浴室カウンター内の配管構造
【課題】浴室カウンター内に配設したフレキシブル管で構成した給水管に急激な水が流れたり止められたりしても、給水管の暴れによる衝突音などの異音の発生を簡単な構造で効果的に回避できる浴室カウンター内の配管構造を提供する。
【解決手段】浴室壁６に間隔を隔てて取り付けた複数個のキャリアー２にカウンター部材３を掛け渡すように載置固定して浴室カウンター１を形成する。屈曲可能なフレキシブル管で構成された給水管４を浴室カウンター１の長手方向に向けて浴室カウンター１内に配設する。キャリアー２に略Ｕ溝状の係止溝部５を設ける。給水管４におけるキャリアー２との交差部位を給水管４を構成するフレキシブル管の弾性を利用して上記係止溝部５に圧入する。
【解決手段】浴室壁６に間隔を隔てて取り付けた複数個のキャリアー２にカウンター部材３を掛け渡すように載置固定して浴室カウンター１を形成する。屈曲可能なフレキシブル管で構成された給水管４を浴室カウンター１の長手方向に向けて浴室カウンター１内に配設する。キャリアー２に略Ｕ溝状の係止溝部５を設ける。給水管４におけるキャリアー２との交差部位を給水管４を構成するフレキシブル管の弾性を利用して上記係止溝部５に圧入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、浴室カウンター内の配管構造に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、浴室壁から前方に突出するように取り付けた複数個のキャリアーにカウンター部材を掛け渡すように載置固定することで設置して成る浴室カウンターの内部には、浴室カウンターの前面部分に設けた洗い場用カランや、浴室カウンターに隣接配置した浴槽に設けた浴槽用カランや、浴槽の槽内に設けた浴槽水吐出部などに湯水を供給するための給水管が配設される。この給水管には、施工現場でまちまちである浴室外部から内部への導入部や各カランの配設箇所などに容易に対応して接続施工できるように、しばしば屈曲可能なフレキシブル管が用いられている（たとえば特許文献１参照）。
【０００３】
しかしながら、この浴室カウンター内に配設したフレキシブル管で構成された給水管は、上記特許文献１にあるように浴槽エプロン部分で支持されるだけで浴室カウンター内では特に支持せずに比較的自由な状態に配設されることもあり、この場合、給水管に急激に水が流れたり止められたりすると、流水圧やウォーターハンマー現象などによってフレキシブル管で構成した給水管が暴れ、カウンター部材やキャリアーなどに当たったりして衝突音などの異音が発生するといった恐れがあった。
【特許文献１】特開平９−２８７１７８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて為したものであって、浴室カウンター内に配設したフレキシブル管で構成した給水管に急激な水が流れたり止められたりしても、給水管の暴れによる衝突音などの異音の発生を簡単な構造で効果的に回避できる浴室カウンター内の配管構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記課題を解決するために本発明の請求項１に係る浴室カウンター内の配管構造は、浴室壁６に間隔を隔てて取り付けた複数個のキャリアー２にカウンター部材３を掛け渡すように載置固定して浴室カウンター１を形成し、屈曲可能なフレキシブル管で構成された給水管４を浴室カウンター１の長手方向に向けて浴室カウンター１内に配設する浴室カウンター１内の配管構造であって、キャリアー２に略Ｕ溝状の係止溝部５を設け、給水管４におけるキャリアー２との交差部位を給水管４を構成するフレキシブル管の弾性を利用して上記係止溝部５に圧入したことを特徴とする。これによると、キャリアー２は浴室カウンター１を形成させるために浴室壁６の横方向に所定間隔ごとに取り付けられているのであり、これら各キャリアー２に設けた係止溝部５に給水管４を支持させたことで、浴室カウンター１の長さ方向に沿って配設した給水管４をその長さ方向の所定間隔ごとに効果的に支持することができるのであり、給水管４に流水圧やウォーターハンマー現象などの力がかかっても給水管４が暴れることなく、従来問題とされた給水管４の暴れによる衝突音などの発生を回避することができる。また、このように給水管４をその長さ方向に所定間隔ごとに支持して給水管４の暴れによる衝突音などの発生を効果的に回避するのに、給水管４を支持する他の支持部材を新たに配設する必要もなく、浴室カウンター１を形成するためのキャリアー２を利用した簡単な構造で可能にされている。つまり、浴室カウンター１内に配設したフレキシブル管で構成した給水管４に急激な水が流れたり止められたりしても、給水管４の暴れによる衝突音などの異音の発生を簡単な構造で効果的に回避できるのである。
