説明

浴室用洗い場床

【課題】洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ使用者に柔らかさを感じさせることのできる浴室用洗い場床であって、4本脚の椅子等を用いた場合にも凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにする浴室用洗い場床を提供すること。
【解決手段】この浴室用洗い場床FPは、クッション層4が表面層5上に荷重が加わった際に支持基材層10との間に挟まれて圧縮変形されるものであって、クッション層4は、第一クッション層4aと第二クッション層4bとが鉛直方向において重なるように配置され、その間にセパレータ4cが挟まれることで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用洗い場床に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室用洗い場床においては、安全性の観点から床面にクッション性を付与する構造が提案されている。そのような構造の一例として、FRP等の樹脂材料からなる基材に対して、発泡層と、熱可塑性エラストマーからなる軟質材と、を順に積層し一体化した浴室用洗い場床が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
確かに、下記特許文献1に記載されている浴室用洗い場床では、床面にクッション性を付与することが可能であって、安全性をより高めることに寄与するものと思われる。しかしながら、下記特許文献1に記載されている浴室用洗い場床では、単に床面の柔らかさを高めることでクッション性を付与しているため、発泡層や軟質材の柔らかさの度合によっては、摩耗、傷や穴があく等の損傷、へたりなど、床表面として求められる耐久性が不足することが懸念される。
【0004】
このような懸念を解消しつつ、使用者に床面の柔らかさを感じさせることができる浴室用洗い場床が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。下記特許文献2に記載されている浴室用洗い場床は、荷重を支えるための支持基材層と、その支持基材層の上に積層され、弾性変形可能なクッション層と、そのクッション層の上に積層され、耐久性を有するとともに強度を確保するための厚肉部及び可撓性を付与するための薄肉部を有する表面層と、を備えるものである。この浴室用洗い場床においては、厚肉部は表面層上に荷重が加わった際に、荷重が加わった部分が局所的に変形しない程度の厚みを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−245814号公報号公報
【特許文献2】特許4174741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載されている浴室用洗い場床では、支持基材層の上にクッション層が積層され、そのクッション層の上に表面層が積層されているので、表面層に耐久性を備えさせることで、柔らかさを備えつつ浴室の洗い場床として要求される耐久性を具備することができるものである。その表面層は、耐久性を有するとともに強度を確保するための厚肉部と、可撓性を付与するための薄肉部とによって構成されている。また、その厚肉部は、表面層上に荷重が加わった際に、その荷重が加わった部分が局所的に変形しないように作用するので、例えば使用者が足を乗せた場合には、上記特許文献の図4に示されているように、踏んだところを中心にしなやかに撓み、その近辺のみが沈み込むような柔らかい感覚を得ることができる。
【0007】
上記特許文献2に記載されている浴室用洗い場床は上述のように、使用者が柔らかさを感じつつ、表面層の局所的な変形も抑制することができるものであるから、使用者が通常の入浴動作をしたり通常浴室に配置される浴室用椅子を使用したりといった場合には、従来にない非常に良好な使用感を与えることができ、浴室用の洗い場床に求められる基本的な性能も十分に達成することができる優れたものである。
【0008】
