説明

海洋構造物の調和設計方法及び海洋構造物の調和設計プログラム

【課題】特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる海洋構造物の調和設計方法及び海洋構造物の調和設計プログラムを提供すること。
【解決手段】目標設定手段31が海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいて目標を設定し、構想構築手段32が目標設定手段31で設定された目標に従って海洋構造物の構想を構築し、基本設計/基本特性分析手段33が、構想構築手段32で構築した構想に従って海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を定め、基本評価手段34が、基本設計/基本特性分析手段33で定めた基本仕様に従って目標に対する基本評価を行い、副次評価手段36が、基本設計/基本特性分析手段33で定めた少なくとも構想に基づいて目標に対する副次評価を行い、成立性評価手段35、37が、基本評価手段34による基本評価の結果及び/又は副次評価手段36による副次評価の結果に基づいて成立性評価を行い、成立性評価の結果に従って再検討を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋構造物の仕様決定を支援する海洋構造物の調和設計方法及び海洋構造物の調和設計プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、浮体式風力発電装置の設計において、風と波浪とによる繰り返し荷重の影響を精度よく見積もることができる設計方法が提案されている(特許文献1)。
また、水域に応じた波力等の外力が係留杭に作用する変化をシミュレーション計算する解析方法が提案されている(特許文献2)。
また、環境外乱変動や様々なオペレーション条件による浮体のダイナミクスの変動に対しても良好な制御性を得ることができる洋上プラットフォームの制御方法が提案されている(特許文献3)。
【0003】
また、産業活動において利用される物質が、環境汚染や人の健康被害をもたらす場合、被害を軽減するための対策を選択するため、対策の効果と費用のバランス解析を介してその妥当性を判断する判定システムが提案されている(特許文献4)。
また、構造物の使用条件や利活用目的に合った構想構築を行い、基本設計や基本特性分析を通じ、安全性等の基本的項目、経済性等の副次的項目の各面で最適な構造物の構想を合理的かつ迅速に抽出できる構造物の調和設計システムが提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−240785号公報
【特許文献2】特開2007−186106号公報
【特許文献3】特開2002−173086号公報
【特許文献4】特開2009−26282号公報
【特許文献5】特開2009−288938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、世界第6位/陸域の12倍の面積を有する我が国の排他的経済水域(EEZ)に賦在している膨大な未活用の空間及び自然エネルギーの利活用を推進するため、その基盤となる海洋構造物技術の確立が必要とされている。
特許文献5のシステムでは、構造物の使用条件と利活用目的が入力される目標設定部と、この目標設定部の設定に従って構造物の構想を構築する構想構築部と、この構想構築部の構想構築結果に従って構造物の基本設計や基本特性分析を行う設計・分析部と、この設計・分析部の基本設計結果や基本特性分析結果に応じて目標設定部で設定された構造物の使用条件に対する基本評価を行うための基本評価部や副次評価部を備えて構成されている。
【0006】
しかし、特許文献5では、海洋構造物特有の稼働時の影響を解決するものではなく、評価結果に対する再検討をシステム上行うものではない。
構造物が海洋構造物である場合には、一般の構造物と異なり、水深、波高、波周期、波向、風速、風向、海流速、流向などの自然環境の影響を稼働時に受け、これらの影響は海洋構造物の構造によっても影響度合いが異なってくるため、一般の構造物に適用する評価結果だけでは稼働時の影響に対する十分な設計支援を行うことができない。
従って、海洋構造物にあっては、基本設計や基本特性分析を行うだけでなく、稼働時の影響を考慮して動揺性能、位置保持性能、及び稼働性の評価を行い、構想構築を見直し、又は基本仕様の再検討を行わなければならない。
【0007】
そこで本発明は、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる海洋構造物の調和設計方法及び海洋構造物の調和設計プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明に対応した海洋構造物の調和設計方法においては、目標設定手段が、海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいて目標を設定するステップ、構想構築手段が、目標設定手段で設定された目標に従って海洋構造物の構想を構築するステップ、基本設計/基本特性分析手段が、構想構築手段で構築した構想に従って海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を定めるステップ、基本評価手段が、基本設計/基本特性分析手段で定めた基本仕様に従って目標に対する基本評価を行うステップ、副次評価手段が、基本設計/基本特性分析手段で定めた少なくとも構想に基づいて目標に対する副次評価を行うステップ、成立性評価手段が、基本評価手段による基本評価の結果及び/又は副次評価手段による副次評価の結果に基づいて成立性評価を行い、成立性評価の結果に従って再検討を判断するステップを有することを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、成立性評価の結果に従って再検討を判断するステップを有することで、例えば動揺性能、位置保持性能、又は稼働性などの稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の海洋構造物の調和設計方法において、総合評価手段が、成立性評価手段による成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うステップを更に有することを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うことができる。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の海洋構造物の調和設計方法において、基本評価手段における基本評価として、海洋構造物の波浪に対する安全性評価を含むことを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、波浪に対する安全性評価を基本評価に含むことで、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
