説明

海藻抽出物およびグリセリンを含有する自己接着性ポリマーマトリックス

本発明は、水中に形成されるポリマー、好ましくはポリアクリル酸ポリマー、海藻抽出物および一価もしくは多価アルコールを含んで成る自己接着性マトリックスに関する。本発明のマトリックスは親水性もしくは疎水性物質でドープすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中でゲル−形成性であるポリマー、好ましくはポリアクリル酸ポリマー、水、海藻抽出物および一価もしくは多価アルコールから成る自己接着性ポリマーマトリックスに関する。マトリックスは親水性あるいはまた疎水性活性物質でドープすることができる。
【背景技術】
【0002】
皮膚中に製薬学的物質を投与するためのパッチの作用機構は経皮的治療システム(TTS)のものに類似の機能的原理に従う。活性物質を皮膚中へそして/もしくは皮膚をとおって配送するための経皮的治療システムは以前から知られており、とりわけ薬剤でドープされるパッチ様システムを形成する。
【0003】
活性物質のパッチシステムを介する薬剤の局所投与は2種の主要な利点を提供する:
・第1にこの投与形態は活性物質の一次的放出動力学をもたらし、それにより非常に長期にわたり身体中に活性物質の一定量を維持させる。
・第2に、皮膚をとおる取り込み経路が胃腸管および更に肝臓を通る一次的経路を回避する。その結果、選択される薬剤が低用量で有効に投与され得る。これは薬剤が局所的に作用して全身効果を回避しなければならないことが所望される時に特に有利である。これは例えばリウマチ性関節疾患もしくは筋肉炎症の処置の場合である。
【0004】
物質、例えばTTSからの薬剤の時間依存的放出はそのTTS/皮膚分配係数並びにTTSおよび皮膚の領域中へのその拡散に応じて起る。双方の因子はマトリックスの組成により決定され、それにより単位時間当たりに放出される量および作用期間に直接影響を与えることができる。通常、親水コロイド、可溶化剤および促進剤がこの目的に使用され、それにより改善された溶解度および拡散並びに更に、TTSから皮膚中への物質のより急速な通過を可能にする。理想的には一次的放出動力学が達成され、それにより単位時間当たり等量の放出を可能にする。
【0005】
技術文献中に詳細に説明されてきたこのような経皮的システムの1態様は、薬剤が感圧性接着剤中に直接取り込まれるマトリックスシステムもしくはモノリスシステムの態様である。即座に適用可能な製品中では、活性物質を含んで成るこの種の感圧性接着性マトリックスには片面に活性物質のための閉鎖する裏材料が付けられ、他方反対側には、皮膚への適用前に外される剥離層が付いた裏フィルムが存在する(非特許文献1参照)。
【0006】
TTSの前記の特性は頻繁に反復される投与の必要性を回避し、高濃度の活性物質による皮膚への負担を回避し、その結果、液体および半固体の投与形態の反復投与の場合には不可避の皮膚に対する刺激を減少させる。しかしながら、TTS適用経過中に望ましくない効果が起る場合は、TTSを取外すことにより更なる負担を即座に停止することができる。
【0007】
要約すると、TTSの利点は簡単で早急な投与および経皮的治療システムの長期持続性効果に帰する、使用者側に対する極めて改善されたコンプライアンスに存する。TTSの1つの基本的な条件は活性物質の意図された投与の全期間にわたり維持されなければならない皮膚への有効な接着性であり、もう1つの条件は残留物を残さずに取り外せるTTSの能力である。長期間の装着後の活性物質パッチの痛みを伴う剥離がしばしば認められる。溶液中で裏材料上に被覆される接着剤のみならずまた、使用される接着剤もまた、ホットメルト接着剤のような溶媒非含有システムを含む。これらの接着剤の特徴は、それらの
被覆の過程中に、有機溶媒および分散媒質の使用を先行させることができる事である。ホットメルト接着剤は加熱により液体形態に転化され、それによりそれぞれのパッチ裏材料に溶融物として適用される。溶媒処理のような技術的な観点のみならずまた、抗爆発手段および環境保護の拘束、医学的理由を伴うプラントの設計は同様に、溶媒非含有接着剤の選択に役目を果たす。経皮的治療システムは概括的に健康で正常な皮膚に適用される。ここではとりわけ薬剤製品により皮膚を損傷することはおろか、刺激しないことが特に重要である。1つの頻繁に観察される副作用は皮膚刺激の出現であり、これはとりわけTTSが長期間もしくは反復して身体の同一領域に適用されるときに出現する。この種の刺激は主として感圧性接着性マトリックスの成分により誘起される。溶媒を含有するシステムの場合には、溶媒の抽出後に、残留量を回収することができ、それはそのアレルギー誘発の可能性に基づくと、同様に望ましくない皮膚刺激を誘起する可能性がある。従って、皮膚への適用のためにはその調製物がとりわけ皮膚に優しい成分を含む、溶媒非含有システムがなかんずく好ましい。
【0008】
活性のある製薬学的そして/もしくは美容的物質を投与するための自己接着性マトリックスシステムはアジア、特に日本における伝統的な適用物の中にあり、日本薬局方中の「パップ」の用語の下に定義されている。従って、パップは一般に、精油の添加を伴って、グリセリン、水もしくはその他の適切な液体を微細粉末化された活性物質と混合することにより調製される。
【0009】
グリセリンはここでは、使用中にパップが早期に乾燥することを防止するための湿潤剤として働く。
【0010】
伝統的なアジアの調製物中には、アルミナ、等のような天然の増粘剤が使用されるが、最近数十年は、それらの製造のための例えばゲル形成剤としてポリアクリル酸のような近代的合成原料の使用がますます見られるようになってきた。これは一般にネバネバするパップが、改善された魅力および使用者に対する優しさをもつヒドロゲルマトリックスとして製造されることを可能にする。特許文献1は最低70%の光線透過率をもつ、裏材料もしくはライナーを伴わない美容的使用のための水性ゲルシステムにつき記載している(特許文献1参照)。特許文献2はリドカインを含有するパップにつき記載している(特許文献2参照)。
【0011】
記載されたパップの欠点は基材マトリックスの製造がゲル形成剤、増粘剤、可塑剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、pH調整剤、抗酸化剤、等のような多数の異なる個別の成分および活性物質のパップの場合には恐らくは更に可溶化剤および浸透促進剤を必要とする点である。このようなマトリックスの接着能および一貫性は個別の成分すべての相互作用の関数であるので、これらの基礎的な製品の条件に関する目標の製品の開発/最適化はそれに対応して時間消費的で、困難である。
【0012】
ポリアクリレートからのポリマーマトリックス、特にゲルマトリックスの製造も同様に、長年知られており、例えば特許文献2、3および4に記載されている(特許文献2、3および4参照)。ゲルマトリックスはなかでも、経皮的システムにおける接着剤の基剤としてそして活性物質の貯蔵所として使用される。このようなシステムは特に湿った皮膚(口内パッチ)に適切な接着力を有するが、不適切な粘着力のために、必要な時に再度完全に取り外すことができない。
【0013】
規定の構造をもつゲルを形成するためにはポリアクリル酸が架橋されることが必要である。架橋剤の性質は生成されるゲルの構造に重要な寄与を与える。通常の架橋剤は金属イオン(例えば、Al3+イオン)もしくは有機化合物であることができる。アルミナム塩による架橋はAl3+イオンに対するポリアクリル酸の酸素官能基の配位により進行する
。高い粘度をもつ非常に緊密な網目をもつゲルが形成され、そこでゲルの粘度は架橋剤の量によってのみ制御することができる(非特許文献2参照)。
【0014】
特許文献3は架橋剤としてAl3+化合物を使用するポリアクリル酸−基剤のゲルにつき開示している。使用が制限されないとゲルの物理的特性が損なわれるので、架橋剤としての必須のアルミニウム化合物の使用は制限される。アルミニウム架橋剤の割合が高すぎると、ゲルは固くなりすぎる。
【0015】
多価金属イオンとの架橋の更なる例が文献、例えば特許文献5(亜鉛塩)、6もしくは7(チタン化合物)から知られる(特許文献5、6および7参照)。金属イオンとのイオン性架橋は低い粘性をもつ固い、粘性のポリマーゲルをもたらす(非特許文献2参照)。
【0016】
