説明

浴槽及びこれを備えた浴室

【課題】浴槽への出入りをスムーズ且つ容易に行うことができ、浴槽内の入浴スペースを充分に確保できる浴槽又はこの浴槽を備えた浴室を提供する。
【解決手段】浴槽本体3のフランジ4の洗い場15側のコーナー部9の上面に回動自在な回動座部12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴槽及びこれを備えた浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に入浴者が浴槽から出入りするには洗い場側の浴槽壁を跨いで乗り越えるという動作を行うが、この動作は高齢者や身体障害者にとっては大きな負担となり、また、浴槽壁が高い場合には一般の入浴者にとっても難しいものである。このため例えば浴槽に入る場合には、洗い場側を向いて洗い場側に両脚を位置させた状態で浴槽のフランジに腰掛け、この後、浴槽壁を跨ぎつつ臀部をフランジ上を滑らせながら体を浴槽側に向け、これにより両脚を浴槽側に移動して浴槽に入ることがある。しかし、このような動作はフランジに対して臀部を滑らせながら体の向きを変える必要があり、特にフランジに対して臀部をターンさせることがスムーズにできないという問題がある。
【0003】
また、例えば特許文献1の浴槽には、浴槽内に昇降装置を設置し、該昇降装置の上面に入浴者が座ることができる座部を回動自在に設けてあるが、このものは浴槽内に昇降装置を設置する必要があって浴槽の入浴スペースが狭くなり、また座部が洗い場から遠く離れているため洗い場に居る人が座部に座るために移動する必要があり、また座部に腰掛けた人が洗い場側に移動し難いという問題がある。
【特許文献1】特開平11−76355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、浴槽への出入りをスムーズ且つ容易に行うことができ、浴槽内の入浴スペースを充分に確保できる浴槽又はこの浴槽を備えた浴室を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る浴槽は、浴槽本体3のフランジ4の洗い場15側のコーナー部9の上面に回動自在な回動座部12を設けて成ることを特徴とする。この構成により、浴槽2から出入りする場合には、回動座部12上に腰掛け、この後、回動座部12を臀部と共に回動して体の向きを変えることができる。また、この回動座部12は浴槽本体3の洗い場15側に位置するフランジ4のコーナー部9の上面に設けているので、洗い場15に居る人は洗い場15から近い位置にある回動座部12に容易に座ることができ、また回動座部12に座った人が洗い場側に容易に移動できる。
【0006】
また、請求項2は請求項1において、前記回動座部12がフランジ4に対して着脱自在であることを特徴とする。回動座部12を使用しない時にフランジ4から回動座部12を取り外すことができる。
【0007】
また、請求項3に係る浴室は、上記請求項1又は請求項2の浴槽2を有する浴室1であって、前記フランジ4の回動座部12を設けたコーナー部9に隣接する浴室壁5aに回動座部12よりも上方に位置して回動座部12に座った人が把持可能な把持部14を設けて成ることを特徴とする。回動座部12に座った人が把持部を把持でき、上記のように浴槽2から出入りする際に入浴者13が把持部14を把持して姿勢を安定させることができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、浴槽から出入りする場合には、回動座部上に腰掛け、この後、回動座部を臀部と共に回動して体の向きを変えることができ、また、洗い場に居る人は洗い場から近い位置にある回動座部に容易に座ることができ、また回動座部に座った人が洗い場側に容易に移動でき、これらによりスムーズ且つ容易に浴槽から出入りできる。また、浴槽本体内には入浴者を支持するものを配置する必要がないので、浴槽本体内の入浴スペースを確保できる。また、背景技術の欄で示した昇降装置のような入浴者を支持するものを配置する必要がなく、浴槽本体内の入浴スペースを充分に確保できる。また浴槽壁を跨いで乗り越える入浴者にとって邪魔にならない位置に回動座部を配置できる。
【0009】
また請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明の効果に加えて、回動座部を使用しない時にフランジから回動座部を取り外すことができて邪魔にならない。
【0010】
また請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、浴槽から出入りする際に入浴者が把持部を把持して姿勢を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態の一例の浴槽2を備えた浴室1の内部の斜視図である。
【0012】
浴槽2の主体を構成する浴槽本体3は従来の一般的な浴槽と同様のものであり、浴槽本体3の上端部には浴槽本体3の全周に亘ってフランジ4を設けている。フランジ4の外周縁は平面視矩形状に形成してあり、浴槽本体3はフランジ4の外周縁の洗い場15側を除く3辺を3方の浴室壁5に隣接させた状態で設置されている。浴槽本体3の上端開口の周縁をなすフランジ4の内周縁6は、四方の直線縁7と、直線縁7間を滑らかに接続する弧状縁8とで構成してあり、フランジ4の各コーナー部9の幅はコーナー部9間の直線部10の幅よりも広くなっている。
