海水の無害化処理方法及びその装置
【課題】設備コスト及び運転コストが低減され、かつ船体等の処理海水収容体側の強度低化をもたらすことなく、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になし得る海水の無害化処理方法及びその装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容する海水の無害化処理方法であって、前記未処理の海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離処理と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成して、該塩素含有物質を海水中に注入し、前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、処理海水をバラスト水タンクに収容することを特徴とする。
【解決手段】少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容する海水の無害化処理方法であって、前記未処理の海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離処理と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成して、該塩素含有物質を海水中に注入し、前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、処理海水をバラスト水タンクに収容することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未処理の海水中の微生物を除去して清浄な処理海水にしてバラスト水タンクに収容する時、又はバラスト水タンクに収容した未処理の海水を航海中に清浄な処理海水にする時、又はバラスト水タンクより未処理の海水を清浄な処理海水にして排水する時に行うバラスト水処理に適用される海水の無害化処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶において、オイルを搭載しない状態での航行時に、バラスト水タンクに収容する海水即ちバラスト水は、海洋汚染や公害の発生を回避するため、未処理の海水中の微生物を除去して清浄な処理海水にするための無害化処理が施こされている。
【0003】
かかる海水の無害化処理方法として、特許第2794537号公報、特開2002−192161号公報、特開2003−200156号公報の技術が提供されている。
【0004】
特許第2794537号公報の技術においては、バラスト水タンクを空または底部に水が残った状態にした後、該バラスト水タンク内に残存する沈澱物を昇温させ、有害プランクトンや細菌の死滅温度以上の温度に加熱し、所定時間保持している。
【0005】
特開2002−192161号公報の技術においては、バラスト水タンク内のバラスト水中に高電圧パルスを印加し、有害微生物に直接高電圧パルスを印加してその内部で放電を起して、該有害微生物を殺滅又は殺菌し、あるいは電極間のアーク放電による衝撃波で間接的に該有害微生物を殺滅又は殺菌している。
【0006】
特開2003−200156号公報の技術においては、パイプ内流路の途中に、複数の細長いスリットを有するスリット板を横断面方向に取り付け、未処理液体を該スリットを通過させることにより、前記未処理液体の微生物に損傷を与え殺滅又は殺菌するようにしている。
【0007】
特許第2794537号公報の技術にあっては、バラスト水タンクを空または底部に水が残った状態とするため、局部的な応力集中により船体に損傷を与える危険性がある。また、バラスト水タンク底部全体に溜まった沈澱物を昇温させるように広範囲にバラスト水タンクを加熱するので、加熱作業に時間と手間が掛かり処理コストが高くなる。
【0008】
また、特開2002−192161号公報の技術にあっては、大掛かりな高電圧パルス印加設備を必要とするため、設備コスト及び運転コストが高くなる。
さらに、特開2003−200156号公報にあっては、未処理液体をスリットを通過させることにより、サイズの大きな微生物は殺滅又は殺菌可能であるが、サイズの小さな細菌類を殺滅又は殺菌するのは困難である。
【0009】
また、前記各先行技術において、特許第2794537号公報、特開2002−192161号公報ともに、バラスト水の無害化処理装置を全て船舶に搭載しているので、船体内における該無害化処理装置の設置スペースが大きくなり、貨物等の搭載スペースが抑制される。
【0010】
また特許第2794537号公報、特開2002−192161号公報の技術にあっては、かかる無害化処理装置を既存の船舶に設置するには、該無害化処理装置を設置するための船体内の大幅な改造が必要となり、改造コストが嵩む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、設備コスト及び運転コストが低減され、かつ船体等の処理海水収容体側の強度低化をもたらすことなく、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になし得る海水の無害化処理方法及びその装置を提供することを第1の目的とする。
また本発明の第2の目的は、設備コスト及び運転コストが低減され、かつ船体側の強度低下をもたらすことなく、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になし得、さらには船舶におけるバラスト水の無害化処理装置の設置スペースを低減して貨物等の搭載スペースを増大可能とし、かつ既存の船舶に対しても該無害化処理装置設置のための船体内の改造コストを最少限に抑制可能とした海水の無害化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するため、少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容する海水の無害化処理方法であって、
前記未処理の海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離処理と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成して、該塩素含有物質を海水中に注入し、前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、処理海水をバラスト水タンクに収容することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記方法を実施する装置として、少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容するように構成された海水の無害化処理装置であって、前記海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離装置と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成し該海水中に注入して前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施す塩素処理手段と、前記微生物分離装置及び塩素処理手段による処理後の処理海水を収容するバラスト水タンクとを併設したことを特徴とする海水の無害化処理装置を提案する。
【0014】
かかる発明によれば、前記ろ過法又は遠心分離法による微生物分離処理と、該処理後の処理海水に酸化作用を有する物質を添加し微生物を殺滅又は殺菌する処理とを併せて施すことにより、微生物の処理機能が向上する。また、フィルターのメッシュを微生物除去の最適メッシュに選定することにより、比較的大きな広範囲の微生物を確実に捕獲し除去できて、逆洗等により捕獲後の処理も簡単にできる。
【0015】
かかる発明において、好ましくは、前記微生物分離処理の前工程または後工程のいずれかに、機械的処理装置により、該海水中の微生物に損傷を与え殺滅又は殺菌する機械的処理を施す。
このように構成すれば、前記ろ過法又は遠心分離法による微生物分離処理と他の機械的処理とを併せて施すことにより、微生物の処理機能が向上するとともに、塩素処理の負荷を低減できる。
【0016】
例えば、前記機械的処理は内径0.5mm程度の多数の小孔が穿孔されたスリット板を海水流路中に設けて、該海水を前記小孔内を通過させるように構成するのが好適であり、かかる機械的処理によって甲殻を有するような比較的大きな微生物を含む広範囲の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌するとともに、前記海水に、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩等で構成した塩素含有物質を注入する塩素処理や酸化作用を有する物質の添加処理を施すことによりサイズの小さい細菌類を殺滅又は殺菌するという、機械的処理による比較的大きな広範囲の微生物の殺滅又は殺菌と塩素処理によるサイズの小さい細菌類の殺滅又は殺菌とを1つの海水処理系で組み合せることにより、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができる。
【0017】
従って、前記ろ過法又は遠心分離法による微生物分離処理と他の機械的処理とを併せて施すことにより、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理とサイズの小さい細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを組み合わせることにより、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができるとともに、前記機械的処理と塩素処理や酸化作用を有する物質の添加処理とを組み合わせることにより機械的処理の負荷が軽減され圧力損失が減少し、機械的処理の所要動力を低減できて装置を小型、小容量化でき、さらには塩素処理では、殺滅殺菌効果の高い細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等の塩素含有物質の注入量を低減できる。
【0018】
かかる発明において好ましくは、前記塩素処理は、前記海水の全部または一部を貯留タンクに導入し、該海水を前記貯留タンクと該海水を電気分解して塩素含有物質を生成する電解槽との間の循環路を循環させる電解槽循環方式により行う。
【0019】
また、かかる発明において、前記海水に前記機械的処理を施して前記バラスト水タンクに搬送される処理海水の全部または一部に前記塩素処理を施し、該塩素処理により生成された前記塩素含有物質を、前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて前記海水中に注入するのがよい。
【0020】
かかる発明によれば、例えば多数の小孔が穿孔されたスリット板の該多数の小孔内を海水を通過させることにより発生した乱流によって比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と、酸化作用を有する物質の添加処理あるいは塩素含有物質を海水中に注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを組み合わせることにより、海水中のあらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができるとともに、海水の機械的処理と塩素処理とを組み合わせることにより機械的処理の圧力損失の減少が可能となり負荷が軽減される。
これにより、海水無害化処理時における機械的処理の所要動力を低減できて、装置を小型、小容量化でき、さらには酸化作用を有する物質の添加処理あるいは塩素処理では、細菌類の殺滅又は殺菌のみを行えばよいので、過酸化水素、オゾン、あるいは塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等の塩素含有物質の注入量を低減できる。
【0021】
また、海水中の微生物を除去する無害化処理システムの設備コスト及び運転コストを低減して、海水中の微生物を確実に除去可能な海水の無害化処理システムを提供できる。
また、塩素処理における前記塩素含有物質のうち、次亜塩素酸を用いる場合は、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と組み合わせることにより、該次亜塩素酸の注入量はサイズの小さい細菌類を除去するに必要な量だけで済み、該次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類の除去とを行う場合に比べて、海水無害化処理時における該次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する該次亜塩素酸濃度を著しく低減することが可能となり、海水無害化処理時における該次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、該機器類の耐久性を向上できるとともに、該次亜塩素酸の海中投棄による海洋汚染を抑制できる。
【0022】
また、かかる発明において、電解槽循環方式による処理は、次のようにして施すのがよい。
・前記電解槽循環方式による処理を前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて施す。
・前記電解槽循環方式による処理海水を、前記循環路の途中から抽出して前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて海水中に注入する。
このように構成すれば、処理海水の貯留タンクと電解槽との間の循環路を循環する処理海水中に含有される塩素含有物質特に次亜塩素酸を電解槽に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽供給海水のpHを下げることにより、電解槽におけるスケールの付着を防止できる。
【0023】
また、かかる発明において好ましくは、前記海水の塩素処理の電源に、太陽電池、風力発電電力等の自然エネルギーによる電力を用いる。
このように構成すれば、海水の塩素処理の電源に自然エネルギーを利用できるので、塩素処理の処理コストを低減できるとともに、船舶の航行中においても船舶内の動力を極力使用することなくバラスト水の無害化が可能となる。
【0024】
かかる海水の無害化処理装置において、好ましくは次のように構成する。
前記塩素処理手段は、前記海水の全部または一部を貯留する貯留タンクと該海水を電気分解して塩素含有物質を生成する電解槽とを備えて前記海水を前記貯留タンクと電解槽との間の循環路を循環させる電解槽循環方式による処理を前記海水に施すように構成された海水電解装置からなる。
【0025】
かかる発明において、前記微生物とは、主に動物プランクトン及びそのシスト、植物プランクトン及びそのシスト、細菌類、菌類、ウィルスなど、毒を有するものや病原性のあるもの又は生態系を乱すものである。
【0026】
また前記無害化処理とは、主に海洋汚染を起こしたり人間及び魚介類に被害をもたらしたり生態系を破壊するこれら微生物を殺滅又は殺菌又は除去することである。
前記塩素含有物質は、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩で構成するのが好ましく、特に次亜塩素酸が最も好適である。尚、前記塩素含有物質は、その一部を外部から薬品として添加してもよい。
【0027】
また、かかる発明において、前記海水電解装置を用いての電解槽循環方式による処理は、次のようにして施すのがよい。
・前記電解槽循環方式による処理を機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて施す。
・前記電解槽循環方式による処理海水を、前記循環路の途中から抽出して前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて海水中に注入する。
このように構成すれば、循環路を循環する処理海水中に含有される塩素含有物質特に次亜塩素酸を電解槽に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽供給液のpHを下げることにより、電解槽におけるスケールの付着を防止できる。
【0028】
また、かかる発明において好ましくは、前記機械的処理及び塩素処理を施した後の海水等の処理海水に、活性炭による処理あるいは金属触媒による処理のいずれか一方または双方を施す。
あるいは、前記機械的処理及び塩素処理を施した後の処理海水に、活性炭による処理あるいは金属触媒による処理のいずれか一方または双方を施す。
このように構成すれば、前記機械的処理及び塩素処理を施した後の処理海水に、活性炭による処理を施せば、該活性炭によるトリハロメタン処理によって、塩素処理を施した後の処理海水に発生し易い発ガン性物質を除去することが可能となる。
【0029】
また、前記金属触媒としては、Mn,Tc,Re,VIIA族元素、あるいは、Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt等のVIII族元素のうち、1種以上を含む金属または化合物が好適である。
【0030】
前記金属触媒を施せば、塩素処理を施した後に残留するHClOを前記金属触媒で還元することにより、塩素処理後の処理海水を無害化できる。
そして、前記機械的処理及び塩素処理を施した後の処理海水に、活性炭による処理及び金属触媒による処理海水に発生し易い発ガン性物質を除去処理を併せて施せば、塩素処理を施した後の処理海水から、活性炭により発ガン性物質を除去するとともに、金属触媒により塩素処理後の残留HClOを還元して無害化でき、処理海水の無害化、清浄化をより向上できる。
【0031】
かかる発明によれば、船舶への荷積み時にバラスト水をバラスト水タンクから海中に戻す前に、該バラスト水タンク内において前記機械的処理と塩素処理または酸化物質添加処理とを併せて施すことにより、完全に無害化したバラスト水を海中に排水できる。
【0032】
又かかる発明によれば、船舶の航行中においても、バラスト水タンク内の処理海水に機械的処理と塩素処理とを併せて施すことによりバラスト水を無害化できるので、バラスト水排水時の無害化処理時間を短縮できる。
【0033】
また、かかる発明において好ましくは、前記電解槽の下流側に、電気分解して塩素含有物質を生成した後の処理海水の残留塩素量を計測する残留塩素計を備え、前記電解槽は前記残留塩素計による残留塩素量の計測値に基づき前記電気分解における塩素含有物質の生成量を制御するように構成されてなる。
このように構成すれば、処理海水中の残留塩素量(塩素濃度)の計測値に基づき塩素処理における電解電流値を制御可能となって、処理海水への塩素含有物質(特に次亜塩素酸)の注入量を正確に目標値に制御でき、該塩素含有物質の処理コストを最少限に抑えて所要の殺菌処理を行うことができる。
【0034】
本発明によれば、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理とサイズの小さい細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理あるいは酸化作用を有する物質の添加処理とを組み合わせることにより、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができる。
【0035】
また、前記機械的処理と塩素処理あるいは酸化作用を有する物質の添加処理とを組み合わせることにより、機械的処理の負荷が軽減され圧力損失の減少が可能となり機械的処理の所要動力を低減できて装置を小型、小容量化できる。さらには前記塩素処理では、処理効果の大きい細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等の塩素含有物質の注入量を低減できる。
これにより、海水中の微生物を除去する無害化処理システムの設備コスト及び運転コストを低減して、海水中の微生物を確実に除去可能な海水の無害化処理システムを提供できる。
【0036】
また本発明によれば、バラスト水タンク内に収容された海水中の微生物を除去して処理海水を海中に排水する際には、該バラスト水タンク内において前記機械的処理と塩素処理または酸化物質添加処理とを併せて施すことにより、完全に無害化したバラスト水を海中に排水できる。
【0037】
また、バラスト水タンク内の海水を循環させながら前記機械的処理と塩素処理または酸化物質添加処理とを併せて施すことにより、船舶の航行中においてもバラスト水の無害化処理を実施できることとなり、バラスト水排水時の無害化処理時間を短縮できる。
【0038】
また本発明によれば、前記塩素含有物質のうち、最も好適である次亜塩素酸を用いる場合は、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と組み合わせることにより、該次亜塩素酸の注入量は細菌類を除去するに必要な量だけで済み、該次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類を除去とを行う場合に比べて該次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、機器類の耐久性を向上できるとともに、次亜塩素酸による海洋汚染を抑制できる。
【0039】
また本発明は、少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、バラスト水タンク内に収容された海水中の微生物を除去して該海水を清浄な処理海水に転換するように構成された海水の無害化処理装置であって、前記海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離装置と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成し該海水中に注入して前記微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理を施す塩素処理手段と備え、前記各手段による処理後の処理海水を前記バラスト水タンク外に排出するか若しくは、前記各手段による処理後の処理海水を前記バラスト水タンクに戻して循環するように構成されてなることを特徴とする。
【0040】
ここで、かかる発明において、前記微生物とは、主に動物プランクトン及びそのシスト、植物プランクトン及びそのシスト、細菌類、菌類、ウィルスなど、毒を有するものや病原性のあるもの又は生態系を乱すものである。
【0041】