特許文献8は水溶性ポリマーを基剤にしたモノリスゲルマトリックスを含むパッチを開示している(特許文献8参照)。必須成分は活性物質としてのクレボプリド(clebopride)もしくは製薬学的に許容できるそれらの塩、水、水吸収剤および水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーとして、当業者は一連の知られたポリマー(例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリアクリル酸、ナトリウムポリアクリレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゴムおよびその他の架橋可能なポリマーおよび更にそれらの混合物)から選択することができる。
【0017】
特許文献9は水相中で親水的にゲル化し、ゲランゴムおよび少なくとも1種の更なる親水コロイドから形成されるシステムから成るマトリックスを含んで成るパッチにつき記載している(特許文献9参照)。ゲランゴムは必須として要求される。ゲランゴムは専門辞書(technical dictionary)により定義されるように当業者により、次の海洋性植物:アガルドヒエラ・テネラ(Agardhiella tenera)、フルセラリア・ファスチギアタア(Furcellaria fastigiata)、ヒプネア・セルビコルニス(Hypnea cervicornis)、ムシフォルミス(muscihormis)、スピシレラ(spicifera)、スーリア・ビタタ(Suhria vitata)から得られる親水コロイドを含んで成るものと理解される。その用語は海藻抽出物を包含しない。また、自己接着性、接着強度の調節可能性および生成するマトリックスの弾性の本質的なアスペクトのどんな言及もない。
【0018】
自己接着性マトリックスもしくはゲルを形成するためのポリアクリル酸の架橋に伴う更なる問題は、規定された物理的特性、粘度、粘着性、等を有する、一旦製造されたマトリックスは、その後の製造操作において同一の規定された特性をもたねばならないことである。この再現性は現在知られている架橋技術により実現不可能ではないにしても困難である。
【特許文献1】欧州特許第1 136 057号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 507 160号明細書
【特許文献3】特開平11−228340号公報
【特許文献4】特開平04−178323号公報
【特許文献5】米国特許第3900610号明細書
【特許文献6】米国特許第3770780号明細書
【特許文献7】米国特許第3790533号明細書
【特許文献8】欧州特許第303445号明細書
【特許文献9】欧州特許第976382号明細書
【非特許文献1】Kleben&Dichten,No42,1992,pp.26〜30
【非特許文献2】Handbok of Pressure Sensitive Technology(感圧性工学ハンドブック),page 458ff,1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、幾つかの成分を伴い、規定された一貫性および接着力のマトリックスを制御された方法で製造させるパップ/ヒドロゲルのための簡単なポリマーマトリックスシステムを開発することが本発明の目的である。水溶性もしくは疎水性活性物質がそこに取り入れられ、制御された方法で皮膚に配送され得るポリマーマトリックスを提供することが本発明の更なる目的である。本発明の更にもう1つの目的は前記のポリマーマトリックスを含んで成り、TTSとして使用することができるパッチを提供することである。これらの目的は請求項1に従うポリマーマトリックスにより、そしてそれぞれ請求項16に従うパッチにより達成される。副請求項はマトリックスの好ましい態様を開示する。本発明は更に、ポリマーマトリックスの使用を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
水中でゲルを形成するポリマーを含んで成る、好ましくは少なくとも1種のポリアクリル酸ポリマー、水、海藻抽出物およびアルコールを含んで成る自己接着性ポリマーマトリックスが目的の複合物を達成することは驚くべきことで、当業者にとって極めて驚嘆すべきことであった。
【0021】
マトリックスは接着力決定成分として水中でゲル、好ましくはポリアクリル酸ゲルを形成するポリマーから成る。海藻抽出物は好ましくは、寒天である。アルコールとしてはとりわけ、一価もしくは多価アルコール、好ましくは一貫性の因子として働くグリセリン、が使用される。個々の成分はパップもしくはヒドロゲル製造のための使用に対して知られている事実にもかかわらず、例えば特にポリアクリル酸マトリックスの一貫性の因子としてグリセリンと併せて寒天を使用することは今日まで知られていなかった。
【0022】
パップ/ヒドロゲルのようなポリマーマトリックス中の海藻抽出物の画分の増加はマトリックスの強度を増加する。しかし、それはまた、剛性(stiffness)を増加し、粘着性(tack)を減少する。この欠点はアルコール、特にグリセリンを添加することにより代償することができる。従って、海藻抽出物の一定の画分と併せて生成されるポリマーマトリックスにおける所望の弾性(elasticity)を設定することが可能である。
【0023】
従って、ゲルマトリックスにおける所望の弾性を確保するために、海藻抽出物と一価もしくは多価アルコール、好ましくはグリセリンの相乗的組み合わせが明白になった。一貫性の因子としてのその使用の根拠は、とりわけ広く知られたゼラチンおよびその他の一貫性の因子に比較して海藻抽出物が例えば、グリセリンもしくはプロパンジオールのようなアルコールとの組合わせにおいてゲル化を誘発しないことである。グリセリンもしくはプロパンジオールのような、本発明に従う一価もしくは多価アルコールは水中に均一に分散されるが、海藻抽出物とゲルを形成しないので、この種のアルコールはマトリックスに対する弾性因子として働く。
【0024】
寒天以外の、その使用が好ましい海藻抽出物はカラゲーナンである。カラゲーナンは熱水抽出、その後の凍結およびその後の洗浄により様々な紅藻、主としてコンドルス・クリスプス(Chondrus crispus)から得られる高分子量の親水性多糖類である。カラゲーナンの構造は主として、硫酸塩および非硫酸塩形態双方のガラクトースおよび3,6−アンヒドロガラクトースの反復単位から成る。カッパ、イオタおよびラムダカラゲーナン間の主要な相異は反復ガラクトース単位上の硫酸エステル基の数および位置である。カラゲーナンのゲル化はカチオンの存在下でのみ可能である。本発明に従うと、カ
ルシウムイオン(カッパおよびイオタ)、カリウムイオンおよびアンモニウムイオン(カッパのみ)の存在下でゲルを形成するカッパカラゲーナンおよびイオタカラゲーナンが好ましい。本発明のゲルマトリックスシステム製造のために同様に使用されるポリアクリル酸は安定なゲルを形成するためには中和されなければならないので、対応するカチオン水酸化物の使用が特に有利である。カラゲーナンは例えば、Gelcarin、ViscarinおよびSeaspenの名称でLehmann&Voss&Co.から工業的に入手可能である。
【0025】
本発明に従って特に好ましい寒天のような海藻抽出物は熱水抽出、その後の凍結およびその後の洗浄により紅藻網クラス(Rhodophyceae class)の様々な海洋藻から得られるゲル化アガロースおよび、非ゲル化アガロペクチンから成る多糖類構造の親水性コロイドである。寒天は例えば、Riedel de Haen AGから工業的に入手できる。
【0026】
抽出物、特に寒天もしくはカラゲーナンは好ましくは、0.1%〜15重量%の量、より好ましくは、0.5%〜5重量%の間で使用される。本明細書の百分率はすべて、別記されない限りポリマーマトリックスの重量画分に基づく。
【0027】
例えばグリセリン(1,2,3−プロパントリオール)のような一価もしくは多価アルコールはとりわけ可溶化剤もしくは湿潤剤として、広く使用されてきた製薬工業補助剤である。例えばグリセリンのような一価もしくは多価アルコールは1%〜85重量%の量で、より好ましくは5%〜45重量%の間で発明的に好ましく使用される。マトリックス中に例えばポリアクリル酸ゲルのようなゲルを水中で形成するポリマーの画分が接着性を支配する。寒天と対照的に、ポリアクリル酸は水およびアルコール双方とゲルを形成し、そのためポリアクリル酸の画分により設定された接着性が特定のアルコール画分と独立して一定に留まる。
【0028】
本発明に従って有利なポリアクリレートはアクリレート−アルキルアクリレート・コポリマー、特にカーボマーもしくはカーボポールと呼ばれる群から選択されるものである(Carbopol(R)はB.F.Goodrich Companyの登録商標である)。とりわけ、本発明に従って有利な1もしくは複数のアクリレート−アルキルアクリレート・コポリマーは下記の構造:
【0029】
【化1】

