説明

浮遊性光触媒及びそれを用いた汚染水処理方法

【課題】本発明は、長期間の使用によっても光触媒作用を低下させることなく、しかも使用後において回収可能な汚染水処理用光触媒、及び汚染水処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するため、本発明は、汚染物質に光触媒作用を及ぼす光触媒粒子を少なくとも一部に含むコア部と、上記コア部を中空層を形成する空間を介して覆うように形成され、上記コア部に含まれる光触媒を励起する光を透過可能であって、さらに多孔質の細孔を少なくとも一部に有し当該多孔質の細孔を介して上記汚染物質が通過可能な透光性多孔質シェル層と、上記透光性透光性多孔質シェル層の表面の全部又は一部に疎水基が形成され、当該汚染水処理用光触媒に浮遊能とともに、非凝集能を付与して汚染水の表面付近にて単粒子膜または擬似単粒子膜を形成可能とする疎水部と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒作用により汚染水を酸化分解可能な光触媒、及びそれを用いることにより汚染水を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活排水や産業廃水などによる水質汚染、特に現在行われている活性汚泥法などの水処理法では処理が難しい有機塩素系の溶剤やゴルフ場の農薬などによる水源の汚染なども広範囲に進んでおり、環境の汚染が重大な社会問題となっている。
【0003】
また、ビル、マンション・アパート、病院などの建物では、いったん受水槽に水道水を受けて屋上のタンク(高置水槽)から各階に給水する方式があるが、このように水槽に貯めて給水する場合、藻類・細菌類・ウィルスの繁殖、ハトなどの動物やこれらの糞尿などの混入などが避けられないため、安全で衛生的な飲料水を確保するには、頻繁に清掃・メンテナンスを行う必要がある。
【0004】
そのため、光触媒に光照射することによる酸化作用、即ち光触媒作用を用いることによって、水中に溶解している有機溶剤や農薬、界面活性剤などの環境汚染物質や空気中の有害物質、水中や大気中の有害な細菌・ウィルス等の分解除去を行うことが試みられている。この光触媒による方法は、微生物を用いる生物処理などの方法に比べて、温度、pH、ガス雰囲気、毒性などの反応条件の制約が少なく、しかも生物処理法では処理しにくい有機ハロゲン化合物や有機リン化合物のようなものでも分解・除去できる。しかし、これまで行われてきた光触媒による有機物の分解除去の研究では、光触媒として半導体粉末がおもに用いられていた。そのため、処理物と光触媒との分離や回収が困難で、連続的に水処理ができないなどの問題があった。
【0005】
また、光触媒粒子は表面水酸基が存在することにより水中に均一に分散されるため、透明でない濁った汚染水を処理する場合、汚染水表面から深い場所に位置する光触媒には外部からの光が届かず、非常に分解効率の悪い状況にある。
【0006】
さらに、光触媒反応による有機物の分解除去には酸素が必要であるが、このような光触媒粉末を水中に懸濁させるシステムでは、水に溶解した酸素(溶存酸素)しか利用できないため、酸素供給が不足するような状況では、有機物を完全に分解除去することが難しくなる。とくに、有機塩素系の有機物の分解では、ホスゲン等のかえって毒性の高い有機物を発生させる場合がある。
【0007】
分離や回収、大気(酸素)との接触(酸素の効率よい供給)を実現させる手段として、浮遊性を有するセラミックボールに光触媒をコートしたものが提案され、汚染水表面付近で光触媒反応を起こしそれにより水処理を行うことが試みられている(特許文献1)。しかしながら、このようなセラミックボールに光触媒をコートした装置では、セラミックボールを別途作製しなければならずコスト高となってしまう。また、このような装置では、セラミックボール表面にある光触媒粒子の一部が大気に完全露出し汚染水表面付近に配置できず、汚染水の分解反応を進行させることができないうえ、これらの光触媒粒子によって光が吸収・遮断され、実際に光触媒反応にかかわっている汚染水表面付近の光触媒粒子に十分に光が届かなくなるため、高い光触媒活性は期待できない。そのため、光触媒粒子の外表面を疎水性の有機物で直接修飾し当該光触媒粒子に浮遊性を持たせ、低コストで、光触媒粒子を汚染水表面付近に集中的に存在させる試みがなされている。
【特許文献1】特開2006−188030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光触媒粒子表面に疎水基を設けることにより、当該光触媒粒子を実際に反応がおこる汚染水表面付近に集中して存在させることができ、光触媒反応の初期段階においては光触媒による汚染物質の酸化分解反応を進行させることができる。しかしながら、長期間光照射を行うことにより光触媒に浮遊性を与えていた疎水基が光触媒作用により切断され、時間の経過と共に次第に濁った汚染水の中に沈降してしまう。こうなると、粉末を懸濁させた場合と同じく、分離、回収の困難さや外部からの光が光触媒に届かなくなるなどの問題によって、光触媒による分解効率が次第に低下する。
