説明

海水有機体を除去するシステムおよび装置

【課題】非ろ過前分離デバイスおよびこのデバイスを用いて藻類を除去する方法を提供する。
【解決手段】海水から生物有機体を除去する少なくとも1つの湾曲構造104を含む流体力学的分離器50を有するシステムを含み、このような構造は、未処理の海水の供給源と有効に接続される注入口102、および事前処理された流出液を下流のろ過システムへ流すように、かつ廃液を除去するように動作する分岐した放出口106を有する。このようなデバイスを実現するための、種々の流体構造、実装および選択された製作技術が、1つだけの構成であってもスタック型構成であっても、および/または束状の並列構成であっても提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物付着は、船体、沿岸構造物、工業用冷却塔および飲料水送水システムへの厳しい問題を引き起こす。本明細書では「生物付着」という用語の使い方は、生物有機体またはこのような有機体から成るバイオフィルムが一表面上に、その表面がふさがれるように、およびその表面が、表面または構造の有益な目的に関して劣化することさえあるように、積み重ねられたビルドアップ(積層)形態を指す。この問題は、液体供給源内に自然に存在している生物有機体が、ろ過システムの注入口または吸入口内へ取り込まれる液体内に混入するときに発生する。逆浸透(RO)、ナノろ過(NF)および限外ろ過(UF)膜表面上における、微生物増殖、コロイド物質の沈殿、ならびに有機体の吸着に起因するバイオフィルム層のビルドアップによって、ろ過効率が悪化し、最終的には膜の取り換えが必要となる。上述したことのゆえに、バイオフィルムの発生および蓄積を最小化することは、脱塩および水処理産業における主要な関心事である。
【0002】
海洋内の植物プランクトン、珪藻、および他の有機種が、生物付着の供給源であり、下流のろ過システムに伴う問題を最小化するように調整を行う必要がある。細胞外多糖分泌(EPS)は、マクロ凝集プロセスにおいて決定的な役割を果たす透明細胞外重合体粒子(TEP)の生成に対して、前駆体として機能する。これらのゲル状粒子は、約2から約200μmまでのサイズ内にある、アモルファス小塊、雲状体、シート状体、糸状体または凝集塊などの多くの形状で現れる。TEPは、主に多糖類であり、負に帯電され、極めて粘着性があり、細菌によってしばしばコロニーが形成される。これらの凝集体は、膜システムを汚染し、バイオフィルム増殖への栄養物として機能する。
【0003】
水および特に海水処理システムの別の問題は、「赤潮」として知られているものなどの季節的な事象であり、藻類の蔓延、または有害藻類急速繁殖(HAB)である。発生、または有害藻類急速繁殖は、1リットル当たり10個以上の細胞量の藻類微小有機体を有する発生として一般に定義される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で説明される実施形態の一態様では、本システムは、非ろ過流体力学的海水事前処理システム、ならびに本システムを用いて生物有機体および特に藻類を除去する方法を含み、未処理の海水の供給源と有効に接続される注入口と、未処理の海水から生物有機部材を除去するモジュールであって、事前処理された流出液を下流のろ過システムへ流すように、かつ廃液を除去するように動作する分岐した放出口へ導く湾曲構成を有する少なくとも1つの分離器モジュール、を含む非膜流体力学的分離器ユニットとを含む。上述した実施形態の少なくとも一態様では、事前処理された流出液流は、凝固剤および/または凝集剤を使用せずに、未処理の海水内に含有される生物有機部材の量のうちの10%未満を含有する。凝固剤および/または凝集剤を用いると、残留する生物有機物質は1%未満である。
【0005】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、吸入口の液体を事前処理して藻類および他の粒子状物質を吸入口から除去するのに適している、非ろ過流体力学的事前処理分離器ユニットが設けられ、事前処理後の液体は、廃液を陸上に持ってきて処理後に処分するよりもむしろ、廃液を海洋内で直接に処分することを可能にしている。
【0006】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、吸入口の液体を事前処理して藻類および他の粒子状物質を吸入口から除去するのに適している、非ろ過流体力学的事前処理分離器ユニットが設けられ、事前処理後の液体は、従来のROまたは他の水処理システムによって処理される。
【0007】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、未処理の海水から生物有機部材を除去するモジュールであって、沖合のもしくは陸上のろ過システムへの前駆体または一部として実装するのに適している少なくとも1つの分離器モジュール、を含む非膜流体力学的分離器ユニットを含み、ろ過障壁を用いずに、未処理の海水を事前処理して、有機体、すなわち藻類、TEP、植物プランクトン、珪藻、および他の生物有機体を除去する、非ろ過流体力学的海水事前処理システムが提供される。
【0008】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、本システムは、海洋有機体が、従来の吸入口スクリーンに対して、流体の速度および力によって捕捉されるときに生じる現象であって、細胞破壊を引き起こし、有害な毒素をまたは環境への副作用を放出する衝突現象を、最小化する機構を提供する。
【0009】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、本システムは、広範な凝集および/または沈降/浮遊プロセスを必要とせずに、生物有機体を除去する急速なプロセスを提供する。
【0010】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、本システムは、事前処理された海水から有害の可能性がある藻類を除去し、損傷のない藻類を自然環境へ戻している間、供給水の環境バランスを維持する、生態学的安全機構を提供する。
【0011】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、非ろ過流体力学的海水事前処理システムは、複数のモジュールであって、各モジュールが互いに並列となるように、かつすべてのモジュールが注入口に有効に接続されるように、スタック型に形成された湾曲粒子分離モジュールを含むユニットを含む。