請求項4記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の海洋構造物の調和設計方法において、副次評価手段における副次評価として、波浪に対する稼働性評価及び/又は海水中環境影響評価を含むことを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、波浪に対する稼働性評価及び/又は海水中環境影響評価を副次評価に含むことで、稼働時の自然環境の影響、また環境への影響を考慮した最適設計を行うことができる。
請求項5記載の本発明に対応した海洋構造物の調和設計プログラムにおいては、コンピュータに入力手段で入力された海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいた目標を読み込む目標設定ステップと、目標設定ステップで設定された目標に従って海洋構造物の構想を決定する構想構築ステップと、構想構築ステップで構築された構想に従って海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を決定する基本仕様構築ステップと、基本仕様構築ステップで定められた基本仕様に従って目標に対する基本評価を行う基本評価ステップと、構想構築ステップで構築された構想に基づいて目標に対する副次評価を行う副次評価ステップと、基本評価ステップにおける基本評価の結果及び/又は副次評価ステップにおける副次評価の結果に基づいて成立性評価を行う成立性評価ステップと、成立性評価ステップで評価を行った成立性評価の結果に従って再検討を判断する判断ステップと、少なくとも判断ステップの結果を出力手段に出力する出力ステップと、を実行させることを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、成立性評価ステップで評価を行った成立性評価の結果に従って再検討を判断する判断ステップを有することで、例えば動揺性能、位置保持性能、又は稼働性などの稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、コンピュータに、成立性評価ステップにおける成立性評価の結果に基づいて総合評価を行う総合評価ステップを更に実行させることを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うことができる。
請求項7記載の本発明は、請求項5又は請求項6に記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、基本評価ステップにおける基本評価が、海洋構造物の波浪に対する位置保持安全性評価であることを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、海洋構造物の波浪に対する位置保持安全性評価を基本評価とすることで、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
請求項8記載の本発明は、請求項7に記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、位置保持安全性評価を、係留計算及び/又はDPS性能評価に基づいて行うことを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
請求項9記載の本発明は、請求項7又は請求項8に記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、位置保持安全性評価の結果が判断ステップで否定された場合には、コンピュータに、構想構築ステップ又は基本仕様構築ステップを再実行させることを特徴とする。請求項9に記載の本発明によれば、構想構築ステップ又は基本仕様構築ステップを再実行させることで、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
請求項10記載の本発明は、請求項5又は請求項6に記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、副次評価では、波浪に対する動揺・稼働性評価を行うことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、副次評価では、波浪に対する動揺・稼働性評価を行うことで、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
請求項11記載の本発明は、請求項10に記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、動揺・稼働性評価の結果が判断ステップで否定された場合には、コンピュータに、基本仕様構築ステップを再実行させて、減揺手段の再抽出を行うことを特徴とする。請求項11に記載の本発明によれば、基本仕様構築ステップを再実行させることで、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
請求項12記載の本発明は、請求項5又は請求項6に記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、副次評価が経済性評価であり、海洋構造物の建造と運用を含めたライフサイクルコストを算出することを特徴とする。請求項12に記載の本発明によれば、海洋構造物の建造と運用を含めたライフサイクルコストを算出することで経済性を考慮した設計を行うことができる。
請求項13記載の本発明は、請求項5又は請求項6に記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、副次評価が、海洋構造物からの排水中物質の海水中影響評価であることを特徴とする。請求項13に記載の本発明によれば、排水中物質の海水中影響評価を含めることで環境を考慮した設計を行うことができる。
