説明

海水中異物除去装置

【課題】比重の軽い異物が大量に流入した場合であってもエレメントへの異物の付着を抑制することができる海水中異物除去装置を提供する。
【解決手段】海水中異物除去装置において、ポンプ11から送水される海水又は洗浄水を導入する入口管4と、透過水を導出する出口管5と、異物を排出するブロー管6と、内部に溜まった空気を排出するガス抜き管8とを備える円筒形状のストレーナ容器1と、ストレーナ容器1の上部の空間と下部の空間とを仕切る中央部に開口部2aが形成された隔壁2と、ストレーナ容器1の内部の上部の空間には、複数の孔が形成された円筒形状のエレメント3と、ポンプ11の停止及び稼動や、入口弁10、出口弁12、ブロー弁13及びガス抜き弁15の開度を制御する制御装置9とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水中異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所等の冷却系統において使用される冷却水として、海から取水した海水が用いられている。しかし、海水中には微小海生生物等の異物が含まれており、異物が冷却系統に侵入した場合、冷却系統に悪影響を及ぼす虞がある。このため、冷却系統の上流に海水中の異物を除去するストレーナが設置される(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【0003】
このストレーナとして、一般に旋回流による自洗式ストレーナが知られている。この旋回流自洗式ストレーナは、円筒形の容器の内部に、異物を捕らえるための複数の孔が形成された円筒形のエレメントが設置されている。ストレーナの内部に導入された海水は、エレメントの周囲を旋回しつつエレメントを透過し、異物が除去された透過水が冷却系統へ供給される構造となっている。
【0004】
そして、ストレーナに導入された海水に含まれる比重の重い異物は、エレメントの周囲を旋回する流れにより、旋回しながらストレーナの容器下部外側に集まって異物排出用のブロー管から排出される。また、ストレーナに導入された海水に含まれる比重の軽い異物は、エレメントの周囲を旋回する流れによる流れ場の乱れにより、エレメントに付着することなくブロー管より排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−062589号公報
【特許文献2】特開平07−305997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、微小海生生物等の異物の比重は海水とほぼ同等であるため、エレメントに付着する量が少量の場合には流れ場の乱れによりエレメントの表面からはがされるものの、特定の時期に大量発生した微小海生生物等がストレーナ内に一度に大量に流入した場合には、エレメントから異物を剥離する剥離速度よりもエレメントへ異物が付着する付着速度の方が上回ってしまい、エレメントに微小海生生物が付着してエレメントの差圧が上昇してしまう。
【0007】
そして、微小海生生物等の異物の付着が引き金となって、エレメントの差圧が大きくなり、エレメントへ異物を押付ける押付け圧力がさらに上昇することにより、流れ場の乱れによっても異物をエレメントからはがすことができなくなるため、エレメントの差圧が急上昇し、最悪の場合、冷却系統において必要とされる冷却水量が短時間で得られなくなる虞がある。
【0008】
以上のことから、本発明は、比重の軽い異物が大量に流入した場合であってもエレメントへの異物の付着を抑制することができる海水中異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る海水中異物除去装置は、
円筒形状の容器と、
前記容器の内部には、該容器の上部の空間と下部の空間とを仕切る中央部に開口部が形成された隔壁と、
前記容器の内部の上部の空間には、複数の孔が形成された円筒形状のエレメントと、
前記容器の上部側面には、該容器の内部の上部の空間に海水又は洗浄水を導入する入口管と、
前記入口管には、前記容器の内部に導入する海水又は洗浄水の量を調節する入口弁と、
前記入口管の前記入口弁の上流側には、前記容器の内部に海水又は洗浄水を送水するポンプと、
前記容器の下部側面には、該容器の下部の空間から透過水を導出する出口管と、
前記出口管には、前記容器の内部から導出される透過水の量を調節する出口弁と、
前記容器の側面の前記隔壁の近傍の上部には、上部の空間から異物を排出するブロー管と、
前記ブロー管には、該ブロー管の流量を調節するブロー弁と、
前記容器の上部には、該容器の内部に溜まった空気を排出するガス抜き管と、
前記ガス抜き管には、該ガス抜き管の流量を調節するガス抜き弁と、
前記ポンプの停止及び稼動や、前記入口弁、前記出口弁、前記ブロー弁及び前記ガス抜き弁の開度を制御する制御装置と
を備える
ことを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る海水中異物除去装置は、第1の発明に係る海水中異物除去装置において、