【0012】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、湾曲粒子分離モジュールは、湾曲部分の直径に沿った角距離のうち、180度と360度との間にわたる湾曲部分を含む。
【0013】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、本システムは、複数のスタック型湾曲粒子分離モジュールと並列に配置される、少なくとも第2の複数のスタック型湾曲粒子分離モジュールを含む。
【0014】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、本システムは、事前処理システムの下流にあるろ過システムが、目詰まりを少なくするように、かつメンテナンスを少なくするように、清澄な海水を供給する。
【0015】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、本システムは、効果的かつ効率的に生物有機体および栄養物(TEP)を除去し、それによってバイオフィルムの形成を低減し、コスト高の膜上におけるバイオフィルムに関連した影響を低減する。
【0016】
本明細書で説明される実施形態の別の態様では、前ろ過デバイスをバイパスする微小な生物有機体は、最初のろ過デバイスに入ったり、汚染したりすることを妨げられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】細菌および他の有機体を除去する従来の事前処理システムの効率を示す棒グラフである。
【図2】本明細書で説明される実施形態の一形態における事前処理デバイスを用いて藻類を除去した結果を示すグラフである。
【図3】本明細書で説明される実施形態の一形態における事前処理デバイスの効率を示すグラフである。
【図4】本明細書で説明される、凝固剤および/または凝集剤を用いない実施形態の全体の形を示す図である
【図5】本明細書で説明される、凝固剤および/または凝集剤を用いる実施形態の全体の形を示す図である。
【図6】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図7】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図8】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図9】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図10】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図11】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図12A】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図12B】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図13A】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図13B】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図13C】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図13D】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【図13E】本明細書で説明される実施形態の一形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で説明される実施形態は、未処理の海水を事前処理してそこから生物有機物質を除去し、この破壊されていない生物有機物質を、未処理の海水源の生態学的バランスを乱さずに未処理の海水供給源へ戻す、非膜流体力学的事前処理分離ユニットを含むシステムの構成を実現するための、種々の流体構造、実装および選択された製作技術に関する。これらの検討されたシステムは、処理されようとする液体を効率的に入力し、スループットを改善する。本明細書では、用語「流体力学的事前処理分離器」は、外部電源を用いることを必要とせずに、流体力学的分離器ユニットを含む流体力学的事前処理分離システムを通して、海水を進ませるための、海水環境における静流体力学的力および重力的力の使用を指す。しかしながら、これは、作動デバイス用のポンプの使用を除外しない。
【0019】
これらのシステムおよびユニットの変形例が、寸法スケールおよび流路アーキテクチャに基づいて実現してもよいことを理解されたい。しかしながら、本明細書で説明される実施形態は、マクロスケール(1〜10リットル/分)の単一流路の流速にわたって、広範囲に拡張可能であるように検討される。
【0020】
便利なスタック型技術を利用する平面的な実施形態が、検討される。この点については、180度から360度の範囲にある弧を定義する少なくとも1つのモジュールを有する流体力学的分離器ユニットは、流体内の所望の位置に粒子を押し流すために、横断流パターン発生の連続的なステージ、定常流速の達成、および数回の循環通過の時間を可能にする。本明細書で説明される他の平面的な実施形態は、らせん状スパイラル型を含む。
【0021】
本明細書で検討される実施形態は、安価なプラスチック、または処理プロセスに必要とされる他の適切な部材などの安価な部材から組み立ててもよい。
【0022】
加えて、スタック型に形成された並列の多流路の実施形態は、迅速な組立および分解を提供する。このように検討されたユニットの注目に値する特徴は、液体を微粒子または廃液流と流出液流とへ分割する分岐機構またはスプリッタを含む、便利な注入口多岐管および放出口多岐管を含むことである。検討された実施形態は、追加の処分または処理用に、極端に狭い帯状の微粒子を出力するのに有効な多重ステージのデバイスも可能にする。したがって、他の並列構成の実施形態および製作技術が、検討される。
【0023】
さらに、非膜流体力学的事前処理分離ユニットおよびその構成は、同一のものは必要としないが、事前処理システムの一部として凝固剤または凝集剤の導入を提供し、および洗浄サイクルを含むシステムのメンテナンスを提供する。さらに、帰還および/または制御システムが、本明細書で説明される実施形態のうちのいずれかを用いて実装してもよい。
【0024】
