説明

浮動接点を有する温度ヒューズ

【課題】感温ペレット型温度ヒューズに用いる浮動接点部材の構成材料として貴金属の使用量を削減する。
【解決手段】絶縁碍管11を挿着した隔離側導出リード12と、このリード端部に接点用被覆層22を挟んで開離自在に当接した浮動接点部材20と、浮動接点部材20を開離動作させる弱圧縮ばね13と、浮動接点部材20に着接した摺動接点14と、摺動接点14を弱圧縮ばね13より強い付勢力で押圧する強圧縮ばね15と、感温ペレット16を、常時接続側導出リード17を備えた開口を有する筒状外囲器18に収容し、筒状外囲器18の開口に装着した絶縁碍管11の外縁を封止樹脂19で封口する。浮動接点部材20は、鍔状の頭部に設けた凹部接触面で摺動接点14に着接し、CuまたはCu合金などからなる基材と、基材表面に施したAgまたはAg合金からなる被覆層からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端に導出リードを設けた金属ケース内に、感温ペレット、圧縮ばね、浮動接点部材および摺動接点を収納して所定の温度で感温ペレットが軟化または溶融する際に、圧縮ばねの押圧作用と浮動接点部材の移動により回路遮断する温度ヒューズに関し、特に少なくとも接点部分に貴金属の被覆層を形成した浮動接点部材を有する感温ペレット型温度ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、互いに対向する隔離リード及び常時接続リードと、これら二つのリードの間に配置された摺動接点と、通常時には隔離リード及び摺動接点に係合し、摺動接点と共に隔離リードより離れる方向へ移動して両リード間の電気接続を遮断することのできる浮動接点部材とを備える感温遮断装置を提示する。そして、浮動接点部材は実質的にきのこ形をなし、細長い軸部とこの軸部に一体的に構成された拡大されたヘッド部とを有し、ヘッド部は外方へ面する端部を有し、この端部は摺動接点に係合する接触面を含み、浮動接点部材と摺動接点とが隔離リードから離れる際に接触面は摺動接点に係合した状態を保持し、ヘッド部の端部にはその中央に窪みが設けられて接触面がヘッド部の周縁に近接した位置に於いて環状を成し、接触面の接触面積が端部の全面積よりも実質的に小さくなるよう構成することを開示する。窪みに関しては、外方へ面する接触面の面積の半分以上を占めている構成、あるいは実質的に円錐形で15°以下の角度にて内方へ傾斜している構成として、実質的に円筒状であり、拡大されたヘッド部が接触面を構成する環状突起を有している等の条件設定が提示されている。また、細長の軸部は実質的に円柱形で、外方へ面する端部接触面を含み、この端部接触面に近接する位置に小断面積の部分を有すること、端部接触面に近接する位置に内方へ傾斜したテーパ面を有することなどが提示されている。従来、特許文献1が示す感温遮断装置は、電気機器の過昇温に因る事故を防止する目的で各種ヒータや電源回路に実装される温度ヒューズの一つのタイプで、感温ペレットを用いるので感温ペレット型温度ヒューズと呼ばれている。特許文献2は、一端に開口部を有する有底ケース内に感温ペレットや強弱圧縮ばねなどを収納したこのタイプの温度ヒューズである。この特許文献2の第4図は、ばねガイドを用いて可動接片の移動を案内する構造を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−045404号公報