請求項14記載の本発明は、請求項5から請求項13のいずれかに記載の海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、目標設定ステップ、構想構築ステップ、基本仕様構築ステップ、基本評価ステップ、副次評価ステップ、及び成立性評価ステップの少なくとも一つのステップにおける結果及び/又は途中経過を出力手段で出力させることを特徴とする。請求項14に記載の本発明によれば、各ステップにおける状況を確認することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の海洋構造物の調和設計方法によれば、成立性評価の結果に従って再検討を判断するステップを有することで、例えば動揺性能、位置保持性能、又は稼働性などの稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
なお、総合評価手段が、成立性評価手段による成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うステップを更に有する場合には、成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うことができる。
また、基本評価手段における基本評価として、海洋構造物の波浪に対する安全性評価を含む場合には、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
また、副次評価手段における副次評価として、波浪に対する稼働性評価及び/又は海水中環境影響評価を含む場合には、稼働時の自然環境の影響、また環境への影響を考慮した最適設計を行うことができる。
本発明の海洋構造物の調和設計プログラムによれば、成立性評価ステップで評価を行った成立性評価の結果に従って再検討を判断する判断ステップを有することで、例えば動揺性能、位置保持性能、又は稼働性などの稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
なお、コンピュータに、成立性評価ステップにおける成立性評価の結果に基づいて総合評価を行う総合評価ステップを更に実行させる場合には、成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うことができる。
また、基本評価ステップにおける基本評価が、海洋構造物の波浪に対する位置保持安全性評価である場合には、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
また、位置保持安全性評価を、係留計算及び/又はDPS性能評価に基づいて行う場合には、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
また、コンピュータに、構想構築ステップ又は基本仕様構築ステップを再実行させる場合には、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
また、副次評価で、波浪に対する動揺・稼働性評価を行う場合には、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
また、コンピュータに、基本仕様構築ステップを再実行させて、減揺手段の再抽出を行う場合には、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
また、副次評価が経済性評価であり、海洋構造物の建造と運用を含めたライフサイクルコストを算出する場合には、経済性を考慮した設計を行うことができる。
また、副次評価が、海洋構造物からの排水中物質の海水中影響評価である場合には、環境を考慮した設計を行うことができる。
また、目標設定ステップ、構想構築ステップ、基本仕様構築ステップ、基本評価ステップ、副次評価ステップ、及び成立性評価ステップの少なくとも一つのステップにおける結果及び/又は途中経過を出力手段で出力させる場合には、各ステップにおける状況を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態による海洋構造物の調和設計方法を実現するためのブロック図
【図2】同実施形態による海洋構造物の調和設計方法のフローチャート
【図3】本発明の第2の実施形態による海洋構造物の調和設計方法を実現するためのブロック図
【図4】同実施形態による海洋構造物の調和設計方法のフローチャート
【図5】本発明の第3の実施形態による海洋構造物の調和設計方法を実現するためのブロック図
【図6】同実施形態による海洋構造物の調和設計方法のフローチャート
【図7】本発明の第1から第3の実施形態による位置保持性能評価方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図1及び図2を用いて本発明の第1の実施形態による海洋構造物の調和設計方法について説明する。
図1は本実施形態による海洋構造物の調和設計方法を実現するためのブロック図である。
入力手段11は、導入海域情報、活動計画情報、輸送手段情報などの使用条件や、利活用目的に関する情報を入力するためのハードウェア資源であり、例えばキーボード、マウス、テンキー、バーコードその他の二次元コードなどの入力装置、音声入力装置、撮像装置が用いられる。
【0012】
自然環境条件データーベース21には、所定範囲に区分された海域毎に、海域番号、水深(m)、離岸距離(km)、平均風速(m/s)、潮流速度(kt)、有義波高(m)や平均波周期(s)などの海洋及び気象条件データが蓄積されている。
鉱物資源等データーベース22には、所定範囲に区分された海域毎に、例えば、採鉱できる鉱物の種類や埋蔵予測量などの鉱物資源に関するデータが蓄積されている。なお、鉱物資源以外のデータとして、例えば生息魚類などの食料資源データや、風力や潮流などの発電資源データが蓄積されている。
【0013】
目標設定手段31では、海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいて目標を設定する。なお、設定される目標は、入力手段11により入力された使用条件及び利活用目的に関する情報を基に行われる。例えば、入力手段11で入力された導入海域情報を基に、自然環境条件データーベース21から、導入海域における水深や離岸距離データを抽出し、また鉱物資源等データーベース22から、導入海域における埋蔵予測量データを抽出し、稼働時における年間採掘量や採掘期間などの目標が設定される。
