説明

海苔用処理水貯留装置

【課題】収穫した生海苔を板海苔として完成させるまでの間に用いられる海苔用処理水を海苔の劣化を防止することができる性質を有するものとして利用可能な状態に貯留することのできる海苔用処理水貯留装置を提供する。
【解決手段】減圧状態によって空気から窒素を吸着し酸素を残留させる合成ゼオライトを充填された濃縮塔を有する酸素濃縮装置4によって取り出される濃縮酸素を、貯留槽2内の水中にマイクロバブル状に噴出させ、貯水槽内に過飽和酸素水3を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した生海苔を板海苔に加工する際に用いる海苔用処理水を貯留する海苔用処理水貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、板海苔は収穫した生海苔を所定の大きさに細断し、海水若しくは塩分調整された水と共に貯留槽内に一端貯留し、続いて抄き水と共に全自動海苔製造装置の海苔簀上に抄製し、その後、脱水工程、乾燥工程、剥離工程を順に経ることにより全自動的に製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−321131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の全自動海苔製造装置の性能向上に伴い、生海苔を大量に収穫して貯留槽内い貯留するものであるために、早期に抄製に供される生海苔よりも遅く抄製に供される生海苔のつやが落ちる等の品質劣化が発生するという不都合があった。
【0005】
そこで、本発明は、収穫した生海苔を板海苔として完成させるまでの間に用いられる海苔用処理水を海苔の劣化を防止することができる性質を有するものとして利用可能な状態に貯留することのできる海苔用処理水貯留装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明の海苔用処理水貯留装置は、過飽和酸素水を貯留する貯留槽を有することを特徴とする。
【0007】
このようにして生成された過飽和酸素水を海苔用処理水として用いることにより、収穫した生海苔を板海苔として完成させるまでの間に用いられる海苔用処理水を海苔の劣化を防止することができる性質を有するものとすることができる。
【0008】
また、本発明の海苔用処理水貯留装置は、前記過飽和酸素水が、減圧状態によって空気から取り出された濃縮酸素を前記貯留槽内の水中にマイクロバブル状に噴出させることにより形成されることを特徴とする。
【0009】
これにより濃縮酸素を加圧状態にして生成することがないので、加圧状態にして濃縮酸素を生成する時に発熱するという不都合が防止されて、板海苔の劣化防止を効率よく行うことができる。
【0010】
また、本発明の海苔用処理水貯留装置は、前記濃縮酸素が、減圧状態によって空気から窒素を吸着し酸素を残留させる合成ゼオライトを充填された濃縮塔を有する酸素濃縮装置によって取り出されることを特徴とする。
【0011】
これにより濃縮酸素の生成時に発熱することがより確実に防止されて、板海苔の乾燥を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の海苔用処理水貯留装置は構成され、作用するものであるから、収穫した生海苔を板海苔として完成させるまでの間に用いられる海苔用処理水を海苔の劣化を防止することができる性質を有するものとすることができる等の優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明の海苔用処理水貯留装置を図1および図2により説明する。
【0014】
図1および図2は本発明の海苔用処理水貯留装置の1実施形態を示す。
【0015】
本実施形態の海苔用処理水貯留装置1は、過飽和酸素水3貯留する貯留槽2(本実施形態においては、2つの貯留槽2a、2b)と、空気から酸素を濃縮して取り出す酸素濃縮装置4と、この酸素濃縮装置4によって濃縮された酸素を貯留槽2内にマイクロバブルとして噴出させて過飽和酸素水3を産出させる酸素バブル発生装置5(本実施形態においては、2つの酸素バブル発生装置5a、5b)とを有している。
【0016】