【特許文献2】実開平02−001840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の感温遮断装置の浮動接点部材は、両リード間にあって導通経路を構成することから両端部で異なる部材と接している。すなわち、遮断動作前の浮動接点部材の両端は常時接続リードの先端接点と摺動接点の両接点と接触しており、温度ヒューズを低抵抗に接合する上で良導体かつ良接点の導電材で構成する必要があり、高価なAg(銀)またはAg合金などの貴金属材料を用いることになる。なお、遮断動作後の浮動接点部材は通電状態でなくなるので構成材料としての電気的特性は何等の考慮も必要としない。それゆえ、浮動接点部材を所定の形状で一体形成するのでは、高価な導通材料を多量に使用することでコストアップする等の欠点があった。特に、細長い軸部とこの軸部に一体的に構成された拡大されたヘッド部とを有する浮動接点部材の体積量と、ヘッド部の外方へ面する端部と、この端部に摺動接点に係合する窪みのある接触面とを形成することは材料の高価さに加えて加工上の問題でもあった。こうした軸部への材料投入量や貴金属材料の使用に伴うコストアップ等の問題点を解消することが必要とされている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、感温ペレットと圧縮ばねと共に摺動接点を含む浮動接点部材を金属ケース内に収容する感温ペレット型温度ヒューズに関し、接点部材となるAu(金)、Agやその合金等の高価な材料を多量に使用することによる高コスト化を解消して、貴金属の材料費を削減する新規で改良された温度ヒューズの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、一対の導出リードを装着した筒状外囲器に収容された感温ペレットと浮動接点部材は、感温ペレットの軟化溶融に因って浮動接点部材がスイッチング作動して、導出リード間をカットオフ状態に切替える感温ペレット型温度ヒューズを提供する。ここで、前記浮動接点部材は、Cu(銅)などの良導電材料からなる基材部分とAu、Ag等の貴金属材料またはそれら貴金属材料を含む合金からなる被覆状接触部分とにより構成し、この被覆状接触部分により隣接の可動する摺動接点と固定接点である導出リード先端部とに接触させる。すなわち、卑金属材料からなる基材の表面全体または少なくとも一部分に、AgまたはAg合金の貴金属材料からなる被覆層を施し、この被覆層を接点部材として浮動接点部材を構成したことを特徴とする温度ヒューズが提供される。
【0007】
本発明の別の観点によれば、本発明による感温ペレット型温度ヒューズは、浮動接点部材が銅を主体とする良導電材料の基材部分とAg、Ag合金などの貴金属材料またはそれら貴金属材料を含む合金のコンタクト接触する被覆層とを具備し、固定接点となる導出リード先端接点部および可動の摺動接点の接点部とに係合させることを特徴とするもので、コスト低減を図りつつ導通時の安定した低抵抗を維持し遮断時の確実な切断を確保する。
【0008】
なお、本発明に係わる被覆層は、Au、Ag等の貴金属材料またはそれら貴金属材料を含む合金からなり、開離動作時に発生するアーク放電熱によって開離接点が融着するのを防止するため、前記被覆層を構成する金属中に各種の金属酸化物を分散させたものであってもよい。さらにこれに微量添加材を加えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、感温ペレット型温度ヒューズの浮動接点部材に必要とされる貴金属接点部材の使用量を少なくして該温度ヒューズの製造に係る経済性を向上し、温度ヒューズの内部抵抗を低減し安定した通電性を維持するとともに、遮断時に開離接点が粘着あるいは融着するのを防止して確実な切断を確保する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施例1である感温ペレット型温度ヒューズ10の断面図である。
【図2】図1に示す温度ヒューズに用いる浮動接点部材20の拡大断面図である。
【図3】本発明の温度ヒューズに用いられる浮動接点部材20の変形例1の拡大断面図である。
【図4】本発明の温度ヒューズに用いられる浮動接点部材20の変形例2の拡大断面図である。
【図5】本発明の温度ヒューズに用いられる浮動接点部材20の変形例3の拡大断面図である。
【図6】本発明に係る実施例2である感温ペレット型温度ヒューズ60の断面図である