また前記無害化処理とは、主に海洋汚染を起こしたり人間及び魚介類に被害をもたらしたり生態系を破壊するこれら微生物を殺滅又は殺菌又は除去することである。
前記塩素含有物質は、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩で構成するのが好ましく、特に次亜塩素酸が最も好適である。
【0042】
そして、かかる発明において、前記機械的処理装置は、内径0.5mm程度の多数の小孔が穿孔されたスリット板を海水流路中に設けて構成するのが好適であり、該機械的処理装置においては、海水を前記小孔内を通過させることによって、甲殻を有するような比較的大きな微生物を含む広範囲の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する。
【0043】
また、前記塩素処理手段においては、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩等で構成した塩素含有物質を海水に注入し、酸化物質添加手段においては酸化作用を有する物質を海水に添加することにより、サイズの小さい細菌類を殺滅又は殺菌する。
【0044】
従って、このように構成すれば、機械的処理装置あるいは微生物分離処理手段による比較的大きな広範囲の微生物の殺滅又は殺菌と、塩素処理手段あるいは酸化物質添加手段によるサイズの小さい細菌類の殺滅又は殺菌とを、1つの海水処理系で組み合せることにより、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができる。
【0045】
また、前記機械的処理あるいは微生物分離処理手段と塩素処理や酸化作用を有する物質の添加処理とを組み合わせることにより、機械的処理装置の負荷が軽減されて圧力損失が減少し、機械的処理装置の所要動力を低減できて装置を小型、小容量化でき、さらには塩素処理では、殺滅殺菌効果の高い細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等の塩素含有物質の注入量を低減できる。
これにより、海水中の微生物を除去する無害化処理システムの設備コスト及び運転コストを低減して、海水中の微生物を確実に除去可能な海水の無害化処理システムを提供できる。
【0046】
また、前記塩素含有物質のうち、最も好適である次亜塩素酸を用いる場合は、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と組み合わせることにより、該次亜塩素酸の注入量は細菌類を除去するに必要な量だけで済み、従来技術のように該次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類の除去とを行う場合に比べて該次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する該次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、該機器類の耐久性を向上できるとともに、該次亜塩素酸による海洋汚染を抑制できる。
【0047】
以上の発明において、前記塩素処理手段は、前記海水の全部または一部を貯留する貯留タンクと該海水を電気分解して塩素含有物質を生成する電解槽とを備えて前記海水を前記貯留タンクと電解槽との間の循環路を循環させる電解槽循環方式による処理を前記海水に施すように構成された海水電解装置で構成し、該海水電解装置による処理を次のようにして施すのがよい。
・前記電解槽循環方式による処理を機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて施す。
・前記電解槽循環方式による処理海水を、前記循環路の途中から抽出して前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて海水中に注入する。
このように構成すれば、循環路を循環する処理海水中に含有される塩素含有物質特に次亜塩素酸を電解槽に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽供給液のpHを下げることにより、電解槽におけるスケールの付着を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1図は、本発明の第1実施例に係る船舶用バラスト水の無害化処理方法を示すブロック図である。
【図2】第2図は、第2実施例を示す第1図対応図である。
【図3】第3図は、第3実施例を示す第1図対応図である。
【図4】第4図は、第4実施例を示す第1図対応図である。
【図5】第5図は、第5実施例を示す第1図対応図である。
【図6】第6図は、第6実施例を示す第1図対応図である。
【図7】第7図は、第7実施例を示す第1図対応図である。
【図8】第8図は、第8実施例を示す第1図対応図である。
【図9】第9図は第9実施例を示す第1図対応図である。
【図10】第10図は、第10実施例を示す第1図対応図である。
【図11】第11図は、第11実施例を示す第1図対応図である。
【図12】第12図は、第12実施例を示す第1図対応図である。
【図13】第13図は、第13実施例を示す第1図対応図である。
【図14】第14図は、第14実施例を示す第1図対応図である。
【図15】第15図は、第15実施例を示す第1図対応図である。
【図16】第16図は、第16実施例を示す第1図対応図である。
【図17】第17図は、第17実施例を示す第1図対応図である。
【図18】第18図は、第18実施例を示す第1図対応図である。
【図19】第19図は、第19実施例を示す第1図対応図である。
【図20】第20図は、第20実施例を示す第1図対応図である。
【図21】第21図は、第21実施例を示す第1図対応図である。
【図22】第22図は、第22実施例を示す第1図対応図である。
【図23】第23図は、第23実施例を示す第1図対応図である。
【図24】第24図は、第24実施例を示す第1図対応図である。
【図25】第25図は、第25実施例を示す第1図対応図である。
【図26】第26図は、第26実施例を示す第1図対応図である。
【図27】第27図は、第27実施例を示す第1図対応図である。
【図28】第28図は、第28実施例を示す第1図対応図である。
【図29】第29図は、第29実施例を示す第1図対応図である。
【図30】第30図は、第30実施例を示す第1図対応図である。
【図31】第31図は、第31実施例を示す第1図対応図である。
【図32】第32図は、第32実施例を示す第1図対応図である。
【図33】第33図は 第33実施例を示す第1図対応図である。
【図34】第34図は、第34実施例を示す第1図対応図である。
【図35】第35図は、第35実施例を示す第1図対応図である。
【図36】第36図は、第36実施例を示す第1図対応図である。
【図37】第37図は、第37実施例を示す第1図対応図である。
【図38】第38図は、第38実施例を示す第1図対応図である。
【図39】第39図は、第39実施例を示す第1図対応図である。
【図40】第40図は、第40実施例を示す第1図対応図である。
【図41】第41図は、第41実施例を示す第1図対応図である。
【図42】第42図は、第42実施例を示す第1図対応図である。
【図43】第43図は、第43実施例を示す第1図対応図である。
【図44】第44図は、第44実施例を示す第1図対応図である。
【図45】第45図は、第45実施例を示す第1図対応図である。
【図46】第46図は、第46実施例を示す第1図対応図である。
【図47】第47図は、第47実施例を示す第1図対応図である。
【図48】第48図は、前記各実施例のうちの主要な処理を示す系統図(その1)である。
【図49】第49図は、前記各実施例のうちの主要な処理を示す系統図(その2)である。
【図50】第50図は、本発明の第48実施例に係る船舶用バラスト水の無害化処理装置を示すブロック図である。
【図51】第51図は、第49実施例を示す第50図対応図である。
【図52】第52図は、第50実施例を示す第50図対応図である。
【図53】第53図は、第51実施例を示す第50図対応図である。
【図54】第54図は、第52実施例を示す第50図対応図である。
【図55】第55図は、第53実施例を示す第50図対応図である。
【図56】第56図は、第54実施例を示す第50図対応図である。
【図57】第57図は、第55実施例を示す第50図対応図である。
【図58】第58図は、第56実施例を示す第1図対応図である。
【図59】第59図は、微生物分離処理手段の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0050】
第1図は本発明の第1実施例に係る船舶用バラスト水の無害化処理方法を示すブロック図である。第2図ないし第47図は第2ないし第47実施例を示す第1図対応図である。第48図及び第49図は前記各実施例のうちの主要な処理を示す系統図(その1)及び(その2)である。
【0051】
第1図に示す第1実施例において、1は未処理海水を濾過してごみ等の異物を捕獲するスクリーン、2は海水を処理ライン6に搬送するポンプである。3は前記スクリーン2を経た海水中の微生物に損傷を与え殺滅又は殺菌する機械的処理装置である。
【0052】
該機械的処理装置3は、海水の流路中に多数の小孔が穿孔された多孔板を設置して、海水が前記多数の小孔内を通過する際に発生する乱流により該海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌するように構成された多孔板式処理装置が好適であるが、かかる多孔板式処理装置に限られることなく、海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する機能を有するものであればよい。
【0053】
4は前記機械的処理装置を経た海水に電解(電気分解)処理を施す海水電解装置で、該海水を電気分解して、該海水中から次亜塩素酸ソーダ(以下次亜塩素酸という)を生成するものである。該海水電解装置4で生成された次亜塩素酸は前記処理ライン6に注入されるようになっている。5はかかる処理が施された処理海水を収容するバラスト水タンクである。
【0054】
かかる第1実施例において、未処理海水は前記スクリーン1でごみ等の異物が捕獲され除去された後、前記ポンプ2により処理ライン6を搬送されて機械的処理装置3に導入される。
【0055】
該機械的処理装置3においては、前記海水を多数の小孔内を通過させる際に、該海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する。該機械的処理装置3でかかる機械的処理が施された海水は、その全部または一部が抽出ライン8を介して前記海水電解装置4に送り込まれる。該海水電解装置4では、該海水を電解処理して、次亜塩素酸を生成する。
この次亜塩素酸は、図に実線で示す注入ライン9を介して、前記処理ライン6の前記機械的処理装置3の上流に注入するか、あるいは図に破線で示す注入ライン10を介して、前記処理ライン6の前記機械的処理装置3の下流に注入する。該次亜塩素酸の注入により、海水中の残存微生物が殺滅又は殺菌される。
あるいは、前記機械的処理装置3間の循環ライン10aで海水を循環させながら、機械的処理のみを施すことも可能である。
従って、前記海水は、前記機械的処理装置3において該海水中の微生物を殺滅又は殺菌し、前記海水電解装置4において該海水から抽出された次亜塩素酸を注入して該海水中の残存微生物を殺滅又は殺菌することにより、完全に無害化されてバラスト水タンクに収容されることとなる。
【0056】
かかる実施例において、前記微生物とは、主に動物プランクトン及びそのシスト、植物プランクトン及びそのシスト、細菌類、菌類、ウィルスなど、毒を有するものや病原性のあるもの又は生態系を乱すものである。
【0057】
また前記海水の無害化処理とは、主に海洋汚染を起こしたり人間及び魚介類に被害をもたらしたり生態系を破壊するこれら微生物を殺滅又は殺菌又は除去することである。
前記塩素含有物質は、前記実施例で用いた次亜塩素酸が最も好適であるが、塩素、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩を用いることができる。
また、前記酸化作用を有する物質は、前記塩素含有物質のほかに、過酸化水素、オゾン等の酸化剤も含む。
尚、前記塩素含有物質は、外部から薬品として添加することもできる。
【0058】
かかる実施例によれば、多数の小孔が穿孔された多孔板を備えた機械的処理装置3の小孔内を海水を通して発生する乱流により比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と、海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を海水中に注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを組み合わせることにより、海水中のあらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができるとともに、海水の機械的処理と塩素処理とを組み合わせることにより機械的処理装置3の圧力損失の減少が可能となり負荷が軽減される。
これにより、海水無害化処理時における機械的処理装置3の所要動力を低減できて、該装置を小型、小容量化でき、さらには前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸の海水中への注入による塩素処理では、処理効果の大きい細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので、次亜塩素酸の注入量を低減できる。
【0059】
また、前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を用いて細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を、前記機械的処理装置3を用いて比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と組み合わせることにより、該次亜塩素酸の注入量が細菌類を除去するに必要な量だけで済み、該次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類の除去とを行う場合に比べて、海水無害化処理時における該次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する該次亜塩素酸が著しく低減し海水無害化処理時における該次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、該機器類の耐久性を向上できるとともに、該次亜塩素酸の海中投棄による海洋汚染を抑制できる。
【0060】
第2図ないし第47図に示される第2ないし第47実施例において、前記第1実施例と同一の部材は同一の符号で示す。
【0061】
第2図に示される第2実施例においては、前記第1実施例と同様な、機械的処理装置3を用いて比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理、及び前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を処理ライン6中の海水中に注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を計測する残留塩素計11を設け、該残留塩素計11による残留塩素量の計測値を前記海水電解装置4に入力するように構成している。
【0062】
そして、かかる第2実施例においては、残留塩素計11で、前記機械的処理および塩素処理を施した後の処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を計測し、該残留塩素量計測値を前記海水電解装置4に入力し、該海水電解装置4において該残留塩素量の計測値に基づき該海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する。
【0063】
従ってかかる第2実施例によれば、前記処理海水の残留塩素量(塩素濃度)の計測値に基づき海水電解装置4における電解電流値を制御し次亜塩素酸の生成量を制御可能となって、海水への次亜塩素酸の注入量を正確に目標値に制御でき、該次亜塩素酸での処理コストを最少限に抑えて所要の殺菌処理を行うことができる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0064】
第3図に示される第3実施例においては、前記第1実施例における機械的処理及び塩素処理に加えて(あるいはこれらの処理を施さずに)、前記バラスト水タンク5に収容された海水を循環路13,14を通して前記海水電解装置4を循環させて、該海水電解装置4において該海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を用いて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施している。
【0065】
また、かかる第3実施例においては、前記海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電12等の自然エネルギーによる電力を用いている。
このように構成すれば、前記海水電解装置4の電源に自然エネルギーを利用できるので、次亜塩素酸を用いての塩素処理の処理コストを低減できるとともに、船舶の航行中においても船舶内の動力を極力使用することなく、海水電解装置4を用いてのバラスト水の無害化が可能となる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0066】
第4図に示される第4実施例においては、海水電解装置4を次のような電解槽循環方式に構成している。
即ち第4図において、43は貯留タンク、44はポンプ、41は電解槽、42は該電解槽41用の電源装置であり、塩素処理用の海水を抽出ライン8を介して前記貯留タンク43内に導入している。
そして、前記貯留タンク43から前記ポンプ44、前記電解槽41を通って前記貯留タンク43に戻る循環路47を形成し、前記貯留タンク43内の海水を前記ポンプ44により該循環路47を循環させ、前記電解槽41において該海水から次亜塩素酸を生成し、該循環路47途中で該次亜塩素酸を注入ライン9(あるいは第1図に示す注入ライン10)を介して前記処理ライン6(第1図参照)に注入している。尚、45,46は開閉弁である。
【0067】
前記次亜塩素酸は、前記第1実施例と同様に、注入ライン9を介して前記処理ライン6の前記機械的処理装置3の上流に注入するか、あるいは注入ライン10を介して、前記処理ライン6の前記機械的処理装置3の下流に注入する。
さらに、前記電解槽循環方式による塩素処理を、前記機械的処理装置3による機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて施して前記次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸により海水中の細菌類を殺滅又は殺菌するようにしてもよい。
【0068】
かかる第4実施例によれば、処理海水の貯留タンク43と電解槽41との間の循環路47を循環する処理海水中に含有される次亜塩素酸を電解槽41に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽41への供給海水のpHを下げることにより、該電解槽41におけるスケールの付着を防止できる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0069】
第5図に示される第5実施例においては、前記実施例における機械的処理装置3に代えて、処理ライン6にフィルター20を設置している。21は該フィルター20の逆洗ライン、22は該逆洗ライン21を開閉する開閉弁である。
【0070】
そして、かかる第5実施例においては、海水を前記フィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去できる。前記処理ライン6のフィルター20の上流側あるいは下流側には、前記第1実施例と同様に、前記海水電解装置4において該海水から生成された次亜塩素酸を、注入ライン9(あるいは注入ライン10)を介して注入し、細菌類を殺滅又は殺菌している。
【0071】
このようにかかる第5実施例によれば、前記フィルター20のメッシュを微生物除去の最適メッシュに選定することにより、比較的大きな広範囲の微生物を確実に捕獲し除去できて、逆洗ライン21を用いての逆洗により捕獲後の微生物の処理も簡単にできる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0072】
第6図に示される第6実施例においては、前記処理ライン6のフィルター20の上流側あるいは下流側に前記各実施例と同様な機械的処理装置3を設置している。
【0073】
かかる第6実施例によれば、前記フィルター20によるフィルター処理と機械的処理装置3による他の機械的処理とを併せて施すことにより、微生物の処理機能が向上するとともに、後流側の塩素処理の負荷を低減できる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
尚、前記フィルター20に代えて、遠心分離装置(図示省略)を設置し、該遠心分離装置により前記海水から微生物を遠心分離して、該海水から除去するようにしてもよい。
【0074】
また、前記各実施例において、前記塩素処理に限らず、酸化物質添加手段(図示省略)により、前記海水に、酸化作用を有する物質の添加処理を行うこともできる。前記酸化作用を有する物質は、前記塩素含有物質のほかに、過酸化水素、オゾン等の酸化剤を用いることができる。
【0075】
以下の各実施例は、手段が異なるが、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌するという作用効果は同一である。
【0076】
第7図に示される第7実施例においては、前記未処理海水に塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を行い、該塩素含有物質注入の前工程あるいは後工程に前記機械的処理装置3を設置して海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する機械的処理を行い、バラスト水タンク5に収容する。
【0077】
前記塩素含有物質は、塩素、次亜塩素酸ソーダ、亜塩素酸ソーダ、塩素酸またはこれらのイオンや塩で構成するのが好ましく、特に次亜塩素酸ソーダが最も好適である。
【0078】