目標設定手段31で設定された目標データは、目標記憶手段12に記憶されるとともに、構想構築手段32における基礎データとして用いられる。
【0014】
構想構築手段32では、目標設定手段31で設定された目標に従って海洋構造物の構想を構築する。構想構築手段32における構想の構築にあたっては、上載機器データーベース23、シャトル船データーベース24、既存プラットフォームデーターベース25に蓄積されたデータを用いる。
上載機器データーベース23には、採鉱機仕様データ、揚鉱システム仕様データ、鉱物と海水分離システムデータなどの上載機器仕様データが蓄積されている。
シャトル船データーベース24には、長さ、幅、深さなどの船体データ、輸送可能量、速度、価格、燃費などのシャトル船データが蓄積されている。
既存プラットフォームデーターベース25には、長さ、幅、深さなどのプラットフォーム構造データ、重量、機器搭載可能量、価格などの既に標準規格化され、又は既に建造された既存プラットフォームデータが蓄積されている。
【0015】
従って例えば、構想構築手段32では、目標設定手段31で設定された目標に従って、既存プラットフォームデーターベース25から標準規格化された既存プラットフォームが抽出され、この既存プラットフォームに係るデータを基に、必要に応じて新たに建造されるプラットフォームに係る要素構造の形状や寸法を変更し、目標設定手段31で設定された目標に従って、上載機器データーベース23から上載機器を抽出し、抽出した上載機器のプラットフォームへの適合を判定することで、海洋構造物の構想が構築される。
【0016】
基本設計/基本特性分析手段33では、構想構築手段32で構築した構想に従って海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を定める。基本設計/基本特性分析手段33における海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析にあたっては、減揺システムデーターベース26及び係留システムデーターベース27に蓄積されたデータを用い、減揺方法や減揺システム、更にはライン係留方法を基本設計又は基本特性として仕様を決定する。
減揺システムデーターベース26には、各種の減揺方法や減揺システムのスペックデータが蓄積されている。
係留システムデーターベース27には、ライン係留に関するデータやダイナミックポジショニングシステム(以下DPSと称す)に関するデータが蓄積されている。ライン係留に関するデータとしては、鎖、ワイヤ、又は合成繊維索などの種類、太さ、破断荷重、単位長さ当たりの重量、錨の種類、最大荷重、及び価格などのデータがある。また、DPSに関するデータとしては、定格出力に関するデータの他、発生出力、馬力、使用電力、及び価格などのデータがある。
【0017】
基本評価手段34では、基本設計/基本特性分析手段33で定めた基本仕様に従って目標に対する基本評価を行う。基本評価手段34における基本評価にあたっては、動揺解析プログラム/データーベース41及び係留、DPS解析プログラム/データーベース42のプログラム及びデータを用いて、波浪に対する安全性評価として波浪中安全性評価や波浪中位置保持安全性評価を行う。
【0018】
第1の成立性評価手段35では、基本評価手段34による基本評価の結果に基づいて成立性評価を行い、この成立性評価の結果に従って再検討を判断する。第1の成立性評価手段35における成立性評価にあたっては、自然環境条件データーベース21の条件や目標記憶手段12の目標との対比を行う。
【0019】
副次評価手段36では、基本設計/基本特性分析手段33で定めた少なくとも構想に基づいて目標に対する副次評価を行う。副次評価手段36における副次評価にあたっては、稼働性算定ツール43、海水中、大気中環境影響評価ツール44、ライフサイクルコスト・経済性評価算定ツール45を用いて行う。
なお、副次評価手段36における副次評価として、波浪に対する稼働性評価及び/又は海水中環境影響評価を含む。
【0020】
第2の成立性評価手段37では、副次評価手段36による副次評価の結果に基づいて成立性評価を行い、この成立性評価の結果に従って再検討を判断する。第2の成立性評価手段37における成立性評価にあたっては、自然環境条件データーベース21の条件や目標記憶手段12の目標との対比を行う。
総合評価手段38では、第1の成立性評価手段35及び第2の成立性評価手段37による成立性評価の結果に基づいて総合評価を行う。
【0021】
第1の成立性評価手段35、第2の成立性評価手段37、及び総合評価手段38による評価結果は、出力手段13により表示される。
出力手段13では、第1の成立性評価手段35、第2の成立性評価手段37、及び総合評価手段38による途中経過や、目標設定手段31、構想構築手段32、基本設計/基本特性分析手段33、基本評価手段34、副次評価手段36における結果及び/又は途中経過を表示してもよい。出力手段13は、情報を出力するハードウェア資源であり、例えばモニターなどの表示装置の他に、プリンター等による出力手段であってもよい。
【0022】
本実施形態において、目標設定手段31、構想構築手段32、基本設計/基本特性分析手段33、基本評価手段34、第1の成立性評価手段35、副次評価手段36、第2の成立性評価手段37、及び総合評価手段38はソフトウェア資源である。また、本実施形態では、コンピュータを、目標設定手段31、構想構築手段32、基本設計/基本特性分析手段33、基本評価手段34、第1の成立性評価手段35、副次評価手段36、第2の成立性評価手段37、及び総合評価手段38として機能させるためのプログラムを備えている。なお、プログラムは磁気ディスク装置(Hard Disk)、光磁気ディスク装置、USBメモリなどのフラッシュメモリ装置、DVD、CDなどの光ディスク装置等公知の記憶媒体を利用して使用することができる。
【0023】
図2は同実施形態による海洋構造物の調和設計方法のフローチャートである。 まず、海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいた目標を読み込む目標設定ステップについて説明する。
入力手段11によって、導入海域情報が入力され(ステップ11)、活動計画情報が入力され(ステップ12)、輸送手段情報が入力され(ステップ13)、利活用目的情報が入力される(ステップ14)。