しかしながら、浴室においては通常の入浴動作以外に、例えば浴室内の天井を掃除したり、天井に設けられている様々な機器のメンテナンスを行ったりする必要もある。その場合、通常はダイニング等に置かれている4本脚の椅子や脚立を洗い場床に乗せて、その椅子が脚立に使用者が乗って作業を行う場合がある。このように4本脚の椅子等を用いると、通常の使用状態よりも表面層に集中的な荷重が加わり、荷重点近傍における表面層の変形角が過度に大きくなるため、場合によっては凹状の跡がついてしまったり、亀裂が生じたりすることも想定される。一方で、4本脚の椅子や脚立を用いた場合にも凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにするために、例えば表面層やクッション層の剛性を上げてしまうと、通常使用時の柔らかさが失われてしまうおそれがある。また、クッション層を薄くすることで表面層の変形に規制をかけることも考えられるけれども、クッション層が薄くなることで通常使用時においてクッション層が完全に潰れて支持基材層に底付きしてしまう感触が伝わってしまい、使用感の低下を招くおそれがある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ使用者に柔らかさを感じさせることのできる浴室用洗い場床であって、4本脚の椅子等を用いた場合にも凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにする浴室用洗い場床を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る浴室用洗い場床は、荷重を支えるための支持基材層と、前記支持基材層の上に積層され、弾性変形可能なクッション層と、前記クッション層の上に積層され、耐久性及び可撓性を有する表面層と、を備えた浴室用洗い場床であって、前記クッション層は、前記表面層側に配置された第一クッション領域と、前記支持基材層側に配置された第二クッション領域と、前記第一クッション領域と前記第二クッション領域とに挟まれて配置された荷重分散領域とを有し、前記荷重分散領域は、前記第一クッション領域から前記第二クッション領域に力を伝達する際に、力を伝える範囲がより広がるように伝達することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、支持基材層とクッション層と表面層とを備え、支持基材層の上にクッション層を積層し、クッション層の上に表面層を積層しているので、表面層上に使用者が載ったり物を載せたりした場合の荷重を、クッション層を介して支持基材層によって支えることができる。クッション層は弾性変形可能なように構成されているので、表面層上に載っている使用者に対して柔らかな感触を与えることができ、その弾性変形度合を調整することで使用者にとって心地よい柔らかさを提供することができる。表面層は耐久性及び可撓性を有するように構成されているので、浴室用洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ、表面層上に載った使用者の荷重をクッション層に伝えて撓むことができる。
【0012】
更に本発明では、表面層側の第一クッション領域と支持基材層側の第二クッション領域との間に荷重分散領域が形成され、その荷重分散領域は、第一クッション領域から第二クッション領域に力を伝達する際に、力を伝える範囲がより広がるように伝達する。このように構成することで荷重分散領域の荷重分散効果を効果的に発揮させることができ、例えば使用者が表面層上に載った場合に第一クッション領域が主として変形して底付きし、第二クッション領域は従たる変形を成して完全には押し潰されていない部分を残すことができる。従って、使用者に表面層を介してクッション層には変形する残り代があることを感じさせることができ、例えば使用者が更に力を入れて踏み込んだような場合であっても、仮に第一クッション領域が完全に押し潰されても、第二クッション領域は広範囲で荷重を受けている分、完全に押し潰されていないため、残りの第二クッション領域を変形させることで、使用者に完全なる底付き感を感じさせることがなく、心地良い踏み心地を感じさせることができる。
【0013】
一方、4本脚の椅子や脚立を用いた場合には、総重量が同じであっても接地面積が狭いため集中荷重が表面層に作用する。この場合には第一クッション領域も第二クッション領域も共に変形するけれども、第一クッション領域と第二クッション領域との変形割合を異ならせているため、先に第一クッション領域が完全に押し潰され、第二クッション領域には変形する余地が残ることになる。本発明では、クッション層を第一クッション領域と第二クッション領域とを鉛直方向において重ねることで形成しているので、全体の厚みよりも第一クッション領域の厚みも第二クッション領域の厚みも薄くなるように構成している。従って、第一クッション領域が完全に押し潰された状態であっても、第一クッション領域の厚みがクッション層の厚みよりも薄いことと表面層の荷重分散効果とによって、第二クッション領域は広範囲で荷重を受けている分、完全に押し潰されていないため、4本脚の椅子や脚立を用いた場合の荷重点近傍における表面層の変形角が過度に大きくならないようにすることができ、表面層の過度の凹みを防止することができ、結果として表面層に亀裂が生じることを抑制できる。更に、第一クッション領域が変形した後であっても変形する余地が残っている第二クッション領域の厚みもクッション層の厚みよりも薄いことと、第一クッション領域の変形角緩和効果と、荷重分散領域の荷重分散効果とによって、4本脚の椅子や脚立を用いた場合の荷重点近傍における表面層の変形角が過度に大きくならないようにすることができ、表面層における過度の局所的な凹みを防止することができ、表面層に亀裂が生じることをより効果的に抑制できる。従って、使用者が載った場合には柔らかい使用感を感じさせることができる機能は維持しつつ、4本脚の椅子や脚立を用いた場合には凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにすることが可能な浴室用洗い場床を提供することができる。