第8図に示される第8実施例においては、前記未処理海水に前記海水電解装置4による塩素処理を行い、次いで前記機械的処理装置3による機械的処理を行い、バラスト水タンク5に収容する。
【0079】
また、第9図に示される第9実施例においては、前記第8実施例とは逆の順序で、未処理海水に前記機械的処理装置3による機械的処理を行い、次いで前記海水電解装置4による塩素処理を行い、バラスト水タンク5に収容する。
【0080】
第10図に示される第10実施例においては、前記未処理海水に海水電解装置4による塩素処理、及び機械的処理装置3による機械的処理を行った後、金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施し、バラスト水タンク5に収容する。
【0081】
かかる金属触媒としてはMn,Tc,Re,VIIA族元素、あるいは、Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt等のVIII族元素のうち、1種以上を含む金属または化合物が好適である。
このようにすれば、塩素処理を施した後に残留するHClOを次の反応式により、前記金属触媒で還元することにより、塩素処理後の処理海水を無害化できる。
HClO+MOn−1→HCl+MOn (M:金属)
【0082】
また、前記活性炭によるトリハロメタン処理を施せば、該活性炭によるトリハロメタン処理によって、塩素処理を施した後の処理海水に発生し易い発ガン性物質を除去することが可能となる。
従って、かかる第10実施例によれば、塩素処理を施した後の処理海水から、活性炭により発ガン性物質を除去するとともに、金属触媒により塩素処理後の残留HClOを還元して無害化できて、処理海水の無害化、清浄化をより向上できる。
尚、前記第10実施例において、活性炭処理装置32による活性炭処理を行った後、金属触媒処理装置31による金属触媒による処理を施してもよい。また、前記活性炭処理装置32による活性炭処理のみを行っても、あるいは金属触媒処理装置31による金属触媒による処理のみを行ってもよい。
【0083】
第11図に示される第11実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第1実施例(第1図)と同様な、前記海水電解装置4による塩素処理と機械的処理装置3による機械的処理とを施して、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0084】
第12図に示される第12実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第7実施例(第7図)と同様な、塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入する塩素処理を行い、該塩素含有物質注入の前工程あるいは後工程に前記機械的処理装置3による機械的処理を行い、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0085】
第13図に示される第13実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第8実施例(第8図)と同様な、前記海水電解装置4による塩素処理を行い、次いで前記機械的処理装置3による機械的処理を行って、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0086】
第14図に示される第14実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第13実施例とは逆の順序で、前記第9実施例(第9図)と同様な、前記機械的処理装置3による機械的処理を行った後、前記海水電解装置4による塩素処理を行い、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0087】
第15図に示される第15実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第10実施例(第10図)と同様な処理、即ち前記海水電解装置4による塩素処理及び機械的処理装置3による機械的処理を行った後、金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施し、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0088】
第16図に示される第16実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第2実施例(第2図)と同様に、機械的処理装置3による機械的処理及び前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を海水中に注入する塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を残留塩素計11で計測し、該残留塩素量の計測値に基づき海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する処理を行って、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0089】
第17図に示される第17実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第5実施例(第5図)と同様に、処理ラインにフィルター20を設置して(21は該フィルター20の逆洗ライン、22は該逆洗ライン21を開閉する開閉弁)、前記海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去し、処理ラインのフィルター20の上流側あるいは下流側に海水電解装置4において該海水から生成された次亜塩素酸を注入して細菌類を殺滅又は殺菌し、海水を無害化して海中に排水している。
【0090】
第18図に示される第18実施例においては、前記フィルター20の後流に前記機械的処理装置3を設置して、フィルター20後の海水に機械的処理を行って、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0091】
第19図に示される第19実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第11実施例(第11図)と同様に、前記海水電解装置4による塩素処理と機械的処理装置3による機械的処理とを施して、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
このようにすれば、船舶の航行中においてもバラスト水タンク5内のバラスト水の無害化処理を実施できることとなり、バラスト水を船舶から排水する際の無害化処理時間を短縮あるいは無害化処理を不要とすることが可能となる。以下の第12〜第25実施例でもこれと同一の作用効果を奏することができる。
【0092】
第20図に示される第20実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第12実施例(第12図)と同様に、塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入する塩素処理を行い、該塩素含有物質注入の前工程あるいは後工程に前記機械的処理装置3による機械的処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0093】
第21図に示される第21実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第13実施例(第13図)と同様に、海水電解装置4による塩素処理を行い、次いで前記機械的処理装置3による機械的処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0094】
第22図に示される第22実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第14実施例(第14図)と同様に、機械的処理装置3による機械的処理を行った後、海水電解装置4による塩素処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0095】
第23図に示される第23実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第15実施例(第15図)と同様に、海水電解装置4による塩素処理及び機械的処理装置3による機械的処理を行った後、金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施すことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0096】
第24図に示される第24実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第16実施例(第16図)と同様に、機械的処理装置3による機械的処理及び海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を海水中に注入する塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を残留塩素計11で計測し、該残留塩素量の計測値に基づき海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0097】
第25図に示される第25実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第17実施例(第17図)と同様に、処理ラインにフィルター20を設置して(21は該フィルター20の逆洗ライン、22は該逆洗ライン21を開閉する開閉弁)、前記海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去し、処理ラインのフィルター20の上流側あるいは下流側に海水電解装置4において該海水から生成された次亜塩素酸を注入して細菌類を殺滅又は殺菌する処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0098】
第26図に示される第26実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第18実施例(第18図)と同様に、フィルター20の後流に機械的処理装置3を設置してフィルター20後の海水に機械的処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0099】
第27図に示される第27実施例においては、未処理海水に前記機械的処理装置3による機械的処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施すことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0100】
第28図に示される第28実施例においては、未処理海水に前記機械的処理装置3による機械的処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水に、塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入する塩素処理を行うことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0101】
第29図に示される第29実施例においては、未処理海水に前記機械的処理装置3による機械的処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水に海水電解装置4による塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を残留塩素計11で計測し、該残留塩素量の計測値に基づき海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する処理を行うことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0102】
第30図に示される第30実施例においては、未処理海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去する微生物分離処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施すことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0103】
第31図に示される第31実施例においては、未処理海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去する微生物分離処理を施した後、機械的処理装置3を通して機械的処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施すことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0104】
第32図に示される第32実施例においては、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、この処理海水にさらに機械的処理装置3により機械的処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0105】
第33図に示される第33実施例においては、該バラスト水タンク5内の海水に、塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入する塩素処理を施し、この処理海水にさらに機械的処理装置3により機械的処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0106】
第34図に示される第34実施例においては、該バラスト水タンク5内の海水に海水電解装置4による塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を残留塩素計11で計測し、該残留塩素量の計測値に基づき海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する処理を行い、この処理海水にさらに機械的処理装置3により機械的処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0107】
第35図に示される第35実施例においては、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、この処理海水に、該処理海水をさらにフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去する微生物分離処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0108】
第36図に示される第36実施例においては、処理海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去する微生物分離処理を施した後、機械的処理装置3を通して機械的処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0109】
第37図に示される第37実施例においては、バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、この処理海水を機械的処理装置3を通して機械的処理を施した後、さらに金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施すことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して、完全に無害化し海中に排水している。
【0110】
第38図に示される第38実施例においては、バラスト水タンク5内の海水に、前記海水電解装置4による塩素処理と機械的処理装置3による機械的処理とを施して、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化するに当たって、前記海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電装置33の自然エネルギーによる電力を用いている。
【0111】
第39図に示される第39実施例においては、前記第27実施例(第27図)におけるバラスト水タンク5内の海水の塩素処理を行う海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電装置33の自然エネルギーによる電力を用いている。
【0112】
第40図に示される第40実施例においては、前記第32実施例(第32図)におけるバラスト水タンク5内の海水の塩素処理を行う海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電装置33の自然エネルギーによる電力を用いている。
【0113】
第41図に示される第41実施例においては、未処理の海水の一部を処理ラインから分岐して前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施して前記処理ラインに循環させてから、バラスト水タンク5に収容している。
【0114】
第42図に示される第42実施例においては、未処理の海水を前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施して、バラスト水タンク5に収容している。
【0115】
第43図に示される第43実施例においては、バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施してバラスト水タンク5に循環させている。
【0116】
第44図に示される第44実施例においては、未処理海水の一部を処理ラインから分岐して前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施して前記処理ラインに循環させてから、海中に排水している。
【0117】
第45図に示される第45実施例においては、未処理の海水を前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施してから、海中に排水している。
【0118】
第46図に示される第46実施例においては、未処理海水の一部を処理ラインから分岐して前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施して前記処理ラインに循環させ、この処理海水にさらに金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施してから、海中に排水している。
【0119】
第47図に示される第47実施例においては、前記第43実施例(第43図)において、前記海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電装置33の自然エネルギーによる電力を用いている。
【0120】
第48図及び第49図は、前記各実施例のうちの主要な処理を系統図で示したものである。
第48図において、(1)ないし(9)の例は、処理液を海水を含む要無害化液全般として、機械的処理装置3を用いての処理液の機械的破砕(機械的処理)による広範囲の微生物の殺滅又は殺菌と、海水電解装置4を用いての処理液中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを種々組み合わせている。
尚、第48図において、「次亜」は次亜塩素酸ソーダの略である。
(1)においては、第1図の第1実施例と同様に、未処理液に前記塩素処理と、機械的破砕処理とを組み合わせて施し、前記両処理の相乗効果を得ている。
(2)においては、未処理液に前記塩素処理を施した後、機械的破砕処理を施している。
(3)は、前記(2)の逆順序で、未処理液に前記機械的破砕処理を施した後、塩素処
理を施している。
(4)においては、前記未処理液に、Cl2(塩素)あるいは「次亜」を注入する塩素処理を施し、次いで前記機械的破砕処理を施している。
(5)は、前記(4)の逆順序で、前記未処理液に、機械的破砕処理を施し、次いでCl2(塩素)あるいは「次亜」を注入している。
(6)においては、前記未処理液に前記第4実施例と同様な電解槽循環方式による海水電解装置4による「次亜」を生成して未処理液に注入し、次いで前記機械的破砕処理を施している。
(7)は、前記(6)の逆順序で、前記未処理液に機械的破砕処理を施し、次いで前記第4実施例と同様な電解槽循環方式による海水電解装置4による「次亜」を生成して未処理液に注入している。
(8)においては、前記未処理液に前記第4実施例と同様な電解槽循環方式による海水電解装置4によって「次亜」を生成し、次いで前記「次亜」生成後の海水に機械的破砕処理を施している。
(9)は、前記(6)の逆順序で、前記未処理液に機械的破砕処理を施し、次いで処理海水に前記第4実施例と同様な電解槽循環方式による海水電解装置4によって「次亜」を生成している。
(10)においては、未処理液に前記塩素処理と、機械的破砕処理とを組み合わせて施し、次いで活性炭によるトリハロメタン処理を施す。
(11)においては、未処理液に前記塩素処理と、機械的破砕処理とを組み合わせて施し、次いで金属触媒による処理を施す。
(12)においては、未処理液に前記塩素処理と、機械的破砕処理とを組み合わせて施し、次いで活性炭によるトリハロメタン処理及び金属触媒による処理をこの順に施す。
【0121】
次に、第49図において、(1)においては、海水に前記塩素処理と、機械的破砕処理(後処理お含む)とを組み合わせて施して、バラスト水タンクに収容する。
(2)においては、バラスト水タンクに収容された海水に前記塩素処理と、機械的破砕処理(後処理を含む)とを組み合わせて施して、海中に排水する。
(3)においては、バラスト水タンクに収容された海水に前記機械的処理と塩素処理とを併せて施してバラスト水タンクに循環させる。
(4)においては、前記(3)において、前記海水の塩素処理の電源に、太陽電池、風力発電電力等の自然エネルギーによる電力を用いる。
以上の実施例は海水を無害化処理する方法及びその装置であるが、本発明はこれに限られることなく、微生物を含む海水を前記各実施例と同様な方法及び装置でもって無害化処理する場合にも広く適用できる。
【0122】
第50図は本発明の第48実施例に係る船舶用バラスト水の無害化処理装置を示すブロック図である。
第50図に示す第48実施例において、100は海102を航行する船舶、5は該船舶内に設置されたバラスト水タンク、50は陸上101に設置された陸上設置無害化設備である。
