説明

浴用剤組成物

【課題】入浴後のサッパリ感を著しく向上させるとともに、入浴中に極めて良好な肌のしっとり感を生じさせる浴用剤組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)亜鉛化合物
(B)硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類
を含有し、かつ成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量が、質量比で0.10〜0.98である浴用剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夏場の入浴に適した浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴後、特に夏場の入浴後には、発汗を抑えてサッパリ感を得ることのできる浴用剤が望まれる。こうした中、入浴後のサッパリ感の持続性を改善した浴用剤組成物として、スルホ石炭酸亜鉛やグルコン酸亜鉛等の有機亜鉛化物を特定の量で配合したものが報告されている(特許文献1参照)。また、酸化亜鉛の粒径を特定することにより、優れた爽快感が付与された入浴剤も報告されている(特許文献2参照)。さらに、製造時においてはスティッキングを起こさず、また保存中においても崩壊しない圧縮成形型浴用剤を提供すべく、水溶性亜鉛化合物と特定の水溶性高分子とを特定量で配合した浴用剤も報告されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−204033号公報
【特許文献2】特開平11−246391号公報
【特許文献3】特開2005−232023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の夏場における激しい気温上昇等に伴い、こうしたサッパリ感にもさらに高い効果を発揮し得る浴用剤が強く求められている。また、上記いずれの浴用剤も入浴中の肌感触については何ら検討されておらず、優れたサッパリ感と入浴中の良好な肌感触とを共にもたらす浴用剤については検討の余地があった。
【0005】
従って、本発明の課題は、入浴後のサッパリ感を著しく向上させるとともに、入浴中に極めて良好な肌のしっとり感を生じさせる浴用剤組成物を提供することにある。なお、本発明における「入浴中の肌のしっとり感」とは、入浴中に滑らかな肌感触が生じることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、入浴後のサッパリ感、すなわち収斂作用について鋭意検討を行っていたところ、亜鉛化合物と、硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類とを特定の比で含有する浴用剤組成物であれば、入浴後におけるサッパリ感が飛躍的に向上する上に、入浴中には、極めて良好な肌のしっとり感を生じさせることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)亜鉛化合物
(B)硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類
を含有し、かつ成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量が、質量比で0.10〜0.98である浴用剤組成物を提供するものである。
【0008】
上記成分(B)の硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類である、カラギーナンやカルボキシメチルセルロース等は、結合剤等の用途で浴用剤に添加されることはあるものの、上記のような入浴後のサッパリ感を奏するものではないため、これらの多糖類と亜鉛化合物とを特定の比で組み合わせることにより、入浴後のサッパリ感が飛躍的に向上する効果が奏されるのは予想外のことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の浴用剤組成物は、入浴中に極めて良好な肌のしっとり感を生じさせるとともに、入浴後のサッパリ感を著しく向上させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類等がスルホ石炭酸亜鉛の収斂作用(サッパリ感)に及ぼす影響を示す図である。
【図2】カラギーナン及びカルボキシメチルセルロースが亜鉛化合物等の収斂作用(サッパリ感)に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の浴用剤組成物における成分(A)亜鉛化合物としては、例えば、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の無機酸の亜鉛化合物;クエン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、コハク酸亜鉛、スルホ石炭酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛等の有機酸の亜鉛化合物;酸化亜鉛等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、入浴後のサッパリ感及び後述する成分(B)との併用により入浴中の肌のしっとり感が良好な点から、有機酸の亜鉛化合物が好ましく、特にグルコン酸亜鉛、スルホ石炭酸亜鉛がより好ましく、スルホ石炭酸亜鉛が最も好ましい。
【0012】