【図7】図6に示す温度ヒューズに用いる浮動接点部材70の拡大断面図である。
【図8】本発明の温度ヒューズに用いられる浮動接点部材70の変形例4の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によると感温ペレット型温度ヒューズの浮動接点部材として卑金属からなる基材の表面全体または少なくとも温度ヒューズ内部で通電経路を構成する他の部品との接触箇所のみに貴金属材料またはそれら貴金属材料を含む合金からなる被覆層を施したことを特徴とする温度ヒューズ用浮動接点部材が提供される。すなわち浮動接点部材と感温ペレットを一対の導出リードを装着した筒状外囲器に収容し、感温ペレットの軟化溶融に因って浮動接点部材をスイッチング作動させ、導出リード間をカットオフ状態に切替える感温ペレット型温度ヒューズを構成する。
【0012】
本発明の別の観点によれば、絶縁碍管を挿着した隔離側の導出リードと、このリード端部に被覆層を挟んで開離自在に当接した浮動接点部材と、この浮動接点部材を開離動作させる第1の弾性部材と、該浮動接点部材に着接した摺動接点と、この摺動接点を第1の弾性部材より強い付勢力で押圧する第2の弾性部材と、第2の弾性部材を圧縮する感温ペレットを、常時接続側の導出リードを備えた筒状外囲器に収容し、封止樹脂で封口した感温ペレット型温度ヒューズが提供される。本発明の浮動接点部材は、前記摺動接点に着接され、この摺動接点は、該温度ヒューズの筒状外囲器の内壁面と常時摺接している。そして、該浮動接点部材は、感温ペレット部材の溶融軟化によって隔離側の導出リードと開離し該温度ヒューズを動作させる。
【0013】
前記被覆層には、AgまたはAg合金などを利用でき、さらに開離動作時に発生するアーク放電熱によって開離接点が融着するのを防止するため、前記被覆層を構成する金属材料中に各種の金属酸化物を分散させたものが好ましい。例えば、金属酸化物としてCu、Ni、Cd、Sn、Inの群から選ばれた1つ以上の金属元素の酸化物が好適に利用できる。さらにこれに適宜公知の接点添加材元素を加えても差し支えない。
【実施例】
【0014】
本発明に係る実施例1の感温ペレット型温度ヒューズ10は、図1に示すように、絶縁碍管11を挿着した隔離側の導出リード12と、このリード端部に接点用被覆層22を挟んで開離自在に当接した浮動接点部材20と、この浮動接点部材20を開離動作させる第1の弾性部材である弱圧縮ばね13と、浮動接点部材20に着接した星型状の摺動接点14と、この摺動接点14を弱圧縮ばね13より強い付勢力で押圧する第2の弾性部材である強圧縮ばね15と、感温ペレット16を、常時接続側の導出リード17を備えた開口を有する筒状外囲器18に収容し、この筒状外囲器18の開口に挿着した絶縁碍管11の外縁を封止樹脂19で封口したものである。浮動接点部材20は、鍔状の頭部に設けた凹部接触面で摺動接点14に着接し、摺動接点14は、筒状外囲器18の内壁面と常時摺接している。そして、浮動接点部材20は、感温ペレット16の溶融軟化によって弱圧縮ばね13の押圧作用により、隔離側の導出リード12との接触を開離し温度ヒューズ10を遮断動作させる。ここで、本発明の特徴とする浮動接点部材20は、図2に示すように、CuまたはCu合金などからなる基材21と、この基材の表面全体に施したAgまたはAg合金からなる接点用被覆層22からなり、棒状の胴部23と鍔状の頭部24を有する。鍔状の頭部24は、胴部23に挿通した弾性部材の付勢力を鍔で受けとめるとともに、摺動接点14と当接する凹面状の接触面25を形成する。一方、胴部23の先端部26は、隔離側の導出リード12に当接して温度ヒューズ10の開離接点部を形成する。なお、実施例1では、図1に示すように、摺動接点14と強圧縮ばね15との間、および強圧縮ばね15と感温ペレット16との間に円板90と円板91がそれぞれ介在挿入される。実施例1に用いる浮動接点部材20の接点用被覆層22の形成手段は、接点材料を基材に安定に固着可能な方法であればどのような工法を用いても差し支えない。例えば、めっき材、クラッド材や、接点材の溶接、圧接、接合、ろう付けなどが好適に利用できる。
