説明

浮揚性ホースの製造方法およびこれを用いて作製された浮揚性ホース

【課題】水や海水などの液体上で浮遊させた状態で利用される、浮揚層形成時の作業性に優れた浮揚性ホースと、その製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性接着剤により帯状スポンジシートを重ねて貼り合わせることにより浮揚層を形成する浮揚層形成工程を少なくとも経て作製される浮揚性ホースと、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や海水などの液体上に浮遊させた状態で利用される浮揚性ホースの製造方法およびこれを用いて作製された浮揚性ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
浮揚性ホースとしては、一点係留式ブイなどに係留されたタンカーからの原油の輸送や、浚渫船からの土砂などの輸送等に利用されるものが知られている。
【0003】
図7は、浮揚性ホースの使用態様の一例について示す概略模式図であり、海中で使用されるサブマリンホース62が接続された一点係留ブイ60とタンカー66との間を、洋上に浮かんだ状態のフローティングホース(浮揚性ホース)68が接続された状態を示したものである。
【0004】
このような浮揚性ホースは浮力を得るために、スポンジで構成される浮揚層を有している。
【0005】
浮揚層としては、帯状のスポンジをベースホースの外面ゴム上に巻きつけて形成するのが一般的であるが、この際、スポンジの同士は、接着ゴムを介して貼り合わされ、帯状のスポンジとしてポリエチレンスポンジを用いた場合は接着をより確実にするために有機溶剤を含むゴムセメントを予めスポンジ全面に塗布する。例えば、40.05キログラム/立方米(0.05g/cm)の浮揚性材料の膨張交錯結合ポリエチレンによって作られたフープの帯の自由端をネオプレン系の接着剤によって相互に結合する方法などが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭49−95217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、浮揚性ホースの浮揚層の形成に際しては、通常、一旦貼り合わせたスポンジの貼り合せ位置の調整や貼り直し作業が必要とされる場合がある。しかし、ネオプレン系の接着剤などのような有機溶剤を含むゴムセメントを用いた場合、一度貼り合わせると接着力が強固なため、スポンジの貼り合わせ位置を調整するために引き剥がしすることができないという問題点があった。
【0007】
また、帯状スポンジの側端面が突き合わされると、側端面に塗布されていた接着剤が外側にはみ出して凸状となり、その外側に次の層を積層すると、凹凸形状となって層間に隙間が生じてしまうこともある。これを回避するためには、はみ出した接着剤を除去する必要があり、手間がかかってしまう。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、浮揚層形成時の作業性に優れた浮揚性ホースの製造方法およびこれを用いて作製された浮揚性ホースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の浮揚性ホースは、水溶性接着剤により帯状スポンジシートを貼り合わせてなる浮揚層を少なくとも有することを特徴とする。
【0010】
ここで、水溶性接着剤とは、溶媒成分として有機溶剤を全く含まない接着剤であり、ラテックス系、エマルジョン系の、水に完全には溶解していないタイプのものを含む。この水溶性接着剤を用いることにより、有機溶剤を含む接着剤と比較して、粘着状態が弱い微粘着状態を長く維持でき、接着直後の引き剥がしは容易である。したがって、帯状スポンジシートを、帯状スポンジシート同士、または、帯状スポンジシートに積層されるゴムシートなどと、一旦貼り合せた後でも、貼り合わせ位置の調整や貼り直しを容易に行うことができ、作業性に優れたものとなる。
【0011】
