説明

浴室構造

【課題】浴室側から居室側に連続的な美しい空間を作り出して広い浴室空間を演出できる浴室構造を提供する。
【解決手段】居室2の床面8に対し、浴室1の底面を構成する防水パン3の外周の壁載置面3cを同一高さに設定し、防水パン3の居室2側には壁載置面3cより一段高い段部3eを設け、この段部3eに浴室の入口となる入口枠材9を嵌め込んで居室2と浴室1を仕切る堤防Tを形成し、居室2の床面8上および防水パン3の壁載置面3c上に立設される壁材11,11の底面11a,11aを同じ高さにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居室と連続した空間を演出できる浴室の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、ユニットバスの床面と隣接空間の床面が略面一となるように構成し、また、ユニットバスの天井面と隣接空間の天井面が略面一となるように構成して、ユニットバスと隣接空間との一体感を演出できるようにしたユニットバスが存在する。
【特許文献1】特開2007−107236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている構造では、ユニットバスの床面と隣接空間の床面を略面一になるようにしたバリアフリー構造に関するものであり、広い浴室空間を良好に演出することはできないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、浴室と居室が連続する美しく広い空間を演出できる浴室構造を提供することを目的の1つとし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、居室の床面に対し、浴室の底面を構成する防水パンの外周の壁載置面を同一高さに設定し、該防水パンの前記居室側には前記壁載置面より一段高い段部を設け、該段部に浴室の入口となる入口枠材を嵌め込んで前記居室と浴室を仕切る堤防を形成するとともに、前記居室の床面上および前記防水パンの壁載置面上に立設される壁材の底面を同一高さとしたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の浴室構造では、居室の床面と浴室の防水パンとの間に一段高い堤防を形成して、居室側への水漏れを防ぐことができるとともに、居室の壁材と浴室の壁材の底面を同じ高さにして、居室と浴室が連続する美しい空間を作り出すことができ、広い浴室空間を演出できるものとなる。
【0006】
また、本発明は、壁下地板の内側に防水シートを固定し、該防水シートの内側に空間を形成して仕上げ用の壁材を立設する構造の浴室において、前記壁下地板の内面に外側へ向かって凹状の切欠き溝を形成し、該切欠き溝内にLアングルを嵌め込み、該Lアングルで前記防水シートを壁下地板に固定したことを要旨とする。
こうすれば、Lアングルで防水シートを良好に固定することができ、また、Lアングルは壁下地材の切欠き溝内に嵌め込まれるため、壁下地板と内側の壁材との空間寸法を薄くすることができて、居室側の壁材と浴室側の壁材を平面視略面一状にすることができ、連続的な美しい空間を作り出して広い浴室空間を演出できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、浴室1と居室2の施工状態を示すものである。
浴室1の底面を構成する防水パン3は、図2に要部を拡大して示すような構造となっている。
防水パン3は、その上面に洗い場3aが形成され、洗い場3aの側面には、上方へ立ち上げて立上部3bが一体形成され、立上部3bの上端で外側へ略水平に延びる壁載置面3cが一体形成され、壁載置面3cの外側で上方へ立ち上げて水切片3dが形成されている。また、立上部3bと直交する居室2側には、洗い場3aから立ち上げて段部3eが一体形成されており、この段部3eの上端は壁載置面3cよりも上方位置に設定されている。この防水パン3は、図1のように、直交状に配置された木軸4a,4bに前記壁載置面3cを載せた状態で設置されるものである。
一方、居室2側の床面は、木軸4a上に水平に床下地5を設け、この床下地5上にモルタル7を塗布して、その上に複数枚のタイル8,8,8が貼設されて構成されている。なお、居室2側の床面は、フローリングで仕上げても良い。
【0008】
なお、図3は、浴室1と居室2の床面構造の要部縦断面拡大図である。
この居室2側の床面を構成するタイル8の上面と、前記防水パンの壁載置面3cが同一高さとなるように設定して施工されるものである。
前記防水パンの段部3eには、入口下枠材9が上方から嵌め込まれて、この入口下枠材9の内側に段部3eが隠され、この段部3eと入口下枠材9の二重構造による堤防Tが形成されて、この堤防Tにより、浴室1の洗い場3a側から居室2側へ水が漏れないように構成されている。
【0009】
入口下枠材9は、入口に設けられるドアの外周の枠材の一部であり、この入口下枠材9の端部から立設されている入口縦枠材10で枠状に入口枠が形成されている。
入口下枠材9は、段部3e上に載る水平片9aの浴室1側に垂下状に浴室側垂下片9bが形成され、また、水平片9aの居室2側には居室側垂下片9cが垂下状に形成されており、この居室側垂下片9cは居室2のブチルテープ6上にその下端が当接されるものである。また、浴室側垂下片9bの下端は、防水パンの洗い場面3a上に当接されて設置されるものである。なお、ブチルテープ6上は押さえ板で上から固定する。