ここで、ステップ12で入力される活動計画情報とは、例えば、採鉱量/日、採鉱年数、自船貯鉱量などに関する情報であり、ステップ13で入力される輸送手段情報とは、例えばシャトル船を使用するか自船を使用するかに関する情報であり、ステップ14で入力される利活用目的情報とは、海洋構造物の使用条件を考慮した利用、活用目的をいい、資源採鉱、資源探索、自然エネルギー利用、その他利活用上必要な目的情報である。
【0024】
ステップ11で入力された導入海域情報を基に、自然環境条件データーベース21から該当する導入海域における自然環境条件データが抽出される(ステップ15)。
またステップ14で入力された利活用目的情報を基に、鉱物資源等データーベース22から該当する鉱物資源等データが抽出される(ステップ16)。
ステップ12で入力された活動計画情報、ステップ13で入力された輸送手段情報、ステップ15で抽出された自然環境条件データ、ステップ16で抽出された鉱物資源等データを基に、目標が設定される(ステップ17)。ここでの目標設定は、基本性能及び副次性能に関するデータとなる。
【0025】
次に、目標設定ステップで設定された目標に従って海洋構造物の構想を決定する構想構築ステップについて説明する。
ステップ17で設定された目標に従って、該当する設計海域条件データが抽出され(ステップ21)、候補となる上載機器データが抽出され(ステップ22)、候補となるシャトル船データが抽出され(ステップ23)、候補となる既存プラットフォームデータが抽出される(ステップ24)。
ここで、ステップ21における設計海域条件データの抽出は自然環境条件データーベース21から行われ、ステップ22における上載機器データの抽出は上載機器データーベース23から行われ、ステップ23におけるシャトル船データの抽出はシャトル船データーベース24から行われ、ステップ24における既存プラットフォームデータの抽出は既存プラットフォームデーターベース25から行われる。
【0026】
そして、ステップ21で抽出された設計海域条件データ、ステップ22で抽出された上載機器データ、ステップ23で抽出されたシャトル船データ、ステップ24で抽出された既存プラットフォームデータによってプラットフォーム構想が決定される(ステップ25)。
ステップ25におけるプラットフォーム構想の決定は、目標設定手段31で設定された目標に従って構想構築手段32によって行われる。
ステップ25においてプラットフォーム構想の決定がなされると、構想の判定が行われる(ステップ26)。構想判定の結果が否定的であれば、再度ステップ25においてプラットフォーム構想の決定がなされる。
【0027】
次に、構想構築ステップで構築された構想に従って海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を決定する基本仕様構築ステップについて説明する。
基本仕様構築ステップは、基本設計/基本特性分析手段33によって行われる。
減揺システムデーターベース26から減揺手段が抽出され(ステップ31)、係留システムデーターベース27から係留手段が抽出される(ステップ32)。
【0028】
波、風、及び海流等の影響による総合的な外力を複合外力として、ステップ31で抽出された減揺手段と、ステップ32で抽出された係留手段とを評価する(ステップ33)。ステップ33による評価に基づいて設計、特性の判定を行い(ステップ34)、ステップ34における判定結果が否定的であれば、ステップ31において再度減揺手段を抽出し、ステップ32において再度係留手段を抽出する。
ステップ34における判定結果が肯定的であれば、基本仕様として決定される(ステップ35)。
【0029】
次に、基本仕様構築ステップで定められた基本仕様に従って目標に対する基本評価を行う基本評価ステップについて説明する。
基本評価ステップは、基本評価手段34によって行われる。
ステップ35で決定された基本仕様について動揺性能の評価(波浪中安全性評価)を行う(ステップ41)。ステップ41における動揺性能の評価(波浪中安全性評価)は、導入海域で想定される海気象条件でどの程度揺れるかの評価であり、動揺解析プログラム/データーベース41のプログラム及びデータを用いて行われる。
【0030】
また、ステップ35で決定された基本仕様について位置保持性能の評価(波浪中位置保持安全性評価)を行う(ステップ42)。ステップ42における位置保持性能の評価(波浪中位置保持安全性評価)は、導入海域で想定される海気象条件で位置保持が可能か、目標位置からのずれは所要の範囲に収まるかの評価であり、係留、DPS解析プログラム/データーベース42のプログラム及びデータを用いて行われ、係留計算及び/又はDPS性能評価に基づいて行われる。
【0031】
次に、構想構築ステップで構築された構想に基づいて目標に対する副次評価を行う副次評価ステップについて説明する。
副次評価ステップは、副次評価手段36によって行われる。
ステップ35で決定された基本仕様について、(波浪中)稼働性の評価を行う(ステップ71)。ステップ71における(波浪中)稼働性の評価は、稼働限界条件(例えば揺れが5度以内)を考慮して年間稼働日数を評価するもので、稼働性算定ツール43を用いて行われる。
【0032】
また、ステップ35で決定された基本仕様について、(海水中)環境影響の評価を行う(ステップ72)。ステップ72における(海水中)環境影響の評価は、海水中、大気中環境影響評価ツール44を用いて行われる。
また、ステップ35で決定された基本仕様について、経済性の評価を行う(ステップ73)。ステップ73における経済性の評価は、ライフサイクルコスト・経済性評価算定ツール45を用いて行われ、海洋構造物の建造及び運用を含めたライフサイクルコストを算出する。
【0033】
次に、基本評価ステップにおける基本評価の結果に基づいて成立性評価を行う成立性評価ステップについて説明する。
成立性評価ステップは、第1の成立性評価手段35及び第2の成立性評価手段37によって行われる。
ステップ41における動揺性能の評価(波浪中安全性評価)、及びステップ42における位置保持性能の評価(波浪中位置保持安全性評価)の結果は、自然環境条件データーベース21の条件や目標記憶手段12の目標と対比される(ステップ51)。
【0034】
ステップ51における目標、条件との対比は、第1の成立性評価手段35によって行われる。
ステップ71における(波浪中)稼働性の評価、ステップ72における(海水中)環境影響の評価、及びステップ73における経済性の評価の結果は、自然環境条件データーベース21の条件や目標記憶手段12の目標と対比される(ステップ52)。