請求項2に記載の浮揚性ホースは、帯状スポンジシートが、ポリエチレンスポンジ及び天然ゴムスポンジから選択される少なくとも1種のスポンジを含むことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の浮揚性ホースは、前記帯状スポンジシートを貼り合わせた界面に固形化した状態で存在する前記水溶性接着剤の単位面積当たりの存在量が、5〜100g/mの範囲内であることを特徴とする。
【0013】
なお、帯状スポンジシートを貼り合わせる界面には、帯状スポンジシート同士の界面、帯状スポンジシートとゴムシートなどの他の部材との界面を含み、帯状スポンジシートの接着面には、帯状スポンジシートの側端面、表面などを含む。
【0014】
請求項4に記載の浮揚性ホースは、前記帯状スポンジシートを貼り合わせた界面に固形化した状態で存在する前記水溶性接着剤が天然ゴムのメチルメタアクレレートグラフト重合体を含む水溶性接着剤であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の浮揚性ホースの製造方法は、水溶性接着剤により帯状スポンジシートを貼り合わせることにより浮揚層を形成する浮揚層形成工程を少なくとも経て作製されることを特徴とする浮揚性ホースの製造方法である。
【0016】
前述のように、帯状スポンジを水溶性接着剤を用いて貼り合わせると、微粘着状態が比較的長く維持されるため、引き剥が容易である。したがって、貼り合わせ位置の調整や貼り直しを容易に行うことができ、作業性に優れ、容易に浮揚層を形成することができる。
【0017】
請求項6に記載の浮揚性ホースの製造方法は、前記帯状スポンジシートが、ポリエチレンスポンジ及び天然ゴムスポンジから選択される少なくとも1種のスポンジを含むことを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の浮揚性ホースの製造方法は、前記浮揚層形成工程が、帯状スポンジシートの一方の接着面に前記水溶性接着剤を乾燥重量換算で5〜100g/mの範囲内で塗布した後、前記水溶性接着剤が塗布された接着面に他の帯状スポンジシートを貼り合せることにより実施されることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の浮揚性ホースの製造方法は、前記水溶性接着剤が天然ゴムのメチルメタアクレレートグラフト重合体を含む水溶性接着剤であることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の浮揚性ホースは、ベースホースと、前記ベースホースの外側に複数層に積層された帯状スポンジシートと、前記複数層の帯状スポンジシートの各層間に設けられたゴムシート層と、を備え、前記帯状スポンジシートの貼り合わせに水溶性接着剤を用いたこと、を特徴とする。
【0021】
ここで、水溶性接着剤とは、前述のように、溶媒成分として有機溶剤を全く含まない接着剤であり、ラテックス系、エマルジョン系の、水に完全には溶解していないタイプのものを含む。この水溶性接着剤を用いることにより、有機溶剤を含む接着剤と比較して、粘着状態が弱い微粘着状態を長く維持でき、接着直後の引き剥がしは容易である。したがって、帯状スポンジシートを、帯状スポンジシート同士、または、帯状スポンジシートに積層されるゴムシートなどと、一旦貼り合せた後でも、貼り合わせ位置の調整や貼り直しを容易に行うことができ、作業性に優れたものとなる。
【0022】
請求項10に記載の浮揚性ホースは、前記帯状スポンジシートが、前記ベースホースの外側に側端面が接着し合うように隙間なく螺旋状に巻回されていること、を特徴とする。
【0023】
このように、帯状スポンジシートを螺旋状に巻回すことにより、浮揚層を構成することができる。
【0024】
請求項11に記載の浮揚性ホースは、前記帯状スポンジシートが、前記ベースホースの軸方向と前記帯状スポンジシートの長手方向とが一致するように配置され、前記帯状スポンジシートの側端面同士が互いに突き合わされて接着されていること、を特徴とする