更に説明すると、酸素濃縮装置4は公知の構成のものを利用することができ、本実施の形態においては、2塔の濃縮塔6、7を有しており、1塔ずつ交互に作動させて連続的に酸素を濃縮させるように形成されている。各濃縮塔6、7内には、減圧状態において空気中の窒素、二酸化炭素、水分等を吸着する合成ゼオライトが充填されている。各濃縮塔6、7の上流側(下端部)はそれぞれ流路8a、9aをもって吸気側電磁弁10の2つの出力ポート10a、10bに接続され、流路8b、9bをもって真空側電磁弁11の2つの入力ポート11a、11bに接続されている。吸気側電磁弁10の入力ポート10cからは空気が吸入されるようになっている。真空側電磁弁11の出力ポート11cは流路13を介して真空ポンプ12の吸気ポート12aに接続されている。真空ポンプ12の排気ポート12bからは各濃縮塔6、7内の気体が排気される。各濃縮塔6、7の下流側(上端部)はそれぞれ流路14、15をもって中間の流路ヘッダ16の2つの入力ポート16a、16bに逆止弁14a、15aを介して接続されている。流路ヘッダ16の1つの出力ポート16は逆止弁17aを介して流路17をもって酸素バブル発生装置5(5a、5b)側に送出される。流路17は途中を二またの流路18a、18bに分割されて酸素バブル発生装置5(5a、5b)の微細気泡発生ノズル25(25a、25b)の気体吸引ポート26a、26b(図2参照)に接続されている。
【0017】
酸素バブル発生装置5(5a、5b)は、ウオーターポンプ22(22a、22b)によって貯留槽2(2a、2b)内の水をストレーナ23(23a、23b)を通して吸い上げ、吐出路24(24a、24b)によって高圧水を貯留槽2(2a、2b)内に設置した微細気泡発生ノズル25(25a、25b)の水噴射ノズル27(27a、27b)より空気室28(28a、28b)内に噴出させるとともに先端部の噴射口板29(29a、29b)に穿設されている複数の微小孔(図示せず)より貯留槽2(2a、2b)内に噴出させるように形成されている。水噴射ノズル27(27a、27b)より空気室28(28a、28b)内に高圧水が噴出させられると、空気室28(28a、28b)内が負圧になるために、流路18a、18bより濃縮酸素が空気室28(28a、28b)内に仕切り弁20(20a、20b)を通して導かれる。濃縮酸素は、更に、高圧水によって細かく分断されて高圧水と一緒に噴射口板29(29a、29b)の数の微小孔より、マイクロバブル状にして貯留槽2(2a、2b)内に噴出されて、過飽和酸素水3を生成することになる。
【0018】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0019】
まず、酸素濃縮装置4による酸素の濃縮は濃縮塔6、7によって半サイクル異ならせることにより交互に行われる。
【0020】
例えば、一方の濃縮塔6による濃縮作用と他方の濃縮塔7による窒素排出作用の開始から説明する。
【0021】
先ず、酸素バブル発生装置5(5a、5b)のウオーターポンプ22(22a、22b)と真空ポンプ12とを同時に稼動させる。その後、ウオーターポンプ22(22a、22b)を稼働させた状態において、吸気側電磁弁10の一方の出力ポート10aを開とし、他方の出力ポート10bを閉とし、真空側電磁弁11の一方の入力ポート11aを閉とし、他方の出力ポート11bを開とする。
【0022】
<濃縮塔6による濃縮作用>
これにより酸素バブル発生装置5(5a、5b)の微細気泡発生ノズル25(25a、25b)の吸引力が連通している流路を通して吸気側電磁弁10の入力ポート10cに作用し、当該入力ポート10cより空気が吸引される。吸引された空気は、出力ポート10a、流路8aを順に通って濃縮塔6内に流入する。濃縮塔6内を微細気泡発生ノズル25(25a、25b)の吸引力によって吸引される間に、空気は空気内の窒素、二酸化炭素、水分等が合成ゼオライトに吸着され、酸素およびアルゴンが吸着されないで更に吸引されて濃縮状態となって濃縮塔6より外部に吸引して取出され、流路14,逆止弁14a、入力ポート16a、流路ヘッダ16,出力ポート16c、逆止弁17a、流路17、流路18a、18bを通して微細気泡発生ノズル25(25a、25b)内に吸引される。
【0023】
<濃縮塔7による窒素排出作用>
真空ポンプ12による吸引力が、入力ポート12a、流路13、真空側電磁弁11の出力ポート11c、入力ポート11b、流路9b、濃縮塔7、流路15を経て逆止弁15aに作用する。これにより逆止弁15aが全閉とされて、微細気泡発生ノズル25(25a、25b)の吸引力が他方の濃縮塔6に作用することが防止される。
【0024】
この状態で、真空ポンプ12の吸引力により濃縮塔7内の合成ゼオライトに吸着されている窒素、二酸化炭素、水分等を脱着して真空ポンプ12の排出ポート12bより外部に排出させ、濃縮塔7内を初期状態に復元し、次の濃縮工程の再開に備える。
【0025】
<濃縮塔6、7による作用の入れ替え>