該陸上設置無害化設備50は、塩素処理手段としての海水電解装置4及び機械的処理装置3により構成される。
該機械的処理装置3は、海水の流路中に多数の小孔が穿孔された多孔板を設置して、海水が前記多数の小孔内を通過する際に発生する乱流により該海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌するように構成された多孔板式処理装置が好適であるが、かかる多孔板式処理装置に限られることなく、海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する機能を有するものであればよい。
前記海水電解装置4は、海水を電気分解して、該海水中から次亜塩素酸ソーダ(以下次亜塩素酸という)を生成して海水の処理ライン(図示省略)に注入するものであり、詳細は後述する。
200は海中と前記陸上設置無害化設備50の海水入口(前記海水電解装置4あるいは機械的処理装置3のいずれか一方の海水入口)とを接続する海水搬入路、210は前記陸上設置無害化設備50の海水出口(前記海水電解装置4あるいは機械的処理装置3のいずれか一方の海水出口)と前記バラスト水タンク5とを接続する海水搬出路である。
【0123】
かかる第48実施例においては、海水搬入路200を通った未処理海水が陸上設置無害化設備50の機械的処理装置3→海水電解装置4の順序で無害化処理を施される場合について説明するが、前記とは逆の海水電解装置4→機械的処理装置3の順序で無害化処理してもよい。
第48実施例において、海水搬入路200を通った未処理海水は機械的処理装置3に導入される。
該機械的処理装置3においては、前記海水を多数の小孔内を通過させる際に、該海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する。該機械的処理装置3でかかる機械的処理が施された海水は、詳細を第4図に示す海水電解装置4に送り込まれる。該海水電解装置4では、海水を電解処理して、次亜塩素酸を生成し海水に注入する。
前記海水電解装置4による塩素処理手段によれば、処理海水の貯留タンク43と電解槽41との間の循環路47を循環する処理海水中に含有される次亜塩素酸を電解槽41に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽41への供給海水のpHを下げることにより、該電解槽41におけるスケールの付着を防止できる。
前記海水電解装置4及び機械的処理装置3によって無害化処理が施された処理海水は、海水搬出路210を通って船舶内のバラスト水タンク5に収容される。
かかる実施例において、前記微生物とは、主に動物プランクトン及びそのシスト、植物プランクトン及びそのシスト、細菌類、菌類、ウィルスなど、毒を有するものや病原性のあるもの又は生態系を乱すものである。
前記塩素含有物質は、前記実施例で用いた次亜塩素酸が最も好適であるが、塩素、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩を用いることができる。
また、前記酸化作用を有する物質は、前記塩素含有物質のほかに、過酸化水素、オゾン等の酸化剤も含む。
尚、前記塩素含有物質は、外部から薬品として添加することもできる。
【0124】
また、かかる第1実施例において、陸上設置無害化設備50として、第59図に示すような、フィルタ20、逆洗ライン21、該逆洗ライン21を開閉する開閉弁22等からなる微生物分離処理手段020(第50図に鎖線で示す)を追設して、前記海水をフィルタ20に通すことにより該海水中の比較的大きな前記微生物を除去することもできる。尚、前記フィルタ20等に代えて、遠心分離装置を用いることもできる。
さらには、かかる実施例において、前記海水電解装置4と前記微生物分離処理手段020とを組み合わせても良い。
【0125】
以上のように、かかる実施例においては、多数の小孔が穿孔された多孔板を備えた機械的処理装置3の小孔内を海水を通して発生する乱流により比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と、海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を海水中に注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを組み合わせているので、海水中のあらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができるとともに、機械的処理装置3による海水の機械的処理と海水電解装置4による塩素処理とを組み合わせ、さらにはこれに、フィルタ20、逆洗ライン21、該逆洗ライン21を開閉する開閉弁22等からなる微生物分離処理手段020(第1図に鎖線で示す)を追設することにより、該機械的処理装置3の圧力損失の減少が可能となり負荷が軽減される。
これにより、海水無害化処理時における機械的処理装置3の所要動力を低減できて、該装置を小型、小容量化でき、さらには前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸の海水中への注入による塩素処理では、処理効果の大きい細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので、次亜塩素酸の注入量を低減できる。
【0126】
また、前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を用いて細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理と、前記機械的処理装置3を用いて比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理とを組み合わせることにより、塩素処理における次亜塩素酸の注入量が細菌類を除去するに必要な量だけで済み、次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類の除去とを行う場合に比べて、海水無害化処理時における次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する次亜塩素酸が著しく低減し海水無害化処理時における次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、機器類の耐久性を向上できるとともに、次亜塩素酸の海中投棄による海洋汚染を抑制できる。
【0127】
第51図に示す第49実施例においては、前記陸上設置無害化設備50を、海水から塩素含有物質を生成して海水中に注入し前記微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理を海水に施す前記海水電解装置4で構成し、海水中の微生物に損傷を与え殺滅又は殺菌する機械的処理を該海水に施す機械的処理装置3を船舶100に搭載している。
【0128】
かかる第49実施例によれば、陸上設置無害化設備50として陸上に設置された前記海水電解装置4により無害化処理された処理海水を、該陸上設置無害化設備50と船舶内のバラスト水タンク5とを接続する海水搬出路210を通して、船舶100内に設置された機械的処理装置3に導入し、該機械的処理装置3において無害化処理された処理海水を、バラスト水タンク5に収容することができる。
その他の構成及び作用効果は前記第48実施例(第50図)と同一である。また前記第48実施例と同一の部材は同一の符号で示す。
【0129】
第52図に示す第50実施例においては、前記第2実施例(第2図)に加えて、前記船舶100の船体に、海中に開口して前記機械的処理装置3に接続される船体側海水搬入路290を設けている。
かかる第50実施例によれば、船舶100に搭載された機械的処理装置3によって、陸上設置無害化設備50における海水電解装置4での処理海水、及び海中に開口する船体側海水搬入路29を通して導入された海水を同時に無害化処理してバラスト水タンク5に収容することができ、これにより、簡単な構造の機械的処理装置によって多量の海水を無害化処理できる。
その他の構成は前記第49実施例(第51図)と同一であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。またかかる第50実施例における他の作用効果は前記第1実施例と同一である。
【0130】
かかる第48〜第50実施例によれば、前記海水電解装置4あるいは機械的処理装置3を陸上設置無害化設備50として陸上に設置し、該陸上設置無害化設備50において未処理海水中の微生物を殺滅又は殺菌する無害化処理を行い、処理海水を、該陸上設置無害化設備50と船舶100に搭載されたバラスト水タンク5とを接続する海水搬出路210を通して該バラスト水タンク5に収納するので、前記海水電解装置4、機械的処理装置3等の海水の無害化処理設備の少なくとも一方を船体100内に設置する必要がなくなり、これによって該船舶100における海水の無害化処理装置の設置スペースを低減できて、貨物等の搭載スペースを増大することが可能となる。
【0131】
また、陸上に設置された海水電解装置4あるいは機械的処理装置3等の陸上設置無害化設備50と船舶100側のバラスト水タンク5とを、海水搬出路210を船舶100毎に繋ぎ変えることにより、1台(1セット)の陸上設置無害化設備50により複数の船舶100のバラスト水タンク5についての無害化処理を行うことができる。これにより、陸上設置無害化設備50の稼動率を上昇できるとともに船舶(100)1隻あたりの無害化処理装置の設置数を少なくできて、装置コストを低減できる。
【0132】
さらには、海水電解装置4あるいは機械的処理装置3等の無害化処理装置を陸上設備として設置するので、既存の船舶100に対しても船体内に該無害化処理装置を新たに設置するのが不要となるとともに船体内の改造が最少限で済み、これによって、該無害化処理装置設置のための船体内設置コストを最少限に抑制できる。
【0133】
また、かかる第49〜第50実施例において、前記機械的処理装置3とともに、微生物分離処理手段020(第2図に鎖線で示す)を前記船舶100に搭載することもできる。
さらに、かかる第49〜第50実施例において、前記海水電解装置4、機械的処理装置3、微生物分離処理手段020を、前記陸上設置無害化設備50あるいは船舶10搭載用として置き換えることもできる。
すなわち、第51図において、前記海水電解装置4を船舶100に搭載し、陸上設置無害化設備50として、前記機械的処理装置3及び微生物分離処理手段020の何れか一方または双方を設置することも可能である。
【0134】
第53図ないし第55図に示される第51ないし第53実施例においては、前記陸上設置無害化設備50を、車両220に搭載して陸上101を自在に移動可能に構成している。
第53図に示される第51実施例においては、前記第48実施例における陸上設置無害化設備50を車両220に搭載して陸上101を自在に移動可能としている。
第54図に示される第52実施例においては、前記第51実施例における陸上設置無害化設備50を車両220に搭載して陸上101を自在に移動可能としている。
第55図に示される第53実施例においては、前記第50実施例における陸上設置無害化設備50を車両220に搭載して陸上101を自在に移動可能としている。
【0135】
かかる第51ないし第53実施例によれば、車両220に搭載された陸上設置無害化設備50を船舶100に自在に近接させて、該陸上設置無害化設備50において無害化処理を施した海水を該船舶100内のバラスト水タンク5に収容可能となり、海水搬出管210等の海水搬送ラインの長さを最短にできる。これにより、図示しない海水搬送用ポンプの動力を低減できて、海水の無害化処理コストを低減できる。
【0136】
また、かかる第51ないし第53実施例によれば、複数の船舶100について無害化処理を施した海水を該船舶100内のバラスト水タンク5に収容する場合においては、車両220に搭載した陸上設置無害化設備50を自在に移動させて、各船舶100へのバラスト水の無害化処理を行うことができることとなり、該バラスト水の無害化処理を短時間で効率的に行うことができる。
その他の構成は前記第48ないし第50実施例と同一であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0137】
第56図に示す第54実施例において、100は海102を航行する船舶、5は該船舶内に設置されたバラスト水タンク、230は海上(102)に移動可能に浮設された装置搭載船、60は該装置搭載船230上に搭載された海上設置無害化設備である。該海上設置無害化設備60は前記第48〜第53実施例と同一に構成された海水電解装置4及び機械的処理装置3により構成される。
250は海水を取水して前記海上設置無害化設備60に搬送する海水搬入路、240は前記海上設置無害化設備60と前記船舶100内のバラスト水タンク5とを接続し該海上設置無害化設備60で処理された処理海水を前記バラスト水タンク5に搬送する海水搬出路である。
【0138】
かかる第54実施例においては、海水搬入路250を通った未処理海水海上設置無害化設備60の機械的処理装置3→海水電解装置4の順序で無害化処理を施される場合について説明するが、前記とは逆の海水電解装置4→機械的処理装置3の順序で無害化処理してもよい。
【0139】
第54実施例において、海水搬入路250を通った未処理海水は機械的処理装置3に導入される。該機械的処理装置3においては、前記第48〜第53実施例と同様な機械的処理が施され、次いで前記海水電解装置4に送り込まれ該海水電解装置4で前記第48〜第53実施例と同様な塩素処理が施される。
前記海水電解装置4及び機械的処理装置3によって無害化処理が施された処理海水は、海水搬出路240を通って船舶100内のバラスト水タンク5に収容される。101は陸上である。
【0140】
かかる第54実施例によれば、海上設置無害化設備60を構成する海水電解装置4及び機械的処理装置3を、海上(102)に移動可能に浮設された装置搭載船230に搭載し、該海上設置無害化設備60において未処理海水中の微生物を殺滅又は殺菌する無害化処理を行い、処理海水を、該海上設置無害化設備60と船舶100に内のバラスト水タンク5とを接続する海水搬出路240を通して該バラスト水タンク5に収納するので、前記海水電解装置4、機械的処理装置3等の海水の無害化処理設備を前記海上設置無害化設備60として浮設できて、船舶100内に設置する必要がなくなる。これにより、船舶100における海水の無害化処理装置の設置スペースを低減できて、貨物等の搭載スペースを増大することが可能となる。
【0141】
また、海上(102)に移動可能に浮設された海上設置無害化設備60を構成する海水電解装置4及び機械的処理装置3と船100側のバラスト水タンク5とを、海水搬出路24を船舶100毎に繋ぎ換えることにより、1台(1セット)の海上設置無害化設備60により複数の船舶100のバラスト水タンク5についての無害化処理を行うことができる。これにより、海上設置無害化設備60の稼動率を上昇できるとともに船舶1001隻あたりの無害化処理装置の設置数を少なくできて装置コストを低減できる。
【0142】
また、沖合いに停泊している船舶100に対してバラスト水の無害化処理を行う際においても、海上に移動可能に浮設された海上設置無害化設備60を装置搭載船23の移動により船舶100に自在に近接させて、該海上設置無害化設備60において無害化処理を施した海水を該船舶100内のバラスト水タンク5に収容可能となる。これにより、岸壁あるいは沖合いに停泊している船舶の何れに対しても、きわめて容易にかつ短時間でバラスト水の無害化処理を行うことができる。
【0143】
さらには、前記海水電解装置4及び機械的処理装置3等の無害化処理装置を海上設置無害化設備60として船舶100とは別個に浮設するので、既存の船舶100に対しても船体内に該無害化処理装置を新たに設置するのが不要となるとともに、船舶100内の改造が最少限で済み、該無害化処理装置設置のための船舶100内設置コストを最少限に抑制できる。
【0144】
また、かかる第54実施例において、前記海上設置無害化設備60として、前記海水電解装置4と、前記機械的処理装置3及び前記微生物分離処理を該海水に施す微生物分離処理手段020(第7図に鎖線で示す)の何れか一方または双方とにより構成することもできる。
【0145】
また、かかる第54実施例の変形例として、前記海上設置無害化設備60として前記海水電解装置4を設置し、前記機械的処理装置3とともに微生物分離処理手段020を前記船舶100に搭載するように構成することも可能である。
さらに、かかる第54実施例において、前記海水電解装置4、機械的処理装置3、微生物分離処理手段020を、前記海上設置無害化設備60あるいは船舶100搭載用として置き換えることもできる。
すなわち、第56図において、前記海水電解装置4を船舶100に搭載し、海上設置無害化設備60として、前記機械的処理装置3及び微生物分離処理手段020の何れか一方または双方を設置することも可能である。
【0146】
第57図に示す第55実施例においては、海上設置無害化設備60は前記第54実施例と同様に海水電解装置4及び機械的処理装置3により構成し、前記機械的処理装置3と同様な他の機械的処理装置3を船舶100に搭載している。
【0147】
かかる第55実施例においては、前記第54実施例と同様に、前記海上設置無害化設備60の海水電解装置4及び機械的処理装置3によって無害化処理が施された処理海水は、海水搬出路240を通って船舶100内の他の機械的処理装置3に導入される。そして、かかる第55実施例においては、前記他の機械的処理装置3において再度無害化処理された処理海水を、該バラスト水タンク5に収容できる。
その他の構成及び作用効果は前記第54実施例と同一である。また前記第54実施例と同一の部材は同一の符号で示す。
【0148】
第58図に示す第56実施例においては、前記第55実施例(第57図)に加えて、前記船舶100の船体に、海中に開口して前記他の機械的処理装置3に接続される船体側海水搬入路29を設けている。
かかる第56実施例によれば、船舶100に搭載された他の機械的処理装置3によって、海上設置無害化設備60における海水電解装置4及び機械的処理装置3での処理海水、及び海中に開口する船体側海水搬入路29を通して導入された海水を同時に無害化処理してバラスト水タンク5に収容することができ、これにより、簡単な構造の機械的処理装置によって多量の海水を無害化処理できる。
その他の構成は前記第55実施例(第57図)と同一であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。またかかる第56実施例における他の作用効果は前記第54実施例と同一である。
【0149】
尚、前記各実施例においては、前記塩素処理手段を第4図に示すような電解槽循環方式の海水電解装置4に構成しているが、これに限定されず、海水から塩素含有物質を生成して該海水中に注入し微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理機能を有するものであればよい。
その1つに、酸化物質添加手段(図示省略)により、前記海水に、酸化作用を有する物質の添加処理を行う手段がある。前記酸化作用を有する物質としては、前記塩素含有物質のほかに、過酸化水素、オゾン等の酸化剤を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、設備コスト及び運転コストが低減され、かつ船体等の処理海水収容体側の強度低下をもたらすことなく、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になし得、さらには船舶におけるバラスト水の無害化処理装置の設置スペースを低減して貨物等の搭載スペースが増大され、かつ既存の船舶に対しても該無害化処理装置設置のための船体内の改造コストを最少限に抑制可能としたバラスト水等の海水の無害化処理方法及び装置を提供できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、未処理の海水中の微生物を除去して清浄な処理海水にしてバラスト水タンクに収容する時、又はバラスト水タンクに収容した未処理の海水を航海中に清浄な処理海水にする時、又はバラスト水タンクより未処理の海水を清浄な処理海水にして排水する時に行うバラスト水処理に適用される海水の無害化処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶において、オイルを搭載しない状態での航行時に、バラスト水タンクに収容する海水即ちバラスト水は、海洋汚染や公害の発生を回避するため、未処理の海水中の微生物を除去して清浄な処理海水にするための無害化処理が施こされている。
【0003】
かかる海水の無害化処理方法として、特許第2794537号公報、特開2002−192161号公報、特開2003−200156号公報の技術が提供されている。
【0004】
特許第2794537号公報の技術においては、バラスト水タンクを空または底部に水が残った状態にした後、該バラスト水タンク内に残存する沈澱物を昇温させ、有害プランクトンや細菌の死滅温度以上の温度に加熱し、所定時間保持している。
【0005】
特開2002−192161号公報の技術においては、バラスト水タンク内のバラスト水中に高電圧パルスを印加し、有害微生物に直接高電圧パルスを印加してその内部で放電を起して、該有害微生物を殺滅又は殺菌し、あるいは電極間のアーク放電による衝撃波で間接的に該有害微生物を殺滅又は殺菌している。
【0006】
特開2003−200156号公報の技術においては、パイプ内流路の途中に、複数の細長いスリットを有するスリット板を横断面方向に取り付け、未処理液体を該スリットを通過させることにより、前記未処理液体の微生物に損傷を与え殺滅又は殺菌するようにしている。
【0007】
特許第2794537号公報の技術にあっては、バラスト水タンクを空または底部に水が残った状態とするため、局部的な応力集中により船体に損傷を与える危険性がある。また、バラスト水タンク底部全体に溜まった沈澱物を昇温させるように広範囲にバラスト水タンクを加熱するので、加熱作業に時間と手間が掛かり処理コストが高くなる。
【0008】
また、特開2002−192161号公報の技術にあっては、大掛かりな高電圧パルス印加設備を必要とするため、設備コスト及び運転コストが高くなる。
さらに、特開2003−200156号公報にあっては、未処理液体をスリットを通過させることにより、サイズの大きな微生物は殺滅又は殺菌可能であるが、サイズの小さな細菌類を殺滅又は殺菌するのは困難である。
【0009】