本発明の浴用剤組成物100質量%中、成分(A)亜鉛化合物の含有量は、入浴後のサッパリ感及び後述する成分(B)との併用による入浴中の肌のしっとり感が良好な点から、好ましくは0.05〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.5質量%、最も好ましくは0.2〜2.0質量%である。成分(A)の含有量が上記範囲内であると、入浴後の身体にとって極めて心地良いサッパリ感が奏されるとともに、後述する成分(B)との併用により入浴中の肌感触が変化してより良好なしっとり感が奏されるため好ましい。
【0013】
また、入浴時の本発明組成物の1回の使用量は、浴湯中の亜鉛化合物の濃度が0.1〜8ppmとなる量とするのが好ましい。
【0014】
本発明の浴用剤組成物における成分(B)硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類の種類は、入浴中の肌のしっとり感及び入浴後のサッパリ感が良好な点から、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸ナトリウムが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、成分(A)と相まって入浴後のサッパリ感をより向上させ得る点から、特にカルボキシメチルセルロース、カラギーナンが好ましい。
【0015】
本発明の浴用剤組成物100質量%中、成分(B)の含有量は、入浴中の肌のしっとり感及び入浴後のサッパリ感が良好な点から、好ましくは0.01〜3.0質量%であり、より好ましくは0.015〜2.5質量%であり、更に好ましくは0.02〜2.0質量%であり、殊更好ましくは0.025〜0.9質量%であり、最も好ましくは0.03〜0.4質量%である。成分(B)の含有量が上記範囲内であると、入浴中により良好なしっとり感が奏されるとともに、入浴後の身体にとって極めて心地よいサッパリ感が奏されるため好ましい。
【0016】
本発明の浴用剤組成物における成分(A)亜鉛化合物の含有量に対する、成分(B)硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類の含有量の質量比は、入浴中の肌のしっとり感および入浴後のサッパリ感がより良好な点から、0.10〜0.98である。さらに0.15〜0.70が好ましく、中でも0.20〜0.60、特に0.30〜0.50が特に好ましい。このような比率で成分(A)と成分(B)とを含有させた浴用剤組成物であれば、入浴中に極めて良好な肌のしっとり感が生じ、なおかつ、成分(A)と成分(B)とが相まって入浴後のサッパリ感が飛躍的に向上することとなる。
【0017】
本発明の浴用剤組成物には、さらに成分(C)炭酸ガス発生物を含有させてもよい。炭酸ガス発生物を含有させると、血管拡張による入浴後の熱放散が加わり、入浴後のサッパリ感の持続効果がもたらされるため好ましい。炭酸ガス発生物は、浴用剤組成物を浴湯に投入したときに炭酸ガスを発生させるものであり、酸と炭酸塩とを組み合わせたものが好ましい。酸としては、有機酸及び無機酸の何れでも使用できるが、水溶性で固体のものが好ましく、中でも、例えばコハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸などの有機酸が特に好ましい。無機酸としてはホウ酸、メタケイ酸、無水ケイ酸等が挙げられる。また炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどが好ましい。これらの酸及び炭酸塩は、それぞれから選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
本発明の浴用剤組成物中における成分(C)炭酸ガス発生物の含有量について、入浴後のサッパリ感の持続効果の点から、より好ましい酸の含有量は、本発明の浴用剤組成物100質量%中、10〜80質量%であり、特に好ましくは15〜50質量%であり、殊更好ましくは20〜49質量%である。また、より好ましい炭酸塩の含有量は、5〜80質量%、特に好ましくは10〜50質量%であり、殊更好ましくは15〜49質量%である。
【0019】
さらに、本発明の浴用剤組成物中には上記以外の成分、例えば酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、メタリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の無機塩類;トレハロース、エリスリトール、乳糖、還元水飴、ブドウ糖等の成分(B)以外の糖類;生薬類;油脂類;アルコール類;多価アルコール類;界面活性剤;香料;色素;保湿剤;冷感剤等を、本発明に影響を与えない範囲で適宜添加してもよい。
【0020】
本発明の浴用剤組成物は、成分(A)亜鉛化合物に成分(B)硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類、必要により成分(C)等の前記任意成分を加え、常法によって混合することにより調製される。また、剤型としては、粉末、顆粒、錠剤等が挙げられる。なお、これらの剤型に通常使用されている賦形剤、滑沢剤等を添加することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
[参考試験1]
《収斂作用の評価方法》
収斂作用の評価については、J. Agric. Food Chem., 1998, 46, 2590-2595に記載の方法を一部改変して実施した。
【0023】