上述してきたように、生物付着、および特にバイオフィルムの発生および蓄積を最小化することは、脱塩および海水処理産業における主要な関心事である。RO、NF、およびUF膜表面などの従来のろ過デバイス上への微生物増殖、コロイド物質の沈殿、および有機体の吸着に起因するバイオフィルム層のビルドアップによって、ろ過効率が悪化し、最終的には汚染された膜の取り換えが必要となる。
【0025】
生物付着の1つのタイプは、一般に「赤潮」と呼ばれているものである。この現象は、例えば南シナ海沿岸の水で発生し、1985年には100種を超える有害藻類が特定され、1993年には61種の渦鞭毛藻、もっとも一般的にはAlexandrium tamarensis Balech、Ceratium furca、Gonyaulux polyhedral、夜光虫(、およびProrocentrum minimumが特定された(http://www.red−tide.org/new)。例えば、特定された有害藻類は、マレーシアでは、Pyrodinium bahamense var. compressum、フィリピンでは、Pyrodinium bahamense var. compressum、Gymnodinium catenatum、Alexandrium tamiyavanichii、タイでは、夜光虫、Ceratium furca、Trichodesmium erythraeum、Chaetoceros、Cosinodiscusss、Skeletonema、Mesodinium rubrum、Cochlodinium sp.、ベトナムでは、Phaeocystis globosa、およびインドネシアでは、Skeletonema costatum、Chaetoceros、Bacterisastrum、Thalassothrix、Thalassionema、Rhizosolenia、Pseudonitszchia、Prorocentrum minimum、Gonyaulax sp.、Trichodesmium erythraeumを含む。
【0026】
場所よっては、赤潮の影響が周期的である一方で、別の場所では有害藻類急速繁殖(HAB)は、年中存在している。HABの事象は、一般に1リットル当たり10個以上の細胞量の藻類微小有機体を有する発生として定義される。微小有機体は、必要な食物を提供し、または別の植物もしくは動物生命の成長を刺激し、それによって生育環境の食物連鎖に寄与することがある。別の微小有機体は、生育環境から有害または有毒物質を除去するため、結果として微小有機体それ自体が有毒になる。例えば貝などの他の海洋生物への毒の供給源としての藻類をなくすために、このような藻類を除去する必要がある場合がある。微小有機体の細胞を破壊せずに藻類を除去すると、毒素または他の有害物質の放出を回避するために、ますます危機的になり、これらの毒素または他の有害物質は、下流のろ過システムを汚染し、特別な取り扱いおよび/または処分を必要とし、廃液が供給源へ戻されることになっている場合には、海水生育環境を汚染してしまう可能性がある。
【0027】
せん断速度は、有毒または有害な可能性のある微小有機体を除去することに関するもう1つの関心事を表している。従来の膜を通して吸入口の液体を流すことによって引き起こされるせん断が、特定の重要問題である。生物有機体の増殖、複製および/または代謝が、乱流によって制限されることが知られている。例えば、Protoceratium reticulatumが、乱流状態のもとで、静的状態と比較して増殖速度が低減されることが知られている。24時間にわたる0.3/秒のバルク平均せん断において、細胞ダメージをせん断から修復するためにおそらく発生したすべての抗酸化物質である、クロロフィル、ペリジニン、およびジノキサンチンの生成が高められ、増殖速度が低減された。低レベルのせん断であっても細胞培養速度に強く及ぼす抑制的影響に加えて、それは細胞連鎖を寸断することもできる。
【0028】
一部のろ過システムの動作中のせん断速度によって、生物有機体の細胞壁は破壊することがある。これは、いくつかの点で問題が多い可能性がある。まず、有毒のまたは感染性の物質が、流入水へ放出される可能性があることである。また、細胞物質は、膜および接触する液体表面をさらに汚染し、この場合も細胞物質は有毒または感染性となり、したがって本システムを流れる液体を汚染することになる。200psiまでの圧力降下によって、藻類の細胞が破壊可能なことは知られている。したがって、せん断速度が、典型的なろ過動作のせん断速度を下回るレベルで、具体的には、留意される問題を引き起こさないように、藻類を破壊させる既知のレベルを下回るレベルで制御されることが重要である。細胞構造は、別々の種ごとに別々であり、したがってせん断速度はすべてに対して十分に低くあるべきである。例えば、珪藻(例えばChaetocerosおよびSkeletonema)は一般に、堅い細胞壁内のガラス質ケイ酸塩を有し、シアノバクテリア(および渦鞭毛藻(例えばPyrodinium、Noctiluca、およびAlexandrium)はセルロース系細胞壁を有し、「oilgae」として知られているもの、すなわち石油生成剤は、極めて堅牢な細胞構造を有し、石油を抽出するために、約150psigの圧力降下などの極端な圧縮方法を必要とする。
【0029】
しかしながら、本明細書において提供される非膜流体力学的事前処理分離器システムおよびユニットは、100/秒から1500/秒までの範囲のせん断速度で動作し、同速度は、上述したタイプすなわち生物有機体および大部分の他の類似物のうちのいずれかの藻類の細胞壁を破壊させるのに必要な大きさの2〜3倍低い大きさである。したがって、本明細書において提供される流体力学的事前処理分離器システムは、過度のせん断によって引き起こされる問題に関して、従来の膜ろ過システムの受け入れ可能な代替策を表す。
【0030】
生物有機体は、サイズおよび形状において変化することができる。例えば、表1は、本明細書において指摘された生物有機体のいくつかに対して、代表的なサイズおよび形状データを説明する。もちろん、このデータは、本明細書に従う流体力学的事前処理分離器システムが、除去するように意図されている生物物質のタイプに関して、ただ単に情報を与えるものとして提供される。
【表1】

【0031】
生物有機体は、海洋生物に対しては危険物を表すことがある。例えば、Chaetoceros debilisは、シリカ細胞壁を有し、緩いスパイラル型の外観を有する。この生物有機体は、魚類のえら組織内に取り込まれるようになり、大量の粘液を発生させて、最終的には影響を受けた魚類を窒息状態にする。