また、前記各先行技術において、特許第2794537号公報、特開2002−192161号公報ともに、バラスト水の無害化処理装置を全て船舶に搭載しているので、船体内における該無害化処理装置の設置スペースが大きくなり、貨物等の搭載スペースが抑制される。
【0010】
また特許第2794537号公報、特開2002−192161号公報の技術にあっては、かかる無害化処理装置を既存の船舶に設置するには、該無害化処理装置を設置するための船体内の大幅な改造が必要となり、改造コストが嵩む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、設備コスト及び運転コストが低減され、かつ船体等の処理海水収容体側の強度低化をもたらすことなく、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になし得る海水の無害化処理方法及びその装置を提供することを第1の目的とする。
また本発明の第2の目的は、設備コスト及び運転コストが低減され、かつ船体側の強度低下をもたらすことなく、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になし得、さらには船舶におけるバラスト水の無害化処理装置の設置スペースを低減して貨物等の搭載スペースを増大可能とし、かつ既存の船舶に対しても該無害化処理装置設置のための船体内の改造コストを最少限に抑制可能とした海水の無害化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するため、少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容する海水の無害化処理方法であって、
前記未処理の海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離処理と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成して、該塩素含有物質を海水中に注入し、前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、処理海水をバラスト水タンクに収容することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記方法を実施する装置として、少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容するように構成された海水の無害化処理装置であって、前記海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離装置と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成し該海水中に注入して前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施す塩素処理手段と、前記微生物分離装置及び塩素処理手段による処理後の処理海水を収容するバラスト水タンクとを併設したことを特徴とする海水の無害化処理装置を提案する。
【0014】
かかる発明によれば、前記ろ過法又は遠心分離法による微生物分離処理と、該処理後の処理海水に酸化作用を有する物質を添加し微生物を殺滅又は殺菌する処理とを併せて施すことにより、微生物の処理機能が向上する。また、フィルターのメッシュを微生物除去の最適メッシュに選定することにより、比較的大きな広範囲の微生物を確実に捕獲し除去できて、逆洗等により捕獲後の処理も簡単にできる。
【0015】
かかる発明において、好ましくは、前記微生物分離処理の前工程または後工程のいずれかに、機械的処理装置により、該海水中の微生物に損傷を与え殺滅又は殺菌する機械的処理を施す。
このように構成すれば、前記ろ過法又は遠心分離法による微生物分離処理と他の機械的処理とを併せて施すことにより、微生物の処理機能が向上するとともに、塩素処理の負荷を低減できる。
【0016】
例えば、前記機械的処理は内径0.5mm程度の多数の小孔が穿孔されたスリット板を海水流路中に設けて、該海水を前記小孔内を通過させるように構成するのが好適であり、かかる機械的処理によって甲殻を有するような比較的大きな微生物を含む広範囲の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌するとともに、前記海水に、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩等で構成した塩素含有物質を注入する塩素処理や酸化作用を有する物質の添加処理を施すことによりサイズの小さい細菌類を殺滅又は殺菌するという、機械的処理による比較的大きな広範囲の微生物の殺滅又は殺菌と塩素処理によるサイズの小さい細菌類の殺滅又は殺菌とを1つの海水処理系で組み合せることにより、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができる。
【0017】
従って、前記ろ過法又は遠心分離法による微生物分離処理と他の機械的処理とを併せて施すことにより、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理とサイズの小さい細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを組み合わせることにより、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができるとともに、前記機械的処理と塩素処理や酸化作用を有する物質の添加処理とを組み合わせることにより機械的処理の負荷が軽減され圧力損失が減少し、機械的処理の所要動力を低減できて装置を小型、小容量化でき、さらには塩素処理では、殺滅殺菌効果の高い細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等の塩素含有物質の注入量を低減できる。
【0018】
かかる発明において好ましくは、前記塩素処理は、前記海水の全部または一部を貯留タンクに導入し、該海水を前記貯留タンクと該海水を電気分解して塩素含有物質を生成する電解槽との間の循環路を循環させる電解槽循環方式により行う。
【0019】
また、かかる発明において、前記海水に前記機械的処理を施して前記バラスト水タンクに搬送される処理海水の全部または一部に前記塩素処理を施し、該塩素処理により生成された前記塩素含有物質を、前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて前記海水中に注入するのがよい。
【0020】
かかる発明によれば、例えば多数の小孔が穿孔されたスリット板の該多数の小孔内を海水を通過させることにより発生した乱流によって比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と、酸化作用を有する物質の添加処理あるいは塩素含有物質を海水中に注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを組み合わせることにより、海水中のあらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができるとともに、海水の機械的処理と塩素処理とを組み合わせることにより機械的処理の圧力損失の減少が可能となり負荷が軽減される。
これにより、海水無害化処理時における機械的処理の所要動力を低減できて、装置を小型、小容量化でき、さらには酸化作用を有する物質の添加処理あるいは塩素処理では、細菌類の殺滅又は殺菌のみを行えばよいので、過酸化水素、オゾン、あるいは塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等の塩素含有物質の注入量を低減できる。
【0021】
また、海水中の微生物を除去する無害化処理システムの設備コスト及び運転コストを低減して、海水中の微生物を確実に除去可能な海水の無害化処理システムを提供できる。
また、塩素処理における前記塩素含有物質のうち、次亜塩素酸を用いる場合は、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と組み合わせることにより、該次亜塩素酸の注入量はサイズの小さい細菌類を除去するに必要な量だけで済み、該次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類の除去とを行う場合に比べて、海水無害化処理時における該次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する該次亜塩素酸濃度を著しく低減することが可能となり、海水無害化処理時における該次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、該機器類の耐久性を向上できるとともに、該次亜塩素酸の海中投棄による海洋汚染を抑制できる。
【0022】
また、かかる発明において、電解槽循環方式による処理は、次のようにして施すのがよい。
・前記電解槽循環方式による処理を前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて施す。
・前記電解槽循環方式による処理海水を、前記循環路の途中から抽出して前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて海水中に注入する。
このように構成すれば、処理海水の貯留タンクと電解槽との間の循環路を循環する処理海水中に含有される塩素含有物質特に次亜塩素酸を電解槽に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽供給海水のpHを下げることにより、電解槽におけるスケールの付着を防止できる。
【0023】
また、かかる発明において好ましくは、前記海水の塩素処理の電源に、太陽電池、風力発電電力等の自然エネルギーによる電力を用いる。
このように構成すれば、海水の塩素処理の電源に自然エネルギーを利用できるので、塩素処理の処理コストを低減できるとともに、船舶の航行中においても船舶内の動力を極力使用することなくバラスト水の無害化が可能となる。
【0024】
かかる海水の無害化処理装置において、好ましくは次のように構成する。
前記塩素処理手段は、前記海水の全部または一部を貯留する貯留タンクと該海水を電気分解して塩素含有物質を生成する電解槽とを備えて前記海水を前記貯留タンクと電解槽との間の循環路を循環させる電解槽循環方式による処理を前記海水に施すように構成された海水電解装置からなる。
【0025】
かかる発明において、前記微生物とは、主に動物プランクトン及びそのシスト、植物プランクトン及びそのシスト、細菌類、菌類、ウィルスなど、毒を有するものや病原性のあるもの又は生態系を乱すものである。
【0026】
また前記無害化処理とは、主に海洋汚染を起こしたり人間及び魚介類に被害をもたらしたり生態系を破壊するこれら微生物を殺滅又は殺菌又は除去することである。
前記塩素含有物質は、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩で構成するのが好ましく、特に次亜塩素酸が最も好適である。尚、前記塩素含有物質は、その一部を外部から薬品として添加してもよい。
【0027】
また、かかる発明において、前記海水電解装置を用いての電解槽循環方式による処理は、次のようにして施すのがよい。
・前記電解槽循環方式による処理を機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて施す。
・前記電解槽循環方式による処理海水を、前記循環路の途中から抽出して前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて海水中に注入する。
このように構成すれば、循環路を循環する処理海水中に含有される塩素含有物質特に次亜塩素酸を電解槽に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽供給液のpHを下げることにより、電解槽におけるスケールの付着を防止できる。
【0028】
また、かかる発明において好ましくは、前記機械的処理及び塩素処理を施した後の海水等の処理海水に、活性炭による処理あるいは金属触媒による処理のいずれか一方または双方を施す。
あるいは、前記機械的処理及び塩素処理を施した後の処理海水に、活性炭による処理あるいは金属触媒による処理のいずれか一方または双方を施す。
このように構成すれば、前記機械的処理及び塩素処理を施した後の処理海水に、活性炭による処理を施せば、該活性炭によるトリハロメタン処理によって、塩素処理を施した後の処理海水に発生し易い発ガン性物質を除去することが可能となる。
【0029】
また、前記金属触媒としては、Mn,Tc,Re,VIIA族元素、あるいは、Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt等のVIII族元素のうち、1種以上を含む金属または化合物が好適である。
【0030】
前記金属触媒を施せば、塩素処理を施した後に残留するHClOを前記金属触媒で還元することにより、塩素処理後の処理海水を無害化できる。
そして、前記機械的処理及び塩素処理を施した後の処理海水に、活性炭による処理及び金属触媒による処理海水に発生し易い発ガン性物質を除去処理を併せて施せば、塩素処理を施した後の処理海水から、活性炭により発ガン性物質を除去するとともに、金属触媒により塩素処理後の残留HClOを還元して無害化でき、処理海水の無害化、清浄化をより向上できる。
【0031】
かかる発明によれば、船舶への荷積み時にバラスト水をバラスト水タンクから海中に戻す前に、該バラスト水タンク内において前記機械的処理と塩素処理または酸化物質添加処理とを併せて施すことにより、完全に無害化したバラスト水を海中に排水できる。
【0032】
又かかる発明によれば、船舶の航行中においても、バラスト水タンク内の処理海水に機械的処理と塩素処理とを併せて施すことによりバラスト水を無害化できるので、バラスト水排水時の無害化処理時間を短縮できる。
【0033】
また、かかる発明において好ましくは、前記電解槽の下流側に、電気分解して塩素含有物質を生成した後の処理海水の残留塩素量を計測する残留塩素計を備え、前記電解槽は前記残留塩素計による残留塩素量の計測値に基づき前記電気分解における塩素含有物質の生成量を制御するように構成されてなる。
このように構成すれば、処理海水中の残留塩素量(塩素濃度)の計測値に基づき塩素処理における電解電流値を制御可能となって、処理海水への塩素含有物質(特に次亜塩素酸)の注入量を正確に目標値に制御でき、該塩素含有物質の処理コストを最少限に抑えて所要の殺菌処理を行うことができる。
【0034】
本発明によれば、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理とサイズの小さい細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理あるいは酸化作用を有する物質の添加処理とを組み合わせることにより、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができる。
【0035】
また、前記機械的処理と塩素処理あるいは酸化作用を有する物質の添加処理とを組み合わせることにより、機械的処理の負荷が軽減され圧力損失の減少が可能となり機械的処理の所要動力を低減できて装置を小型、小容量化できる。さらには前記塩素処理では、処理効果の大きい細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等の塩素含有物質の注入量を低減できる。
これにより、海水中の微生物を除去する無害化処理システムの設備コスト及び運転コストを低減して、海水中の微生物を確実に除去可能な海水の無害化処理システムを提供できる。
【0036】
また本発明によれば、バラスト水タンク内に収容された海水中の微生物を除去して処理海水を海中に排水する際には、該バラスト水タンク内において前記機械的処理と塩素処理または酸化物質添加処理とを併せて施すことにより、完全に無害化したバラスト水を海中に排水できる。
【0037】
また、バラスト水タンク内の海水を循環させながら前記機械的処理と塩素処理または酸化物質添加処理とを併せて施すことにより、船舶の航行中においてもバラスト水の無害化処理を実施できることとなり、バラスト水排水時の無害化処理時間を短縮できる。
【0038】
また本発明によれば、前記塩素含有物質のうち、最も好適である次亜塩素酸を用いる場合は、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と組み合わせることにより、該次亜塩素酸の注入量は細菌類を除去するに必要な量だけで済み、該次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類を除去とを行う場合に比べて該次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、機器類の耐久性を向上できるとともに、次亜塩素酸による海洋汚染を抑制できる。
【0039】
また本発明は、少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、バラスト水タンク内に収容された海水中の微生物を除去して該海水を清浄な処理海水に転換するように構成された海水の無害化処理装置であって、前記海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離装置と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成し該海水中に注入して前記微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理を施す塩素処理手段と備え、前記各手段による処理後の処理海水を前記バラスト水タンク外に排出するか若しくは、前記各手段による処理後の処理海水を前記バラスト水タンクに戻して循環するように構成されてなることを特徴とする。
【0040】
ここで、かかる発明において、前記微生物とは、主に動物プランクトン及びそのシスト、植物プランクトン及びそのシスト、細菌類、菌類、ウィルスなど、毒を有するものや病原性のあるもの又は生態系を乱すものである。
【0041】
また前記無害化処理とは、主に海洋汚染を起こしたり人間及び魚介類に被害をもたらしたり生態系を破壊するこれら微生物を殺滅又は殺菌又は除去することである。
前記塩素含有物質は、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩で構成するのが好ましく、特に次亜塩素酸が最も好適である。
【0042】
そして、かかる発明において、前記機械的処理装置は、内径0.5mm程度の多数の小孔が穿孔されたスリット板を海水流路中に設けて構成するのが好適であり、該機械的処理装置においては、海水を前記小孔内を通過させることによって、甲殻を有するような比較的大きな微生物を含む広範囲の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する。
【0043】
また、前記塩素処理手段においては、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩等で構成した塩素含有物質を海水に注入し、酸化物質添加手段においては酸化作用を有する物質を海水に添加することにより、サイズの小さい細菌類を殺滅又は殺菌する。
【0044】
従って、このように構成すれば、機械的処理装置あるいは微生物分離処理手段による比較的大きな広範囲の微生物の殺滅又は殺菌と、塩素処理手段あるいは酸化物質添加手段によるサイズの小さい細菌類の殺滅又は殺菌とを、1つの海水処理系で組み合せることにより、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができる。
【0045】
また、前記機械的処理あるいは微生物分離処理手段と塩素処理や酸化作用を有する物質の添加処理とを組み合わせることにより、機械的処理装置の負荷が軽減されて圧力損失が減少し、機械的処理装置の所要動力を低減できて装置を小型、小容量化でき、さらには塩素処理では、殺滅殺菌効果の高い細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等の塩素含有物質の注入量を低減できる。
これにより、海水中の微生物を除去する無害化処理システムの設備コスト及び運転コストを低減して、海水中の微生物を確実に除去可能な海水の無害化処理システムを提供できる。
【0046】
また、前記塩素含有物質のうち、最も好適である次亜塩素酸を用いる場合は、比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と組み合わせることにより、該次亜塩素酸の注入量は細菌類を除去するに必要な量だけで済み、従来技術のように該次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類の除去とを行う場合に比べて該次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する該次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、該機器類の耐久性を向上できるとともに、該次亜塩素酸による海洋汚染を抑制できる。
【0047】
以上の発明において、前記塩素処理手段は、前記海水の全部または一部を貯留する貯留タンクと該海水を電気分解して塩素含有物質を生成する電解槽とを備えて前記海水を前記貯留タンクと電解槽との間の循環路を循環させる電解槽循環方式による処理を前記海水に施すように構成された海水電解装置で構成し、該海水電解装置による処理を次のようにして施すのがよい。
・前記電解槽循環方式による処理を機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて施す。
・前記電解槽循環方式による処理海水を、前記循環路の途中から抽出して前記機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて海水中に注入する。
このように構成すれば、循環路を循環する処理海水中に含有される塩素含有物質特に次亜塩素酸を電解槽に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽供給液のpHを下げることにより、電解槽におけるスケールの付着を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1図は、本発明の第1実施例に係る船舶用バラスト水の無害化処理方法を示すブロック図である。
【図2】第2図は、第2実施例を示す第1図対応図である。
