説明

浴用剤

【課題】水素水での入浴を簡便にかつ安全に行うことができる浴用剤を提供する。
【解決手段】浴用剤に微粒子化した水素化マグネシウムを配合する。前記水素化マグネシウムは、水深20cmの40℃の水槽中に、水1リットルに対して前記水素化マグネシウムを2.5mgの割合で添加したとき、30分後の溶存水素量が0.01mmol/L以上となり、且つ、浮上しないような粒径とされていることが好ましい。また、その平均粒径が10〜120μmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素水での入浴を簡便にかつ安全に行うことができる浴用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水に気体水素を溶存させると、その水(水素水)は、酸化還元電位(ORP)が還元側にシフトして、抗酸化能が付与された機能水となる。皮膚老化防止、酸化ストレスの減少、成人病予防、アンチエージングによる健康維持など、幅広い分野での応用が期待されている。
【0003】
このような機能性を有する水素水をお風呂のお湯として利用することも試みられている。例えば、特許文献1に、水素水の連続製造方法及びその製造装置並びに水素水を使用した入浴装置及び浴室装置が開示されている。また、特許文献2には、水素化アルカリ土類金属等の水素化合物の粉末が、ポリエチレングリコール、キシリトール、トレハロース等の水溶性化合物に包埋されてなる水素発生剤が開示されており、これを入浴剤に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−6365号公報
【特許文献2】特許第4384227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の入浴装置では、水素ガス供給部が設けられているので、ガス漏れなどの危険を伴うという問題があった。また、特別の設備が必要であり家庭用には不向きであった。一方、上記特許文献2の水素発生剤は、水素化アルカリ土類金属と水とを反応させて水中に水素を発生させるものであるが、水素発生量の制御のためポリエチレングリコール、キシリトール、又はトレハロースに包埋させたり、酸を含有させたりする必要があった。また、その水素発生量を安定に制御しにくいという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、水素水での入浴を簡便にかつ安全に行うことができる浴用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究した結果、微粒子化した水素化マグネシウムと水との反応によって、水素を再現性よく安定に発生させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の浴用剤は、微粒子化した水素化マグネシウムを含有することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、前記水素化マグネシウムは、水深20cmの40℃の水槽中に、水1リットルに対して前記水素化マグネシウムを2.5mgの割合で添加したとき、30分後の溶存水素量が0.01mmol/L以上となり、且つ、浮上しないような粒径とされていることが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記水素化マグネシウムは、水深20cmの40℃の水槽中に、水1リットルに対して該水素化マグネシウムを2.5mgの割合で添加したとき、30分後の溶存水素量が0.01mmol/L以上であって外気への揮散水素量が0.03mmol以下となり、且つ、浮上しないような粒径とされていることが好ましい。
【0011】
また、前記水素化マグネシウムは、その平均粒径が10〜120μmであることが好ましい。
【0012】
本発明の浴用剤は、浴用水1リットルに対して0.5〜125mgの前記水素化マグネシウムが添加されるように調製されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浴用剤によれば、微粒子化した水素化マグネシウムと水との反応によって水素を発生させ、お風呂のお湯の溶存水素量を再現性よく安定に高めることができる。したがって水素水での入浴を簡便にかつ安全に行うことができ、その水素水による抗酸化効果や血流促進効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】試験例1の溶存水素量の変動の結果を平均して示す図表である。
【図2】試験例2の呼気水素量の変動の結果をパネラー毎に示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
水素化マグネシウムは、マグネシウムの金属原子間の隙間に水素を保持してなる化合物であり、下記式(1)の反応式に従って水と反応して水素を放出しながら分解する。
MgH+2HO→Mg(OH)+2H…(1)
【0016】
水素化マグネシウムを製造する方法には種々あるが、例えば特許第4083786号公報や、特許第4425990号公報に開示されている方法によって、効率的に製造することが可能となっている。
【0017】
具体的には、特許第4083786号公報に開示されているように、マグネシウムを主成分とする原料粉体を、封入容器内に封入した水素ガス雰囲気中に保持しておき、その封入容器内の水素ガス雰囲気の圧力を所定圧力に維持しつつ、その封入容器内の水素ガス雰囲気の温度を、単体のマグネシウム及び水素分子が化合して水素化マグネシウムが生成する反応と逆反応との平衡曲線上の前記所定圧力に対応する温度よりも高温で、且つその温度からの温度差が所定値以内である温度に、所定の第1期間維持することによって、前記原料粉体表面の被膜を除去し、次に、その封入容器内の水素ガス雰囲気の温度を、室温へ戻さずに、前記平衡曲線上の前記所定圧力に対応する温度よりも低温で、且つその温度からの温度差が所定値以内である温度に、所定の第2期間維持することによって、前記原料粉体から水素化マグネシウムを製造する。この方法によれば、水素化率の高い水素化マグネシウムを効率的に製造することができる。また、特許第4425990号公報に開示されているように、粉体原料のかわりに、マグネシウムを主成分とする薄片を複数集積して圧縮した圧縮物を作成し、これを水素ガス雰囲気中で水素ガスとを反応させてもよい。この方法によれば、マグネシウムを主成分とする薄片から製造するので、粉塵爆発を起こす可能性がある粉体原料から製造する方法に比べて、より安全に、水素化率の高い水素化マグネシウムを効率的に製造することができる。
【0018】
なお、水素化率とは、MgHの分子量26とMgの分子量24に従って理想的に吸蔵され得る水素量に対する百分率であり、水素化マグネシウムの製造時に水素吸蔵前後の質量を測定して、下記式(2)のようにして求められる。
【0019】
【数1】