【０００６】
また、請求項２に係る浴室カウンター内の配管構造は、請求項１において、係止溝部５の溝内面と該係止溝部５に圧入した給水管４の外面との間に緩衝材７を介装したことを特徴とする。これによると、給水管４に流水圧やウォーターハンマー現象などの力がかかっても、緩衝材７によって給水管４が係止溝部５内で暴れて給水管４の外面が係止溝部５の溝内面に当たって衝突音が発生するという事態を回避することができ、給水管４の暴れによる衝突音等の発生をより効果的に回避することができるのである。
【発明の効果】
【０００７】
本発明は、浴室カウンター内に配設したフレキシブル管で構成した給水管に急激な水が流れたり止められたりしても、給水管の暴れによる衝突音などの異音の発生を簡単な構造で効果的に回避できる、といった利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【０００９】
浴室は、図３のように、建物躯体に配設した床パン８の周縁に亘って浴室壁６を立設すると共に、浴室壁６の上部に天井（図示せず）を架設し、床パン８上の一端側に偏らせた箇所に浴槽９を配置すると共に、床パン８上の浴槽９の配置されない箇所をそのまま床パン８上面が床面となる洗い場１０として構成されている。浴槽９及び洗い場１０に隣接する浴室壁６における洗い場１０に臨む箇所には浴室カウンター１が亘るように配設されている。つまり、浴室カウンター１は浴槽９の長手方向と略直交する方向を長さ方向とするように配設されており、浴室カウンター１の長さ方向の一端は浴槽９の洗い場１０に面する側面部分に至り、他端は浴槽９に洗い場１０を介して面する浴室壁６に至るようにされている。なお、浴槽９の洗い場１０に面する側面部分には洗い場１０から立設された浴槽エプロン１１が配置され、この浴槽エプロン１１にて浴槽９の側外面が目隠しされている。
【００１０】
ここで、浴室カウンター１は、図１，２のように、浴室壁６に横方向に間隔を隔てて取り付けた複数個のキャリアー２にカウンター部材３を水平に掛け渡すように載置固定することで形成されている。キャリアー２は、側面視（図１（ａ））で略直角三角形状の金属製ブラケットであり、詳しくは、鉛直板状の壁固定部２１と、壁固定部２１の上端から前方（洗い場１０側）に延出する水平板状のカウンター部材載置部２２と、上記壁固定部２１とカウンター部材載置部２２とを連結する斜材であって壁固定部２１及びカウンター部材載置部２２の板面に直交する面板状の補強部２３とを有している。補強部２３はその下面が壁固定部２１の下端部分からカウンター部材載置部２２の前端部分に至るように傾斜辺状に形成されていて、キャリアー２に略直角三角形状の側面視形状を与えている。カウンター部材３は、略Ｌ字状断面の長尺板材であり、詳しくは、略水平な天面板部３１と、天面板部３１の前端（洗い場１０側端部）から垂下する略鉛直な前面幕板部３２とを有している。キャリアー２は、壁固定部２１を浴室壁６に沿わせてビス止めすることで浴室壁６に取り付けられるのであり、カウンター部材３は、この浴室壁６に取付けた状態の複数のキャリアー２の各カウンター部材載置部２２にカウンター部材３の天面板部３１を載置してそれぞれビス止めすることで各キャリアー２に取り付けられるのであり、これにより浴室壁６に浴室カウンター１が配設されるのである。このように浴室カウンター１は浴室壁６にキャリアー２を介していわゆる片持ち状に取り付けられるのであるが、キャリアー２は斜材である補強部２３を備えているために浴室カウンター１の耐荷重性が高められている。浴室カウンター１の下部は空所である足先挿入スペース１２が設けられており、浴室カウンター１の近傍の洗い場１０でも入浴者が支障なく洗髪等で使用可能にして浴室の使い勝手が高められている。また、本例では、キャリアー２の壁固定部２１の下端部に後フック２４が前方に突設されると共に、カウンター部材３の前面幕板部３２の下端部に前フック３３が後方（浴室壁６側）に突設されており、下面幕板材１３がその前後に設けた係止部１３ａ，１３ａをこれらフック２４，３３にそれぞれ着脱自在に係止させることで浴室カウンター１の下面を塞ぐように取り付けられていて浴室カウンター１内を目隠している。詳しくは、前フック３３は後フック２４よりも上方に位置し、各フック２４，３３に係止した下面幕板材１３は前方ほど高位置に位置するような傾斜板状に配置されており、つまり、浴室カウンター１の下部の足先挿入スペース１２は入浴者の足先を前方から挿入し易いように前方ほど開口高さが大きくなるように形成されている。