【0032】
上述したことを考慮すると、有害藻類急速繁殖の発生を防止し、海水の供給源から有害な生物有機体を除去する、明らかな必要性がある。農業地帯および肥沃な田園からの流出液を最小化すること、光への露出を減少させること、石こうまたはミョウバンでいっぱいの水を投与すること、水供給源を殺藻剤で事前処理すること、新たな藻類種の嚢子移動を防止するためにバラスト水を処理することなどの試みが、行われてきた。加えて、粘土、すなわちモンモリロナイト、カオリナイト、または黄土などの凝集剤を加えることによって、ろ過された水を使用前に処理することが知られている。しかしながら、この処理によって、細胞死亡率が増加する傾向がある。例えば沿岸における赤潮のブルームなどのより大きい群生に関しては、もっとも一般に使用される処理は、残念ながらまったくどんな処理にもならず、すなわちブルームは自然に消滅するままにされている。この結果、修復およびメンテナンスに費用がかかり、海水ろ過システムの動作停止時間が延長する事態となることがある。
【0033】
細胞外多糖分泌(EPS)は、透明細胞外重合体粒子(TEP)を生成する前駆体として機能し、同TEPは、上述例および多くの他の種を含み、マクロ凝集プロセスにおいて決定的な役割を果たす。これらのゲル状粒子は、約2から約200μmまでのサイズ内にある、アモルファス小塊、雲状体、シート状体、糸状体または凝集塊を含む多くの形状で現れる。TEPは、主に多糖類であり、負に帯電され、極めて粘着性があり、細菌によってしばしばコロニーが形成される。これらの凝集体は、膜システムを汚染し、バイオフィルム増殖への栄養物として機能する。
【0034】
従来の膜ろ過デバイスは、通常の動作流速において、TEPをより小さな破片へと変形または切り刻みそうであるが、しかしTEPを容易に除去しそうではない。したがってTEPは、バイオフィルムがさらに増殖する基礎として残存する。同様に、セジメント・トラップを使用すると、粘液状のTEPは、取り扱いおよび処分を困難にする粘性の汚泥として、沈降物とともに蓄積するようになる。上述したことにもかかわらず、生物有機体を改変されずに供給水へ戻す必要があり、これは、TEPが、小さなろ過摂食性原生動物(例えばAppendiculariaおよびEuphausia pacifica)用の、ならびに幼生期の有機体、カイアシ類、および一部の魚類用の食物供給源を表すという事実に基づいているからである。最後に、ある種の細菌が、マンノースまたはガラクトースをより多く含有するTEPを、優先的に常食にして減少させることがあるという事実のゆえに、このタイプのTEPを濃縮すること、除去することおよび戻すことによって、環境における生態学的シフトが起こり得ることを意味する。危険なまたは有害な品質レベルの副産物ガスを放出することは、この状況では問題の多いことになる可能性がある。したがって、有害な藻類を除去することと、生物有機体を改変されずに供給海水へ戻す必要性とをはかりにかける必要が明らかにある。
【0035】
本発明の一態様では、沖合のまたは陸上の環境において、実装するのに適しているシステムであって、ろ過障壁を用いずに、海水を事前処理して、生物有機体、すなわち藻類、TEP、植物プランクトン、珪藻、および他の生物有機体を除去する非膜流体力学的事前処理分離器システムが提供される。除去される生物有機部材は、供給水へ戻してもよいし、必要に応じて処分してもよい。提供される非膜流体力学的事前処理分離器システムは、いくつかの点、すなわち、本システムが、有毒のもしくは有害な化学製品を使用する必要がない、または同製品を環境へ放出する必要がない点、本システムが、未処理の海水から廃液を海岸へ戻して処分もしくは追加の処理を行ったり、吸入口源へ戻して追加の処理を行ったり、または供給水まで戻したりする点、本システムが、流体によって本システムを通して生成された流体力学的力の上で動作する点、ならびに必要ならば、本システムが、分離エンハンサとして、ヒザラガイで作られる、キトサンなどの、生体適合性および生物分解性を有する綿状有機物の使用を提供する点で、生態学的に使いやすい。
【0036】
本発明の別の態様では、効果的かつ効率的に生物有機体および栄養物(TEP)を除去し、それによってバイオフィルムの形成を低減し、下流のろ過システムのコスト高の膜に与えるバイオフィルムの関連した影響を低減する、非膜流体力学的事前処理分離器システムが提供される。この点については、事前処理システムを使用すると、吸入口の液体内の生物有機体およびTEPを少なくとも80%低減する、および好ましくは少なくとも90%低減する結果がもたらされ、したがって下流の膜およびROシステムの洗浄前の耐用年数が5倍増加し、さらにはいずれ行われる取り換えまでの期間がより長くなることになる。微粒子の除去に関して約95%という事前処理システムの高効率のゆえに、下流の脱塩または他の工程へ供給される吸入口の液体はより高品質になり、したがってこれらの下流工程の性能および効率を高めることになる。
【0037】
図1は、未処理の海水内の、ならびにUV照射、MMFおよびCF、従来のろ過器用網目ならびにROを含む従来のろ過デバイスによって処理された処理後の流出液内の、細菌、凝集塊状の微粒子、および他の微粒子の量を示す棒グラフである。本システムの焦点である生物有機体を含む細菌において、試験されたどんな処理方法も、顕著な低減を成し得ていなかった。
【0038】
対照的に、図2は、未処理の海水内、廃液流内、および本発明の少なくとも一態様に従う非膜流体力学的事前処理分離器システムの流出液流内、の6μmよりも大きい直径の藻類の濃度をppm(100万分の1)で示すグラフを提供する。図3は、約6μmよりも大きい直径の藻類を除去することに関し、95%の効率で動作するシステムを示すグラフにおいて、本システムの有効性をさらに詳述する。
【0039】
次の説明において、図面に関して種々の実施形態が説明されるが、類似の番号は、類似の構成要素または図面の一部を参照するように使用してもよいことが理解される。さらに、あるサイズのまたはあるタイプのデバイスが示されているにもかかわらず、別のやり方で定められる場合を除いて、別の類似のデバイスまたは特徴が、動作システムの意図された結果が成し遂げられる限り、代用されてもよいことが理解される。
【0040】
