説明

浴用剤組成物

【課題】入浴中に極めて良好なストップフィーリングを生じさせるとともに、入浴後のサッパリ感を著しく向上させる浴用剤組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)亜鉛塩 0.05〜3質量%、
(B)アルカリ土類金属の炭酸塩 0.05〜5質量%
を含有する浴用剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夏場の入浴に適した浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴後、特に夏場の入浴後には、発汗を抑えてサッパリ感を得ることが求められている。そこで、従来、制汗効果が高く入浴後にサッパリ感を付与する入浴剤組成物として、アルミニウム塩及び冷感剤を配合したものが報告されている(特許文献1)。
さらに入浴後のサッパリ感の持続性を改善した浴用剤組成物として、有機酸亜鉛化物を配合したものが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−116136号公報
【特許文献2】特開2000−204033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの浴用剤組成物は入浴後のサッパリ感に関して優れた効果を有しているものの、近年の夏場の気温上昇などに伴い、更に高い効果が求められるようになってきた。また、これまでの浴用剤組成物では、入浴中の肌感触については何ら検討されていなかった。
従って、本発明の課題は、入浴後のサッパリ感を著しく向上させるとともに、入浴中に極めて良好なストップフィーリングを生じさせる浴用剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、入浴後のサッパリ感、すなわち収斂作用について鋭意検討を行っていたところ、亜鉛塩と、アルカリ土類金属の炭酸塩とを特定量ずつ含有する浴用剤組成物であれば、入浴後のサッパリ感が飛躍的に向上することを見出した。更にこの浴用剤組成物は、従来の入浴剤にはない極めて良好なストップフィーリングが入浴中に生じることを見出した。
なお、本発明における「入浴中のストップフィーリング」とは、入浴中に摩擦抵抗のある肌感触が生じることをいう。これは、一般的には洗浄剤のすすぎ時に求められる感触であり、この感触が入浴中に生じることにより、入浴中にあたかも洗浄剤のすすぎが終了したかのようなさわやかさを感じるのである。この感触は、亜鉛塩単独ではほとんど生じる感触ではなく、アルカリ土類金属の炭酸塩と併用したときに初めて生じる感触である。
一方、アルカリ土類金属の炭酸塩である炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムは共に研磨作用を有することが知られているため、例えば歯磨き粉に研磨剤として、或いは浴用剤にスクラブ剤(摩擦を加える動作によって皮膚に機械的刺激を与える固形状物)として配合されている(特開平9−208483号公報)。また、炭酸カルシウムは、浴用剤に白濁成分としても配合されている。しかしながら、これらアルカリ土類金属の炭酸塩自体には上記のような入浴後のサッパリ感や入浴中のストップフィーリングがないことから、上記の効果が奏されるのは極めて予想外のことである。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)亜鉛塩 0.05〜3質量%、
(B)アルカリ土類金属の炭酸塩 0.05〜5質量%
を含有する浴用剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の浴用剤組成物は、入浴中に極めて良好なストップフィーリングを生じさせるとともに、入浴後のサッパリ感を著しく向上させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】アルカリ土類金属の炭酸塩等がスルホ石炭酸亜鉛の収斂作用(サッパリ感)に及ぼす影響を示す図である。
【図2】炭酸マグネシウムが亜鉛塩等の収斂作用(サッパリ感)に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の浴用剤組成物における成分(A)亜鉛塩としては、その種類は特に制限されるものではなく、例えば、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の無機酸の亜鉛塩;クエン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、コハク酸亜鉛、スルホ石炭酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛等の有機酸の亜鉛塩等が挙げられる。これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、入浴中のストップフィーリング及び入浴後のサッパリ感が良好な点から、有機酸の亜鉛塩が好ましく、特に、スルホ石炭酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛が好ましく、中でもスルホ石炭酸亜鉛が好ましい。