【００１１】
上記のように形成された浴室カウンター１内はカウンター部材３や下面幕板材１３で洗い場１０側から目隠しがされた空所であり、この浴室カウンター１内は浴室で使用する湯水を供給するために浴室の外部から内部に引き込まれた湯供給管４ａや水供給管４ｂなどの給水管４の配管スペースとして利用される。浴室の仕様により給水管４の配管形態は異なるものであるが、たとえば給水管４は浴室カウンター１の前面幕板部３２に設置した洗い場用カラン１４や、浴槽９の上縁部に設置した浴槽用カラン１５に至らせるように配管される（なお、図面では洗い場用カラン１４に至る給水管４は省略し、浴槽用カラン１５に至る給水管４のみを示している）。詳しくは、浴槽用カラン１５に至る給水管４は、浴室カウンター１内に臨む浴室壁６に設けた導入部１６から浴室カウンター１内に臨む浴槽エプロン１１に設けた切欠状の管挿通部１７を通して浴槽用カラン１５に至っているものであり、導入部１６から管挿通部１７に至る給水管４の部位が浴室カウンター１の内部に浴室カウンター１の長さ方向に沿って配設されている。
【００１２】
ここで、本例の給水管４には、施工現場でまちまちである浴室の外部から内部への導入部１６や各カラン１４，１５の配設箇所などに容易に対応して接続施工できるように、屈曲可能な可撓性樹脂管で構成したフレキシブル管が用いられている。このフレキシブル管にはその表面に蛇腹形状４０が施されている。従来技術の項でも述べたが、給水管４が屈曲可能なフレキシブル管で構成されると、給水管４に急激に水が流れたり止められた場合に、流水圧やウォーターハンマー現象などによって給水管４が暴れる恐れを有するが、本例では、給水管４の暴れを防止してカウンター部材３やキャリアー２などへの給水管４の衝突音などの発生を回避する浴室カウンター１内の配管構造が採用されている。
【００１３】
つまり本例の浴室カウンター１内の配管構造は、図１のように、各キャリアー２にＵ溝状の係止溝部５を設け、給水管４における各キャリアー２との交差部位を給水管４を構成するフレキシブル管の弾性を利用して上記係止溝部５に圧入させて構成されている。キャリアー２は、図２のように、浴室カウンター１を形成させるために浴室壁６の横方向に所定間隔ごとに取り付けられているのであり、これら各キャリアー２に設けた係止溝部５に給水管４を支持させたことで、浴室カウンター１の長さ方向に沿って配設した給水管４をその長さ方向の所定間隔ごとに効果的に支持することができるのであり、給水管４に流水圧やウォーターハンマー現象などの力がかかっても給水管４が暴れることなく、従来問題とされた給水管４の暴れによる衝突音などの発生が回避されているのである。更に言うと、このように給水管４をその長さ方向に所定間隔ごとに支持して給水管４の暴れによる衝突音などの発生を効果的に回避するのに、給水管４を支持する他の支持部材を新たに配設する必要もなく、浴室カウンター１を形成するためのキャリアー２を利用した簡単な構造で可能にされている点も本例の浴室カウンター１内の配管構造の大きな利点である。
【００１４】
詳しくは、係止溝部５は湯供給管用の係止溝部５ａと水供給管用の係止溝部５ｂとを有し、それぞれ補強部２３の前縁から後方に切り込むように上下に並設するように形成されており、具体的に本例では、係止溝部５は、前方ほど高位置に位置する傾斜辺状の補強部２３の下面から略直交するように導入溝部５１を切り込み、後方ほど高位置に位置する溝状の導入溝部５１の後端部に給水管４を嵌合させる円状の収納溝部５２を連通するように切り込むことで、全体が側面視で略Ｕ字形状になるように形成されている。導入溝部５１の溝幅は給水管４が嵌合する収納溝部５２の内径よりも多少短く形成されている。係止溝部５に給水管４を嵌合させる際には導入溝部５１に後方に向けて強く押し込むように圧入させて給水管４に至らせるのであるが、一旦、収納溝部５２に嵌合して収納された給水管４は収納溝部５２から導入溝部５１に外れて飛び出さないようになっており、つまり抜け止め可能とする形状に施されている。
【００１５】
また、本例では、係止溝部５の収納溝部５２には軟質ゴム製のリング状の緩衝材７が装着されており、収納溝部５２に給水管４を嵌合した際には、係止溝部５の収納溝部５２の溝内面と該係止溝部５に圧入した給水管４の外面との間に緩衝材７が介装されるようになる。このように給水管４は係止溝部５に緩衝材７を介して圧入、支持されるのであり、給水管４に流水圧やウォーターハンマー現象などの力がかかっても、給水管４が係止溝部５内で暴れて、給水管４の外面が係止溝部５の溝内面に当たって衝突音が発生するという事態が回避されているのである。この点でも給水管４の暴れによる衝突音等の発生がより効果的に回避されているのである。詳しくは、緩衝材７は半円リング形状であり、給水管４を係止溝部５の収納溝部５２にスムーズに導入できるよう、収納溝部５２の導入溝部５１からの入口を塞がないように収納溝部５２の内縁に装着されている。