このときの帯状スポンジシートの幅長は、1枚でベースホースの外周を覆うことの可能なサイズであっても、複数枚をつなぎ合わせてベースホースの外周を覆うことのできるサイズであってもよい。また、帯状スポンジシートの長さは、1枚で浮揚性ホースの全長を覆うことのできる長さであっても、複数枚をつなぎ合わせて浮揚性ホースの全長を覆うことのできる長さであってもよい。
【0025】
請求項12に記載の浮揚性ホースは、前記帯状スポンジシートが天然ゴムスポンジで構成され、前記ゴムシート層と前記帯状スポンジ層との間には、接着剤が介在されていないこと、を特徴とする。
【0026】
帯状スポンジシートが天然ゴムスポンジで構成されていれば、帯状スポンジシートを未加硫の生ゴムで覆った後に加硫処理してゴムシート層とすることにより、接着剤なしで、容易に接着することができる。
【0027】
請求項13に記載の浮揚性ホースは、前記帯状スポンジシートがポリエチレンスポンジで構成され、前記ゴムシート層と前記帯状スポンジ層との間に、接着剤が介在されていること、を特徴とする。
【0028】
帯状スポンジシートがポリエチレンスポンジで構成されている場合には、帯状スポンジシートとゴムシート層との間に水溶性接着剤を介在させることにより、両者を確実に接着させることができる。
【0029】
請求項14に記載の浮揚性ホースは、前記帯状スポンジシートは長手方向に複数のスポンジシートが継ぎ合わされて構成され、前記複数のスポンジシートの突き合わせジョイント部が前記水溶性接着剤により接合されていること、を特徴とする。
【0030】
複数のスポンジシートを長手方向に複数継ぎ合わせて、帯状スポンジシートを構成する場合には、その突き合わせジョイント部についても、前記水溶性接着剤により接合することが好ましい。
【0031】
請求項15に記載の浮揚性ホースの製造方法は、ベースホースの外側に帯状スポンジシートを水溶性接着剤を用いて貼り合わせると共に、前記帯状スポンジシートの外側を未加硫ゴムシートで覆って浮揚層を形成し、前記浮揚層の外側に外側ゴム層を形成し、その後加硫処理を行うものである。
【0032】
このように、帯状スポンジシートを水溶性接着剤を用いて貼り合わせることにより、一旦貼り合せた後でも、貼り合わせ位置の調整や貼り直しを容易に行うことができ、作業性に優れたものとなる。
【0033】
請求項16に記載の浮揚性ホースの製造方法は、前記帯状スポンジシートが天然ゴムスポンジで構成されていること、を特徴とする。
【0034】
このように、帯状スポンジシートを天然ゴムスポンジで構成することにより、加硫処理後にゴムシート層と帯状スポンジシートとを容易に接着させることができる。
【0035】
請求項17に記載の浮揚性ホースの製造方法は、前記帯状スポンジシートは長手方向に複数のスポンジシートを継ぎ合わせて構成し、前記複数のスポンジシートの突き合わせジョイント部を前記水溶性接着剤により接合すること、を特徴とする。
【0036】
複数のスポンジシートを長手方向に複数継ぎ合わせて、帯状スポンジシートを構成する場合には、その突き合わせジョイント部についても、前記水溶性接着剤により接合することが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
以上に説明したように本発明によれば、浮揚層形成時の作業性に優れた浮揚性ホースの製造方法およびこれを用いて作製された浮揚性ホースを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の浮揚性ホースの製造方法は、水溶性接着剤により帯状スポンジシートを貼り合わせることにより浮揚層を形成する浮揚層形成工程を少なくとも経て作製されることを特徴とする。これにより、水溶性接着剤により帯状スポンジシートを貼り合わせてなる浮揚層を少なくとも有する浮揚性ホースを得ることができる。
【0039】
図1には、本発明の浮揚性ホースの実施形態であるマリンホース20のホース軸Mを挟んだ片側のみの断面が示されている。マリンホース20は、ニップル22、内面ゴム管23、第1ベース補強コード24、第1ビードワイヤー25、補強ワイヤー26、第2ベース補強コード27、第2ビードワイヤー28、中間ゴム層29、浮揚層30、外側補強コード40、及び、外面ゴム層42を備えている。