を特徴としてもつ。この構造においてR’はアルキル基、とりわけ長鎖アルキル基であり、xおよびyはそれぞれのコモノマーのそれぞれの化学量論的画分を表わす数である。
【0030】
本発明に従って特に好ましいアクリレート・コポリマーおよび/もしくはアクリレート−アルキルアクリレート・コポリマーは商品名Carbopol(R)1382、Carbopol(R)981およびCarbopol(R)5984としてB.F.Goodrich Companyから入手できるもの、好ましくはタイプ980、981、1382、2984および5984のCarbopolの群からのポリアクリレート、そして
より好ましくはカーボマー2001である。C10−30アルキルアクリレートと、蔗糖のアリルエーテルもしくはペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋されたアクリル酸、メタクリル酸もしくはそれらのエステルの1もしくは複数のモノマーとのコポリマーにより更に利点がもたれる。
【0031】
水中でゲルを形成するポリマー、特にポリアクリル酸および/もしくはそれらのコポリマーは好ましくは2重量%〜55重量%の量で、もしくは好ましくは5重量%〜30重量%の間で使用される。
【0032】
ポリマーマトリックスは有機溶媒を使用せずに、好ましくは40〜95℃で、標準の市販混合物/配合物中で、もしくは適当な押し出し機中で連続的に調製される。
【0033】
水中でゲルを形成する更なる適当なポリマーはとりわけバオバブ粉末である。
【0034】
このように、出発物質として水、水中でゲルを形成するポリマー、海藻抽出物および一価もしくは多価アルコールのみを使用して、パッチ、TTS、パップもしくはパッドとしての製造および使用のための基剤として、目標とする方法で、柔軟で、滑らかで、自己接着性のヒドロゲルマトリックスを製造することができる。
【0035】
特定の性能特性を得るためにポリマーマトリックスは、それらを添加することは必須ではないが、適当な可塑化剤、可溶化剤、浸透促進剤、中和剤(例えば、トロメタモール(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)、トリエタノールアミン(2,2’,2”−ニトリロトリエタノール)もしくはNaOH)、充填剤および/またはその他の知られた添加剤と混合されることができる。
【0036】
従って、ゲルマトリックスは創傷の治癒もしくは皮膚の手入れのための親水性の活性物質あるいはまた適当な可溶化剤を与えられて疎水性活性物質でドープすることができる。疎水性活性物質の取り込みの場合には、カプセル封入のためにシクロデキストリンを使用することが有益かもしれない。
【0037】
シクロデキストリン(シクロアミロース、シクログルカン)それ自体は化粧品および薬学的調製物中に知られている。水性溶媒中のシクロデキストリンの存在下での低い溶解度の物質の溶解度の改善は個々の物質に対して説明された。シクロデキストリン種とのゲストとも呼ばれる物質の化合物の包含化合物−これに関しては1:1もしくは1:2の双方の複合物と他のモル比率をもつ複合物(ゲスト:シクロデキストリン)が可能である−およびそれらの物理的混合物の双方が利点を有することができる。シクロデキストリンはα−1,4−結合グルコース単位から成る環状オリゴ糖類である。概括的に、6〜8のグルコース単位(α−、β−、もしくはγ−シクロデキストリン)が相互に結合している。シクロデキストリンはデンプンをバチルス・マセランス(Bacillus macerans)により作用される時に得られる。それらは疎水性の内側および親水性の外側を有する。それらの構造のおかげで、シクロデキストリンおよびそれらの誘導体は包接化合物を形成することができる。それらは活性物質の「分子封入」に適する(例えば、化粧品および薬学的調製物中の敏感な分子の周囲の保護封入物として)。これらの適用はまた、一連の特許(例えば、国際公開第98/55148号パンフレット、欧州特許第0 579 435号、第0 392 608号明細書)中に記載されている。しかし、これらの刊行物には通常、唯一の活性物質がシクロデキストリン(誘導体)により複合化されている。多成分包接化合物は実際欧州特許第0 756 493号明細書に記載されているが、より詳細に検討すると、後者は塩に関連し、酸および塩基の2成分混合物には関連しない。
【0038】
用語「シクロデキストリンおよび/もしくはその誘導体」は下記の、環分子中に異なる
数のグルコース単位を有するシクロデキストリンおよびこれらの化合物の誘導体双方を表わす。
【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

本発明に従うと、1もしくは複数のシクロデキストリンは好ましくは、0.0005重量%〜20.0重量%、とりわけ0.01重量%〜10重量%、そしてより好ましくは0.1重量%〜5.0重量%の濃度で化粧品もしくは皮膚科学的組成物中に使用される。
【0042】
天然のシクロデキストリンまたは極性および/もしくは非極性置換基をもつシクロデキストリンを使用することは本発明に従って有利である。これらに限られるものではないが、これらには好ましくは、例えばメチル−、特にランダム−メチル−β−シクロデキストリン、エチル−および更にヒドロキシプロピル−シクロデキストリン(例えばHP−β−シクロデキストリンもしくはHP−γ−シクロデキストリン)が含まれる。本発明に従って特に好ましいシクロデキストリン種はγ−シクロデキストリンおよび更にヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである。
【0043】
更なる先行技術は以下の刊行物に含まれる:
K.Uekama et al.,Chemical Revies,1998,98,2045−2076,”Cyclodextrin drug carrier systems(シクロデキストリン薬剤担体システム)”、
T,Loftsson,Int.J.Dermatology,1998,37,241−246,”Cyclodextrins:new drug delivery systems in dermatology(シクロデキストリン:皮膚科学における新規薬剤配送システム)”、
J.Zatz et al.Cosmetics & Toiletries,1997,112,July,p.39ff,”Applications of cyclodextrins in skin products(皮膚製品中のシクロデキストリンの適用)”、
U.Citernesi,Cosmetics & Toiletries,1995,110,March,p.53ff,Cyclodextrins in funct
ional dermacosmetics(機能的皮膚化粧品中のシクロデキストリン)。
【0044】
本発明に使用されるシクロデキストリンおよび/もしくはシクロデキストリン−ゲスト包接化合物および/もしくはシクロデキストリン物質混合物はポリマーマトリックス中に問題なく取り入れることができる。
【0045】
本発明に従って特に好ましい1態様において、ポリマーマトリックスもしくはゲルマトリックスは0〜35重量%、好ましくは0〜15重量%の量の、皮膚への/皮膚中への制御された局所的もしくは全身的配送のための活性薬学的物質を含んで成る。
【0046】
使用することができる活性物質の例には精油が含まれる。精油により、天然の原料として主として香料および食品産業に使用され、多少とも揮発性化合物から成る植物由来の濃厚物を意味する。これらの化合物のうちで言及することができる例には1,8−シネオール、リモネン、メントール、ボルネオールおよびカンファーが含まれる。「精油」の用語はしばしば、植物中に未だ存在する揮発性成分に対して使用される。しかし、それらの真の意味では、精油は植物原料から水蒸気蒸留により調製される揮発性化合物の混合物であると理解される。
【0047】
精油は専ら、それらの沸点が一般的に150〜300℃の間にある揮発性成分から成る。それらには主として炭化水素もしくは単官能性化合物(例えばアルデヒド、アルコール、エステル、エーテルおよびケトン)が含まれる。親となる化合物はモノ−およびセスキテルペン、フェニルプロパン誘導体およびより長鎖の脂肪族化合物である。幾つかの精油において1成分が主要であり(例えば、クローブ油中85%を超えるオイゲノール)、他方他の精油は個々の成分の複合混合物を構成する。感覚刺激性の(organoleptic)特性はしばしば、主成分によってではなく、例えばガルバヌム油中の1,3,5−ウンデカトリエンおよびピラジンによるような補助的もしくは痕跡成分により決定される。商業的に重要な多数の精油中に同定された成分の数は何百にものぼる。非常に多数の成分がキラルであり、ここで非常にしばしば、例えばペパーミント油中の(−)−メントールもしくはラベンダー油中の(−)−リナリルアセテートのように、1鏡像異性体が主であるかもしくは独占的に存在する。
【0048】
挙げることができる好ましい精油にはユーカリ油、コショウ様ハッカ油、樟脳油、ローズマリー油、タイム油、シベリアマツ油および野生マツ油およびテルペン1,8−シネオールおよびレボメタノールが含まれる。
【0049】
挙げることができる更なる精油には白モミ油、アニス油、橙の花油、バルガルモット油(oleum bargarmottae)、キンセンカ煎じ油、樟脳油、丁子油、カミツレ油、シナモンセロリ油、カンキツ油、シトロネラ油、イタリアイトスギ油、シンボポゴニス油(oleum cymbopogonis)、肝油、ラベンダー油、ニクズク花油、マジョラナ油(oleum majoranae),メラルーサの若木油、メリッサ油、野生ハッカ油、コショウ様ハッカ油、ノコギリソウ油、ミルラ油、ギンバイカ油、オレガノ油、シベリアマツ油、野生マツ油、サルビア油、ビャクダン油、精留テレビンチナ油、タイム油、吉草油、ショウガ油および/もしくは茶ノ木油が含まれる。
【0050】
ペパーミント油は様々な種類のペパーミントの葉および花並びに更に時々は野生のハッカから水蒸気蒸留により得られる精油である。
【0051】
柑橘油は、しばしばアルグメン油とも呼ばれる、柑橘類(ベルガモット、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、オレンジ、レモン)の皮から得られる精油である。柑橘油は
大部分、モノテルペン炭化水素、主としてリモネン(例外:ベルガモット油は約40%のみを含有する)から成る。
【0052】
メントールは例えば、軽い火傷の結果としての皮膚の刺激の症例に表面麻酔のために使用することができる。この方法で使用される製品は冷たい快感をもたらし、専門家の医学的処置を要しない軽度の火傷を冷却するために使用することができる。
【0053】
メントールは3個の非対称C原子を有し、従って鏡像異性体の4種のジアステレオマー対(式を参照されたい:他の4鏡像異性体は対応する鏡像である)で存在する。
【0054】
【化5】