【００１６】
また、各キャリアー２に形成した係止溝部５は側面視で浴槽エプロン１１に穿設した管挿通部１７に重複する位置に設けられている。各キャリアー２は浴室壁６の同高さ位置にそれぞれ取り付けられるのであり、各キャリアー２に設けた各係止溝部５も同高さ位置に配置されるから、各係止溝部５に支持された給水管４はフレキシブル管で構成されていても図２のように略水平に配管されるのであり、そのまま浴槽エプロン１１の管挿通部１７を経て浴槽用カラン１５に至るようにされている。ここで、側面視直角三角形状であるキャリアー２の補強部２３は浴室カウンター１の内部をその長手方向において分断するように位置するのであるが、本例の係止溝部５はこの補強部２３に穿設されているのであり、従来のようにキャリアー２の補強部２３を避けるようにして配管せざるを得ないという施工の制限なく、給水管４の配管施工を良好に行うことができる。ここで、キャリアー２の補強部２３を避けるようにして行う従来の給水管４の配管施工では、施工者の熟練度によりその仕上がりにばらつきが生じる。つまり、施工者の熟練度が低い場合には図４のようにキャリアー２を回避するためにフレキシブル管の給水管４を下方に屈曲させるよう配管してしまうことがある。これによると、寒冷地などでは給水管４の元栓を締めた状態にして給水管４の下端部分に設けた水抜き栓から水を抜いておくこともなされるが、上記キャリアー２を回避するために給水管４を下方に屈曲させた下方屈曲部４１がいわゆるトラップ形状になって水が抜けずに溜まった状態になり、冬季などにはこの溜まった水が凍結して給水管４の破損を招いてしまうのである。しかしながら、本例のように給水管４を各キャリアー２の係止溝部５に支持させることで、施工者の熟練度にかかわらずに、図２のようにフレキシブル管の給水管４を略水平に配管することができるのであり、上記給水管４にトラップ形状（下方屈曲部４１）を形成することで発生する残留水の冬季の凍結による配管の損傷の恐れを回避することができる、といった利点も有している。
【００１７】
上記実施形態では給水管４に可撓性樹脂管を用いているが屈曲可能な金属製管材を用いても良い。また、上記実施形態では給水管４は係止溝部５に抜け止めが施されて嵌合させているが、係止溝部５に無理嵌めするように嵌合（圧入）させてもよい。このときには給水管４の外面に施された蛇腹形状４０の山部４０ａの弾性を利用して係止溝部５に強固に嵌合させることも可能であって好ましい。つまり、係止溝部５の溝幅（内径）を給水管４の蛇腹形状４０の谷部４０ｂの外径よりも大きく山部４０ａの外径よりも小さく設定すると、係止溝部５に給水管４を挿入する際には給水管４の谷部４０ｂに係止溝部５の溝内縁を滑らすようにして挿入でき、係止溝部５に給水管４を嵌合させて支持させる際には給水管４をその長手方向にずらすことで給水管４の蛇腹形状４０の山部４０ａを係止溝部５に圧入できるのであり、給水管４の係止溝部５への支持をスムーズに且つ強固に行わせることができ、好ましいのである。また、給水管４としては浴槽９の槽内に設ける浴槽水吐水部に至る水や湯の供給管材であってもよいのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明の実施の形態の例の浴室カウンターであり、（ａ）は側断面図であり、（ｂ）は要部の正面図である。
【図２】同上の浴室カウンターの一部透視正面図である。
【図３】同上の浴室の概略斜視図である。
【図４】従来技術の問題点を説明する要部の斜視図である。
【符号の説明】
【００１９】
１ 浴室カウンター
２ キャリアー
３ カウンター部材
４ 給水管
５ 係止溝部
６ 浴室壁
７ 緩衝材
【技術分野】
【０００１】
本発明は、浴室カウンター内の配管構造に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、浴室壁から前方に突出するように取り付けた複数個のキャリアーにカウンター部材を掛け渡すように載置固定することで設置して成る浴室カウンターの内部には、浴室カウンターの前面部分に設けた洗い場用カランや、浴室カウンターに隣接配置した浴槽に設けた浴槽用カランや、浴槽の槽内に設けた浴槽水吐出部などに湯水を供給するための給水管が配設される。この給水管には、施工現場でまちまちである浴室外部から内部への導入部や各カランの配設箇所などに容易に対応して接続施工できるように、しばしば屈曲可能なフレキシブル管が用いられている（たとえば特許文献１参照）。