【0014】
また本発明に係る浴室用洗い場床では、前記荷重分散領域が平板状を成すように形成されていることも好ましい。
【0015】
この好ましい態様では、荷重分散領域が平板状に形成されているので、第一クッション領域及び第二クッション領域の間において表面層と沿うように配置することができ、表面層に加わる力を第一クッション領域から第二クッション領域へとより広範囲に広がるように伝達することができる。
【0016】
また本発明に係る浴室用洗い場床では、前記荷重分散領域は、前記表面層、前記第一クッション領域、及び前記第二クッション領域よりも面剛性が高くなるように形成されていることも好ましい。
【0017】
この好ましい態様では、荷重分散領域の面剛性を他の部分よりも高くなるように構成しているので、面を貫く方向に加わる外力を面に沿った方向に分散することができ、表面層に加わる力を第一クッション領域から第二クッション領域へとより広範囲に広がるように伝達することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ使用者に柔らかさを感じさせることのできる浴室用洗い場床であって、4本脚の椅子等を用いた場合にも凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにする浴室用洗い場床を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床を用いた浴室を示す部分断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床の部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床に集中荷重が作用した状態を示す部分断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床に非集中荷重が作用した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床を用いた浴室について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る浴室用洗い場床FPを用いた浴室BRを示す部分断面図であって、浴室BRの洗い場領域における部分断面図である。図1に示すように、浴室BRは、浴室用洗い場床FPの周囲に壁パネル50が立設されている。
【0022】
浴室用洗い場床FPは、硬質の支持基材層10と、支持基材層10の上に積層されたクッション性を有するクッション層4と、クッション層4の上に積層された表面層5とを備えている。
【0023】
支持基材層10は、浴室外に湯水を漏出させない防水性、および壁パネル50、天井パネル、風呂椅子、洗面器などの静荷重、使用者の動荷重を受けても大きく撓んだり破損したりしない十分な強度を有する硬質材料から形成されている。例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の熱硬化性樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂に補強を施したものから形成されている。
【0024】
支持基材層10には縦断面視で凹状に形成される凹部2が設けられている。凹部2は支持基材層10の上面視における大部分の面積を占め、凹部2より外方側には凹部2の上面(底面)よりも一段高くされた縁部6が設けられている。縁部6よりも外方側であって支持基材層10の最外縁部には、上方に立ち上がった水返し壁として機能する側壁部8が設けられている。
【0025】
支持基材層10は硬質材を熱間成型することにより一体成形され、よって、凹部2、縁部6および側壁部8は一体に形成される。
【0026】
クッション層4は、支持基材層10の凹部2に全体が収容され、凹部2の上面(底面)に例えば両面テープ等の接着剤により接着固定される。クッション層4は、弾性変形可能であり、例えばウレタン等の発泡体からなる。なお、クッション層4は弾性変形可能なゴム材であっても構わないが、ゴム臭のない発泡体の方が気密性の高い浴室の洗い場床として利用するには好ましい。本実施形態では、クッション層4を機能的に少なくとも二つの領域からなるように構成しており、その詳細については後述する。