次に図4を参照して、脱塩用に未処理の海水を事前処理する一般の実施形態が、分画サイズ分離向けに示される。このタイプの事前処理の場合、あるサイズ以上の粒子サイズを有する粒子状物質は、分離器によって除去される。次いで、液体をスパイラル型分離ユニットへ流す未処理の海水吸入口12を有する海水処理システム10が示される。分離器14は、流出水タンク20に有効に接続される流出液流16および除去された粒子状物質を積んだ廃液流18を有する分岐した放出口(図示されない)を含み、同廃液流は処分または貯蔵(図示されない)向けに運ばれる。任意選択のろ過器22は、流出液流を細かくろ過するために追加してもよい。システム10において、事前処理ろ過器24は80網目のスクリーンろ過器であるが、任意の適切なスクリーンろ過器が本システムの一部のように検討される。
【0041】
図5は、網目スクリーンろ過器24を通る原水注入口12、スパイラル型分離器14、その後に流出液流16および任意選択のろ過器22を通って流出液タンク20への経路か、それとも廃液流18を通って貯蔵または処分への経路かを含む、脱塩用に未処理の海水を事前処理する別の一般の実施形態10を提供する。加えて、本実施形態では、凝固剤および/または凝集剤噴射デバイス26、粗くろ過された海水内に残存する凝固剤および/または凝集剤ならびに粒子状物質の凝集を促進するスパイラル型混合器28、ならびに凝固した粒子状物質がさらに凝集剤と混合されるための凝集タンク30が設けられる。これらの後者のユニットの追加は、スパイラル型分離器14がさらに容易に除去するための、より大きい粒子を作り出すことによって、粒子状物質の除去に役立つように意図されている。
【0042】
本発明の少なくとも一つの態様では、例えば図6において説明されるように、未処理の海水を事前処理する、単純化された非ろ過流体力学的事前処理分離器システムが設けられ、本システムは、多量の有害な藻類および他の生物有機体を含有する供給水によって示される問題を回避する。図6に示される流体力学的事前処理分離器システム40では、未処理の海水41は、注入口スクリーン42に入り、重力の力によって注入口スクリーン42を通過する。スクリーン42は、例えば約2から3mm以上のサイズを有する、より大きい粒子状物質を除去する。次いで、スクリーンを掛けられた未処理の海水43は、セグメント44(a)およびセグメント44(b)を有する流路44を通って、流体力学的分離器ユニット50の方へ流れる。液体は、まずセグメント44(a)に入り、セグメント44(a)の中を移動してセグメント44(a)が満たされ、その時点で液体はセグメント44(b)にあふれる。スクリーンを掛けられた海水43は、静流体力学的力によって流路44の中を駆動され、さらにスクリーンを掛けられた未処理の海水は流体力学的分離器ユニット50の中へ押し込まれ、ここで同流体力学的分離ユニットは、例えば本明細書の図10または図11に示されるものに従う、または上述した参考文献によって援用された出願であって、我々の共通の譲受人への出願の実施形態のうちのいずれかに示されるような、少なくとも1つの非ろ過、非膜分離器モジュールを含む。流体力学的分離器モジュールは、下流のろ過工程またはシステムがさらにろ過を行う前に、スクリーンを掛けられた未処理の海水から生物有機体を除去するように機能する。
【0043】
流体力学的事前処理分離器システム40を通る流体は、本実施形態およびいくらかの別の実施形態では、排出ポンプ56によって維持される。排出ポンプ56は、チェックバルブ58と有効にやり取りして、流出液ライン52からライン60を通して流出液を受ける。ライン60からの流出液が排出ポンプ56に入るにつれて、真空を作り出し、スクリーンを掛けられた未処理の海水を分離器ユニット50に引き込んで、分離器ユニット50からの廃液を、チェックバルブ58を通してくみ出す。この真空によって、流路44(b)内の分離器ユニット注入口側および流出液ライン52が現れる放出口側の圧力降下が相殺されて、スクリーンを掛けられた未処理の海水の分離器ユニット50内への流入、および分離器ユニット50からの流出液の除去が維持される。
【0044】
下流の膜に生物付着を引き起こす生物有機体を除去するように事前処理された海水が、流出液流52および廃液流54を含む分岐した放出口流として、流体力学的分離器ユニット50から抜け出る。流出液流52は、適切な手段によって低圧力で運ばれて、陸上または沖合における下流のろ過工程において、さらにろ過することができる。代わりの構成としては、最終用途の要件に依存して、流出液流52は、現状のままで使用してもよいし、または引き続く利用のために含有してもよい。任意選択で、水中用ポンプ62が用いられて、流出液流52のポンプ動作を促進してもよい。チェックバルブ58は、流体力学的分離器ユニット50と有効にやり取りして、赤潮の事象と一致するタイプなどの、より大きい藻類およびより大きい他の粒子状物質を、廃液流54の一部として放出する。廃液流54からの廃棄物は、生態学的バランスを乱さないように海洋へ戻してもよいし、または本明細書で開示されるような適切なやり方で処分してもよい。
【0045】
図7は、本開示に従う別の態様を示し、同態様では、除去されようとする藻類のサイズが、例えば約5μm未満のように極めて小さいと知られているときに、廃液除去プロセスの効率を最大化するために、凝固剤および/または凝集剤が加えられる。この場合、凝固剤を追加することによって、流体力学的事前処理分離器システムの効率を高めることが望ましい場合がある。本実施形態では、未処理の海水41は、重力の力によって注入口スクリーン42を通して流体力学的事前処理分離器システム70に入る。次いでスクリーンを掛けられた未処理の海水43は、セグメント44(a)および44(b)を有する流路44を通って、流体力学的分離器ユニット50の方へ流れる。液体は、まずセグメント44(a)に入り、セグメント44(a)の中を移動してセグメント44(a)が満たされ、その時点で液体はセグメント44(b)にあふれる。凝固および/または凝集のために、流体力学的分離器内へ供給する前に十分な滞留時間が考慮される。スクリーンを掛けられた海水43は、静流体力学的力によって流路44の中を駆動され、さらにスクリーンを掛けられた未処理の海水は流体力学的分離器ユニット50の中へ押し込まれ、ここで同流体力学的分離ユニットは、例えば本明細書の図10または図11に示されるものに従う、または引用したことで本明細書の一部としたものであって、我々の共通の譲受人への出願の実施形態のうちのいずれかに示されるような、少なくとも1つの非ろ過、非膜分離器モジュールを含む。流体力学的分離器は、下流のろ過工程またはシステムがさらにろ過を行う前に、スクリーンを掛けられた海水から生物有機体を除去するように機能する。
【0046】