【0020】
上記の方法などにより得られる水素化マグネシウムは、通常その水素化率は70〜100程度、より好ましくは90〜100%程度であり他の水素吸蔵合金と比べても高く、化学的劣化に対しても安定であり、輸送、供給、貯蔵等の作業性の面でも扱いやすく、非常に優れた水素吸蔵体ではあるが、その一方で水中での水との反応が遅く、水素発生速度の面からは難がある。
【0021】
そこで本発明の浴用剤は、微粒子化した水素化マグネシウムを用いる。これによれば、酸などで反応を促進しなくても、後述の実施例に示すように、浴用剤として好適な水素発生を実現することができる。また、細かな気体粒となって水素が発生するので、発生した水素は外気に揮散してしまわずに水との溶存状態を作りやすい。水素化マグネシウムの平均粒径は10〜120μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましい。平均粒径が大きいと水素発生速度が低下する傾向があり、またお湯に入れて使用したときに水素化マグネシウムのざらつき感が残ってしまう傾向がある。平均粒径が小さすぎると微粒子化による静電気の増大や濡れ性の低下から、お湯に入れて使用したときに表面に浮いてしまい溶存水素量を増加させにくくなる傾向がある。具体的には、水深約20cmの40℃の水槽中に、水1リットルに対して前記水素化マグネシウムを2.5mgの割合で添加したとき、30分後の溶存水素量が0.01mmol/L以上、より好ましくは0.03mmol/L以上となり、且つ、浮上しないような粒径とされていることが好ましい。更に、その条件で外気への揮散水素量が0.03mmol以下、好ましくは0.01mmol以下となる粒径とされていることが好ましい。
なお、水素化マグネシウムの平均粒径を求める測定方法としては、粉末X線回折装置によって観察される回折ピーク形状の解析から粒径値を見積もる方法が簡便であり、好ましく用いられる。微粒子化は公知の方法で行えばよく特にその装置、方法等に制限はない。例えばジェットミルや高圧ガスの超微粉砕機などを用いることができる。また、乳鉢での粉砕なども簡易な方法として用いられる。
【0022】
本発明の浴用剤は、例えば200L用浴用剤25g中に、上記の水素化マグネシウムを0.1〜25g含有することが好ましく、0.5〜20g含有することがより好ましく、0.5〜10g含有することが最も好ましい。その剤形的形態は、水素化マグネシウムが水分と反応してしまうのを避けるため、水分含量の少ない配合原料とともに混合してなる粉体であることが好ましい。
【0023】
本発明の浴用剤には、上記の水素化マグネシウム以外に公知の添加物やその他の成分を添加することができる。例えば、エタノール等のアルコール類、非イオン界面活性剤、多糖類、低分子糖類、天然油脂、乳化剤、香料などが例示される。
【0024】
本発明の浴用剤は、上記水素化マグネシウムが浴用水1リットルに対して0.5〜125mg、より好ましくは2.5〜50mg添加されるように調製されていることが好ましい。そして、その使用時において、お湯に浴用剤を入れてから15分の間に溶存水素量が0.01mmol/L以上に増加し、その後60分までに0.03mmol/L以上に増加するように調製されていることが好ましく、お湯に浴用剤を入れてから15分の間に溶存水素量が0.04mmol/L程度に増加し、その後60分までに0.05mmol/L程度に増加するように調製されていることがより好ましい。
【実施例】
【0025】
以下に例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
<製造例1>
特許第4425990号公報に開示されている方法にてインゴット形状の水素化マグネシウム(水素化率90〜95%)を調製し、これをミル機で粗く砕いて0.1mm程度に粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕化した。得られた水素化マグネシウムの粒径は、粉体X線回折装置を用いた解析によると60μmであった。
【0027】
<試験例1>
製造例1で得られた水素化マグネシウムを、市販の浴用剤成分に0.5g配合して、浴用剤25g(200L用)を調製した。
【0028】
また、熱帯魚用の水槽(横60cm×縦30cm×奥行き40cm)に水道水のお湯50L(水深20cm)を入れ、ヒーターで水温を40℃に保ち浴槽モデルとした。これに上記浴用剤の1/4量の6.25gを入れ、50cm長のプラスチック定規で2往復撹拌した。その後、水流は特に起こさずに静置して、浴用剤を入れた時間から0、15、30、60、120、180分後の溶存水素濃度を測定した。計測には溶存水素計「Micro-sensor Multi-Meter(H2 sensor)」(UNISENSE社製)を用い、その電極を水槽内のお湯に入れたままにして、時間ごとの計測値を観測した。なお、室内は特に換気は行わず、設置してある空調で温度湿度の管理を行った。試験は日時をかえて計8回行った。
【0029】
表1には計8回の試験の結果を示し、図1にはその平均をグラフにして示す。
【0030】
【表1】