【0009】
さらに、光触媒表面に疎水基層が直接付着されることによって、光触媒の活性サイト、即ち汚染物質に上記光触媒作用を効果的に及ぼしうる部位が疎水基層により直接被覆されて、汚染水分解能力が低下してしまうという問題を有していた。
【0010】
本発明は、叙上に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、長期間の使用によっても光触媒作用を低下させることなく、しかも使用後において処理物との分離が可能な汚染水処理用光触媒、及び汚染水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、光触媒を含むコア部と、このコア部を覆うように形成された透光性多孔質シェル層とを有する光触媒において、コア部と透光性多孔質シェル層との間に中空層を設けることにより、光触媒の活性サイトが殆ど減少せず、光触媒機能が低下しないこと、また、コア部を透光性多孔質シェル層により覆い、当該透光性多孔質シェル層の表面を疎水基で修飾することにより、光触媒を含有するコア部が、浮遊性を与えるために設けられた疎水基層に直接接触することがないため、この疎水基が光触媒作用により切断されにくく、時間の経過により光触媒が濁った汚染水中に沈降して分解効率が低下するということが防止できること、さらに、疎水基からなる疎水部を設けることにより、光触媒は汚染水の表面付近に集まり、光触媒が外部から受ける光量が増加するうえ、大気中の酸素を有効に利用できるため、汚染物質の光触媒酸化分解効率が向上するとともに、限られた一定の場所に集中して存在するため光触媒の処理物との分離が容易となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
従って、本発明は、被触媒物質、特に汚染水に含まれる汚染物質を光触媒作用により分解可能な浮遊性光触媒であって、
上記被触媒物質に光触媒作用を及ぼす光触媒粒子を少なくとも一部に含むコア部と、
上記コア部を中空層を形成する空間を介して覆うように形成され、上記コア部に含まれる光触媒粒子を励起する光を透過可能であって、さらに多孔質の細孔を少なくとも一部に有し当該多孔質の細孔を介して上記被触媒物質を通過可能とする透光性多孔質シェル層と、
上記透光性多孔質シェル層の表面の全部又は一部に疎水基が形成されてなる疎水部と、
を備えることを特徴とする浮遊性光触媒にある。当該浮遊性光触媒は、汚染物質を含む汚染水を処理するために使用される汚染水処理用光触媒として特に有用である。ここで、汚染物質とは、混入する事などによって汚染を引き起こす物質をいい、動植物にとって有害であるか無害であるかを問わない。また、汚染水とは、このような物質を含む水をいう。
【0013】
また、本発明は、汚染物質に光触媒作用を及ぼす光触媒粒子を少なくとも一部に含むコア部と、上記コア部を中空層を形成する空間を介して覆うように形成され、上記コア部に含まれる光触媒粒子を励起する光を透過可能であって、さらに多孔質の細孔を少なくとも一部に有し当該多孔質の細孔を介して上記汚染物質を通過可能とする透光性多孔質シェル層と、上記透光性多孔質シェル層の表面の全部又は一部に疎水基が形成され、当該汚染水処理用光触媒に浮遊能を付与する疎水部と、を備える浮遊性汚染水処理用光触媒を散布して汚染水表面上に拡散させる工程と、
上記汚染水表面上に浮遊する汚染水処理用光触媒に太陽光等の励起光を照射して、汚染水に含まれる汚染物質を酸化分解反応により分解する工程と、からなることを特徴とする汚染水処理方法にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る浮遊性汚染水処理用光触媒によれば、光触媒を含むコア部と、このコア部を覆うように形成された透光性多孔質シェル層とを有する光触媒において、コア部と透光性多孔質シェル層との間に中空層を設けることにより、光触媒の活性サイトが殆ど減少しないため、光触媒機能が低下せず、酸化分解反応を良好に行うことができる。また、コア部を中空層を介して覆った透光性多孔質シェル層の表面を疎水基で被覆することにより、光触媒を含有するコア部が、浮遊性を与えるために設けられた疎水部に直接接触することがないため、これに含まれる疎水基が光触媒作用による切断を受けにくく、光触媒の浮遊性を保つことができ時間の経過により分解効率が低下することがない。さらに、汚染水処理用光触媒が、疎水基を含んで成る疎水部を備えることにより、当該汚染水処理用光触媒は、浮遊能とともに、非凝集能を得ることができ、汚染水の表面付近にて単粒子膜または擬似単粒子膜を形成することができる。当該光触媒は汚染水の表面付近に集中して存在するため、光触媒が外部から受ける光量が増加するうえ、大気中の酸素を有効に利用できるため、汚染物質の光触媒酸化分解効率が向上する。さらに、当該光触媒は、限られた一定の場所に集中して存在するため光触媒の回収が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態の汚染水処理用光触媒に関して詳細に説明する。しかしながら、以下に示す実施の形態は本発明を例示するものであって、これらに限定されるものではない。また、本明細書において、全図面を通して同一部材については同一の参照番号を付している。