前記制御装置は、前記出口管の流量は一定のままで、前記ブロー弁を制御して該ブロー弁を開いて前記ブロー管の流量を増大させ、前記入口弁を制御して該入口弁を開き前記入口管の流量も増大させる
ことを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る海水中異物除去装置は、第1の発明に係る海水中異物除去装置において、
前記制御装置は、前記ポンプの停止と、稼動を交互に行う
ことを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る海水中異物除去装置は、第1の発明に係る海水中異物除去装置において、
前記制御装置は、前記出口弁を部分的に閉じる
ことを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第5の発明に係る海水中異物除去装置は、第1の発明に係る海水中異物除去装置において、
前記制御装置は、前記出口弁を閉じた後、前記ポンプを稼動させて前記入口管から洗浄水を供給する
ことを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための第6の発明に係る海水中異物除去装置は、第1の発明に係る海水中異物除去装置において、
前記制御装置は、前記出口弁を閉じた後、前記ポンプを稼動させて前記入口管から洗浄水を供給し、前記ポンプの停止と稼動を交互に行う
ことを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第7の発明に係る海水中異物除去装置は、第1の発明に係る海水中異物除去装置において、
前記入口管に空気吹き込み管を接続して、該空気吹き込み管に空気を吹き込む空気供給手段を設置し、前記制御装置を前記空気供給手段の停止及び稼動も制御する構成とし、
前記制御装置は、前記出口弁を閉じた後、前記ポンプを稼動させて前記入口管から洗浄水を供給し、前記空気供給手段を稼動させて洗浄水にパルス的に空気を吹き込み、前記ガス抜き弁を開いて吹き込んだ空気を前記ガス抜き管から排出させる
ことを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するための第8の発明に係る海水中異物除去装置は、第1の発明に係る海水中異物除去装置において、
前記入口管に空気吹き込み管を接続して、該空気吹き込み管に空気を吹き込む空気供給手段を設置し、前記制御装置を前記空気供給手段の停止及び稼動も制御する構成とし、
前記制御装置は、前記出口弁を閉じた後、前記ポンプを稼動させて前記入口管から洗浄水を供給し、前記空気供給手段を稼動させて洗浄水に連続的に空気を吹き込んで気液2相流を発生させ、前記ガス抜き弁を開いて気液分離後の空気を前記ガス抜き管から排出させる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比重の軽い異物が大量に流入した場合であってもエレメントへの異物の付着を抑制することができる海水中異物除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1〜5の実施例に係る海水中異物除去装置の構成を示した模式図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る海水中異物除去装置におけるブロー管の流量比と差圧上昇時間比の関係を示した図である。
【図3】本発明の第6,7の実施例に係る海水中異物除去装置の構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る海水中異物除去装置を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明に係る海水中異物除去装置の第1の実施例について説明する。
はじめに、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成について説明する。
図1は、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成を示した模式図である。なお、図1(a)は側面図、図1(b)は平面図を示している。
【0021】
図1に示すように、本実施例に係る海水中異物除去装置は、外殻が円筒形状の容器1(以下、ストレーナ容器1という)を備えている。ストレーナ容器1の内部には、ストレーナ容器1の内部の上部の空間と下部の空間とを仕切る隔壁2が設置されている。隔壁2には、中央部に開口部2aが形成されている。
【0022】
ストレーナ容器1の内部の上部の空間には、異物を捕らえる円筒形状のエレメント3が設置されている。エレメント3の上端はストレーナ容器1と接続されており、下部は隔壁2と接続されている。エレメント3には、複数の孔が形成されている。なお、本実施例においては、孔の径は3mm程度としている。
【0023】
ストレーナ容器1の上部側面には、ストレーナ容器1の内部の上部の空間に海水又は洗浄水を導入する管4(以下、入口管4という)が接続されている。入口管4はストレーナ容器1上方から見てストレーナ容器1に対して接線方向から接続されている。このため、ストレーナ容器1内に導入された海水又は洗浄水は、図1中に矢印Tで示すようにエレメント3の周囲を旋回する流れを形成することとなる。