【0040】
ニップル22は、筒状とされ、先端側(マリンホース20に挿入される側)に第1環状リブ22A、第1環状リブ22Aよりも外側(マリンホース20の軸方向外側)に第2環状リブ22Bが形成されている。内面ゴム管23は、ニップル22の外面を覆うように第1環状リブ22Aよりも先端側に外挿されている。ニップル22の軸方向外側には、他のマリンホースとの接続部であるフランジ部19が形成されている。
【0041】
第1ビードワイヤー25は、ニップル22の先端側から第1環状リブ22Aを乗り越えた位置で周方向に巻回されている。第1ベース補強コード24は、第1ビードワイヤー25を包んで折り返され、内面ゴム管23の外面に配置されている。第1ベース補強コード24の外側には、所定の間隔で補強ワイヤー26が螺旋状に巻回されている。
【0042】
第2ビードワイヤー28は、ニップル22の先端側から第2環状リブ22Bを乗り越えた位置で周方向に巻回されている。第2ベース補強コード27は、第2ビードワイヤー28を包んで折り返され、第1ベース補強コード24の外面に配置されている。中間ゴム層29は、第2ベース補強コード27の外面を覆うように配置されている。
【0043】
前記のニップル22、内面ゴム管23、第1ベース補強コード24、第1ビードワイヤー25、補強ワイヤー26、第2ベース補強コード27、第2ビードワイヤー28、中間ゴム層29により、ベースホース21が構成される。
【0044】
浮揚層30は、図2(A)に示すように、ベースホース21の外面に帯状スポンジシート32が螺旋状に巻回されて構成されている。帯状スポンジシート32は、独立気泡の発泡体で構成されている。帯状スポンジシート32の厚みは、通常、0.8mm〜3.0mm程度、幅は300〜500mm程度、長さは5〜20m程度である。帯状スポンジシート32の材料としては、天然ゴムの発泡体、ポリエチレンの発泡体などを用いることができるが、本実施形態では天然ゴムの発泡体を用いることとする。
【0045】
なお、帯状スポンジシート32は、図4に示すように、長手方向に複数のスポンジシート32Sを継ぎ合わせて構成することができる。この場合には、隣接するスポンジシートの突き合わせジョイント部32Jは、前述の水溶性接着剤で接着される。
【0046】
帯状スポンジシート32は、図2(B)及び図3にも示すように、ベースホース21の外面に、隙間なく螺旋状に巻回される。このとき、帯状スポンジシート32の側端面32Aまたは側端面32Bのいずれか一方には、予め水溶性接着剤を塗布しておき、隣り合う側端面32Aと側端面32Bとを突き合わせて接着させつつ隙間なく螺旋状に巻回す。
【0047】
ベースホース21の長手方向の一端から他端に向かって、外面を覆うように螺旋状に巻回されて1層が構成される。当該構成された層の外側には、帯状スポンジシート32を覆うようにゴムシート層33が形成されている。そして、その外側に、同様にして帯状スポンジシート32、ゴムシート層33が複数層積層され(一般的に3〜6層、本実施形態では3層)、浮揚層30が構成される。
【0048】
本実施形態では、側端面32Aと側端面32Bとの接着が水溶性接着剤を用いて行われる。ここで、水溶性接着剤とは、溶媒成分として有機溶剤を全く含まない接着剤をいう。また、主成分が水に完全に溶解していないラテックス系であっても、エマルジョン系であってもよい。この水溶性接着剤を用いることにより、有機溶剤を含む接着剤と比較して、粘着状態が弱い微粘着状態を長く維持でき、接着直後の引き剥がしは容易である。したがって、帯状スポンジシート同士を一旦貼り合せた後でも、貼り合わせ位置の調整や貼り直しを容易に行うことができ、作業性に優れたものとなる。加えて水溶性接着剤は溶媒成分として有機溶剤を含まないため、環境にもやさしい。なお、浮揚性ホースを作製する上で優れた作業性を確保するためには、微粘着状態は、1時間〜168時間程度維持できることが好ましい。
【0049】
浮揚層30の外側は、外側補強コード40で覆われ、外側補強コード40の外側は外面ゴム層42で覆われている。外面ゴム層42は、マリンホース20の最外面を構成している。