【0010】
本発明の浴用剤組成物中、成分(A)亜鉛塩の含有量は、入浴中のストップフィーリング及び入浴後のサッパリ感が良好な点から0.05〜3質量%である。更に0.1〜2.8質量%、殊更0.2〜2.5質量%であると入浴中の肌感触が変化し良好なストップフィーリングが奏されるとともに入浴後の身体にとって極めて心地良いサッパリ感が奏されるため好ましい。
また、入浴時の本発明組成物の1回の使用量は、浴湯中の亜鉛塩の濃度が0.1〜8ppmとなる量とすることが好ましい。
【0011】
本発明の浴用剤組成物における成分(B)アルカリ土類金属の炭酸塩の種類は特に制限されるものではないが、入浴中のストップフィーリング及び入浴後のサッパリ感が良好な点から、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが好ましい。これらは単独で用いてもよく2種を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明の浴用剤組成物中、成分(B)の含有量は、入浴中のストップフィーリング及び入浴後のサッパリ感が良好な点から0.05〜5質量%である。更に0.1〜4質量%、殊更0.2〜3質量%であると入浴に支障をきたすような溶け残りが生じることもなく、入浴中に良好なストップフィーリングが奏されるとともに入浴後の身体にとって極めて心地良いサッパリ感が奏されるため好ましい。
【0013】
本発明の浴用剤組成物における成分(A)亜鉛塩と、成分(B)アルカリ土類金属の炭酸塩の質量比は、入浴中のストップフィーリング及び入浴後のサッパリ感がより良好な点から、10:1〜1:10が好ましく、10:2〜2:10がより好ましく、10:3〜3:10が特に好ましい。このような比率で成分(A)と成分(B)を含有させた浴用剤組成物であれば、入浴中に極めて良好なストップフィーリングが生じ、なおかつ、入浴後のサッパリ感が飛躍的に向上する。
【0014】
本発明の浴用剤組成物には、更に成分(C)炭酸ガス発生物を含有させてもよい。炭酸ガス発生物を含有させると、更に入浴後のサッパリ感の持続効果がもたらされるため好ましい。炭酸ガス発生物は、浴用剤組成物を浴湯に投入したときに炭酸ガスを発生させるものであり、酸と一価の炭酸塩とを組み合わせたものが好ましい。酸としては、有機酸及び無機酸の何れでも使用できるが、水溶性で固体のものが好ましく、中でも、例えばコハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸などの有機酸が特に好ましい。無機酸としてはホウ酸、メタケイ酸、無水ケイ酸等が挙げられる。また一価の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどが好ましい。これらの酸及び一価の炭酸塩はそれぞれから選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
本発明の浴用剤組成物中、(C)炭酸ガス発生物の含有量は、特に制限されないが、浴湯中の炭酸ガスを溶解した状態で存在せしめることができるような含有量にすれば、優れた血行促進効果が得られる。
本発明の浴用剤組成物中、入浴後のサッパリ感の持続効果の点から、より好ましい酸の含有量は、10〜80質量%であり、特に好ましくは15〜50質量%である。また、より好ましい一価の炭酸塩の含有量は、5〜80質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。
【0016】
本発明の浴用剤組成物には、さらに、浴用剤組成物を浴湯中に投入した際に成分(A)や成分(B)の分散性を高め、肌感触を変化させて入浴中に良好なストップフィーリングを生じさせる点から、水溶性高分子を含有させても良い。水溶性高分子は、分散性や肌感触に加え、浴用剤組成物を錠剤、顆粒等の固形状とした場合の保形性の点から、分子量1000〜20000のポリエチレングリコールが好ましい。
【0017】
本発明の浴用剤組成物中、水溶性高分子の含有量は、1〜25質量%、さらに2〜20質量%、特に2.5〜15質量%、殊更5〜10質量%であるのが好ましい。
本発明の浴用剤組成物における成分(A)亜鉛塩と、水溶性高分子の質量比は、入浴中のストップフィーリング及び入浴後のサッパリ感がより良好な点から、2:1〜1:500が好ましく、1:1〜1:200がより好ましく、1:2〜1:100が特に好ましい。このような比率で成分(A)亜鉛塩と水溶性高分子を含有させた浴用剤組成物であれば、入浴中に極めて良好なストップフィーリングが生じ、なおかつ、入浴後のサッパリ感が飛躍的に向上する。
【0018】
更に、本発明の浴用剤組成物中には上記以外の成分、例えば酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、メタリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の無機塩類、トレハロース、エリスリトール、乳糖、還元水アメ、ブドウ糖等の糖類、生薬類、油脂類、アルコール類、多価アルコール類、界面活性剤、香料、色素、保湿剤、冷感剤等を本発明に影響を与えない範囲で適宜添加してもよい。
【0019】