蒸留により分離することができるジアステレオ異性体はネオイソメントール、イソメントール、ネオメントール[(+)型:日本ペパーミント油の一成分]およびメントールと呼ばれる。もっとも重要な異性体は強度なペパーミント様匂いをもつ輝くプリズムの(−)−メントール(レボメントール)である。
【0055】
リウマチ性疼痛、神経痛および炎症を処置するために更なる活性物質として、マトリックスに例えばカンフアーを添加することができる。カンフアーにより2−ボルナノン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オンを意味する;以下の図を参照されたい。
【0056】
【化6】

しかし、ジョジョバ油もしくはアロエのような手当特性を有する物質と組み合わせて、本発明のポリマーマトリックスを同様に使用することができる。それらの適用の規定に応じて、これらの組み合わせ物は薬品から化粧品を製造することができ、従って承認期間の短縮のために商品化する期間を劇的に短縮することができる。
【0057】
本発明のヒドロゲル/パップの有利な態様として、更に、活性充血物質(例えばカヤン
ペッパーの天然の活性物質)もしくは合成の活性物質(例えばノニバミド、ニコチン酸誘導体、好ましくはベンジルニコチネートもしくはプロピルニコチネート)および抗炎症剤および/または鎮痛剤を挙げることができる。
【0058】
例により、カプサイシン
【0059】
【化7】

ノニバミド
【0060】
【化8】

ニコチン酸ベンジルエステル
【0061】
【化9】

を挙げることができる。
【0062】
フラボンおよびその誘導体(しばしば集合的に「フラボン類」とも呼ばれる)はまた、本発明の意味において有利な添加剤である。それらは下記の基礎構造(置換位置が示されている):
【0063】
【化10】

を特徴としてもつ。
【0064】
本発明の調製に更に、好ましく使用することができる、より重要なフラボンの幾つかは下記の表に挙げられる:
【0065】
【表1】

天然においては、フラボンは通常グリコシル化形態で存在する。
【0066】
本発明に従うフラボノイドは好ましくは一般構造式
【0067】
【化11】

[式中、Z〜ZはH、OH、アルコキシ−および更にヒドロキシアルコキシ−から成る群から相互に独立に選択され、ここでアルコキシおよびヒドロキシアルコキシ基はそれぞれ、分枝および非分枝であってよく、1〜18個のC原子をもつことができ、そこでGlyはモノ−およびオリゴグリコシド残基の群から選択される]
の物質の群から選択される。
【0068】
しかし、本発明に従うフラボノイドはまた有利には、一般構造式
【0069】
【化12】

[式中、Z〜ZはH、OH、アルコキシ−および更にヒドロキシアルコキシ−から成る群から相互に独立に選択され、ここでアルコキシおよびヒドロキシアルコキシ基はそれぞれ、分枝および非分枝であってよく、1〜18個のC原子をもつことができ、そこでGlyはモノ−およびオリゴグリコシド残基の群から選択される]
の物質の群から選択することができる。
【0070】
これらの構造物は一般構造式
【0071】
【化13】

[式中、Gly、GlyおよびGlyは相互に独立に、モノグリコシド残基を表わすかまたはGlyおよび/もしくはGlyがまた、個別にもしくは一緒に水素原子による飽和物を表わす]
の物質の群から好ましく選択することができる。
【0072】
Gly、GlyおよびGlyは相互に独立に、ヘキソシル基、特にラムノシル基およびグルコシル基の群から選択される。しかし、その他のヘキソシル基(例えば、アロシル、アトロシル、ガラクトシル、グロシル、イドシル、マンノシルおよびタロシル)も同様に、適当な場合には有利に使用することができる。ペントシル基を使用することも本発明に従って有利であるかも知れない。
【0073】
〜Zは有利には、H、OH、メトキシ−、エトキシ−および更に2−ヒドロキシエトキシ−から成る群から相互に独立に選択され、フラボングリコシドは構造:
【0074】
【化14】