【0024】
入口管4には、ストレーナ容器1の内部に導入する海水又は洗浄水の量を調節する弁10(以下、入口弁10という)が設置されている。また、入口管4の入口弁10の上流側には、ストレーナ容器1の内部に海水又は洗浄水を送水するポンプ11が設置されている。
【0025】
ストレーナ容器1の下部側面には、ストレーナ容器1の下部の空間から透過水を導出する管5(以下、出口管5という)が接続されている。出口管5には、ストレーナ容器1の内部から導出される透過水の量を調節する弁12(以下、出口弁12という)が設置されている。
【0026】
ストレーナ容器1の側面の隔壁2の近傍の上部には、上部の空間から異物を排出するブロー管6が接続されている。ブロー管6はストレーナ容器1上方から見てストレーナ容器1に対して接線方向から接続されている。ブロー管6には、ブロー管6の流量を調節する弁13(以下、ブロー弁13という)が設置されている。
【0027】
ストレーナ容器1の底部には、ストレーナ容器1の内部の海水又は洗浄水を排水するドレン管7が接続されている。ドレン管7には、ドレン管7の流量を調節する弁14(以下、ドレン弁14という)が設置されている。
【0028】
ストレーナ容器1の上部には、ストレーナ容器1の内部に溜まった空気を排出するガス抜き管8が接続されている。ガス抜き管8には、ガス抜き管8の流量を調節する弁15(以下、ガス抜き弁15)が設置されている。
【0029】
そして、本実施例に係る海水中異物除去装置は、ポンプ11の停止及び稼動や、入口弁10、出口弁12、ブロー弁13、ドレン弁14及びガス抜き弁15の開度を制御する制御装置9を備えている。
以上が、本実施例に係る海水中異物除去装置の装置構成である。
【0030】
次に、本実施例に係る海水中異物除去装置の動作について説明する。
本実施例に係る海水中異物除去装置においては、エレメント3が異物により閉塞されることにより差圧が上昇し動作不能の状態となるまでの時間(以下、差圧上昇時間という)を長くするために、透過水量(すなわち、出口管5から導出される冷却系統において必要とされる水量、すなわち、出口管5の流量)は一定のままで、制御装置9によりブロー弁13を制御してブロー弁13を開いてブロー管6から排出される水量(すなわち、ブロー管6の流量)を増大させて、異物をブロー管6から排出させることとした。
【0031】
これに伴い、本実施例に係る海水中異物除去装置においては、制御装置9により入口弁10を制御して入口弁10を開き入口管4から導入される水量(すなわち、入口管4の流量)も増大させることとする。なお、本実施例に係る海水中異物除去装置は、2台設置して交互にエレメント3の洗浄を行いながら運用することとする。
【0032】
ところで、従来のストレーナは、異物が一度に大量に流入した場合、差圧上昇時間は20分程度であるが、ストレーナを2台設置して交互にエレメントの洗浄を行いながら運用することを考えると、洗浄には30分以上の時間が必要であるため、差圧上昇時間は30分以上である必要がある。
【0033】
図2は、本実施例に係る海水中異物除去装置におけるブロー管6の流量比と差圧上昇時間比の関係を示した図である。なお、図2に示すグラフおいては、横軸に定格流量を1としたときのブロー管6の流量比を示し、縦軸にブロー管6の流量が定格流量であるときの差圧上昇時間を1としたときの差圧上昇時間比を示している。
【0034】
図2に示すように、ブロー管6の流量を定格流量の2倍にした場合、差圧上昇時間は1.5倍となることが分かる。また、ブロー管6の流量は、配管流速の関係で定格の4倍が限度であるが、ブロー管6の流量を定格流量の4倍にした場合、差圧上昇時間は3.5倍となることが分かる。したがって、図2中に矢印で示すブロー管6の流量を定格流量の2倍から4倍の範囲内で設定することにより、差圧上昇時間を1.5倍から3.5倍とすることができる。
【0035】
ここで、ブロー管6の流量を定格流量の4倍にする場合を例として説明すると、入口管4の定格流量が1105m3/h、出口管5の定格流量が1050m3/h、ブロー管6の定格流量が55m3/hである場合、制御装置9は入口弁10を制御して入口管4の流量を1270m3/hとし、ブロー弁13を制御してブロー管6の流量を220m3/hとし、出口管5の流量は1050m3/hで一定とする。
【0036】
したがって、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、ブロー管6から排出される水量を増大させることにより、線流速と、流れ場の乱れを増加させることができるため、エレメント3に付着した異物を効率よくはがすことができる。このため、エレメント3への異物の付着が抑制され、エレメント3が異物により閉塞するまでの時間を、3.5倍に延ばすことができる。
【0037】
また、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、海水中異物除去装置を2台設置し、一方の海水中異物除去装置のエレメント3が異物により閉塞した場合に、他方の海水中異物除去装置のみを機能させて、一方の海水中異物除去装置のエレメント3を洗浄する間の時間を稼ぐことができる。このため、2台の海水中異物除去装置を交互に運転することにより、海水中異物除去設備全体を連続的に稼動させることができる。