【0016】
図1及び2に示すように、本発明に係る汚染水処理用光触媒は、汚染物質に光触媒作用を及ぼす光触媒粒子を少なくとも一部に含むコア部1と、上記コア部1を中空層2を形成する空間を介して覆うように形成され、上記コア部1に含まれる光触媒を励起する光を透過可能であって、さらに多孔質の細孔を少なくとも一部に有し当該多孔質の細孔を介して上記汚染物質が通過可能な透光性多孔質シェル層3と、上記透光性多孔質シェル層3の表面の全部又は一部に疎水基が形成され、当該汚染水処理用光触媒に浮遊能とともに、非凝集能を付与して汚染水の表面付近にて単粒子膜または擬似単粒子膜を形成可能とする疎水部4と、を備える。
【0017】
透光性多孔質シェル層3は多孔質組織を有し、当該多孔質組織は汚染物質を通過させることができる平均細孔径を有することが好ましい。具体的には、当該平均細孔径は、0.1nm〜100nmであることが好ましい。このような平均細孔径を有することにより、光触媒作用を受ける汚染物質等が当該多孔質組織の細孔から透光性多孔質シェル層3内に滲入することができる。そして、当該透光性多孔質シェル層3は、光触媒粒子を励起可能な光を透過することができるため、当該光がシェル層3の外部から照射されると、透光性多孔質シェル層3の内側に包含されるコア部1内の光触媒粒子が励起される。汚染物質等が透光性多孔質シェル層3を通過してコア部1内の光触媒粒子に接触した状態で、当該光触媒粒子が紫外光を含む光を受けると、光触媒粒子が光励起され電子と正孔を生成し、これらによって、光触媒粒子表面の汚染物質等が酸化分解される。
【0018】
また、透光性多孔質シェル層3の外表面に疎水基を含む疎水部が形成されているため、当該汚染水処理用光触媒は、汚染水表面付近に浮遊可能であり、そのため当該光触媒が汚染水の外部から受ける光の量が増加し、酸化分解反応に必要な大気中の酸素を有効に利用できるため、光触媒反応の効率も向上する。ここで、汚染水表面付近とは、汚染水が外気と接触する部分だけを意味するものではなく、当該表面からある一定の深さを有する範囲をいうものとする。また、汚染水とは、有害無害に拘わらず、病原菌、雑菌を含んだ水、糞尿、生活排水、産業廃水等をいうものとし、有機系物質だけに限らず無機系物質を含んだものでも汚染水というものとする。
【0019】
さらに、単粒子膜とは、1つの透光性多孔質シェル層3に1つ又は複数のコア部が含まれたものを1粒子として、複数の粒子により実質的に一層の膜が形成されたものをいうものとする。また、疑似単粒子膜とは、単粒子膜の一部に複数の層の部分が形成された膜をいうものとする。
【0020】
また、浮遊可能とは、透光性多孔質シェル層3の外周に形成された疎水部と、透光性多孔質シェル層3の自重との兼ね合いにより、透光性多孔質シェル層3が汚染水表面付近に浮遊することができることを意味する。疎水基の長さ、種類、分岐等により疎水基の疎水性が変化するが、当該パラメータを自在に調整することにより、汚染水処理用光触媒を浮遊可能とすることができる。
【0021】
以下に、本発明に係る汚染水処理用光触媒を構成する各要素に関して具体的に説明する。
【0022】
〈コア部〉
コア部1は、透光性多孔質シェル層3の内側に中空層を介して配置され、コア部1の少なくとも一部に光触媒粒子を含むか、若しくはコア部1の全体が光触媒粒子からなり、それにより外部から照射された光の力を借りて汚染水内にて汚染物質を酸化反応により分解することができる。
【0023】
コア部1は、光触媒粒子を一部に含んでいればよく、例えば、コア部1の表層部分だけに光触媒粒子を含んでいて、コア部1の中心付近には含んでいない形態のものでも良い。しかし、製造上の観点から、また光触媒作用を良好に発揮しうるという観点からコア部1の全体が、光触媒粒子から構成されていることが好ましい。
【0024】
ここで、コア部1は、透光性多孔質シェル層3内に一つだけ存在してもよいし、複数存在しても良いが、できるだけ少ない数のコア部が含まれていることが好ましい。当該透光性多孔質シェル層3内に無数のコア部が含まれていると、酸化分解反応が進行する活性サイトが減少するため、光触媒活性が低下してしまうからである。
【0025】
また、コア部1は中空状であっても良い。さらに、コア部1は、少なくとも一部に多孔質組織を有し、その多孔質組織の微細孔に微小な光触媒粒子が分散された形態であっても良い。コア部1が多孔質組織を有していると、光が照射されていない間に汚染物質等をこの多孔質組織に吸着し、その後光が照射された時に、多孔質組織に吸着されている汚染物質を分解することができるため好ましい。
【0026】