を有する。
【0075】
特に有利になる本発明のフラボングリコシドは以下の構造:
【0076】
【化15】

[式中、Gly、GlyおよびGlyは相互に独立に、モノグリコシド残基もしくはオリゴグリコシド残基を表わす。Glyおよび/もしくはGlyはまた、個別にもしくは一緒に水素原子による飽和物を表わす]
により表わされる群からのものである。
【0077】
好ましくは、Gly、GlyおよびGlyは相互に独立に、ヘキソシル基、特にラムノシル基およびグルコシル基の群から選択される。しかし、その他のヘキソシル基(例えば、アロシル、アトロシル、ガラクトシル、グロシル、イドシル、マンノシルおよびタロシル)も同様に、適当な場合には有利に使用することができる。ペントシル基を使用することも本発明に従って有利であるかも知れない。
【0078】
本発明の意味において、1もしくは複数のフラボングリコシドをα−グルコシルルチン、α−グルコシルミリセチン、α−グルコシルイソクエルシトリン、α−グルコシルイソクエルセチンおよびα−グルコシルクエルシトリンから成る群から選択することは特に有利である。
【0079】
α−グルコシルルチンが本発明に従って特に好ましい。
【0080】
更にナリンギン(アウランチイン、ナリンゲニン7−ラムノグルコシド)、ヘスペリジン(3’,5,7−トリヒドロキシ−4’−メトキシフラバノン7−ルチノシド、ヘスペリドシド、ヘスペレチン7−O−ルチノシド)、ルチン(3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフリボン3−ルチノシド、クエルセチン3−ルチノシド、ソホリン、ビルタン、ルタビオン、タウルチン、フィトメリン、メリン)、トロキセルチン(3,5−ジヒドロキシ−3’,4’,7−トリス(2−ヒドロキシエトキシ)フラボン3−(6−(O−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−β−D−グルコピラノシド))、モノキセルチン(3,3’,4’,5−テトラヒドロキシ−7−(2−ヒドロキシエトキシ)フラボン3−(6−(O−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−β−D−グルコピラノシド))、ジヒドロロビネチン(3,3’,4’,5’,7−ペンタヒドロキシフラボノン)、タキシホリン(3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラバノン)、エリオジクチオール−7−グルコシド(3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラバノン7−グルコシド)、フラバノマレイン(3’,4’,7,8−テトラヒドロキシフラバノン7−グルコシド)およびイソクエルセチン(3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラバノン−3−(β−D−グルコピラノシド))が本発明に従って有利である。
【0081】
本発明のゲルマトリックスのための活性物質の更に好ましい薬学的クラスには、本発明の範囲内の完全性にどんな要求(any claim)をもせずに以下:
抗カビ剤(例えばナフィチン、アモロルフィン、トルナフテート、シクロピロックス)
非ステロイド性抗炎症剤(例えばグリコールサリチレート、フルフェナミン酸、イブプロフェン、エトフェナメート、ケトプロフェン、ピロキシカム、インドメタシン)、
抗掻痒剤(ポリドカノール、イソプレナリン、クロタミトン)、
局所麻酔剤(例えばリドカイン、ベンゾカイン)、
抗乾癬剤(例えばアンモニウムビツマスルホネート)、
角質溶解剤(例えば尿素)、
が含まれる。
【0082】
活性物質中で、本発明のポリマーマトリックス、ヒドロゲル/パップもしくはパッドに対して特に重要であると強調しなければならないものは、消毒剤(disinfectants)もしくは防腐剤(antiseptics)である。
【0083】
消毒剤と指定される物質は消毒、すなわち病原性微生物(例えばバクテリア、ウイルス、胞子、ミクロ菌およびカビ)を抑制するのに適したものである。一般に、製品は皮膚、衣類、装置、室、のみならずまた飲料水、食品、種子(ドレッシング)上に、そして土壌消毒剤として使用される。
【0084】
特に、例えば創傷の消毒のためのような局所適用のための消毒剤はまた防腐剤とも呼ばれる。
【0085】
消毒剤は製品もしくは表面に使用される時に、それらがもはやどんな感染をも誘起しないような状態にそれらを置く物質もしくは組成物と定義される。それらの作用は殺バクテリア、殺カビ、殺ウイルスそして殺胞子性である、すなわち集合的用語:殺微生物でなければならない。静菌効果(bacteriostatic effect)は消毒剤には不適切である。従ってそれらは概括的に汎毒性(pantoxic)である、すなわちそれらはすべての生存細胞に対してそれらの作用をもたらす。
【0086】
意図された使用に応じて、消毒剤はそれらを洗濯物、表面、装置、皮膚および手の消毒のため、そして便および唾液の消毒のためのものに分類される。消毒洗浄剤は洗浄製品としても、そして適切な場合には手入れ製品としても働く消毒剤であると理解される。
【0087】
例えばスペクトルの広い作用、短い作用時間、皮膚の相容性、低い毒性、物質の相容性、等のような、消毒剤に課せられる広範な要求を考慮すると、ごく特定のタイプの活性物質のみが所望の使用に適する。
1.もっとも重要な群の活性物質はアルデヒド(ホルムアルデヒド、グロキサール、グルタルアルデヒド)である。それらはホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドの場合にはウイルス活性および殺胞子作用を含むスペクトルの広い作用を有する。
2.フェノール誘導体は良好な殺バクテリア作用を有するが、殺胞子性ではない。それらはほとんどすべての他の有効な消毒物質に比較すると、埃(dirt)により比較的影響を受けないという利点を有する。従ってそれらは便の消毒に特に適する。典型的な代表物は2−ビフェニロールおよびp−クロロ−m−クレゾール(4−クロロ−3−メチルフェノール)である。
3.アルコールは急速な活性を特徴としてもつが、約40%〜80%の比較的高濃度においてのみである。
4.第四級アンモニウム化合物、カチオン界面活性剤(逆性セッケン)および両性界面活性剤は界面活性剤のクラスに属する。それらはかなり良好な皮膚相容性および物質相容性および更に匂いの中立性を特徴としてもつ。しかし、それらの作用スペクトルはごく限定されている。それらには例えば、ベンズアルコニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド(ヘキサデシルピリジニウムクロリド)等が含まれる。
【0088】
第四級アンモニウム化合物は第四級窒素原子を含有する有機アンモニウム化合物である。疎水性アルキル基を有する第四級アンモニウム化合物は殺菌性であり;それらの使用は毒性学的理由のために明らかに低下している。
【0089】
第四級アンモニウム化合物は第三級アミンをアルキル化剤(例えばメチルクロリド、ベンジルクロリド、ジメチルサルフェート、ドデシルブロミド、しかしまたエチレンオキシド)と反応させることにより調製される。使用される第三級アミンに応じて3種の群:
【0090】
【化16】

a)線状アルキルアンモニウム化合物、
b)イミダゾリニウム化合物、
c)ピリジニウム化合物R=CH、R=C8−18、X=ハロゲン、
が区別される。
【0091】
1個の長いアルキル基および2個のメチル基を有する第三級アミンのアルキル化は特に容易に実施され、そして2個の長い基および1個のメチル基を有する第三級アミンの第四級化は温和な条件下でメチルクロリドを使用して実施することができる。3個の長いアルキル基もしくはヒドロキシ−置換アルキル基を有するアミンは非常に反応性ではなく、好ましくは、ジチルスルフェートを使用して第四級化される。
5.ハロゲンのなかでは、塩素およびヨウ素が消毒剤として特定の意味を有する。塩素は水処理およびプールの消毒並びにそれに加えて、匂いおよび腐食性のような不快な特性から知られている。バクテリア、カビ類、胞子およびウイルスに対する優れた作用にもかかわらず、塩素含有消毒剤は前記の理由のため、そして有機物質による高度な塩素喪失のために、ヒトの部門(human segment)において何の大きな用途をも見いださなかった。それに対し、次亜塩素酸塩、石灰の塩素およびクロロイソシアヌル酸は工業用消毒剤としていまだ広く使用される。ヨウ素のチンキは防腐剤として医学部門で使用される。
6.活性酸素に基づく消毒剤(例えば過酸化水素、ペルオキシ酢酸)は最近いくらか重要性を取り戻した。
7.金属の表面の酸化物層中に含有されるAgイオンが微生物中のチオール酵素に阻害効果を及ぼすので、銀は単独でそして結合形態双方で強力な防腐作用を有する。Agイオンはまた強力に殺カビおよび殺バクテリア性である。従って薄い殺バクテリア性の銀フォイルが創傷包帯材料として使用され、同様に、防腐剤および抗真菌剤として、銀エアゾール、銀溶液、銀含有軟膏、錠剤等が使用される。
【0092】
銀イオンは塩、ゼオライト、例えばアルミナムシリケート、もしくは好ましくは銀ガラスの形態で使用することができる。
【0093】
前記の活性殺微生物物質の外に、多数の静微生物物質および保存剤(芳香族の酸および
それらの塩のジフェニルエーテル、カルボアニリド、アセトアニリド)がまだ特定の使用のために市販されており、より広範な意味の消毒剤中に含まれる。
【0094】
消毒剤の均一な作用機序を識別することはできない。特定の調製物はバクテリアの細胞膜上に破壊的に作用するように推定されるが、他方に対してはキレート形成による、酵素もしくは痕跡の元素中の重要なスルフィド結合の不可逆的阻害が推定される。
【0095】
従って、本発明は更に、
少なくとも1種の非イオン界面活性剤および
少なくとも1種のアミノ酸および/もしくはアミノ酸誘導体および
少なくとも1種の消毒剤および/もしくは活性殺微生物性物質、
を含んで成るポリマーマトリックス中への消毒製品の使用を提供する。
【0096】
1もしくは複数の非イオン性界面活性剤は、それらのアルキル基が、(8)10〜18、好ましくは、12〜14個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の直鎖−もしくは分枝鎖アルキル基であるアルキルエトキシレートおよび/もしくはアルキルプロポキシレートの群から有利に選択される(それらは好ましくは、1分子当たり2〜15個、特に5〜9個、そして特には7個のエチレンオキシド単位を含む)。イソトリデカノールエトキシレートおよび/もしくは脂肪アルコールのポリグリコールエーテルが非常に特に好ましい。
【0097】
非イオン界面活性剤(1もしくは複数の化合物)の総量は有利には、マトリックスの総重要に基づきそれぞれ、1.0重量%〜20.0重量%、好ましくは5.0重量%〜15.0重量%の範囲内から選択される。
【0098】
有利なアミノ酸は例えば、以下の構造式:
【0099】
【化17】