この時点で、キトサンなどの凝固剤および/または凝集剤72が、任意の適切な手段によって、流路44内のスクリーンを掛けられた海水43へ加えられる。押しつぶされた貝殻を含むキトサンは、本システムの環境にやさしい態様を維持するので、本明細書では適切な凝固剤および/または凝集剤として例示される。もちろん、任意の適切な凝固剤および/または凝集剤が使用されてもよい。凝固したスクリーンを掛けられた海水は、流体力学的力によって流体力学的分離器ユニット50の中を循環する。液流は分岐して、流出液流52および廃液流54へと分離器50から抜け出る。本実施形態では、廃液流54はチェックバルブ58を通して除去され、同チェックバルブは廃液ライン54を通して分離器ユニット50と有効にやり取りし、次いで廃液流54は、スクリーンを掛けられた未処理の海水43と混合するために、流路44(a)へ戻されて、事前処理が除去するように意図されている生物有機体の粒子サイズを増加させることを、凝固剤および/または凝集剤66とともに支援することができる。代替的には、廃液流54は、より大きいサイズの廃液を含有する場合、処分用または格納用に海岸へ移動することができる。ポンプ64が、任意選択で本システムへ追加されて、廃液流54を移動させることを支援してもよい。流出液流52は、適切な手段によって低圧力で運ばれて、陸上または沖合における下流のろ過工程において、さらにろ過される。代わりの構成としては、洗浄された海水についての最終用途の要件に依存して、流出液流52は、使用してもよいし、または引き続く利用のために含有してもよい。任意選択で、水中用ポンプ62が用いられて、流出液流52のポンプ動作を促進してもよい。
【0047】
本開示に従う別の態様では、流体力学的事前処理分離器システム80は、強制空気洗浄サイクルを含む。図8に関しては、未処理の海水41は、重力の力によって注入口スクリーン42を通して流体力学的事前処理分離器システム80に入り、流路44を通って、上述で提供された本開示に従う流体力学的分離器50へと進む。液流は分岐して、流出液流52および廃液流54へと分離器50から抜け出る。本実施形態では、流体力学的分離器50が汚染されるようになるにつれて、システム80は、一時的に停止し、チェックバルブ58の上流に位置付けられた廃液流ライン54を通して流体力学的分離器ユニット50内へ、空気が押し込まれてもよい。空気流72は、送風機、または空気供給源(図示されない)に接続されたこのような他のデバイスの力によって、廃液流54を通して流体力学的分離器ユニット50に入り、流体力学的分離器ユニット50からこすり取られた固形物/廃液を除去し、除去された固形物/廃液が、流路セグメント44(b)の上部スペース82内の分離器50の上方に蓄積することになる。例えば図11示されるように、流体力学的分離器ユニット50が複数のスタック型モジュールを含むというシナリオでは、空気洗浄は連続してなされることになる。このように、各モジュールは、モジュールの連続的な洗浄を制御するための空気注入口および開閉バルブを含むことになる各モジュールが洗浄されるにつれて、除去された固形物/廃液は、上部スペース82内に蓄積することになる。
【0048】
流体力学的分離器ユニット50がいったん洗浄されると、空気流72は止められ、システム80は、もう一度、本システム内の海水の流体力学的力にさらされて、未処理の海水41を、再びスクリーン42を通り、流路44を通って流体力学的分離器ユニット50へ流れ込むようにする。スクリーンを掛けられた海水が流路44の中を移動するにつれて、除去された固形物は、拾い上げられ、廃液流54の一部として除去されるために、流体力学的分離器ユニット50へ運び込まれる。ループシール74は、本シナリオでは流出液流ライン52の一部であり、流体力学的分離器ユニット50と有効に関連付けられて、洗浄サイクルからの空気が流出液流52を終了させることを防止する。このように、ループバルブ74は、水ラインの下方に位置付けられ、海水面の上方に、蓄積された空気の放出用の通気孔88を含む廃液流54は、チェックバルブ58を通して除去され、上述した実施形態のうちのいずれかに従って処分または再利用される。同様に、流出液流52は、適切な手段によって低圧力で運ばれて、陸上もしくは沖合における下流のろ過工程において、さらにろ過され、または本明細書における任意の他の実施形態に従って、使用されもしくは貯蔵される。
【0049】
上述の空気洗浄サイクルの代替策では、化学洗浄サイクルが、本明細書において提供される本実施形態のうちのいずれかで開示された流体力学的事前処理分離器システムに対して用いられてもよい。図9は、このような洗浄サイクルの一例を提供する。本実施形態では、流体力学的事前処理分離器システム90は、重力の力によって注入口スクリーン42を通して未処理の海水41を受ける。次いで、スクリーンを掛けられた海水43は、流路44(a)および(b)を通って流体力学的分離器ユニット50へ流れ、同ユニットにおいて、スクリーンを掛けられた海水43の流体力学的力は、上述の態様のうちのいずれかに従って、生物有機体を除去するために、非ろ過、非膜分離器ユニット50の中で液体を移動させる。液流43は、流体力学的分離器ユニット50の中を循環し、同ユニットにおいて、生物有機体は除去され、液流は分岐して、流体力学的分離器ユニット50から流出液流52および廃液流54へと抜け出る。
【0050】
本態様では、流体力学的分離器ユニット50が汚染されるようになるにつれて、システム90は、洗浄サイクルの間、一時的に停止してもよい。停止すると、堰の溢水(図示されない)上の堰扉84および86が落下して、流体力学的分離器ユニット50内へ未処理の海水または清澄な流出液が進入するのを防止する。任意の適切な手段によって、流体力学的分離器ユニット50へ充水される洗浄液は、ポンプ82によってライン76を通して、流体力学的分離器ユニット50の中を再循環する。例えば、洗浄液は、液体貯蔵タンクまたは陸上の他の格納容器からポンプで送ってもよく、または例えばプラットホームなどのシステム90を収容/支持する支持機構上に貯蔵してもよい。いずれの場合でも、洗浄液は、例えば重力によってシステム90へ供給され、専用のポンプ82によって再循環することができる。堰扉84および86は、流体力学的分離器ユニット50の中を循環する洗浄液が、流出液ライン52または流路44(b)内へ流出するのを防止する。洗浄サイクルが完了すると、バルブ(図示されない)が使用されて、洗浄液注入口を止め、例えば陸上での処分用に使用済み液を、ライン78を通して押し出してもよい。
【0051】