コア部1の形状は、光触媒機能を良好に発揮しうる限り、如何なる形状であっても良いが、製造上の観点から、略球形状であることが好ましい。コア部1が略球形である場合、その直径は1nm〜100μmの範囲にあることが好ましく、5nm〜10μmの範囲にあることがより好ましく、10nm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0027】
〈光触媒〉
光触媒は、汚染物質を酸化反応により分解するためのものである。この光触媒は、主にコア部1内に含まれていることが必要であるが、透光性多孔質シェル層3を修飾する疎水基を切断しない限り透光性多孔質シェル層3に含まれていても良い。光触媒として作用する物質は如何なるものであっても良い。上記光触媒の具体例としては、酸化チタン、バナジン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化タンタル、アルカリ金属チタン酸塩、アルカリ金属ニオブ酸塩が挙げられる。光触媒は、上記物質のうち2種以上を含有していても良い。
【0028】
光触媒としては、光触媒作用・効率の観点から、酸化チタンを用いることが好ましい。ここで、光触媒として酸化チタンを用いる場合、酸化チタンは、ブルッカイト型、ルチル型、アナターゼ型のいずれのタイプのものであっても、また、これらが混合しているものでもよい。
【0029】
〈透光性多孔質シェル層〉
透光性多孔質シェル層3は、光触媒粒子を含むコア部1を中空層を形成する空間を介して覆っており、これにより、光触媒粒子を含むコア部1の凝集を防止することができる。
【0030】
透光性多孔質シェル層3は中空状であって、透光性多孔質シェル層3の少なくとも一部に多孔質構造を含み、この多孔質構造は、少なくとも一部に、透光性多孔質シェル層3外から中空層2まで連通する微細孔を含んでいることが必要である。当該微細孔を介して汚染物質が透光性多孔質シェル層3内に滲入することが必要であるからである。
【0031】
ここで、透光性多孔質シェル層3の形状は、球状に限定されず、上記と同様の効果を奏する限り如何なる形状であっても良い。しかし、製造の観点からすると、当該形状は略球形であることが好ましい。
【0032】
また、透光性多孔質シェル層3の直径は、10nm〜500μmであることが好ましい。光触媒の回収等、取り扱いのし易さ等のためである。
【0033】
さらに、透光性多孔質シェル層3の気孔率及び微細孔の径は、透光性多孔質シェル層3外からその内部へ汚染物質等を通過させ、かつ、コア部1が透光性多孔質シェル層3から流出しなければ如何なる範囲にあってもよい。透光性多孔質シェル層3の気孔率としては、10vol%〜90vol%であることが好ましく、20vol%〜80vol%であることがより好ましく、30vol%〜70vol%であることがさらに好ましい。このような範囲の気孔率を有することにより、透光性多孔質シェル層3の外側からその内側へ汚染物質等を通過させることができ、コア部1が透光性多孔質シェル層3から流出しないため好ましい。
また、透光性多孔質シェル層3の多孔質構造の微細孔径としては、0.1nm〜100nmであることが好ましく、0.1nm〜50nmであることがより好ましく、0.1nm〜10nmであることがさらに好ましい。このような範囲の微細孔径を有することにより、当該微細孔からコア部1が流出せず、かつ汚染物質が当該微細孔を通過することができるため好ましい。
【0034】
透光性多孔質シェル層3の厚さは、上記同様、透光性多孔質シェル層3の外部から汚染物質等を通過させ、また、紫外光をコア部1まで到達させ、しかも透光性多孔質シェル層3自体が耐久性を有する限り如何なる厚さであっても良い。上記条件を考慮すると、透光性多孔質シェル層3の厚さは、10nm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
【0035】
透光性多孔質シェル層3は、多孔質組織を形成可能であれば、如何なる原料を使用しても良い。多孔質組織を良好に形成することができるものとして、金属アルコキシド、金属アセチルアセテート、金属硝酸塩、若しくは金属塩酸塩が挙げられる。
【0036】
好ましい金属アルコキシドの具体例としては、シリコンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、マグネシウムアルコキシド、ランタンアルコキシド、セリウムアルコキシドが挙げられる。また、好ましい金属アセチルアセテートの具体例としては、ジルコニウムアセチルアセテート、マグネシウムアセチルアセテート、及びセリウムアセチルアセテートが挙げられる。さらに、好ましい金属硝酸塩の具体例としては、硝酸ランタン、及び硝酸セリウムが挙げられ、好ましい金属塩酸塩の具体例としては、塩化ジルコニウム、塩化マグネシウム、及び塩化セリウムが挙げられる。
【0037】
また、透光性多孔質シェル層3は、一層からなる層により構成され、この層が、異なる2以上の材料により形成されていてもよい。また、透光性多孔質シェル層3が二層以上から構成され、それぞれの層が、一種の材料により形成されていても良いし、又は二以上の異なる材料により形成されていても良い。