【0010】
このように段部3eと入口下枠材9の二重構造の堤防Tを、浴室1と居室2の境部分に形成して、居室2側への水漏れを防ぐことができ、居室2のタイル8の上面と防水パンの壁載置面3cを同一高さに設定して、この壁載置面3c上に壁材11を立設して、浴室1の側壁面を壁材11で形成することができ、この壁材11は、鋼板パネル或いは木材或いはタイル下地ボードとタイルで構成されたものである。
【0011】
この壁材11の底面11aは壁載置面3c上に載るが、居室2側にも浴室1側と同一素材の壁材11を立設して、居室2の側壁面を壁材11で形成することができ、この居室2側の壁材11の底面11aは、浴室1に立設された壁材11の底面11aと同一高さに揃えられて、居室2から浴室1側に連続した同一素材の壁材11,11による壁面が形成されるものである。
この壁材11が木材またはタイル下地ボードとタイルの場合、壁材11の外側には、浴室1側では樹脂胴縁14,14が立設されて、壁材11の裏側に空間Sが形成され、その裏側に、建物の柱12に沿って壁下地板13が立設される。なお、壁材11が鋼板パネルの場合は、樹脂胴縁14を用いずにコーナーフレーム,平面ポスト等で壁材11を支持すれば良い。
また、居室2側においても、柱12,12間に掛け渡し状に壁下地板13が立設され、この壁下地板13の内側に空間Sを形成して前記壁材11が施工されるものである。
【0012】
図4では、この壁下地板13と壁材11の部分の要部を拡大して斜視図で示す。また、この部分の平面拡大構成図を図5に示す。
浴室1側の壁下地板13の入口縦枠材10に当接される端部には、柱12側へ凹ませて凹状の切欠き溝13aが縦方向に形成されており、この切欠き溝13a内にL字状断面のLアングル16が嵌め込まれる。
このLアングル16は、壁下地板13の内側に貼着される防水シート15の端縁とブチルテープ6を固定するためのものであり、ブチルテープ6は、防水シート15の端縁上から入口縦枠材10の側面側に回り込んでおり、このブチルテープ6と防水シート15の端縁部分をLアングル16で押さえ付けることができるものである。
【0013】
即ち、Lアングル16は、切欠き溝13a内の底側に当接して嵌め込まれる押さえ片16aと、入口縦枠材10の側面に当接する押さえ片16bでL字状に形成されている。
このLアングル16を壁下地板13にビス等で固定することで、このLアングル16で良好にブチルテープ6と防水シート15の端縁部分を押さえ付けて密着させ、防水構造にすることができるものである。
【0014】
本例では、Lアングル16は切欠き溝13a内に嵌め込まれるため、Lアングル16の押さえ片16bの内側への突出寸法は短いものとなり、壁下地板13と壁材11間の空間Sを薄くすることができ、これにより浴室1側の壁材11の内面を居室2側の壁材11の内面に合わせて、図5のように、壁材11,11を居室2側から浴室1側に連続して面一状に配置することができ、この居室2側および浴室1側の壁材11,11の素材や模様等を同一のものにすれば、連続的な美しい空間を作ることができ、居室2側に連続して延びる広い浴室空間を演出することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】浴室と居室の施工状態図である。
【図2】浴室の底面を構成する防水パンの要部拡大斜視構成図である。
【図3】浴室と居室間に立ち上がる堤防の部分の拡大縦断面構成図である。
【図4】浴室および居室の壁下地板とその内側の壁材の配置状態の要部拡大斜視構成図である。
【図5】図4の平面構成図である。
【符号の説明】
【0016】
1 浴室
2 居室
3 防水パン
3a 洗い場面
3b 立上部
3c 壁載置面
3d 水切片
3e 段部
4a,4b 木軸
5 床下地材
6 ブチルテープ
7 モルタル
8 タイル
9 入口下枠材
9a 水平片
9b 浴室側垂下片
9c 居室側垂下片
10 入口縦枠材
11 壁材
11a 壁材の底面
12 柱
13 壁下地板
13a 切欠き溝
14 樹脂胴縁
15 防水シート
16 Lアングル
16a,16b 押さえ片
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室の床面に対し、浴室の底面を構成する防水パンの外周の壁載置面を同一高さに設定し、該防水パンの前記居室側には前記壁載置面より一段高い段部を設け、該段部に浴室の入口となる入口枠材を嵌め込んで前記居室と浴室を仕切る堤防を形成するとともに、前記居室の床面上および前記防水パンの壁載置面上に立設される壁材の底面を同一高さとしたことを特徴とする浴室構造。
【請求項2】
壁下地板の内側に防水シートを固定し、該防水シートの内側に空間を形成して仕上げ用の壁材を立設する構造の浴室において、
前記壁下地板の内面に外側へ向かって凹状の切欠き溝を形成し、該切欠き溝内にLアングルを嵌め込み、該Lアングルで前記防水シートを壁下地板に固定したことを特徴とする浴室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−121102(P2009−121102A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294954(P2007−294954)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】