を特徴としてもつグルタミン酸および/もしくは、以下の構造式:
【0100】
【化18】

を特徴としてもつピロリドンカルボン酸(ピログルタミン酸)である。
【0101】
アミノ酸(1もしくは複数の化合物)の総量は有利には、マトリックスの総重要に基づきそれぞれ、0.1重量%〜10.0重量%、好ましくは0.5重量%〜2.0重量%の範囲内から選択される。
【0102】
1もしくは複数の消毒剤(活性殺微生物物質)は好ましくは、アルデヒド(例えばホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド)、フェノール誘導体(例えば2−ビフェニロールおよびp−クロロ−m−クレゾール(4−クロロ−3−メチルフェノール
)、アルコール、第四級アンモニウム化合物(例えばベンズアルコニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド(ヘキサデシルピリジニウムクロリド))の群から選択される。これに関してはアルデヒドおよび第四級アンモニウム化合物が特に好ましい。
【0103】
1つの特に有利な態様において、消毒剤系は更に両性界面活性剤を含んで成ることができる。両性界面活性剤は酸性および塩基性親水性基双方を有し、従って条件に応じて酸性もしくは塩基性に行動する界面活性剤である。例えば、カルボキシル、スルホもしくはホスホノ側鎖(例えばR−NH−(CH−COOH)を有する脂肪族ポリアミンに基づく両性界面活性剤は利点を有する。
【0104】
例えば、そのアルキル基が10〜18個、好ましくは、12〜14個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基である両性界面活性剤が好ましい。
【0105】
更に、以下の構造:
【0106】
【化19】

を特徴としてもつ、例えば、ココベタインアミドアンホプロピオネートのようなアンホプロピオネートの群からの両性界面活性剤は特に有利である。
【0107】
両性界面活性剤(1もしくは複数の化合物)の総量は有利には、マトリックスの総重量に基づきそれぞれ、1.0重量%〜10.0重量%、好ましくは2.0重量%〜5.0重量%の範囲内から選択される。
【0108】
使用のための溶液中の個々の物質の量が以下:
非イオン界面活性剤: 0.005重量%〜1重量%
アミノ酸: 0.0005重量%〜0.5重量%
場合により両性界面活性剤: 0.005重量%〜0.5重量%
消毒剤: 0.01重量%〜2.0重量%
であるように希釈を実施することが有利である。
【0109】
前記に特定された成分に加えて、このような調製物のための消毒剤系は通常の保存剤、染料、香料および/もしくはその他の補助剤を含んで成ることができる。しかし、作用(保存、手入れ、等)をもたらす成分を使用し、同時に特定の色彩および/もしくは快適な香りを提供することもできる。
【0110】
それぞれの場合に使用されるこれらのベヒクルおよび香料の量は簡単な試験により当業者により特定の製品の性質の関数として容易に決定することができる。
【0111】
アルキルアミン、少なくとも1種のアミノ酸および/もしくはアミノ酸誘導体および少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物の群から選択される、少なくとも1種の活性殺微生物物質を含んで成る消毒剤系の使用も有利である。
【0112】
第四級アンモニウム化合物は有利には、好ましくは、ベンズアルコニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、セトリモニウムブロミドおよびセチルピリジニウムクロリド(ヘキサデシルピリジニウムクロリド)から成る群から選択される。アルキルアミンは有利にはドデシルビスプロピレントリアミンである。
【0113】
本発明に従うと、それらのアルキル基が8〜18、好ましくは、12〜14個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の直鎖−もしくは分枝鎖アルキル基であり、好ましくは、1分子当たり2〜15個、とりわけ5〜9個、特には7個のエチレンオキシド単位を含むアルキルエトキシレートの群から特に有利に選択される非イオン界面活性剤が有利に添加される。イソトリデカノールエトキシレートおよび/もしくは脂肪アルコールのポリグリコールエーテルが非常に特に好ましい。
【0114】
非イオン界面活性剤(1もしくは複数の化合物)の総量は有利には、マトリックスの総重量に基づきそれぞれ、1.0重量%〜20.0重量%、好ましくは5.0重量%〜15.0重量%の範囲内から選択される。
【0115】
更に、消毒、保存および防腐のための薬剤としての、多数の殺微生物活性の化学物質もしくはこれらの混合物それら自体は知られている。殺微生物物質は概括的に、多かれすくなかれ、例えば、通常のスペクトルの微生物(例えばグラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコバクテリア、酵母菌、真菌、ウイルス等)に対して活性であり、従って通常、適切な活性物質組み合わせ物により十分な消毒、保存もしくは防腐を達成することができる。
【0116】
消毒、保存および防腐の目的のためには、一連の活性物質、例えば、特にアルデヒド(例えばホルムアルデヒドもしくはグルタルアルデヒド)、第四級アンモニウム化合物および長鎖アミン、フェノールもしくはアルコールが知られている。
【0117】
アルデヒドは消毒される製品上で化学反応により血液およびタンパク質の残留物を固定するので、消毒後、これらの製品は洗浄が困難である。更に、それらは比較的高いアレルギー誘発性を有するので、皮膚および手に対する適用は低濃度でのみ可能であるかもしくは−要求に応じて−感作閾値未満に留まることができるために、更なる活性物質と組み合わせて考慮することができる。より高濃度のアルデヒドはまた、それらの匂いのために望ましくなく、この理由のために、同様に更なる活性物質との組み合わせにより濃度を低下させる。
【0118】
第四級アンモニウム化合物および長鎖アミンはしばしば、表面の殺菌においてそして手動装置の消毒のために、そして僅かな程度に更に手の防腐のために使用される。アルデヒドと比較すると、これらの化合物の匂いは有意に不快感が少ない。タンパク質との化学反応はないが、タンパク質の物理的沈殿が起るが、それは界面活性剤との巧みな組み合わせにより一部埋め合わせされる(compensate)。機器の機械的消毒のためには、第四級アンモニウム化合物は洗浄機内の乱流により激しい望ましくない発泡が起るので、適切ではない。表面の消毒の場合には、第四級アンモニウム化合物は表面に「付着する」強い傾向を示し、すなわちこれらの化合物の層が表面上に形成される。更なる重大な欠点は第四級アンモニウム化合物が殺胞子性にも、もしくは外皮膜をもたない(nonenveloped)ウイルスに対しても作用しないので、それらの限定された作用スペクトルである。
【0119】
フェノールは、消毒剤の実質的にすべての適用部門において、主としてそれらの匂い、それらのポリオウイルスに対する低い活性レベル、場合によるそれらの乏しい分解処理性、皮膚をとおる強力な透過性と併せた高い脂質溶解度並びに更に毒性および変異原性の危険のために、下り坂にある。
【0120】
脂肪族アルコールのエタノール、プロパン−1−オールおよびプロパン−2−オールは皮膚および手の消毒のためのもしくは皮膚および手の防腐のための活性物質として昔から知られてきた。アルコールに基づく消毒剤および防腐剤により30〜60秒の短時間の暴露により99.9%までの微生物数の減少を得ることができる。一般的にアルコールの殺微生物活性の簡単な提示は以下の本:K.H.Wallhaeusse,”Praxis
der Sterilisation, Desinfektion und Konservierung”,G.Thieme Verlag,Stuttgart,New York,5th editon,pp.469−474、に認められる。
【0121】
アルコールはメタノールからプロパノールに増加する殺バクテリア作用を有する。とりわけエタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールが使用され、そこで調製物のアルコール含量は一般に50%〜80%に位置する。アルコールの本質的利点は作用開始が非常に早いことである。欠点はそれらが胞子に活性でなく、アルコールは急速に蒸発するので作用が非常に短期間後に終結することである。アルコールの抗ウイルス活性は検討中であるが、それは、エタノールの場合に約80%であると推定される、高い濃度限定を除いた場合においてのみである。
【0122】
実際、アルコール性消毒剤および防腐剤はウイルスおよび痕跡のバシラスおよびクロストリジウム種を破壊することが不可能であるかもしくは適切には不可能であることが認められた。アルコール溶液の胞子の除去は濾過により達成することができるが、実際、微生物の胞子が(その後に)例えば貯蔵容器の短時間の開放中もしくは既に胞子を含む容器中への製品の分配中に調製物中に侵入するであろうことを完全に除外することはできない。このため、アルコール性の皮膚および手の防腐剤を使用する際は、胞子により誘起される感染のある程度の危険が常にある。
【0123】
防腐剤は皮膚を処置するのに特に適する。防腐剤は皮膚糸状菌に対して非常に良好な活性を示し、とりわけ驚くべきことには、それらがウイルスに対して非常に良好な活性を有する事実を特徴として示す。
【0124】
防腐剤の成分はそれらの抗微生物性と抗ウイルス性に関して相乗的に作用する、すなわち有意な方法で付加的に作用する。
【0125】
従って、防腐剤としての、
(a)42重量%〜47重量%の1−プロパノール、
(b)22重量%〜27重量%の2−プロパノール、
(c)4重量%〜6重量%のエタノール、
(d)少なくとも20重量%の水、
(e)0.0001重量%を超えない、標準条件下で固体の形態にある物質、
(f)有効な量を含まない、殺ウイルス性を特徴とする更なる物質、
を含んで成る調製物の使用、特にHIVウイルスもしくは肝炎Bウイルスを抑制もしくは不活性化するためのその使用もまた有利である。
【0126】
順次、1,1’−ヘキサメチレンビス[5−(4−クロロフェニル)ビグアニド]に対する国際的な一般名である、クロルヘキシジン、
【0127】
【化20】