任意選択で、洗浄液は、図8に示されるような空気流によって補ってもよい。1つの代替策では、曝気処理が単独で使用されて、流体力学的分離器ユニット50の中で洗浄液を再循環させる。洗浄サイクルの間、堰扉84の吸入口側の流路44(a)内にあるスクリーンを掛けられた海水43と、液体が流体力学的分離器ユニット50に入る場所である堰扉84の反対側の流路44(b)内にあるスクリーンを掛けられた海水43との間の水頭差によって、洗浄液は、供給水に入ることを防止され、海水は、流体力学的分離器ユニット50へ流れ込むことを防止される。洗浄中に、チェックバルブ58は、洗浄液を流体力学的分離器ユニット50の内部に保持することを支援するように機能し、洗浄液が本システムから廃液流54の中に抜け出ないようにする。
【0052】
洗浄サイクルが完了すると、ポンプ82は停止し、システム90は再開する。この時点では、堰扉84および86は高くされており、液体は再び流体力学的事前処理分離器システム90の中を移動し、廃液流54はチェックバルブ58を通して除去され、上述の実施形態のうちのいずれかに従って処分または再利用される。同様に、流出液流52は、適切な手段によって低圧力で運ばれて、陸上もしくは沖合における下流のろ過工程において、さらにろ過され、または本明細書における任意の他の実施形態に従って、使用されもしくは貯蔵される。
【0053】
本明細書において使用するように検討される非膜流体力学的分離器ユニット50は、参照することによって本明細書内に援用された開示であって、我々の共通の譲受人への開示内で開示された任意の分離器の形をとってもよい。例えば、どんな限定するやり方も意図されていないが、図10は、本明細書で使用されるのに適している一例の流体力学的分離器ユニットの表現を提供する。次いで、図10は、上述のように与えられた定義に沿って、適切な流体力学的分離器ユニット50の一例を説明し、ここで同ユニットは、注入口102(スタック型配列用の注入口結合部を含んでもよい)、湾曲部分104、ならびに流出液流52および廃液流54を定義する少なくとも1つの分岐した放出口106を有する。示されるように、特定のサイズまたは比重の粒子(例えば浮遊粒子)などの選択された粒子用に、追加の放出口108が設けられてもよい。放出口108は、注入口102と放出口106との間の湾曲部分104の周りの中ほどに位置される。上述したように、少なくとも1つの放出口結合部が、さらに利用されてもよい。海水の品質、すなわち微粒子濃度およびサイズ分布に依存して、流体力学的分離器ユニット50は、すべての微粒子を別々の幅の帯状内へ集めることになる。流体力学的分離器の効率をリアルタイムで最適化することを可能にするために、流体力学的分離器が、調節可能な液流スプリッタ(図示されない)を有することが望ましい。この図10に示されるような、流体力学的分離器ユニット50が、図11においてさらに詳細に示されるような、単一のモジュールまたは複数の並列のスタック型モジュールでもよいことが理解される。
【0054】
図11は、例えば図10に示されるタイプの、流体力学的分離器ユニット50内に複数のモジュール100を含むスタック型配列の表現を提供する。図11を参照すると、スタック型流体力学的分離器ユニット50は、多重の平面的な流体力学的分離器モジュール100(例えばわずかの弧セグメント)を含み、同モジュールは、並列流路として垂直にスタック型に形成されてスループットを増加させる。これらの流体力学的分離器モジュールは、スパイラル型デバイスの特徴および機能が、この場合これらのスタック型分離器モジュールに当てはまるにもかかわらず、いずれのモジュール100に対しても完全なループになっていない。各流体力学的分離器モジュール100は、注入口102、湾曲または弧セクション104および放出口106を含む。共通の供給源から、示される各流体力学的分離器モジュール100への海水の注入口を可能にする注入口結合部112も、図11に示される。注入口結合部が、さまざまな形状を選択することができることを理解されたい。1つの形状では、注入口結合器は、円筒であり、各流体力学的分離器の注入口に一致する穿孔または連続的なスロットを有する。流体力学的分離器ユニット50は、液体粒子分離のスループットを増加させる。さらに、少なくとも1つの放出口結合器(図示されない)が、実装されてもよい。放出口結合器は、例えば注入口結合器に似ていてもよい。
【0055】
図12A〜図12Bは、本明細書で説明される実施形態のうちの追加の実施形態を図示する。図12Aに示されるように、流体力学的分離器ユニット200は、らせん状スパイラル型配置内に、8つの並列の流体力学的分離器モジュールを含む。本実施形態では、図12Bの分解図に示されるように、小型の構成に起因して、スループットが改善される。
【0056】
動作中に、未処理の海水は注入口202を通って流体力学的分離器ユニット200に入り、放出口経路204および206を通って抜け出る(分離される)。上側流体多岐管210は、端部キャップ212上の複数の放射状傾斜スロット214を通して、それぞれ8つの別々の流体力学的分離器モジュール217に供給する。下側端部キャップ216は、同様に、各流体力学的分離器モジュールに一致するスロットを有する。放出口多岐管218は、内側リング219を含み、同リングは、分離された液体を、廃液および流出液流、204および206へ分割するための分岐器として機能する。流体力学的分離器モジュール217によって形成されるらせん状スパイラル型構造は、外側の保護スリーブ220の内側にぴったり納まる。それぞれ個々の流体力学的分離器モジュールは、任意選択で注入口または放出口における個々の流量制御を有し、流れを停止させてもよい。
【0057】
上述の実施形態のうちのいずれかは、単独でまたはスタック型配列および/もしくは束状配列の一部として、用いてもよい。これは、流体力学的分離器ユニット50/200が、例えば塔を作り出すような便利なスタック型技術を用いて、並列の平面的な仕方で配置された、複数の流体力学的分離器モジュールを含んでもよいことを意味する。同様に、同ユニットは、便利な束技術を用いていっしょに束にされた、多重のスタックまたは塔を含でもよい。
【0058】