【0050】
ここで、本発明において、「微粘着状態」とは、定量的に特定されるものではないが、一旦貼り合わせた帯状スポンジシート32同士の貼り合せ位置を直したりするために引き剥がしが容易な状態を意味する。
【0051】
このような微粘着状態は、従来用いられていた有機溶剤を多く含む接着剤では維持できなかったために作業性に劣るものであったが、本発明では水溶性接着剤を用いることにより1時間〜168時間程度維持できるようになるため、優れた作業性が確保できる。
【0052】
なお、本発明に用いられる帯状スポンジシートとしては、浮揚性ホースの浮揚性が確保できる密度を有するものであれば特に限定されないが、密度が0.01〜0.5g/cmの範囲内、より好適には0.03〜0.2g/cmの範囲内を満たすものが利用できる。通常、スポンジ材料の密度は、天然ゴムスポンジで概略0.15g/cm、ポリエチレンフォームで0.05g/cmである。
【0053】
次に、本実施形態のマリンホース20の製造方法について説明する。
【0054】
ニップル22の先端側の第1環状リブ22Aの手前まで、予め成型されている内面ゴム管23を外挿する。そして、第1環状リブ22Aを乗り越えた位置に第1ビードワイヤー25を配置して、第1ベース補強コード24で内面ゴム管23の外側を覆う。
【0055】
次に、第1ベース補強コード24の外側に補強ワイヤー26を螺旋状に巻回し、第2環状リブ22Bを乗り越えた位置に第2ビードワイヤー28を配置して、第2ベース補強コード27で第1ベース補強コード24の外側を覆う。その外側を、中間ゴム層29で覆う。そして、第1次加硫処理を行い、ベースホース21を製造する。
【0056】
次に、ベースホース21の外側に、帯状スポンジシート32を螺旋状に隙間なく巻回して1層を構成する。このとき、帯状スポンジシート32の一方の測端面32Aには、水溶性接着剤を塗布しておき、螺旋状に隙間なく巻回しながら、測端面32Aと測端面32Bとを貼り付けていく。1層を巻き終えたら、その層の外側を未加硫の生ゴムシートで覆う。そして、2層目、3層目も同様にして帯状スポンジシート32、生ゴムシートを積層させて、浮揚層30を形成する。
【0057】
次に、浮揚層30の外側を外側補強コード40で覆い、外側補強コード40の外側を外面ゴム層42で覆う。そして、第2加硫処理を行う。第2加硫処理では、外側から径方向の内側への圧力が加えられる。このようにして、マリンホース20が製造される。
【0058】
本実施形態では、帯状スポンジシート32の測端面32Aと測端面32Bとを水溶性接着剤で接着するので、貼り直しや位置の調整を容易に行うことができる。
【0059】
なお、水溶性接着剤を塗布方法としては公知の塗布方法が利用でき、例えばスプレーガンを利用した吹きつけ塗布やディッピング塗布などが利用できる。なお、水溶性接着剤は、帯状スポンジシート表面に離散的、部分的に塗布してもよいが、通常は全面に均一に塗布することが好ましい。
【0060】
また、水溶性接着剤の塗布量としては、乾燥重量換算で5〜100g/mの範囲内であることが好ましく、10〜40g/mの範囲内であることがより好ましい。乾燥重量換算の塗布量が5g/m未満では帯状スポンジシート間の接着性が不十分となる場合があり、100g/m以上では、優れた作業性を確保するために必要な微粘着状態を長期に渡って維持できなくなる場合がある。
なお、浮揚層形成工程時における水溶性接着剤の塗布量(乾燥重量換算)は、作製された浮揚性ホースにおいては帯状スポンジシート同士を貼り合わせた界面に固形化した状態で存在する水溶性接着剤の存在量として把握することができる。
【0061】
なお、本発明に用いられる水溶性接着剤としては、ゴムや樹脂材料の接着に適した公知の水溶性接着剤であれば特に限定されるものではないが、微粘着状態の確保が容易である観点からは、天然ゴムのメチルメタアクリレート重合体を用いることが特に好ましい。
【0062】