【0038】
〈疎水部〉
疎水部4は、多数の疎水基を含んでなり、透光性多孔質シェル層3の表面に形成される。この疎水基により、汚染水処理用光触媒に浮遊能とともに、非凝集能が付与される。ここで、浮遊能とは、汚染水処理用光触媒が汚染水表面付近に浮遊することができる能力若しくは性能を意味する。また、非凝集能とは、汚染水処理用光触媒が凝集することを防止する能力又は性能を意味する。この浮遊能及び非凝集能により、当該光触媒は、凝集することなく、単粒子膜または疑似単粒子膜を形成するように汚染水の表面付近に薄く広がる。そのため、本発明の汚染水処理用光触媒は、汚染水分解に必要な光触媒の量を低減することができる。
【0039】
〈中空層〉
中空層2は、コア部1とこのコア部1を覆うように形成された透光性多孔質シェル層3との間に形成された空間をいい、この中空層2が、コア部1とこのコア部1を覆うように形成された透光性多孔質シェル層3との間に介在することにより、コア部1に含まれる光触媒の活性サイトが透光性多孔質シェル層3に直接被覆されず、そのため当該光触媒の活性サイトが減少せず、コア部1に含まれる光触媒粒子の光触媒活性を高く維持することができる。
中空層2の厚さは、透光性多孔質シェル層3の重心とコア部1の重心とを一致させ、透光性多孔質シェル層3の内表面とコア部1の外表面との距離が最も小さくなるように配置した場合における、透光性多孔質シェル層3の内表面とコア部1の外表面との間の最小距離として定義する。中空層2の厚さは1nm〜100nmの範囲にあることが好ましい。中空層2の厚さがこのような範囲にあれば、光触媒粒子の活性サイトを減少させず、また透光性多孔質シェル層3の物理的強度も維持することができる。
【0040】
〈浮遊性汚染水処理用光触媒の製造方法〉
以下に、図3を参照しながら、本発明に係る浮遊性汚染水処理用光触媒の製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0041】
1)コア部1の準備
まず、光触媒粒子を含むコア部1を準備する(図3(a))。ゼオライト等に微細なナノスケールの光触媒粒子を含有させて、コア部1としてもよいし、酸化チタン等光触媒粒子をコア部1としてもよい。しかしながら、製造上の観点から、一般に使用されている光触媒粒子をコア部とすることが好ましい。必要に応じて、これらコア部1の表面をアミノプロピルトリメトキシシラン(APS)等のアミノ基を含むシランカップリング剤で修飾することが好ましい。この処理により、下記炭素含有層をコア部の表面により選択的に形成させることができる。
【0042】
2)炭素含有層2'の形成
続いて、図3(b)に示すように、上述のように表面処理されたコア部1を、炭素含有の有機物の溶液、例えばグルコース溶液中で水熱処理し、コア部1の表面上に炭素含有層2'を形成する。また、1)においてコア部1をアミノ基で修飾した場合、得られた粉末を10%フッ化水素酸溶液に浸漬して光触媒表面のアミノ基を除去することが必要である。
【0043】
3)透光性多孔質シェル層3の形成
図3(c)に示すように、炭素含有層2'により被覆されたコア部1を、多孔質を形成しうる物質(例えば金属アルコキシド)中に浸漬することにより、炭素含有層2'の表面上に、透光性多孔質シェル層3を形成する。ここで、セラミックスの前駆物質である金属アルコキシドを加水分解・脱水縮合させることにより、透光性多孔質シェル層3を形成する。具体的には、炭素含有層2'に被覆されたコア部1を、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)等のシリコンアルコキシドを含む溶液中に懸濁させて、これらシリコンアルコキシドを加水分解および脱水縮合反応をさせることにより、炭素含有層2'の表面を、SiO層で被覆する。
シリコンアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラブトキシシラン(TBOS)等が挙げられる。また、有機官能基を含むシリコンアルコキシドをこれらの代わりに、あるいはこれらと合わせて用いると、多孔質SiOからなる多孔質カプセルの細孔径を大きくすることも可能である。有機官能基を含むシリコンアルコキシドの代表例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、オクタデシルチル基、フェニル基、アミノ基、ヒドロキシル基、フルオロ基、チオール基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0044】
また、このシェル層3の形成において、炭素含有層2'により被覆されたコア部1を、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン(AEAP)等であらかじめ処理すると、シェル層3がより良好に作製できる。AEAPにより、炭素の表面にアミノ基を介して水酸基が立ち、これにより後続するTEOS等のアルコキシシランの加水分解反応と縮合反応が炭素表面で選択的に起こり、良好に被覆されると考えられる。