ステップ52における目標、条件との対比は、第2の成立性評価手段37によって行われる。
【0035】
次に、成立性評価ステップで評価を行った成立性評価の結果に従って再検討を判断する判断ステップについて説明する。
判断ステップは、第1の成立性評価手段35及び第2の成立性評価手段37によって行われる。
ステップ51における目標、条件との対比の結果、再検討の判断が行われる(ステップ61)。ステップ61における再検討は、ステップ41における動揺性能の評価(波浪中安全性評価)、及びステップ42における位置保持性能の評価(波浪中位置保持安全性評価)による構造要件の充足である。ステップ61における再検討は、第1の成立性評価手段35によって行われる。
ステップ61における再検討の判断が否定的であれば、構想構築ステップに戻ってステップ25におけるプラットフォーム構想の決定を再度行うか、又は基本仕様構築ステップに戻ってステップ31における減揺手段の抽出を再度行う。どのステップに戻すかは、目標との乖離度や目標達成のために対策の取り易さ等を考慮して決められる。
【0036】
ステップ52における目標、条件との対比の結果、再検討の判断が行われる(ステップ62)。ステップ62における再検討は、ステップ71における(波浪中)稼働性の評価、ステップ72における(海水中)環境影響の評価、及びステップ73における経済性の評価による稼働、環境、経済性の要件の充足である。ステップ62における再検討は、第2の成立性評価手段37によって行われる。
ステップ62における再検討の判断が否定的であれば、基本仕様構築ステップに戻ってステップ31における減揺手段の抽出を再度行う。
【0037】
そして、総合評価ステップとして、成立性評価ステップにおける成立性評価の結果に基づいて総合評価が行われる(ステップ81)。
また、図示はしないが、ステップ61における再検討の判断結果、ステップ62における再検討の判断結果、及びステップ81における総合評価の結果は、出力ステップとして出力手段13に出力する。
【0038】
なお、本実施形態における海洋構造物の調和設計プログラムにおいて、目標設定ステップ、構想構築ステップ、基本仕様構築ステップ、基本評価ステップ、副次評価ステップ、及び成立性評価ステップの少なくとも一つのステップにおける結果及び/又は途中経過を出力手段13で出力させることが好ましい。
本実施形態における海洋構造物の調和設計プログラムは、コンピュータに上記各ステップを実行させる。
【0039】
図3及び図4を用いて本発明の第2の実施形態による海洋構造物の調和設計方法について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成、同じフローには同一符号を付して説明を省略する。
図3は本実施形態による海洋構造物の調和設計方法を実現するためのブロック図、図4は同実施形態による海洋構造物の調和設計方法のフローチャートである。
本実施形態による海洋構造物の調和設計方法では、減揺方法や減揺システムを基本仕様とせず、基本評価を行う上で設定する。
従って、図3に示すように、基本評価手段34において、減揺システムデーターベース26のデータを用い、減揺システムを選定して基本評価を行う。
【0040】
すなわち、図4に示すように、ステップ35において基本仕様が決定されると、動揺計算を行い(ステップ43)、ステップ43で算出された動揺性があらかじめ設定された所定値と比較される(ステップ44)。ステップ44において、動揺性が所定値以上の場合には、減揺システムが選定され(ステップ45)、減揺システムのスペックが決定され(ステップ46)、ステップ43において再度動揺計算がなされる。ステップ44において、動揺性が所定値を下回る場合には、ステップ42における位置保持性能の評価(波浪中位置保持安全性評価)が行われる。
【0041】
図5及び図6を用いて本発明の第3の実施形態による海洋構造物の調和設計方法について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成、同じフローには同一符号を付して説明を省略する。
図5は本実施形態による海洋構造物の調和設計方法を実現するためのブロック図、図6は同実施形態による海洋構造物の調和設計方法のフローチャートである。
本実施形態による海洋構造物の調和設計方法では、減揺方法や減揺システムを基本仕様とせず、副次評価を行う上で設定する。
従って、図5に示すように、副次評価手段36において、減揺システムデーターベース26のデータを用い、減揺システムを選定して副次評価を行う。
【0042】
すなわち、図6に示すように、ステップ71において(波浪中)稼働性の評価がなされると、稼働性の判定を行い(ステップ74)、ステップ74での判定が否定的であれば、減揺システムが選定され(ステップ75)、減揺システムのスペックが決定され(ステップ76)、ステップ71において再度(波浪中)稼働性の評価がなされる。ステップ74において、判定が肯定的であれば、ステップ72における(海水中)環境影響の評価が行われる。
【0043】
図7は、本発明の第1から第3の実施形態による位置保持性能評価方法を示すフローチャートである。
第1から第3の実施形態によるステップ42における位置保持性能の評価(波浪中位置保持安全性評価)は、係留計算及び/又はDPS性能評価に基づいて行われる。
係留計算(ライン係留時系列計算)は、プラットフォーム基本仕様(長さ、幅、体積等)とステップ47aにおいて設定されているライン係留スペックに基づいて、自然環境条件データーベース21からの環境条件データと、ライン係留解析プログラム/データーベース42aのプログラム及びデータとを用いて行われる(ステップ48a)。
ステップ48aにおいて計算された結果、ライン係留の張力最大値が最小破断荷重(MBL)と比較され(ステップ49a)、ステップ49aにおいてライン係留の張力最大値が最小破断荷重(MBL)の半分(安全率)以上となる場合には、再度係留システムデーターベース27から新たなライン係留スペックを抽出し(ステップ47a)、ステップ48aにおいて係留計算(ライン係留時系列計算)が行われる。
【0044】
一方、DPS性能評価(位置保持限界計算)は、プラットフォーム基本仕様(長さ、幅、体積等)とステップ47bにおいて設定されているDPSスペックに基づいて、自然環境条件データーベース21からの環境条件データと、DPS解析プログラム/データーベース42bのプログラム及びデータとを用いて行われる(ステップ48b)。