【実施例2】
【0038】
以下、本発明に係る海水中異物除去装置の第2の実施例について説明する。
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成は、第1の実施例に係る海水中異物除去装置と同様であるためここでの説明は省略する。
【0039】
本実施例に係る海水中異物除去装置の動作について説明する。
本実施例に係る海水中異物除去装置においては、差圧上昇時間を長くするために、ポンプ11の停止と、稼動を交互に行うこととした。
【0040】
本実施例に係る海水中異物除去装置においては、制御装置9によりポンプ11を制御して、ポンプ11を停止させることにより、入口管4から導入される水量が0となり、エレメント3の孔を透過する水量も0となるため、エレメント3の周囲に流れ場の乱れが生じるとともに、異物をエレメント3の孔に押し付ける力が無くなるため、異物をエレメント3から浮き上がらせることができる。なお、本実施例においては、ポンプ11を停止している時間は下流の冷却系統において必要とされる冷却水が不足しない程度の時間としており、例えば、5秒程度とする。
【0041】
そして、制御装置9によりポンプ11を制御して、ポンプ11を稼動させると、エレメント3の周囲に旋回流が発生し、浮き上がった異物はブロー管6へ押し流され、ブロー管6から排出される。なお、制御装置9により、ポンプ11の停止と稼動を交互に繰り返すことにより、より高い効果を得ることができる。
【0042】
また、入口管4から洗浄水を供給して行う順洗、又はエレメント3の上流側から洗浄水を供給するようにして行う逆洗によるエレメント3の洗浄後に実施することにより、より高い効果を得ることができる。また、エレメント3の洗浄後は、洗浄水の導入から海水の導入に連続的に切り替えるのではなく、一旦、ポンプ11を停止して再起動してから切り替えを行った方が良い。
【0043】
したがって、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、ポンプ11の停止時と稼動時の衝撃や、流れ場の乱れによって、異物がエレメント3に押し付けられる力が低下し、異物がエレメント3の表面から剥離しやすくなる。このため、エレメント3から異物をはがれやすくすることができる。
【実施例3】
【0044】
以下、本発明に係る海水中異物除去装置の第3の実施例について説明する。
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成は、第1の実施例に係る海水中異物除去装置と同様であるためここでの説明は省略する。
【0045】
本実施例に係る海水中異物除去装置の動作について説明する。
本実施例に係る海水中異物除去装置においては、差圧上昇時間を長くするために、制御装置9により出口弁12を部分的に閉じることにより、エレメント3の孔を透過する水量を減らすこととした。
【0046】
これにより、エレメント3に付着した異物がエレメント3に押し付けられる力が小さくなるのと同時に、ブロー管6の流量が増大し、エレメント3の周囲の旋回流が大きくなる。なお、本実施例においては、出口弁12を部分的に閉じている時間は、下流の冷却系統において必要とされる冷却水が不足しない程度の時間としている。
【0047】
エレメント3に付着した異物がエレメント3に押し付けられる力が小さくなると、エレメント3に付着した異物がはがれやすくなる。また、エレメント3の周囲の旋回流が大きくなるとエレメント3に付着した異物をはがす力が大きくなる。そして、この2つの作用により、エレメント3に付着した異物が剥離され、異物によるエレメント3の閉塞を抑制することができる。
【0048】
そして、制御装置9により出口弁12を制御して、出口弁12を部分的に閉じ出口管5の流量を所定の流量まで減少させた後、すぐに出口弁12を開いて出口管5の流量を定格流量まで戻し、下流の冷却系統への透過水の供給が不足しないようにする。
【0049】
なお、出口管5の流量は、出口管5の定格流量を1050m3/hとした場合、ブロー管6の流速制限を考慮すると885m3/hまで減少させることが可能である。また、出口弁12を閉じ出口管5の流量を所定の流量まで減少させたあと、すぐに出口弁12を開いて出口管5の流量を定格流量まで戻す操作は、順洗又は逆洗等によるエレメント3の洗浄後又はエレメント3の洗浄と同時に組合わせて実施することができる。
【0050】
したがって、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、海水中異物除去設備の設備構成に新たな構成を追加する必要がなく、運用法を変更するのみで異物によるエレメント3の閉塞を抑制することができる。また、第1の実施例に比べ、異物をエレメント3に押し付ける力が弱まる分、エレメント3に付着した異物をはがしやすくすることができる。
【実施例4】
【0051】
以下、本発明に係る海水中異物除去装置の第4の実施例について説明する。