【0027】
表面層5は、耐水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐衝撃性など、洗い場床表面に要求される基本性能(耐久性)を満足するべく比較的硬質で強靱な材料から形成されている。そのような表面層5の材料としては、FRP、PVC(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン・ポリエステル・オレフィン・アクリル系の各種エラストマー、EVA、EPDM、シリコンゴムなどのゴム(硬質)系、あるいはこれらを十分な耐久性が期待できる程度の硬さに調整したもの、あるいはこれらをベースに充填材や強化材を加えた複合材料などが一例として挙げられる。これら材料は一例であって、その他、表面層5の材料としては、ある程度の可撓性を有する材料で、且つ浴室の一般的な使用に際し十分な耐久性を有するべく強靱な材料であればよく、前述したものに限られない。なお、特に、洗い場床材に要求される基本性能発揮に実績のあるFRPを表面層5に用いることで信頼性の高い製品を提供することができる。
【0028】
表面層5の詳細構造について図2を参照しながら説明する。図2は、浴室用洗い場床FPの斜視図である。図3に示すように、表面層5は、洗い場床の表面強度を確保するための厚肉部5aと、クッション層4の変形に追従可能な可撓性を表面層5に付与するための薄肉部5bとを有する。表面層5における浴室内に露出される表面側から切り込まれた溝12を形成することによって、厚肉部5aと薄肉部5bとが形成される。溝12は、下層のクッション層4には達しておらず、溝12は表面層5を完全に分断してはいない。
【0029】
薄肉部5bは溝12の下に位置し、薄肉部5bの厚みは、厚肉部5aの厚みよりも薄い。溝12及びその下に位置する薄肉部5bは、表面層5の全体に渡って格子状に形成され、厚肉部5aは、溝12及び薄肉部5bで囲まれた島状に形成されている。
【0030】
溝12を凹状断面視で見た場合における薄肉部5bの幅は、同じ断面視における厚肉部
5aの幅よりも小さい。表面層5全体における、厚肉部5aの平面面積は薄肉部5bの平
面面積よりも大きい。
【0031】
再び図1を参照すると、表面層5は、クッション層4の上面及び凹部2を覆うようにクッション層4に積層される。表面層5の平面サイズは、クッション層4の平面サイズより大きく(縦横ともに長く形成されている)、表面層5においてクッション層4からはみ出る周縁部は、クッション層4を介さずに支持基材層10の縁部6の上面に積層される。表面層5において上記溝12が形成された面の反対側の裏面は、例えば両面テープ等の接着材で、クッション層4の上面及び支持基材層10の縁部6の上面に接着固定される。
【0032】
表面層5はクッション層4より薄い。表面層5の平面サイズは、支持基材層10全体の平面サイズより小さく(縦横ともに短く形成されている)且つ凹部2の平面サイズより大きい(縦横ともに長く形成されている)。
【0033】
支持基材層10、クッション層4および表面層5の積層構造を得るにあたっては、それらを一体に熱間成型することにより相互に溶着固定させてもよいし(インサート及びラミネート成形)、支持基材層10の成型加工後に、その凹部2の上面(底面)に対してクッション層4を例えば両面テープ等の接着剤を用いて貼り付け、さらにそのクッション層4の表面に例えば両面テープ等の接着剤を用いて表面層5を貼り付けてもよい。
【0034】
支持基材層10の凹部2より外方側に配置される表面層5の周縁部は、例えばシリコンや目地部材等のシーリング材11で水密的にシールされ、表面層5と支持基材層10との間への水の浸入が防止されている。
【0035】
表面層5の周縁部より外方側における支持基材層10の縁部6の上面には、壁パネル50が載置されている。シーリング材11は、表面層5の周縁部と支持基材層10との間、および壁パネル50と支持基材層10との間を兼用して水密的にシールする。
【0036】
前述したようにクッション層4の表面側に表面層5を積層した構造においては、使用者は表面層5に触れることになるがその使用者にクッション層4の機能(柔らかさ)を感じさせるようにするため、表面層5にはクッション層4の変形に追従可能な可撓性が求められる。
【0037】
本実施形態では、耐久性を具備すべく硬質の表面層5としても、その表面層5の厚みが面方向に均一ではなく、厚肉部5aと薄肉部5bとを有する構造としたため、クッション層4の変形に追従させて表面層5をしなやかに撓ませることができクッション層4のやわらかさを使用者に伝達することが可能なものとなっている。
【0038】