すなわち、1%牛血清アルブミン(BSA)溶液に図1及び2に示す各サンプルをそれぞれ添加し、混合後、38℃、20分間インキュベートした後に吸光度(OD550:TECAN Austria GmbH 製の SUNRISE RAINBOW THERMO にて光路長6mm、波長550nm、96穴型プレートを用いた測定時の濁度)を測定し、吸光度(OD550)の数値の大きさを収斂作用(サッパリ感)の指標として評価した。結果を図1〜2に示す。
【0024】
なお、この評価方法は、下記のとおりタンパク質凝集度(濁度)を指標にして収斂作用の度合いが評価できることに基づくものである。
1)亜鉛化合物は、タンパク(ここではBSA:牛血清アルブミン)と混合するとタンパク質と亜鉛化合物が結合する結果、凝集反応を起こし、タンパク溶液は白濁する。
2)収斂作用が高いと凝集の程度が高くなるため、溶液の濁度も高くなる。
3)他方、収斂作用が低いと凝集の程度は低くなるため、濁度も低くなる。
【0025】
図1より、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム単独では収斂作用(サッパリ感)が認められないことがわかる。しかし、スルホ石炭酸亜鉛とこれらカルボキシメチルセルロース、カラギーナンやアルギン酸ナトリウムとを組み合わせると、スルホ石炭酸亜鉛の収斂作用(サッパリ感)が飛躍的に増強されることがわかる。これに対し、炭酸ナトリウム、フマル酸、ヒドロキシエチルセルロース、プルランをスルホ石炭酸亜鉛と組み合わせても、スルホ石炭酸亜鉛の収斂作用(サッパリ感)は増強されないことがわかる。
【0026】
また図2より、グルコン酸亜鉛にカルボキシメチルセルロースやカラギーナンを組み合わせた場合も、収斂作用(サッパリ感)が飛躍的に増強されることがわかる。これに対し、アルミニウム化合物であるミョウバンにカルボキシメチルセルロースやカラギーナンを組み合わせても、収斂作用(サッパリ感)は増強されないことがわかる。
【0027】
[実施例1〜6、比較例1〜3]
表1〜2に示す処方に基づいて混合することにより調製した入浴剤(1回の使用量50g)を用い、専門パネラー5人に150〜200Lのお湯(38〜40℃)に入浴剤を溶解後、入浴させ、入浴中の肌のしっとり感、入浴後のサッパリ感を下記に示す基準にて評価を行い、スコアの平均値を算出し比較した。結果を表1〜2に示す。
【0028】
《入浴中の肌のしっとり感》
5:非常にしっとりする
4:しっとりする
3:ややしっとりする
2:どちらでもない
1:しっとりしない
【0029】
《入浴後(0〜5分)の肌のサッパリ感》
5:非常に良好にサッパリする。
4:良好にサッパリする
3:ややサッパリする
2:サッパリしない
1:べたべたする
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
表1〜2より明らかなように、亜鉛化合物にカルボキシメチルセルロース、カラギーナンなどの硫酸基やカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類を特定量ずつ組み合わせることにより、入浴後のサッパリ感、入浴中の肌のしっとり感が十分に認知されることがわかる。また、当該評価の結果は、前記参考試験1における結果と正の相関性を示した。
【0033】
[実施例7〜8]
表3〜4に示す処方に従って、各入浴剤を得た。これら入浴剤を150〜200Lのお湯(38〜40℃)に溶解して入浴したところ、入浴中の肌のしっとり感及び入浴後のサッパリ感が十分に認知された。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)亜鉛化合物
(B)硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類
を含有し、かつ成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量が、質量比で0.10〜0.98である浴用剤組成物。
【請求項2】
前記成分(B)硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類が、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン及びアルギン酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の浴用剤組成物。
【請求項3】
前記成分(B)硫酸基もしくはカルボキシル基を有するアニオン性の多糖類の含有量が、0.01〜3.0質量%である請求項1又は2に記載の浴用剤組成物。
【請求項4】
前記成分(A)亜鉛化合物が、有機酸の亜鉛化合物である請求項1〜3の何れか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項5】
前記成分(A)亜鉛化合物の含有量が、0.05〜3.0質量%である請求項1〜4の何れか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項6】
さらに、成分(C)炭酸ガス発生物を含有する請求項1〜5の何れか1項に記載の浴用剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−72088(P2012−72088A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218633(P2010−218633)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】