【０００３】
しかしながら、この浴室カウンター内に配設したフレキシブル管で構成された給水管は、上記特許文献１にあるように浴槽エプロン部分で支持されるだけで浴室カウンター内では特に支持せずに比較的自由な状態に配設されることもあり、この場合、給水管に急激に水が流れたり止められたりすると、流水圧やウォーターハンマー現象などによってフレキシブル管で構成した給水管が暴れ、カウンター部材やキャリアーなどに当たったりして衝突音などの異音が発生するといった恐れがあった。
【特許文献１】特開平９−２８７１７８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて為したものであって、浴室カウンター内に配設したフレキシブル管で構成した給水管に急激な水が流れたり止められたりしても、給水管の暴れによる衝突音などの異音の発生を簡単な構造で効果的に回避できる浴室カウンター内の配管構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記課題を解決するために本発明の請求項１に係る浴室カウンター内の配管構造は、浴室壁６に間隔を隔てて取り付けた複数個のキャリアー２にカウンター部材３を掛け渡すように載置固定して浴室カウンター１を形成し、屈曲可能なフレキシブル管で構成された給水管４を浴室カウンター１の長手方向に向けて浴室カウンター１内に配設する浴室カウンター１内の配管構造であって、キャリアー２に略Ｕ溝状の係止溝部５を設け、給水管４におけるキャリアー２との交差部位を給水管４を構成するフレキシブル管の弾性を利用して上記係止溝部５に圧入したことを特徴とする。これによると、キャリアー２は浴室カウンター１を形成させるために浴室壁６の横方向に所定間隔ごとに取り付けられているのであり、これら各キャリアー２に設けた係止溝部５に給水管４を支持させたことで、浴室カウンター１の長さ方向に沿って配設した給水管４をその長さ方向の所定間隔ごとに効果的に支持することができるのであり、給水管４に流水圧やウォーターハンマー現象などの力がかかっても給水管４が暴れることなく、従来問題とされた給水管４の暴れによる衝突音などの発生を回避することができる。また、このように給水管４をその長さ方向に所定間隔ごとに支持して給水管４の暴れによる衝突音などの発生を効果的に回避するのに、給水管４を支持する他の支持部材を新たに配設する必要もなく、浴室カウンター１を形成するためのキャリアー２を利用した簡単な構造で可能にされている。つまり、浴室カウンター１内に配設したフレキシブル管で構成した給水管４に急激な水が流れたり止められたりしても、給水管４の暴れによる衝突音などの異音の発生を簡単な構造で効果的に回避できるのである。
【０００６】
また、請求項２に係る浴室カウンター内の配管構造は、請求項１において、係止溝部５の溝内面と該係止溝部５に圧入した給水管４の外面との間に緩衝材７を介装したことを特徴とする。これによると、給水管４に流水圧やウォーターハンマー現象などの力がかかっても、緩衝材７によって給水管４が係止溝部５内で暴れて給水管４の外面が係止溝部５の溝内面に当たって衝突音が発生するという事態を回避することができ、給水管４の暴れによる衝突音等の発生をより効果的に回避することができるのである。
【発明の効果】
【０００７】
本発明は、浴室カウンター内に配設したフレキシブル管で構成した給水管に急激な水が流れたり止められたりしても、給水管の暴れによる衝突音などの異音の発生を簡単な構造で効果的に回避できる、といった利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【０００９】
浴室は、図３のように、建物躯体に配設した床パン８の周縁に亘って浴室壁６を立設すると共に、浴室壁６の上部に天井（図示せず）を架設し、床パン８上の一端側に偏らせた箇所に浴槽９を配置すると共に、床パン８上の浴槽９の配置されない箇所をそのまま床パン８上面が床面となる洗い場１０として構成されている。浴槽９及び洗い場１０に隣接する浴室壁６における洗い場１０に臨む箇所には浴室カウンター１が亘るように配設されている。つまり、浴室カウンター１は浴槽９の長手方向と略直交する方向を長さ方向とするように配設されており、浴室カウンター１の長さ方向の一端は浴槽９の洗い場１０に面する側面部分に至り、他端は浴槽９に洗い場１０を介して面する浴室壁６に至るようにされている。なお、浴槽９の洗い場１０に面する側面部分には洗い場１０から立設された浴槽エプロン１１が配置され、この浴槽エプロン１１にて浴槽９の側外面が目隠しされている。