【0015】
実施例1に用いる浮動接点部材20は、図3に示す変形例1の浮動接点部材30に変形可能である。変形例1の浮動接点部材30は、棒状の胴部33の先端部36のみにAgまたはAg合金からなる接点用被覆層32を部分的に施している。すなわち、この浮動接点部材30は、CuまたはCu合金などの良導電性金属材料からなる基材31に対して、温度ヒューズの隔離側の開離接点となる先端部36のみにAgまたはAg合金からなる接点用被覆層32を施したものである。浮動接点部材30の鍔状の頭部34は、胴部33に挿通した弾性部材の付勢力を受けとめる鍔と、摺動接点と着接する凹面状の接触面35を有するとともに、胴部33の先端部36のみに接点用被覆層32を施して、これと当接する隔離側の導出リード12と温度ヒューズの開離接点部を形成する。
【0016】
また、実施例1の浮動接点部材20は、図4に示す変形例2の浮動接点部材40に変形できる。この浮動接点部材40は、CuまたはCu合金などの良導電性金属材料からなる基材41と、基材41の先端部46に固着したAgまたはAg合金からなる接点用被覆層42と、基材41の胴部43に挿通する弾性部材の付勢力を受けとめる鍔状の頭部44と、頭部44に設けた凹面状の接触面45と、接触面45の周縁部に固着したAgまたはAg合金からなる環状の接続用被覆層47を有する。浮動接点部材40は、環状の接続用被覆層47を挟んで星型状の摺動接点14と当接するので摺動接点14との接触抵抗を低減しながら、先端部46の接点用被覆層42と隔離側の導出リード12で温度ヒューズの開離接点部を形成できる。
【0017】
さらに、実施例1に用いる浮動接点部材20は、図5に示す変形例3の浮動接点部材50に変形できる。この浮動接点部材50は、CuまたはCu合金などの良導電性金属材料からなる基材51と、基材51の先端部56にAgまたはAg合金からなる金属片を固着した接点用被覆層52を有する。この浮動接点部材50は、前述の変形例1と同様に、基材51の胴部53に挿通する弾性部材の付勢力を受けとめる鍔状の頭部54と、頭部54に摺動接点14と着接する凹面状の接触面55を有し、基材51の先端部56に接点用被覆層52を固着して、これと当接する隔離側の導出リードと温度ヒューズの開離接点部を形成する。浮動接点部材50は、特に接点用被覆層52を厚く盛り付けることができ、開離接点部の耐溶着性を向上させる。また、特に図示しないが図1の基材全面を覆ったAgまたはAg合金からなる被覆層の上に、さらにAgまたはAg合金からなる金属片を浮動接点の先端部に固着することで、接点用被覆層を二重に施し開離動作時の遮断性を一層向上することもできる。
【0018】
本発明の浮動接点部材に施す接点用被覆層および接続用被覆層の形成手段は、接点材料を基材に安定に固着可能であればどのような方法を用いても良い。例えば、めっき材、クラッド材や、接点材の溶接、圧接、接合、ろう付けなどが好適に利用できる。浮動接点部材20は、貴金属の被覆層22が基材21の外部の全表面に形成されているが、各変形例においては、貴金属材料を局部的に用いるので、特に被覆層形成におけるめっき処理の簡素化が図れるメリットを有するとともに、材料コストを大幅に削減できる利点を有する。また、実施例1に使用する浮動接点部材は、何れも貴金属のAgまたはAg合金からなる接点部材のみから一体形成した従来の浮動接点部材より、貴金属材料の使用量を大幅に削減することができ経済的な効果を有する。
【0019】