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成は、第1の実施例に係る海水中異物除去装置と同様であるためここでの説明は省略する。
【0052】
本実施例に係る海水中異物除去装置の動作について説明する。
本実施例に係る海水中異物除去装置においては、差圧上昇時間を長くするために、制御装置9により出口弁12を制御して、出口弁12を閉じた後、制御装置9によりポンプ11を制御してポンプ11を稼動させ、入口管4から洗浄水を供給して、ブロー管6へ排出する。なお、本実施例においては、出口弁12を閉じている時間は、下流の冷却系統において必要とされる冷却水が不足しない程度の時間としている。
【0053】
入口管4の流量はブロー管6の流速限界に支配されるが、可能な限り大きくする。本実施例においては、ブロー管6の流量は最大220m3/hとする。このように、出口弁12を閉じることで、エレメント3の孔を通過する水量が0となるため、異物をエレメント3に押し付けられる力が無くなり、異物をエレメント3からはがしやすくすることができる。
【0054】
本実施例に係る海水中異物除去装置は、第1〜3の実施例に比べ、異物をエレメント3に押し付ける力を小さくして、異物をよりはがしやすくすることができるため、高い洗浄効果を得ることができる。
【0055】
したがって、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、海水中異物除去設備の設備構成に新たな構成を追加する必要がなく、運用法を変更するのみで異物によるエレメント3の閉塞を抑制することができる。
また、第1〜3の実施例に比べ、異物をエレメント3に押し付ける力が小さいため、異物をエレメント3からはがしやすくすることができる。
【0056】
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、エレメント3の洗浄後の異物の付着率(エレメント3全体に対する付着物の占める割合)を30〜40%(なお、エレメント3の洗浄前は90%)に減少させることができた。
【実施例5】
【0057】
以下、本発明に係る海水中異物除去装置の第5の実施例について説明する。
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成は、第4の実施例に係る海水中異物除去装置と同様であるためここでの説明は省略する。
【0058】
本実施例に係る海水中異物除去装置の動作について説明する。
本実施例に係る海水中異物除去装置においては、差圧上昇時間を長くするために、制御装置9により出口弁12を制御して、出口弁12を閉じた後、入口管4から洗浄水を供給して、ブロー管6へ排出する。
【0059】
なお、洗浄水の流量は、ブロー管6の配管流速に支配され、流量を多くすることには限界があるが、可能な限り大きくすることとし、本実施例においては、140〜220m3/hとした。また、本実施例においては、出口弁12を閉じている時間は、上流の冷却系統において必要とされる冷却水が不足しない程度の時間としている。
【0060】
そして、制御装置9によりポンプ11を制御して、ポンプ11の停止と稼動を交互に行い、制御装置9によりポンプ11を制御してポンプ11を稼動させ、入口管4から供給される洗浄水により、水圧の変動と流れ場の乱れを与える。これにより、異物がエレメント3に付着した異物をはがす方向の力がかかるため、エレメント3に付着した異物をはがすことができる。また、エレメント3からはがされた異物は、ポンプ11の作動時の水流によって、ブロー管6から排出される。
【0061】
本実施例に係る海水中異物除去装置は、第4の実施例と比べ、流れの変動と流れ場の乱れを生じさせやすくして、エレメント3に付着した異物をはがしやすくすることができるため、高い洗浄効果を得ることができる。
【0062】
したがって、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、海水中異物除去設備の設備構成に新たな構成を追加する必要がなく、運用法を変更するのみで異物によるエレメント3の閉塞を抑制することができる。
また、ポンプ11の停止と稼動により圧力変動と流れ場の乱れを起こさせるため、エレメント3に付着した異物に剥離方向の力が加わりやすくすることができる。
【0063】
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、エレメント3の洗浄後の異物の付着率(エレメント3全体に対する付着物の占める割合)を30%(なお、エレメント3の洗浄前は90%)に減少させることができた。
【実施例6】
【0064】
以下、本発明に係る海水中異物除去装置の第6の実施例について説明する。
はじめに、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成について説明する。
図3は、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成を示した模式図である。なお、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図を示している。