【００１０】
ここで、浴室カウンター１は、図１，２のように、浴室壁６に横方向に間隔を隔てて取り付けた複数個のキャリアー２にカウンター部材３を水平に掛け渡すように載置固定することで形成されている。キャリアー２は、側面視（図１（ａ））で略直角三角形状の金属製ブラケットであり、詳しくは、鉛直板状の壁固定部２１と、壁固定部２１の上端から前方（洗い場１０側）に延出する水平板状のカウンター部材載置部２２と、上記壁固定部２１とカウンター部材載置部２２とを連結する斜材であって壁固定部２１及びカウンター部材載置部２２の板面に直交する面板状の補強部２３とを有している。補強部２３はその下面が壁固定部２１の下端部分からカウンター部材載置部２２の前端部分に至るように傾斜辺状に形成されていて、キャリアー２に略直角三角形状の側面視形状を与えている。カウンター部材３は、略Ｌ字状断面の長尺板材であり、詳しくは、略水平な天面板部３１と、天面板部３１の前端（洗い場１０側端部）から垂下する略鉛直な前面幕板部３２とを有している。キャリアー２は、壁固定部２１を浴室壁６に沿わせてビス止めすることで浴室壁６に取り付けられるのであり、カウンター部材３は、この浴室壁６に取付けた状態の複数のキャリアー２の各カウンター部材載置部２２にカウンター部材３の天面板部３１を載置してそれぞれビス止めすることで各キャリアー２に取り付けられるのであり、これにより浴室壁６に浴室カウンター１が配設されるのである。このように浴室カウンター１は浴室壁６にキャリアー２を介していわゆる片持ち状に取り付けられるのであるが、キャリアー２は斜材である補強部２３を備えているために浴室カウンター１の耐荷重性が高められている。浴室カウンター１の下部は空所である足先挿入スペース１２が設けられており、浴室カウンター１の近傍の洗い場１０でも入浴者が支障なく洗髪等で使用可能にして浴室の使い勝手が高められている。また、本例では、キャリアー２の壁固定部２１の下端部に後フック２４が前方に突設されると共に、カウンター部材３の前面幕板部３２の下端部に前フック３３が後方（浴室壁６側）に突設されており、下面幕板材１３がその前後に設けた係止部１３ａ，１３ａをこれらフック２４，３３にそれぞれ着脱自在に係止させることで浴室カウンター１の下面を塞ぐように取り付けられていて浴室カウンター１内を目隠している。詳しくは、前フック３３は後フック２４よりも上方に位置し、各フック２４，３３に係止した下面幕板材１３は前方ほど高位置に位置するような傾斜板状に配置されており、つまり、浴室カウンター１の下部の足先挿入スペース１２は入浴者の足先を前方から挿入し易いように前方ほど開口高さが大きくなるように形成されている。
【００１１】
上記のように形成された浴室カウンター１内はカウンター部材３や下面幕板材１３で洗い場１０側から目隠しがされた空所であり、この浴室カウンター１内は浴室で使用する湯水を供給するために浴室の外部から内部に引き込まれた湯供給管４ａや水供給管４ｂなどの給水管４の配管スペースとして利用される。浴室の仕様により給水管４の配管形態は異なるものであるが、たとえば給水管４は浴室カウンター１の前面幕板部３２に設置した洗い場用カラン１４や、浴槽９の上縁部に設置した浴槽用カラン１５に至らせるように配管される（なお、図面では洗い場用カラン１４に至る給水管４は省略し、浴槽用カラン１５に至る給水管４のみを示している）。詳しくは、浴槽用カラン１５に至る給水管４は、浴室カウンター１内に臨む浴室壁６に設けた導入部１６から浴室カウンター１内に臨む浴槽エプロン１１に設けた切欠状の管挿通部１７を通して浴槽用カラン１５に至っているものであり、導入部１６から管挿通部１７に至る給水管４の部位が浴室カウンター１の内部に浴室カウンター１の長さ方向に沿って配設されている。
【００１２】
ここで、本例の給水管４には、施工現場でまちまちである浴室の外部から内部への導入部１６や各カラン１４，１５の配設箇所などに容易に対応して接続施工できるように、屈曲可能な可撓性樹脂管で構成したフレキシブル管が用いられている。このフレキシブル管にはその表面に蛇腹形状４０が施されている。従来技術の項でも述べたが、給水管４が屈曲可能なフレキシブル管で構成されると、給水管４に急激に水が流れたり止められた場合に、流水圧やウォーターハンマー現象などによって給水管４が暴れる恐れを有するが、本例では、給水管４の暴れを防止してカウンター部材３やキャリアー２などへの給水管４の衝突音などの発生を回避する浴室カウンター１内の配管構造が採用されている。