【0045】
4)炭素含有層2'の除去
続いて、図3(d)に示すように、SiO層が形成されたコア部1を加熱することにより、透光性多孔質シェル層3とコア部1との間に形成された炭素含有層2'を除去し、除去された部分を中空層2とする。この段階でSiO層は多孔質の細孔となっていると考えられる。
【0046】
5)疎水部4の形成
図3(e)に示すように、透光性多孔質シェル層3が中空層2を介してコア部1を覆うように形成された試料に対して、オクタデシルトリエトキシシラン等の疎水性官能基をもつアルコキシシランを溶剤に溶かしたものを加えこれを振とうさせ、さらに、トリエチルアミン等の反応促進剤(触媒)を混合し振とうさせることにより、透光性多孔質シェル層3の表面上に疎水部4を形成する。
疎水性物質としては、R−Si−(OR4−X(X=0〜3)で示されるトリアルコキシシラン、若しくはR−Si−Cl4−X(X=0〜3)トリクロロキシシランが挙げられる。
又はRは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、アラルキル基、アリール基、アシル基、アリールスルホニル基、またはアルキルスルホニル基等が挙げられ、これらの官能基中の水素の一部ないし全部がフッ素で置換されていてもよい。アルキル基は、直鎖状であってもまたは分岐状であっても良く、またアルキル基の末端や中間に他の官能基等を含むものでも良い。直鎖状または分岐状のアルキル基の代表例として、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、オクタデシル基、エチルヘキシル基、ヘプチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ドコシル基等が挙げられ、含まれる官能基の代表例として、フェニル基、フルオロ基等が挙げられる。光触媒の浮遊性を考慮すると炭素数がより多いアルキル基を選択することが好ましく、またフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基を選択することが好ましい。
疎水性物質をさらに具体的に示すと、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシランが挙げられる。
上記疎水性物質(例えば、R−Si−(OR)は、図4に示すように透光性多孔質シェル層3の外表面に存在する水酸基と疎水性物質のアルコキシル基(OR)との縮合反応により透光性多孔質シェル層3に結合する。疎水性物質のアルコキシル基のうち2若しくは3のアルコキシル基が上記水酸基とそれぞれ結合してもよい。また、疎水性物質としては、R−Si−(OR4−X(X=0〜3)で示されるトリアルコキシシラン、若しくはR−Si−Cl4−X(X=0〜3)トリクロロキシシランが挙げられる。
【0047】
6)安定化処理
その後、必要に応じて90℃程度での熱水処理を行う。こうすることで、疎水性物質のアルコキシル基のうち未反応の部分あるいは加水分解して水酸基となった部分での縮合反応が進み、疎水部4とシェル層3との結合が強固になり安定化される。また、粒子全体の疎水性も向上する。これを遠心分離して上澄みを除去し、これを減圧乾燥させる。
【0048】
上述の製造方法においては、中空層2を形成するために、炭素含有層を用いているが、炭素含有層の代わりにポリマー層を用いても良い。また、炭素含有層は、炭素だけからなる層であっても良い。
【0049】
本発明に係る汚染水処理用光触媒は、上述の製造方法に限定されるものではなく、如何なる方法により製造することができる。
【実施例1】
【0050】
以下、実施例1に係る光触媒に関して具体的に説明する。実施例1においては、コア部1に含まれる光触媒粒子として、酸化チタン(TiO)を使用した。
【0051】
1.炭素被覆TiOの調製
酸化チタン(日本エアロジル P−25) 0.25gを0.5Mのグルコース水溶液40mlに加え、超音波により分散させた後、水熱合成用のテフロンの容器に入れ、水熱合成装置中で、180℃で5時間水熱処理を行った。その後、吸引濾過により光触媒を回収し、エタノール、純水で洗浄した後、120℃3時間真空乾燥して、炭素被覆TiO(以下、c/TiOと称する。ここで、c/とは、炭素で被覆していることを意味している。)を作製した。
【0052】
2.c/TiOをシリカで被覆したSiO/c/TiOの調製
c/TiO(0.1g)をナスフラスコに計り取り、トルエン 10ml、テトラエトキシシラン(TEOS)693mgを加え120℃で2時間還流させた。その後、濾過、エタノールおよび純水洗浄した後、120℃で3時間真空乾燥して、上記炭素の層上をシリカで被覆したTiO(SiO/c/TiOと称する。ここで、SiO/c/とは、炭素の層で被覆した後、その炭素層上にシリカの層を被覆していることを意味している。)を作製した。