ステップ48bにおいて計算された結果、位置保持性能が十分か否かが判断され(ステップ49b)、ステップ49bにおいて位置保持性能が不十分である場合には、再度係留システムデーターベース27から新たなDPSスペックを抽出し(ステップ47b)、ステップ48bにおいてDPS性能評価(位置保持限界計算)が行われる。
【0045】
以上のようにこれらの本実施形態によれば、目標設定手段31が海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいて目標を設定するステップ、構想構築手段32が目標設定手段31で設定された目標に従って海洋構造物の構想を構築するステップ、基本設計/基本特性分析手段33が、構想構築手段32で構築した構想に従って海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を定めるステップ、基本評価手段34が、基本設計/基本特性分析手段33で定めた基本仕様に従って目標に対する基本評価を行うステップ、副次評価手段36が、基本設計/基本特性分析手段33で定めた少なくとも構想に基づいて目標に対する副次評価を行うステップ、成立性評価手段35、37が、基本評価手段34による基本評価の結果及び/又は副次評価手段36による副次評価の結果に基づいて成立性評価を行い、成立性評価の結果に従って再検討を判断するステップを有することで、波浪や潮流など海洋構造物に独特の自然環境の影響下で稼働をする必要のある海洋構造物に於いて、例えば動揺性能、位置保持性能、又は稼働性などの稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
【0046】
また本実施形態によれば、総合評価手段が、成立性評価手段による成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うステップを更に有することで、成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うことができる。
また本実施形態によれば、基本評価手段34における基本評価として、海洋構造物の波浪に対する安全性評価を含むことで、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
また本実施形態によれば、副次評価手段36における副次評価として、波浪に対する稼働性評価及び/又は海水中環境影響評価を含むことで、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
【0047】
また本実施形態によれば、コンピュータに、入力手段11で入力された海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいた目標を読み込む目標設定ステップと、目標設定ステップで設定された目標に従って海洋構造物の構想を決定する構想構築ステップと、構想構築ステップで構築された構想に従って海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を決定する基本仕様構築ステップと、基本仕様構築ステップで定められた基本仕様に従って目標に対する基本評価を行う基本評価ステップと、構想構築ステップで構築された構想に基づいて目標に対する副次評価を行う副次評価ステップと、基本評価ステップにおける基本評価の結果及び/又は副次評価ステップにおける副次評価の結果に基づいて成立性評価を行う成立性評価ステップと、成立性評価ステップで評価を行った成立性評価の結果に従って再検討を判断する判断ステップと、少なくとも判断ステップの結果を出力手段に出力する出力ステップと、を実行させることで、例えば動揺性能、位置保持性能、又は稼働性などの稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
【0048】
また本実施形態によれば、コンピュータに、成立性評価ステップにおける成立性評価の結果に基づいて総合評価を行う総合評価ステップを更に実行させることができる。
また本実施形態によれば、基本評価ステップにおける基本評価が、海洋構造物の波浪に対する位置保持安全性評価であり、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
また本実施形態によれば、位置保持安全性評価を、係留計算及び/又はDPS性能評価に基づいて行うことで、稼働時の自然環境の影響を考慮した最適設計を行うことができる。
【0049】
また本実施形態によれば、位置保持安全性評価の結果が判断ステップで否定された場合には、コンピュータに、構想構築ステップ又は基本仕様構築ステップを再実行させることで、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
また本実施形態によれば、副次評価では、波浪に対する動揺・稼働性評価を行うことで、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
また本実施形態によれば、動揺・稼働性評価の結果が判断ステップで否定された場合には、コンピュータに、基本仕様構築ステップを再実行させて、減揺手段の再抽出を行うことで、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる。
【0050】
また本実施形態によれば、副次評価が経済性評価であり、海洋構造物の建造と運用を含めたライフサイクルコストを算出することで、経済性を考慮した設計を行うことができる。
また本実施形態によれば、副次評価が、海洋構造物からの排水中物質の海水中影響評価を含めることで、環境を考慮した設計を行うことができる。
また本実施形態によれば、目標設定ステップ、構想構築ステップ、基本仕様構築ステップ、基本評価ステップ、副次評価ステップ、及び成立性評価ステップの少なくとも一つのステップにおける結果及び/又は途中経過を出力手段13で出力させることで、各ステップにおける状況を確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、特に稼働時の影響を考慮して設計を行うことができる海洋構造物の調和設計方法及び海洋構造物の調和設計プログラムとして利用できる。
【符号の説明】
【0052】
11 入力手段
13 出力手段
31 目標設定手段
32 構想構築手段