【図3】第3図は、第3実施例を示す第1図対応図である。
【図4】第4図は、第4実施例を示す第1図対応図である。
【図5】第5図は、第5実施例を示す第1図対応図である。
【図6】第6図は、第6実施例を示す第1図対応図である。
【図7】第7図は、第7実施例を示す第1図対応図である。
【図8】第8図は、第8実施例を示す第1図対応図である。
【図9】第9図は第9実施例を示す第1図対応図である。
【図10】第10図は、第10実施例を示す第1図対応図である。
【図11】第11図は、第11実施例を示す第1図対応図である。
【図12】第12図は、第12実施例を示す第1図対応図である。
【図13】第13図は、第13実施例を示す第1図対応図である。
【図14】第14図は、第14実施例を示す第1図対応図である。
【図15】第15図は、第15実施例を示す第1図対応図である。
【図16】第16図は、第16実施例を示す第1図対応図である。
【図17】第17図は、第17実施例を示す第1図対応図である。
【図18】第18図は、第18実施例を示す第1図対応図である。
【図19】第19図は、第19実施例を示す第1図対応図である。
【図20】第20図は、第20実施例を示す第1図対応図である。
【図21】第21図は、第21実施例を示す第1図対応図である。
【図22】第22図は、第22実施例を示す第1図対応図である。
【図23】第23図は、第23実施例を示す第1図対応図である。
【図24】第24図は、第24実施例を示す第1図対応図である。
【図25】第25図は、第25実施例を示す第1図対応図である。
【図26】第26図は、第26実施例を示す第1図対応図である。
【図27】第27図は、第27実施例を示す第1図対応図である。
【図28】第28図は、第28実施例を示す第1図対応図である。
【図29】第29図は、第29実施例を示す第1図対応図である。
【図30】第30図は、第30実施例を示す第1図対応図である。
【図31】第31図は、第31実施例を示す第1図対応図である。
【図32】第32図は、第32実施例を示す第1図対応図である。
【図33】第33図は 第33実施例を示す第1図対応図である。
【図34】第34図は、第34実施例を示す第1図対応図である。
【図35】第35図は、第35実施例を示す第1図対応図である。
【図36】第36図は、第36実施例を示す第1図対応図である。
【図37】第37図は、第37実施例を示す第1図対応図である。
【図38】第38図は、第38実施例を示す第1図対応図である。
【図39】第39図は、第39実施例を示す第1図対応図である。
【図40】第40図は、第40実施例を示す第1図対応図である。
【図41】第41図は、第41実施例を示す第1図対応図である。
【図42】第42図は、第42実施例を示す第1図対応図である。
【図43】第43図は、第43実施例を示す第1図対応図である。
【図44】第44図は、第44実施例を示す第1図対応図である。
【図45】第45図は、第45実施例を示す第1図対応図である。
【図46】第46図は、第46実施例を示す第1図対応図である。
【図47】第47図は、第47実施例を示す第1図対応図である。
【図48】第48図は、前記各実施例のうちの主要な処理を示す系統図(その1)である。
【図49】第49図は、前記各実施例のうちの主要な処理を示す系統図(その2)である。
【図50】第50図は、本発明の第48実施例に係る船舶用バラスト水の無害化処理装置を示すブロック図である。
【図51】第51図は、第49実施例を示す第50図対応図である。
【図52】第52図は、第50実施例を示す第50図対応図である。
【図53】第53図は、第51実施例を示す第50図対応図である。
【図54】第54図は、第52実施例を示す第50図対応図である。
【図55】第55図は、第53実施例を示す第50図対応図である。
【図56】第56図は、第54実施例を示す第50図対応図である。
【図57】第57図は、第55実施例を示す第50図対応図である。
【図58】第58図は、第56実施例を示す第1図対応図である。
【図59】第59図は、微生物分離処理手段の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0050】
第1図は本発明の第1実施例に係る船舶用バラスト水の無害化処理方法を示すブロック図である。第2図ないし第47図は第2ないし第47実施例を示す第1図対応図である。第48図及び第49図は前記各実施例のうちの主要な処理を示す系統図(その1)及び(その2)である。
【0051】
第1図に示す第1実施例において、1は未処理海水を濾過してごみ等の異物を捕獲するスクリーン、2は海水を処理ライン6に搬送するポンプである。3は前記スクリーン2を経た海水中の微生物に損傷を与え殺滅又は殺菌する機械的処理装置である。
【0052】
該機械的処理装置3は、海水の流路中に多数の小孔が穿孔された多孔板を設置して、海水が前記多数の小孔内を通過する際に発生する乱流により該海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌するように構成された多孔板式処理装置が好適であるが、かかる多孔板式処理装置に限られることなく、海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する機能を有するものであればよい。
【0053】
4は前記機械的処理装置を経た海水に電解(電気分解)処理を施す海水電解装置で、該海水を電気分解して、該海水中から次亜塩素酸ソーダ(以下次亜塩素酸という)を生成するものである。該海水電解装置4で生成された次亜塩素酸は前記処理ライン6に注入されるようになっている。5はかかる処理が施された処理海水を収容するバラスト水タンクである。
【0054】
かかる第1実施例において、未処理海水は前記スクリーン1でごみ等の異物が捕獲され除去された後、前記ポンプ2により処理ライン6を搬送されて機械的処理装置3に導入される。
【0055】
該機械的処理装置3においては、前記海水を多数の小孔内を通過させる際に、該海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する。該機械的処理装置3でかかる機械的処理が施された海水は、その全部または一部が抽出ライン8を介して前記海水電解装置4に送り込まれる。該海水電解装置4では、該海水を電解処理して、次亜塩素酸を生成する。
この次亜塩素酸は、図に実線で示す注入ライン9を介して、前記処理ライン6の前記機械的処理装置3の上流に注入するか、あるいは図に破線で示す注入ライン10を介して、前記処理ライン6の前記機械的処理装置3の下流に注入する。該次亜塩素酸の注入により、海水中の残存微生物が殺滅又は殺菌される。
あるいは、前記機械的処理装置3間の循環ライン10aで海水を循環させながら、機械的処理のみを施すことも可能である。
従って、前記海水は、前記機械的処理装置3において該海水中の微生物を殺滅又は殺菌し、前記海水電解装置4において該海水から抽出された次亜塩素酸を注入して該海水中の残存微生物を殺滅又は殺菌することにより、完全に無害化されてバラスト水タンクに収容されることとなる。
【0056】
かかる実施例において、前記微生物とは、主に動物プランクトン及びそのシスト、植物プランクトン及びそのシスト、細菌類、菌類、ウィルスなど、毒を有するものや病原性のあるもの又は生態系を乱すものである。
【0057】
また前記海水の無害化処理とは、主に海洋汚染を起こしたり人間及び魚介類に被害をもたらしたり生態系を破壊するこれら微生物を殺滅又は殺菌又は除去することである。
前記塩素含有物質は、前記実施例で用いた次亜塩素酸が最も好適であるが、塩素、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩を用いることができる。
また、前記酸化作用を有する物質は、前記塩素含有物質のほかに、過酸化水素、オゾン等の酸化剤も含む。
尚、前記塩素含有物質は、外部から薬品として添加することもできる。
【0058】
かかる実施例によれば、多数の小孔が穿孔された多孔板を備えた機械的処理装置3の小孔内を海水を通して発生する乱流により比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と、海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を海水中に注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを組み合わせることにより、海水中のあらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができるとともに、海水の機械的処理と塩素処理とを組み合わせることにより機械的処理装置3の圧力損失の減少が可能となり負荷が軽減される。
これにより、海水無害化処理時における機械的処理装置3の所要動力を低減できて、該装置を小型、小容量化でき、さらには前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸の海水中への注入による塩素処理では、処理効果の大きい細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので、次亜塩素酸の注入量を低減できる。
【0059】
また、前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を用いて細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を、前記機械的処理装置3を用いて比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と組み合わせることにより、該次亜塩素酸の注入量が細菌類を除去するに必要な量だけで済み、該次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類の除去とを行う場合に比べて、海水無害化処理時における該次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する該次亜塩素酸が著しく低減し海水無害化処理時における該次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、該機器類の耐久性を向上できるとともに、該次亜塩素酸の海中投棄による海洋汚染を抑制できる。
【0060】
第2図ないし第47図に示される第2ないし第47実施例において、前記第1実施例と同一の部材は同一の符号で示す。
【0061】
第2図に示される第2実施例においては、前記第1実施例と同様な、機械的処理装置3を用いて比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理、及び前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を処理ライン6中の海水中に注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を計測する残留塩素計11を設け、該残留塩素計11による残留塩素量の計測値を前記海水電解装置4に入力するように構成している。
【0062】
そして、かかる第2実施例においては、残留塩素計11で、前記機械的処理および塩素処理を施した後の処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を計測し、該残留塩素量計測値を前記海水電解装置4に入力し、該海水電解装置4において該残留塩素量の計測値に基づき該海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する。
【0063】
従ってかかる第2実施例によれば、前記処理海水の残留塩素量(塩素濃度)の計測値に基づき海水電解装置4における電解電流値を制御し次亜塩素酸の生成量を制御可能となって、海水への次亜塩素酸の注入量を正確に目標値に制御でき、該次亜塩素酸での処理コストを最少限に抑えて所要の殺菌処理を行うことができる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0064】
第3図に示される第3実施例においては、前記第1実施例における機械的処理及び塩素処理に加えて(あるいはこれらの処理を施さずに)、前記バラスト水タンク5に収容された海水を循環路13,14を通して前記海水電解装置4を循環させて、該海水電解装置4において該海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を用いて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施している。
【0065】
また、かかる第3実施例においては、前記海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電12等の自然エネルギーによる電力を用いている。
このように構成すれば、前記海水電解装置4の電源に自然エネルギーを利用できるので、次亜塩素酸を用いての塩素処理の処理コストを低減できるとともに、船舶の航行中においても船舶内の動力を極力使用することなく、海水電解装置4を用いてのバラスト水の無害化が可能となる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0066】
第4図に示される第4実施例においては、海水電解装置4を次のような電解槽循環方式に構成している。
即ち第4図において、43は貯留タンク、44はポンプ、41は電解槽、42は該電解槽41用の電源装置であり、塩素処理用の海水を抽出ライン8を介して前記貯留タンク43内に導入している。
そして、前記貯留タンク43から前記ポンプ44、前記電解槽41を通って前記貯留タンク43に戻る循環路47を形成し、前記貯留タンク43内の海水を前記ポンプ44により該循環路47を循環させ、前記電解槽41において該海水から次亜塩素酸を生成し、該循環路47途中で該次亜塩素酸を注入ライン9(あるいは第1図に示す注入ライン10)を介して前記処理ライン6(第1図参照)に注入している。尚、45,46は開閉弁である。
【0067】
前記次亜塩素酸は、前記第1実施例と同様に、注入ライン9を介して前記処理ライン6の前記機械的処理装置3の上流に注入するか、あるいは注入ライン10を介して、前記処理ライン6の前記機械的処理装置3の下流に注入する。
さらに、前記電解槽循環方式による塩素処理を、前記機械的処理装置3による機械的処理の前工程または後工程のいずれかにおいて施して前記次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸により海水中の細菌類を殺滅又は殺菌するようにしてもよい。
【0068】
かかる第4実施例によれば、処理海水の貯留タンク43と電解槽41との間の循環路47を循環する処理海水中に含有される次亜塩素酸を電解槽41に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽41への供給海水のpHを下げることにより、該電解槽41におけるスケールの付着を防止できる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0069】
第5図に示される第5実施例においては、前記実施例における機械的処理装置3に代えて、処理ライン6にフィルター20を設置している。21は該フィルター20の逆洗ライン、22は該逆洗ライン21を開閉する開閉弁である。
【0070】
そして、かかる第5実施例においては、海水を前記フィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去できる。前記処理ライン6のフィルター20の上流側あるいは下流側には、前記第1実施例と同様に、前記海水電解装置4において該海水から生成された次亜塩素酸を、注入ライン9(あるいは注入ライン10)を介して注入し、細菌類を殺滅又は殺菌している。
【0071】
このようにかかる第5実施例によれば、前記フィルター20のメッシュを微生物除去の最適メッシュに選定することにより、比較的大きな広範囲の微生物を確実に捕獲し除去できて、逆洗ライン21を用いての逆洗により捕獲後の微生物の処理も簡単にできる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0072】
第6図に示される第6実施例においては、前記処理ライン6のフィルター20の上流側あるいは下流側に前記各実施例と同様な機械的処理装置3を設置している。
【0073】
かかる第6実施例によれば、前記フィルター20によるフィルター処理と機械的処理装置3による他の機械的処理とを併せて施すことにより、微生物の処理機能が向上するとともに、後流側の塩素処理の負荷を低減できる。
その他の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
尚、前記フィルター20に代えて、遠心分離装置(図示省略)を設置し、該遠心分離装置により前記海水から微生物を遠心分離して、該海水から除去するようにしてもよい。
【0074】
また、前記各実施例において、前記塩素処理に限らず、酸化物質添加手段(図示省略)により、前記海水に、酸化作用を有する物質の添加処理を行うこともできる。前記酸化作用を有する物質は、前記塩素含有物質のほかに、過酸化水素、オゾン等の酸化剤を用いることができる。
【0075】
以下の各実施例は、手段が異なるが、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌するという作用効果は同一である。
【0076】
第7図に示される第7実施例においては、前記未処理海水に塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を行い、該塩素含有物質注入の前工程あるいは後工程に前記機械的処理装置3を設置して海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する機械的処理を行い、バラスト水タンク5に収容する。
【0077】
前記塩素含有物質は、塩素、次亜塩素酸ソーダ、亜塩素酸ソーダ、塩素酸またはこれらのイオンや塩で構成するのが好ましく、特に次亜塩素酸ソーダが最も好適である。
【0078】
第8図に示される第8実施例においては、前記未処理海水に前記海水電解装置4による塩素処理を行い、次いで前記機械的処理装置3による機械的処理を行い、バラスト水タンク5に収容する。
【0079】
また、第9図に示される第9実施例においては、前記第8実施例とは逆の順序で、未処理海水に前記機械的処理装置3による機械的処理を行い、次いで前記海水電解装置4による塩素処理を行い、バラスト水タンク5に収容する。
【0080】
第10図に示される第10実施例においては、前記未処理海水に海水電解装置4による塩素処理、及び機械的処理装置3による機械的処理を行った後、金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施し、バラスト水タンク5に収容する。
【0081】
かかる金属触媒としてはMn,Tc,Re,VIIA族元素、あるいは、Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt等のVIII族元素のうち、1種以上を含む金属または化合物が好適である。
このようにすれば、塩素処理を施した後に残留するHClOを次の反応式により、前記金属触媒で還元することにより、塩素処理後の処理海水を無害化できる。
HClO+MOn−1→HCl+MOn (M:金属)
【0082】
また、前記活性炭によるトリハロメタン処理を施せば、該活性炭によるトリハロメタン処理によって、塩素処理を施した後の処理海水に発生し易い発ガン性物質を除去することが可能となる。
従って、かかる第10実施例によれば、塩素処理を施した後の処理海水から、活性炭により発ガン性物質を除去するとともに、金属触媒により塩素処理後の残留HClOを還元して無害化できて、処理海水の無害化、清浄化をより向上できる。
尚、前記第10実施例において、活性炭処理装置32による活性炭処理を行った後、金属触媒処理装置31による金属触媒による処理を施してもよい。また、前記活性炭処理装置32による活性炭処理のみを行っても、あるいは金属触媒処理装置31による金属触媒による処理のみを行ってもよい。
【0083】
第11図に示される第11実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第1実施例(第1図)と同様な、前記海水電解装置4による塩素処理と機械的処理装置3による機械的処理とを施して、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0084】
第12図に示される第12実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第7実施例(第7図)と同様な、塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入する塩素処理を行い、該塩素含有物質注入の前工程あるいは後工程に前記機械的処理装置3による機械的処理を行い、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0085】
第13図に示される第13実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第8実施例(第8図)と同様な、前記海水電解装置4による塩素処理を行い、次いで前記機械的処理装置3による機械的処理を行って、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0086】
第14図に示される第14実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第13実施例とは逆の順序で、前記第9実施例(第9図)と同様な、前記機械的処理装置3による機械的処理を行った後、前記海水電解装置4による塩素処理を行い、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0087】
第15図に示される第15実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第10実施例(第10図)と同様な処理、即ち前記海水電解装置4による塩素処理及び機械的処理装置3による機械的処理を行った後、金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施し、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0088】