【0053】
3.炭素膜を取り除いたp−si//TiOの調製
SiO/c/TiO 0.2gを空気中、500℃で3時間焼成して炭素を除去することにより、中空層を介してシリカで被覆されたTiO(p−si//TiOと称する。ここで、//はp−siとTiOとの間に中空層を形成する空間が介在することを意味する。)を得た。
【0054】
4.多孔質SiO層上を疎水基で修飾したo−p−si//TiOの調製
上記試料100mgに対して50mmoldm−3のオクタデシルトリエトキシシラン(ODTS)トルエン溶液を10cm加え、4分間振とうさせた。さらに、トリエチルアミン0.137cmを加え、12分間振とうさせた。これを遠心分離して上澄みを除去後、エタノールで3回洗浄した後、純水を30cm加えてオイルバスを用いて90℃、30分間処理した。遠心分離して、上澄みを除去した後、デシケータで減圧乾燥させ、さらに120℃、3時間減圧乾燥させ、多孔質SiO層上を疎水基で修飾したp−si//TiO(以下、o−p−si//TiOと称する。ここで、o−とは、疎水基で表面全体が修飾されていることを意味する。)を得た。
【0055】
比較例として、TiOの表面を直接多孔質SiOで被覆し、その後当該多孔質SiO層を疎水基で修飾した試料(o−p−si/TiO)と、TiOに直接疎水基を修飾させた試料(o−TiO)とを用いて、実施例1に係る試料に対する比較実験を行った。この比較実験は、当該3種類の光触媒試料を用いて酢酸の分解反応を起こした場合における、発生する二酸化炭素の量を測定することにより行った。当該酢酸の分解反応は、閉鎖型循環系を用いて行った。円筒形パイレックス製反応セル(直径7cm、容積350ml)に水150mlと、光触媒50mgを入れて、アルゴン(4kPa)下で反応セルの上面から光を照射した。光源には、500Wキセノンランプを用いた。生成した気体の同定及び定量は系に直結したガスクロマトグラフを用いた。
【0056】
図5は、A)o−p−si//TiO、B)o−p−si/TiO、C)o−A−TiOの三種類の試料を用いて酢酸を酸化分解した場合における、二酸化炭素生成反応の経時変化を示している。
【0057】
A)o−p−si//TiOでは時間の経過と共に光触媒活性が低下していないのに対し、C)o−TiOでは時間の経過とともに著しく光触媒活性が低下している。これは、光触媒粒子に直接修飾された疎水基が、光触媒作用により切断され、光触媒が光の届かない下層へ沈降した為と考えられる。また、B)o−p−si/TiOでは、光触媒粒子が直接多孔質SiO層により被覆され、光触媒の活性サイトが著しく減少しているため、初期の段階から活性が殆どない状態となっている。
【0058】
したがって、本発明に係る光触媒では、時間の経過と共に光触媒活性が低下せず汚染水の処理を良好に行うことができると考えられる。
【0059】
続いて、本発明に係る浮遊性を有するo−p−si//TiOと、光触媒の表面が疎水基で修飾されず浮遊性が与えられていないTiOとを用いて上記同様酢酸を酸化分解して、それぞれについて二酸化炭素の発生量を測定した。
【0060】
図6は、D)o−p−si//TiOと懸濁状態のE)TiOを用いた場合における、二酸化炭素生成反応の経時変化を示している。懸濁させたE)TiOの場合に比べ、本発明に係るD)o−p−si//TiOの場合においては、反応初期段階では、光触媒活性が低いが、定常活性、即ちある程度時間が経過した後の光触媒活性は、D)の場合とE)の場合とでは同程度であり、o−p−si//TiOが出発原料の酸化チタン(TiO)の光触媒活性を損なうことなく安定に浮遊する光触媒粒子であることが分かった。
【0061】
濁った汚染水中での光触媒機能を評価するため、モデル反応系として上記と同様の酢酸の酸化分解実験を墨汁を加えて黒色にした非透明性の水溶液中で行った。図7は、このときの二酸化炭素生成反応の経時変化を示している。E)TiOの懸濁系の場合では濁りがあって光触媒粒子に光が届かないため光触媒活性はそれ程上昇しないが、D)o−p−si//TiOの場合では、光触媒粒子が汚染水表面に集中して存在するため、上方から照射される光により酸化分解反応を進行させることができ、濁りによる影響を受けにくいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明に係る汚染水処理用光触媒の概略断面図を示している。
【図2】図2は、多孔質層の一部を取り除いて描写した、本発明に係る汚染水処理用光触媒の概略斜視図である。
【図3】図3は、本発明に係る汚染水処理用光触媒の製造方法を示す工程図である。
【図4】図4は、透光性多孔質シェル層に疎水部が接合される場合の概略図である。
【図5】図5は、A)o−p−si//TiO、B)o−p−si/TiO、C)o−TiOの三種類の試料を用いて酢酸を酸化分解した場合における、二酸化炭素生成反応の経時変化を示している。