が防腐剤として特に適し、ここで使用される防腐剤はジヒドロクロリド、ジアセテートおよびジグルコネートである。
【0128】
パッチとしての使用のためには、本発明のゲルマトリックスは紙、フィルム等から製造された剥離媒質上に層としてプレス、ロール等をされて、例えばポリマーフィルム、織物等のような任意の所望の裏材料とともに裏側に張り付けられる。本発明に従って特に好ましくはゲルマトリックスは裏材料に計量ポンプにより熱状態で適用され、プレスもしくはロール機構において対応する孔により三次元形態に形成されることが極めて特に好ましい。形成されるパッチの形態は孔の形態により決定され、どんな制約をも受けず、例えば、平らになる縁をもつ長円体であるかもしくは例えば角のある形態であってもよい。
【0129】
特に有利には本発明のゲルマトリックスは特にパッチとして使用される時には、柔軟なカバー層上に適用される。対応するパッチは裏材料(例えば、フィルム、不織物、織物、発泡体等)、接着性マトリックスおよびパッチの使用前に接着性マトリックスを保護するためのライナーフィルム、ライナーペーパーもしくは剥離紙から構成される。
【0130】
本発明の更に好ましい態様において、使用される裏材料はポリマーフィルム、不織物、織物およびそれらの組み合わせ物である。選択に利用できる裏材料にはポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテル−エステル・コポリマーおよびポリウレタン)あるいはまた、天然繊維が含まれる。要約すると、適切な裏材料は合成および天然の原料のすべての固い、弾性のシート様構造物を包含することを維持することができる。それらが機能的包帯の特性を充たすように使用することができる裏材料が好ましい。織物、ニット、編み物(lays)、不織物、積層物、ネット、フィルム、発泡体および紙のような織物が例により挙げられる。更に、これらの材料は前もって処理しそして/もしくは後処理することができる。通常の前処理はコロナおよび疎水性化であり、通常の後処理は艶だし、熱処理、積層、穴開けおよび封入である。裏材料が滅菌可能で、好ましくはγ−(ガンマ)滅菌可能である場合は特に有利である。
【0131】
本発明に従って極めて特に好ましい裏材料はスクリーン印刷もしくは類似の方法により接着性ポリマーマトリックスを点状に提供され、側部の縁で適用されたゲルマトリックスを外向きに重ねた、良好な酸素、空気および水蒸気の透過性を有するものである。この形態で製造された本発明のマトリックスはヒドロゲル/パップの固有の接着が持続性の適用にはもはや十分ではない肘もしくは膝の関節のような大きい機械的応力下にある身体部分に自己接着性に貼ることができる。
【0132】
接着性マトリックスの記載された特性はとりわけ、医学用製品、特にパッチ、医学用留め具、創傷包帯、整形外科もしくは静脈学的包帯および包帯(dressings)のためのその使用を示唆する。
【0133】
ポリアクリル酸ポリマー、寒天、グリセリンおよび水から成る自己接着性ポリマーマトリックスのパッチ、ストリップ、創傷カバーおよび/もしくは包帯における使用はとりわけ、創傷の手当および皮膚の手入れのための極めて簡単な皮膚相容性の可能性である。このように製造されたパッチ、創傷カバーもしくは包帯は個別に調節可能な一貫性および接着力を示し、既知の医学用材料に比較して極めて安価である。ポリマーマトリックスは単独でもしくは、適切な被覆された裏材料と組み合わせて使用することができる。従って、
例えば指もしくは肘のような動く身体部分上にも使用することができる製品を製造することができる。
【0134】
水溶性もしくは疎水性活性物質が皮膚への活性物質の制御された配送のための活性物質パッチシステムもしくはTTSとして取り込まれたポリマーマトリックスの使用もまた特に適切である。自己接着性ポリマーマトリックスの使用は有利には、とりわけ、局所もしくは口腔使用のための、またはTTS、特にモノリスTTSの成分としての活性物質の投与形態としてみなすことができる。
【0135】
スクリーン印刷により被覆されたフリース材料上の例えば、メントールの使用により、メントールおよび/もしくは水の蒸発、配送の結果として、軽症の火傷に冷却効果をもたらすポリマーマトリックスを伴うパッチを製造することができる。従って、皮膚火傷の症例に使用のための活性物質としてメントールを含んで成る自己接着性ポリマーマトリックスの使用は好ましい。
【0136】
非ステロイド性抗炎症剤が活性物質として使用される場合は、ポリマーマトリックスは有利には、リウマチ様の障害を処置するのに適する。
【0137】
活性物質としての精油の使用も同様に、ポリマーマトリックスを冷却タイプの疾患に対して、そしてアロマセラピーのためにも使用させる。
【0138】
その簡単な構成(construction)のおかげで、マトリックスは早急に、簡単にそして低価格でパッチシステムもしくはTTSを製造するのに適する。更に、活性物質を取り込む可能性の結果として、このようなパッチシステムの適用の広さが著しく高められ、生産における収益性が増加する。
【0139】
最後にゲルマトリックスはシリコーン処理紙のような抗接着性裏材料で封入するかまたは創傷パッドもしくはクッションを提供することができる。後に皮膚に面するその自己接着性の側に、使用されるまで、通常、抗接着性裏材料で本発明のパッチをその全体の幅にわたって裏打ちされる。これが自己接着性層を、良好な皮膚相容性を有し、好ましくは移動法により適用され、更に製品を全体的に安定化させるゲルマトリックスの接着剤から保護する。裏打ちは既知の方法で一体としてもしくは好ましくは2部分としてデザインすることができる。更なる態様はマトリックスの裏側と裏材料との間にレザボアとしてのより高い活性物質の溶解度をもつ第2のマトリックスが存在する。第2のマトリックスおよび裏材の代わりに、これはまた、純粋な活性物質とともに熱成形されたフィルムであることもできる。マトリックスの接着剤側の一部(例えば縁に)に更なる固定の目的の高い接着力をもつが、不十分な活性物質の溶解度をもつ第2のマトリックスが局在する。活性物質を含まないマトリックスは2枚の非固定(non−anchoring)フィルムの間に置かれ、固定(fixing)のために使用される。活性物質を含まないマトリックスはまた、簡単な創傷/接着プラスターのための接着層として(創傷パッドを伴いもしくは伴わずに)役立てることができる。
【0140】
医学用プラスターシステムとしての、パッチ、パッド、創傷パッドもしくは包帯としてのポリマーマトリックスの使用は特に0.2〜1000cmの総面積をもつ平坦な態様において適する。これにより、例えば皮膚の小さい(0.2〜2cm)火傷領域、または冷却の目的でもしくはリウマチ様の訴えの症例において広い部分(1000cmまで)が覆われる。
【0141】
更に、これに関しては、0.1〜1000g、特に500gのポリマーマトリックスの重量画分をもつ二次元もしくは三次元の態様の自己接着性ポリマーマトリックスの使用は
好ましい。この場合の形態は丸形、楕円形、角のある形であるかもしくは皮膚の部分に従うようにデザインすることができる。
【0142】
以下の実施例は本発明を、限定することなく具体的に示す。以下の表は本発明のゲルマトリックスを挙げる。報告される質量画分はマトリックスの総質量に基づく。
[実施例I〜III]
【0143】
【表2】