【0013】
上記フランジ4の平面視で洗い場15側の一方に位置するコーナー部9の上面中央には上方に向けて支持軸11を突設している。このコーナー部9の上方には円盤状の回動座部12を配置してあり、回動座部12の中心には下方から上記支持軸11を回動自在に挿入してあり、該支持軸11により回動座部12はフランジ4の上面と平行な水平面内で回動自在に支持されている。回動座部12の上面は略水平な臀部載置面となり、入浴者13は例えば図1の想像線で示すように浴槽2から出入りする際に回動座部12上に臀部を載置して腰掛けることができる。
【0014】
上記回動座部12は支持軸11に対して着脱自在としてある。従って回動座部12を使用しない場合には、フランジ4から回動座部12を取り外すことができて邪魔にならず、また、フランジ4の上面の略全体に亘って風呂蓋の外周部を載置でき、浴槽本体3内を保温できる。
【0015】
また、上記フランジ4の回動座部12を設けたコーナー部9に隣接する浴室壁5aには、回動座部12に座った人が把持可能な把持部14として、上下両端部を浴室壁5aに接続した上下に長い握りバー14aを設けている。握りバー14aは回動座部12に座った人が把持しやすい位置、即ち回動座部12の近傍で且つ回動座部12よりも上方の位置に配置してある。また、握りバー14aはフランジ4よりもやや洗い場15側に配置してあり、洗い場15に居る人や洗い場15側に脚を置いて回動座部12に座った人にとって把持しやすい位置にある。なお、本例では握りバー14aの全体を回動座部12よりも上方に配置したが、例えば握りバー14aの上部のみが回動座部12よりも上方に位置し且つ下部が回動座部12やフランジ4よりも下方に位置するように設けても良く、即ち、少なくとも回動座部12よりも上方の位置に回動座部12に座った人が把持可能な把持部14を設けてあれば良い。
【0016】
上記本例の浴槽2は浴槽本体3のフランジ4の洗い場15側のコーナー部9の上面に回動自在な回動座部12を設けているので、高齢者などの体の不自由な人でも簡単に浴槽2から出入りすることができる。即ち、回動座部12を利用して洗い場15から浴槽2に移動する場合には、図1に示すように入浴者13が洗い場15側を向いて洗い場15側に両脚を位置させた状態で回動座部12上に臀部を載置して腰掛け、この後、浴槽壁16を跨いで回動座部12を臀部と共に矢印に示す方向に回動し、これにより浴槽2側を向くと共に浴槽2側に両脚を移動すれば良い。また浴槽2から洗い場15に移動する場合には、入浴者13が浴槽2側を向いて浴槽2側に両脚を位置させた状態で回動座部12上に臀部を載置して腰掛け、この後、浴槽壁16を跨いで回動座部12を臀部と共に矢印に示す方向に回動し、これにより浴槽2側を向くと共に浴槽2側に両脚を移動すれば良く、いずれの場合も臀部を回動座部12と共にターンしてスムーズ且つ容易に体の向きを変えることができる。また、回動座部12は浴槽本体3の洗い場15側に位置するフランジ4のコーナー部9の上面に設けているので、回動座部12を洗い場15に近い位置に配置できる。従って、洗い場15に居る人は回動座部12に容易に移動でき、また回動座部12に座った人が洗い場側に容易に移動できる。また浴槽本体3内には背景技術の欄で示した昇降装置のような入浴者13を支持するものを配置する必要がないので、浴槽本体4内の入浴スペースを確保できる。さらには浴槽壁16を跨いで乗り越える入浴者13にとって邪魔にならない位置に回動座部12を配置できる。また、本例の浴室壁5aには回動座部12に座った人が把持可能な把持部14(握りバー14a)を設けているので、上記のように浴槽2から出入りする際に入浴者13が把持部14を把持して姿勢を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の一例の浴槽を備えた浴室内の斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 浴室
2 浴槽
3 浴槽本体
4 フランジ
9 コーナー部
12 回動座部
15 洗い場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽本体のフランジの洗い場側のコーナー部の上面に回動自在な回動座部を設けて成ることを特徴とする浴槽。
【請求項2】
前記回動座部がフランジに対して着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の浴槽。
【請求項3】
上記請求項1又は請求項2の浴槽を有する浴室であって、前記フランジの回動座部を設けたコーナー部に隣接する浴室壁に回動座部よりも上方に位置して回動座部に座った入浴者が把持可能な把持部を設けて成ることを特徴とする浴室。

【図1】
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【公開番号】特開2008−289813(P2008−289813A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141112(P2007−141112)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(505154956)パナソニック電工バス&ライフ株式会社 (306)
【Fターム(参考)】