図6は本発明に係る実施例2の感温ペレット型温度ヒューズ60を示し、実施例2の浮動接点部材70は図7に拡大して示される。この浮動接点部材70は、CuまたはCu合金などからなる基材71の開離接点部のみに、AgまたはAg合金からなる接点用被覆層72を施したものである。鍔状の頭部74に温度ヒューズの摺動接点78を挿着して摺動接点78と頭部74との当接面同士を抵抗溶接で固着し、かつ平坦な接触面75で温度ヒューズの強圧縮ばね65を直接押圧する点が、図1に示す実施例1と異なる。先端部76は温度ヒューズの隔離側の導出リード62に当接して温度ヒューズの開離接点部を形成する。一方、感温ペレット型温度ヒューズ60は、絶縁碍管61を挿着した隔離側の導出リード62と、このリード端部に接点用被覆層72を挟んで開離自在に当接した浮動接点部材70と、この浮動接点部材70を開離動作させる弱圧縮ばね63と、浮動接点部材70に挿着した摺動接点78と、弱圧縮コイルばね63より強い付勢力で浮動接点部材70を押圧する強圧縮ばね65と、感温ペレット66を、常時接続側の導出リード67を備えた筒状外囲器68に収容し、封止樹脂69で封口したものである。浮動接点部材70に固着された摺動接点78は、温度ヒューズ60の筒状外囲器68の内壁面と常時摺接している。そして、浮動接点部材70は、感温ペレット66の溶融軟化によって弱圧縮ばね63の押圧作用により、隔離側の導出リード62との接触を開離し温度ヒューズ60を遮断動作させる。実施例2の温度ヒューズ60は、浮動接点部材70で強圧縮ばね65を直に当接することで円板90を1個に減数できるので、図1に示す実施例1の感温ペレット型温度ヒューズ10より部品数が少なく低コストで製造できる。
【0020】
実施例2に用いる浮動接点部材70の接点用被覆層72は、図示しないが基材71の表面全体に施しても良い。さらに、実施例2の浮動接点部材70は、図8に示すに示す変形例4の浮動接点部材80に変形できる。この浮動接点部材80は、CuまたはCu合金などからなる基材81の開離接点部および頭部84に挿着した摺動接点88の当接面に、AgまたはAg合金からなる接点用被覆層82および接続用被覆層87を有する。浮動接点部材80は、環状の接続用被覆層87を挟んで摺動接点88と当接するので、摺動接点88と頭部84を溶接しなくても実施例2と同様に摺動接点との接触抵抗を低減できる。この変形例4の浮動接点部材80は、基材81に突起を設け、この突起と頭部84との間に温度ヒューズの摺動接点88を挟み込んで、鍔状の頭部84に摺動接点88を挿着している。浮動接点部材80に固定された摺動接点88は、温度ヒューズ60の筒状外囲器68の内壁面と常時摺接している。そして、浮動接点部材80は、感温ペレット66の溶融軟化によって弱圧縮ばね63の押圧作用により、隔離側の導出リード62との接触を開離し温度ヒューズ60を遮断動作させる。
【0021】
本発明の浮動接点部材への摺動接点の固定手段は、摺動接点が浮動接点部材の基材へ電気的な接続を保持できればどのような方法を用いても良く、例えば、ばね押圧によって摺動接点を基材頭部に当接させても良いが、望ましくは、はんだ材やろう材による接合、拡散接合、抵抗溶接、レーザ溶接、熱圧接、超音波圧接、嵌合、カシメなどの好適な手段を適宜用いて摺動接点を基材へ直に固着させるのが好ましい。また、浮動接点部材への接点用被覆層および接続用被覆層の形成手段は、接点材料を基材に安定に固着可能な方法であればどのような工法を用いても差し支えない。例えば、めっき材、クラッド材や、接点材の溶接、圧接、接合、ろう付けなどが好適に利用できる。実施例2に使用する浮動接点部材は、実施例1の浮動接点部材20およびその変形例と同様に貴金属材料を基材表面に局部的に用いるので、特に被覆形成のめっき処理の簡素化が図れるメリットを有するとともに、材料コストを大幅に削減できる利点を有する。実施例2に使用する浮動接点部材は、何れも貴金属のAgまたはAg合金からなる接点部材のみから一体形成した従来の浮動接点部材より、貴金属材料の使用量を大幅に削減することができ経済的な効果を有する。
【符号の説明】
【0022】
10,60・・・感温ペレット型温度ヒューズ、 11,61・・・絶縁碍管、
12,62・・・隔離側の導出リード、 13,63・・・弱圧縮ばね、
14,78,88・・・摺動接点 15,65・・・強圧縮ばね、