実施例I〜IIIは一定のポリアクリル酸含量および同様な一定の寒天含量により類似の接着性を示すが、しかし増加するグリセリン含量により増加する接着性/弾性を示す。[実施例IV〜VI]
【0144】
【表3】

実施例IV〜VIは一定の寒天およびグリセリン含量により類似の接着性/弾性を示すが、同時のポリアクリル酸含量の増加により増加する接着性を示す。
[実施例VII〜IX]
【0145】
【表4】

すべての点で、本発明の調製物は優れた作用を特徴として示す完全に満足な調製物である。本発明のマトリックスを本発明に従って使用される有効含量の活性物質とともに使用されると、炎症性皮膚状態−アトピー性湿疹を含む−の有効な処置、しかし更に予防および/もしくは過敏性であると決定された乾燥皮膚の症例における皮膚の保護を達成することができる。しかし、本発明の活性物質もしくは有効量の本発明の活性物質を含有する局所用皮膚科学的調製物はまた、驚くべきことには、感受性もしくは刺激性皮膚を緩和するために役立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中でゲルを形成する少なくとも1種のポリマー、水、海藻抽出物および一価もしくは多価アルコールを含んで成る自己接着性ポリマーマトリックス。
【請求項2】
水中でゲルを形成するポリマーが少なくとも1種のポリアクリル酸ポリマーから成ることを特徴とする、請求項1のポリマーマトリックス。
【請求項3】
選択されるポリアクリル酸ポリマーが下記の構造:
【化1】

[式中、R’はアルキル基であり、そしてxおよびyはそれぞれ、それぞれのコモノマーのそれぞれの化学量論的画分を表わす]
を有するアクリレート−アルキルアクリレート・コポリマーであることを特徴とする、請求項2のポリマーマトリックス。
【請求項4】
使用されるポリアクリル酸ポリマーがC10−30アルキルアクリレートと、蔗糖のアリルエーテルもしくはペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋されているアクリル酸、メタクリル酸もしくはそれらのエステルの1もしくは複数のモノマーとのコポリマーであることを特徴とする、請求項2もしくは3のポリマーマトリックス。
【請求項5】
水中でゲルを形成するポリマーがマトリックスの総質量に基づき2重量%〜55重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項のポリマーマトリックス。
【請求項6】
水中でゲルを形成するポリマーが5重量%〜30重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項5のポリマーマトリックス。
【請求項7】
海藻抽出物として寒天および/もしくはカラゲーナンが選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項のポリマーマトリックス。
【請求項8】
海藻抽出物がマトリックスの総質量に基づき0.1重量%〜15重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項のポリマーマトリックス。
【請求項9】
海藻抽出物が0.5重量%〜5重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項8のポリマーマトリックス。
【請求項10】
一価もしくは多価アルコールとしてグリセリン(1,2,3−プロパントリオール)が使用されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項のポリマーマトリックス。
【請求項11】
アルコールがマトリックスの総質量に基づき、1重量%〜85重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項のポリマーマトリックス。
【請求項12】
アルコールがマトリックスの総質量に基づき、5重量%〜45重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項11のポリマーマトリックス。
【請求項13】
更に少なくとも1種の活性物質が存在することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項のポリマーマトリックス。
【請求項14】
活性物質がデックスパンテノール、カプサイシン、リドカインおよび/もしくはそれらの塩、メントール、カンファー、イブプロフェンおよび/もしくはそれらの塩(例えばリシネート)、ケトプロフェン、ユーカリ油、ペパーミント油、クロロヘキシジンおよび/もしくはそれらの塩、銀もしくは銀化合物、ジョジョバ油、アロエ、消毒剤および/または防腐剤から成る群から選択されることを特徴とする、請求項13のポリマーマトリックス。
【請求項15】
1もしくは複数の活性物質がマトリックスの総質量に基づき0〜35重量%、より好ましくは0〜15重量%の量で存在することを特徴とする、請求項13もしくは14のポリマーマトリックス。
【請求項16】
ポリアクリル酸ポリマー、寒天および/もしくはカラゲーナンおよびグリセリンの組み合わせ物を含んで成る、請求項1〜15のいずれか1項のポリマーマトリックス。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項のポリマーマトリックスを含んで成る医療用パッチ。
【請求項18】
パッチ、ストリップ、創傷被覆物および/もしくは包帯としての、もしくはそこにおける請求項1〜16のいずれか1項の自己接着性ポリマーマトリックスの使用方法。
【請求項19】
一般的な創傷の手入れもしくは皮膚の手入れのための、特に感受性皮膚のもしくは刺激性皮膚を和らげるための請求項1〜16のいずれか1項の自己接着性ポリマーマトリックスの使用方法。
【請求項20】
局所もしくは口腔使用のための活性物質の投与形態としてのまたはTTS、とりわけモノリスTTSの成分としての、請求項1〜16のいずれか1項の自己接着性ポリマーマトリックスの使用方法。
【請求項21】
皮膚の火傷の場合における使用のための活性物質として、メントールを含んで成る、請求項1〜16のいずれか1項の自己接着性ポリマーマトリックスの使用方法。
【請求項22】
リウマチ性タイプの障害を処置するための非ステロイド性抗リウマチ剤を含んで成る、請求項1〜16のいずれか1項の自己接着性ポリマーマトリックスの使用方法。
【請求項23】
風邪タイプの疾患における使用のためのそして、アロマセラピーのための活性物質として精油を含んで成る、請求項1〜16のいずれか1項の自己接着性ポリマーマトリックスの使用方法。
【請求項24】
0.2〜1000cmの総面積をもつ二次元の態様における請求項18〜23のいずれか1項の自己接着性ポリマーマトリックスの使用方法。
【請求項25】
0.1〜1000g、特に500gのポリマーマトリックスの重量画分をもつ二次元も
しくは三次元の態様における請求項18〜24のいずれか1項の自己接着性ポリマーマトリックスの使用方法。

【公表番号】特表2006−513194(P2006−513194A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563187(P2004−563187)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014793
【国際公開番号】WO2004/058315
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(591010376)バイヤースドルフ・アクチエンゲゼルシヤフト (20)
【氏名又は名称原語表記】BEIERSDORF AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】