第16図に示される第16実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第2実施例(第2図)と同様に、機械的処理装置3による機械的処理及び前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を海水中に注入する塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を残留塩素計11で計測し、該残留塩素量の計測値に基づき海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する処理を行って、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0089】
第17図に示される第17実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第5実施例(第5図)と同様に、処理ラインにフィルター20を設置して(21は該フィルター20の逆洗ライン、22は該逆洗ライン21を開閉する開閉弁)、前記海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去し、処理ラインのフィルター20の上流側あるいは下流側に海水電解装置4において該海水から生成された次亜塩素酸を注入して細菌類を殺滅又は殺菌し、海水を無害化して海中に排水している。
【0090】
第18図に示される第18実施例においては、前記フィルター20の後流に前記機械的処理装置3を設置して、フィルター20後の海水に機械的処理を行って、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して無害化し、海中に排水している。
【0091】
第19図に示される第19実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第11実施例(第11図)と同様に、前記海水電解装置4による塩素処理と機械的処理装置3による機械的処理とを施して、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
このようにすれば、船舶の航行中においてもバラスト水タンク5内のバラスト水の無害化処理を実施できることとなり、バラスト水を船舶から排水する際の無害化処理時間を短縮あるいは無害化処理を不要とすることが可能となる。以下の第12〜第25実施例でもこれと同一の作用効果を奏することができる。
【0092】
第20図に示される第20実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第12実施例(第12図)と同様に、塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入する塩素処理を行い、該塩素含有物質注入の前工程あるいは後工程に前記機械的処理装置3による機械的処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0093】
第21図に示される第21実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第13実施例(第13図)と同様に、海水電解装置4による塩素処理を行い、次いで前記機械的処理装置3による機械的処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0094】
第22図に示される第22実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第14実施例(第14図)と同様に、機械的処理装置3による機械的処理を行った後、海水電解装置4による塩素処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0095】
第23図に示される第23実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第15実施例(第15図)と同様に、海水電解装置4による塩素処理及び機械的処理装置3による機械的処理を行った後、金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施すことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0096】
第24図に示される第24実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第16実施例(第16図)と同様に、機械的処理装置3による機械的処理及び海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を海水中に注入する塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を残留塩素計11で計測し、該残留塩素量の計測値に基づき海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0097】
第25図に示される第25実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第17実施例(第17図)と同様に、処理ラインにフィルター20を設置して(21は該フィルター20の逆洗ライン、22は該逆洗ライン21を開閉する開閉弁)、前記海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去し、処理ラインのフィルター20の上流側あるいは下流側に海水電解装置4において該海水から生成された次亜塩素酸を注入して細菌類を殺滅又は殺菌する処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0098】
第26図に示される第26実施例においては、バラスト水タンク5に収容された海水に、前記第18実施例(第18図)と同様に、フィルター20の後流に機械的処理装置3を設置してフィルター20後の海水に機械的処理を行うことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化している。
【0099】
第27図に示される第27実施例においては、未処理海水に前記機械的処理装置3による機械的処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施すことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0100】
第28図に示される第28実施例においては、未処理海水に前記機械的処理装置3による機械的処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水に、塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入する塩素処理を行うことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0101】
第29図に示される第29実施例においては、未処理海水に前記機械的処理装置3による機械的処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水に海水電解装置4による塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を残留塩素計11で計測し、該残留塩素量の計測値に基づき海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する処理を行うことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0102】
第30図に示される第30実施例においては、未処理海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去する微生物分離処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施すことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0103】
第31図に示される第31実施例においては、未処理海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去する微生物分離処理を施した後、機械的処理装置3を通して機械的処理を施してバラスト水タンク5に収容し、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施すことにより、該バラスト水タンク5内の海水を無害化している。
【0104】
第32図に示される第32実施例においては、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、この処理海水にさらに機械的処理装置3により機械的処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0105】
第33図に示される第33実施例においては、該バラスト水タンク5内の海水に、塩素含有物質注入装置30から塩素含有物質を注入する塩素処理を施し、この処理海水にさらに機械的処理装置3により機械的処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0106】
第34図に示される第34実施例においては、該バラスト水タンク5内の海水に海水電解装置4による塩素処理を施した後における処理海水の残留塩素量(塩素濃度)を残留塩素計11で計測し、該残留塩素量の計測値に基づき海水電解装置4の電解電流値を制御して該海水電解装置4で生成される次亜塩素酸の生成量を制御する処理を行い、この処理海水にさらに機械的処理装置3により機械的処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0107】
第35図に示される第35実施例においては、該バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、この処理海水に、該処理海水をさらにフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去する微生物分離処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0108】
第36図に示される第36実施例においては、処理海水をフィルター20を通すことにより該海水中の比較的大きな微生物を除去する微生物分離処理を施した後、機械的処理装置3を通して機械的処理を施して、完全に無害化し海中に排水している。
【0109】
第37図に示される第37実施例においては、バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4を循環させて海水中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、この処理海水を機械的処理装置3を通して機械的処理を施した後、さらに金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施すことにより、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌して、完全に無害化し海中に排水している。
【0110】
第38図に示される第38実施例においては、バラスト水タンク5内の海水に、前記海水電解装置4による塩素処理と機械的処理装置3による機械的処理とを施して、海水中の微生物や細菌類を殺滅又は殺菌してから、該海水を前記バラスト水タンク5に循環させる処理を繰り返すことにより無害化するに当たって、前記海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電装置33の自然エネルギーによる電力を用いている。
【0111】
第39図に示される第39実施例においては、前記第27実施例(第27図)におけるバラスト水タンク5内の海水の塩素処理を行う海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電装置33の自然エネルギーによる電力を用いている。
【0112】
第40図に示される第40実施例においては、前記第32実施例(第32図)におけるバラスト水タンク5内の海水の塩素処理を行う海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電装置33の自然エネルギーによる電力を用いている。
【0113】
第41図に示される第41実施例においては、未処理の海水の一部を処理ラインから分岐して前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施して前記処理ラインに循環させてから、バラスト水タンク5に収容している。
【0114】
第42図に示される第42実施例においては、未処理の海水を前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施して、バラスト水タンク5に収容している。
【0115】
第43図に示される第43実施例においては、バラスト水タンク5内の海水を前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施してバラスト水タンク5に循環させている。
【0116】
第44図に示される第44実施例においては、未処理海水の一部を処理ラインから分岐して前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施して前記処理ラインに循環させてから、海中に排水している。
【0117】
第45図に示される第45実施例においては、未処理の海水を前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施してから、海中に排水している。
【0118】
第46図に示される第46実施例においては、未処理海水の一部を処理ラインから分岐して前記海水電解装置4に導入し、該海水電解装置4で前記塩素処理を施して前記処理ラインに循環させ、この処理海水にさらに金属触媒処理装置31により金属触媒による処理を施し、次いで活性炭処理装置32によって活性炭によるトリハロメタン処理を施してから、海中に排水している。
【0119】
第47図に示される第47実施例においては、前記第43実施例(第43図)において、前記海水電解装置4の電源に、太陽電池、風力発電装置33の自然エネルギーによる電力を用いている。
【0120】
第48図及び第49図は、前記各実施例のうちの主要な処理を系統図で示したものである。
第48図において、(1)ないし(9)の例は、処理液を海水を含む要無害化液全般として、機械的処理装置3を用いての処理液の機械的破砕(機械的処理)による広範囲の微生物の殺滅又は殺菌と、海水電解装置4を用いての処理液中の細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを種々組み合わせている。
尚、第48図において、「次亜」は次亜塩素酸ソーダの略である。
(1)においては、第1図の第1実施例と同様に、未処理液に前記塩素処理と、機械的破砕処理とを組み合わせて施し、前記両処理の相乗効果を得ている。
(2)においては、未処理液に前記塩素処理を施した後、機械的破砕処理を施している。
(3)は、前記(2)の逆順序で、未処理液に前記機械的破砕処理を施した後、塩素処
理を施している。
(4)においては、前記未処理液に、Cl2(塩素)あるいは「次亜」を注入する塩素処理を施し、次いで前記機械的破砕処理を施している。
(5)は、前記(4)の逆順序で、前記未処理液に、機械的破砕処理を施し、次いでCl2(塩素)あるいは「次亜」を注入している。
(6)においては、前記未処理液に前記第4実施例と同様な電解槽循環方式による海水電解装置4による「次亜」を生成して未処理液に注入し、次いで前記機械的破砕処理を施している。
(7)は、前記(6)の逆順序で、前記未処理液に機械的破砕処理を施し、次いで前記第4実施例と同様な電解槽循環方式による海水電解装置4による「次亜」を生成して未処理液に注入している。
(8)においては、前記未処理液に前記第4実施例と同様な電解槽循環方式による海水電解装置4によって「次亜」を生成し、次いで前記「次亜」生成後の海水に機械的破砕処理を施している。
(9)は、前記(6)の逆順序で、前記未処理液に機械的破砕処理を施し、次いで処理海水に前記第4実施例と同様な電解槽循環方式による海水電解装置4によって「次亜」を生成している。
(10)においては、未処理液に前記塩素処理と、機械的破砕処理とを組み合わせて施し、次いで活性炭によるトリハロメタン処理を施す。
(11)においては、未処理液に前記塩素処理と、機械的破砕処理とを組み合わせて施し、次いで金属触媒による処理を施す。
(12)においては、未処理液に前記塩素処理と、機械的破砕処理とを組み合わせて施し、次いで活性炭によるトリハロメタン処理及び金属触媒による処理をこの順に施す。
【0121】
次に、第49図において、(1)においては、海水に前記塩素処理と、機械的破砕処理(後処理お含む)とを組み合わせて施して、バラスト水タンクに収容する。
(2)においては、バラスト水タンクに収容された海水に前記塩素処理と、機械的破砕処理(後処理を含む)とを組み合わせて施して、海中に排水する。
(3)においては、バラスト水タンクに収容された海水に前記機械的処理と塩素処理とを併せて施してバラスト水タンクに循環させる。
(4)においては、前記(3)において、前記海水の塩素処理の電源に、太陽電池、風力発電電力等の自然エネルギーによる電力を用いる。
以上の実施例は海水を無害化処理する方法及びその装置であるが、本発明はこれに限られることなく、微生物を含む海水を前記各実施例と同様な方法及び装置でもって無害化処理する場合にも広く適用できる。
【0122】
第50図は本発明の第48実施例に係る船舶用バラスト水の無害化処理装置を示すブロック図である。
第50図に示す第48実施例において、100は海102を航行する船舶、5は該船舶内に設置されたバラスト水タンク、50は陸上101に設置された陸上設置無害化設備である。
該陸上設置無害化設備50は、塩素処理手段としての海水電解装置4及び機械的処理装置3により構成される。
該機械的処理装置3は、海水の流路中に多数の小孔が穿孔された多孔板を設置して、海水が前記多数の小孔内を通過する際に発生する乱流により該海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌するように構成された多孔板式処理装置が好適であるが、かかる多孔板式処理装置に限られることなく、海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する機能を有するものであればよい。
前記海水電解装置4は、海水を電気分解して、該海水中から次亜塩素酸ソーダ(以下次亜塩素酸という)を生成して海水の処理ライン(図示省略)に注入するものであり、詳細は後述する。
200は海中と前記陸上設置無害化設備50の海水入口(前記海水電解装置4あるいは機械的処理装置3のいずれか一方の海水入口)とを接続する海水搬入路、210は前記陸上設置無害化設備50の海水出口(前記海水電解装置4あるいは機械的処理装置3のいずれか一方の海水出口)と前記バラスト水タンク5とを接続する海水搬出路である。
【0123】
かかる第48実施例においては、海水搬入路200を通った未処理海水が陸上設置無害化設備50の機械的処理装置3→海水電解装置4の順序で無害化処理を施される場合について説明するが、前記とは逆の海水電解装置4→機械的処理装置3の順序で無害化処理してもよい。
第48実施例において、海水搬入路200を通った未処理海水は機械的処理装置3に導入される。
該機械的処理装置3においては、前記海水を多数の小孔内を通過させる際に、該海水中の微生物に損傷を与えて殺滅又は殺菌する。該機械的処理装置3でかかる機械的処理が施された海水は、詳細を第4図に示す海水電解装置4に送り込まれる。該海水電解装置4では、海水を電解処理して、次亜塩素酸を生成し海水に注入する。
前記海水電解装置4による塩素処理手段によれば、処理海水の貯留タンク43と電解槽41との間の循環路47を循環する処理海水中に含有される次亜塩素酸を電解槽41に送り込むので、該次亜塩素酸によって電解槽41への供給海水のpHを下げることにより、該電解槽41におけるスケールの付着を防止できる。
前記海水電解装置4及び機械的処理装置3によって無害化処理が施された処理海水は、海水搬出路210を通って船舶内のバラスト水タンク5に収容される。
かかる実施例において、前記微生物とは、主に動物プランクトン及びそのシスト、植物プランクトン及びそのシスト、細菌類、菌類、ウィルスなど、毒を有するものや病原性のあるもの又は生態系を乱すものである。
前記塩素含有物質は、前記実施例で用いた次亜塩素酸が最も好適であるが、塩素、亜塩素酸、塩素酸またはこれらのイオンや塩を用いることができる。
また、前記酸化作用を有する物質は、前記塩素含有物質のほかに、過酸化水素、オゾン等の酸化剤も含む。
尚、前記塩素含有物質は、外部から薬品として添加することもできる。
【0124】
また、かかる第1実施例において、陸上設置無害化設備50として、第59図に示すような、フィルタ20、逆洗ライン21、該逆洗ライン21を開閉する開閉弁22等からなる微生物分離処理手段020(第50図に鎖線で示す)を追設して、前記海水をフィルタ20に通すことにより該海水中の比較的大きな前記微生物を除去することもできる。尚、前記フィルタ20等に代えて、遠心分離装置を用いることもできる。
さらには、かかる実施例において、前記海水電解装置4と前記微生物分離処理手段020とを組み合わせても良い。
【0125】
以上のように、かかる実施例においては、多数の小孔が穿孔された多孔板を備えた機械的処理装置3の小孔内を海水を通して発生する乱流により比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理と、海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を海水中に注入して細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理とを組み合わせているので、海水中のあらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になすことができるとともに、機械的処理装置3による海水の機械的処理と海水電解装置4による塩素処理とを組み合わせ、さらにはこれに、フィルタ20、逆洗ライン21、該逆洗ライン21を開閉する開閉弁22等からなる微生物分離処理手段020(第1図に鎖線で示す)を追設することにより、該機械的処理装置3の圧力損失の減少が可能となり負荷が軽減される。