【図6】図6は、透明性の水溶液中において、D)o−p−si//TiOと懸濁状態のE)TiOを用いて酢酸を酸化分解した場合における、二酸化炭素生成反応の経時変化を示している。
【図7】図7は、非透明性の水溶液(墨汁)中において、D)o−p−si//TiOとE)TiOを用いて酢酸を酸化分解した場合における、二酸化炭素生成反応の経時変化を示している。
【符号の説明】
【0063】
1 コア部
2 中空層
2' 炭素含有層
3 透光性多孔質シェル層
4 疎水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被触媒物質を光触媒作用により分解可能な浮遊性光触媒であって、
上記被触媒物質に光触媒作用を及ぼす光触媒粒子を少なくとも一部に含むコア部と、
上記コア部を中空層を形成する空間を介して覆うように形成され、上記コア部に含まれる光触媒粒子を励起する光を透過可能であって、さらに多孔質の細孔を少なくとも一部に有し当該多孔質の細孔を介して上記被触媒物質を通過可能とする透光性多孔質シェル層と、
上記透光性多孔質シェル層の表面の全部又は一部に疎水基が形成されてなる疎水部と、
を備えることを特徴とする浮遊性光触媒。
【請求項2】
上記被触媒物質が汚染物質であり、当該汚染物質を含む汚染水を処理するために使用される汚染水処理用光触媒であることを特徴とする請求項1記載の浮遊性光触媒。
【請求項3】
上記光触媒粒子が、酸化チタン、バナジン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化タンタル、アルカリ金属チタン酸塩、アルカリ金属ニオブ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1又は2記載の浮遊性光触媒。
【請求項4】
上記透光性多孔質シェル層が、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ランタン及び酸化セリウムからなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浮遊性光触媒。
【請求項5】
上記コア部が略球形であって、上記コア部の直径が1nm〜100μmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の浮遊性光触媒。
【請求項6】
上記透光性多孔質シェル層が略球形であって、その直径が10nm〜500μmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の浮遊性光触媒。
【請求項7】
上記透光性多孔質シェル層の多孔質部分の細孔径が、0.1nm〜100nmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の浮遊性光触媒。
【請求項8】
上記疎水部が、オクタデシル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、オクタデシル基、エチルヘキシル基、ヘプチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ドコシル基、フェニル基、またこれらの全部あるいは一部がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の疎水基を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の浮遊性光触媒。
【請求項9】
汚染物質に光触媒作用を及ぼす光触媒粒子を少なくとも一部に含むコア部と、
上記コア部を中空層を形成する空間を介して覆うように形成され、上記コア部に含まれる光触媒粒子を励起する光を透過可能であって、さらに多孔質の細孔を少なくとも一部に有し当該多孔質の細孔を介して上記汚染物質を通過可能とする透光性多孔質シェル層と、
上記透光性多孔質シェル層の表面の全部又は一部に疎水基が形成され、当該汚染水処理用光触媒に浮遊能を付与する疎水部と、を備える浮遊性汚染水処理用光触媒を散布して汚染水表面上に拡散させる工程と、
上記汚染水表面上に浮遊する汚染水処理用光触媒に励起光を照射して、汚染水に含まれる汚染物質を酸化分解反応により分解する工程とからなることを特徴とする汚染水処理方法。
【請求項10】
上記汚染水の表面付近にて上記浮遊性汚染水処理用光触媒の単粒子膜または疑似単粒子膜を形成させることを特徴とする請求項9記載の汚染水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−221113(P2008−221113A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62138(P2007−62138)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.パイレックス
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】