濃縮塔6内の合成ゼオライトの充填量に対応する酸素濃縮能力を予め測定しておき、濃縮塔6内への空気供給量が当該酸素濃縮能力の上限に到達することを流量計若しくはタイマ(共に図示せず)によって検出し、吸気側電磁弁10の2つの出力ポート10a、10bの開閉状態を逆転させ、同時に真空側電磁弁11の2つの入力ポート11a、11bの開閉状態を逆転させる。即ち、出力ポート10aを閉、出力ポート10bを開、入力ポート11aを開、入力ポート11bを閉とさせる。これにより、微細気泡発生ノズル25(25a、25b)の吸引力が濃縮塔7に作用し、真空ポンプ12の吸引力が濃縮塔6に作用する。流路の接続具合の説明は省略する。よって、一方の濃縮塔6が内部の窒素排出作用を受け、他方の濃縮塔7が酸素濃縮作用を行う。
【0026】
この濃縮塔6、7による作用の入れ替えは、所定時間経過毎に自動的に行われることとなり、微細気泡発生ノズル25(25a、25b)からは常に継続して濃縮酸素が送り出されることとなり、真空ポンプ12からは常に継続して窒素等が排出されることとなる。
【0027】
酸素濃縮工程においては、濃縮塔6、7内が微細気泡発生ノズル25(25a、25b)の吸引力により負圧に保持されることにより、合成ゼオライトに水分が吸着されても相互の反応が抑えられるので、発熱することが確実に防止される。この発熱防止により、海苔処理水を低温状態に保持することができ、海苔の劣化防止の効率を上げることができる。
【0028】
次に、過飽和酸素水3の生成を説明する。
【0029】
前記のようにして微細気泡発生ノズル25(25a、25b)から出力ポート18a、流路19、仕切り弁20を通して継続的に供給される濃縮酸素は、酸素バブル発生装置5のウオーターポンプ22(22a、22b)を稼働させると、貯留槽2内の水がストレーナ23を通して吸い上げられ、続いて吐出路24(24a、24b)を通して水を貯留槽2内に設置した微細気泡発生ノズル25(25a、25b)より噴出させる。この際に、この微細気泡発生ノズル25(25a、25b)部分に流路17、18をもって濃縮酸素が導かれるので、濃縮酸素があたかも霧吹きされるようにマイクロバブル状にして貯留槽2内に噴出される。これにより過飽和酸素水3が生成されて貯留槽2内に貯留される。
【0030】
一方の貯留槽2a内に海水を充填し、他方の貯留槽2b内に真水を充填することにより、海水若しくは真水の過飽和酸素水3を海苔処理水の利用目的に応じて使い分けるとよい。
【0031】
このようにして生成された貯留槽2a内の海水の過飽和酸素水3中に収穫後、生海苔を浸漬させて保持したところ、10時間経過してもつやが落ちる等の品質の劣化が認められず、生海苔を高品質に維持できることがわかった。
【0032】
また、貯留槽2b内の真水の過飽和酸素水3を海苔の抄製用の抄き水として用いると、抄製時までも海苔の新鮮度を高く保持することができ、高品位の板海苔を生産することができる。
【0033】
また、海苔の抄製後の脱水工程において抄製された海苔に押しつけられて不要な水分を海苔より吸い取る脱水スポンジの洗浄水としてこの貯留槽2b内の真水の過飽和酸素水3を用いると、過飽和酸素水3の保有する殺菌作用によって脱水スポンジを殺菌しながら洗浄することができる。
【0034】
また、本実施形態に用いられている酸素濃縮装置4によっては、真空引きして取り出す窒素を濃縮状態にして貯留して、例えば、海苔網の冷凍網を生産する際に用いられる窒素ガスにとして利用するようにしてもよい。
【0035】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の海苔用処理水貯留装置の1実施形態を示す構成図
【図2】本発明の微細気泡発生ノズルの1実施形態を示す構成図
【符号の説明】
【0037】
1 海苔用処理水貯留装置
2 貯留槽
3 過飽和酸素水
4 酸素濃縮装置
5 酸素バブル発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過飽和酸素水を貯留する貯留槽を有することを特徴とする海苔用処理水貯留装置。
【請求項2】
前記過飽和酸素水は、減圧状態によって空気から取り出された濃縮酸素を前記貯留槽内の水中にマイクロバブル状に噴出させることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の海苔用処理水貯留装置。
【請求項3】
前記濃縮酸素は、減圧状態によって空気から窒素を吸着し酸素を残留させる合成ゼオライトを充填された濃縮塔を有する酸素濃縮装置によって取り出されることを特徴とする請求項2に記載の海苔用処理水貯留装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−22172(P2009−22172A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185831(P2007−185831)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【出願人】(300021002)株式会社森機械製作所 (7)
【Fターム(参考)】