これにより、海水無害化処理時における機械的処理装置3の所要動力を低減できて、該装置を小型、小容量化でき、さらには前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸の海水中への注入による塩素処理では、処理効果の大きい細菌類の殺滅又は殺菌を主体的に行えばよいので、次亜塩素酸の注入量を低減できる。
【0126】
また、前記海水電解装置4で生成された次亜塩素酸を用いて細菌類を殺滅又は殺菌する塩素処理と、前記機械的処理装置3を用いて比較的大きな広範囲の微生物を殺滅又は殺菌する機械的処理とを組み合わせることにより、塩素処理における次亜塩素酸の注入量が細菌類を除去するに必要な量だけで済み、次亜塩素酸で微生物の除去と細菌類の除去とを行う場合に比べて、海水無害化処理時における次亜塩素酸の注入量を低減できる。
これにより、残留する次亜塩素酸が著しく低減し海水無害化処理時における次亜塩素酸による後段側機器の腐蝕を抑制でき、機器類の耐久性を向上できるとともに、次亜塩素酸の海中投棄による海洋汚染を抑制できる。
【0127】
第51図に示す第49実施例においては、前記陸上設置無害化設備50を、海水から塩素含有物質を生成して海水中に注入し前記微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理を海水に施す前記海水電解装置4で構成し、海水中の微生物に損傷を与え殺滅又は殺菌する機械的処理を該海水に施す機械的処理装置3を船舶100に搭載している。
【0128】
かかる第49実施例によれば、陸上設置無害化設備50として陸上に設置された前記海水電解装置4により無害化処理された処理海水を、該陸上設置無害化設備50と船舶内のバラスト水タンク5とを接続する海水搬出路210を通して、船舶100内に設置された機械的処理装置3に導入し、該機械的処理装置3において無害化処理された処理海水を、バラスト水タンク5に収容することができる。
その他の構成及び作用効果は前記第48実施例(第50図)と同一である。また前記第48実施例と同一の部材は同一の符号で示す。
【0129】
第52図に示す第50実施例においては、前記第2実施例(第2図)に加えて、前記船舶100の船体に、海中に開口して前記機械的処理装置3に接続される船体側海水搬入路290を設けている。
かかる第50実施例によれば、船舶100に搭載された機械的処理装置3によって、陸上設置無害化設備50における海水電解装置4での処理海水、及び海中に開口する船体側海水搬入路29を通して導入された海水を同時に無害化処理してバラスト水タンク5に収容することができ、これにより、簡単な構造の機械的処理装置によって多量の海水を無害化処理できる。
その他の構成は前記第49実施例(第51図)と同一であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。またかかる第50実施例における他の作用効果は前記第1実施例と同一である。
【0130】
かかる第48〜第50実施例によれば、前記海水電解装置4あるいは機械的処理装置3を陸上設置無害化設備50として陸上に設置し、該陸上設置無害化設備50において未処理海水中の微生物を殺滅又は殺菌する無害化処理を行い、処理海水を、該陸上設置無害化設備50と船舶100に搭載されたバラスト水タンク5とを接続する海水搬出路210を通して該バラスト水タンク5に収納するので、前記海水電解装置4、機械的処理装置3等の海水の無害化処理設備の少なくとも一方を船体100内に設置する必要がなくなり、これによって該船舶100における海水の無害化処理装置の設置スペースを低減できて、貨物等の搭載スペースを増大することが可能となる。
【0131】
また、陸上に設置された海水電解装置4あるいは機械的処理装置3等の陸上設置無害化設備50と船舶100側のバラスト水タンク5とを、海水搬出路210を船舶100毎に繋ぎ変えることにより、1台(1セット)の陸上設置無害化設備50により複数の船舶100のバラスト水タンク5についての無害化処理を行うことができる。これにより、陸上設置無害化設備50の稼動率を上昇できるとともに船舶(100)1隻あたりの無害化処理装置の設置数を少なくできて、装置コストを低減できる。
【0132】
さらには、海水電解装置4あるいは機械的処理装置3等の無害化処理装置を陸上設備として設置するので、既存の船舶100に対しても船体内に該無害化処理装置を新たに設置するのが不要となるとともに船体内の改造が最少限で済み、これによって、該無害化処理装置設置のための船体内設置コストを最少限に抑制できる。
【0133】
また、かかる第49〜第50実施例において、前記機械的処理装置3とともに、微生物分離処理手段020(第2図に鎖線で示す)を前記船舶100に搭載することもできる。
さらに、かかる第49〜第50実施例において、前記海水電解装置4、機械的処理装置3、微生物分離処理手段020を、前記陸上設置無害化設備50あるいは船舶10搭載用として置き換えることもできる。
すなわち、第51図において、前記海水電解装置4を船舶100に搭載し、陸上設置無害化設備50として、前記機械的処理装置3及び微生物分離処理手段020の何れか一方または双方を設置することも可能である。
【0134】
第53図ないし第55図に示される第51ないし第53実施例においては、前記陸上設置無害化設備50を、車両220に搭載して陸上101を自在に移動可能に構成している。
第53図に示される第51実施例においては、前記第48実施例における陸上設置無害化設備50を車両220に搭載して陸上101を自在に移動可能としている。
第54図に示される第52実施例においては、前記第51実施例における陸上設置無害化設備50を車両220に搭載して陸上101を自在に移動可能としている。
第55図に示される第53実施例においては、前記第50実施例における陸上設置無害化設備50を車両220に搭載して陸上101を自在に移動可能としている。
【0135】
かかる第51ないし第53実施例によれば、車両220に搭載された陸上設置無害化設備50を船舶100に自在に近接させて、該陸上設置無害化設備50において無害化処理を施した海水を該船舶100内のバラスト水タンク5に収容可能となり、海水搬出管210等の海水搬送ラインの長さを最短にできる。これにより、図示しない海水搬送用ポンプの動力を低減できて、海水の無害化処理コストを低減できる。
【0136】
また、かかる第51ないし第53実施例によれば、複数の船舶100について無害化処理を施した海水を該船舶100内のバラスト水タンク5に収容する場合においては、車両220に搭載した陸上設置無害化設備50を自在に移動させて、各船舶100へのバラスト水の無害化処理を行うことができることとなり、該バラスト水の無害化処理を短時間で効率的に行うことができる。
その他の構成は前記第48ないし第50実施例と同一であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0137】
第56図に示す第54実施例において、100は海102を航行する船舶、5は該船舶内に設置されたバラスト水タンク、230は海上(102)に移動可能に浮設された装置搭載船、60は該装置搭載船230上に搭載された海上設置無害化設備である。該海上設置無害化設備60は前記第48〜第53実施例と同一に構成された海水電解装置4及び機械的処理装置3により構成される。
250は海水を取水して前記海上設置無害化設備60に搬送する海水搬入路、240は前記海上設置無害化設備60と前記船舶100内のバラスト水タンク5とを接続し該海上設置無害化設備60で処理された処理海水を前記バラスト水タンク5に搬送する海水搬出路である。
【0138】
かかる第54実施例においては、海水搬入路250を通った未処理海水海上設置無害化設備60の機械的処理装置3→海水電解装置4の順序で無害化処理を施される場合について説明するが、前記とは逆の海水電解装置4→機械的処理装置3の順序で無害化処理してもよい。
【0139】
第54実施例において、海水搬入路250を通った未処理海水は機械的処理装置3に導入される。該機械的処理装置3においては、前記第48〜第53実施例と同様な機械的処理が施され、次いで前記海水電解装置4に送り込まれ該海水電解装置4で前記第48〜第53実施例と同様な塩素処理が施される。
前記海水電解装置4及び機械的処理装置3によって無害化処理が施された処理海水は、海水搬出路240を通って船舶100内のバラスト水タンク5に収容される。101は陸上である。
【0140】
かかる第54実施例によれば、海上設置無害化設備60を構成する海水電解装置4及び機械的処理装置3を、海上(102)に移動可能に浮設された装置搭載船230に搭載し、該海上設置無害化設備60において未処理海水中の微生物を殺滅又は殺菌する無害化処理を行い、処理海水を、該海上設置無害化設備60と船舶100に内のバラスト水タンク5とを接続する海水搬出路240を通して該バラスト水タンク5に収納するので、前記海水電解装置4、機械的処理装置3等の海水の無害化処理設備を前記海上設置無害化設備60として浮設できて、船舶100内に設置する必要がなくなる。これにより、船舶100における海水の無害化処理装置の設置スペースを低減できて、貨物等の搭載スペースを増大することが可能となる。
【0141】
また、海上(102)に移動可能に浮設された海上設置無害化設備60を構成する海水電解装置4及び機械的処理装置3と船100側のバラスト水タンク5とを、海水搬出路24を船舶100毎に繋ぎ換えることにより、1台(1セット)の海上設置無害化設備60により複数の船舶100のバラスト水タンク5についての無害化処理を行うことができる。これにより、海上設置無害化設備60の稼動率を上昇できるとともに船舶1001隻あたりの無害化処理装置の設置数を少なくできて装置コストを低減できる。
【0142】
また、沖合いに停泊している船舶100に対してバラスト水の無害化処理を行う際においても、海上に移動可能に浮設された海上設置無害化設備60を装置搭載船23の移動により船舶100に自在に近接させて、該海上設置無害化設備60において無害化処理を施した海水を該船舶100内のバラスト水タンク5に収容可能となる。これにより、岸壁あるいは沖合いに停泊している船舶の何れに対しても、きわめて容易にかつ短時間でバラスト水の無害化処理を行うことができる。
【0143】
さらには、前記海水電解装置4及び機械的処理装置3等の無害化処理装置を海上設置無害化設備60として船舶100とは別個に浮設するので、既存の船舶100に対しても船体内に該無害化処理装置を新たに設置するのが不要となるとともに、船舶100内の改造が最少限で済み、該無害化処理装置設置のための船舶100内設置コストを最少限に抑制できる。
【0144】
また、かかる第54実施例において、前記海上設置無害化設備60として、前記海水電解装置4と、前記機械的処理装置3及び前記微生物分離処理を該海水に施す微生物分離処理手段020(第7図に鎖線で示す)の何れか一方または双方とにより構成することもできる。
【0145】
また、かかる第54実施例の変形例として、前記海上設置無害化設備60として前記海水電解装置4を設置し、前記機械的処理装置3とともに微生物分離処理手段020を前記船舶100に搭載するように構成することも可能である。
さらに、かかる第54実施例において、前記海水電解装置4、機械的処理装置3、微生物分離処理手段020を、前記海上設置無害化設備60あるいは船舶100搭載用として置き換えることもできる。
すなわち、第56図において、前記海水電解装置4を船舶100に搭載し、海上設置無害化設備60として、前記機械的処理装置3及び微生物分離処理手段020の何れか一方または双方を設置することも可能である。
【0146】
第57図に示す第55実施例においては、海上設置無害化設備60は前記第54実施例と同様に海水電解装置4及び機械的処理装置3により構成し、前記機械的処理装置3と同様な他の機械的処理装置3を船舶100に搭載している。
【0147】
かかる第55実施例においては、前記第54実施例と同様に、前記海上設置無害化設備60の海水電解装置4及び機械的処理装置3によって無害化処理が施された処理海水は、海水搬出路240を通って船舶100内の他の機械的処理装置3に導入される。そして、かかる第55実施例においては、前記他の機械的処理装置3において再度無害化処理された処理海水を、該バラスト水タンク5に収容できる。
その他の構成及び作用効果は前記第54実施例と同一である。また前記第54実施例と同一の部材は同一の符号で示す。
【0148】
第58図に示す第56実施例においては、前記第55実施例(第57図)に加えて、前記船舶100の船体に、海中に開口して前記他の機械的処理装置3に接続される船体側海水搬入路29を設けている。
かかる第56実施例によれば、船舶100に搭載された他の機械的処理装置3によって、海上設置無害化設備60における海水電解装置4及び機械的処理装置3での処理海水、及び海中に開口する船体側海水搬入路29を通して導入された海水を同時に無害化処理してバラスト水タンク5に収容することができ、これにより、簡単な構造の機械的処理装置によって多量の海水を無害化処理できる。
その他の構成は前記第55実施例(第57図)と同一であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。またかかる第56実施例における他の作用効果は前記第54実施例と同一である。
【0149】
尚、前記各実施例においては、前記塩素処理手段を第4図に示すような電解槽循環方式の海水電解装置4に構成しているが、これに限定されず、海水から塩素含有物質を生成して該海水中に注入し微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理機能を有するものであればよい。
その1つに、酸化物質添加手段(図示省略)により、前記海水に、酸化作用を有する物質の添加処理を行う手段がある。前記酸化作用を有する物質としては、前記塩素含有物質のほかに、過酸化水素、オゾン等の酸化剤を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、設備コスト及び運転コストが低減され、かつ船体等の処理海水収容体側の強度低下をもたらすことなく、あらゆる大きさの微生物の殺滅又は殺菌を確実になし得、さらには船舶におけるバラスト水の無害化処理装置の設置スペースを低減して貨物等の搭載スペースが増大され、かつ既存の船舶に対しても該無害化処理装置設置のための船体内の改造コストを最少限に抑制可能としたバラスト水等の海水の無害化処理方法及び装置を提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容する海水の無害化処理方法であって、
前記未処理の海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離処理と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成して、該塩素含有物質を海水中に注入し、前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、処理海水をバラスト水タンクに収容することを特徴とする海水の無害化処理方法。
【請求項2】
少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、バラスト水タンク内に収容された海水中の微生物を除去して該海水を清浄な処理海水に転換する海水の無害化処理方法であって、前記海水に、フィルターに通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離処理と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成して、該塩素含有物質を海水中に注入し、前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施した後、処理海水を前記バラスト水タンク外に排出するか若しくは前記バラスト水タンクに戻して循環処理させることを特徴とする海水の無害化処理方法。
【請求項3】
少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容するように構成された海水の無害化処理装置であって、前記海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離装置と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成し該海水中に注入して前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施す塩素処理手段と、前記微生物分離装置及び塩素処理手段による処理後の処理海水を収容するバラスト水タンクとを併設したことを特徴とする海水の無害化処理装置。
【請求項4】
少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、バラスト水タンク内に収容された海水中の微生物を除去して該海水を清浄な処理海水に転換するように構成された海水の無害化処理装置であって、前記海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離装置と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成し該海水中に注入して前記微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理を施す塩素処理手段と備え、前記各手段による処理後の処理海水を前記バラスト水タンク外に排出するか若しくは、前記各手段による処理後の処理海水を前記バラスト水タンクに戻して循環するように構成されてなることを特徴とする海水の無害化処理装置。
【請求項5】
前記電解槽の下流側に、電気分解して塩素含有物質を生成した後の処理海水の残留塩素量を計測する残留塩素計を備え、前記電解槽は前記残留塩素計による残留塩素量の計測値に基づき前記電気分解における塩素含有物質の生成量を制御するように構成されてなることを特徴とする請求項3又は4記載の海水の無害化処理装置。
【請求項1】
少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容する海水の無害化処理方法であって、
前記未処理の海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離処理と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成して、該塩素含有物質を海水中に注入し、前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施し、処理海水をバラスト水タンクに収容することを特徴とする海水の無害化処理方法。
【請求項2】
少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、バラスト水タンク内に収容された海水中の微生物を除去して該海水を清浄な処理海水に転換する海水の無害化処理方法であって、前記海水に、フィルターに通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離処理と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成して、該塩素含有物質を海水中に注入し、前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施した後、処理海水を前記バラスト水タンク外に排出するか若しくは前記バラスト水タンクに戻して循環処理させることを特徴とする海水の無害化処理方法。
【請求項3】
少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、未処理のバラスト水(以下海水という)の微生物を除去して清浄な処理海水に転換し、該転換された正常な処理海水を前記バラスト水タンクに収容するように構成された海水の無害化処理装置であって、前記海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離装置と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成し該海水中に注入して前記微生物を全て殺滅又は殺菌する塩素処理を施す塩素処理手段と、前記微生物分離装置及び塩素処理手段による処理後の処理海水を収容するバラスト水タンクとを併設したことを特徴とする海水の無害化処理装置。
【請求項4】
少なくとも微生物分離処理部と電解槽の組合せにより、バラスト水タンク内に収容された海水中の微生物を除去して該海水を清浄な処理海水に転換するように構成された海水の無害化処理装置であって、前記海水をフィルター等に通すろ過法又は遠心分離法により該海水中の比較的大きな前記微生物を除去する微生物分離装置と、該微生物分離処理した海水の全部または一部を電解槽に導入し、該電解槽内で電気分解して塩素含有物質を生成し該海水中に注入して前記微生物を殺滅又は殺菌する塩素処理を施す塩素処理手段と備え、前記各手段による処理後の処理海水を前記バラスト水タンク外に排出するか若しくは、前記各手段による処理後の処理海水を前記バラスト水タンクに戻して循環するように構成されてなることを特徴とする海水の無害化処理装置。
【請求項5】
前記電解槽の下流側に、電気分解して塩素含有物質を生成した後の処理海水の残留塩素量を計測する残留塩素計を備え、前記電解槽は前記残留塩素計による残留塩素量の計測値に基づき前記電気分解における塩素含有物質の生成量を制御するように構成されてなることを特徴とする請求項3又は4記載の海水の無害化処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【公開番号】特開2010−179304(P2010−179304A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66677(P2010−66677)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2005−518065(P2005−518065)の分割
【原出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2005−518065(P2005−518065)の分割
【原出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
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