【0031】
その結果、浴用剤を入れてから0〜15分の間に溶存水素量が平均で0.036mmol/L程度に増加し、その後も時間の経過とともに溶存水素量が徐々に増加した。なお、表1、図1には示さないが、テスト6〜8の計測を180分以降も続けたときの溶存水素量は、最大で0.1mmol/Lに達し、その後その値を維持する傾向が認められた。この濃度は飽和溶存水素濃度の12.5%に相当する高い値であった。
【0032】
<試験例2>
水素水で入浴した際のヒトの呼気中の水素量の増減を調べた。
【0033】
そのため、試験例1で使用した浴用剤25gをお湯200Lに入れて、溶存水素量が安定する約30分後にパネラーに入浴してもらい、経過時間ごとにその呼気を採取して水素量を測定した。計測には「Breath Gas Analyzer MODEL TGA-2000」(TERAMECS社製)を用いた。なお、呼気の採取に関してはアルミパウチに三方コックをつけた捕集容器を使い、気道の空気を外に出してから、できるだけ肺を通った呼気のみを採取するようにした。また、できるだけ呼吸から水素を取り入れないようにするため、浴槽には蓋をし、さらにパネラーとの隙間をビニールで覆って、お湯と呼吸器とを可能な限り遮断し、更に、浴室内の換気を十分にして行った。試験は日時をかえて計13人のパネラーで行った。
【0034】
表2にはパネラー個々の試験結果を示し、図2にはその結果をグラフにして示す。
【0035】
【表2】

【0036】
その結果、個人差があるものの、製造例1で得られた水素化マグネシウムを配合した浴用剤を入れたお湯に入浴することによって、呼気中の水素量が増加する傾向が認められた。このパネラーの呼気中の水素量の増加は、試験時にあわせて測定したパネラーの呼吸器近傍の浴室内空気中の水素量は、1.0〜6.8ppm程度で一定に推移していたので、お湯中の溶存水素が入浴中に皮膚から吸収されたことを示すと考えられた。なお、試験中、浴室内空気中の水素ガスの濃度は爆発限界である4〜75(v/v)%をはるかに下回る濃度であり、爆発の危険は全くなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の浴用剤によれば、抗酸化能などの機能性を有する水素水での入浴を簡便にかつ安全に楽しむことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子化した水素化マグネシウムを含有することを特徴とする浴用剤。
【請求項2】
前記水素化マグネシウムは、水深20cmの40℃の水槽中に、水1リットルに対して該水素化マグネシウムを2.5mgの割合で添加したとき、30分後の溶存水素量が0.01mmol/L以上となり、且つ、浮上しないような粒径とされている請求項1記載の浴用剤。
【請求項3】
前記水素化マグネシウムは、水深20cmの40℃の水槽中に、水1リットルに対して該水素化マグネシウムを2.5mgの割合で添加したとき、30分後の溶存水素量が0.01mmol/L以上であって外気への揮散水素量が0.03mmol以下となり、且つ、浮上しないような粒径とされている請求項1記載の浴用剤。
【請求項4】
前記水素化マグネシウムは、その平均粒径が10〜120μmである請求項1〜3のいずれか1つに記載の浴用剤。
【請求項5】
浴用水1リットルに対して0.5〜125mgの前記水素化マグネシウムが添加されるように調製された請求項1〜4のいずれか1つに記載の浴用剤。

【図1】
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【図2】
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