図13A〜図13Eは、本開示の態様のスループットおよび分離容量を、どれほど拡大することができるかを図示する。例えば、図13Aは、上述の態様のうちのいずれかに従う従来のろ過の前に、未処理の海水を事前処理するのに用いることができる、単一の流体力学的分離器モジュールを表す。1つのこのようなモジュールは、1日当たり40,000ガロンの未処理の海水を処理することができると予想される。図11に示されるように、複数のモジュールは、平面的な関係においてスタック型に形成されて、図13Bに描写されるような塔を形成してもよい。図13Bでは、塔は、6つのモジュールを含む。この構成はただ単に典型的であるにすぎないが、しかしながら、多かれ少なかれ使用することができる。図13Aに示されるタイプの6つのモジュールを用いて、流体力学的事前処理分離器システムは、例えば、1日当たり240,000ガロンのスループットで洗浄することができる。図13Cは、単一の、密集した束状配列内に、図13Bに示されるタイプの4つの塔を位置決めする構成、すなわち、例えば台車または他の基部サポート上に保持または位置された、1MGDの流体力学的分離器ユニットの構成を検討する。このような配列では、例えば、各塔は、約2フィートの直径を有してもよい。この典型的な配列では、各塔は、6つのスタック型モジュールを含み、各モジュールは、1分当たり100リットルの流量スループットを有する。このことに基づいて、台車一式は、5フィート×5フィートだけの全設置面積で、1日当たり100万ガロン(MGD)のスループット容量を有する。最後に、図13Dは、16個のこのようなユニットまたは台車を含む集合体の概略図を提供し、したがって16MGDの洗浄容量を表すことになる。図13Eは、この上にさらに、32個のユニットを含み、32MGDの分離容量を有するものに拡大している。図13Eでは、未処理の海水41は、32個のユニットからなるシステムの両側にある注入口スクリーン42を流れる。次いでスクリーンを掛けられた海水は、流体力学的分離器ユニット50の中を循環し、同ユニットは、流出液流52および廃液流54を発生させて、流出液流および廃液流が両側から抜け出るようにする。一実施形態では、本明細書で開示された態様のうちのいずれかに従う、例えば、種々のポンプ、洗浄デバイス、機械設備、およびバルブを収容するための共通領域が含まれてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理の海水の供給源から生物有機部材を除去する海水事前処理システムであって、
未処理の海水を受ける少なくとも1つの注入口と、
前記未処理の海水から生物有機部材を除去するモジュールであって、処理された流出液を下流のろ過システムへ流すように、かつ廃液を除去するように動作する分岐した放出口へ導く湾曲構成を有する少なくとも1つの分離器モジュール、を含む非膜流体力学的分離器ユニットと、を含み、
前記事前処理された流出液流は、凝固剤および/または凝集剤を使用せずに、前記未処理の海水内に含まれる生物有機部材の量のうちの10%未満を含む、システム。
【請求項2】
前記システムは、凝固剤および凝集剤のうちの少なくとも1つの供給源をさらに含み、前記処理された流出液流は、1%未満の残留生物有機部材を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生物有機部材は、植物プランクトン、藻類、珪藻、海水有機体、およびTEPを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記分離器モジュールの湾曲構成は、前記湾曲構成の直径に沿った角距離のうち、180度と360度との間にわたる少なくとも1つの湾曲部分を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記流体力学的分離器ユニットは、前記モジュールが互いに並列であるように、かつすべての前記モジュールが前記注入口に有効に接続されるように、スタック型に形成された、複数の湾曲粒子分離モジュールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、陸上または沖合のろ過システム用の事前処理システムとして実装することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
海水ろ過システムの耐用年数を引き延ばす方法であって、
未処理の海水の供給源から生物有機体を除去する流体力学的事前処理分離システムを設けるステップと、
前記流体力学的事前処理分離システムの中で、前記未処理の海水を循環させて、流出液流および廃液流にするステップと、
前記流出液流を、前記流体力学的事前処理分離システムの下流にある前記海水ろ過システムへ流すステップと、
前記流出液流をろ過して、残存する廃液を除去するステップと、を含み、
前記流体力学的事前処理分離システムは、前記流出液を前記海水ろ過システムへ流す前に、前記未処理の海水内に混入した生物有機体のうちの少なくとも90%を除去し、
前記流体力学的事前処理分離システムは、
未処理の海水を受ける少なくとも1つの注入口と、
前記未処理の海水から生物有機部材を除去する分離器ユニットであって、前記流出液流および前記廃液流にするための分岐した放出口へ導く湾曲構成を有する少なくとも1つのモジュールを含む、非膜流体力学的分離器ユニットと、を含む、方法。
【請求項8】
前記流体力学的事前処理分離システムによって除去される微小有機体は、細胞破壊を受けず、損傷を受けず実用的な前記未処理の海水の供給源へ戻される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
海洋有機体が、従来の吸入口スクリーンに対して、流体の速度および力によって捕捉されるときに生じる衝突現象を最小化する機構であって、未処理の海水を受ける少なくとも1つの注入口と、流体力学に基づいて、未処理の海水から生物有機部材を除去する分離器ユニットであって、少なくとも1つのモジュールを含む非ろ過障壁流体力学的分離器ユニットとを含む、非ろ過流体力学的事前処理分離システムを含み、前記モジュールは、前記モジュール内部で海洋有機体を帯状に濃縮させる湾曲構成を有し、凝縮した海洋有機体は廃液流の一部として前記システムから除去され、それによって細胞破壊および有害な毒素の放出または前記未処理の海水の環境への副作用をなくす、機構。
【請求項10】
前記分離器ユニット内部の前記帯状は少なくとも流出液流を含み、前記流出液流は、前記分離器ユニットから除去されるときに、凝固剤および/または凝集剤を使用せずに、前記未処理の海水内に含有される生物有機部材の量のうちの10%未満を含有する、請求項9に記載の機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【公開番号】特開2012−130909(P2012−130909A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267393(P2011−267393)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】