本発明の浴用剤組成物は、成分(A)亜鉛塩に成分(B)アルカリ土類金属の炭酸塩、必要により前記任意成分を加え、常法によって混合することにより調製される。また、剤型としては、粉末、顆粒、錠剤等が挙げられる。尚、これらの剤型に通常使用されている賦形剤、滑沢剤等を添加することができる。
【実施例】
【0020】
参考試験1
《収斂作用の評価方法》
収斂作用の評価については、J.Agric.Food Chem.,1998,46,2590-2595に記載の方法を一部改変して実施した。
すなわち、1%BSA溶液に図1及び2に示す各サンプルをそれぞれ添加し、混合後、38℃、15分間インキュベートした後に吸光度(OD550)を測定し、吸光度(OD550)の数値の大きさを収斂作用(サッパリ感)の指標として評価した。結果を図1及び2に示す。
なお、この評価方法は、下記のとおりタンパク凝集度(濁度)を指標にして収斂作用の度合いが評価できることに基づくものである。
1)亜鉛塩は、タンパク(ここではBSA:牛血清アルブミン)と混合するとタンパク質と亜鉛塩が結合する結果、凝集反応を起こし、タンパク溶液は白濁する。
2)収斂作用が高いと凝集の程度が高くなるため、溶液の濁度も高くなる。
3)他方、収斂作用が低いと凝集の程度は低くなるため、濁度も低くなる。
【0021】
図1より、スルホ石炭酸亜鉛には収斂作用(サッパリ感)が認められるが、炭酸カルシウム単独、炭酸マグネシウム単独では収斂作用(サッパリ感)が認められないことが判る。しかし、スルホ石炭酸亜鉛と炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムとを組み合わせると、スルホ石炭酸亜鉛の収斂作用(サッパリ感)が飛躍的に増強されることが判る。これに対し、フマル酸、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウムをスルホ石炭酸亜鉛と組み合わせても、スルホ石炭酸亜鉛の収斂作用(サッパリ感)は増強されない。
【0022】
また、図2より、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛に炭酸マグネシウムを組み合わせた場合も、収斂作用(サッパリ感)が飛躍的に増強されることが判る。これに対し、アルミニウム化合物であるミョウバンに炭酸マグネシウムを組み合わせても収斂作用(サッパリ感)は増強されない。
【0023】
実施例1〜6、比較例1〜5
表1〜2に示す入浴剤処方(1回使用量40g)を用い、専門パネラー5人に150〜200Lのお湯(38〜40℃)に入浴剤を溶解後、入浴させ、入浴中のストップフィーリング、入浴後のさっぱり感を下記に示す基準にて評価を行い、スコアの平均値を算出し比較した。結果を表1及び2に示す。
【0024】
[入浴中の肌のストップフィーリング]
5:非常にストップフィーリングを感じる
4:ストップフィーリングを感じる
3:ストップフィーリングをやや感じる
2:どちらでもない
1:ストップフィーリングを感じない
[入浴後(0〜5分)の肌のさっぱり感]
5:非常に良好にさっぱりする
4:良好にさっぱりする
3:ややさっぱりする
2:さっぱりしない
1:べたべたする
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
表1〜2より明らかなように、亜鉛塩に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムを特定量ずつ組み合わせることにより、入浴後のさっぱり感、入浴中のストップフィーリングが十分に認知されることが明らかとなった。また、当該評価の結果は、前記参考試験1における結果と正の相関性を示した。
【0028】
実施例7 入浴剤
【0029】
【表3】

【0030】
実施例8 入浴剤
【0031】
【表4】

【0032】
実施例9 入浴剤
【0033】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)亜鉛塩 0.05〜3質量%、
(B)アルカリ土類金属の炭酸塩 0.05〜5質量%
を含有する浴用剤組成物。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の質量比がA:B=10:1〜1:10である請求項1記載の浴用剤組成物。
【請求項3】
(A)亜鉛塩が、有機酸の亜鉛塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の浴用剤組成物。
【請求項4】
(B)アルカリ土類金属の炭酸塩が、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項5】
更に成分(C)炭酸ガス発生物を含有する請求項1〜4の何れか1項に記載の浴用剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235552(P2010−235552A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87640(P2009−87640)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】