続いて、クッション層4の詳細な構成について図3を参照しながら説明する。図3は、浴室用洗い場床FPの部分断面図である。図3に示すように、クッション層4は、第一クッション層4a(第一クッション領域)と、第二クッション層4b(第二クッション領域)とが鉛直方向において重なるように積層することで構成されている。更に、第一クッション層4aと第二クッション層4bとの間にはセパレータ4c(荷重分散領域)が設けられている。
【0039】
第二クッション層4bは、表面層5上に荷重が加わった際に支持基材層10との間に挟まれて圧縮変形され、その圧縮変形される際の基準荷重に対する縮み量が第一量である層である。本実施形態の場合、基準荷重は使用者として想定される体重に基づいて算出され、使用者が表面層5上に載った場合に、第二クッション層4bが略潰される程度に変形し、その縮み量である第一量が第二クッション層4bの厚みと略同一となるように設定されている。
【0040】
第一クッション層4aは、表面層5上に荷重が加わった際に支持基材層10との間に挟まれて圧縮変形され、その圧縮変形される際の基準荷重に対する縮み量が第二量である層である。本実施形態の場合、第二量は前述した第一量と同等になるように設定されている。本実施形態の場合には第一量と第二量とが同等になるように設定しているけれども、第二量が第一量よりも少なくなるように設定してもよく、逆に第二量が第一量よりも多くなるように設定してもよい。いずれにしても、表面層5に荷重が加わった際に、先に第一クッション層4aが潰され、第一クッション層4aに加わった力がセパレータ4cによって拡散され第二クッション層4bも同時に圧縮変形されるが、その変形割合が第一クッション層4aとは異なる(変形する余地が残る)ように設定されることが好ましい。
【0041】
セパレータ4cは、第一クッション層4a及び第二クッション層4bに比較して硬く変形し難い材料によって構成されており、好ましくは鉄板等が用いられる。荷重分散領域としてのセパレータ4cは、第一クッション層4aから第二クッション層4bに力を伝達する際に、力を伝える範囲がより広がるように伝達している。従って、表面層5のみならずこのセパレータ4cにおいても荷重分散効果を発揮することができ、4本脚の椅子や脚立を用いた場合の荷重点近傍における表面層5の変形角が過度に大きくならないようにすることができるので、表面層5における過度の局所的な凹みを防止し、結果として表面層に亀裂が生じることを抑制できる。
【0042】
このようにクッション層4を構成した場合に、表面層5上に4本脚の椅子が載せられて集中荷重が作用した例を図4に示し、表面層5上に使用者が載って非集中荷重が作用した例を図5に示す。
【0043】
本実施形態における浴室用洗い場床FPは、支持基材層10とクッション層4と表面層5とを備え、支持基材層10の上にクッション層4を積層し、クッション層4の上に表面層5を積層しているので、表面層5上に使用者が載ったり物を載せたりした場合の荷重を、クッション層4を介して支持基材層10によって支えることができる。クッション層4は弾性変形可能なように構成されているので、表面層5上に載っている使用者に対して柔らかな感触を与えることができ、その弾性変形度合を調整することで使用者にとって心地よい柔らかさを提供することができる。表面層5は耐久性及び可撓性を有するように構成されているので、浴室用洗い場床としての表面耐久性を具備しつつ、表面層5上に載った使用者の荷重をクッション層に伝えて撓むことができる。
【0044】
本実施形態では、表面層5に荷重が加わると、溝12(図2参照)及びその下の薄肉部5b(図2参照)が節となって断面凹状に撓む。このため、硬質の表面層5であっても、表面層5がつっぱって撓みを抑制するようなことがなく、踏んだところを中心にしなやかに撓み、その近辺のみが沈み込むようなやわらかい感覚を得ることができる。
【0045】
表面層5にしなやかな可撓性を付与する役割を担う薄肉部5b(図2参照)は、表面層5の表面全体に渡って格子状に形成されているため、すなわち表面層5の表面上縦横に変形の節となる薄肉部5bが偏在することなく分散配置され、床面上のどの部分に荷重がかかっても、変形の方向に指向性が生ずることなく、踏んだところを面上全方位的に違和感なくくぼませることができる。
【0046】
更に本実施形態では、表面層5側の第一クッション層4aと支持基材層10側の第二クッション層4bとの間に荷重分散領域であるセパレータ4cが配置され、その荷重分散領域としてのセパレータ4cは、第一クッション層4aから第二クッション層4bに力を伝達する際に、力を伝える範囲がより広がるように伝達する。このように構成することでセパレータ4cの荷重分散効果を効果的に発揮させることができ、図5に示すように、使用者の足22が表面層5上に載った場合に第一クッション層4aが主として先に潰れて底付きし、第二クッション層4bは従たる変形を成して完全には押し潰されていない部分を残すことができる。従って、使用者に表面層5を介してクッション層4には変形する残り代(第二クッション層4b)があることを感じさせることができ、例えば使用者が更に力を入れて踏み込んだような場合であっても、残りの第二クッション層4bを変形させることで、使用者に完全なる底付き感を感じさせることがなく、心地良い踏み心地を感じさせることができる。