また、水溶性接着剤として、主成分が天然ゴムや合成ゴムなどのゴム系のものを用いることにより、貼り合わせた継ぎ目から水溶性接着剤がはみ出しても、加硫処理により生ゴムシートと融着され、層間に隙間ができてしまうことを防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では、帯状スポンジシート32として天然ゴムの発泡体を用いたので、加硫処理により帯状スポンジシート32とゴムシートとが確実に接着され、帯状スポンジシート32とゴムシート層33との間に接着剤を必要としない。帯状スポンジシート32をポリエチレンの発泡体で構成する場合には、帯状スポンジシート32とゴムシートとの接着を水溶性接着剤を用いて行う。
【0064】
また、本実施形態では、帯状スポンジシート32を螺旋状に巻き回して浮揚層30を構成したが、帯状スポンジシート32は、図5に示すように、ベースホース21のホース軸Mと帯状スポンジシート32の長手方向が一致するように、帯状スポンジシート32を配置してもよい。この場合には、帯状スポンジシート32の測端面同士の継ぎ目は、軸方向Mに構成され、図6に示すように、周方向の継ぎ目は、帯状スポンジシート32の長さ毎に構成されることになる。このように帯状スポンジシート32を配置することにより、マリンホース20が屈曲された際に、帯状スポンジシート32同士のジョイント部への応力集中を低減させることができる。
【実施例】
【0065】
−水溶性着色剤−
・天然ゴムラテックス(メチルメタアクレートグラフト重合体):約37.6重量%
・ロジンエステルエマルジョン:約10.0重量%
・水:約10.0重量%
・界面活性剤:約0.3重量%
・アンモニア:約0.4重量%
・カーボンブラック:約0.5重量%
・タンパク質他:約1.2重量%
<浮揚層の形成>
(実施例1)
表面が天然ゴムからなるベースホース(直径400mm)に、帯状スポンジシートとして幅500mm、厚み30mmのポリエチレンスポンジ(密度0.03g/cm)をスパイラル状に巻回させつつ3層積層させて貼り合わせ、浮揚層を形成した。なお、貼り合せに際しては、予め水溶性接着剤を帯状スポンジシート表面に50g/cmとなるようにスプレーガンで塗布しておいた。
<結果>
自然加硫が十分に進行するまで約72時間放置した後の浮揚層が形成されたホースについて、ベースホース上に積層された帯状スポンジシートの引きはがしテストを手作業により行い評価した結果、すべてのスポンジの材質破壊があった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態のマリンホースの一部断面図である。
【図2】本実施形態のマリンホースの、(A)は帯状スポンジシートをベースホースへ巻き付けている状態を示し、(B)は帯状スポンジシートの測端面同士の接合部を示す図である。
【図3】本実施形態の帯状スポンジシートの測端面の接合状態を示す斜視図である。
【図4】本実施形態のマリンホースの帯状スポンジシートの一部(巻き付け前)を示す図である。
【図5】本実施形態のマリンホースの帯状スポンジシートの巻き付け変形例を示す図である。
【図6】帯状スポンジシートを図5の巻き付け方で巻き付けて形成されたマリンホースの一部断面図である。
【図7】タンカーからの原油の輸送に使用される浮揚性ホースを示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
20 マリンホース
21 ベースホース
30 浮揚層
32 帯状スポンジシート
32A 側端面
32B 側端面
33 ゴムシート層
42 外面ゴム層
M ホース軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性接着剤により帯状スポンジシートを貼り合わせてなる浮揚層を少なくとも有することを特徴とする浮揚性ホース。
【請求項2】
帯状スポンジシートが、ポリエチレンスポンジ及び天然ゴムスポンジから選択される少なくとも1種のスポンジを含むことを特徴とする請求項1に記載の浮揚性ホース。
【請求項3】
前記帯状スポンジシートを貼り合わせた界面に固形化した状態で存在する前記水溶性接着剤の単位面積当たりの存在量が、5〜100g/mの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の浮揚性ホース。