【００１３】
つまり本例の浴室カウンター１内の配管構造は、図１のように、各キャリアー２にＵ溝状の係止溝部５を設け、給水管４における各キャリアー２との交差部位を給水管４を構成するフレキシブル管の弾性を利用して上記係止溝部５に圧入させて構成されている。キャリアー２は、図２のように、浴室カウンター１を形成させるために浴室壁６の横方向に所定間隔ごとに取り付けられているのであり、これら各キャリアー２に設けた係止溝部５に給水管４を支持させたことで、浴室カウンター１の長さ方向に沿って配設した給水管４をその長さ方向の所定間隔ごとに効果的に支持することができるのであり、給水管４に流水圧やウォーターハンマー現象などの力がかかっても給水管４が暴れることなく、従来問題とされた給水管４の暴れによる衝突音などの発生が回避されているのである。更に言うと、このように給水管４をその長さ方向に所定間隔ごとに支持して給水管４の暴れによる衝突音などの発生を効果的に回避するのに、給水管４を支持する他の支持部材を新たに配設する必要もなく、浴室カウンター１を形成するためのキャリアー２を利用した簡単な構造で可能にされている点も本例の浴室カウンター１内の配管構造の大きな利点である。
【００１４】
詳しくは、係止溝部５は湯供給管用の係止溝部５ａと水供給管用の係止溝部５ｂとを有し、それぞれ補強部２３の前縁から後方に切り込むように上下に並設するように形成されており、具体的に本例では、係止溝部５は、前方ほど高位置に位置する傾斜辺状の補強部２３の下面から略直交するように導入溝部５１を切り込み、後方ほど高位置に位置する溝状の導入溝部５１の後端部に給水管４を嵌合させる円状の収納溝部５２を連通するように切り込むことで、全体が側面視で略Ｕ字形状になるように形成されている。導入溝部５１の溝幅は給水管４が嵌合する収納溝部５２の内径よりも多少短く形成されている。係止溝部５に給水管４を嵌合させる際には導入溝部５１に後方に向けて強く押し込むように圧入させて給水管４に至らせるのであるが、一旦、収納溝部５２に嵌合して収納された給水管４は収納溝部５２から導入溝部５１に外れて飛び出さないようになっており、つまり抜け止め可能とする形状に施されている。
【００１５】
また、本例では、係止溝部５の収納溝部５２には軟質ゴム製のリング状の緩衝材７が装着されており、収納溝部５２に給水管４を嵌合した際には、係止溝部５の収納溝部５２の溝内面と該係止溝部５に圧入した給水管４の外面との間に緩衝材７が介装されるようになる。このように給水管４は係止溝部５に緩衝材７を介して圧入、支持されるのであり、給水管４に流水圧やウォーターハンマー現象などの力がかかっても、給水管４が係止溝部５内で暴れて、給水管４の外面が係止溝部５の溝内面に当たって衝突音が発生するという事態が回避されているのである。この点でも給水管４の暴れによる衝突音等の発生がより効果的に回避されているのである。詳しくは、緩衝材７は半円リング形状であり、給水管４を係止溝部５の収納溝部５２にスムーズに導入できるよう、収納溝部５２の導入溝部５１からの入口を塞がないように収納溝部５２の内縁に装着されている。
【００１６】
また、各キャリアー２に形成した係止溝部５は側面視で浴槽エプロン１１に穿設した管挿通部１７に重複する位置に設けられている。各キャリアー２は浴室壁６の同高さ位置にそれぞれ取り付けられるのであり、各キャリアー２に設けた各係止溝部５も同高さ位置に配置されるから、各係止溝部５に支持された給水管４はフレキシブル管で構成されていても図２のように略水平に配管されるのであり、そのまま浴槽エプロン１１の管挿通部１７を経て浴槽用カラン１５に至るようにされている。ここで、側面視直角三角形状であるキャリアー２の補強部２３は浴室カウンター１の内部をその長手方向において分断するように位置するのであるが、本例の係止溝部５はこの補強部２３に穿設されているのであり、従来のようにキャリアー２の補強部２３を避けるようにして配管せざるを得ないという施工の制限なく、給水管４の配管施工を良好に行うことができる。ここで、キャリアー２の補強部２３を避けるようにして行う従来の給水管４の配管施工では、施工者の熟練度によりその仕上がりにばらつきが生じる。つまり、施工者の熟練度が低い場合には図４のようにキャリアー２を回避するためにフレキシブル管の給水管４を下方に屈曲させるよう配管してしまうことがある。これによると、寒冷地などでは給水管４の元栓を締めた状態にして給水管４の下端部分に設けた水抜き栓から水を抜いておくこともなされるが、上記キャリアー２を回避するために給水管４を下方に屈曲させた下方屈曲部４１がいわゆるトラップ形状になって水が抜けずに溜まった状態になり、冬季などにはこの溜まった水が凍結して給水管４の破損を招いてしまうのである。しかしながら、本例のように給水管４を各キャリアー２の係止溝部５に支持させることで、施工者の熟練度にかかわらずに、図２のようにフレキシブル管の給水管４を略水平に配管することができるのであり、上記給水管４にトラップ形状（下方屈曲部４１）を形成することで発生する残留水の冬季の凍結による配管の損傷の恐れを回避することができる、といった利点も有している。