33 基本設計/基本特性分析手段
34 基本評価手段
35 第1の成立性評価手段
36 副次評価手段
37 第2の成立性評価手段
38 総合評価手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標設定手段が、海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいて目標を設定するステップ、
構想構築手段が、前記目標設定手段で設定された前記目標に従って前記海洋構造物の構想を構築するステップ、
基本設計/基本特性分析手段が、前記構想構築手段で構築した前記構想に従って前記海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を定めるステップ、
基本評価手段が、前記基本設計/基本特性分析手段で定めた前記基本仕様に従って前記目標に対する基本評価を行うステップ、
副次評価手段が、前記基本設計/基本特性分析手段で定めた少なくとも前記構想に基づいて前記目標に対する副次評価を行うステップ、
成立性評価手段が、前記基本評価手段による前記基本評価の結果及び/又は前記副次評価手段による前記副次評価の結果に基づいて成立性評価を行い、前記成立性評価の結果に従って再検討を判断するステップ
を有することを特徴とする海洋構造物の調和設計方法。
【請求項2】
総合評価手段が、前記成立性評価手段による前記成立性評価の結果に基づいて総合評価を行うステップを更に有することを特徴とする請求項1に記載の海洋構造物の調和設計方法。
【請求項3】
前記基本評価手段における前記基本評価として、前記海洋構造物の波浪に対する安全性評価を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の海洋構造物の調和設計方法。
【請求項4】
前記副次評価手段における前記副次評価として、波浪に対する稼働性評価及び/又は海水中環境影響評価を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の海洋構造物の調和設計方法。
【請求項5】
コンピュータに
入力手段で入力された海洋構造物の使用条件と利活用目的に基づいた目標を読み込む目標設定ステップと、
前記目標設定ステップで設定された前記目標に従って前記海洋構造物の構想を決定する構想構築ステップと、
前記構想構築ステップで構築された前記構想に従って前記海洋構造物の基本設計及び/又は基本特性分析を行い、基本仕様を決定する基本仕様構築ステップと、
前記基本仕様構築ステップで定められた前記基本仕様に従って前記目標に対する基本評価を行う基本評価ステップと、
前記構想構築ステップで構築された前記構想に基づいて前記目標に対する副次評価を行う副次評価ステップと、
前記基本評価ステップにおける前記基本評価の結果及び/又は前記副次評価ステップにおける前記副次評価の結果に基づいて成立性評価を行う成立性評価ステップと、
前記成立性評価ステップで評価を行った前記成立性評価の結果に従って再検討を判断する判断ステップと、
少なくとも前記判断ステップの結果を出力手段に出力する出力ステップと、
を実行させることを特徴とする海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項6】
前記コンピュータに、前記成立性評価ステップにおける前記成立性評価の結果に基づいて総合評価を行う総合評価ステップを更に実行させることを特徴とする請求項5に記載の海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項7】
前記基本評価ステップにおける前記基本評価が、前記海洋構造物の波浪に対する位置保持安全性評価であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項8】
前記位置保持安全性評価を、係留計算及び/又はDPS性能評価に基づいて行うことを特徴とする請求項7に記載の海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項9】
前記位置保持安全性評価の結果が前記判断ステップで否定された場合には、前記コンピュータに、前記構想構築ステップ又は前記基本仕様構築ステップを再実行させることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項10】
前記副次評価では、波浪に対する動揺・稼働性評価を行うことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項11】
前記動揺・稼働性評価の結果が前記判断ステップで否定された場合には、前記コンピュータに、前記基本仕様構築ステップを再実行させて、減揺手段の再抽出を行うことを特徴とする請求項10に記載の海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項12】
前記副次評価が経済性評価であり、前記海洋構造物の建造と運用を含めたライフサイクルコストを算出することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項13】
前記副次評価が、前記海洋構造物からの排水中物質の海水中影響評価であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の海洋構造物の調和設計プログラム。
【請求項14】
前記目標設定ステップ、前記構想構築ステップ、前記基本仕様構築ステップ、前記基本評価ステップ、前記副次評価ステップ、及び前記成立性評価ステップの少なくとも一つのステップにおける結果及び/又は途中経過を前記出力手段で出力させることを特徴とする請求項5から請求項13のいずれかに記載の海洋構造物の調和設計プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−238032(P2011−238032A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109064(P2010−109064)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 日本船舶海洋工学会の主催の「平成21年秋季講演会」において、平成21年11月11日に文書をもって発表
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】