【0065】
図3に示すように、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成は、第4の実施例に係る海水中異物除去装置とほぼ同様であるが、入口管4に空気吹き込み用の管16(以下、空気吹き込み管16という)を接続し、空気吹き込み管16に空気を吹き込むブロワ17を設置した。
【0066】
なお、本実施例においては、空気供給手段としてブロワ17を設置することとしたが、コンプレッサを設置することとしてもよい。また、本実施例に係る海水中異物除去装置における制御装置9は、ブロワ17の停止及び稼動も制御することができるように構成されている。
以上が、本実施例に係る海水中異物除去装置の装置構成である。
【0067】
次に、本実施例に係る海水中異物除去装置の動作について説明する。
本実施例に係る海水中異物除去装置においては、差圧上昇時間を長くするために、制御装置9により出口弁12を制御して、出口弁12を閉じた後、入口管4から洗浄水を供給して、ブロー管6へ排出する。
【0068】
なお、洗浄水の流量は、ブロー管6の配管流速に支配され、流量を多くすることには限界があるが、可能な限り大きくすることとし、本実施例においては、140〜220m3/hとした。また、本実施例においては、出口弁12を閉じている時間は、下流の冷却系統において必要とされる冷却水が不足しない程度の時間としている。
【0069】
そして、制御装置9によりブロワ17を制御してブロワ17を稼動させ、制御装置9によりポンプ11を制御してポンプ11を稼動させ、洗浄水にパルス的に空気を吹き込み、エレメント3の表面を気泡により洗浄する。また、制御装置9によりガス抜き弁15を制御してガス抜き弁15を開き、吹き込んだ空気をガス抜き管8から排出する。
【0070】
本実施例に係る海水中異物除去装置は、出口弁12を閉じることで、エレメント3を通過する水量が0となるため、異物がエレメント3に押し付けられる力を無くすことができ、さらに、気泡により洗浄するため、エレメント3に付着した異物をはがしやすくすることができる。
本実施例に係る海水中異物除去装置は、第4の実施例に比べ、気液界面の比重差、抵抗差により、高い洗浄効果を得ることができる。
【0071】
したがって、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、気泡により高い洗浄効果を得ることができる。
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、エレメント3の洗浄後の異物の付着率(エレメント3全体に対する付着物の占める割合)を20%(なお、エレメント3の洗浄前は90%)に減少させることができた。
【実施例7】
【0072】
以下、本発明に係る海水中異物除去装置の第7の実施例について説明する。
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置の構成は、第6の実施例に係る海水中異物除去装置と同様であるためここでの説明は省略する。
【0073】
本実施例に係る海水中異物除去装置の動作について説明する。
本実施例に係る海水中異物除去装置においては、差圧上昇時間を長くするために、制御装置9により出口弁12を制御して、出口弁12を閉じた後、入口管4から洗浄水を供給して、ブロー管6へ排出する。
【0074】
なお、洗浄水の流量は、ブロー管6の配管流速に支配され、流量を多くすることには限界があるが、可能な限り大きくすることとし、本実施例においては、140〜220m3/hとした。また、本実施例においては、出口弁12を閉じている時間は、下流の冷却系統において必要とされる冷却水が不足しない程度の時間としている。
【0075】
そして、制御装置9によりブロワ17を制御してブロワ17を稼動させ、制御装置9によりポンプ11を制御してポンプ11を稼動させ、洗浄水に連続的に空気を吹き込んで気液2相流を発生させて、エレメント3の表面を気液2相流により洗浄する。なお、ほとんどの気泡は気液2相流のままブロー管6から排出されるが、一部はエレメント3の孔を透過してエレメント3の内部に入り、エレメント3の内部に入った気泡は、エレメント3の内部で気液分離する。このため、制御装置9によりガス抜き弁15を制御してガス抜き弁15を開き、気液分離後の空気をガス抜き管8から排出する。
【0076】
本実施例に係る海水中異物除去装置は、出口弁12を閉じることで、エレメント3を通過する水量が0となるため、異物がエレメント3に押し付けられる力を無くすことができ、さらに、気液2相流により洗浄するため、エレメント3に付着した異物をはがしやすくすることができる。
本実施例に係る海水中異物除去装置は、第4の実施例に比べ、気液界面の比重差、抵抗差により、高い洗浄効果を得ることができる。
また、本実施例に係る海水中異物除去装置は、第6の実施例に比べ、エレメント3に付着した異物が連続的に気泡と接触するため、高い洗浄効果を得ることができる。
【0077】
したがって、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、エレメント3に付着した異物が連続的に気泡と接触するため、高い洗浄効果を得ることができる。