【００１７】
上記実施形態では給水管４に可撓性樹脂管を用いているが屈曲可能な金属製管材を用いても良い。また、上記実施形態では給水管４は係止溝部５に抜け止めが施されて嵌合させているが、係止溝部５に無理嵌めするように嵌合（圧入）させてもよい。このときには給水管４の外面に施された蛇腹形状４０の山部４０ａの弾性を利用して係止溝部５に強固に嵌合させることも可能であって好ましい。つまり、係止溝部５の溝幅（内径）を給水管４の蛇腹形状４０の谷部４０ｂの外径よりも大きく山部４０ａの外径よりも小さく設定すると、係止溝部５に給水管４を挿入する際には給水管４の谷部４０ｂに係止溝部５の溝内縁を滑らすようにして挿入でき、係止溝部５に給水管４を嵌合させて支持させる際には給水管４をその長手方向にずらすことで給水管４の蛇腹形状４０の山部４０ａを係止溝部５に圧入できるのであり、給水管４の係止溝部５への支持をスムーズに且つ強固に行わせることができ、好ましいのである。また、給水管４としては浴槽９の槽内に設ける浴槽水吐水部に至る水や湯の供給管材であってもよいのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明の実施の形態の例の浴室カウンターであり、（ａ）は側断面図であり、（ｂ）は要部の正面図である。
【図２】同上の浴室カウンターの一部透視正面図である。
【図３】同上の浴室の概略斜視図である。
【図４】従来技術の問題点を説明する要部の斜視図である。
【符号の説明】
【００１９】
１ 浴室カウンター
２ キャリアー
３ カウンター部材
４ 給水管
５ 係止溝部
６ 浴室壁
７ 緩衝材
【特許請求の範囲】
【請求項１】
浴室壁に間隔を隔てて取り付けた複数個のキャリアーにカウンター部材を掛け渡すように載置固定して浴室カウンターを形成し、屈曲可能なフレキシブル管で構成された給水管を浴室カウンターの長手方向に向けて浴室カウンター内に配設する浴室カウンター内の配管構造であって、キャリアーに略Ｕ溝状の係止溝部を設け、給水管におけるキャリアーとの交差部位を給水管を構成するフレキシブル管の弾性を利用して上記係止溝部に圧入したことを特徴とする浴室カウンター内の配管構造。
【請求項２】
係止溝部の溝内面と該係止溝部に圧入した給水管の外面との間に緩衝材を介装したことを特徴とする請求項１記載の浴室カウンター内の配管構造。
【請求項１】
浴室壁に間隔を隔てて取り付けた複数個のキャリアーにカウンター部材を掛け渡すように載置固定して浴室カウンターを形成し、屈曲可能なフレキシブル管で構成された給水管を浴室カウンターの長手方向に向けて浴室カウンター内に配設する浴室カウンター内の配管構造であって、キャリアーに略Ｕ溝状の係止溝部を設け、給水管におけるキャリアーとの交差部位を給水管を構成するフレキシブル管の弾性を利用して上記係止溝部に圧入したことを特徴とする浴室カウンター内の配管構造。
【請求項２】
係止溝部の溝内面と該係止溝部に圧入した給水管の外面との間に緩衝材を介装したことを特徴とする請求項１記載の浴室カウンター内の配管構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００８−２９４３２（Ｐ２００８−２９４３２Ａ）
【公開日】平成２０年２月１４日（２００８．２．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−２０３９５９（Ｐ２００６−２０３９５９）
【出願日】平成１８年７月２６日（２００６．７．２６）
【出願人】（５０５１５４９５６）松下電工バス＆ライフ株式会社 (306)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年２月１４日（２００８．２．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年７月２６日（２００６．７．２６）
【出願人】（５０５１５４９５６）松下電工バス＆ライフ株式会社 (306)
【Ｆターム（参考）】
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