【請求項4】
前記帯状スポンジシートを貼り合わせた界面に固形化した状態で存在する前記水溶性接着剤が天然ゴムのメチルメタアクレレートグラフト重合体を含む水溶性接着剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の浮揚性ホース。
【請求項5】
水溶性接着剤により帯状スポンジシートを貼り合わせることにより浮揚層を形成する浮揚層形成工程を少なくとも経て作製されることを特徴とする浮揚性ホースの製造方法。
【請求項6】
前記帯状スポンジシートが、ポリエチレンスポンジ及び天然ゴムスポンジから選択される少なくとも1種のスポンジを含むことを特徴とする請求項5に記載の浮揚性ホースの製造方法。
【請求項7】
前記浮揚層形成工程が、帯状スポンジシートの一方の接着面に前記水溶性接着剤を乾燥重量換算で5〜100g/mの範囲内で塗布した後、前記水溶性接着剤が塗布された接着面に他の帯状スポンジシートを貼り合せることにより実施されることを特徴とする請求項5または6に記載の浮揚性ホースの製造方法。
【請求項8】
前記水溶性接着剤が天然ゴムのメチルメタアクレレートグラフト重合体を含む水溶性接着剤であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載の浮揚性ホースの製造方法。
【請求項9】
ベースホースと、
前記ベースホースの外側に複数層に積層された帯状スポンジシートと、
前記複数層の帯状スポンジシートの各層間に設けられたゴムシート層と、
を備え、
前記帯状スポンジシートの貼り合わせに水溶性接着剤を用いたこと、を特徴とする浮揚性ホース。
【請求項10】
前記帯状スポンジシートは、側端面が接着し合うように隙間なく螺旋状に巻回されていること、を特徴とする請求項9に記載の浮揚性ホース。
【請求項11】
前記帯状スポンジシートは、前記ベースホースの軸方向と前記帯状スポンジシートの長手方向とが一致するように配置され、前記帯状スポンジシートの側端面同士が互いに突き合わされて接着されていること、を特徴とする請求項9に記載の浮揚性ホース。
【請求項12】
前記帯状スポンジシートが天然ゴムスポンジで構成され、前記ゴムシート層と前記帯状スポンジ層との間には、接着剤が介在されていないこと、を特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の浮揚性ホース。
【請求項13】
前記帯状スポンジシートがポリエチレンスポンジで構成され、前記ゴムシート層と前記帯状スポンジ層との間に、接着剤が介在されていること、を特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の浮揚性ホース。
【請求項14】
前記帯状スポンジシートは長手方向に複数のスポンジシートが継ぎ合わされて構成され、前記複数のスポンジシートの突き合わせジョイント部が前記水溶性接着剤により接合されていること、を特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の浮揚性ホース。
【請求項15】
ベースホースの外側に帯状スポンジシートを水溶性接着剤を用いて貼り合わせると共に、前記帯状スポンジシートの外側を未加硫ゴムシートで覆って浮揚層を形成し、
前記浮揚層の外側に外側ゴム層を形成し、
その後加硫処理を行う、浮揚性ホースの製造方法。
【請求項16】
前記帯状スポンジシートが天然ゴムスポンジで構成されていること、を特徴とする請求項15に記載の浮揚性ホースの製造方法。
【請求項17】
前記帯状スポンジシートは長手方向に複数のスポンジシートを継ぎ合わせて構成し、前記複数のスポンジシートの突き合わせジョイント部を前記水溶性接着剤により接合すること、を特徴とする請求項15または請求項16に記載の浮揚性ホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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