【0047】
一方、図4に示すように4本脚の椅子を用いた場合には、総重量が同じであっても椅子脚20の接地面積が狭いため集中荷重が表面層5に作用する。この場合には第一クッション層4aが即座に変形するものであって、第一クッション層4aが完全に押し潰された後に第二クッション層4bが変形することになる。本実施形態では、クッション層4を第一クッション層4aと第二クッション層4bとを鉛直方向において重ねることで形成しているので、全体の厚みよりも第一クッション層4aの厚みも第二クッション層4bの厚みも薄くなるように構成している。従って、第一クッション層4aが完全に押し潰された状態であっても、第一クッション層4aの厚みがクッション層4の厚みよりも薄いことと表面層5の荷重分散効果とによって、椅子脚20の荷重点近傍における表面層5の変形角が過度に大きくならないようにすることができ、表面層5の過度の凹みを防止することができ、結果として表面層5に亀裂が生じることを抑制できる。
【0048】
更に、第一クッション層4aが変形した後に変形する第二クッション層4bの厚みもクッション層4の厚みよりも薄いことと、第一クッション層4a及びセパレータ4cの変形角緩和効果によって、椅子脚20の荷重点近傍における表面層5の変形角が過度に大きくならないようにすることができ、表面層5における過度の局所的な凹みを防止することができ、表面層5に亀裂が生じることをより効果的に抑制できる。従って、使用者が載った場合には柔らかい使用感を感じさせることができる機能は維持しつつ、4本脚の椅子や脚立を用いた場合には凹状の跡がついてしまったり亀裂が生じたりしないようにすることが可能な浴室用洗い場床を提供することができる。
【0049】
更に本実施形態では、荷重分散領域を平板状のセパレータ4cによって形成しているので、第一クッション層4a及び第二クッション層4bの間において表面層5と沿うように配置することができ、表面層5に加わる力を第一クッション層4aから第二クッション層4bへとより広範囲に広がるように伝達することができる。
【0050】
更に本実施形態では、セパレータ4cとして鉄板を用いて面剛性を他の部分よりも高くなるように構成しているので、面を貫く方向に加わる外力を面に沿った方向に分散することができ、表面層5に加わる力を第一クッション層4aから第二クッション層4bへとより広範囲に広がるように伝達することができる。
【符号の説明】
【0051】
2:凹部
4:クッション層
4a:第一クッション層
4b:第二クッション層
4c:セパレータ
5:表面層
5a:厚肉部
5b:薄肉部
5c:薄肉部
6:縁部
8:側壁部
10:支持基材層
11:シーリング材
12:溝
50:壁パネル
BR:浴室
FP:浴室用洗い場床
20:椅子脚
22:足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支えるための支持基材層と、
前記支持基材層の上に積層され、弾性変形可能なクッション層と、
前記クッション層の上に積層され、耐久性及び可撓性を有する表面層と、を備えた浴室用洗い場床であって、
前記クッション層は、前記表面層側に配置された第一クッション領域と、前記支持基材層側に配置された第二クッション領域と、前記第一クッション領域と前記第二クッション領域とに挟まれて配置された荷重分散領域とを有し、
前記荷重分散領域は、前記第一クッション領域から前記第二クッション領域に力を伝達する際に、力を伝える範囲がより広がるように伝達することを特徴とする浴室用洗い場床。
【請求項2】
前記荷重分散領域は、平板状を成すように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の浴室用洗い場床。
【請求項3】
前記荷重分散領域は、前記表面層、前記第一クッション領域、及び前記第二クッション領域よりも面剛性が高くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室用洗い場床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−117141(P2011−117141A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273514(P2009−273514)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】