望ましい。
膜体10a及び外周防撓材10bはそれぞれ複数の構成部分に分離可能であり、また前記複数の構成部分を連結してスロッシング防止用浮蓋10を構成可能である。
図2(b)から分かるように、メンブレンタンク6aは一点鎖線で示すトップサイドの傾斜壁を有さない方形タンクである。
【0011】
浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備1においては、海底ガス田からライザー管4を介して汲み上げられた天然ガスが、液化天然ガス生産設備5によって液化され、液化天然ガス貯蔵設備6に貯蔵され、液化天然ガス積出し設備7を介してLNGタンカーに積出される。
【0012】
メンブレンタンク6aは、浮体設備2の内部に防熱材6aを取付け、その表面を金属薄膜であるメンブレン6aで覆った構造を有するので、浮体設備2の甲板上に突出しない。従って、メンブレンタンクを有する液化天然ガス生産設備1は、浮体設備甲板上に配設される液化天然ガス生産設備5の設置スペースを狭めない。
液化天然ガスの積出し後に、メンブレンタンク6aが半載状態になる場合があるが、メンブレンタンク6a内にスロッシング防止用浮蓋10を配設することにより、半載時のスロッシングの発生が防止され、ひいてはスロッシングによるメンブレンタンク6aの損傷発生が防止される。
スロッシング防止用浮蓋10の柔軟な膜体10aは、メンブレンタンク内液化天然ガスの液面Sの大部分を覆い、液面Sに添って面外変形することにより、膜体10aに接する液面Sの波高の増加を抑制し、スロッシングの発生を防止する。
スロッシング防止用浮蓋10の主要部は面外変形可能な柔軟な膜体10aで形成されており、メンブレンに接触してもメンブレンを傷付けない。
スロッシング防止用浮蓋10の外周防撓材10bは、スロッシング防止用浮蓋10を液化天然ガスの液面上に浮かばせる浮体であると共に、膜体10aの平面形状を保持することにより膜体10aに皺が発生するのを防止し、皺の発生により膜体10aの上面視面積が減少し膜体10aに覆われない自由表面が増加するのを防止する。
膜体10aと外周防撓材10bの少なくとも外表面とはメンブレン6aよりも硬度が低い素材で形成されているので、スロッシング防止用浮蓋10はメンブレンタンクを傷付けない。
液化天然ガスよりも比重が小さな素材で形成された外周防撓材10bは中実部材でも浮体として機能するので、中空部材に形成する場合に比べて構成を簡素化できる。膜体10aを液化天然ガスよりも比重が小さな素材で形成すれば、浮体である外周防撓材10bを小型化して膜体10aの面積を増加でき、スロッシング防止用浮蓋10のスロッシング防止機能を高められる。
スロッシング防止用浮蓋10の膜体10a及び外周防撓材10bはそれぞれ複数の構成部分に分離可能であり、また前記複数の構成部分を連結してスロッシング防止用浮蓋10を構成可能なので、メンブレンタンク6aの図示しない上部ハッチを介して、前記複数の構成部分をタンク内へ搬入し、タンク内でスロッシング防止用浮蓋10を組み立てることが可能であり、またスロッシング防止用浮蓋10を補修する際に、スロッシング防止用浮蓋10を複数の構成部分に分解し、上部ハッチを介してタンク外へ搬出することが可能になる。この結果、スロッシング防止用浮蓋10の搬入搬出作業、組立作業、補修作業が効率化される。スロッシング防止用浮蓋10の補修作業は、メンブレンタンク6aが空の時に、タンク内で行っても良い。
スロッシング防止用浮蓋10の配設により、スロッシングの発生が防止されるので、図2(b)に一点鎖線で示すスロッシング対策としてのトップサイドの傾斜壁は不要である。トップサイドの傾斜壁を無くすことにより、メンブレンタンク6aの積載容積が増加する。
【0013】
図2(d)に示すように、メンブレンタンク6aの頂壁からポンプ11が垂下している場合には、上面視矩形環状の膜体10aと、膜体10aの内周縁に取付けられた内周防撓材10bと、膜体10aの外周縁に取付けられた外周防撓材10bとで、スロッシング防止用浮蓋10を構成し、内周防撓材10bが囲む穴にポンプ11を挿通すれば良い。ポンプ11によりスロッシング防止用浮蓋10の水平移動が防止される。
【0014】
スロッシング防止用浮蓋10の平面寸法が大きい場合には、膜体10a、10aの平面形状維持のために、外周防撓材10b、10b、内周防撓材10bに加えて、図2(b)、(d)に二点鎖線で示すように、浮体兼用の防撓材或いは単なる防撓材10bを上面視格子状に追加配設しても良い。
液化天然ガスの比重よりも大きな比重を有する素材で膜体10a、10aを形成しても良い。
液化天然ガスの比重よりも大きな比重を有する素材で、外周防撓材10b、10b、内周防撓材10bを中空に形成しても良い。
図2(e)に示すように、スロッシング防止用浮蓋10を貫通する柱12をメンブレンタンク内に配設して、スロッシング防止用浮蓋10の水平移動を防止しても良い。
浮体兼外周防撓材10b、10bに代えて、複数の浮体兼防撓材を放射状に配設しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備に広く使用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備
2 浮体設備
3 係留設備
4 ライザー管
5 液化天然ガス生産設備
6 液化天然ガス貯蔵設備
6a メンブレンタンク
7 液化天然ガス積出し設備
10 スロッシング防止用浮蓋
11 ポンプ
12 柱
S 液化天然ガス自由表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体設備と、係留設備と、液化天然ガス生産設備と、液化天然ガス貯蔵設備と、液化天然ガス積出し設備とを備え、液化天然ガス貯蔵設備はメンブレンタンクと、液化天然ガスの液面に寄り添って面外変形可能な膜体と浮体とを有しメンブレンタンク内に収納されたスロッシング防止用浮蓋とを備えることを特徴と浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備。
【請求項2】
浮体は膜体の外周縁に取付けられた外周防撓材であり、膜体と少なくとも外周防撓材の表面とは、メンブレンタンクの素材金属よりも硬度の低い素材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備。
【請求項3】
膜体と外周防撓材とは、液化天然ガスよりも比重が小さな素材で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備。
【請求項4】
膜体及び外周防撓材はそれぞれ複数の構成部分に分離可能であり、また前記複数の構成部分を連結してスロッシング防止用浮蓋を構成可能であることを特徴とする請求項2又は3に記載の浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備。
【請求項5】
メンブレンタンクはトップサイドの傾斜壁を有さない方形タンクであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出し設備。

【図1】
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【図2】
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