16,66・・・感温ペレット、 17,67・・・常時接続側の導出リード、
18,68・・・筒状外囲器、 19,69・・・封止樹脂、
20,30,40,50,70,80・・・浮動接点部材、
21,31,41,61・・・基材、
22,32,42,52,72,82・・・接点用被覆層、
47,87・・・接続用被覆層、
23,33,43,53,73,83・・・胴部、
24,34,44,54,74,84・・・頭部、
25,35,45,55,75,85・・・接触面、
26,36,46,56,76,86・・・先端部、 90,91・・・円板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導出リードを装着した筒状外囲器に感温ペレットと浮動接点部材とを収容し、前記浮動接点部材の移動によりスイッチング作動させる感温ペレット型温度ヒューズにおいて、前記浮動接点部材は良導電材料からなる基材とこの基材を覆った貴金属材料または前記貴金属材料を含む合金からなる被覆層により成り、前記被覆層を前記導出リードに接触させたことを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項2】
感温ペレットと浮動接点部材とを、隔離側の導出リードを絶縁装着した筒状外囲器に収容し、前記浮動接点部材の移動によりスイッチング作動させる感温ペレット型温度ヒューズにおいて、前記浮動接点部材は、卑金属材料からなる基材とその表面に部分的に形成した貴金属材料または前記貴金属材料を含む合金からなる被覆層を備え、前記被覆層を前記導出リードに接触させたことを特徴とする感温ペレット型温度ヒューズ。
【請求項3】
感温ペレットと浮動接点部材と摺動接点とを、隔離側の導出リードを絶縁装着した筒状外囲器に収容し、前記浮動接点部材の移動によりスイッチング作動させる感温ペレット型温度ヒューズにおいて、前記浮動接点部材は、卑金属材料からなる基材とその表面に部分的に形成した貴金属材料または前記貴金属材料を含む合金からなる被覆層を備え、前記被覆層は前記導出リードおよび前記摺動接点に接触させたことを特徴とする感温ペレット型温度ヒューズ。
【請求項4】
前記浮動接点部材は鍔状の頭部を有し、前記頭部に温度ヒューズの筒状外囲器の内壁面と常時摺接する摺動接点を挿着したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の感温ペレット型温度ヒューズ。
【請求項5】
前記浮動接点と前記摺動接点とを抵抗溶接により接合し、一体部品としたことを特徴とする請求項4に記載の感温ペレット型温度ヒューズ。
【請求項6】
前記浮動接点部材の被覆層は、AgまたはAg合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の温度ヒューズ。
【請求項7】
前記浮動接点部材の基材は、CuまたはCu合金からなる導電材料であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の温度ヒューズ。
用浮動接点部材。
【請求項8】
前記被覆層は、金属中に金属酸化物を分散させたことを特徴とする請求項6に記載の感温ペレット型温度ヒューズ。
【請求項9】
前記金属酸化物は、Cu、Ni、Cd、Sn、Inの群から選ばれた1つ以上の元素の酸化物であることを特徴とする請求項8に記載の感温ペレット型温度ヒューズ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−248490(P2012−248490A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121168(P2011−121168)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(300078431)エヌイーシー ショット コンポーネンツ株式会社 (75)
【Fターム(参考)】