なお、本実施例に係る海水中異物除去装置によれば、エレメント3の洗浄後の異物の付着率(エレメント3全体に対する付着物の占める割合)を20〜30%(なお、エレメント3の洗浄前は90%)に減少させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、発電所等の冷却系統において使用される冷却水として用いられる海から取水した海水から異物を除去する海水中異物除去装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 ストレーナ容器
2 隔壁
2a 開口部
3 エレメント
4 入口管
5 出口管
6 ブロー管
7 ドレン管
8 ガス抜き管
9 制御装置
10 入口弁
11 ポンプ
12 出口弁
13 ブロー弁
14 ドレン弁
15 ガス抜き弁
16 空気吹き込み管
17 ブロワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の容器と、
前記容器の内部には、該容器の上部の空間と下部の空間とを仕切る中央部に開口部が形成された隔壁と、
前記容器の内部の上部の空間には、複数の孔が形成された円筒形状のエレメントと、
前記容器の上部側面には、該容器の内部の上部の空間に海水又は洗浄水を導入する入口管と、
前記入口管には、前記容器の内部に導入する海水又は洗浄水の量を調節する入口弁と、
前記入口管の前記入口弁の上流側には、前記容器の内部に海水又は洗浄水を送水するポンプと、
前記容器の下部側面には、該容器の下部の空間から透過水を導出する出口管と、
前記出口管には、前記容器の内部から導出される透過水の量を調節する出口弁と、
前記容器の側面の前記隔壁の近傍の上部には、上部の空間から異物を排出するブロー管と、
前記ブロー管には、該ブロー管の流量を調節するブロー弁と、
前記容器の上部には、該容器の内部に溜まった空気を排出するガス抜き管と、
前記ガス抜き管には、該ガス抜き管の流量を調節するガス抜き弁と、
前記ポンプの停止及び稼動や、前記入口弁、前記出口弁、前記ブロー弁及び前記ガス抜き弁の開度を制御する制御装置と
を備える
ことを特徴とする海水中異物除去装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記出口管の流量は一定のままで、前記ブロー弁を制御して該ブロー弁を開いて前記ブロー管の流量を増大させ、前記入口弁を制御して該入口弁を開き前記入口管の流量も増大させる
ことを特徴とする請求項1に記載の海水中異物除去装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ポンプの停止と、稼動を交互に行う
ことを特徴とする請求項1に記載の海水中異物除去装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記出口弁を部分的に閉じる
ことを特徴とする請求項1に記載の海水中異物除去装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記出口弁を閉じた後、前記ポンプを稼動させて前記入口管から洗浄水を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の海水中異物除去装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記出口弁を閉じた後、前記ポンプを稼動させて前記入口管から洗浄水を供給し、前記ポンプの停止と稼動を交互に行う
ことを特徴とする請求項1に記載の海水中異物除去装置。
【請求項7】
前記入口管に空気吹き込み管を接続して、該空気吹き込み管に空気を吹き込む空気供給手段を設置し、前記制御装置を前記空気供給手段の停止及び稼動も制御する構成とし、
前記制御装置は、前記出口弁を閉じた後、前記ポンプを稼動させて前記入口管から洗浄水を供給し、前記空気供給手段を稼動させて洗浄水にパルス的に空気を吹き込み、前記ガス抜き弁を開いて吹き込んだ空気を前記ガス抜き管から排出させる
ことを特徴とする請求項1に記載の海水中異物除去装置。
【請求項8】
前記入口管に空気吹き込み管を接続して、該空気吹き込み管に空気を吹き込む空気供給手段を設置し、前記制御装置を前記空気供給手段の停止及び稼動も制御する構成とし、
前記制御装置は、前記出口弁を閉じた後、前記ポンプを稼動させて前記入口管から洗浄水を供給し、前記空気供給手段を稼動させて洗浄水に連続的に空気を吹き込んで気液2相流を発生させ、前記ガス抜き弁を開いて気液分離後の空気を前記ガス抜き管から排出させる
ことを特徴とする請求項1に記載の海水中異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−20259(P2012−20259A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161648(P2010−161648)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】